• 検索結果がありません。

思考力育成からみた中学校創作授業の現状と課題 -日本伝統音楽を教材とした創作授業の場合-

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "思考力育成からみた中学校創作授業の現状と課題 -日本伝統音楽を教材とした創作授業の場合-"

Copied!
14
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)Title. 思考力育成からみた中学校創作授業の現状と課題 −日本伝統音楽を教 材とした創作授業の場合−. Author(s). 兼平, 佳枝. Citation. 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 59(2): 57-69. Issue Date. 2009-02. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/963. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第59巻 第2号 JournalofHokkaidoUniversityofEducation(Education)Vol.59,No.2. 平成21年2月 February,2009. 思考力育成からみた中学校創作授業の現状と課題 一日本伝統音楽を教材とした創作授業の場合−. 兼 平 佳 枝 北海道教育大学附属札幌中学校. ThePresentSituationandIssuesinCreatingMusicClassesatJuniorHighSchooIs fromtheViewpointofFosteringThinkingAbility −CasesofCreatingMusicwithTraditionalJapaneseMusicalMaterials−. KANEHIRA Yoshie. SapporoJuniorHighSchoolattachedtotheFacultyofEducation,HokkaidoUniversityofEducation. 概 要 本研究は,思考力育成の視点からこれまでの中学校音楽科の創作授業の現状と課題を明らかにし,思考力 を育成する創作の授業構成の指針を得ることを目的としたものである。今回は中学校の日本伝統音楽を教材. とした創作授業を研究対象とした。まず,音楽授業での思考力を「音楽的思考」とし,その位置づけと内容 について先行研究を整理し,「音楽的思考」の理論的枠組みを得た。つぎに,収集した創作授業事例17例お よび筆者による事例を「音楽的思考」の理論的枠組みより検討し,現状と課題を考察した。結果として,事 例の多くが子どもの思考過程とは切り離されたところで音操作をさせるものであるという現状が明らかとな り,子どもが思考過程と結び付けて音操作を行うためには,「内界」と「外界」との相互作用を意識化させ る学習過程を基盤とする授業構成が必要であるという指針を得た。さらに,「内界」と「外界」との相互作 用を意識化するために,日本伝統音楽を教材とすることは生活における生活経験や生活感情を呼び起こす点 で有効ではないかということが示唆された。. Ⅰ 研究の目的と方法 1問題の所在 平成20年3月に告示された新学習指導要領の改. 年1月の中教審の答申では,これら国際的な学力 調査の結果を踏まえて,基礎的・基本的な知識の 習得や思考力・判断力・表現力等の育成を含む7. 点が,改善の方向性として示された1)。この改善. 定の経緯には,OECD(経済協力開発機構)の. の方向性および音楽科改定の基本方針を受けて改. PISA調査等の結果が大きく影響している。平成20. 定された新中学校学習指導要領解説音楽編では,. 57.

(3) 兼 平 佳 妓. 指導のねらいをいっそう明確にし,生徒が感性を. 業での思考力を「音楽的思考」とし,その理論. 働かせて感じ取ったことを基に,思考・判断し表. 的枠組を得る。. 現する一連の過程を大切にし,音楽科の特性に即. (2)中学校における日本伝統音楽を教材とした過. した思考力,判断力,表現力などを育成する指導. 去10年間の創作授業の先行実践を「音楽的思考」. を求めている2)。. の枠組みより検討し,現状と課題を明らかにす. 音楽科における表現(歌唱・器楽・創作)・鑑. 賞の2領域4分野の学習活動の中でも,創作は生. る。 (3)(2)での現状と課題を踏まえ,思考力育成の視. 徒がイメージをもちながら音を操作し,つなげ,. 点から筆者の実践を分析し,創作授業における. 構成していく学習活動であるため,既存の楽曲を. 思考力育成に必要な創作の授業構成について考. 再表現する歌唱や器楽分野にも増して,思考力を. 察する。. 育成するために有効な学習活動であると考えられ. なお,本論における「日本伝統音楽」は,明治. る3)。しかし,国立教育政策研究所の「音楽等質. 以前に成立した音楽,および主としてその様式に. 間紙調査」によると,創作授業の実施状況は特に. 依拠する音楽とする7)。. 思わしくない状態である4)。新学習指導要領でも 奨励されているように,思考力育成に有効な創作 の授業実践を実現可能なものとしていくことは緊 急の課題であろう。 そこで,これまでの創作授業はどのようなねら. Ⅰ 音楽授業における思考力の捉え方の現状. 1音楽授業における思考力についての先行研究 まず,これまでに音楽授業における思考力はど. いで実践されたものなのか,果たして思考力育成. のように捉えられてきたのか,先行研究8)を整理. を考えたものになっていたのか,という疑問を. する。. もった。. 音楽の授業において,子どもが音を媒介として 表現する過程に働く思考は,特に「音楽的思考」. 2 研究の目的と方法 本研究は,思考力育成の視点からこれまでの中. と呼ばれることが一般的である。「音楽的思考」 が注目されるようになったのは,1960年代アメリ. 学校音楽科の創作授業における現状と課題を明ら. カの音楽教育改革であった。「マンハッタンビル. かにし,思考力を育成する創作の授業構成の指針. 音楽カリキュラム・プログラム」(Manhattanville. を得ることを目的とする。. MusicCurriculumProgram,以下MMCPと略. 今回は,中学校の日本伝統音楽を教材とした創. す。)は,その根拠に「音楽的思考」を置いている。. 作授業を研究対象とした。日本伝統音楽は,その. それについては,小島律子の研究がある9)。小島. 伝承において,時代や社会の変化に応じて,その. によると,MMCPでは「音楽的思考」という用. 地域や人々の生活,文化に合うように少しずつ変. 語について特に定義はしていないが,音・音楽に. 化を遂げながら現在に至っている5)という特質を. 即して考え進めるという包括的な意味合いで「音. もつといわれている。つまり,伝承が創作活動を. 楽的思考」という用語を使っているとしている。. 含んで行われているといえる。このことから,日. そしてMMCPの「音楽的思考」は,分析的思考,. 本伝統音楽を材料に創作活動をすることは生徒に. 批判的思考,創造的思考の3種類の「思考」を含. とって困難をそれほど感じることなくできるので. むものだとされている。. はないかと考えたからである6)。 研究方法は以下の手順を取る。. このMMCPプログラムの基本的な性格は,自 分の内なるもの(内界)を,音を通して表現する. (1)音楽授業における思考力の位置づけと内容に. という音楽家の活動の機能・原理にあるとされて. ついて,先行研究を整理する。その際,音楽授. いる。そこで,子どもが一人の音楽家として,生. 58.

