私と図書館--文献探索のことなど
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(2) 驚 愕 して 夢 か ら覚 め る 場 面 を描 い た の が 、 漱. 本文 学 の 自然 観 』(英宝 社 、1996)を. 石 の 『彼 岸 過 迄 』 の 「須 永 の話 」 で あ る。. 多 くの貴 重 な 資 料 の お 世 話 に な っ た し、 ま た. この 『ゲ ダ ン ケ』 が 漱 石 の 小 説 『こ こ ろ』. 書 く際 に も、. 最 近 出 した拙 著 『「岬 」の 比 較 文 学. 近代 イ. と深 い 関係 が あ る こ と を最 初 に指 摘 した の は 、. ギ リス 文 学 と 日本 文 学 の 自然 描 写 をめ ぐっ て』. 比 較 文 学 の 先 輩 で 、 『定 本 上 田敏 全 集 』 の 編. (英 宝 社 、2006)執. 集 者 で もあ る剣 持 武 彦 氏 で あ っ た 。 私 は 、 こ. 風 靡 し なが ら、 今 で は忘 れ 去 られ て し ま っ て. れ は 『彼 岸 過 迄 』 の 「須 永 の 話 」 が 元 で 、 そ. い る大 正 時 代 の 紀 行 文 作 家 た ち 大 町桂 月 、 吉. 筆 に あ た っ て も、 一 世 を. こ で は 白 昼 夢 で 実 現 し な か っ た殺 人 が 、 実 行. 田 絃 二 郎 、 吉 江 孤 雁 な どの 紀 行 文 、 た と え ば 、. に移 さ れ た の が 、 漱 石 の 『こ こ ろ 』 で あ る と. 桂 月 の 『行 雲 流 水 』(博文 館 、 明43)を. 解 釈 した 。 そ して そ れ を論 文 に し、 さ ら に は. は じめ 、. 『関東 の 山水 』、 『 箱 根 山』、 『大和 田湖 』 な ど、. 拙 著 『漱 石 を比 較 文 学 的 に読 む 』(近代 文 芸 社 、. また 絃 二 郎 の 「霧 島 紀 行 」、 「山 を懸 ふ 」な ど を. 2000)に. 収 録 した 『現代 日本文 學学 全 集』(改造社 、 昭4)、. も収 録 した。. さ て 、 話 は 回 り く ど くな っ た が 、 拙 著 出 版. あ るい は孤 雁 の 「自然 美 論 」(大15)を. 収録 し. の折 に 、 東 北 大 学 付 属 図 書 館 で 漱 石 文 庫 を 閲. た 『現 代 日本 文 學 全 集 』(改 造 社 、 昭5)な. 覧 し て い て 発 見 した の が 、 在 る と は思 わ れ て. 利 用 させ て も ら っ た 。 天 理 大 学 付 属 図 書 館 は 、. い な か っ た 『ゲ ダ ン ケ 』 の 英 訳 で あ り、 そ の. 古 典 文 学 の収 集 で有 名 で あ る が 、 そ れ だ け で. タ イ トル は. A. Dilemma:. A. Story. Perplexity (Trans.. By J. Cournos.. Brown Bros., 1910. . Modern. of. は な い 。 明 治 を は じめ とす る近 代 文 学 の 文 献. Mental. Philadelphia:. Author'. ど、. も豊 富 で 、 私 な ど比 較 文 学 の 論 文 書 きで 困 っ た と きに は、 必 ず 寄 せ て も ら うこ とに して い る 。. s Series). い つ も期 待 を裏 切 らな い 。. あ っ た。 