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キャリア教育実践が促す中学生の自己効力感の発達過程

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(1)Title. キャリア教育実践が促す中学生の自己効力感の発達過程. Author(s). 杵淵, 信; 出口, 哲久; 鈴木, 仁志. Citation. 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 68(2): 345-353. Issue Date. 2018-02. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/9651. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第68巻 第2号 Journal of Hokkaido University of Education(Education)Vol. 68. No.2. 平 成 30 年 2 月 February, 2018. キャリア教育実践が促す中学生の自己効力感の発達過程 杵淵 信・出口 哲久*・鈴木 仁志** 北海道教育大学札幌校技術科教育学研究室 *. 北海道教育大学札幌校栽培・生物育成研究室 **. 札幌市立札苗北中学校. Development Process of Junior High School Student’s Self-efficacy  Encouraged by Practice of Career Education KINEFUCHI Makoto, DEGUCHI Tetsuhisa* and SUZUKI Hitoshi** Department of technology education, Sapporo campus, Hokkaido University of Education *. Department of plant cultivation and nurturing living things, Sapporo campus, Hokkaido University of Education **. Sapporo City Satsunae Kita Junior High School. 概 要 近年のフリーターや若年無業者の増大,未就職や早期離職等の雇用問題を受け,キャリア教 育の推進が求められている。一方,キャリア教育の実践を受けた児童生徒の意識・態度・能力 の変容についてはほとんど研究がない。そこで,本研究では既存の心理尺度である「中学生用 進路決定自己効力尺度」に「人間関係構成能力」に関する項目を加えた能力尺度を作成し,キャ リア教育を実践している中学校の全学年に対して調査を行った。その結果,キャリア教育の実 践前後で有意な進学意識・キャリア意識の変容が認められ,進路や就職に挫折や妥協をせずに 取り組んでいこうとする意識が高まっていること,キャリア形成を人間関係の問題から自分自 身の将来の問題と捉るようになることなどが明らかとなった。. 1.はじめに. 業者数64万人を全盛期に,現在では若干の減少傾 向にある(厚生労働省,2010)。しかし,少子化. 近年,フリーターや若年無業者の増大,未就職. の影響や,若年無業者数の定義外である35歳以上. や早期離職等(七五三問題)の雇用問題が社会的. の無業者数の増加などを加味すると,日本におけ. 課題として顕在化している。特に新規学卒者の就. るフリーターや若年無業者の割合が減少傾向にあ. 職をめぐる環境は激変し,職業生活への移行が困. るとは断じられない。この問題の解決が困難であ. 難を極めている。このフリーターや若年無業者の. る理由として,要因が複合的であることが挙げら. 増大は,2003年のフリーター数217万人,若年無. れる。例えば,世界的に様々な面でグローバル化・. 345.

(3) 杵淵 信・出口 哲久・鈴木 仁志. 情報化が進み,仕事が複雑化や短納期化され仕事. 標である。. 環境が急激に変化したこと,若年者自身の生活や. 例えば,文部科学省,厚生労働省,経済産業省. 働くことへの意識が変容していることなどが考え. および内閣府の関係府省は若者自立・挑戦プラン. られる。. を発表した。(文部科学省,2003)。このプランに. この働くことへの意識について岩田(2004)は. 基づき,現在の学校教育の場において職場見学や. 現在の子どもたちは働くことへのこだわりを持っ. 職業体験活動,職業人講和,インターンシップな. ているが,生活における仕事の中心性が低下して. どの学習プログラムが行われている。これらの取. いると述べている。また,進路選択に関する振り. り組みは主に職業への興味・関心・意欲を高める. 返り調査(ベネッセコーポレーション,2005)に. ことや,学習意欲や達成感を与える学習方法とさ. よると,小中学校時代から大学入学後にかけて,. れている。. 自己理解や将来の目標や職業に対する意識が低下. 加えて,2008年改定された学習指導要領におい. していると示されている。また,OECDの調査で. ては,これまで以上にキャリア教育を意識した内. は学習意欲の低さが問題視されており,進路や将. 