(4) 思考力育成からみた中学枚創作授業の現状と課題. 括の中で育ててきたイメージヤアイデイアを音や. 程に働く機能として捉えられてきたことがわか. 音楽の構成要素を使って音楽表現に結びつけると. る。「音楽的思考」という用語が登場してきたのは,. いう学習活動が計画されている。この活動を進め. 子どもを表現の主体としてみようという,音楽授. ていくのが「音楽的思考」であるとされている。. 業観の変容を示しているといえよう。. 「音楽的思考」を,J.デューイに拠って「音 楽的反省思考」として捉えなおしたのが野浪俊子 である。野浪はデューイの「美的経験」における 認知過程にその理論的根拠を求め,音楽科教育の 志向する「美的経験」の過程は,デューイのいう 「反省的思考」の過程に対応するとし,これを「音. 2 「音楽的思考」の定義と枠組み つぎに,音楽授業で「音楽的思考」を捉えるた めの視点を導き出したい。 そもそも教育方法において「思考」とはどうい. うものなのか,教育方法における「思考」の基本. 楽的反省思考」と呼んだ10)。「音楽的反省思考」. 構造を明らかにしたデューイは,事物に対して働. に内包的・暗示的な意味作用を生じるのは,音楽. きかける活動と,その結果として事物から受ける. における意味作用が常に感情と認識の調和(美). ものとの間の連続的な関係を見出す働きを「思考」. を求める「問題解決」過程を強いるからであると. であるとしている12)。これを音楽に置き換える. し,これが「音楽的反省思考」の特徴であると述. と「音素材や音楽の構成要素に対して働きかける. べている。. 活動と,その結果として音素材や音楽の構成要素. そして,デューイのいう「美的経験」における 新たな認識の発展は,美的と感じる感情の連続・ 再認・識別の支えがあって初めて生じるとしてい. から受けるものとの間の連続的な関係を見出す働 き」ということになる。. 事物に対して働きかける活動と,その結果とし. る。そして,このことは日常経験や社会的経験に. て事物から受けるものとの間の連続的な関係を,. 関連した感情の層である「興味」の多様な動的活. 人間の表現活動の観点から捉えたのが,小島律子. 動の発展,すなわちオキュペーション活動に基づ. の「表現の原理」である。/ト島は,「表現の原理」. く「構成的創造活動」を準備することによって促. を「表現の世界」「内界」「外界」の3つの世界の. 進されると述べている。. 間の相互作用という関係性であるとしている13)。. 永田尚子は,野浪,小島,桧永の「音楽的思考」. この論では,子どもは「内界(=自己に生じた「内. に関する先行研究を基に,実践的研究を行った。. なるもの」)と「表現の世界(=表現媒体)」との. 永田は,「音楽的思考」を「生徒が学習過程のは. 相互作用によってその関係性を見出し,それを自. じめに内界にもった抽象的な思いやイメージを,. 己に意味づけていく。ここでの表現媒体は,子ど. 授業の展開の中で音楽的諸要素にかかわって発展. もが「内界」に育んだ内なるものを外に形作るた. させる思考の流れ」と定義し,「音楽的思考」の. めの,適切な素材となるものであるとされてい. 発展を促す歌唱指導の授業構成を試み,その結果. る14)。つまり,音楽による表現であれば,表現. より学習モデルを作成している11)。それは,(1). 媒体は音素材や音楽の構成要素ということにな. 内界の思いやイメージを学習プリントに書く,(2). る。. 音楽の構造的側面に着目した気付きを楽譜に書き. これまでに述べてきた「音楽的思考」の先行研. ながら自分なりに楽曲を分析する,(3)音楽の構造. 究では,「音楽的思考」とは子どもがイメージを. 的側面に着目しながら楽曲分析した内容を指揮的. もって音楽表現を行う過程に働く機能であった。. 表現で表す,の3つから成っている。. それを「表現の原理」からみると,「内界」と「表. 以上から,音楽授業における「音楽的思考」(野 浪はさらに限定的に「音楽的反省思考」という). は,子どもがイメージをもって音楽表現を行う過. 現の世界」との相互作用が「音楽的思考」になる といえる。 しかし,小島のいう「表現の原理」における「内. 59.

(5) ⴫⃻䈱਎⇇䋨⴫⃻ᇦ૕䋺㖸⚛᧚䇮㖸ᭉ䈱᭴ᚑⷐ⚛䋩. 㽲. 㽳. ౝ⇇䋨ౝ䈭䉎䉅䈱䋺ᗵᖱ䊶ᗵⷡ䊶䉟䊜䊷䉳䊶⸥ᙘ䊶ᖱേ䋩. 㽵. 㽴. ᄖ⇇䋨⥄ὼ䊶↢ᵴⅣႺ䋩.

