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火山灰質耕地土壌のカチオン吸着性

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Academic year: 2021

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(1)

吉川 義一・吉田 微志 (農学部土壌学・肥科学研究室)

Cation Adsorption

by Cultivated

Soils

         Giichi YOSHIKAWA and Tetsushi YOSHIDA

Laborotoり可Soil Science(md Plant Nttintion, Faculty of Ag咄岫wre

 Abstract : Ammonium ion adsorption by 4 cultivated soils, classified as humic andosols (l soil) and gray lowland soils with andic subsoil ( 3 soils), was studied. The soils,previously removed native exchangeable bases by treating with NHiCl solution, were equilibrated at 2 5℃with solutions of 0.1, 0.01, or 0.001M NHJ, and of varying pH values, prepared by mixing aqueous ammonia with hydrochloric acid。

 The relation between the a皿lount of NHl adsorbed on soil(E。) and the composition of solution (pH, pNH4)at equilibrium, can be described by a simple equation E−= f(pH−pNH4)ンThe equation E−=f(pH−pNH4)or E。vs. pH―pNH4 curve may be utilized for describing cation retention by cultivated soils.

 黒ボク土によるカチオン吸着は,平衡液のpHやカチオン濃度によって著しい影響を受けること

が知られている1ぺ)。著者ら3)は,未耕地下の埋没層より採取した黒ボク土によるN鮒吸着平衡に

ついて検討し,黒ボク土のN限吸着量(E−)は平衡液のpH-pNH4

(pNH4 = -log a。aには平

衡液のNHt活量)の一つの関数であり,両値の関係は単調な1本の曲線で示しうるこどを報告し

た。さらにリン酸を吸着させた黒ボタ土においても類似の関係が成り立つことを認め,これらの曲

線を検討して黒ボク土のカチオン吸着基の特性や吸着リン酸のカチオン吸着基としての機能につい

て考察した几  I       I

 四国地方に分布する火山灰質の耕地作土は種々の程度に非火山灰土壌混入の影響を受けている。

腐植含量は埋没黒ボク土に比べて低く,またいうまでもなく施肥や土壌管理の影響を受けている。

高知県内の火山灰質耕地土壌について同様の検討を行った結果,これらの土壌においても埋没黒ボ

ク土で認められた関係が成り立ち,カチオン吸着量と平衡液のpHとの関係,カチオン活量との関

係を単一の曲線で示しうることを認めた。この曲線は火山灰質耕地土壌のカチオン保持性,・土壌中

のカチオンの固・液相分布を示す特性曲線として,作物の養分環境あるいは生育環境を考察するの

に利用できると考えられるので報告する。       犬

      供試土壌と実験法

 1.供試土壌  Table

1 。 に示す火山灰質耕地土壌4点を供試した。土壌2,3,4は非火山

灰土壌と黒ボク土が種々の程度に混じり合った土壌と考えられる。各土壌の¬-般的性質はTable

2.に示すとおりである。分析は常法によって行ったが,

CECと無機態リン酸含量は前轍4)記載の

(2)

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高知大学学術研究報告 第40巻(1991)農 学

方法に準拠して測定した。

N 0 . -1 2 3 4 N0. 1 C S I C O -^

Table 1 . Discription of soils used    Locality Tosayamada-cho, Kochi-ken Kubokawa・cho, Kochi-ken Noichi-cho,Kochi-ken Sakawa-cho, Kochi-ken   Kind of soil Open field,topsoil Greenhouse, topsoil Greenhouse, topsoil Greenhouse, topsoil Soil series group5) Humic Andosols

Gray Lowland soils,with andic Gray Lowland soils,with andic

subsoil subsoil

Gray Lowland soils,with andic subsoil

Table 2. General propertiesof soils used (Oven-dry basis)