容が盛り込まれている(文部科学省,2008) 。例. 来だけでなく目的意識が希薄なまま生徒が学校生. えば,中学校では第4章,総合的な学習の時間に. 活を送っていることが示されている(文部科学. おいて,先に述べた職場体験活動について例示さ. 省,2010) 。このような職業に対する意欲や学習. れ,「職業や自己の将来に関する学習を行う際に. 意欲の低下などの問題を解決し,子どもの社会. は,問題の解決や探究活動に取り組むことを通し. 的・職業的自立に向けた力と生きる力の育成を基. て,自己を理解し,将来の生き方を考えるなどの. 本方針として1999年以降キャリア教育が推進され. 学習活動が行われるようにすること」とある。ま. てきた。. た,「理科で学習することが様々な職業等と関連. キャリア教育は,一般的に「児童生徒一人一人. していることにも触れること」と各教科学習の中. のキャリア発達を支援し,それぞれにふさわしい. でもキャリア教育の推進が求められてきている。. キャリアを形成していくために必要な意欲・態度. このような背景から,現在では様々なキャリア教. や能力を育てる教育」と考えられている。また,. 育の実践的研究が行われている。. このキャリア教育を推進する意義として「生きる. しかし,キャリア教育の実践を受けた児童生徒. 力」の育成を学校現場では基本方針としている。. の意識・態度・能力の変容については,ほとんど. このことから,キャリア教育は学校教育のあらゆ. 研究されていない。そこで,本研究は先に述べた. る教育課程に組み込まれており,児童生徒の自己. 4領域を参考に,児童生徒がキャリア教育の実践. 理解や勤労観・職業観の形成といった職業的思考. を受けて変化するとされている意識・態度・能力. の発達のための教育として注目されている。. (職業観,勤労観及び自己理解など)を職業的思. このような,職業的思考の発達を促す教育のガ. 考と定義し,この変容を数量的に評価するための. イドラインとして,現在では多くの学校が国立教. 調査票を作成することを第1の目的とする。さら. 育政策研究所(2002)の提示した「職業観・勤労. に,本調査票をキャリア教育の前後に実施し,生. 観を育む学習プログラムの枠組み(例)-職業的. 徒の職業的思考の変容について分析することを第. 発達にかかわる諸能力の育成の視点から-」の中. 2の目的とした。. の4領域(人間関係構成能力,情報収集能力,将 来設計能力,意思決定能力)に基づいてキャリア 教育実践が行われている。この4領域の能力や態. 2.職業的思考の発達に関する尺度の作成. 度は学校を始め,国や地方公共団体及び企業など. 本研究で筆者らが作成した調査票の原典として. がキャリア教育プログラムを行う上での重要な指. 「中学生用進路決定自己効力尺度」 (三村,2004). 346.

(4) キャリア教育実践が促す中学生の自己効力感の発達過程. を使用した。その項目群を表1に示す。三村は,. 観・勤労観を育む学習プログラムの枠組み(例)」. 自己効力とは「ある行動が自分にうまくできるか. の職業的発達に関する4領域に配分した際,「人. という予測の概念」であると定義した。Bandura. 間関係構成能力」の項目が摘出されない。新見. (1986)は著書の中で「自己効力とは課題に必要. (2008)は学校や進路に関する話を家族や友人と. な行動を成功裏に行う能力の自己評価である」と. する生徒ほど人間関係形成のキャリア意識が高い. 述べている。三村の作成した尺度はそのような自. と述べている。また青谷(2005)は職業生活にお. 己効力の考え方を重要としており, 「進路学習レ. いてコミュニケーション能力は離職率とも関係が. ディネス因子」 ,「主体的進路実現因子」,「進路選. 深く,キャリア形成の視点からも非常に重要であ. 択への柔軟な姿勢因子」の3つの因子で構成され. ると述べている。さらに,小浜(2002)は働くと. ている。この尺度を元としたアンケートを職場体. いうことは自分のためだけのものではなく,誰か. 験などの進路行事の前後に行うことで,各因子間. 他の人のためのものであると人間が社会的な存在. を始めとした自己効力感の発達の効果を知ること. であることが労働の意義であると述べている。こ. ができるとされている。. れらのことから,人間関係構成能力の重要性が示. しかしながら,三村の作成した尺度の設問項目. される。このことから,キャリア教育を組織的に. を前述の国立教育政策研究所が発表した「職業. 行っている学校現場の協力の下に設問項目を協議 して「人間関係構成能力」の設問項目を追加する. 表1 三村(2004)による中学生用進路決定自己効 力尺度. ことや文章表現を簡素化するなど,現在のキャリ ア教育の在り方に即した尺度を作成することとし た。その完成した尺度を「職業的思考の発達に関 する能力尺度」とし,表2に示す。本調査票は原 典に示されている3つの因子と前述の枠組み例に 示された4つの職業的発達に関する能力からC1 からC6までの6つの職業的思考の発達に関する 成分を考案した。その成分を表3に示す。本調査 票はその考案した成分に関する設問を22項目,進 表2 職業的思考の発達に関する能力の調査表. 347.

