北海道教育大学における「コミュニケーション実践演習」の授業実践 : 授業実践の概要・変遷と学生の授業体験
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(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第 6 5巻 第 2号 J o u r n a lo fHokkaidoU n i v e r s i t yo fE d u c a t i o n( E d u c a t i o n ) Vo . l6 5,N O . 2. 平成 2 7年 2 月. 0 1 5 Fehruary,2. 北海道教育大学における 「コミュニケーション実践演習」の授業実践 -授業実践の概要・変遷と学生の授業体験一. 川島裕子・中西紗織*・芝木邦也. 北海道教育大学旭川校 *北海道教育大学釧路校. C l a s s r o o mP r a c t i c eo f“CommunicationP r a c t i c a lE x e r c i s e " a tHokkaidoU n i v e r s i t yo fE d u c a t i o n OverviewandChangeso fC l a s s r o o mP r a c t i c e,andS t u d e n t s 'E x p e r i e n c e si nC l a s s. a o r i *andSHIBAKIKuniya KAWASHIMAYuko,NAKANISHIS AsahikawaC a r n p u s,HokkaidoU n i v e r s i t yo fE d u c a t i o n ' K u s h i r oC a r n p u s,HokkaidoU n i v e r s i t yo fE d u c a t i o n. キ. 概要 今日,学校という場における子ども・若者たちの人間関係はより複雑化し,教師自身の「コ ミュニケーション能力」についても,その育成の必要性に関する語りや悲観的まなざしが増し ている。このような状況の中,北海道教育大学では,「教師の人間関係やコミュニケーション」 という領域に対する取組みとして,文部科学省特別経費による 3年間のプロジ、エクトとして「コ ミュニケーション実践演習」の授業実践を行った。本論文では,「コミュニケーション実践演習」 の実践報告として,「授業実践の概要 J,,-授業実践の変遷 J,また,「学生の授業体験」を提示 する。「授業実践の変遷」では,「講師のコラボレーション J,,-授業内容の変遷 J,,-学びの空間 選択」の 3つのテーマに焦点をあて,「学生の授業体験」では,学生のレポートと追跡調査ア ンケートの結果を示す。. 1.はじめに. 授業実践の全体像を示すことを目的とする。「コ ミュニケーション実践演習」は, 2 0 1 1年度から 2 0 1 3. 本論文は,北海道教育大学で実施した「コミュ. 年度の 3年間,北海道教育大学にて実施した,文. ニケーション実践演習」の実践報告を行い,その. 部科学省特別経費「富良野 GROUPと連携した演. 319.
(3) 川島裕子・中西紗織・芝木邦也. 5日間の集中講義の形態. 劇的手法による教員養成課程の学生並びに現職教. という日程的な理由で,. 員のコミュニケーション能力育成プログラム開発. をとった。土日を中心に,祝日と合わせた 3連休. J 事業の一環 (以下,「本プロジ、エクト」という ). として行われたものである。. で、行ったため,. 2週間のプログラムとして実施す. ることカ王多かった。. 今日,学校という場における子ども・若者たち の人間関係はより複雑化し,教師自身の「コミュ ニケーション能力」についても,その育成の必要. 3 . 捜業開講の日時と場所 「コミュニケーション実践演習」の授業実践は,. 性に関する語りや悲観的まなざしが増している。. 2011年度に 4回(札幌校後期,旭川校前期・後期,. このような状況の中,教員養成大学では,「教師. 2012年度に 3回(旭川校前期・後期, 釧路校後期),. の人間関係やコミュニケーション」という領域に. 釧路校後期), 2013年度に 2回(旭川校前期,事l[. 対して,どのような取組みをしていくべきなのか。. 路校後期)の合計 9回行った。北海道教育大学は,. 本プロジェクトは,このような問題意識を元に始. 5つのキャンパス(札幌校,旭川校,釧路校,函. められたものであり,「コミュニケーション実践. 