ま た拙 論 を書 く上 で 欠 く こ との で きな い 、. さ ら に近 畿 大 学 中 央 図 書 館 で 私 が 世 話 に な. しか も出 所 不 明 で あ っ た 剣 持 武 彦 氏 の 論 文. っ た の は 、収 書 ・整 理課 の 岡友 美 子 さ んで あ る 。. く夏 目漱 石 「こ こ ろ」 と上 田 敏 訳 ア ン ドレ イ. 私 の 元 同 僚 でつ い 数 年 前 に逝 去 したD.H.ロ. エ フ 「こ ころ」 〉(『 道 』 世 代 群 評社 、 昭56). ンス(D.H.Lawrence)の. を 入 手 す る の に 骨 を折 っ て くれ た の が 、 近 大. た 朝 日千 尺 氏 の 膨 大 な ロ レ ン ス 文 献 を寄 贈 し. 中央 図 書 館 相 互 利 用 係 の 熊 井 あつ さ さ ん で あ. た い とい う御 主 人 の 申 し出 を受 け て 私 が 仲 介. っ た 。 剣 持 氏 か ら あ とで 、 よ く探 して くれ た. を させ て 頂 くと、 岡 さ ん は 、 中 央 図書 館 に ロ. レ. 研 究 者 と して知 られ. と感 謝 され た が 、 こ れ で 二 人 して 漱 石 文 学 に. レ ン ス コ ー ナ ー を設 置 し、 そ の 蔵 書 の 保 管 に. お け る ア ン ドレー エ フの 影 響 力 の 大 き さ を あ. 尽 力 して くだ さ っ た 。 こ れ で 中 央 図書 館 は 、. る程 度 証 明 で きた の で は な い か と思 っ て い る。. 世 に誇 れ る ロ レ ンス 文 学 関 係 の 貴 重 な 資 料 の. ア ン ドレ ー エ フ の話 が 出 た つ い で に 、 天 理. 宝 庫 と な っ た 。 内外 の 研 究 者 に も是 非 利 用 し て も らい た い 。. 大学 付属 図書館 には、他 に見 られ ないア ン ド レー エ フ の 翻 訳 が 蔵 書 さ れ て お り、 拙 論 を書. も う一 つ 岡 さ ん に は 、 古 書 の修 復 で 、 個 人. く際 に も、 大 い に参 考 に させ て も ら っ た こ と. 的 に もお 世 話 に な っ た こ とが あ る。 これ も最. を述 べ て お きた い 。 た とえ ば、 中村春 雨 課 『 沈. 近 の こ とで あ るが 、 春 先 で あ っ た で あ ろ うか 、. 黙 』(杉本 梁 江 堂 、明42)、 同訳 者 に よ る 『 信仰」. 何 気 な くテ レ ビ を 見 て い る と、 古 書 の 修 復 を. (杉本 梁 江堂 、 明42)あ. るい は伊藤 欽 二課(『 救. 専 門 に や っ て い る工 房 の 紹 介 が あ っ て 、 私 は. ひ な き祈 り』(杉 本 梁 江 堂 、 大10)、 長 谷 川 二. 古 書 狂 い な の で 、 途 中 か らで あ っ た が 、 魅 入. 葉 亭 澤 『血 笑 記 』(赤 い笑 い)(易 風 社 、 明41). られ て しま い 、 も しや と思 っ て い る と、 期 待. な どで あ る。. に違 わず 近 畿 大 学 中央 図書 館 の映 像 が 出 て きて 、. そ の 他 、 天 理 大 学 付 属 図書 館 に は、 これ ま で 拙 著 『山 頂 に向 う想 像 力. 期 待 の ご本 人 が 登場 した の に は 驚 い た 。. 西 欧文学 と 日. とい う の も、 私 は イ ギ リス に 出 か け る と、. 7.
