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地域における縦断的研究のすすめ注1)—マイクロ–マクロ関係を踏まえた時系列的データの分析—

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Japanese Journal of Community Psychology, 2020, Vol. 23, No. 2, 78–86

地域における縦断的研究のすすめ

注1)

—マイクロ–マクロ関係を踏まえた時系列的データの分析—

加藤 潤三 *

1 *1 立命館大学 1. は じ め に 本論文(報告)では、地域コミュニティを捉 える視点として、地域の歴史性と文化性に着目 し、「縦のつながり」と「横の広がり」を持った 心理学的なコミュニティ研究の展開について、 話題提供させていただきます。具体的には、琉 球大学の心理学教室において過去40 年以上に わたって実施されてきた『復帰不安(社会不安) 研究』のデータの一部を例としながら、マイク ロ–マクロ関係を踏まえた時系列的データの分 析について話をさせていただきます。また最 後に、沖縄をフィールドに10 年近く研究をし てきた経験から、個人的な視点ではあります が「地方に在って研究すること」の意義と困難 さについても話をさせていただければと思いま す。 2. 地域を捉える視点 地域の環境的、文化的、社会的な要因は、そ の地域の構造に影響を及ぼすだけでなく、そこ で生活する地域住民の意識や行動にも影響を及 ぼします。また翻って、地域住民の意識や行 動が、その地域の環境、文化、社会の形成に影 響を及ぼすことがあります。このように地域の 中には、地域の環境、文化、社会といったマク ロな要因と、住民の意識や行動といったマイク ロな要因があり、両者は相互に関連しあった関 係—マイクロ–マクロ関係(亀田・村田,2000) にあります。心理学ではマイクロ要因により多 くの関心が集まりますが、地域を分析する上で は、コミュニティレベルのマクロな要因も併せ て検討することが重要になります。 ただし地域を捉えるといった場合、ある時代 の社会には、その時代の環境的・文化的・社会 的要因が影響を及ぼしているわけですが、そこ から時間が経過した現在の社会では、今現在の 環境的・文化的・社会的要因が影響しているの はもちろんのこと、過去の地域の状態も今の地 域に影響を及ぼしています。例えば、炭鉱で 町が栄えていた(T1)が、廃坑によって地域が 衰退し(T2)、今や地域が過疎化している(T3) といった場合、今現在の T3 を把握するために は、その地域がたどってきた変遷—T1・T2 と いった地域の歴史性を踏まえた検討が重要にな ると考えられます。 3. 地域における縦断的研究 住民の視点から、地域の歴史的・時間的な変

連絡先: 加藤 潤三 立命館大学 [E-Mail: [email protected]

