判
例
研
究
賃 借 梅 の
物 権 化
⋮下級審判例を中心として
西
川
達
雄
﹁民法典欄後のみより激えても、判例は既に牛世紀以上に亘っ て實動的篤法の全国載を覆い、瀧會が民法的解決を要講ずる問題 の殆どすべてが最二審裁到所を通じて、法の内容を構成してき た。資本主義の籏芽期より、絡戦後の拘束経濟に至るまでの牛世 紀は、欧米黒馬における籔世紀に亘る食草的漂動を墜縮したもの とみてよい。それだけに、その間における漱會事象の結晶として の勃例は、現實に要常する民法の殆どすべてを覆い書したものと みて大なる誤りはあるまい。最近十歎年聞において民法に評する 判例がとみに劇減したという現象も1他にも原因あることは勿 論ながら⋮民法劃例がほぼ軍要問題を解決し霊したということ の一蝉騒となしうるであろう。このことは逆に,民法法規にして 從來それに關する判例の存しなかったもの、換言すれば、その規 律せんとする事象に關織して、過去牛世紀の聞かつて最終審の判 膨が求められなかったような法規は、今や殆ど自明の法である到 例研 究
か、それともほぼ死滅せる法として、これに多くの考慮を費すの 要なきことを示すものである。今や民法即民法判例、民法判例即 民法たるの露命に近きものといいうる。﹂柚木教授は斯く述べ到 例研究の胃要性を説かれた︵同教授、判例と判例研究、神戸法學 雑誌、第一雀第二号︶。そのさい研究嬉野とする判例の範園とし て﹁すべての笹野所を實質的に拘束しDかつ將來もまた適用せら るべき予測性をもつ判例のみが、この種の法學の直接の罫象とな りえよう。それは即ち、最愚管裁剃所の判例である﹂とされ﹁下 級審の里国は、それが現實の生きた批會的事實を豊冨に反映する 点において、法難會學の⋮封象としては、見逃すべからざる素材を 構成するものであるけれども、それが未だ法たるの實効を其備せ すして、軍にその準備、促進の過程にあるにすぎないものである ことは、甑蓮の如くであるから︾法解縄毘としでの赤墨として は、これを直接の鮒象とする意義に乏しいといわねばならない﹂コ三
判 例 研 究 と云っておられる。とすると下級審の判決を主とした判例研究は ﹁その意義に乏しい﹂ことになる。 然し若し上級裁判所は法約安定のために從來の判例をやたらに 攣更するものでなく、下級裁判所も普通愛冨性のない判決に依っ て上級審に依つで騒然覆えされるであろう如き判決をなすもので ないとしたら、 ﹁最近十早年聞において民法に照する通例がとみ に劇減したという現象も一二にも原因あることは勿論ながら i民法到例がほぼ重要岡題を解決し隠したということの一証佐 であった﹂とみれば、 ﹁それが現實の生きた祉曾的事實を獲冨に 反映する点において﹂法解繹學としての法學としても充分な意義 をもつものと患われるのである。 裁到が形式的三段論法に依る裁鋼規範の宣吉︵國㊦。茸竜お
こ四
。ぎ憂嚢︶であると言っても、斜なる三段論法の形式的適用では なく、裁勃宮は自己の意議事程を通じて何らかの法を稜見し (}W。三・・h冒、一葺﹂q︶立法しているわけであるから、下級審の判例 は、法解官學としての法學としては、輩に法たるの準備促進の過 程にあるものとしでこれを研究の直接罫象とすることは意義が乏 しいかも知れないが、法駄會學の立場からは﹁その準備・促進の 過程﹂にある下級審の到例こそ最も大きな意義をもつ研究巨象た ることは云う迄もない︵爾魏著民法−序論︶o この研究は法弊會學の立場から或いは法解縄學の立場から深く 研究せんとするものではない。有標的に蒐集された下級審の判例 集より若干の判例をひらいあげ園生の研究資料たらんことを目的 とするものである。 封抗力を具備しない借地⋮催者に封ずる土地明渡の請求と所有樺の濫用 昭和ご六年二月二・七日判決ハ︵儲⋮屋地︸力裁判所昭和二四勧牛︵ワ︶榊弟 三五五号、土地明渡講求事件︶下級裁判所民事裁到例集第二雀第 三号八頁以下、棄却。 ︹事實︺ 原告X︵歯科磐︶は実記Aより宅旭八三埣を買受けた︵昭 和ニニ年一〇月一二日︶。然るにこの宅地には原告Xの知人阪告 Yが、昭和五年頃前記Aより建吻所有の目的で賃料某で賃借し、 3一いてその地上に、右建物を所有していた。然しYは建物の保 存登記をしていなかった。爪阿この建物は職災者被缶ZがYより賃 借し佳宅勤店舖として使用し、生活している。