子どもの反応傾向についての母親の認知
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(2) . 子供の反応傾向についての母親の認知. 伊. 藤. 要. 進. 旨. 母親が自分の子供の反応傾向をどれくらい 的確にとらえているかを明らかにするために,P-Fス タディ (絵画欲求不満検査) における子供の反応を母親に予測させた. その結果, 自分の子供の反 応が多くの子供達にみられる平凡な反応であっ たときには予測は高い割合 で当たっ たが,一方,それ が少数の子供にしかみられない反応 であっ たときには, 予測が当たる割合は大きく低下し, 予測反 応として平凡反応を現す強い傾向が示された. このことから, 多くの母親は, 自分の子供の反応傾 向を個別的にとらえているというよりは, むしろ, 子供一般の反応傾向のイメージを自分の子供に あてはめてとらえており, その独自性については貧弱 な知識しかもっ ていないのではないかという. 疑問が提出された.. は じ め に. 他者と接することがわれわれの生活において大きな比重を占めている以上,他者についての知識,. とりわけ, 他者の行動 についての知識がわれわれひとりひとりにとっ て重要 であることは言うま で もない, 対人関係においては, 他者がどのような行動を現すかをあらかじめ予測しなければならな いことが多く, そのような予測のより どころとなる知識が必要だからである.. われわれ各人が直接, 間接に接する人間は, 家族や友人など身近な人間から未知の人間まできわ めて広い範囲にわたる, そのように広範囲の人間についてわれわれは何らかの予測を行わねばなら ないのであるが, すべての人間について同程度の予測が必要なわけ ではない. 必要な予測の程度は. 一般に, 自分との関係の深さによっ て異なるであろう. 接することの多い身近な人間についてはキ メの細かな予測が必要なのに対して, そう でない人間については大雑把な予測 で間に合うことが多. いから, そのよりどころとなる知識もそれに応じて, 詳細な知識が必要な場合と, 概略的な知識で こと足りる場合とがあると言えよう, 一般に, 知識には, 対象の集合についての一般的知識と, 個々の対象についての個別的知識とが. ある. 同様に, 他者の行動についての知識も, ある人びとの集合に一般的な行動傾向を記述する- 般的知識と, 特定の個人の行動傾向を記述する個別的知識とに分けることができる. 自分との関係 が稀薄な不特定多数の人間に対しては, そのひとりひとりについて個別的知識をもつことは困難で ある, それに, 未知の人間をも含む不特定多数の人間の行動を予測するより どころとしては, それ らの人間の行動についての知識は一般的な形をとらざるを得ない. 例えば, 人 びとを性, 年令, 職 181.
(3) . 伊 藤. 進. 業, あるいは, 人種などによっ てカテ ゴライ ズし, それぞれのカテ ゴリーに一般的とみなされる行 動を類型的にとらえるやり方 である. 対人認知の領域においては, 特定の人物の行動 をもっ ぱらそ のような類型に依拠して判 断するステレオタイ プ化に関 しては 多く の研究 がなされている (Sch ‐ ider l iur i ne . ,eta ,1979;Tag ,1969; 原 岡, 1974 , 等 を 参 照) . そ の よ う な判 断 は, 相 手 が初 対 面 の 人. 間 である場合のように, その人物について得られる情報が乏しい場合には, とり得るひとつの有用 な判断の仕方 であり, また, 相手との交渉が表面的なレベル で済んでしまうような場合には, その ような型にはまっ た判 断 であっ ても, さしたる困難を 生 じないこと が多いと言えよう (例え ば,. Freedman l . ,1978 を 参 照). ,eta. それに対して, 自分と身近な人間の場 合は どう であろうか. 身近な人間については, さま ざまな 側面についてのキメ細かな予測が必要 であるから,一般的知 識だけ ではあまり役に 立たず,ひとり ひ とりについての個別的知識が必要 だろうと考えられる. また, 接する機会が多く, ひとりひとりに ついて得られる情報も 多いだろうから, 身近な人間の行動についてはわれわれは詳細な個別的知識 をもっ ているに違いないと考えられる. 