(6) 思考力育成からみた中学枚創作授業の現状と課題. や音楽のよさや美しさなどの質的な世界を価値あ. 意識しているかどうかということである。. るものとして感じ取るときの心の働き」を意味し ているとされている。ここでいう「音や音楽のよ. 2 分析結果. さや美しさなどの質的な世界」とは,「音楽的思考」. 分析結果から17の事例は大きく3つのグループ. の「内界」を指していると捉えることができる。「内. に分けられた(表1)。. 第1のグループ(No.1)は,図1の相互作用. 界」と「表現の世界」との相互作用①②が「内界」 と「外界」との相互作用③④によって成立すると. ①②が教師に意識されていないもの,第2のグ. いう前提に立つのであれば,感性の育みを目標と. ループ(No.2)は,教師の明確な意図の基に設. する音楽科の学習では,③④の相互作用すなわち. 定された相互作用①②を行う学習活動が展開され. 「経験」を視野に入れた授業構成を行うことが必 要と考えられる。. ているもの,第3のグループ(No.3)は,相互 作用①②③④を行うという教師の意図は薄いなが らも,結果的に図1の相互作用③④が学習活動と. Ⅱ 先行実践の分析. して設定されているため,相互作用①②③④が連 続的に機能しているものである。. では,3つのグループのそれぞれの事例に沿っ. 1 分析方法と視点. では,これまで中学校で行われてきた創作の授. て分析内容を具体的に説明していく。. 業は,「音楽的思考」としての「表現の世界」と「内. 界」との相互作用,および「経験」としての「内. 表1:「音楽的思考」を視点とした先行実践の分類. 界」と「外界」の相互作用を意識して為されてき たのだろうか。ここでは,日本伝統音楽を教材と. 「音楽的思考」からみた分類. No.. 生徒が,教師が提示した表現媒体を. した過去10年間の中学校での創作授業の先行実践. 17例を,前述の図1「音楽的思考」の枠組みより. ロ. た中で操作する。. 検討することによって,創作授業の現状と課題を 明らかにする。. の割合 約82% (14実践). 表現媒体が焦点化されており,生徒 約12% 2. 分析対象は,1998年4月号∼2008年7月号まで. (2実践). 場がある。. の『教育音楽中学・高校版』17)ぉよび『学校音. 表現媒体が複数あり,①②の関係性. 楽教育研究』18)vol.1∼12に掲載された中学校に. の認識は連続的なものではないが, 約6%. おける必修の創作授業である。その中で,日本伝. 17実践中. 3. ③④の関係性を認識する場があるこ. とにより,既有知識とかかわらせて (1実践). 統音楽を教材とした全17実践事例を分析対象とし. ①②③④の関係性の認識がみられ. た。なお,分析対象内での,同一人物による同一. る。. 内容の実践は1実践とみなしている。. 分析の視点は,図1の「音楽的思考」における. No.1の具体例には,地域の祭磯子を教材化し. 「表現の世界」「内界」「外界」の相互の関係性を. たお磯子の創作の実践がある。表現媒体として教. 認識するための相互作用①②③④が,学習過程の. 師がお磯子のリズムパターンを数例碇示し,それ. 中で見られるかという点である。なお,その際の. を生徒が組み合わせて創作していくというもので. 判断基準は,学習過程で教師が「表現の世界」「内. ある。. 界」「外界」との関係性の根拠を生徒に問う場や,. しかし,生徒一人ひとりが,なぜそのリズムを. それを生徒がワークシート等に記述する場等があ. 組み合わせたのか,その組み合わせによりどんな. るかどうかである。つまり,授業者自身が,「表. 感じがしたのかを認識する場,つまり,相互作用. 現の世界」「内界」「外界」の相互作用の重要性を. ①②を行う場が見られない。機械的にリズムを組. 61.

