97 〈研究ノーート〉
繊維ならびにアパレル製品の小売市場と
消費者行動 (1)
神 III 進 1■且皿VM
繊維ならびにアパレル製品と消費者行動について 消費者行動研究の基本的概念図式 繊維ならびにアパレル製品の生産と販売 一マーケティングの概要とその主要概念一 繊維ならびにアパレル製品の小売市場 一小売業者のリテ/ル戦略に関する諸研究例一 (以上本号) 消費者行動 (1)=消費者と知覚されたリスク(以下次号) 消費者行動 (2)1消費老の購買決定 消費者行動 (3>:消費者類型とその購買行動特性 消費者行動(4):購買後評価 一消費者満足と苦情行動を中心にして一 工 繊繊ならびにアパレル製品と消費者行動について 消費者は,4つの権利をもっている すなわち,安全に対する権利(Right to Safety), 十分な情報を与えられる権利(Right to be Informed),自由に選ぶ権利(Rlght to Cho− ose),賠償される権利(Right to be heard)である。これは,元アメリカ大統領,故ケ 1)ネディ(Kennedy, J. F.)の特別教書で発表された消費者利益の保護についての理念であ り,今日の消費者主義運動(Consumerism)の基本的な考え方を提供した。 はたして,これら諸権利が,今日の繊維ならびにアパレル製品の消費者にとって十分満 たされているといえるであろうか。もし満たされていないとすれば,どのようにすればこ れら諸権利を満たすことがでぎるであろうか。これら諸権利の充足を要求することが,企 業に対してネガティブな意味をもつものだろうか。また,消費者の考える安全とは,情報 とは,選択とは.賠償とは,何であろうか。 他方,これら消費者の諸権利に相対する企業側の考え方も,多様である。今日の,生産 1)1962年,3月のケネディ大統領の議会に対する特別教書。98 彦根論叢第221号
と消費とを結ぶ流通活動の基本的なマネジメント哲学(Management Philosophy;経営哲 2) 学)をとりあげてみると,次のようなものがある。消費者は,自己にとり有用かつ購入可 能な製品に自発的に対応しているのだから,マネジメントの主要な仕事は,生産の効率を 高め,価格を下げる努力をすることであるとする生産志向の哲学,消費者は,適度な価格、 の.よりよい製品に好意的に対応しているのだから,製品をどのように市場化するかを考 える必要はほとんどなく,よい製品を作る努力さえすればよいとする製品志向の哲学,消 費者は,通常,実質的な販売やそのための促進活動を行なわなければ,企業の製品を十分 に購入しないものであるとする販売志向の哲学,企業の主要な仕事は,消費者の欲求,願 望,嗜好がいったい何であるかを決定し,企業を,消費者の期待や満足の実現に向けて適 合させることであるとするマーケティングの哲学,企業の主要な仕事は,消費者の満足を 実現し,企業目的や責任を果たす鍵として,長期的な視野から,消費者と社会の安寧を計 ることであるとする社会的マーケティング(Social Marketing)の哲学,などである。な るほど,これら諸哲学は決して相互排反的なものではなく,現実の企業活動において,重 複する部分も存在するであろう。しかも.繊維ならびにアパレル企業にとってどのような マネジメント哲学が支配的であるかは,企業の規模,種類,取扱い製品などにより,多様 な相違がみられるであろう。 しかしいずれのマネジメント哲学をとるにせよ,どのようにすれば消費者の諸権利を企 業活動を通して満たしうるであろうか。そのような諸権利を完全に実現しないことの方 が,企業にとりポジィティブなのであろうか。また,企業の考える消費者に対する安全と は,情報とは,選択とは,賠償とは,いったい何であろうか。 本稿では,このような問題を考える基本的な下地を,諸研究の概要をさぐることより提 示したい。そして今後,一方での消費者と他方での企業とが,どのようなかかわりをもっ て進むことが企業にとってよりよい成果をもたらすものかの解答を,繊維ならびにアパ レル製品に対する消費者行動論(Theory of Consumer Behavior)ないし消費者心理学 (Consumer Psychology)を論じることより模索してみたいと思う。 豆 消費春行動研究の基本的概念図式 消費者行動鈍ないし消費者心理学とは,消費者の行動の科学,すなわち,消費者の行動 2) Kotler, P., 198e. Marketing Management: Analysis, Planning, and Control, Fourth Edition, Prentice−Hall, lnc,, Englewood Cliffs, New Jersey, pp. 18−37.〈研究ノート〉繊維ならびにアパレル製品の小売市場と消費者行動 (1) 99 を記述し,説明し,予測することを目的とした科学である。しかもそのためには,消費者 の多面的研究を必要とする。 3) 村田は,消費者を社会的ないし社会文化的環境のなかで行動する心理的実体(APsy− 4) chologica1 Entity)とみなし,オルポート(Allport, G W)の研究を参考に,消費者の 購買意思決定への影響要因を,ユ図のように図示した。消費者の購買意思決定だけをとり あげても,その研究には,経済学,経営学,心理学,社会心理学,社会学,文化人類学な ど,多くの学問による学際的研究の必要であることが示されている。 本稿では,この村田の図式を,繊維ならびにアパレル製品に対する消費者行動研究のた めの基本的概念図式として,多少修正を加えて借用することにした。2図に示す図式であ る。ただ,この図式に示す個人,越畑的要因から文化的要因に至る諸要因と消費者行動と の問の関係は,それぞれについて重要な問題を含んでおり,本稿においてそれらを個別に 論じることが紙幅の関係より不可能である。 それゆえ,以下の各節では,次のような問題に話を限定して議論を進めたいと思う。す なわちs①繊維ならびにアパレル企業の行動について,特に,で一ケティングやリテイリ ングに関する問題,②消費老行動に関して,消費者の製品購買におけるリXク知覚の問 頁 周
磐文雌媛】姻