 Soil texture C C C C i 1 ・ 1 ・ 1 1 1 L L L L Total C   % 6.35 5.73 5.41 2.62 pH 9 6 6 2   一   一   希   Φ L O m l O C D   CEC Exchang, Ca+Mg meq/'lOO 9 meq/'lOO 9 41,2 40.2 30.5 19.0・ 18.8  6.0 14.6 12.3 Inorg. PzOs mg/100 9 416 627 747 409 Phosphate absorp.   coefficient 2040 1850 1090  730  2.実験法  前報‘)の方法に準じ次のように行った○       ・        ,  1)塩安処理土壌の調製 風乾細土を1M塩化アンモニウムで処理し,水洗後風乾して「塩安 処理土壌」を調製した。 2)N限吸着平衡に関する実験 アンモニア水と塩酸を混合し, NHJ濃度O.IM, O.OIM,お よび0.001Mの酸性からアルカリ性にわたる種々の溶液を調製した。塩安処理土壌10gにOjM溶 液を100 「(a系列),1gに0.01M溶液を100 「(b系列), 1 sに0.001M溶液を100 「(C系 列)添加し,25℃定温で20h振とうして平衡に達せしめた。ろ過して平衡液を分離し,平衡液のN Htを定量し,pHを測定した。       I″  3)土壌のNHt吸着量と平衡液のpH-pNH4        ■  ■     ■        ・  土壌のNHt吸着平衡に対して,低pH条件では土壌からのAIの溶出,集積りン酸塩等の溶解に よるCa, Mg≒の溶出等の影響が考えられ,高pH条件ではNH3ガスの生成,腐植の解こう等の影響 が考えられる。予備的検討によりpH 5∼8の範囲では,これらの影響は無視できると考えられた ので,平衡pH 5-8の範囲で下記のように土壌のNH言吸着量と平衡液のpH-pNH4を求めた,な お微生物的影響も無視できることを回収実験等から確かめている。  NHt吸着量(E−):塩安処理土壌について定量した交換性N限に,添加液と平衡液のNHt定量 値の差を加えて平衡時の土壌のNHt吸着量(Eに)を求めた。 ◇  pNHぺ平衡液のNHt濃度c. (M)とデバイ・ヒュッケル式(1)より求めたN阻の活量係数 の負対数― log y。。を用いて, NHt活量a。の負対数pNH,を(2)式を用いて計算した。(1)式 において定数A,Bはそれぞれ0.51, 0.33×108とし,イオンの最近接距離農のNmについての 値はKIELLgl)6)による2.5×10-8(cm)を採用した。zはイオン価である。イオン強度7は次のよう にして近似値を求めた。溶存イオン種をNm,H゛,および1価アニオンとし,N附については分 析濃度を,H゛についてはpH=-log CHとしてpH測定値より求めた計算濃度を,1価アニオンに ついては上記のカチオン濃度を用いて電気的中性関係より計算した。∧       ‥

(3)

―log y°

kzW

-1十B 17゛

     pNH, =-log

a・・゜―log yl一一log c・・

pH−pNH4:pH測定値とpNH4計算値を用いて平衡液のpH−pNH4を求めた。

結果と考察

(1 (2

 Fig. 1.は土壌3についてE,。と平衡液組成の関係を示したものである。各系列のE,。はpHの

上昇とともに増大するが,同じpHにおいてE。にa>b>cの関係があり,E−はNHtの初濃度

あるいは平衡濃度(活量)が商いほど高い値を示す。しかしEロをpH

− pNH, の関係で示すと,

各系列のE。は単調な一つの曲線上に乗る。

Fig. 2.に示すように土壌1,

2,

4についても同

様である。火山灰質耕地土壌においてもE。はpH

pNHパこよって定まる,すなわちE−はpH-pNH4の一つの関数とみなすことができ,埋没黒ボク土と同様にE。=f(pH

− pNH,)と示すこ

とができる。

3 0  20 ’呂1/lom 白 2凶 b      `大汗 → →  4 5 6 7 8  2 3 4 5 6 7        pH         pH-pNHj