地方と都市のコミュニティを考える

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化を捉える具体的な方法として縦断的な研究ア プローチが考えられます。むろん心理学の中で も縦断的研究というのは様々行われており、健 康、臨床、教育、発達の領域では研究が多く見 受けられます。 では、地域コミュニティにおける縦断的な心 理学研究となると、本邦では災害(特に震災関 連)に関する研究が比較的散見されます(例え ば矢守・林・立木ほか,2003; 兪・松井,2015 など)。これらの研究では、災害といったイ シューに基づき、それが発生した地域がフィー ルドとなって研究が展開されていきます。この 災害などは、地域において突発的・偶発的に発 生したイシューと言えますが、地域コミュニ ティにおける縦断的研究の中には、地域の基本 構造やより広範な社会構造の変化など、歴史 的・時代的な変遷の中で地域が直面してきたイ シューに基づいて研究が行われてきたものも あります。例えば上笹・菱山・堀(1987)や上 笹・堀(1993)は、都市化による地域の基本構 造の変化と、在来住民の生活様式や価値意識・ 態度・行動の変容を検証することを目的に、筑 波研究学園都市をフィールドに10 数年にわた る(1976∼1988)長期縦断的研究を行っていま す。また下北半島出身者の職業的社会化過程 に関する研究(安倍・田中・石郷岡ほか,1967; 細江,1992, 2009; 小野澤・鈴木・細越,2018) では、社会変動と職業的社会化の関連や発達過 程の段階による変化を検証することを目的に、 50 年以上(1963∼)にわたる長期縦断的研究が 実施されています。この研究では、面接調査を 主たる方法とした長期追跡調査となっており、 研究拠点や研究者を引き継ぎながら研究が継続 されています。 また著者が所属していた琉球大学の心理学 教室においても、沖縄をフィールドに1972 年から現在進行形で継続している長期縦断 的研究があります。それが復帰不安(社会不 安)の研究です。この研究では、「米国の占 領下におかれ、過酷な社会状況を経験した沖 縄住民が祖国復帰をどのように評価・意味 づけしたかについて明らかにすること(与那 嶺・名城・東江ほか,1981)」を目的に、沖縄 が 祖 国 復 帰 し た1972 年に第1 回目の調査が 開始されました。それ以降、「復帰後の沖縄 の社会でおきた変化の諸相を住民の意識の変 化を通してとらえ、その意味を検討する(名 城・東江・東江ほか,1985)」ために、10 年間 隔(1982, 1992, 2002, 2012)でこれまでに計5 回 の調査が実施されています。それぞれの調査結 果は、以下の論文、報告書にまとめられていま す(文献の詳細は引用文献に表記)。 第1 回調査:与那嶺松助・名城嗣明・東江康治 ほか(1981)復帰不安の研究:沖縄の施政権 返還をめぐって 第2 回調査:名城嗣明・東江康治・東江平之ほ か(1985)復帰不安の研究2: その復帰後10 年 の変遷 第3 回 調 査: 東 江 平 之・ 芳 澤 毅・ 中 村 完 ほ か(1994)復帰不安の研究 III: その構造と変 化 第4 回 調 査: 中 村 完・ 芳 澤 毅・ 遠 藤 光 男 ほ か(2005)復帰後沖縄における社会不安に関 する継続的研究 第5 回調査:財部盛久・遠藤光男・田中寛二ほ か(2013)沖縄における社会不安に関する継 続的研究:復帰後40 年の変遷 4. マイクロ–マクロ関係を踏まえた時系列的 なデータ分析:復帰不安研究のデータを例に 上記の研究のように、特定の地域に密着しな がら長期に渡って調査を継続してきた心理学的

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研究は、現状希少な研究例と言えます。これら 長期縦断的研究によって得られたデータは、当 該地域住民の心理的傾向の時間的な変遷を示す 貴重な資料となります。ただしこれまで行われ てきた長期縦断的研究では、住民の態度や行 動の時系列的な変化、地域内比較、モデル化な ど、住民から得たマイクロデータの分析が中心 となっていました。しかし地域を分析する上で は、コミュニティレベルのマクロな要因も併せ て検討することが重要であり、島田(1992)も 「歴史的に根深いものであるなら客観的状況と 密接な関係がある筈で、またその関係が洞察さ れてこそ、それが根深いものであると考えるこ とができる」と指摘しています。つまり縦断的 研究においても、マイクロ–マクロ関係を踏ま えた時系列的な分析をすることで、歴史性・文 化性双方の視点から、より包括的に地域を捉え られるようになると考えられます。 そこで本研究は、先に紹介した復帰不安研究 のデータの一部を使用して、マイクロ–マクロ 関係を踏まえた時系列的なデータの分析を試み たいと思います注2)。具体的には、沖縄県民の 復帰不安(=マイクロなデータ)の時系列的な 変化について、客観的な統計指標や社会的な出 来事(=マクロなデータ)と関連付けながら検 討したいと思います。そのためにもまず復帰不 安研究の概要を述べると、この研究では沖縄の 祖国復帰に伴う当時の沖縄県民の不安を、復帰 運動の3 本柱に沿って設定された3 つの不安— 戦争不安・自治不安・人権不安—から実証的に 検証することを目的に研究が行われてきまし た。本研究ではこのうち、人権不安注3)を例に 分析を行ってみたいと思います。 1) 人権不安のマイクロデータの傾向 最も直近に実施された第5 回調査(財部・遠 藤・田中ほか,2013)の結果、沖縄県民の人権 不安は図1 のようになりました。データの見方 について補足すると、質問項目の内容とそれ に対する回答の方向性から、悲観傾向を示す P 値と楽観傾向を示す O 値を算出します。P 値 の高さは人権不安の高さを示しており、逆に O 値は高くなるほど人権不安は低くなります。ま た両者の差分である P–O 差は、相対的な人権 不安の高さを示しており、値が正(負)であれば 人権不安が高い(低い)ということになります。 結果に戻ると、人権不安の P–O 差は、1972 年 図1 人権不安の時系列的変化(財部・遠藤・田中ほか,2013 より引用)