(7) 兼 平 佳 妓. み合わせていくことにより,作品は完成される。. ムパターン,速度,強弱とかかわらせて表現を工. しかし,それは生徒個々の表現意図を実現してい. 夫しているという思考の流れがみられる。実践者. るものになっているとはいいがたい。. も,この曳行図の作成により,お磯子に形式が生. また,表現媒体を構成していく段階でイメージ をもちながら構成活動を行うという実践もみられ たが,表現媒体の知覚・感受を行っている場がな い。したがって,相互作用①②は連続し得ない。. まれ,その後の学習活動が生き生きとしたものに なったという手応えを書いている。. 以上より,これまでの日本伝統音楽を教材とし た創作の実践事例は,「表現の世界」と「内界」. No.2の具体例にも和太鼓によるお磯子の創作. との相互作用①②とは切り離されたところで,音. がある。表現媒体が和太鼓のリズムパターンに焦. 素材の操作を行っている実践が圧倒的多数である. 点化されている。教師が提示した6種類のリズム. ことがわかる(No.1)。また,相互作用③④の「経. パターンから,各自2種類を組み合わせる。そし. 験」を意識した実践はほとんどみられなかった. て,考えたリズムパターンの中から姓で気に入っ たものを1つ選ぶ場面で,「なぜそのリズムパター. (No.3のみ)。. つまり,作品をつくることが授業の直接的な目. ンを選んだのか」「どんな感じがするのか」につ. 的となり,その過程で子どもが「表現の世界」「内. いての根拠を問う発間がある。そして,これら知. 界」「外界」との相互作用により,それぞれの関. 覚・感受したこ. 係性をどのように認識するかという「音楽的思考」. とを基に,そのイメージをもって. 地打ちに合わせて表現していく活動である。. とくに,この第2グループの特徴として,表現 媒体が焦点化されているという点が指摘できる。. が軽視されていたということになる。「音楽的思 考」の活用場面が組まれていない授業構成では, 「音楽的思考力」を育てる授業にはなりえない。. 焦点化された表現媒体(音楽の諸要素:リズムパ ターン)の働きによる音楽の質を認識する場(つ まり知覚・感受する場)があり,その認識をもと. Ⅳ「音楽的思考」を枠組みとする実践の分析. に構成活動をすすめていく展開になっている。こ. つぎに,筆者の実践した授業事例を分析・検証. れにより,①②の関係性を連続的なものとした学. することを通して,「音楽的思考」の具体的像を. 習活動が展開されているといえる。. 描き出し,「音楽的思考」を育成するための授業. だんじり. No.3の具体例は,地車磯子をつくる実践であ. 構成の示唆を得たい。. る。まずNo.1と同様にお磯子のリズムパター ンを,即興演奏などを通して練習し,クラスでリ ズムアンサンブルをする。その後,蛙ごとに地車. 1 「学びの文脈」と「音楽的思考」との関係 ここで分析対象とする筆者による実践は,もと. が自分の生活する地域を走る地車曳行図を作成. もとは「学びの文脈」を意識した授業構成をもつ. し,それをもとに表現を工夫していくものである。. ものである。「学びの文脈」とは,生徒が新たな. この曳行図の作成は,地車の曳き始め,遣り回. 事象に出会ったときに,学んだことを活用しなが. し等の地車の動かし方や,自分達の住み慣れた地. ら問題を解決していき,それを自己に意味づけて. 域の道幅,坂道,上り坂等の地形をリアルに想起. いくことによってつくられるものである。そして,. させる手立てとなり,実際に地車を曳行するとい うイメージをかきたてるものとなっている。つま り,この曳行図の作成という学習活動が図1の「内. 「学びの文脈」は,過去の学習体験や生活経験を. もとに更新されていくものと位置づけた。つまり, 「学びの文脈」とは,生徒の内的作用の重視から. 界」と「外界」との相互作用③④を生む手立てと. 発想されたものであり,「学びの文脈」とは学習. なり,それが「内界」と「表現の世界」との相互. における生徒の思考過程と言い換えることができ. 作用①②と連続的な関係性を結び,練習したリズ. よう。では,「学びの文脈」は「音楽的思考」と. 62.

(8) ⴫⃻䈱਎⇇䋨⴫⃻ᇦ૕䋺▓䈱䈘䉁䈙䉁䈭ᄼᴺ䈮䉋䉎 㖸⦡䋩. 㽲. 㽳. ౝ⇇䋨ౝ䈭䉎䉅䈱䋺ᗵᖱ䊶ᗵⷡ䊶䉟䊜䊷䉳䊶⸥ᙘ䊶ᖱേ䋩. 㽵. 㽴. ᄖ⇇䋨ㆊ෰䈱⚻㛎䉇⃻ታ਎⇇䈮䈍䈔䉎䈘䈒䉌䈮䉁䈧 䉒䉎⁁ᴫ䋩.

(9) 兼 平 佳 妓. 観点3:表現の技能. ・撃の音色の特徴を生かし,右手と左手の奏 法を工夫して表現するための技能を身に付 けている。 観点4:鑑賞の能力 ・辱の右手や左手の奏法などから生まれる音. 3 抽出生徒の「音楽的思考」の分析 このような授業構成において,生徒はどのよう に「音楽的思考」を働かせたのだろうか。. 抽出生徒1名(女子:川北さん)のワークシー トおよび楽譜を基に分析を行う。なお,文中に出. てくる生徒名はすべて仮名である。川北さんを抽. 色や微少な音程の変化の特徴をとらえ,楽. 出生徒としたのは,分析対象とする資料が質量と. 曲全体を味わって鑑賞している。. もに揃っており,内面に進行する「音楽的思考」 がみやすいと考えたからである。. 学習過程を説明していく。. (1)川北さんの学習状況. 第1∼3時では,まず,撃の音色の特徴を理解. 川北さんは,ピアノと撃の音色の比較聴取やゲ. する上で撃曲「六段の調」の冒頭部分を用い,撃. ストティーチヤーによる3種の「さくら変奏曲」. の音色とピアノの音色の比較聴取を行い,撃の奏. の演奏の鑑賞後に,撃のさまざまな奏法による音. 法による音色の変化について知覚・感受する学習. 色の効果を知覚・感受する中で,その内容を資料. 活動を設定した。本題材の活動日標の確認後は, ゲストティーチヤーの編曲による3種類の「さく. 1のように記述している。 このように知覚・感受したさまざまな奏法によ. ら変奏曲」の鑑賞し,そこで用いられている10種. る音色の効果を生かして,川北さんは自分のイ. 類の奏法を,体験を通して知覚・感受する場を設. メージするさくらを表現するために,「さくらさ. 定した。なお,撃は2人に1面の文化撃および4. くら」を変奏して表現していく。. 面の本撃を用意した。. 川北さんは創作のテーマを「満開のさくらから. また,本題材で取り上げた撃の奏法は,資料1. 花びらが少しだけ散る様子」とし,その中で「満. 以外に,合わせ爪,散らし爪,トレモロ,ピッチ. 開のさくら」を表現するための合わせ爪,「花び. カート 押し手,引き色の計10種類である。これ. らが少しだけ散る様子」はスクイ爪を用い,「満. らは,いずれも音色の効果が知覚・感受しやすい. 開のさくらから花びらが少しだけ散る様子」を表. ものであると同時に,技能面でも高度な技術を要. 現するために,合わせ爪とスクイ爪を交互に用い. しないものである。教材である「さくら変奏曲」. ることでイメージを実現させていっていた。さら. 3種は,これら10種類の奏法を散りばめることを. に,活動を進める中で曲の後半部分からは1オク. 条件として,ゲストティーチヤーに編曲を依頼し. ターブ高い音でのスクイ爪を用い,最後はだんだ. たものである。. んゆっくり(rit.)で表現していた。. 第4∼6時は,「自分のイメージするさくらの. 資料1:川北さん記述のワークシート抜粋. 様子を表現する」ために,第1∼3時で知覚・感 受したことを基に,「さくらさくら」を自分なり. 奏法名. 成の一助となるように,音楽室には満開のさくら の木から花吹雪のように散っている様子,夜桜,. ビルの谷間に咲くさくら等,さまざまなさくらの. どんな感じ. (知覚). に変奏して演奏する学習活動である。途中には中 間交流の場を設定した。また,生徒のイメージ形. 音色の効果. 突き色 後押し. 余韻が上がって 元に戻る. (感受). 鋭い感じ. 余韻が上がる やわらかい感じ. スクイ爪 かすれている はかない感じ グリッサンド. 昔が重なって連 なる. 豪華な感じ. 写真を掲示した。 (2)分析. 「自分のイメージするさくらを表現する」にあ. 64.