少なくとも常識的にはわれわれはそう考えている. しかし, 実際には どう であろうか? われわれは身近な人間の 行動について どれほど個別的な知 識をもっ ており, それらの人間に独自な行動をどれほ ど的確に予測 できる であろうか? 本稿 では, この問題を検討するひとつの 試みとして, 身近な関係にある者どうしの例として母親. と子供の場合をとりあげ, 母親が自分の子供の 反応傾向についてどのような知識をもっ ているかを みる.そのために,さまざまな場面 で子供が現す 反応について母親 がどのような予測を行うかをデー. タに基づいて検討する, ここで, 子供の反応傾向ということについて考えておくと, それは, 多くの子供に共通にみられ る一般的反応傾向と, 特定の子供に しかみられない独自な反応傾向とに分けることができる. そし て, 個々の子供に注目するなら, 特定の子供の反応傾向, すなわち, 個別的反応傾向は, 他の多く の子供達と共通の一般的部分と, 少数の子供に しかみられない独自な部分とからなる. 特定の子供 の行動を予測するとき, その一般的部分に関しては, 特にその子供の個別的反応傾向の知識がなく. ても, 子供 一般の反応傾向の知識さえあれば予測は可能 である. それに対して, 独自な部分につい ては, その子供の個別的反応傾向の知識がなければ適切な予測は困難 である. したがっ て, もし母 親が自分の子供の個別的反応傾向を適切に認知しているなら, 一般的部分はもとより, 独自な部分. についても同程度の予測が可能な筈 である. 本稿 では, 特に, 母親が自分の子供の反応傾向をどれだけ個別的に認知 しているかを, できるだ. け具体的な場面 での子供の反応と, それに対する母親の予測を分析することにより検討する. ただ, これに関するデータを実際の現実場面の中 で得ることはかなり難しいこと なの で,本研究 ではひとつ の近似的方法として, 日常的場面を絵画で表したP-Fスタディ を用いて分析を行っ た.. 方. 被験者. 法. 9名, 女子22名) と, その子供達 の 被験者は札幌市内2校の小学校4年生41名 (男子1. 1名 であっ た. 母親4. 実験材料として児童用 P-Fスタディ 日本版を用 いた. P-Fスタディ (絵画欲求不 満検査) は, S .ローゼンツワイ クが欲求阻害事態における反応傾向を検出することを目的として考 案した投映法人格検査の一種 である, 検査は, 絵によっ て表された日常的な欲求 阻害場面, 計24場 実験材料. 182.
(4) . . 子供の反応傾向についての母親の認知. おか しは んに. に いさ あ げた か ら. もう. ひと つ も あ りませ ん よ。. 図1. P- Fスタ デイ 検査項目 の一例. 面から構成されている. 図1にその一例 を示したが, 各場面とも2人の人物が描かれており, 絵の 中の 左側 の人物が右側の人物にフラストレーショ ンを起こさせるようなことをしたり言っ たりして いる. 被検者は, 右側の人物がそれに対してどのようなことを言うかを想像し, その言葉を記入す. ることを求められる. 検査の本来の目的は, そこに記入された言語反応の分析を通して被検者の反 応傾向を推論すること である. 本研究の実験においては, 児童用検査用紙 (三京房) をそのまま使. 用したが, 用紙の標題のみを 「絵画想像検査」 と変えて使用 した. 手続き 子供には通常の実施法に したがっ て児童用P-Fスタディ24場面について 回答しても らっ た. また, それぞれの子供の母親には, 子供に用いたのと同じ用紙を渡し, 自分の子供が各場 面でどう回答するかを予測してもらい,それを記入してもらっ た なお子供についてはそれぞれの学 . 級で集団実施し, 母親については個別的に実施した.. 結果と考察 P-F ・スタディ の各場面に対して子供が現した反応とそれらについての母親の予測反応は, 実際 に記入さ れた具体的な言葉の面 でみるならば千差万別 である. ここ では, P-Fスタディ の通常の. 分類法 (住田・他, 1 9 64 ) を参考に, それらの反応において広義の攻撃性がどこに向けられている かによっ て下記の3反応種目に分類し, それを基に結果を分析した, 反応種目ごとに付記した反応. 例は, いずれも場面1 (図1参照) に対する反応の例 である. 外罰反応 (E): 攻撃性が外部に向けられているものを日と分類 じた, 他人や事物を直接, 非難 したり叱責しているものばかり でなく, 単純な不平不満を表したものや, 他人に対して依存的態度. 183.
