Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
修理のためのクラスプを義歯床に組み込む時,義歯床研
磨面から削去するか,粘膜面から削去していくかの基準
を教えてください。
Author(s)
古屋, 克典; 山下, 秀一郎
Journal
歯科学報, 118(1): 38-39
URL
http://hdl.handle.net/10130/4453
Right
Description
1.はじめに パーシャルデンチャーを使用している間に加齢に 伴う顎堤の変化,残存歯の状態の変化,義歯の劣化 や人工歯の摩耗,支台装置の変形などにより口腔内 とパーシャルデンチャーとの間に不調和が生じるこ とがある。それにより,義歯床の破損,人工歯の脱 離や咬耗,支台装置の破損や不適合などが生じるこ とがある。 その中でも支台装置であるクラスプやレストの破 折や変形は金属疲労によって起こることが多い。そ の背景にはクラスプの走行が不適切である場合や, レストの厚みが不十分である場合,さらには患者の 不適切な取り扱いや過大な咬合力が関係する。 対処方法としては,支台装置の交換による義歯修 理が第一選択となる。それには,ワイヤークラスプ をチェアーサイドで屈曲して義歯に組み込みをする 直接法,義歯を装着せずに支台歯の印象採得した後 に新しい支台装置を製作し,次回の来院時に組み込 みを行う一部間接法,義歯の取り込み印象をして支 台装置の製作と義歯への組み込みまでをラボサイド で行う間接法などがある。さらに,複合的な方法と して,クラスプ鉤脚の走行を予測し,義歯床研磨面 を大きく削去し,義歯を装着したまま印象採得し, 作業用模型上で支台装置の製作を行い,次回の来院 時に義歯に組み込む方法がある。 2.修理の手順 1)義歯の適合が良好で,義歯床研磨面にクラスプ の鉤脚の設定ができる場合(図1・複合的な方法 によるクラスプの組み込み) a)破損した支台装置(クラスプ)を義歯床から鉤 脚ごと取りのぞく。その際に義歯床粘膜面を削 合しすぎないように留意する。 b)新たなクラスプの鉤脚の走行を予測し,義歯 床研磨面を大きく削去する。 c)義歯が定位置にあることを確認し,義歯を装 着したまま印象採得を行う。 d)出来上がった作業用模型上で支台装置(クラ スプ)の製作を行う。 e)チェアーサイドにて即時重合レジンを用いて 支台装置(クラスプ)の組み込みを行う。 f)硬化後,形態修正・研磨を行う。 2)義歯の適合が不良かつ,義歯床研磨面にクラス プの鉤脚の設定ができない場合(図2) a)義歯を未装着の状態で印象採得を行い,作業 用模型を製作する。 b)作業用模型上で歯槽頂上に鉤脚を走行させ, 支台装置(クラスプ)を製作する。
臨床のヒント
Q&A
有床義歯補綴系
Q&Aコーナーは,東京歯科大学の3病院の臨床研修歯 科医から寄せられた質問に対しての回答です。回答は本 学3施設の専門家にお願い致します。内容によっては基 礎や臨床,あるいは歯科や医科と複数の回答者に依頼す る場合もあります。毎号掲載いたしますので,会員の皆 様もご質問がございましたら,ぜひ東京歯科大学学会ま でeメールかファックスで依頼していただきたいと存じ ます。必ずご期待に添えることと思います。今号は局部 床義歯の修理に関する質問です。Question
修理のためのクラスプを義歯床に組み込む時,義歯床研磨面から削去するか,粘膜面から削去 していくかの基準を教えてください。Answer
38 歯科学報 Vol.118,No.1(2018) ― 38 ―c)チェアーサイドにて破損した支台装置(クラ スプ)を義歯床から鉤脚ごと取りのぞく。 d)新しい支台装置(クラスプ)の鉤脚の走行を考 慮し,義歯床粘膜面を削去する。 e)即時重合レジンを用いて支台装置(クラスプ) の組み込みを行う。 f)硬化後,形態修正・研磨を行う。 3.おわりに 義歯床の適合状態,金属床義歯や補強線などの金 属構成要素の位置によって,鉤脚の走行を義歯床研 磨面にするか,義歯床粘膜面にするかを考える必要 がある。義歯の適合状態に問題がない場合には可能 な限り義歯床粘膜面を削去することは避けたい。 パーシャルデンチャー(特に遊離端義歯)は被圧変位 性の大きく異なる支台歯と顎堤粘膜を対象とするた め,義歯の取り込み印象を行い支台装置の製作と義 歯への組み込みまでをラボサイドで行う間接法よ り,作業用模型上で支台装置(クラスプ)を製作し, チェアーサイドで組み込みを行うことが望ましいと 考える。患者には,支台装置を製作する期間は不自 由をかけることを事前に説明し,納得してもらうこ とも大切である。支台装置(クラスプ)の組み込みに あたっては,あらかじめ義歯床を削去しておくが, ある程度の広い範囲を削去することにより口腔内で 直接組み込む際の支台装置(クラスプ)の位置付けの 自由度が高まり修理が容易となる。 パーシャルデンチャーの破損は部位や内容によっ て修理の方法と用いる材料は様々である。よく原因 を究明し,それに対して適切な修理の方法を考え対 応することが望ましい。 Answer:古屋克典,山下秀一郎 東京歯科大学パーシャルデンチャー補綴学講座 図2 図3 金属構成要素の位置によって,鉤脚の走行を義歯床研磨面に設定できない(図 2)。その場合には義歯床粘膜面に鉤脚を設定する必要がある(図3)。 図1 複合的な方法 鉤脚の走行が義歯床研磨面に設定できる場合は義歯床研磨面を削去し,口 腔内に装着したまま印象採得を行う。 歯科学報 Vol.118,No.1(2018) 39 ― 39 ―