T    Fig. 1 . Relation of E。to pH, and to pH-pNH, of solution at equilirium(N0.13)

 カチオン交換体によるカチオン(M丿吸着平衡において成立するE≪ = f (pH - pM)の関係は 本田7 9)によって理論的に,また弱酸型イオン交換樹脂を用いて実験的に示されたものである。こ の関係は強酸型イオン交換樹脂にフいても成り立つが, pH − pM の広い範囲にわたってEJよ一定 値を示すことになる3)。火山灰質耕地土壌のカチオン吸着には種々の粘土鉱物および腐植が関与し, またリン酸集積の著しい土壌においては吸着リン酸の関与も考えられ,そのカチオン吸着基組成は 複雑である。しかし各土壌についてそれぞれ単調なE。曲線が得られた。 pH − pNH4 の低い条件

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高知大学学術研究報告 第40巻(1991)農 学

では強酸基あるいは一定負荷電によるNHt吸着がおこり,

pH − pNH4 の上昇に伴い,これらに加

えて種々の弱酸基あるいは変異負担電によるNHt吸着が順次おこり,それぞれの土壌に特有の合

成E回曲線が形成されると考えられる。   十      ¨・

J呂︷\︷o臼 白 凶 4 →→- 2 3 4.5 6 7  2 3 4 5 6 7    pH-pNH,        pH-pNH,

≒二寸すヤ

 pH-pNH,

     Fig. 2. Relation of E,。to pH-pNH4 of solution at equilibrium (No. 1,2, and 4)

 和田ら2)は土壌および粘土のCECを種々のカチオン濃度およびpHで測定し,結果を回帰分析し てlog CEC=apH十blogC十c(C:カチオン濃度)で示し,係数a,bからCECのpH依存性と 濃度依存性を考察した。本研究も土壌のカチオン吸着に対する平衡液のpHとカチオン濃度(活量) の影響に関するものであるが,N阻吸着平衡において得られた上記の結果は,E−に対するpHと pNH4の影響において次の関係があることを示している。すなわち,E−に対するpH上昇の効果 とpNH4低下の効果が同等,あるいはE−に対するpH低下の効果とpNH4上昇の効果が同等であ る。換言すれば,ある平衡状態を基点にしてpHのnの変化によゐE一の変化とpNH4の−nの変 化によるE−の変化が等しいということである。このE−の変化は基点とする平衡状態により, 土壌によって異なることはいうまでもないが,この簡単な関係は,火山灰質耕地土壌のカチオン保 特性やカチオンの固り夜相聞分布を考察する上で重要な関係であると考えられる。  pH − pNH,とE一の関係を示す曲線(E。曲線)は,本実験で採用したa , b , c系列を適当に 組合わせることによって容易に作成することができる。イオン強度7が0.1,0.01,0.001におけ

る― log y値は,それぞれ0.12, 0.04, 0.01であり,希薄溶液についてはpNH4 = ―log cにとして 計算できる。E−曲線は,E回とpH,pNH4の関係を示す単一の曲線であることに意義と利用性を

もつが,この曲線から一定pNH4におけるpHとE4の関係,一定pHにおけるpNH4とE−の関 係を示す曲線を容易に作成することができる。 Fig. 3.は作成した曲線の1例である。

(5)

  30 四呂︷\百 白 a り 皿 2 0 10 0 pNH4=0 1 2 3 4        1 2 3 4 5 6−7 8 9 10       pH

Fig. 3. Relation of E.,. to pH of solution at equilibrium (No. 3 , drawn by E。vs. pH-pNH       curve shown in Fig. 1.)