(10) 思考力育成からみた中学枚創作授業の現状と課題. たり,10種類の撃の奏法による音色の知覚・感受. かを検証していく。. は,川北さんにとっての新たな情報である。そし. ④ 生徒の学びの意識を焦点化するための表現媒. て,川北さんはその知覚・感受の情報を,イメー. 体(指導内容)を明確化. ジにより選択していったということになる。. 川北さんは活動日標の確認後,ゲストティー. 具体例をあげてみる。川北さんは「花びらが散. チヤーの演奏する3種類の「さくら変奏曲」を鑑. る様子」というイメージを表現するために、①明. 賞し,過去の「経験」における「さくらさくら」. 確な意図をもった働きかけにより,②働き返され. の旋律とは異なる,ゲストティーチヤーの演奏す. たものが,「スクイ爪=はかない感じ」という情. る「さくら変奏曲」と出会った。そして,これら. 報と結び付いた(この①②は図2の番号)。つまり,. 3曲は,10種類のいろいろな奏法を組み合わせて. 「花びらが散る様子」というイメージを媒介とし. つくられていることを知った。つまり,川北さん. て,「スクイ爪=はかない感じ」という情報が,. にとってはゲストティーチヤーの演奏がモデルと. 自分にとって意味あるものとして関連付けられて. なり,これらの奏法を組み合わせると「さくら変. いることになる。合わせ爪を用いた理由もこれと. 奏曲」をつくることができるというという見通し. 同様であると推察できる。. をもったと推察できる。そして,その見通しが学. この活動は「内界」と「表現の世界」との相互. 作用①②により,撃の音色に対して働きかける活. 習活動への意欲につながったと考えられる。 そして,川北さんは、撃のさまざまな奏法に興. 動と,その結果として撃の音色から受けるものと. 味をいだき,撃の奏法による音色の効果に耳を傾. の間に,知覚・感受を基にした連続的な関係を見. けたので,それらの知覚・感受が為された。同時. 出していることになる。つまり,図2「音楽的思. に演奏技能も獲得していった。よって,表現媒体. 考」の①②の相互作用については,連続的に作用 していたと判断でき,川北さんは「音楽的思考」 を働かせたと判断できる。. ただし,図2の③④の相互作用については不明. (指導内容)を焦点化は,図2の相互作用①②を 連続的なものにしたと考えられる。 さらに,川北さんは曲の後半部分から1オクター. ブ高い音でのスクイ爪を用い,最後はだんだん. である。川北さんの「花びらが少しだけ散る様子」. ゆっくり(rit.)で表現していた。創作した楽譜. というイメージは,おそらく音楽室に掲示したさ. にはその理由を「高い音の方がはかない感じがで. くらの写真に刺激され,自分の過去の経験が呼び. るし,最後はゆっくりして終わる感じに」と記述. 起こされたのであろう。教師(筆者)が,表現し. していた。ここでは,表現媒体が撃の音色に限定. たいさくらのイメージについて,具体的な発間や. されたことにより,川北さんの中に「スクイ爪=. ワークシートによる問いというような学習活動を. はかない音色=花びらが少しだけ散る様子」とい. 設定しなかったので,川北さんの表現意図につい. う一度は満足した関係性の認識に,さらなるズレ. てはそれ以上にはわからない。. が生じたと考えられる。川北さんは,相互作用① ②を繰り返すうちに「花びらが少しだけ散る様子」. 4 授業構成の視点の検証 本実践で意識した「学びの文脈」づくりを具体. という自分のイメージを実現するためにスクイ爪 を使うだけでは満足できなくなった。川北さんの. 化するための3点,④生徒の学びの意識を焦点化. 中にズレが生じたのである。そこで,そのズレを. するための表現媒体(指導内容)の明確化,⑧子. 解消するために,スクイ爪と既習事項である音域. どもが知覚・感受したことを生かして(連続的に. の工夫や速度の変化という音楽の諸要素とを組み. 保って)表現を工夫できるような場の設定,⑥他. 合わせて①「表現の世界」に働きかけた。そうし. 者とかかわる場の設定が,川北さんが「音楽的思. て②働き返されたものは,川北さんのイメージを. 考」を働かせる中でどのように機能していったの. 満足させるものとなった。. 65.