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は正の値でしたが、1982 年、1992 年には負の 値になり、2002 年以降は再度正の値になりま した。つまりマイクロデータから見た沖縄県民 の人権不安は、復帰当初、悲観傾向にありまし たが、その後しばらくの間は楽観的な傾向に変 化しました。しかし2002 年からは再び悲観傾 向になり、さらに2012 年には P 値が最大にな るなど、人権不安が飛躍的に高まりました。 2) 人権不安と米軍基地関連の統計資料との 対応 まず沖縄の人権の問題を理解するために沖縄 が祖国復帰する前の歴史から遡ると(以下、新 城(2014)を参考に記述)、1945 年、鉄の暴風と 呼ばれ、県民犠牲者約15 万人を出した沖縄戦 が終結しました。その後27 年もの間、沖縄は 米軍政府の施政権下におかれましたが、この間 に発生した米軍による様々な事件や事故(例え ば宮森小学校米軍機墜落事故(1959)や国場君 轢殺事件(1963)など)は、沖縄の人々の生命を 脅かし、人権を侵害してきました。当時の軍政 府と沖縄の関係を表す言葉として、「沖縄が独 立しない限り、沖縄住民による自治政治は神話 である(キャラウェイ高等弁務官)」といったも のがありますが、この言葉からもいかに沖縄の 人々の権利が剥奪されてきたかがわかります。 1972 年、沖縄は祖国復帰を果たしましたが、 米軍基地が存続したことにより、基地とそれに 伴う事件や事故、さらには米軍人・軍属による 犯罪は、日米地位協定の問題も相まって、今な お現在進行形で沖縄の重大な社会問題となって います。そこで、米軍人・軍属及びその家族に よる刑法犯検挙件数に関する統計資料(沖縄県 知事公室基地対策課,2018: 表1)をみると、刑 法犯の検挙件数は復帰した1972 年が最も多く、 その後は調査年および調査期間にあたる10 年 ごとの集計でも、1992 年までは減少傾向にあ ります。この間の検挙件数と人権不安の間に は、相似した数値変化のパターンを見て取る ことができます。一転、2002 年以降、再び人 権不安が高まりました。調査年である2002 年 に検挙件数が増加しており、このことも人権不 安の増加に関連があると考えられますが、よ り顕著な点として米軍基地関係の事件・事故 が2002 年以降、激増しています。米軍基地関 係の事件や事故では、日米地位協定の壁によっ て、日本側が捜査や検証することができない ケースも多くありますし、沖縄県による再三の 申し入れや抗議にもかからず、同じような事件 表1 沖縄における米軍関係の事件・事故、犯罪の件数

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や事故が繰り返されることがあります。このよ うな状況が、人権不安の増加と関連しているの ではないでしょうか。 3) 人権不安と社会的な出来事との対応 次に人権不安と社会的な出来事との対応に ついて見てみると、先の刑法犯とも関連しま すが、1995 年に米兵による小学女児暴行事件 が発生しました。この事件は沖縄県民に大きな ショックを与え、事件に抗議し、日米地位協定 の見直しを求めるための沖縄県民総決起大会 (県民大会)が開催されました。県民大会とは、 いわば大規模なデモであり、人権や自治の回復 を求める集合行為として機能していると考えら れます。 復帰以降の県民大会の開催状況を見ると、上 記の小学女児暴行事件に端を発する県民大会 以降、参加者数が1 万人以上の大きな県民大 会注4)は2012 年までに9 回開催されています (表2)。なお9 回のうち1 回は、市民大会(宜 野湾市)として開催されていますが、これは沖 縄国際大学に米軍の大型ヘリが墜落した事故に 対する抗議として開かれたものです。この事故 が発生したのは2004 年であり、米軍基地関係 の事件・事故が急増した時期に起こったものに なります。 以上のように、1995 年以降、悲惨かつ象徴 的な米軍基地関連の事件や事故、犯罪が発生 したことで、2002 年調査以降の人権不安が高 まったと考えられます。またこれらの事件や事 故を契機に、米軍人・軍属に対する沖縄県民の 目はより厳しいものになりましたが、同じよう な事件や事故が県民の日常生活の中で繰り返 されています。こういった変わらない現状に 対し、沖縄県民の人権不安がさらに高まった (2012 年の P 値)と考えられます。なお他の県 民大会のトピックスを見ると、普天間基地の県 内移設に反対するものが多くありますが、2012 年に普天間基地の県内移設に対する日米合意が なされました。沖縄の声が届かず、切り捨てら れている状態からも県民の人権不安が高まった と考えられます。 5. 地域における縦断的研究の重要性 安倍(1956)は、微視的視点と巨視的視点の 両者を構造的に把握できる中間的接近法として 地域の重要性を指摘しており、また細江(1994) も、地域研究は主体的な生活空間特質と地域特 性が構造的に把握できる範囲から接近されなけ ればならないと述べています。つまり地域研究 においては、住民個人の心理と地域の環境的、 文化的、社会的な要因と間のマイクロ–マクロ 関係を包括的に捉えることが重要であり、本研 究ではこの関係について、縦断的に測定された 個人のマイクロデータと、その当時の統計資料 表2 復帰以降開催された県民大会(参加者数1 万人以上のもの)