(5) 杵淵 信・出口 哲久・鈴木 仁志. 路意識・職業意識に関する設問を3項目持ってい. 3.2 調査時期. る。また,本調査票では5件法(1:全くそう思. また,本調査はキャリア教育実践を未履修であ. わない,2:あまりそう思わない,3:どちらと. る2010年5月及び,キャリア教育実践を履修中の. もいえない,4:少しそう思う,5:強くそう思. 2010年11月の計2回,実施した。. う)を採用している。また,肯定的回答であれば. 3.3 調査内容. 得点が高くなるように数値化を行った。. 本調査票を用いて,子どもたちの進学意識・職. この調査票を用いて次章に述べる調査を行い生. 業意識の変容及び職業的思考の発達に関わる能力. 徒の職業的思考の発達に関わる能力について調査. の意識の変容について調べた。. した。. なお,設問項目の結果が有効に作用しているか 確かめるため事前に点検を行った。まず,各学年 男女の調査結果に対して標準偏差を求め天井効果. 3.作成した調査票による調査. と床効果を検出した。また,上位下位分析法によ. 3.1 調査対象. る項目分析を行い,最後に,全体的な得点の傾向. ここでは,作成した職業的思考の発達に関する. を探るため相関分析を行った。. 調査票を用いて,生徒の職業的思考の発達に関す. 以上の3つの点検を行い,事前にいくつかの項. る能力を探り,キャリア教育が職業的思考の発達. 目の削除を検討した。. に与える影響について検討した。. 3.4 結果及び考察. 対象とする学校は,全校をあげてキャリア教育. 1)進学意識・職業意識の変容. の教育実践を組織的に行っている中学校とした。. 図1は教育実践の前後にかけての進学意識・職. その教育実践の目標は,1年生は将来の理想の姿. 業意識の結果の比較である。本調査票の設問23. について考えることができるようにすること,2. 「行きたい高校がある」,設問24「行きたい大学. 年生では保護者からの生き方についての講和や職. がある」,及び設問25「やりたい仕事がある」に. 業体験などから今後の生き方について考えること. 肯定的回答を行った生徒の割合である。. ができるようにすること,3年生では進路につい. 図1の結果から,進学意識・職業意識の大きな. ての重要な期間であることを踏まえ,進路に対し. 変容は確認できなかった。そこで,各学年の男女. ての課題を解決することや夢を追求する方法を見. 間の意識の変容を比較することとした。その結果. 出すことができるようにすることである。. が図3,図4,図5である。. 対象者は, 1学年124名(男子61名,女子63名),. 図2の設問23『自分が進学したい高校がある. 2学年122名(男子62名,女子60名),3学年120. か』の結果から3学年男女は教育実践の前後にか. 名(男子59名,女子61名)の計366名とした。. けて肯定的回答が増加している。しかし,1,2. 表3 抽出された成分とその設問項目 成分名. 説問項目. 説問数. C1 職業理解力. 1,4. 2. C2 情報収集力. 2,8,20. 3. C3 進路調整力. 3,12,18,22. 4. C4 人間関係力. 5,9,15,17. 4. C5 意思決定力. 6,11. 2. C6 未来思考力. 7,10,13,14,16,19, 21. 7. 348. 図1 進学・職業意識の教育実践の前後にかけての 変容.