館校,岩見沢校)から成っているが,本プロジ、エ. 演習」は,このような社会的状況と要請に対する. クトの授業実践は,教員養成課程の 3キャンパス. 具体的取組みとして行ったものである。「コミュ. (札幌校,旭川校,事l[路校)で行った。. ニケーション実践演習」は,倉本聴氏主宰の富良 野塾1卒塾生らでつくる演劇集団「富良野 GROUPJ と連携し役者養成として行われている様々なア. 4 . シラパス 「コミュニケーション実践演習」のシラパスは,. クテイビテイを,教師教育に転用・応用する形で. 授業内容の変更とともに,言葉遣いの詳細な変化. 行った授業実践である。本論文では,「コミュニ. も含めて,少しずつ変化していった。以下は,最. " 授 ケーション実践演習」の「授業実践の概要 J,1. 終的な「コミュニケーション実践演習」のシラパ. 業実践の変遷J,また,「学生の授業体験」を示し. スに記載した内容である。. ていく。 授業内容. I I . 授業実践の概要 1.捜業名1"コミュニケーション実践演習」. この授業では,教師がかかわる「コミュニケー ション実践J~こついて理解を深めることと同時に, 日常のコミュニケーション実践を切り口に,「学. 1年日は「演劇」として行っていた. 校教育」や「教師」について理解を深めることを. が , 3年目以降は,「コミュニケーション実践演習」. 目指します。参加型,体験型,双方向型のワーク. に改めた。「演劇」という授業名は,授業の目的. ショップ形式の授業で,想像力や創造性を駆使し. と内容からそぐわないということと,学生からも,. た様々なゲームやアクティピティを行います。よ. 「受講前は,演技をさせられるのではないかと思っ. り豊かで新しい形の教育活動を目指す教師志望の. た」などの意見を多く聞いたため,改名した。. 学生のための授業です。. 2 . 科目群と形態. 授業の目標. 授業名は,. 「コミュニケーション実践演習」は,教養科目. 近年,教師の「コミュニケーション能力」不足. として実施した。旭川校では,「人間・こども理. が繰り返し危倶され,文部科学省による中教審答. 解に関する科目群」の中に,事"路校・札幌校では,. 申においても,教師の「コミュニケーション能力」. 「コミュニケーション科目群」の中に位置づけた。. の重要性が叫ばれています。しかし,教師に必要. 授業形態は,全国公演を抱える役者と連携する. な「コミュニケーション能力」とはーイ本何でしょ. 320.
(4) 北海道教育大学における「コミュニケーション実践演習」の授業実践. うか。この授業では,「コミュニケーション能力」. 3年間のプロジ、エクト実施期間中,プロジ、エクト. を「コミュニケーション実践」として捉え直しえ. メンバー内で,話し合いを何度も持ち,試行錯誤. 様々な体験型の活動を通して,教師とコミュニ. を重ねながら進められた。その試行錯誤のプロセ. ケーションの接点について理解を深めていきま. スは,各プロジェクトメンバーが,それぞれに教. す。また,それらの活動の中で,自らの目指す教. 育者として,実践家として,アーテイストとして,. 師像や教育活動を「コミュニケーション実践」と. また研究者として育んできた様々な思いや価値. いう観点から再考し,明確にしていくことを目指. 観,作法等を出会わせ,それらを擦り合わせてい. します。. くプロセスであったと言える。また,授業実践へ の参加者である学生の思いとの擦り合わせでも. ・. あった。つまり,最終的な「コミュニケーション. 到達目標 自己・他者・その関係性や社会とのかかわり. についての言Z i 哉を深:める。 iコミュニケーション」をキーワードに,自. •. ら目指す教師像や教育活動について考察し明確. ・. 実践演習」の授業内容は,プロジ、エクト開始時に 既に設定されていた着地点としてあったものと言 うよりは,これらの様々な擦り合わせの中から生 まれたものと言うことができる。 以下に,「授業実践の変遷」として,「講師のコ. にする。 ワークショップ型の学びのスタイルを習得す. る。特にグループ活動やリフレクションを中心. ラボレーション J, i授業内容の変遷 J, i学びの空 間選択」の 3つのテーマを見ていく。. とした学びのスタイルについて認識を深める。. 1.講師のコラボレーション 授業担当講師については, 2 0 1 1年度の旭川校前. 成績評価. 授業への参加(積極的な発言,質問,提案,聞き. 期は,久保が中心として担当し,補助として富良. 方) 50%. 野. 