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サ品あるいは Tー ビ ヌ、 文 化 社会K層
クルーフ e 料 動機およひ pーソナリテ/ 認 知 購 買 ?鼈鼈黶E一一一の一囲 @意思決定 1図 消費者行動への影響要因5) 3) 村田昭治,1969.r消費者行動の行動科学的研究」,吉田正昭,村田昭治,井関利明共編, r消 費者行動の理論』,丸善株式会社。 4) Allport ,G. W., 1954. The Nature of Preiudice, Addison−WeE ley Publishing Company, Inc., Cambrid.ffe, Massachusetts. 5)村田昭治,前掲書,p.57,図2・2。ユ00 彦根論叢 第221号 .文化的,
ミ会的
v 因 集団的 v 因 v 囚対八的 西入的要因消費者行動
文化的、 @召会的 ソ f『1 │ 沌 u占1」 なと 耶 W団凝集性 W団圧力 W団月L範 梶[ター/・フ @ など 八八的相互 ?@ 用 ホ人認知 ホ人魅力 @ なと 欲 求パーソナリティ ゥ 已概念 M念・価値観 ヤ 農 fモグラフィ〃脚 @ など 知 覚 エ, 精 消 @費一 一 一 一 購買一, 一 一 一イ]動 繊維ならびに Aパレル製品 行動 2図 繊維ならびにアパレル製品に対する消費者行動研究のための基本的概念図話 題③消費者の購買決定ならびに購買行動特性の問題④消費者の消費行動プロセスおよ びその結果として生じる、消費者満足ならびに苦情行勤の問題,である。 皿 繊維ならびにアパレル製品の生産と販売 マーケティングの概要とその主要概念 繊維ならびにアパレル企業は,本質的に危険の多い事業(Risky Business)である。な ぜならば,他の事業以上に,絶えざる消費者の好みの変化を予測し,消費者が受入れるで あろうと予測される新しい製品の市場化を計る不断の挑戦を余儀なくされる一方,この挑 戦は,現代社会における人々や社会・文化的環境の力動的な変化のなかで,ある意味にお いて,至難の業ともいえるからである。それにもかかわらず,生産者ならびに販売者は, 自己の通常の事業活動の中にこれら危険をくみこみ,その過程を通して,消費者の製品受 容に対する主要な影響力機関とならねばならない。その意味から,第1節に述べたマーケ ティングさらには社会的マーケティングの哲学は,今日の繊維ならびにアパレル企業の重 要なマネジメント哲学ともいえる。本節では,繊維ならびにアパレル製品の生産者,販売 者に光をあて,そのマーケティング,リテイリング活動のプロセスと特性の概要を.主要 概i念を解説しながら明らかにしたい。 滋一般に,マーケテaング(Marketing)とは.生産(Production)と消費(Consumption) とを結ぶ流通活動をさしているるが,研究者により,その定義には多少の相違がみられ〈研究ノート〉繊維ならびにアパレル製品の小売市場と消費者行動 (1) 101 6)る。例えばコトラー(Kotler. P)は,マーケティングを,交換プロセス(Exchange Process) を通して人間の欲求や願望を満たすことに向けられる人的活動と定義し,マッカーシイ 7) (McCarthy, E. J.)はこれを狭義と広義にわけ,狭義においては,顧客(Customer)の 欲求を予測しまた生産者から顧客への一連の欲求充足製品ないしサービスの流れを指図 することによる特定の組織目的達成のための諸活動を,広義においては,需要と供給を効 果的に適合させ,しかも社会の目的を達成しうる方法で生産老(Producer)から消費者 (Consumer)への製品およびサービスの経済的流れを指図する社会的プPセス(Social Process)を,マーケティングと定義している。これに対して,生産と消費とを結ぶマー ケティング活動のなかで,主に小売業者を中心に行なわれる対消費者販売活動を,リテイ 8) り/グ(Retailing)という。バーマンとエバンズ(Berman, B.&J. R. Evans)は,リテ イリングを,人,家族家計への有用性を目的として,究極的な消費者に製品ないしサー 9) ビスの販売(Sale)を行なうことに含められる諸事業活動と定義しており,マッカーシイ は,これを,最終消費者に対する製品ないしサービスの販売に含まれるすべての活動と定 義している。 ところで,このようなマーケティングやリテイリング活動の,繊維ならびにアパレル製 10) 品に関する概要については,スプロレス(Sproles, G. B.)が,3図のような簡明な図式を 提示している。以下,この図をかりることにより,議論を進めることにする。 繊維ならびにアパレル製品のマーケティングは,3図の各段階において,力動的かつ競 争的なものである。 まず,マーケティングの第1段階では,天然繊維および化学繊維が,その生産業者と生 地生産業者との間で売買される。なかでも,繊維生産業者による化学繊維の価格決定は, 非常に競争的な側面をもっている。 マーケティングの第2段階は,生地の生産とその市場化である。この段階では,デザイ ン,色彩などを含めた生地の流行性が,アーケティング・プロセスの重要な鍵となる。生 6) Kotier, P., op. cit, p. 19. 7)McCarthy, E工,1981. Basic Marketing:A A4anagerial APProach, Richard D, Irwin, Inc., Homewood, IIIinois, pp. 7−10. s) Berman, B., and 」. R. Evans, 1979, Retail Management: A Strategic APProach, Mac− millan Publishing Co., lnc., New York, p. 1. 9) McCarthy, E. J., op. cit., p, 359. lo) Sproles, G. B., 1979. Fashion: Conszamer Behavior Toward Dress, Burgess Publishing Company, Minneapolis, Minnesota.