(6) キャリア教育実践が促す中学生の自己効力感の発達過程. 学年男女は教育実践の前後にかけて肯定的回答の. 学すると考えられる。. 割合が減少している。3学年は1,2学年と比べ. 2)設問項目の平均得点の比較. て受験という大きな進路の問題を抱えている。こ. キャリア教育の教育実践の前後にかけての各設. のことから進学への意識が高まっていると考えら. 問項目の平均得点の比較を図5(次項)に示した。. れる。. この調査結果に対して,キャリア教育の教育実践. 図3の設問24『自分が進学したい大学がある. の前後にかけてt境界値の両側検定を行った。検. か』の結果から3学年男女は教育実践の前後にか. 定結果に対して有意差(p<0.05)が認められた設. けて肯定的回答が増加している。これは高校進学. 問項目には*を付置した。また,調査結果を学年. が大学まで一貫した進路として深く考える生徒が. の男女別に同検定を行った。. 増えたと考えられる。. 図5に注目すると設問3,6,7,12,16にお. 図4の設問25『自分がやりたい仕事がある』の. いて有意差が認められた。しかし,検出された設. 結果から1学年男女と3学年男子は教育実践の前. 問の成分が違うため,各成分での変化は分かりに. 後にかけて肯定的回答の割合が低下した。1学年. くい。このことから,各学年の男女別に行った検. 男女に変化が見られたのは,キャリア教育の教育. 定に注目した。その結果2学年の意思決定力(C5). 実践の前後にかけての中学校生活などを通して改 めて自分の興味のある職業について見直す時期で あると考えられる。また,3学年男女に意識の違 いが見受けられる。3学年男子は高校進学意識が 特に高まったことから「受験は高校進学である」 という意識と考えられる。3学年女子は全ての意 識が高まったことから「受験は将来の夢(大学や 就職)へ向けての第一歩」という意識で高校へ進 図4 職業意識の教育実践の前後にかけての変容 設問25『自分がやりたい職業があるか』. 図2 高校進学意識の教育実践の前後にかけての変容 設問23『自分が進学したい高校があるか』 図6 教育実践の前後にかけての意思決定力の変容. 図3 大学進学意識の教育実践の前後にかけての変容 設問24『自分が進学したい大学があるか』. 図7 教育実践の前後にかけての進路調整力の変容. 349.

(7) 杵淵 信・出口 哲久・鈴木 仁志. と3学年の進路調整力に大きな変化が見られた。. いて設問別にt検定を行ったところ,進路調整力. その結果を図6,7に示す。. の設問3『第一志望の進路に進めない場合は違う. 図6に示すとおり,2学年では男女ともに意思. 進路を選択できる』の項目の得点が向上し有意差. 決定力の得点が向上している。これは設問6『自. が認められた。また,設問12『一度選んだ仕事が. 分の夢をかなえるために他の人があまり選ばない. 不満ならば,仕事を変えたいと思う』の項目の得. 進路を選択できると思う』の項目で有意差が認め. 点が低下し有意差が認められた。この3学年の進. られたことから2学年では自分の夢や進路に対し. 路調整力の低下は設問12の得点が大きく低下した. ての意識が高まったことが考えられる。. ことに起因している。さらに,図5に注目すると,. また,図7に示すとおり3学年の進路調整力の. 結果から設問3の得点の向上と設問12の得点の低. 得点は低下している。そこで,3学年の結果につ. 下は全学年で起こっていることがわかる。この設. 21.好きな仕事につくためには,距離や場所を考えずにどこに行って もいいと思う. 11月 5月. 19.自分の性格にあった仕事をいくつかあげることができる 16.自分の夢を実現するために,何を大切かわかる 14.働くことの意味や目的を説明できる. C6. 13.自分が活躍できる学校や仕事を選ぶには時間がかかってもかまわ ない 10.自分が興味を持つ仕事をいくつかあげることができる 7.自分の理想の仕事についてなぜその仕事につきたいのか説明できる. *. 11.自分が選んだ仕事は難しく,苦しい仕事であってもよい. C5. 6.自分の夢をかなえるために他の人があまり選ばない進路を選択でき ると思う. *. 17.自分の発言が他の人にどのように思われているかがわかる 15.自分は友達と支えあいながら仕事ができると思う. C4 9.自分は積極的に人間関係を築くことができると思う 5.自分の良さや個性を他の人に説明できる 22.希望の仕事に就職できない場合,どのようにすればいいか考え出 すことができると思う 18.将来の夢をかなえられない時には,計画を修正することができる. C3 12.一度選んだ仕事が不満ならば,仕事を変えたいと思う. *. 3.第1志望の進路に進めない場合は,違う進路を選択できる. *. 20.進路に関する報道(テレビなど)に興味がある. C2. 8.自分が進みたい学校や仕事現場を見学に行きたいと思う 2.どんな勉強が自分の夢を実現するのに必要か知っている 4.自分が興味を持つ仕事をしている人にその仕事についてインタ ビューができる. C1. 1.卒業後に自分が進みたい学校や仕事について先生に相談できる 0. 0.5. 1. 1.5. 2. 2.5. 3. 3.5. 図5 教育実践の前後にかけての各設問項目の平均得点(成分別). 350. 4. 4.5. 5.