課題への取り組み. 10%. GROUPメンバーの 1人が加わっていた。川. 島が, 2 0 1 1年度の釧路校後期の授業から本プロ. 授業内容に関する振り返り(各授業の最後に振り. ジ、エクトに加わり, 2 0 1 1年度の旭川校後期の授業. 返りシートの提出を求めます。) 20%. から,授業中のアクテイビテイのふりかえりにも. レポート. 加わるようになった。 2012年度前期からは,久保. 20%. と川島のティームティーチングという形で実施す 備考. るようになった。また,芝木や,事l[路校では中西. 動き易い服装と履物。. が部分的に授業を担当するようになっていった。 ティームティーチングの形式をとる際は,講師. 5 . プロジェクト主要メンバー 「コミュニケーション実践演習」の授業実践は,. が 1人ずつ個別のアクテイピティを担当すること が主であった。その際,アクティビティを担当し. 本プロジェクトの主要メンバーである,筆者らの. ない者は,参加者として一緒に活動に参加する場. 3名と,富良野 GROUPから林原博光氏,久保. 合と,参観している場合とあった。参観する場合. 隆徳氏,東誠一郎氏,長尾泰光氏の 4名の,計 7. でも,アクテイピティ後のふりかえりは一緒に. 名を中心に行った。. 行った。 授業デザインの仕方についても,授業担当講師. m .授業実践の変遷 「コミュニケーション実践演習」の授業実践は,. が変わるにつれ,少しずつ変化していった。 2 0 1 1 年度旭川校前期は,久保を中心とした富良野. GROUPのメンバーが授業内容を計画していた。. 3 2 1.
(5) 川島裕子・中西紗織・芝木邦也. 2011年度釧路校後期から,大学側のメンバーも授. ルから意識化へ」と変化した点が挙げられる。 1. 業内容の決定に加わるようになった。授業後に,. 年目は,「よいコミュニケーションのあり方」と. 1日の授業内容を振り返る時間. いう絶対的なものが先行する形で,そのスキルを. を持つようになり,その話し合いの内容が翌日の. 身につけるためのトレーニングという側面が強. 授業実践に反映されるようになっていった。さら. かった。挨拶の正しい仕方など,マナー教育的要. に , 2012年度旭川校前期からは,授業内容全体を. 素も含まれていた。それに対し,. 通したテーマや目的,アクティビティの流れにつ. 授業目的として,学生の気付きや意識化を図ると. いて,久保と川島で授業前に詳細に話し合いを持. いう側面が徐々に強くなっていった。具体的には,. つようになった。その際も,各アクテイピテイの. 各アクティピティの後にふりかえりを行なうよう. 具体的進め方については,アクテイピテイを担当. になり,また,. する講師が準備を行なった。. りを行なう時間と,翌日に全体で前日のふりかえ. メンバー全員で,. 2年日以降は,. 1日の最後には,個人でふりかえ. りを行う時間を設けるようになった。また,授業. 2 . 授業内容の変遷. 実践の中で,講師から学生へ問いかけを行う際も,. 3年間で大きく変化した「授業内容の変遷」と して,次の 3点が挙げられる。. その問いかけの仕方が,技術の習得度合いや正解 への理解度を問うものから,学生の各自の感じ方. テーマの設定と目的の明確化. や考え方を問うものへと変化していった。. 授業目的の変化:スキルから意識化へ. 3つ日の大きな変化は,授業実践を行なう際に, 「教師」と「学校」という視点を意識し,「『教師. 「教師教育」という枠組みの導入. 1つ目の変化は,授業での学びの内容に関連し. 教育」という枠組みの導入」を行っていった点で. 2年. て,「テーマの設定と目的の明確化」を行うよう. ある。同じアクティピティを行なう際でも,. になった点である。 1年日は,役者養成を目的と. 日以降は,各アクティピティを「教師」や「学校」. して富良野塾で行われてきた様々なアクティピ. という視点から捉え直し,その結びつきを意識的. ティやシアターゲームを,教員養成大学という文. に増やすようにしていった。その際,講師側が「い. 脈で実験的に行なうという「試行期間」であった。. い教師像」を一方的に教え込んでいくのではなく,. それは,演劇活動の「熱のこもった祭り事」とし. 「教師」や「学校」について,学生が自らの思い. ての側面が強く,授業での学びのテーマや目的は. や考えを深めていけるような授業展開を心がけ. 暖昧なままであることも多かった。「試行期間」. た 。. という趣旨を受講生である学生にも伝え,授業を 受けた感想,改善点,提案などの意見をもらい, それらを授業デザインへ積極的に取り入れていっ た 。. 