102 彦根論叢 第221号 繊維およひ原材料生産業四 天 然 繊 紺 (綿,絹,麻,羊毛) 毛皮,皮革など 化学繊維:十ts生,半合成,合成 の各繊維(レーヨン,アセテート, ナイロン,ヒニロン,アクリル, ポリエステルなと) 染料,仕上け加工なと ファブリノク・ デザイナー 生 地 生 産 業 者 混 紡一斗 績 フェルトおよび不織布 染め,捺染,仕しげ加工 織物,編物 一.一.ww..1 ファッション・ デザイナー
アパレル・メーカー
㌧・イ・ファノノヨン” L’マス・ファノ/:ン” ア メーカー メーカー一 国 ii.1 男 it 月1乏 国外 婦人Eli
IL 供 服 生地の選択→スタイルの設定→L、’ヰ専)試作 パターン・メイキング→大量生産一・晶質の統制 クセサリ メーーカー :E、 石 靴 毛 JJなど マーチャンダイジングへのサービス活動 各種ファソション雑誌 市場調査機関 各種の広告 ファノション・コンサルタント 製品(商品)テスト機関 商取引企業 地域的およひ全国的 販 売 網 主要市場における 製品展万くE老 商品仕入担当者 競争的製品より、仕入商品の凹凹 店店店店業 ↓売 貨門工引販 チ言 販 f 百専地割通 ジ 一\ メ ク嘱 ン浮 リ似諮〆
小 の 者 . 業 売 小 店庫 “ハイ・ フア/ンヨン ン ヨ 、〃 ㍗・ マフ s 製品の流れ およひ マーケティング・プロセス 消 費 者 市場 大量・ツ\・市場
標 的 市 場 r年令,性,態度,関心,ライフ・スタイルh kなどにもとつく特定市場部位 ノ 3図 繊維ならびにアパレル製品のマーケティングの概要11) 11)Ibld, P.73, Figure 5−1(筆者の意図より一部修正).〈研究ノート〉繊維ならびにアパレル製品の小売市場と消費者行動 (1) ユ03 産業者は,自己の標的とする市場部位,例えば,子供服,男子服,婦人服などの各市場部 位の流行傾向にもとづき,生地特徴の選択を行なわねぽならない。通常,これら生地の見 本が被服の生産業者に対して提示されるが,高度に革新的な生地や供給の限られた生地以 外は,生産業老間に激しい価格競争が展開される。 マーケティングの第3段階は.被服の生産業者つまりアパレル・メーカー(Apparel Maker)による,被服のデザインとその市場化活動である。大小の企業間に,過酷な競争 が展開される。特定製品ないしサービスの市場化に関して,企業のマーケティング目的を より効果的に実現するために,製品の供給場所,時間,種類,価格数量を計画し,管理 することをマーチャンダイジング(Merchandising)というが,一般的に,大きなアパレ ル・メーカーが安全なマーチャンダイジング(Safe Mercnahdising)を強調するのに対し て,小さなアパレル・メーカー一は相対的に危険度の高いマーチkンダイジング(Risky Merchandising)を余儀なくされる。しかしその反面,独創的な流行製品は,小さなア パレル・メーカーから生みだされる度合が高い。またマーチャンダイジングは,主に, アパレル・メーカーの製品管理者つまりマーチャンダイズeマネジt一一(Merchandise Manager)と,小売業者の商品仕入担当者つまりストア・!ミイヤーないしリテイル・バイ ヤー(Store Buyer or Retail Buyer)の両者により担われるが.現実には,4図のよ うに,アパレル製品が消費者の手に届くまでには4つの経路つまりマーケティング水路 (Marketing Channel)カミ考えられるので,卸売業者の介在する場合には,その商品仕入担 当者もマーチャンダイジングを担うことになる。アパレル製品の生産業者,卸売業者,小売 ア ノぐ レ ル o メ 一 カ 一
卸売業者
卸売業者(1) 卸売業者(正D 、小売業者
小売業者
小売業者
消 費 者 し 才 充 の←品
製 4図 4つのマーケティング水路12) 12) McCarthy, E. J., op. cit., p. 44, Figure 2−9.104 彦根論叢 第221号
業者の中で,特に小売業者の行なうマーチャンダイジングは,標的市場(Target Market) つまり当該小売業がアピールしたいと願うかなり同質的な消費者集団の特性や当該小売業 の属する市場区分,また,当該小売業の仕入担当者のもつ顧客の購買嗜好傾向に関する知 識などにもとづいてなされる。 アパレル製品のマーケティングにおいて,マーチャンダイジングの占める役割は重大で あり,逆に,危険度も非常に高い。通常,アパレル・メーカーも小売業者も,6ヵ月ない しそれ以上先をみとおした行動をとるが,もしこの予測に止りがあれば,販売量の減少, 値下げ,そして究極的には企業にとって重大な財政的危機をまねくであろう。このような 危険を最少限度にするため,特に大きな企業では.消費者需要の分析や流向傾向予測のた めの市場調査,マーケティング・リサーチ(Marketing Research)カミ行なわれている。 過酷な競争を余儀なくされる繊維ならびにアパレル企業にとって,企業が競争上で有利 な立場を占めるための方法は,製品の差別化戦略(Strategy of Product Differentiation) であり,市場の細分化戦略(Strategy of Market Segmentation)である。製品の差別化 戦略は,例えば,アパレル・メーカーが小売業者の商品仕入担担当者や究極の消費老から 特別のひいきを得ることを期待して,競争企業の製品とは異なった独創的なスタイルをデ ザインする場合のように,プレミアムを要求する基礎として,自己の製品に他の企業のも のとは異なった特徴,品質,スタイル,イメージを導入することによる,対製品戦略をさ している。また,市場の細分化戦略は,例えば,アパレル・メーカーが非常に限定された 標的市場に対して特定製品を生産し,市場化する場合のように,標的市場を限定し,その 市場に対して適切なマーケティング・ミックスを得るために,市場内のかなり同質的な下 位市場(Sub−Market)つまり区画(Segment)をみいだすための,三市場戦略をいう。 ユ表 マーケティング。ミヅクス(4P)の内容13) 価 格 販売促進 場 所 製 品 表 記価 格 値 引 支 払期 限 掛け売り値段 など告売︻ど
累な
的和広人展
水範立在曲
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品スデブサ返
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暫ハルン名ズ品ど 13) Kotler, P., op. cit., p.89, Table 4−3より作成。〈研究ノート〉繊維ならびにアパレル製品の小売市場と消費者行動 (!) 105 ここに,マーケッティング・ミックス(Ma・ rketing Mix)とは,企業が標的集団の欲求 を充足させるために用いる一群の操作可能な 手段をさし,価格(Price),販売促進(Pro・ mQtion),場所(Place),製品(Product)の 4つのベクトルをもつ。通常,これは4Pと よばれ,その内容を!表に示す。また標的 市場とそれに対するマーケティング・ミック スを,マーケティング戦略(Marketing Str− ategy),特定の組織目的達成のためのマーケ ティング戦略の計画,実行,統制をマーヶテ 製 堀