(3) 必 ず 気 が 狂 っ た よ う に 古 書 店 巡 り を して 、 カ. も う懲 り て い る か ら 、 日 本 で は と て も 本 物. ー フや ラ ム ・ッ リ ー と呼 ば れ る よ う な絶 品 の. の 古 書 修 理 な ど 出 来 る者 は い な い と諦 め て い た 。. 革 装 丁 の古 書 を収 集 す る こ と に して い る 。 と. と こ ろ が 、 で あ る 。 最 近J.S.ミ. は い っ て も、 時 間 とお 金 の な い者 の 場 合 で あ. の. るか ら、たか が知 れた話 で はある。以前 オー. あ り 、 こ れ を 読 ん で い く う ち に 、 驚 く べ き事. 『自伝 』(珈'・6∫ ・gr⑫伽1873)を. ル(J.s.Mill) 読 む 機i会 が. ク シ ョ ン で 落 と し た サ ー ・ウ オ ル タ ー ・ス コ ッ. 実 に直 面 した 。 父 親 の 信 奉 す る ベ ン タ ム流 の. ト(SirWalterScott)の. 厩 吻. 功 利 主 義 経 済 論 を 叩 き込 まれ 、 幼 い 頃 か らイ. No78Z&1857)の. 全 集25巻(T〃8〃. 一 冊 の背 表 紙 が 傷 んで い て、. ギ リス き っ て の 英 才 教 育 を施 され て きた 合 理. こ れ を い い 加 減 な修 理 屋 に 頼 ん だ ら、 背 表 紙. 主 義 者 ミル が 、 青 年 期 に 達 す る と、 も う 自 分. を簡 単 に剥 さ れ 、 何 の こ とは な い 、 改 め て 貼. に は モ ノ に感 じる とい う感 覚 が 麻 痺 し、 無 く. り付 け ら れ た だ け で 帰 っ て き た 。 そ の 他 に も 、. な っ て し ま っ た の で は な い か と思 い 、 絶 望 の. 大 切 な ヘ ン リ ー ・ジ ェ イ ム ズ(HenryJames). 淵 に沈 倫 す る よ う に な る 。 こ の と き ミ ル を そ. の初 版 本. 〃伽'M諮. ∫6κ7z伽(1897)、.48〃3α. 〃. の 絶 望 の 淵 か ら救 出 した 書 物 が 二 つ あ っ た 。. B(≧yαπ40渉〃即r5(1913)、T〃6Go146πBo測1(190. そ の 一 つ が 、 フ ラ ン ス の 政 治 家 で あ り文 人 で. 4)な. あ っ た マ ー モ ン テ ル(Marmontel)の. ど の 修 復 を 依 頼 し た ら 、 表 紙 を 取 り外 し. 『自伝 』. て 、 新 品 に入 れ 替 え られ て し ま っ た 苦 い 経 験. で あ り、 も う一 つ は イ ギ リス ロ マ ン派 の 巨 匠. が あ る。. ウ ィ リ ア ム ・ワ ー ズ ワ ス(W且li㎜Wordsworth) の詩集であった。 マ ー モ ン テ ル は 田 舎 の貧 しい 家 の 出 で あ っ. J.S. Mill, Autobiography (Longmans, Green, Reader, and Dyer, 187 3.U&). Poems of William Wordsworthed.by Robert Aris, Willmot (George Routledge &Co, 1856).
(4) た が 、 父 親 が 生 き て い る 問 は 近 くの 学 校 の 寄. の 英 訳(1晩. 宿 舎 に 入 り、 い ず れ将 来 は 牧 師 に な ろ う とい. 5)の. 〃z・ 〃∫⊆ ゾMα 捌 ・ηオ4Englishtran.,180. 初 版 本 全 四 巻 を入 手 した私 は 、 そ の 一 巻. う大 志 を抱 い て勉 学 に 勤 しん だ が 、 や が て 突. 目を早 速 拡 大 コ ピー す る こ とに した。 ところ が 、. 然 父 親 が な くな り、 母 親 を は じめ 弟 妹 の 生 計. で あ る 。 永 の 年 月 開 け て も見 ら れ な か っ た 古 書 、. を 一 身 に 背 負 い 、 代 理 父 と し て生 き て い か ね. 恐 ら く ミ ル 自身 が 手 に と っ て読 ん だ か も しれ. ば な らず 、 丁 稚 奉 公 の よ う な こ と を して独 学. な い そ の 書 物 を、 こ と もあ ろ う に ガ バ と 開 い. で 苦 労 しなが ら牧 師 を 目指 す そ の 主 人公 の姿 が 、. て コ ピー 機 に か け た の で あ る か ら 、堪 っ た も. ミル の 心 を打 っ た の で あ った 。 そ れ と も う一 つ 、. の で は な い 。 