3 . 学びの空間選択 「コミュニケーション実践演習」においては, 学びの場である教室の空間選択は,授業体験の質. 2年目からは,学びにテーマを設定することで,. を左右する重要なものであると考えた。現在,日. 1日の授業での学びが,学生の中により明確に残. 本の教員養成大学において,授業目的に応じて選. ることを目指していった。授業で行う各アクティ. 択できる教室空間の種類は多いとは言えず,それ. 1日の学び. 自体が問題であるにせよ,現在の限られた選択肢. のテーマ,アクティピティとその目的の関連性に. の中からでも,ワークショップ形式の授業に適し. 意識を向けて行った。 3年目は,. た空間を意図的に選択することは重要であると考. ピティの目的を明確にし,その上で,. 2年目の流れを. くみ,より体系的に授業実践を捉えるために,テー. えた。「コミュニケーション実践演習」の授業は,. マ,目的,アクティビティの整理をさらに行った 30. 授業実践を通して,創造的かつ深い関わり合いや. 2つ日の大きな変化として,授業目的が「スキ. 3 2 2. 省察が生まれることを目指していた。そのため,.
(6) 北海道教育大学における「コミュニケーション実践演習」の授業実践. 学びの空間として,身体や心が「管理・統制され. であったのに対し,正方形に近い空間であり,授. る空間」ではなく,「解放される空間」という視. 業中の集中が中央に集まりやすい空間でもある。. 点から,空間を選択するようにした。. 空間のサイズは,広すぎず,狭すぎず,また,天. 授業実践の場は,次の通りに,旭川校と釧路校 ともに,. 3年間で何度か変化している。まず,本. 井が高いことも特徴の 1つである。 釧路校においては,. 1年日は,小ホールを中心. プロジェクトの試行期間であった 2010年度の旭川. に授業を行った。しかし,小ホールは,広く無機. 校の授業では,受講者数が多数であったことから. 質で、薄暗い部屋だったため,途中から旭川校と同. も,体育館を選択した。しかし,空間が広すぎて. 様に,研究棟 (B棟) 7階の「演奏室」で授業を. 集中が拡散するという点から,それ以降は使用し. 行うようになった。中西が芸術グループ音楽所属. なくなった。その後,旭川校では, 2011年度は,. であったことと,また,天井の高さや 7階という. 講義棟 (L棟) 1階の「講義室」で、授業を行った。. 視界の高さからくる開放感と,空間のサイズや形,. 「講義室」には,机やイスが配置されており,授. 音響のよさから,旭川校と同様に選択した。. 業前にそれらを移動させ,オープンスペースを {乍った上で,授業を行った。 2年日の 2012年度の旭川校前期では,共通教育. N. 学生の授業体験. 棟 (p棟) 3階の「会議室」を使用した。天井は. 以下では,学生の「コミュニケーション実践演. 高くはないが,グランドに面しており,遠く連な. 習」の授業体験を示す目的で,学生のレポートと. る山々が見渡せるなど見晴らしがよく,講義室よ. 追跡調査アンケートの結果を見て行く。学生の言. りも開放的な空間であった。光が多く入る明るい. 葉は,修正等を加えずそのまま掲載している。ま. 部屋でもあり,また,床は,柔らかいフェルト素. た,下線は,筆者によるものである。. 材が使用されていた。 2012年度の旭川校前期の後,プロジ、エクトのメ. ンバー内で,教室空間の選択について一度話し合. 1.受講後の学生の感想 以下の授業の感想、は,学生から最終課題として. いを持った。旭川校内にある教室の見学を行い,. 提出されたレポートの一部抜粋である。本プロ. 選択しうる空間について調査を行った。その際,. ジ、エクト 1年目の最終課題は,授業全体を振り返. 福利厚生施設 (F棟) 2階にある「談話室」が,. る内容のものであったが,. 机やイスがなく,従来の「教室」という場が持つ. を変化させたため,以下のレポートは,. 空間のイメージから離れた空間であり,ワーク. 受講生に限定されたものとなっている。なお,そ. ショップを行う上で利点があるとして,候補と. のため,文中に記載されている授業名は,. なった。しかし,結局は,天井が低く圧迫感があ. の. 2年日から課題の内容 1年日の. 1年目. i ? 寅麗しとなっている。. ること,また,声が反響することから使用しない ことになった。. この 5日間,すごく様々なことを考え,自分. 最終的には, 2012年度旭川校後期以降の授業は,. を見つめた気がする。