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や社会的な出来事といったマクロデータを突き 合わせる形で検討を進めてきました。その結 果、沖縄県民が感じる人権不安は米軍基地関連 の統計資料や社会的出来事と相似する形で増減 すること、すなわち沖縄社会の変化と県民の心 の変化が対応することが示されました。Bron-fenbrenner(1979)の生態学的アプローチの観点 から言えば、個人(沖縄県民)というマイクロ レベルと、沖縄というコミュニティレベルのエ クソシステム、さらには日本・米国を含んだよ り広範なマクロシステムとの相互関連性が検討 されたということになると思われます。 なお心理学分野における地域研究ということ で言えば、これまでにも数多くの研究がなされ ていますが、多くの研究は一度限りの横断的な 調査によって実施されています。これら横断的 研究においても、住民の態度や行動に対する要 因連関を検討するために、様々な統計的手法が 駆使されていますが、横断的調査では変数間の 時間的先行性に関する情報を得ることができな いため、その因果関係を明確に同定することが できません。そのため、調査において因果関 係をより確からしく推定するには、縦断的調 査の方が利用価値が高いこと(高比良・安藤・ 坂元,2006)が指摘されています。このことか ら考えると、マイクロ–マクロ関係の検証にあ たっても、本研究で行ったような縦断的調査の 方が、「なぜある調査時点における調査協力者 がそのような心理的態度を持つようになったの か」を、マイクロデータの変化からも、また調 査ごとの間隔で得られるマクロデータからも推 定することが可能になると考えられます。 ただし本研究で実施した分析方法の重要な点 として、マクロデータとしてどのような統計指 標や社会的出来事を設定するのか、その設定方 法の問題があります。今回は人権不安に関連す るマクロデータとして米軍基地関係の事件や事 故、犯罪の件数、県民大会を取り上げました が、もちろん別のマクロデータを設定すること もできます。実際問題として、マクロデータと して何を設定するかには研究者の恣意性が含ま れています。そしてこれを完全に排除すること は困難ですが、設定したマクロデータに内容的 な妥当性があるよう、現実の社会状況を洞察す るとともに、歴史的な経緯も踏まえながら分厚 く記述することが重要であると考えられます。 また結果の分析にあたっても、より客観性を保 証できる方法を検討する必要があります。例え ば、個人のマイクロ要因に対するマクロ要因の 影響を分析する方法としてマルチレベル分析 があり、横断的研究では様々な研究例(例えば Uchida, Takemura, Fukushima et al., 2019; 吉澤・ 吉田・中島ほか,2019 など)もありますが、縦 断的研究においてもパネル調査であれば潜在曲 線モデルなどによって検定を行うことが可能で す。縦断的調査によって地域研究を実施してい く際には、適応可能な分析も想定したうえで、 どのような形でデータを収集するのかを最初か ら綿密に計画しておくことが重要であると言え ます。 このように長期間に渡って縦断的調査を行う には、様々な問題点を考慮する必要があります が、最後に地域における縦断的研究のさらなる メリットを挙げておきたいと思います。本来、 このようなことがあるのは望ましくないのです が、例えば大規模災害など地域に大きな社会 変動があった時、データが縦断的に蓄積されて いれば、その前後を比較することで、住民の地 域コミュニティに対する態度や行動がどのよう に変わったかを知ることができます。つまり地 域のデータアーカイブとして、地域を診断する ツールとしても使用可能であると考えられます。