(8) キャリア教育実践が促す中学生の自己効力感の発達過程. 問3及び12の結果からキャリア教育を行うことで. これらの結果から,5月の第一因子においては. 生徒の進路調整力の意識は変化していることが考. C4(人間関係力)が多く,因子寄与率が高いこ. えられる。その変化はどちらも志望や選択に関す. とから,人間関係の問題(現在の問題)の意識が. ることである。そのため,一度決めた進路や就職. 高いということが考えられる。しかし,11月にお. に対して,挫折や妥協をせずに取り組んでいこう. いてはキャリア教育を行うことで第一因子から. という意識が備わってきたと考察する。. C4(人間関係力)の項目がなくなり,C6(未来. 3)因子分析による結果. 思考力)の項目が多くなることから,人間関係の. キャリア教育の実践の前後の調査結果に対して. 問題(現在の問題)から自分の将来の問題(未来. 職業的思考の発達に関わる能力がどのように違う. の問題)へと意識が変化するということが考察で. のかを調べるため,設問項目の事前の点検を参考 にいくつかの設問項目を除去し,残った設問項目. 表4 教育実践前の1学年男子の因子分析の結果. を用いて学年別に因子分析(因子抽出法は主因子 法を設定,回転法はKaiserの正規化を伴うバリ マックス法,因子負荷を0.350で項目を分別)を 行った。 その一例として1学年男子の因子分析の結果を 表4及び表5に示す。その結果,1学年男子の5 月(表4)のF1(第一因子)はC4(人間関係力) を始めとしてC2(情報収集力)やC6(未来思考 力)の設問項目によって構成されているので自己 理解因子とした。F2(第二因子)はC2(情報収 集力)の成分によって構成されているので情報収 集因子とした。F3(第三因子)はC6(未来思考 力)の成分によって構成されているので未来思考 因子とした。 また,1学年男子の11月(表5)のF1(第一 因子)はC6(未来思考力)やC2(情報収集力). 表5 教育実践後の1学年男子の因子分析の結果. によって構成されているので将来設計因子,F2 (第二因子)はC6(未来思考力)とC1(職業理 解力)によって構成されているので将来理解因 子,F3(第三因子)はC6(未来思考力)とC5(意 思決定力)によって構成されているので将来設計 因子とした。 5月ではC4(人間関係力)の因子寄与率が高 く,11月ではC6(未来思考力)の因子寄与率が 高いという結果を得た。この結果は学校全体の因 子分析においても表れ,ほぼ同様の結果を得た。 この二つの成分に他の成分が含まれることで,各 学年の男女間の結果に特徴が生まれると考えられ る。. 351.