(11) 兼 平 佳 妓. つまり,表現媒体が焦点化されたことにより, 相互作用(丑(彰を行う中でズレを感じ,そのズレを. かし,川北さんは中間交流での友だちの演奏につ いて資料2のように記述している。. 解消するために本題材において知覚・感受した新 たな情報のみならず,既習事項という情報を活用. 資料2:中間交流における川北さん記述ワークシート. してさらに,「表現の世界」へと働きかけた。よっ て,この点からも表現媒体(指導内容)の焦点化. 堂々としている様子を,合わせ爪を使っ. 石田さん. ているところがよかった。すごく伝わっ. は相互作用①②を連続的にしたと考えられる。. てきた。. ⑧ 子どもが知覚・感受したことを生かして(連. ピッチカートが桜の花が少しずつポ. 続的に保って)表現を工夫できる場の設定. 木川くん. もしろかった。. 川北さんは,「花びらが散る様子」を表現した いと思った。そのために,知覚・感受した10種類. 本田さん. の情報の中からいくつかの奏法を用い,「表現の 世界」に働きかけた。ただし,それは闇雲な試行. 錯誤ではなく,「花びらが少しだけ散る様子」に. ンっと咲いていく様子っていうのがお. スクイ爪を効果的に使っていた。強弱 がついていてよかった。 1オクターブ高い音でのピッチカート. 岡本くん. で,散っていくサクラっていう感じが. 出ていた。. はどれが適切かという予測に基づいた,明確な意 図をもった働きかけである。そのときに,「スク. 当初の川北さんは知覚・感受したことを情報と. イ爪=はかない感じ」という情報が自分にとって. し,相互作用①②により「満開のさくら=合わせ. 意味ある情報として関連付けられたので,スクイ. 爪」という関係性を認識している。ここに,石田. 爪を用いるとよいのではないかという仮説をもっ. さんの「堂々としているさくら=合わせ爪」とい. て働きかけると,それは自分のイメージを実現す. う新たな情報が入ることにより,川北さんの中で. るものとなった。つまり,明確な意図をもってス. 「石田さんは私と同じ奏法を使っているのに表現. クイ爪を用い「表現の世界」に働きかけ,その結. しようとするものが異なる」というズレが生じる。. 果として働き返されたものに対して検証し,満足. そして,このズレを解消しようと,石田さんの演. を得るというように,. 奏を能動的に聴く(図2の(丑の働きかけ)。つまり,. 知覚・感受とかかわらせて. 相互作用①②が連続的に働いたということになる。. 以上より,相互作用①②が連続的に進むために. 川北さんにとってズレが起こったことにより,相 互作用①②が連続的なものとなり,「満開のさく. は,イメージが重要であることがわかる。本題材. ら=合わせ爪」という最初の認識以外に,イマジ. では,さまざまな奏法の知覚・感受の場面を設け,. ネーションを介在させて「堂々としているさくら. その感受のイメージをもって表現できる場を設定. =合わせ爪」という新たな関係性の認識を形成し,. した。また,表現したいイメージを形成させるた. それに共感しているということになっている。. めに,さくらの写真を掲示したりもした。これは 相互作用③④に関係する事項である。. つまり,川北さんは無意識のうちに「経験」を. また,川北さんは木川くんの「ピッチカート= さくらの花が少しずつボンっと咲いていく様子」 という表現に対して①能動的に聴き(働きかけ),. 基盤とした「内界」と「外界」との相互作用③④. ピッチカートの柔らかく弾けるような音色から,. を働かせていたということになる。そして,結果. さくらのつぼみが花開く様子を想像したため,②. 的にそれが「音楽的思考」としての相互作用①②. 働き返されたものに共感できたのであろう。ここ. を促進することにつながったと考えられる。. でも相互作用①②により新たな関係性を認識して. ⑥ 他者とかかわる場の設定. いると考えられる。. 結果的に,川北さんは自分の表現に他者の表現 の工夫をそのまま取り入れることはなかった。し. 66. このように,他者とかかわり,他者の表現の工. 夫に共感したり,自分とは異なる表現におもしろ.