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5図 マーケティング戦略14) イング・マネジメント(Merketlng Management)という(5図を参照)。 なるほど,市場細分化戦略は,かなり一般的な戦略であるが,当該戦略からもたらされ る利益を逆に減少させるマーケティング活動の傾向も存在する。/つは,多くの企業が, 漂準サイズの若者志向のマーケティングを強調すること,他は.大:量市場つまりマス・マ ーヶソ1・ (Mass Market)における平均的消費者の好みに当該企業の製品を適合させよう とすることである。 アパレル・メーカーの行なうマーケティングは,また,消費者の立場からいえば,消費 者の製品選択に影響を与え,その選択を決定づけるろ過システム(Filtering System)と みることもできる。消費老に対して提示された被服スタイルは.マーケティングの各段階 を通して,継続的にせばめられ,ろ過される。 繊維ならびにアパレル企業と消費者との間に介在する小売業者は,両脚の間の重要なマ ーケティング水路であり,マーケティングの最終段階を担っている。既述のように,最 終消費老への製品ないしサービスに関するすべての販売行動(Selling Behavior)をリテ イリングというが,リテリイングは,主に次の3つの要素より特色づけられる。すなわ ち,顧客の特色や欲求の決定(顧客志向),すべての計画や活動の最大の効率達成にむけ ての統合(調整された努力志向),一定水準の利益達成にむけての販売(利益志向)であ 一る。 14) McCarthy, E. J., op. cit,, p, 42, Figure 2−8.1Q6 彦根論叢第221号
繊維ならびにアパレル企業を左右するリテイリング販路(Retailing Outlets)レ*,主に 次の4つである。百貨店(Department Stoτe),専門店(Specialty Store),量販チェーン 店(Chain Store),割引店(Discount Store)。これら各小売店は,商品の流行性,価格, サービス,ストア・イメージなどに関して,異なったりテイル戦略(Retail Strategy)を とる。リテイル戦略は,小売販売収入の達成を目的とした全般的計画ないし行為の枠組 であり,各小売店の標的市場とそれに対するマーケティング・ミックスからなっている (6図参照)。 リティル戦略の小売店に対する重要性は,特にそのストア・イメージに関 標的顧.客 (標的市場〉 小売価格 表記価格 値 引 掛け売り値段 販売促進 場 所八博覧売 立地
展7JK・ショー 交通の便 広 iLl Xaと 店の規模 内 ・外装 商品展示 なと 6図 リテイル戦略の領域 商 品 品 揃 え (スタイル,デザイン, サイズ,ブランドなど) 品 質 返 品 など して顕著である。ストア・イメージ(Store Image)とは,店の機能的特性より,また心 理的特性に関した雰囲気より,店が買い物客の心の中に定義される方法をさしているが, それが,各小売店の標的市場の特色,店の立地,商品の品揃え,価格の水準,店の物理的 特性,クレジットなどの利用可能性,公共性,広告,店員による販売のタイプやサービス の程度,その他の販売促進活動などの多様な要素の上に形成されるからである。消費者 は,通常,商品の流行性,価格,得られるサービスなど以外に,一定のストア・イメージ にもとづき,各小売店に対して,異なった度合のストア・ロイヤルティ(StQre LQyality) つまり小売店忠誠心やストア・バトロネィジ(Store Patronage)つまり小売店びいきを 示す。 4つのリテイリング販路のうち,百貨店は,より斬新で高品質,高価格のブランド(銘 柄)商品に重きをおき,その標的市場は,主として中流から上流社会的階層の消費者と考 えられる。特に,広範囲の展示(Display)とむすびついた広告,その他販売促進諸活動 は,消費老の百貨店に対するストア・バトロネイジに大きな影響を及ぼす。また,販売店 員の販売手腕(Salesmanship)や顧客に対するサービスなども,商品販売の重要な要素で〈研究ノート〉繊維ならびにアパレル製品の小売市場と消費者行動 (1) !07 ある。 これに対して,専門店は,特定のアパレル商品群の販売に焦点をおく。それゆえ,対象 とする標的市場の好みに合わせた販売促進活動が展開され,各専門店のストア・イメージ や販売商品の特色が強調される。 量販チェーン店は,かなりの流行性をもちかつ適度な価格のアパレル商晶に焦点をお く。また,広範囲に宣伝されたブランド名にかえて,量販店独自のブランド名つまりプラ イベートeブランド名(Private Brand Name)を使うことも多い。相対的に,量販チェ ーン店は,低∼中流社会的階層の消費者を対象に,基本的スタイルのアパレル商品を大量 に販売することに重点をおいている。 割引店(安売店)は,市場の平均当絵より低緬格で販売することを強調する。そのた め,サービス.その他費用のかさむ販売促進活動は行なわない。また,割引店が,独自の プライベート・ブランド名を使う場合も存在する。特に,流行についてストア・イメージ を創造する努力はしないが.低価格でかつできる限り流行線上にある商品の提供を強調す る戦略をとる。 これ以外にも.通信販売業(Mail Order Retailer)も.最近その力を増大しつつある, さらに別のリテイリング販路である。 なお,アパレル・メーカ・・一と同様,市場細分化戦略が,非常に競争的なリテイリング環 境にある小売業老にとり,特に重要な戦略である。というのも,市場細分化戦略の過程を 通して,各小売店のリティル戦略の対象である標的市場が明確化するからである。このよ うな標的市場部位に,商品特性,サービス,ストア・イメージなどを適合させることが, 小売業者にとって重要な要件となる。 以上,繊維ならびにアパレル製品のマーケティングやリテイリングの概要とその主要概 念につき,議論してきた。しかしながら最後に,このような諸活動は,人と資金のうえに 成りたつことを強調したい。換言すれば,繊維ならびにアパレル製品のマーケティング やリテイリング活動は,パーソナル・リソース・マネジメントつまり人的資源管理(Per− sonnel ResQurce Management)やフィナンシャル・マネジメンルつまり財務管理(Finan− cial Management)により裏づけられる必要がある。例えば,小売業者のリテイリング活 動も,販売店員のやる気(Motivation)や管理者の販売店員への管理方式などにより,大 ぎな影響を受けるであろう。また,特定商品に対して消費者の抱く不満足感は,販売店員 の対消費者活動,販売店員への賃金体系,究極的には,小売業者の財務管理方式と無関係
108 彦根論叢 第221号 とはえ一ないであろう。 なるほどこれらの諸問題は,従来,経営学ないしマネジメント理論の問題であった。し かしながら,1側面では,経営学と家政学との交叉領域の問題ともいえる。消費老に直面 するリテイリング活動については,なお一層このことがあてはまる。ただ本節では,紙 幅の関係より,パーソナル・リソース・マネジメントやフィナンシャル・マネジメントに 関する問題を取扱いえなかった。これらについては,別の機会にその議論を譲ることにす る。 W 繊維ならびにアパレル商品の小売市場: 小売業者のリティル戦略に関する諸研究例 繊維ならびにアパレル製品のマーケティングに関する諸研究は,繊維ならびにアパレ ル・メーカーのマーケティング活動より,むしろ,小売業老を中心に展開されるリテイリ ング活動に研究が集中している。 というのも,繊維ならびにアパレル商品に代表されるいわゆる ‘ファッション商品 (Fashion Goods)’のリテイリング活動が,複雑な消費者行動を直接に経験する!つの典 型的領域であり,その意味において,多くの研究者の関心をひきつけてきたからであろう。 本節では,小売業老のリテイリング活動に関する諸研究を,リテイル戦略の観点よりとり あげてみたい。 小売業者のリテイル戦略は,ストア・バイヤーの行なうマーチャンダイジングと密接な 関係をもつ。