どうしてできないんだ. 音楽棟 (M棟) 2階の「演奏室」で行うようになっ. ろう,あの時の自分はこういうことだったん. た。「演奏室」は,壁 2面は大きな窓で囲われ,. だ,なんでこんな人間なんだろう,将来どう. さらに,壁 4面とも淡いピンク色の遮光カーテン. したいんだろう…。今まで気づかなかったこ. で覆われているため,光の量を調節することが可. とや見過ごしていたことを,自己対話の中. 能な部屋である。また,土足厳禁であるため,床. で,または他の人との対話の中で感じ,見つ. に座りやすく,動きの選択肢の幅が広がる空間で. けた。私はコミュニケーションを「話す」だ. もあった。空間の形は,講義室や会議室が長方形. けでなく,場を読む力・雰囲気づくり・その. 3 2 3.
(7) 川島裕子・中西紗織・芝木邦也. 人の背景そういったものも含まれていて,. ろうという気持ち,他者を理解していこうと. もっと大きなものだと考える。自分を見つめ. いう気持ち,私はそのような探求心によって. なおすとは,自分の背景を知ること O つまり,. 多くのことが学び得ることをこの講義を通し. 自分のコミュニケーション能力も見つめなお. て知った。これからの人生において探求心を. す。今回の講義はそのきっかけを与えてくれ. 大切に生きていきたいと思うに重ね,ここで. たと思う。講義を受けて,すぐ能力が上達す. 学んだことをそのまま思い出として置いてい. るとは思っていない。きっと積み重ねていく. くのではなく,実践を繰り返すことも意識し. 中で培われるものだから。気づくことができ. これから有意義に生きていきたい。. 0 1 1年度札幌校後期) (女子学生:2. た,それが講義を受ける前と後で変わったこ とだと思う。これから,どう生活していくか。 自分の殻をぶち壊せるか。それがこれからの. 演劇の集中講義を通して,コミュニケーショ. 課題である。. ンということについて多くのことを学ぶこと. 0 1 1年度釧路校後期) (女子学生:2. ができたと思う。コミュニケーションに焦点、 をあてた講義は,今までの,大学も含んだ学. 全体を通して,演劇の講義は大学入ってから. 校生活ではなかったことなので,とても新鮮. の講義の中では異質で,短期間で行ったから. で刺激的だった。正直に言うと,ある程度は. かもしれないが私は楽しく受けれたし,勉強. 人前で話せると,自分は思っていた。しか. になった。そして何より人と関わることが面. し,まだまだ未熟だったと感じた。もちろん. 白かった。人数が少なく,誰かの陰に隠れる. それだけではなく,終った時には,少しはマ. ということもできなかったので,人見知りに. シになったと感じたので,とてもいい経験. とっては逆に荒療治で良かったのかもしれな. だった。(中略)この講義で学んだこと,感. い。教師になることを前提として講義は進ん. じたことを,これから先忘れないようにして. でいたと思うが,別に教師という職業に限ら. いきたい。. ず,幅広く活用できるのではないかと感じた。. 0 1 1年度旭川校後期) (男子学生:2. (中略)受講前と受講後で何か変わったかと 言われれば,あまり変わっていないかもしれ. この講義を受ける以前は,自分は割と上手く. ないが,確実に自分の中の意識は変わったと. 他人とコミュニケーションをとれていると. 思う。思い付くところでは,以前より人の顔. 思っていた。誰かと会話することに関して,. を見て話ができるようになった,あまり関. そこまで問題意識を持っていなかったし,持. わったことのない人でも自分から声をかけれ. とうともしていなかった。しかし,実際は,. るようになった,など。いきなり変えていく. 話し方,聞き方ともに改善しなければならな. ことは多分無理なので,自分のできる範囲で. い点が沢山あった。コミュニケーションに士f. 確実によくしていきたい。. する意識が,変わった。もっと普段の自分を. 0 1 1年度釧路校後期) (男子学生:2. 見つめなおし,より高い次元(心の深い所) でのコミュニケーションができるようになり. 私は演劇の講義で色々な想いをめぐらせ,ま. たいと考えるようになった。一つ一つの会話. た自分と向き合うことが出来た。ここまで多. を大切に扱うことが,長く一緒に居ることよ. く,深くを考えた大学の授業とは,私はまだ. りも大切なのではないかと思う。. 出会ったことがなかったため講義が終了した 今でも不思議な気持ちがしている。自分を知. 324. 0 1 1年度釧路校後期) (女子学生:2.