(12) 思考力育成からみた中学枚創作授業の現状と課題. さを感じたりすること,さらに,他者とのかかわ. すすめる授業を,④生徒の学びの意識を焦点化す. ることによってズレが生じることが,「表現の世. るための表現媒体(指導内容)の明確化,⑧子ど. 界」へ働きかけるための推進力となって「内界」. もが知覚・感受したことを生かして(連続的に. と「表現の世界」との相互作用①②を連続的にし,. 保って)表現を工夫できるような場の設定,⑥他. 「音楽的思考」を促進することに機能したと考え. 者とかかわる場の設定,と「音楽的思考」とのか かわりを視点とした分析を行った。. られる。. 以上より,「学びの文脈」づくりを具体化する ための3点は,以下の点で「音楽的思考」が働く. 分析結果から,思考力を育成する創作の授業構 成の指針として,以下の3点を得た。. ために有効であったといえる。④生徒の学びの意 識を焦点化するための表現媒体(指導内容)の明. 1子どもが表現したいイメージを,表現媒体(指. 確化は,学習の見通しをもつことによる意欲を喚. 導内容)を用いて具現化する活動目標を設定す. 起し,および情報活用の必然性を生む場を醸成し. ること. た。⑧子どもが知覚・感受したことを生かして(連. 創作授業において,子どもは作品づくりにおけ. 続的に保って)表現を工夫できるような場の設定. る目標達成に向けての手がかりがあると,その後. は,それがイメージをも. の学習活動に対しての見通しをもつことができ. って表現する活動となり,. 「経験」を基盤とした相互作用③④を働かせるこ. る。子どもは見通しをもつと,目的をもって意欲. とにつながった。⑥他者とかかわる場の設定は,. 的に「内界」から「表現の世界」へ働きかける。. 表現媒体と自己の関係性を見直し,そこに新たな. そのときの手がかりとなるのが,表現媒体(指導. 認識を構成した。. 内容)と表現したいイメージである。. そして,これら3点はそれぞれが単独で機能す. つまり,表現したいイメージを,表現媒体(指. るのではなく,相互にかかわり合いながら川北さ. 導内容)を用いて具現化するという活動日標をも. んの「音楽的思考」を促進していったと考えられ. つことにより,子どもはそのイメージを媒介とし. る。. ながら目的をもって「表現の世界」に働きかけ,. 働き返されたものと,「内界」との関係性を自分 にとって意味あるものにしていくために,相互作 Ⅴ 考 察. 用①②を連続させることになる。. 本研究の目的は,思考力育成の視点からこれま での中学校音楽科の創作授業における現状と課題 を明らかにし,思考力を育成する創作の授業構成 の指針を得ることであった。. 先行実践は,その多くが「表現の世界」と「内. 2 表現媒体(指導内容)を焦点化すること 表現媒体を焦点化して知覚・感受する場を設定 することにより,知覚した音楽の諸要素とその働 きによって生み出される質の感受を基に,連続性. 界」との関係性とは切り離されたところで,音素. を保って表現を工夫していくことが可能となる。. 材の操作を行っているものであった。作品をつく. その際,知覚・感受した新たな情報のみならず,. ることが授業の直接的な目的となっており,創作. 既習事項である情報も活用しながらの連続的な相. の過程で子どもが「表現の世界」「内界」「外界」. 互作用①②となる。つまり,表現媒体(指導内容). との関係性をどのように認識するかという視点で. を焦点化することにより,知覚・感受したときの. 捉えられていないというのが現状であり,「表現. イメージと,自分の表現したいイメージとを常に. の世界」「内界」「外界」との関係性をどう突現さ. 関連させながら,表現媒体とさまざまな情報を統. せていくかが課題といえた。. 合させて創作活動をすすめていくことが可能とな. つぎに,筆者が行った「学びの文脈」づくりを. るのである。. 67.

(13) 兼 平 佳 妓. ただし,表現したいイメージは. 「内界」と「外. 身に付けている。思考力育成をめざす創作授業に. 界」との相互作用(彰④によって形成されるため,. おいて日本伝統音楽を教材とする有効性は,「経. ここに,「経験」を呼び起こすような働きかけが. 験」を基盤とする相互作用③④を行う際に,生活. 必要となる。この意図的な働きかけによって「内. 経験や生活感情を呼び起こし,それが「音楽的思. 界」を発展させることで,それが「内界」と「表. 考」の働きに影響し,「内界」の発展が期待でき. 現の世界」との相互作用①②とつながり,「音楽. ることにあると考えられる。. しかし,本研究において分析対象とした授業で. 的思考」の促進が期待できる。. は,「内界」と「外界」との相互作用③④は教師 3 他者とかかわる場を設定すること 1,2を踏まえた一連の学習過程の中で,他者 とかかわることがさらに「内界」と「表現の世界」. との相互作用①②を促進する。他者とのかかわり. に意識されたものとなってはいなかったため,相 互作用①②と③④との具体的なかかわり方は表に 出てこなかった。 今後は,本研究で得た3点の指針を踏まえた,. によって子どもが得るものは,表面的な「自分と. 問題解決型の授業構成における実践のもと,子ど. は異なる新たな情報」にとどまらないからである。. もが「経験」を基盤とする相互作用③④を意識的. 他者の表現の工夫を自分の表現に取り入れるとい. に働かせることによって,知覚・感受した時のイ. うことは,表現媒体と自分との関係性を別の視点. メージと表現したいイメージ(表現意図)をどの. から想像し,共感を伴って自分と表現媒体との新. ようにかかわらせて「音楽的思考」へとつなげて. たな関係性を見出し,それを自分にとって意味あ. いくのかに焦点化した研究を行うことが課題であ. るものとして認識してい. る。. るということである。た. とえ,他者の表現の工夫を自分の表現に取り入れ なかったとしても,活動自体が自己と表現媒体と 注. の関係性を再認識することになるため,いずれの 場合も相互作用①②が促進されると考えられる。 さらに,本研究において実践分析を行う中で, 学習過程において子どもが問題(ズレ)を感じ, それを解決(解消)していくという問題解決過程. を踏むことが相互作用①②を促進するために有効 であるということもみえてきた。. また,日本伝統音楽を教材とすることについて もいくつかの知見を得た。 本研究にあたって分析対象とした先行実践は,. その半数以上が地域の祭磯子を教材化したもので あり,筆者の実践を含めた撃による創作実践も「さ くら」や「春夏秋冬」がテーマとなっているもの. であった。生活経験や地域によって差はあれども,. 1)文部科学省HP (http://www.mext.go.jp/a▼menu/shotou/new−CS/ news/20080117.pdf)(2008/09/21) 2)文部科学省(2008)『中学校学習指導要領解説音楽編』. 教育芸術社,p.12 3)西園は,思考力を育てるものとして創作分野の音楽 づくりの活動を位置づけ,創作が思考力を養うことに 着目している。ただし,ここでは「音楽づくり」と「思. 考」「思考力」についての関係は具体的には記述されて いない。西園芳信(1994)「『思考力』を育てる『自由. な発想による音楽づくり』の学習指導」『音楽科の指導 と評価』日本書籍,pp.111∼126. 4)国立教育政策研究所HP (http://www.nier.go.jp/kaihatsu/ongakutou/index. htm)(2008/09/20). 5)小泉文夫(1986)『子どもの遊びとうた−わらべうた. は生きている−¶草思社,pp.127∼129. 祭磯子,さくら,季節等は,我々日本人の生活や. また,澤田は日本音楽がこれまでつくられ,伝えら. 文化,感情をリアルな実感を伴って呼び起こすも. れてきたその理念や方法として,1.ゆるやかな規範の. のである。さらに,日本で生まれ育った我々日本 人は,母語である日本語,日常生活の中にあるリ. 中での個人の創意,2.作曲と演奏の一元化,3.口 授による学習,4.異文化・異分野の音楽の受容と変形, の4つの側面を挙げており,日本伝続音楽の継承に創. ズム等から,日本独自の音感覚を無意識のうちに. 68.