(5) . 伊. 藤. 進. を示したものもこれに含めた.(反応例: 「お母さんのいじわる」「いやになっ ちゃ うな」「それじゃ あ買っ てきて」) 内罰反応 (1): 攻撃性が自分に向けられているものを1と分類した. 自分に責任や非があるこ とを表明しているものや, 自ら問題を解決しようとしているもの等 である.(反応例: 「私が帰っ て 来るのが遅 かっ たからいけないんだわ」 「私が別のお菓 子を買っ てきます」) 無罰反応 (M): 攻撃性が外部にも自分にも向けられていないものをMと分類した. 不満や攻撃. 性を表明せず, 相手や状況に対して許容的態度を示しているもの, 問題の解決を時の経過に委ねて いるもの等 である. (反応例: 「いいのよ, お母さん」 「こんどは私の分もとっ ておいてね」). なお, 2 つの 反応種目にまたがるような複合的反応については, 結果の分析の際はそれぞれの反 応種目 の出現頻度を0.5としてかぞえた. また, 3反応種目の どれにも分類困難な反応は分析対象 から除外した. では以下に結果をみることにしよう.. 予測のヒッ ト率 はじめに, 子供の反応についての母親の予測 がどのくらい適中したかをみておこう, P-Fスタ ディ24場面の各場面において, 母親の子測反応が子供の反応と反応種目の上で一致し. たとき, 予測 がヒ ッ トしたと言うことにする. 24場面中に 占める3反応種目の出現比率は子供に よっ て異なるの で, それぞれの子供の反応種目 ごとの出現数を基準に, それらのうちいくつについ て母親の子測がヒッ ト したかの割合を, 反応種目別の予測ヒッ ト率として算出した. 表1は, 反応種目別 の予測ヒッ ト率を, 予測される子供が男子の場合 (以下, 男子群と呼ぶ) と 女子の場合(以下, 女子群と呼ぶ) とに分けて平均して示したものである, 表1に見られるように,. 結果は男子群と女子群と で極めて類似しており, 予測ヒ ッ ト率は予測される子供 の性別には依存し なかっ たことがわかる. また, 3反応種目のヒッ ト率も相互に近い値を示しており, それらの間に 有意な差は認められなかっ た (tテスト) . このように,子供の現した3種目の反応の どれに. つ い て も, それらのう ちのお よ そ 6割 に つ い て 母 親. の 予 測 が ヒ ッ ト し た. 予 測 に あ た っ て, 母 親 が3. 表1. 予測ヒ ッ ト率 (被験者間平均値. カッコ内は標準偏差). 種 目 の 反 応 を 場 面 ごと に ラ ン ダム に 現 した と す る. 反応種目. 男 子 群. 女 子 群. と, そ れ ら が 子 供 の 特 定 の 反 応 種 目 に つ い て ヒ ッ ト す る割 合 は 寺 であ る か ら, そ れに く ら べ て約 6. E 1. 9( 17 ) ,5 , 6 4( ) 2 1 , .. 5 7( ) , .19 6 1 ) 5( 5 . .. 割 と いう 値 は か な り 高 い 値 であ る. こ の 点 か らみ. M. 5 7( ) , .20. 5 8( 2 ) , ,2. る限り, 母親は子供の反応傾向, すなわち, どの ような場面ではどのような反応を現しやすいかということを, 比較的良く認知 していると言うこと が でき る.. ただしこのことは, それぞれの母親が自分の子供そのものの個別 的反応傾向を比較的良く認知し ていることを必ずしも意味しな い. 自分の子供の個別的反応傾向を認知していなくても, 予測が高 い割合 でヒッ トする場合があるからである. 例えば, ある場面にお いては多くの子供達の反応 が1 つの反応種目に集中し, 自分の子供の反応もそれと一致したとする. その場合には, 仮に自分の子 供の反応傾向そのも のを認知 していなくても, そのような場面における子供一般の反応傾向に つい ての知識さえあれば, それに 基づ いて行う予測はヒッ トすることになる. そして, そのよ: うなケー スが多いほ ど, 全体のヒッ ト率は高くなるわけ である. したがっ て, ここ で示されたヒット率6割 184.