(8) 北海道教育大学における「コミュニケーション実践演習」の授業実践. 以上の学生自身の言葉として語られた発見や気. 5段階で求めた。また,「この授業がその後,役. づきは,特に顕著なものとして,次の 3点にまと. に立っていますか?j, iこの授業が教育実習で役. められるだろう。. に立ちましたか?j の問いに⑤,④と回答した者. ①. には,自由記述で,どのように役立つているかを. 他者と関わったり,他者を理解しようとする 中で自己を見つめ直し,自己を再発見した。. ②. 「コミュニケーション」という概念への意識 が変わった。. 尋ねた。 調査結果は,表 1の通りである。この他に,教 育実習経験者に尋ねた「この授業が教育実習で役. 授業での学びを元に,今後も実践を繰り返し. , に立ちましたか?j の問いに対しては,⑤が 1名. ながら,意識し続けることが重要だと分かつた。. ④が 3名そして,③が 2名という結果であった。. ③. 表. 3年間に渡って行ってきた「コミュニケーショ. 1 追跡調査 名. ン実践演習」の授業実践は,「コミュニケーショ ⑤ 大. ③ と. L. ち. A そ う U 〉 ↓ 、G. ン能力」を「コミュニケーション実践」として捉. と も. 思 そ っ つ. 業での学びを,各自の日常生活へ応用し,日常生. の成果として,学生が,授業の中で,「すごく様々. この授業に今でも 1出足している. 9. 2. なことを考え j,i色々な想いをめぐらせ j,i多く,. この授業の内容を思い { Hすことがある. 7. 4. になりたいと考えるようになった」と言うように,. この授業から新しい発先日・考えみを得ること ができたと思う この授業をきっかけに,あなた白身変わりま したか? この授業がその後,役に立っていますか?. わ な. 4 そ 同 ナ 」 ) 、. 、L、わ え な L、 な 、 , ¥ L. 活を変革していくことを目指して行ってきた。そ. の深い所)でのコミュニケーションができるよう. く. ら. え直し,学生が授業に積極的に関わることで,授. 深くを考え」たと言い,さらに,「より高い次元(心. 、 イ ①. ② 4 z つ 思 、 L. 8 3. 。。 。 。 。 。 。。 。。。 1. 2. 8 2. 6. 6. 1 1. より深いリアリティを体感し,そこからの拡がり や応用へ意識が促されるようになっていると言え. 全体の結果については,. 5段階別に,全質問の. るのではないだろうか。学生が,「実践」の中で,. 回答者数をみると,「⑤大いにそう思う」と「④. コミュニケーションについて学んだ経験を基盤と. そう思う」に多数の回答があり,受講後の現在で. しながら,この先,教師として,学校教育におけ. も,授業での学びが,強く残っていると言える。. る人と人とのコミュニケーションのあり方を,意. また,それは,全ての質問項目について言えるこ. 識的に考え続けることへとつながっていくことが. とであり,授業全体の評価としては高いものと言. 期待できるだろう。. えるだろう。 さらに,自由記述には,以下のような回答が. 2 . 追跡調査から. あった。. 「コミュニケーション実践演習」の受講生のう ち,在校生と所在がわかった卒業生に対し,追跡. 卒業生(現職教員)からの回答:. 5名のうち, 1 2名 調査を実施した。その結果,計 1. a . この捜業がその後,役に立っていますか 7. から回答が得られた。質問事項は,全員に対し,. 積極的に自己開示していくことの大切さ. 以下の表 1の 5つの問いを,また,教育実習経験. や,演じるということの大切さを,日々子ど. 者 (6名)には,さらに「この授業が教育実習で. もたちとの関わりの中で実感できているた. 役に立ちましたか?jの問いを尋ねた。回答は,「⑤. め,役だっていると思う。また,目隠しをし. 大いにそう思う. ③どちらともいえ. た相手を安全にゴールまで説明し導く活動を. ①全くそう思わない」の. 行ったことで,自分にとってその説明分かり. ない. ④そう思う. ②そう思わない. 3 2 5.