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6. 地方に在って研究するということ 私自身、約10 年間沖縄に居て、ひたすら沖 縄をテーマにした研究を行ってきました。この ように「地方に在って研究をする」といった中 で、個人的に考えたこと、思ったことを、最後 にお話しさせていただきます。 沖縄にいた10 年の間に、研究としてできる こととできないこと、双方たくさんありまし た。中に在ってできたこととしては、やはり地 域の中で協力が得られやすいことと、結果を解 釈する時に生活者視点を盛り込むことができる ようになったということです。来沖する前から 沖縄の研究をしてはいましたが、その時は理論 を現実に当てはめる形でのアプローチ、それも 特に生活者視点を伴わない形での仮説検証を 行っていたような気がします。理論からアプ ローチすることが悪いわけではないのですが、 地域研究というスタイルで見た場合、「ここは 違っていた」と反省することが多々ありまし た。やはり一番感じたのは、半端さに対する怖 さというものです。沖縄はこれまで話してきた ように、悲惨な戦争体験も含め、負の歴史を背 負っています。そのような歴史を理解して研究 をしないと、半端なことを言って沖縄の人たち を傷つけてしまうことがあります。そしてその 半端さは、他者を傷つけるだけでなく、研究的 な不完全さにもつながっていきます。地域の中 に在って行う研究というのは、単にその地域を フィールドとするだけでなく、研究者自身もそ の地域の中で一市民として生活しながら研究す ることになります。地域を研究者的・生活者的 双方の視点から理解し、踏まえることでより実 感と理屈を取り合わせていけるようになると思 います。 次に地方に在ってできなかったこと、と言う よりはずっと悩んだことがあります。私がやっ ていた移住者研究の中での、ある調査対象者の 言葉がそれを端的に表しているのですが、「沖 縄の人は玄関は広いけど、中に入れない」と いったものがありました。このような思いは、 どの地方であっても、外部から来た人間は少な からず経験することだと思いますが、沖縄の場 合、本土出身者がヤマトンチューやナイチャー といって区別されるように、この傾向がより顕 著かもしれません。そういった中で、調査でイ ンタビューなどをするわけですが、「対象者が 本当に内面から語ってくれているのか」という 思いは常に頭の片隅にちらついていました。そ うならないためにもラポールが大事なのはもち ろんですが、本土出身者との区分(東江(1991) のいうところの差意識)がある中で、そのラ ポールが本当にできているのかということにも 不安を感じることがありました。それでも何と かラポールをとる努力をした結果、調査対象者 は様々なことを語ってくれるようになるわけで すが、その語りを背景的な意味合いや沖縄の文 化・風習まで含めて理解できているかという点 にも悩んだりしました。 このように考えると、地方の研究はその地方 に在って、根を張っていないとできないことに なりますが、もしそうであるならば、その地方 にいない研究者は当該地方の研究ができないこ とになります。むろんそのようなことはないわ けですが、特定の地方を母集団として研究に取 り組むには、その地方の人たちと向き合い良質 なデータを収集すること、結果を解釈する上で その地方の文化性や社会性、そして歴史性に対 する深い造詣は欠かせないということを結論と して、話題提供を終わらせていただきます。 文 献 安倍淳吉 1956 社会心理学 共立出版.

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安 倍 淳 吉・ 田 中 康 久・ 石 郷 岡 泰・ 大 橋 英 寿  1967 下北半島における青年期の社会化 過程に関する研究.九学会連合下北調査 委 員 会(編)  下 北 — 自 然・ 文 化・ 社 会  489–542.平凡社. 東江平之 1991 沖縄人の意識構造 沖縄タイ ムス社. 東江平之・芳澤毅・中村完・大膳司・田中寛 二・大城冝武・福山逸雄 1994 復帰不安 の研究 III—その構造と変化.琉球大学法 文学部(報告書). 新城俊昭 2014 教養講座 琉球・沖縄史 東 洋企画.

Bronfenbrenner, U. 1979 The ecology of human

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参照

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