(14) 思考力育成からみた中学枚創作授業の現状と課題 造的な側面があることを指摘している。澤田篤子(2001) 参考文献. 「日本音楽伝承と創造の担い手としての子ども」『日本 音楽を学校で教えるとい. うこと』R本学校音楽教育実. 践学会編,音楽之友社,pp.148∼150 6)小島律子(2008)『日本伝続音楽の授業をデザインす る』暁教育図書,p.8 7) 日本学校音楽教育実践学会編『生成を原理とする21 世紀音楽カリキュラム』(2006)東京書籍,p.22 8)音楽科において「思考力育成」をテーマとした先行 研究には,岡本信一のものがある。ここでの思考力は, 音楽科に特有な思考というより,授業一般における思 考を指しているといえる。この中で岡本は「思考」を1.. メタ認知,2.批判的&創造的思考,3.思考のプロ セス,4.中核的思考のスキル,5.内容領域の知識 の役割,の5つの次元からとらえたアメリカのマルザー. ・ジョン・ デューイ//植田清次訳(1955)『思考の方法−. いかに我々は思考するか−¶春秋社,pp.109∼121 ・『新教育学大事典』(1990)第一法規出版,より. 「思考」「創造的思考」「拡散的思考」「収束的思考」 ・北尾倫彦編集(1995)『思考力・判断力ーその考え方と 指導と評価−「』図書文化,より 北尾倫彦「新しい学力観における思考力・判断力_. pp.2∼8 天野正輝「デューイの思考論と自己教育力の育成」 pp.20∼26 太田信夫「認知過程における思考力・判断力」pp. 35∼41. ノ達の授業論を基に,認知理論を基礎とした教授学習 理論を,音楽科カリキュラム編成に応用する試みを行っ. (附属札幌中学校教諭). ている。岡本信一(2006)「授業における思考力育成の ためのカリキュラム編成一昔楽科を事例として−」兵. 庫教育大学研究紀要,第28巻,pp.111∼116 9)小島律子(1980)『Manhattanvi11eMusicCurricu− 1umProgramの教育的意義一昔楽的思考への着目−¶ 「大阪教育大学紀要 第Ⅴ部門」第29巻第2・3号, pp.133∼146 10)野浪俊子(1998)「音楽科カリキュラムの理論的基礎 となる感情の問題解決過程に関する考察−J.デューイ の「美的経験」による反省的思考を基に−」『芸術教育. 実践学』第1巻,pp.36∼43 11)永田尚子(2004)「歌唱表現における生徒の音楽的思. 考の発展を促す学習過程の構成」『学校音楽教育研究』 日本学校音楽教育実践学会編Vol.8,pp.173∼182 12)ジョン・デューイ/帆足理一郎訳(1959)『民主主義 と教育』春秋社,pp.141∼153 13)小島律子・澤田篤子編(1998)『音楽による表現の教. 育』晃洋書房,pp.118∼134 この中で小島は,想像することによって相互作用に. おける経験を連続的に作り替えていこうという働きを 「想像的思考」とよんでいる。 14)小島律子・澤田篤子編(1998)p.6 15)この図は,小島律子・澤田篤子編(1998)p.119の 図を基にしている。 16)小島律子・澤田篤子編(1998)pp.15∼17 17)音楽之友社. 18)日本学校音楽教育実践学会編 19)この指導内容は日本学校音楽教育学会編(2006)か. ら取り出したものである。現行中学校音楽科学習指導 要領の内容では,A表現(ウ)(キ),B鑑賞(ア)に. あたる。. 69.

(15)

参照

関連したドキュメント

当日は,同学校代表の中村浩二教 授(自然科学研究科)及び大久保英哲

活用のエキスパート教員による学力向上を意 図した授業設計・学習環境設計,日本教育工

今日のお話の本題, 「マウスの遺伝子を操作する」です。まず,外から遺伝子を入れると

22 日本財団主催セミナー 「memento mori 広島− 死 をみつめ, 今 を生きる−」 を広島エリザベト音楽大

歩行 体力維持と気分転換 屋外歩行・屋内歩行 軽作業 蝶番組立作業等を行い、工賃収入を得る 音楽 カラオケや合唱をすることでのストレスの解消

市民社会セクターの可能性 110年ぶりの大改革の成果と課題 岡本仁宏法学部教授共編著 関西学院大学出版会

英国のギルドホール音楽学校を卒業。1972

いしかわ動物園「アシカ・アザラシたちのうみ」リニューアルオープン (20 日) いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭 2019