(6) . 子供の反応傾向についての母親の認知. 前後という値そのものだけ では, それがどれだけ子供の個別的反応傾向についての母親 の認知を反 映しているかは明らかでない. この点を明らかにするために, 以下 の2つの項では別の角度から結. 果をみることにする.. 反応出現率と予測結果 ここ では, 母親達の予測結果を, 各場面においてそれぞれの種目の反応を現した子供の割合との 関係 でみてみよう, それぞれの子供が24場面に対して反応した のであるが, E反応, 1反応, およびM反応を現した. 子供の割合, すなわち, 各種目 の反応出 現率は場面によっ て異なっ ていた 例えば, 場面1におけ , る男子群の各種目の反応出現率は, 民反応71%, 1反応1 6%, M反応1 3% であっ た, もう一例とし て同じく男子群の場面5における反応出現率をあげると, E反応22%, 工反応6%, M反応 7 2% で あっ た, このように, 3種目の反応 のうちどれが多く現れるかは場面によっ て異なっ ていたの であ るが, ここ では, そのことと母親 の予測結果との関係をみようという の である . a )は, 各場面におけ る反応出現率と予測ヒッ ト率および虚報率の関係を反応種目ごとに 図2( )-( c. 表したもの である.. ここで予測ヒッ ト率と虚報率については若干説明を要する. まず予測ヒッ ト率は, 例え ば E反 , 応の場合 で説明すると,各場面でB反応を現した子供の人数を基準に そのうち何人についての予測 ,. が当 た っ て いた か の割 合 であ る, 次 に 虚 報 率 (f l l t a sea rm r a a e) であるが, これもE反応の場合 で 説明すると, 子供がE反応以外の反応を現していたときに母親がE反応を予測した場合 母親はE , 反応を虚報したと言うことにする. そして, 各場面でE反応以外の反応を現した子供の人数を基準. に, そのうち何人についてE反応が虚報されたかの割合をE反応の虚報率とする, 1反応, M反応 についても同様 である,. それではまず, 反応出現率と予測ヒッ ト率の関係をみよう. 図2( a )-( c )から明らかなように, ど の反応種目の場合にも, 反応出現率が高くなると予測ヒ ッ ト率もまた高くなる傾向が示された す , なわち, それぞれの反応種目について, その反応を現す子供の割合が高い場面 ほど, その反応をヒッ トする母親の割合が高くなる傾向が示されたの である. 表2に, 反応出現率とヒ ッ ト率の間 の相関. 係数 (ビアソンの偏差積 率相関係数, 以下同じ) を反応種目別に示したが, そこに見られる通り , どの反応種目の場合にも,6を超える正の相関が示された. 10. ヒ ・ ッ ト 率. oo r. . . . ( c )H反応. oq b oo. o ;i 。. . 0 5 .. あ. o o. . o o … 。 . . o. g 。. o o. 。. 縄 . o . o・ o. . .. oo. . , .. ・. o oゞ 。 E . 。 o. . 1 00 ・. 。 。 ずo. 0。 8o. 0 5 .. 1 00 ,. 0 5 ,. 1 O .. 反応出現率. 図2, 各場面における反応出現率の関数としての予測ヒット率 (○) および虚報率 (◎) 185.
(7) . . 伊 藤. 進. )から明らかなように, どの反 a )-( c 次に, 反応出現率と虚報率の関係をみよう, この場合も図 2( 応種目の場合にも, 反応出現率が高くなると虚報率もまた高くなる傾向が示された. すなわち, 例 えばE反応の場合 でみると, E反応を現す子供の割合が高い場面ほど, E反応以外の反応を現した. 子供に対してB反応を虚報する母親の割合が高くなる傾向が示されたの である, 1反応, M反応に ついても同様の結果が示されている. 表3にあげた通り, 反応出現率と虚報率の間の相関は, どの. 反応種目の場合にも.6以上 であっ た. このように, 母親達が各場面において 現す予測反. 表2 各場面における反応出現率とヒット率の相関. 応は, 各種目の反応を現す子供の割合と密 接に関. 反応種目. 男子群. 女子群. 目 の 反 応 を 現 す 子 供 が 多け れ ば 多 い ほ ど, そ の 反. E -. 8 ,6 9 ,o. .66 .96. 係 す る と いう 結 果 が 示 さ れ た. す な わ ち, あ る 種. 