バ ラ バ ラ に 解 体 して し ま っ た 。. ワ ー ズ ワ ス の 詩 に感 動 し涙 を流 した ミル は、. そ れ を 相 談 に 持 ち込 ん だ の が 、 中央 図 書 館 の. こ の よ うな 合 理 主 義 の 世 の 中 だ か ら こ そ 詩 が. 岡 さんの所 であ った。 それで 岡 さんの紹介 で、. 如 何 に大 切 で あ る か を思 い 、 詩 の教 育 の 大 切. 先 ほ ど の テ レ ビ に 出 て き た 古 書 修 理 工 房 「ア ト. さ を訴 え た パ ン フ レ ッ トや 詩 論 を 書 く こ と に. リ エ ・BOOK・. ク ン ス ト」に 依 頼 し て も ら い 、. な る の で あ る。1.T.化 と勝 ち組 蕎 地 の只 中 にい. 今度 は 、期 待 に違 わ ず見 事 に復 元 され た もの が 、. る わ が 国 の リー ダ ー に は 、特 に肝 に銘 じて 頂. 帰 っ て き た 。 そ して 、 そ の 工 房 の 主 、 板 倉 正. きたい ミル の言 葉 で あ る。. 子 さ ん か ら の伝 言 で 、 岡 さ ん か ら 、 この よ う. そ れ は さ て お き 、 な ぜ 古 書 と岡 さ ん か で あ るが 、 ミル 自伝 の 中 の 『マ ーモ ンテ ル の 自伝 』. な 古 書 は 、 コ ピ ー な ど して は い け な い そ うで 、 そ っ と優 し くい た わ る よ う に し て 読 む こ と 、 だ と教 わ っ た 。 女 性 も 古 書 も扱 い が 肝 心 で あ る と、 今 さ らな が ら肝 に銘 じた次 第 で あ る 。 最 後 に 、 イ ギ リ ス の ブ リ テ ィ ッ シ ュ ・ラ イ ブ ラ リー に 眠 っ て い る稀 襯 本 を私 が 発 見 した 話 を して 、 終 わ り に し よ う。 そ れ は 私 が こ こ 何 年 もか け て 研 究 中 の く ヴ ィ ー ナ ス と タ ンホ イ ザ ー伝 説 〉 を め ぐ る話 で 、 元 は とい え ば 、 私 が 漱 石 の小 説 るG.メ. 『行 人 』 で 兄 一 郎 が 取 り上 げ. レ デ イ ス(GeorgeMeredith、19世. 紀 イ. ギ リ ス小 説 家 で 、 い わ ば 漱 石 の小 説 の お 師 匠 さ ん)の. 書 簡 で 、 メ レ デ ィス が ヴ ィ ー ナ ス と. タ ン ホ イ ザ ー に言 及 して い る こ と に注 目 した か ら で あ る 。 そ れ で 、 そ の メ レデ ィ ス が 読 ん だ と手 紙 に い う タ ン ホ イ ザ ー の 詩 と は 、 ど の よ う な も の で 、 誰 が 著 者 な の か を調 べ る こ と に し た 。 そ の 詩 が 載 っ た と い う ポ ス ト紙 を は じめ 様 々 な文 献 を調 べ た が 、 判 ら な い で 困 っ て い る う ち 、 つ い にそ の 詩 は. 『タ ン ホ イ ザ ー. あ る い は 歌 合 戦 』(丁侃 肋 磁5670r伽Bα6〃6げ B伽45)と. 伽. い う 題 の 長 編 詩 で 、 ネ ヴ ィ ル ・テ ン. プ ル と エ ド ワ ー ド ・ ト レ ヴ ァ ー(Neville Temple&EdwardTrevor)と ームで書 かれ. Memoirs of Marmontel (English tran., Longman, Hurst, Reeds, and Orms,1805). 、1861年. い う二 人 の ペ ンネ 出 版 の 第 三 版 が ブ リテ. ィ ッ シ ュ ・ラ イ ブ ラ リ ー に 貴 重 本 と し て 保 管 され て い る こ と を発 見 し、 マ ク ロ フ ィ ル ム に.
(5) 撮 影 した もの を送 っ て も らい 、 読 む こ とが で きた 。 こ れ は感 動 的 で あ っ た 。 さ ら に この 詩 集 の 書 評 ま で も 、 当 時 の タ イ ム ズ 紙(1861年 8月2日)に. 掲 載 さ れ て い る こ と も わ か り、. こ れ も読 む こ とが で き た 。 も ち ろ ん 、 元 も との 関 心 の 出所 で あ る 漱 石 の. 『行 人 』 と の 関 わ り の 解 明 を は じ め と し て 、. 膨 大 な く ヴ ィ ー ナ ス と タ ンホ イ ザ ー 伝 説 〉解 明 に向 け て 、 苦 手 な ドイ ッ語 の 旧 い 文 献 を読 む べ く、 ま さ に 六 十 の 手 習 い を 始 め て い る と こ ろで あ る。.
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