なぜならば,リティル戦略は,マーチャンダイズに如実に反映されねばなら ず,また逆にマーチャンダイジングが,リテイル戦略にある一定の方向を示さなければな らないからである。しかしながら.マーチャンダイジングは, 種類’や‘数量につい ての困雑な意思決定を絶えず経験しなければならないという意味において,大きな危険を 伴っている。そのうえ,ストア・バイヤーのこのような判断が,時として,小売店の明暗 15) を左右する。マー・・チン(Martin, C. R Jr.)は,ミシガン大学経営調査研究所による1965 年から1969年にいたる2っの百貨店の時系列的調査データ,つまり,この期間に営業成績 が上昇しつづけた百貨店と逆に下降しつづけた百貨店とのデータに関する比較分析より, ストア・バイヤーの判断能力が,両百貨店の成功と失敗とを二分したことを報告してい 15) Martin, C. R., JR., 1973. “The Contribution of The Professional Buyer te A Store’s Success or Failure”,.ノbzarnal of Retailing,49, No.2, Summer, pp.69−80,
〈研究ノート〉繊維ならびにアパレル製品の小売市場と消費者行動 (1) 109 る。 ストア・バイヤーの意思決定にともなう危険性を最小限にする1つの方法は,消費者の 需要や流行傾向に関する諸データを利用することである。 Z6) セオール(Sewall, M。 A.)は,ファッション商品に携わるストア・バイヤーについて, 経験豊かなバイヤーの判断に消費者データをプラスすることが,真に販売量の増大に通じ ているかどうかを調査した。調査は,婦人用アパレル商品などを扱う大手通信販売業の協 力のもとに行われ,調査のため,1979年春のカタPグから,価格が千円から5千円の範囲 に入り,かつ,Tシャツ・タイプのものからフォーマルなものにいたる,44品目の婦人用 ブラウスが選ばれた。販売量は,返品などを含めない粗販売数量より,バイヤーの消費者 購買予測に対する判断能力は,その能力への管理者評価より,また消費者データは,ショ ッピング街の600名の女性買い物客に対する購入意図(Purchase Intention)の調査より 求められた。ここに,購入意図の度合は,価格の記された44品目のブラウス写真を買い物 容に提示し,各ブラウスについて,もしこのブラウスが発売されるとして‘絶対に買うだ ろう’から絶対に買わないだろう’に至る5点法の評定を求めることより算出された。 得られた結果は,次のとおりであった。③調査変数問の相関分析を行ったところ,消費 者の購入意図ならびにバイヤーの判断能力とも,販売量と正に関係することが示された が(それぞれ,γ二.26,Pく.05.γ=.35, P<.O!),バイヤーの判断能力と消費者の購入意 図との問には負の関係が(r=一.39,P〈.Ol),バイヤーの判断能力と価格の高さとの問 にも負の関係が(γ=一.34,Pく.05),逆に,消費者の購入意図と価格の高さとの間に正の 関係が示された(7=。37,Pく.01)。特に,当研究において,高い判断能力をもつと評価さ れたバイヤーほど,低価格の,また消費者による購入意図の小さなブラウスを購入される だろうと予測しているのに対して,購入意図に関する消費者データが,なるほど5千円以 内ではあるが,高い価格のブラウスに強い消費者購入意図の存在することを示している点 は興味深い。また,このことは,消費者データが,ストア・バイヤーの消費者購入意図に 関する判断では得られない情報を提供しうること,このようなデータの使用が,バイヤー の判断の精度を高めうることを示唆している。 ところで.小売業者の行なうリテイル戦略は,小売販売収入の達成の鍵であり,前節に 16) Sewall, M. A., 1981. “Relative lnformation Contribueions of Consumer Purchase Intentions And Management Judgement as Explanators of Sales”, fournal ofMarkeling Research, XVM, No. 2, May, pp. 249−253.
110 彦根論叢 第221号 みたように,商品の流行性,価格,サービス,ストア・イメージなどに関係している。こ れらのなかでも,特に標的市場にアピールするストア・イメージの構築は,リテイル戦略 の重要な領域である。 標的市場に対するストア・イメージの積極的な創造ないし修正は,しばしば.広告およ 17) びその他の販売促進活動を通して行なわれる。マーチn■一(Martineau,P.)は,小売業 者の行う広告,つまりリテイル広告(Retail Advertising)の1つの重要な機能が,買い 物客に店の存在を知らせ,その店を他の店から識別させることにあるという。ウィリアム 18) ズとダーディス(Willia・ns, J.&R. Dardis)は,ニューヨーク州のある都市の一般女性 103名を対象にした調査で,繊維ならびにアパレル商品が次の2つに二分されることを報 告した。すなわち,消費者による購買の計画度が低く,多店にわたり買い物行動のとられ る商品群,例えば婦人用アウター・ウエア,婦人用ランジェリーとファンデーション,寝 具,テーブル・クPスなどと,購買の計画度が高く,最初に訪れた店で購入される商品群, 例えばメンズ・ウエア,婦人用靴下,生地類などである。そして前者のような商品群には, 特に店内の広告,ディスプレイ,その他販売促進活動が,後者のような商品群には,特に マーティノーの指摘する機能をもつりティル広告が,ストア・イメージに,また究極的に は,顧客の当該小売店へのストア・Vイヤルティに貢献するであろうとしている。 テレビや雑誌による宣伝広告は,好ましいストア・イメージを構築するに際しての重要 な一手段であるが,それがすべての消費者に同等の効果をもつわけではない。すなわち, 好ましいストア・イメージの構築に対する広告の効果は,各小売店の販売商品の隆質と同 IS) 時に,消費者の購買特性においても異なる。ダーディンら(Darden, W. R eta L)は,ジ ョージィア州のある小都市(人口8:万人であり,この都市から100kmほど離れたところに 人口170万の大都市がある)の主婦278名を対象にした買い物行動に関する調査において, 5つの異なった買い物客のタイプをみいだした。すなわち.工.イソ・ショッパー(lnS・ hQpper);この小都市の外で買い物をすることのないタイプ(60%以上),.∬.ビヅグティ ヶット・アウト・ショッパー(Big−Ticket Outshopper)・大きな買い物だけ,この小都 17)Martineau, P.,1958.“Social Classes And Spending Behavior”, The/b%辮α♂of Mar一一 keting, 23, No. 2, October, pp. 121−130. 18) Williams, J,, and R. Dardis, 1972. ‘eShopping Behavior for Soft Goods And Marketlng Strategies”,∫ozarnal o/Retailing,48, No.3, Fall, pp.32−41, p.126. 19)Darden, W. R., Lennon, J.工, and D. K, Darden,1978,“Communicating wlth Interurban Shoppers”, Journal of Retailing, s4, No. 1, Spring, pp. 51−64.