応 を ヒ ッ ト す る 母 親 が 多く な り, 同 時 に, そ の 反. M. 応を虚報する母親もまた多くなるという傾向が示 されたの である(ヒッ ト率と虚報率の間の相関は, 表4に示した通り, どの反応種目の場合も,6以上 で あ っ た) .. .72. 4 .7. 表3 各場面における反応出現率と虚報率の相関 反応種目. 男 子 群. 女 子 群. . . . これらの結果は何を意味するの であろうか. 反. の個別的反応傾向 を認知していて, それに 基づい て予測を行っ たの であれば, その予測は他の子供. 達 がどんな反応を現すかということとは無関係に なされる筈 である. そう であるならば, 各場面に. 表4 各場面におけるヒット率と虚報率の相関. おける予測ヒッ ト率は反応出現率には特に依存し な か っ た で あろ う, し た が っ て 上 の 結 果 は, 多く. の 母 親 達 の 予 測 が, そ れ ぞ れ の 場 面 での 子 供 一 般. の反応傾 向に 大きく 影響さ れ ていたこ とを示唆 し. 反応種目 E 1 M. 男子群 ′ ● ・70 ,78 7 ,6. 女子群 0 .7 9 1 ,. 71 ・,. ていると考えられる. 反応出現率と虚報率の間に示された相関関係もまた同様のことを示唆している.ある反応種目の出 現率が高い場面ほ ど,その種目の反応を虚報する母親 が多かっ たという事実は,とりもなおさず多く の母親達 が自分の子供の 反応傾向というよりも, む しろ子供 一般の 反応傾 向を頭において予測 を. 行っ ていたことを物語るものと考えられるの である,. このことを結論する前に, 次の項で, 反応出現率と予測結果の関係を少し違っ た形 で分析するこ. とにする.. 平凡反応と少数反応別にみた予測結果 前項 でみた通り, 母親の予測はそれぞれの場面における3反応種目の出現率に大きく依存するこ と が見出された. そこ でこの項では, 個々 の子供の24場面における反応を, 「平凡反応」 と 「少数 反応」 に分け, それらについての母親の予測 結果を比較する. ここ では便宜上, それぞれの場面に. おいて3反応種目のうち最も多くの子供達 が現した 反応種目, すなわち出現率第1位の反応種目を 平凡反応, 他の2種目を少数反応とする (ただし, 第1位の反応種目の出現率が第2位のそれの約 2倍を超えなかっ た場面については, 3反応種目とも少数反応として扱っ た) . 186.
(8) . 子供の反応傾向についての母親の認知. 表5に, 平凡反応ヒ ッ ト率, 少数反応ヒッ ト率, およ び, 平凡反応虚報率を男子群と女子群 ごと に平均して示した. 平凡反応ヒッ ト率は, 子供が現した平凡反応のうち で母親の予測がヒッ トした. 割合, 少数反応ヒッ ト率は, 子供が現した少数反応のうちで母親の予測がヒッ トした割合 である. また, 平凡反応虚報率は, 子供の現した少数反応のうち で, それらに対して母親が平凡反応を虚報 した割合 である (平凡反応虚報率の算出にあたっ ては, 3反応種目の出現率の間に大きな差 がなく. て平凡反応を定義できない場面は除外して計算した) , 表5. 平 凡反応、 少数反応別の ヒ ッ ト率およ び少. 数反応に対する平凡反応虚報率. (被験者間平均値, カッコ内は標準偏差) 平凡反応ヒット率 少数反応ヒット率. 男子群. 女子群. 2( 1 4 ) ,7 , 3 5 ( 1 , 6 . . ). 74( - 1 ) , , 3 7( - 9 , , ). 表5から明らかなように, 母親の予測のヒッ ト 率は, 子供の反応が平凡反応であっ たときと少数 反応 であっ たときとでは大きく 異なっ ていた. 平 凡反応の場合には, それらのおよそ7割 について. の予測がヒッ トしたのに対して, 少数反応の場合. には予測ヒッ ト率は大きく低下し, 4割 をわる値. であっ た. 後者の値は, 予測反応として3種目 の 反応をランダムに現したときのヒッ ト率の期待値 に近い値 である. また, 少数反応に対する平凡反応虚報 率は, 表5に見られる通り, 5割 を超える 値であっ た. すなわち, 子供の反応が少数反応であっ たときには, 母親はそれと一致する反応を予 平 凡反 応 虚 報率. 3( ) 2 .2. ) 6 .63( .2. 測することよりも, それぞれの場面 での平凡反応を予測することの方が多かっ たのである. もし母親が自分の子供の反応傾向そのものを個別的に認知しており, それに依拠して予測を行っ. たのなら, 平凡反応ヒ ッ ト率と少数反応ヒ ッ ト率の間に大き な差 が生 じなかっ た筈 である. 