(9) 川島裕子・中西紗織・芝木邦也. やすいものでも,他者にとって分かりやすい. とができた。また,偉人の格言を選ぶ活動を. ものでなければ意味がないのだということを. 通して,自分の今までの生き方であったり,. 実感し,「今の説明で子どもたちは分かつた. 今後の生き方を考えるきっかけになり,有意. のだろうか?J と自分を振りかえる態度が身. 義な講義であったと感じている。. についたと感じる。. b. この捜業が教育実習で役に立ちましたか 7. b. この授業が教育実習で役に立ちましたか?. 人に f 可かを f 云えるときに,ジェスチャーを. 「教師は役者である」ということをこの講. 加えたり,姿勢や態度を気をつけ話すよう心. 座で教わったが,それは本当だったなと感じ. がけた。授業内で,そのようなことが相手に. た。この講座を受けた後だったからこそ,子. どのような印象を与えるのか知ったことで,. どもたちの前にたった瞬間スイッチを切り替. 日ごろ客観的に見れない部分を知り,改める. えなければならないことを意識でき,恥じら. ことができた。. 4年生・男子. いを感じず,堂々と子どもたちに関わること. ( 2 0 1 2年度旭川校前期: 2年生で受講). ができたと思い,役にたったなと感じた。 小学校教員・女子. ( 2 0 1 3 年度旭川校前期: 4年生で受講). a . この捜業がその後,役に立っていますか 7 緊張している場での自分の振る舞いや表情. a . この授業がその後,役に立っていますか? 役立つています。今春から教員をはじめて,. をふと振り返って他人からはどう見えている のか,と考えるようになった。. 自分の経験や思いを積極的に話すことで,子. また,他の人の仕事や表情,行動から考え. どもたちとの距離が縮まっている実感を得て. ていることを自分でも考えたり,自分と比較. います。. したりするようになった。自分を振り返る機 中学校教員・男子. ( 2 0 1 3 年度旭川校前期: 4年生で受講). 会が増えた。 b. この授業が教育実習で役に立ちましたか?. 先生方から見た自分,生徒から見た自分を. a . この授業がその後,役に立っていますか?. 振り返ったりして,自分があってほしい自分. 講義を受けて,人に伝えることの難しさ,. のイメージに近づけることができたように思. よりわかりやすく話す方法・必要性を学びま. つ 。. した。もともと人前で話すことは好きだった. また,生徒たちに授業内での言動から不安. けれど,相手に伝えようとする意識を持つこ. がられるような実習生にはならなかったよう. とができたと思います。相手に向けて声を発. に思う。. 4年生・女子. する,自分の感覚以上に細かく説明すると いったことは教員として働いているいま非常. ( 2 0 1 2年度旭川校後期: 2年生で受講). に役にたっています。 中学校教員・男子. ( 2 0 1 3 年度旭川校前期: 4年生で受講). a . この捜業がその後,役に立っていますか 7 他の人と話す際,言葉だけでは伝わらない ときに,伝え方を変えてみるということがで. 在校生からの回答:. a . この授業がその後,役に立っていますか? 授業内で、行ったアイスブレイクは,教育実 習で活用し,子どもたちとの距離を縮めるこ. 3 2 6. きました。. 3年生・男子. ( 2 0 1 2年度釧路校後期: 2年生で受講).