〈研究ノート〉繊維ならびにアパレル製品の小売市場と消費者行動 (1) 111 市の外で行なうタイプ(約5%),皿.ファーニチャー・アウト・ショッパー(Furniture Outshopper):家具にかぎり,この小都市の外で買い物をするタイプ(約15%), W.アピ アランス・アウト・ショッパー(Appearance Outshopper):婦人服,宝石,男子服などを 購入する場合にのみ,この小都市の外で買い物をするタイプ(約12%),V.ホームエソ ターテェイメント・アウト・ショッパー(Home−Entertainment OutshoPPer):テレビ,ス テレオなど,家庭用娯楽品にかぎり,この小都市の外で買い物をするタイプ(約5%)。 そして,アウト・ショッパーがインショッパーにくらべて,テレビや雑誌から大きな影響 を受けているとの結果を得た。このことは,地域的な広告は別にして,テレビや雑誌によ るかなり広範囲のリティル広告が,ある特定の限られた消費者にのみ効果をもつことを意 味している。ただこの調査では,一般主婦のみが対象である。それゆえ,一般主婦にくら べはるかに移動性の高いティーン。エイジャーや未婚の若者には,これらとは異なった結 :果が示されるかもしれない。 テレビや雑誌によるストア・イメーシ構築への広告効果には,コミュニケーター(広告 20) 伝達者)としてのモデルの影響も大きい。オニール(0’neal, G. S.)は,モデルの服装の 適切さが,消費者の小売店への信頼性や広告商品への購入意図と正に関係することを,パ 21) ヅッァ(Patzer, G. L)は,女性モデルの女っぽさ(セクジーさ)が,男性に対してのみ ,新商品の広告に対して効果をもつことを,また,ベイカとチャーチル(Baker, M. J.& 22) G.A. Churchill)は,モデルの身体的魅力性が,モデルとは異なった性の広告の受け手に 効果をもつことを報告して.いる。 リティル戦略の重要な要素であるストア・イメージは,消費者の心のなかに認知された 諸小売店の位置づけ,つまりストア・ポジィショニソグ(Store Positioning)に端的に示 される。 なるほど,小売店の客観的な立地(Location)については,古くは,ライリー(Reilly, 20) O’neal, G. S., 1977. “Clothing Effects as Nonverbal Communication on Credibility of The Message Source”, A Thesis oi Ph, D. (Doctor of Philosophy), Ohio State University, School of Home Economics. 21) Patzer, G. L,, 1980. “A Comparison of Advertisement Effects: Sexy Female Comm− unicator vs Non−Sexy Female Communicator”, Advances in Consunzer Research, Vffi pp. 359−364. 22) Baker, M, J., and G. A. Churchill, 1977. “The lmpact of Physically Attractive Models on Advertising Evaluations”, fou”rnal of Markeling Research, XIV No. 4, November, pp. 538−555.
112 彦根論叢 第221号
23) 24)
W.J.)とコンバース(Converse, P.・D.)の小売引力の法則(Law of Retail・Gravitation) 25) が有名であり,コンバースは,特に第1法則が,被服のようなフプッション商品に関する 勢力圏の境界決定に妥当することを示している。しかしながら,このような客観的立地以 上に,主観的なストア・ポジイジョニングが,ストア・イメージにかかわる重要なリティ ル戦略問題である。以下に示す諸研究は,その研究結果より,むしろ,用いられた研究手 法,特にストア・イメージおよびバトロネイジ測定法から重要である。 26) リングとキング(Ring, L. J.&C, W. King)は,消費者の小売店選択行動の背後に潜 む要因ならびに消費老による諸小売店の特定市場での位置づけを,カナダ,トロントの 1,025名の男子パネラーを対象に,メンズ・ウェア小売市場に関して明らかにした。調査 の概要を要約すれば,次のようである。まず,調査目的に対して,10の大きな小売チェー ン店が選ばれた。その内わけは,3つの百貨店,5つの専門店,2つの割引店であった。 選ばれた10の小売店は,もっとも最近メンズ・ウェアを購入した店およびしばしぼ購入す る店の2つの観点からJパネラーの70%より指名されたものであり,これに含められなか った小売店は,‘その他’として一括された。次に,各小売店のストア・イメージおよびバ トロネイジ要因が吟味された。2表に,これら一連のストア・イメージおよびバトロネri ジ質問項目(連想法にもとつく)を,3表に,クロス表分析の結果を示す。3表より,例 えば小売店Aについて,69%はこの店が自分の家からもっとも行きやすいからと述べ,36 %はこの店が自分の支出する金銭に対してもっとも値うちがあるからと述べている。すな わち小売店Aについては,その客観的立地が,この店の選ばれる主要な理由であることを 23) Reilly, W. J., 1929. Method for the Stbldy of Retail RelationshiPs, Research Monog− raph, No, 4 (Austin, Texas: University of Texas Press), University of Texas Bulletin No. 2944. 24) Converse, 1’. D., 1947. “Factors Determining Retail Shopping Preferences”, Dun’s Review, 55, August, pp. 21−23, 62−72. 25) この法則は,2つの市場中心地が,それぞれの勢力圏の境界近くに位置する人口集中地から, 両中心地の人口にほぼ正比例し,両中心地からの距離の2乗に反比例するかたちで,消費者をひ きつけるというものである。いま,A, B 2つの市場中心地があり, Ba, B・をA, Bの吸引 力,f)。, PbをA, Bの人口,エ)。