 NHt濃度(活量)が比較的低い条件で得られたE,。曲線を高濃度(活量)条件にまで適用でき

るかについては検討の余地があるが, Fig. 1.およびFig. 2.からpNH4 =0 (a,., = 1),すなわ ちc。=1,y。=1という理想条件においてpH 7.0におけるE。値を推定すると,土壌1∼4に ついてそれぞれ37.5, 37.8, 30.3, 19.2 (meg/乾±100 g)となる。これらの値はTable 2 。 に 示すCEC測定値に近似している○  火山灰質耕地土壌においてE−=f(pH−pNH,)の関係が成り立つことから,一般に1価カチ オッ(MりについてEM=f (pH-pM)の関係が,2価カチオンたとえばCa2刎こついて,埋没黒 ボク土で認められたE。。=f(pH一垢pCa)の関係3)が成り立つことが期待される。しかし耕地土壌, 特に施設栽培土壌のような集約多肥栽培下の土壌においては,一般にリン酸塩を主にしたCa塩が かなり集積しており,Ca2Mこ関する土壌固相・液相聞の平衡は複雑と考えられる。溶解,カチオ ン交換等の反応が関与するCa24`の土壌固相・液相聞の平衡を解析することは,作物根の生育環境 を考察する上で極めて重要である。

       要    約

 火山灰質耕地土壌を塩化アンモニウム溶液で処理し,水洗後風乾して「塩安処理土壌」を調製し

た。塩安処理土壌に,アンモニア水と塩酸を混合して調製した溶液(N限濃度O.IM.O.OIM,

0.001

Mの3系列)を添加し,25℃定温で20h振とうして平衡に達せしめた。

NH,ガスの生成,腐植の

解こう,アルミニウムの溶出,集積りン酸塩等からのCa,

Mgの溶出などの影響が無視できると考

えられる平衡pH

5∼8の範囲で,土壌のNHt吸着量(Eロ)と平衡液組成の関係を検討した。

 1)

E...と平衡液のpH−pNHバpNH4

=-log

a−)の関係は1本の曲線(E一曲線)で示すこと

ができ,E。=f(pH−pN出)の関係が成り立つ。

 2)

Ea-nはpH−pNH,の上昇に伴い著しく増大する。

 3)E・,曲線は火山灰質耕地土壌のカチオン保持性,カチオンの固り夜相分布を考察するのに

利用できると考えられる。

(6)

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高知大学学術研究報告 第40巻(1991)農 学

        文    献

1)吉田稔:土壌の吸着能に関する研究(第2報)CaとNH,イオンに対する土壌の吸着強度の比較,土肥誌,   27, 241∼244 (1956),

2) Wada, K. and Okumura, Y.:Electric Charge Characteristics of Ando A, and Buried A, Horizon Soils.  J. Soil Sci., 31, 307∼314 (1980)

3)吉川義一・山中律:腐植質火山灰土壌のカチオン吸着特性,高知大研報(農), 28, 133∼143 (1979) 4)吉川義一・吉田微志・恒石義一:リン酸を吸着させた黒ボク土のカチオン吸着性,土肥誌, 54, 505∼   511' (1983)

5)高知県農林技術研究所:地力保全基本調査 高知県耕地土壌図(1978)

6)・KlELLAND, J,:Individual Activity of Ions in Aqueous Solution. J. Am. Chem. Soc, 59, 1975∼1978   (1937)

7) Honda, M.:Study on the Relation between pH of Ion Exchange Resin and the Composition of Solution   at Equilibrium, ibid, 73, 2943∼2944 (1951)

8)本田雅健:イオン交換, p. 43∼46, 217∼220,南江堂(1957)

9)本田雅健:弱電解質イオン交換体の交換平衡について(第2報),各種の交換体の交換容量曲線と交換体   内pHの測定,日化, 71, 440∼443 (1950)       ト

(1991年9月29日受理)

(1991年12月27日発行)

Fig. 3. Relation of E.,. to pH of solution at equilibrium (No. 3 , drawn by E。vs. pH‑pNH       curve shown in Fig

参照

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