(9) 杵淵 信・出口 哲久・鈴木 仁志. きる。以上から,キャリア教育を行うことで生徒. にかけて高まっているためである。また,⑵のキャ. の職業的思考は変容していることが示唆できる。. リア教育の実践を行うことで進路や就職に挫折や 妥協をせずに取り組んでいこうとする意識が高. 4.結 論. まったことからも考えられる。 その意識はキャリア教育の実践前では人間関係. 本研究では,三村が開発した中学生用進路決定. などの現在の問題であるが,キャリア教育の実践. 自己効力尺度と「職業観・勤労観を育む学習プロ. 後では進路や就職など未来の問題へ変容してい. グラムの枠組み(例) 」から職業的思考の発達に. る。そのため,職業的意識の変容にはキャリア教. 関する能力尺度を作成した。また,その尺度を用. 育が関係していると考えられる。. いて全校をあげてキャリア教育の実践を行ってい る中学校に調査を実施したところ,次のような点. 引用文献. が明らかになった。 ⑴ キャリア教育の実践の前後にかけての進学意 識・職業意識の変容について比較したところ学校 全体で進学意識・職業意識が高まることが考察さ れた。また,3学年男女では職業意識に違いが表 れた。その違いは,3年生男子では職業意識が低 くなり, 3年生女子は高くなるという結果を得た。 そのため,3学年男女では高校進学に対しての意 識が違うのではないかという知見を得た。 ⑵ キャリア教育の実践の前後にかけての各設問 項目の結果に対してt境界値の両側検定を行っ た。その結果,C5(意思決定力)の得点が向上 し,C3(進路調整力)得点が低下したことから,. 厚生労働省 2010 労働経済白書:平成22年度版労働経 済の分析 第1章 第1節 雇用,失業の動向. 岩田考 2004 「働くこと」をめぐる意識の変容,モノ グラフ・高校生VOL.70:ベネッセ未来教育センター p22-32. ベネッセコーポレーション 2005 進路選択における振 返り調査<http://benesse.jp/berd/center/open/report/ shinrosentaku/2005/index.html>(2011年3月15日). 文部科学省 2010 図表で見る教育OECDインディケー タ<http://www.mext.go.jp/b_menu/toukai/002/ index01.htm>(2011年3月15日) . 中央教育審議会答申 1999 初等中等教育と高等教育と の 接 続 の 改 善 に つ い て<http://www.mext.go.jp/b_ menu/shingi/12/chuuou/toushin/991201.htm>(2011 年3月15日) .. これらの成分において有意差が検出された。この. 国立教育政策研究所 2002 児童生徒の職業観・勤労観. 成分は進路や就職の変更や妥協に関する項目であ. を 育 む 教 育 の 推 進 に つ い て<http://www.nier.go.jp/. る。これらのことから,キャリア教育の実践を行 うことで進路や就職に挫折や妥協をせずに取り組 んでいこうとする意識が高まることが考察された。 ⑶ キャリア教育の実践の前後にかけての調査結 果に対して因子分析を行った。その結果,職業的 思考の発達に関わる意識の構成はキャリア教育の 実践前では人間関係力の成分因子が影響を与えて いるが,キャリア教育の実践後ではC6(未来思 考力)の成分因子が影響を与えていることが考え られた。. shido/centerhp/sinro/sinro.htm>(2011年3月15日) . 文部科学省 2003 若者自立挑戦プラン<http://www. mext.go.jp/a_menu/ikusei/wakamono/index.htm> (2011年3月15日) . 文部科学省 2008 中学校学習指導要領:15-19 57-73. 三村隆男 2004 新訂 キャリア教育入門−その理論と 実践のために−:実業之日本社 p34-36 p.45-47. 日本キャリア教育学会[編] 2008 キャリア教育概説: 東洋館出版社 pp.69-74. Bandura 1986 A: Social foundations of thought and action: A social cognitive theory. Englewood Cliffs, NJ: Prentice-Hall. 新見直子 2008 中学生のキャリア意識と家族・友人に. 生徒の⑶の能力の意識構造の違いはキャリア教. 対するコミュニケーション内容の関連 広島大学心理. 育の実践の前後にかけて行われた教育課程及び. 学研究第8号 p67-75.. キャリア教育から表れると考察した。それは,⑴ の進学意識,職業意識もキャリア教育の実践前後. 352. 青谷法子 2005 企業と若年者の仕事に関するミスマッ チとキャリア形成についての一考察,東海学園大学研.

(10) キャリア教育実践が促す中学生の自己効力感の発達過程. 究紀要 経営・経済学研究編10号 p1-p24. 小浜逸郎 2002 人はなぜ働かなくてはならないのか洋 泉社 p114-p117.. (杵淵 信 札幌校教授) (出口 哲久 札幌校講師) (鈴木 仁志 札苗北中学校教諭). 353.

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