, DbをそれぞれA, Bから中間地に至る距離とすれば,この法 肩撒…に示・れ・・告一(PaTPNb)(鋤㍉ 26) Ring, L. J., and C. W. King, 1978. “A Multiple Discriminant Analysis Approach to The Development of Retail Store Positioning”, Advances in Consumer Research, V. pp. 227−234, Ring, L. 」., 1979. “Retail Positioning: A Multiple Discrlminant Analysls Approach”, fournal of Retailing, 55, No. 1, Spring, pp. 25−36.〈研究ノート〉繊維ならびにアパレル製品の小売市場と消費者行動 (1) 113 2表ストア・イメージおよびバトμネイジ質問項目27) 1.家からもっとも行きやすいのは,どの店ですか。 2.価格がもっとも安いのは,どの店ですか。 3.価格がもっとも高いのは,どの店ですか。 4・販売店員の知識度や助言が最上なのは,どの店ですか。 5・品質において,最上のメンズ・ファッションを提供するのは,どの店ですか。 6.品質が最低なのは,どの店ですか。 7.支出金銭に対してもっとも値うちのあるメンズ・ファッシ。ソを提供するのは,どの店で すか。 8.支出金銭に対して値うちが最低なのは,どの店ですか。 9・品揃えがもっとも豊富なのは,どの店ですか。 10.毎日の保守的なメンズ・ウェアを購入するには,どの店が最一ヒですか。 11.いま流行のメンズ・ウェアを購入するには,どの店が最上ですかQ 12.流行の最先端のメンズ・ウェアを購入するには,どの店が最上ですか。 13.商品のディスプレイが最上なのは,どの店ですか。 14。広告が最上なのは,どの店ですか。 (以上の質問は,以下の質問への解答を考慮に入れておこなわれる) 1.もっとも最近,メンズ・ウェアを購入したのは,どの店ですか0 2eもっともよくメンズ・ウェアを購入するのは,どの店ですか。 示している。 小売店Aから」のストア・イメージおよびバトロネイジ要因を各店ごとにみると,そこ には次の4タイプの小売店の序在することが明白である。①麦出金銭に対してもっとも値 うちがある 毎日の保守的なメンズ・ウェアにとって最上一最上の広告一最上の品 揃え(小売店AからC);3つの百貨店がこれに相当した。②値段がもっとも安い一支 出金銭に対して最上の価値 家から行きやすい(小売店DとE):2つの割引店がこれ に相当した。③支出金銭に対して最上の価値一いま流行のメンズ・ウ=アを買うのに最
上販売店員の知識度が高く,非常に有用(小池店F,GとJ):3つの専門店がこれ
に相当した。④販売店員の知識度が高く,非常に有用一一最上の品質∼流行の最先端の メンズ・ウエアを買うのに最上一下:上のディスプレイ(小売店Hと1)=残り2つの専 門店がこれに相当した。 27) Ring, L. J , 1978. “A Pragmatic Approach ior Retail Fashion Monitoring”, Advances in Consumαr Rerearch, V, P.669より作成。114 彦根論叢第221号
3表 クロス表分析の結果28) 最近メンズ・ウェアを購入した店 ストア・イメージおよびバトロネイジ要因 A B C D E F G H I J 1.家からもっともいきやすい 2.価格がもっとも安い 3.価格がもっとも高い 4.支出金銭に対して最上の価値 5.販売店員の知識度やその助言において 最上 6.品揃えが最上 7.商品のディスプレイが最.一ヒ 8.広告が最上 9. 10.毎日の保守的なメンズ・ウェアにとり 最上 11.いま流行のメンズ・ウェアを購入する のに最上 12.流行の最先端のメンズ・ウェアを購入 するのに最上 注) 69% 42% 34ee( 33%o 42% 9% 50% 24% 4%e 32%22627492133221
もっともよくメンズ・ウェアを購入する5800ρOFO
OO11
485508494
9 2
21535356522 9086120289912545358521
9
209585003
32
2
63
0 0
906768577
44221352
8 ︻0466996674
8
∩フ22643315221 8222470776613552425253
5
030959098
08483637267
5371527286 617486052
08525911750
12451214232
8 4
注)小売店Aで最近メンズ・ウェアを購入した人の中で,69%はその店が家からもっともいきや すいと述べている。 次に,‘その他として一括された小売店をも含めて,ストア・イメージおよびバトPネ イジ要因が各小売店をいかに判別しているかが検討された。判別分析の結果,最初の2つ の判別関数が,11のトロント小売店の判別の約83%を説明した。第1判別関数は,メンズ・ ウエア市場を主として低品質・低価格㈲一高価格(一)という軸で示したもの,第2判別関 数は,大規模な品揃えと広告による保守的メンズ・ウエア(+)一高品質・高価格による流 行メンズ・ウエア〈一)という軸で示したものであった。この2つの判別関数の生みだす合成 変量からなる2次元空間上に,各小売店のセントロイドをプロットしたのが7図である。 この図は,2次元形態における,トロント,メンズ・ウエア小売市場の認知図(Perceptual Map)を示している。図において,各ストア・イメージおよびバトロネイジ要因に関する 各小売店の平均的評価は,各セントロイドから各ストア・イメージおよびバトロネイジの ベクトルに垂線を引くことより決められる。例えば,小売店Hは価格においてもっとも高 い店とみなされ,ついで小売店1,tその他’, G, A, J, F, B, C, E, Dの順であ る。8図は,ストア・セントロイドによる,トロント,メンズ・ウエア小売市場の勢力図 28) Ring, L.工,1979,0p cit., p 28, Table 1.〈研究ノート〉繊維ならびにアパレル製品の小売市場と消費者行動 (1) 115 門 第 大暑 K子 2 模的 C 穂
ヨ黛数
判別闘最
なメ i/ 潤vスdウ広工吉ア簑る d綴
上翌地 E F 高価格 A J蛎
鼠湯 ξ 烈 ス その他ブ 姦がし 医 1ず拶
流募メ H誓ノ
灸う 疏 工 ア ア A 百貨店 B 百貨店 C 百貨店 D 割引店 E.割引店 F 専門店 G 専門店 H 専門店 1.専門店 J 専門店 そ の 他 ___轍最低の価搭 低価格・1氏品質蜘。一
最低の贔質 D 7図 認 知 図2e) C 第2則別関数 B F F 篇1十ll別関数 … Aま.