母親 達の内訳をみても,平凡反応と少数反応に対してほぼ同レベ ルのヒッ ト率を示したのは41名中6名. で, 残る母親達はすべて平凡反応ヒッ ト率にく らべ明 らかに低い少数反応ヒッ ト率を示した (サイ ン・テスト, P 〈.01 ) . したがっ て, 大部分の母親達は多くの場面において, 自分の子供の反応傾 ・向というよりは, むしろ子供一般の反応傾向についての知識に基づいて予測を行っ ていたと考えら. れるのである. そして, それゆえに, 自分の子供が少数反応を現すような場面 であっ ても, 多く の 子供達が現すと考えられるような平凡反応を虚報することが多かっ たと考えられるの である,. お わ り に. 本稿 では, 身近な関係にある者どう しの例として母親と子供の場合をとりあげ, 母親が自分の子 供の反応傾向をどれくらい的確にとらえているかを見るためのひとつの試みとして, 子供のP-F. スタディ 反応を母親に予測させた, 以上見て来たように, 母親の予測は, 各場面で多くの子供達が 如何なる反応を現すかということに密接に依存することが明らかにされた, すなわち, 母親の課題. は自分の子供の反応を予測することであっ たにもかかわらず, その予測は, 自分の子供そのものの 反応傾向というよりは, むしろ子供 一般の反応傾向に大きく依存していたの である, この事実は, 自分の子供に対する母親の認知のステレオタイ プ化傾向を物語る, すなわち, 母親は自分の子供の 反応傾向 をあまり個別的には認知しておらず, むしろ, 子供一般についてのイメージ=知識を自分 の子供にかぶせてとらえる傾向が強いことを意味していると考えられるの である. ひとりの人間の個性を適切に認知するということは, その人間 が他の人びとと共有する一般的傾. 向ばかり ではなく, むしろ, その人間に独自の傾向を認知することを意味する. 母親が自分の子供 の行動面における個性を的確に認知 しているなら, 一般的な面ばかり ではなく, むしろ, その独自 187.
(9) . 伊 藤. 進. な面をこそ的確に判 断・予測 できなければならない筈 である.本稿 でとりあ げた子供の反応の種類, および対象者数や その範囲等は決して 十分なもの ではないが, ここ で見出された事実は, 母親は自 分にとっ て極めて身近な存在 である自分の子供の行動面の独自性をどれだけ的確に とらえているか ということに, 大きな疑問を投げかけるもの であると言えよう,. 付記;本研究にあたり, 本学札幌分校53年度卒業の伊藤瑞恵さん, 村西悦子さんに協力いただい た. また, 札幌市立幌南小学校と白石小学校の先 生方には大変お世話になっ た. ここに記して感謝 79 ) の意を表します.なお, 本研究の一部は日本心理学会第43回大会において 発表された(伊藤,19 .. 参考 文 献 f E l d C互f i餌 Ps s 1978 l ) Soc th 7ded .: Fr smi r s y物oめ殿,3 , N.J eedman . , M,( , ngewoo ,J ,D, 0, , & Car .し, ,Sea ,1 H l l Pr i t a en ce ‐ .. 原岡一馬 (19 ) 人間行動の社会心理学 金子書房 74 ) 97 9 子供の反応についての母親の予測, 日本心理学会第43回発表論文集, p 伊藤 進 (1 .741 . i R i Ma l d d d ” 2 ‐Wes s on I 1 9 9 ss:Add B I h( 7 ” g j n ey A H & t )汗 e a H d o 〃 t “ g Schne ide D o r z s o 鰹だゆ S w e s o . J a . r , , , , . , , .. , 住田.林・一谷(1 96 4)P-Fスタディ 使用手引 三京房, Tag iur i 1 ion 96 9 ) )Personpercept eds s ycね〆昭〆 の‘ .ln Lindzey ,R.( . . T彬 ねα“〆ものた けsα 郷 P , ,G ,& Aronson ,E.( 3 ing as i l 7 2dgメリ Read s son ‐帆r es ey , ,:Add ,2 , ,八1. (本学講師・札幌分校). 188.
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