(10) 北海道教育大学における「コミュニケーション実践演習」の授業実践. 以上の追跡調査での自由記述では,本授業が,. [註]. 教師としてコミュニケーションを学ぶ上で,有意 義なものであったという認識を多く確認すること ができる。加えて,これらの学生の体験を元に, 授業デザインについて再考すると,これまでの指. 1 富良野塾は,富良野市の山間部(布礼別)に存在し. 0 1 0年 3月をもって閉塾(全2 5期,卒塾生 3 7 5名)。 たが, 2 2 0 0 3 ) がある。 富良野塾に関する参考図書に倉本 ( 2. ,-コミュニケーション実践演習」においてコミユ. 針と重なることも含まれるが,次の 3点がキー. ニケーション能力」を「コミュニケーション実践」と. ワードとなるだろう。. して捉え直した根拠については,川島・加藤・芝木. ①. 自己省察. ②. 意識と意図を持った関わり合い. ③. コミュニケーションの多様な方法. ( 2 0 1 4 ) を参照。 3. ,-コミュニケーション実践演習」における学びのテー. マの選出とその具体的変遷については,続稿で報告を 予定している。. 4 HATOブロジ、エクトの正式名称は,-大学問連携に よる教員養成の高度化支援システムの構築教員養成ル. V . まとめ. ネッサンス・. HATOプロジェクト」である。. 本論文では,北海道教育大学で実施した「コミュ. [ 5 1用・参考文献]. ニケーション実践演習」の実践報告として,「授 業実践の概要 J,'授業実践の変遷 J,また,「学生 の授業体験」を明示した。本授業実践の特徴の 1 つは,教師のコミュニケーション教育を,「演劇」 へ着目することで,「実践」を中心とした授業実 践を行っている点である。本プロジェクトでは, 日本で実施されている現在の教師教育の流れの中 で,「演劇」が,その「教育方法」として,また その「学び、の形態」として持つ意味や可能性につ いて探求し,授業実践を行ってきた。ここで提示 した授業実践への視点が,教員養成大学における. 山川島裕子・加藤慎司・芝木邦也 ( 2 0 1 4 ) ,-教師に求め られる「コミュニケーション能力」の言説を読み解く 一文部科学省の政策に注目してー J ~北海道教育大学紀 要~. 6 4 ( 2 ) .p p . 1 6 5 1 7 9 .. ( 2 ) 川島裕子・中西紗織・芝木邦也(刊行予定) ,(仮)教 員養成大学におけるコミュニケーション教育の授業実 践. 学ぴのテーマに着目して. J~北海道教育大学紀要」. ( 3 ) 倉本聴(監修) ( 2 0 0 3 )~富良野塾序章一開塾20周年一」 ヱフジー武蔵. ( 4 ) 芝木邦也(監)・川島裕子(編著)・久保隆徳 ( 2 0 1 4 )~教 師になる劇場(成果報告書)~北海道教育大学. コミュニケーション干ヰ日の一助となることを願. つ 。. [附記]. また,「コミュニケーション実践演習」は, 2 0 1 4 年度から始められた 4大学(北海道教育大学,東. 本論文は,本プロジ、エクトによる『教師になる. 京学芸大学,愛知教育大学,大阪教育大学)連携. 劇場(成果報告書) J の一部(, 2章1.北海道教. 'HATOプロジ、エクト 4J の先導的実践プ. ) に新たなデータなどを加 育大学での授業実践J. による. ログラム「演劇的手法による教員養成課程の学生. 筆したものである。. 並びに現職教員のコミュニケーション能力育成プ ロジ、ェクト」に引き継がれている。今後も,教員. ( JI島 裕 子 北 海 道 教 育 大 学 特 任 研 究 員 ). 養成大学での「教師の人間関係やコミュニケー. (中西紗織釧路校講師). ション」という領域に対する授業実践のあり方に. (芝木邦也旭川校教授). ついて,さらに探求していく予定である。. 3 2 7.
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