∫ D\、
A 百貨店 B 百貨庸 C. 百貨店 H D 割引店 E 割引店 F 専門店 G 専門店 H 専門店 1 専門店 J 専門店8図勢力図30)
29) 工bid., p.32, Figure 1. 30) lbid., p. 34, Figure 2.116 彦根論叢第221号
(Territorial Map)である。メンズ・ウエア小売市場が,3つの主要な小売店つまり百 貨店C,専門店H,割引店Dより,大きく分割されることが示されている。 消費者によって認知された小売店の市場におけ’る位置づけが,経営者側の認知と一致し ているかどうか,もしそうでないならば,いかなるストア・イメージおよびバトロネイジ 要因を再吟味する必要があるかJまたリテイル戦略にいかなる修正を必要とするかなど, このキングとリングの研究のもつ意義は,特定時点におけるトロント,メンズ・ウエア小 売市場を明らかにしたこと以上に,その分析手法のなかにみいだすことができる。 31) なお,議論から少しはずれるが,リングらは別の論文で,トロント,メンズ・ウエア小 売市場における消費者のファッション・インボルブメント(Fashion Involvement;流行へ のかかわり)を.百貨店と専門店との間で比較し,予測どおり,専門店の消費者により高 いファッション・インボルブメントの存在することを示し.ている。特に,ファッション・ インボルブメントは,ファッション・イノベーション,ファッション・リーダーシップ, ファヅソ関心,ファッション知識ファッション意識などの各ファッション行動次元を総 括した概念であり,今後の調査研究において有用なものと考えられる。4表に,ファッシ ョン・インボルブメント尺度を掲示する。 リテイル戦略の重要な要素であるストア・イメージについては,キングやリングの研究 33) 以外にも,多くの研究者により取扱われている。例えばマーカス(Marcus, B. H.)は, カリフォルニア州,ロサンゼルスの5つの主要かつ伝統的百貨店を対象に,そのストア・ イメージを測定した。しかし,この研究のキングやリングらの連想法による研究との相違 は,ストア・イメージの測定にSD法(セマンティック・ディファレンシャル法)が用い られた点にある。評定者は,ロサンゼルスに在住する約1. OOO名の女性であり,個別の面 接調査において上流,中流,下流の各社会的階層を代表する女性の描かれたさし絵が提示 され,それぞれのさし絵について, くこの女性はこれから買い物に出かけるところです, また最初にどの店に行くかの腹づもりもあります,次にあげた5つの百貨店のなかで,ど の店に行こうとしているでしょうがと質問された。また同時に,SD法より,各百貨店 のストア・イメージを評定するよう求められた。その結果,5つの百貨店の間に明白なス 31) Tigert, D. J,, Ring, L, J., and C. W. King, 1976. “Fashion lnvolvement And Buying Behavior: A MethodoJogical Study”, Advances in Conszamer Research, III, pp. 46−52. 33) Marcus, B. H,, 1972 ‘‘lmage Variation And The Multi−Unit Retail Establishment”. ノb%7ηα♂of Retailing,48, No、2, Summer, pp 29−43.〈研究ノート〉繊維ならびにアパレル製品の小売市場と消費者行動 (1) 117 4表 ファッション・インボルブメント尺度32) 1.一般的に,あなたは,あるシーズンの新しい流行衣服を,他の多くの人よりはやく買 う,ほぼ同じ時期に買う,おくれて買うのいずれですか〔ファッション・イノペーショ ソ〕。 tよやく買う 〔3点〕 ほぼ同じ時期に買う 〔2点〕 おくれて買う 〔1点〕 2,あなたは,自分の友人に,新しい流行の衣服についてほとんど情報を与えない,平均的 である,非常に多くの情報を与えるのいずれですか〔ファッション・リーダーシップ〕。 ほとんど情報を与えない 〔3点〕 平均的である 〔2点〕 非常に多くの情報を与える 〔1点〕 3,一般的に,あなたは,他の多くの人にくらべて,衣服の流行にあまり関心がない,みな と同じ程度,より関心があるのいずれですか〔ファッシ。ソへの関心〕。 あまり関心がない 〔3点〕 みなと同じ程度 〔2、点〕 より関心がある 〔1点〕 4,あなたは,他の多くの人にくらべて,新しい流行衣服について人からアドバイスを求め られることが,あまりない,時々ある,非常にあるのいずれですか〔ファッション知 識〕。
あまりない
〔3点〕時々ある 一._一〔2点〕
非常にある 〔1点〕 5,次のなかで,衣服の流行の変化に対するあなたの考えに近いものはどれですか〔ファッ ション意識〕。 私は,つねに,流行傾向におくれないようにファッション。ニュー スをよみ,また自分の服装を流行のものにしている。 〔5点〕 私は,必ずしも,流行に自分の服装をあわぜることをしないが,そ の変化にはたえず気をくばっている。 〔4点〕 私は,新しい衣服を購入する必要のある時だけ,今流行しているも のは何であるかを調べる。 〔3点〕 私は,流行に大きな変化がおこらないかぎり,流行傾向にあまり注 意を払わない。 私は,流行傾向にはほとんど関心がない。 〔2点〕 〔1点〕 注1) 注2) ファッション・イソボルブメソトの度合は,各項目のスコアを合計することより算出さ れる。 ファッション意識は,他のファッション行動次元にくらべ,高いウエイトが与えられて いる。 32)Ibid., p.47より作成(筆者の意図より一一’ZZp修正)。118 彦根論叢 第221号
友 好 的
低 価 格
楽 し い
モダンな
魅力的な
丁 重 な
暖 か
い 支出金銭にとって値うちのある
買い物にとって便 利 な
品揃えの豊富な広告のよい
サービスのよい信頼でき る
いつも改良している販売店員の
気持のよい
ユニークな
きれいな
2 3 4 。ヤ、x
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6”N.
N
“M
百貨店R 軸。一一・百貨店M
9図ストア・イメージのプロフィール例34) 34)Ibid, p.39, Exhibit 4より作成。友好的でない
高 価 格
楽しくない
オールド・
ファソションの魅力的でない
礼儀のない
冷
い 支出金銭にとって値うちのない
買い物にとって不 便 な
品揃えの貧弱な広告の悪い
サービスの悪い信頼できない
あまり改良に
積極的でない
販売店員の
不愉快な
他の店と似たりよったりの
乱 雑 な
〈研究ノート〉繊維ならびにアパレル製品の小売市場と消費者行動 (1) 119 モ ダ ン な 友好的でない 粗 野 な 品質を重視する 気むずかしい