原告は被告Yに蜀 し建物を牧饗して、Zはその建物より退却して本件宅地を明渡す べきことを求めた。被告は、保存登記がないとは云え﹁本件土地 は原告の居佳家屋の敷地の地績であった被告Yが前地宅Aより賃 借していることを原告は熟知して居りbたまたまそれが本件家屋 の保存登記をしていなかった虚につけこみ本件土地の利用日的も なしに明渡を求めるもので﹂、もしこれが許されるとしたらY、 Z等は生活の根源を絶たれ又國家籍濟の点からも到底認容するこ とは謹言ない。原告の主張は罐利の濫用であると抗嘉した。︹到直面由︺ 噌、本件宅地は原告が慾しなかったのに︵自己の家 屋の敷勉のみを買い受けたかったのだが︶費tAから本件宅地と 共にでなければ困ると云われて,余b氣がす\まぬま、に買った ものであるから、原告にとって被告に明渡を要求する程必要なも のと思われない。二、原告の家屋は本件古池の隣地にあり二九埣 もあって歯科瞥としてはそれ以上さ程匿い家屋を必要とすると思 われない〇三、Zは⋮戦災者であり住宅兼店舗として現に生活を悩 んでいるものである。以上から原告の本件宅池利用の必要性は少 いのに反し被告Zの受ける打撃は大きい。 ﹁惟うに原告の本訴請 求は被4,口Yの家屋に保存登記がないので.同被告と本件宅地の前 所有者との聞の賃貸借を原告に勤抗出漁ないことを霊祭としてい るものであるが、凡そ罐利の行使は公共の編耐に奮い誠實に行わ なければならないのに、以上認定の事情の下に於ける原告の本訴 請求は、自己のわすかの利雪を追求するに急にして、被告等の法 律上の知識の欠乏に減じてその苦痛を顧みす、不乙に所有灌を行 使するものであって信義に背馳し、正雷の灌利行使の範園を逸腕 した思置と認むべきで、現時の砒會通念に照し到底認容すること を得ないところであ・る﹂とし被告の抗辮を認めたD ︹解⋮二軍︺ 民法︷弟みハ〇五條には﹁不動産ノ価只貸借ハ之ヲ登”記シタル トキハ爾後其不動琵二三キ物灌ヲ坂得シタル者=封シテモ其効カ ヲ生ス﹂と規定されている。然るに﹁登記ハ登記灌利者及ヒ登詑 義務者又ハ其代理人登記所二出頭シテ之ヲ申請スルコトヲ要ス﹂
到例研究
る︵不動謹登記法第二六條︶がら登記をするためには智﹁貸人の協力 がなければ掲愚ない。所が登記をすれば賃借橿は第三者に凋しご も効力を有す乃のだから恐らく協力などする者は殆んどない。賃 借灌は目的物に封ずる支配玉ではあるが解緯論として賃借罹は通 常債権であると云われる。從って登記に協力すべきことを訴求す る灌利がない結果賃貸人の好意,に依る場合の他登記などは不可能 とさえなっている。とすれば﹁費買は賃︹貸借を破る﹂︵屠讐h︸︾﹄o耳 ン欺08︶の原則に依り目的物が費買された場合には新所有者にそ の地位を射抗し得ない。 ﹁あなたに土地を貸したことはない、家 を冠して土地を明け渡してくれ﹂と云われたら賃借人は如何とも しがたいのである。地上罐は物灌であるから登記に協力すべきこ とを訴求する灌利はあるが實際地上灌を設定されることは殆んど ない。奈部と云ってよい位賃貸借關係である。斯ように賃借罐の 地位は不安位である。地震に脅かされているようだと云うので地 震費買と云われる所以である。然しこのように弱い賃借人の地位 が杜會纒濟にとっても大きな不利釜をもたらすことから、建物保 護二關スル法律が既にはやく明治四二年に制定せられたのであ る。即ち﹁建物ノ所有ヲ目的トスル地上機三島土地、ノ賃借膝二因 リ鞄上罐者叉ハ土地ノ賃借入力其ノ土地ノ上二登記シタル建物ヲ 有スルトキハ地上髄鴨又ハ十︷地ノ賃貸﹁借ハ甘パノ登詑ナキモ之ヲ﹂以テ 第三者二二抗スルコト﹂が措興ることになった。其の事大正一〇 年には借筆法が制定せられ賃借檀の張型がはかられたのである。 ︵尤も、賃借朧の譲渡、繭貸には賃貸人の承諾を要することは依二五
興例研 二
二としてそのま、であり一民法第六=一條一判例も亦繰遮し このことを明言する。叉建物が滅失叉は朽難した場合には、もは や第三者に⋮封抗出來ないことも借地法にそのま、受け縫がれた。 罹災都市借地倦家臨時慮理法は例外として建物なくとも封抗し得 る罐利を認めた︶。然し善業については借家法が﹁建物ノ賃貸借 ハ其ノ登記ナキモ建物ノ引渡アリタルトキハ爾後其ノ建物二付物 灌ヲ取得シタル者二甥シ其ノ効力ヲ生ス﹂と規定した如き封抗力 は附着されす、必ず登記を要するのである。借胞についても借家 法と同じく登記なくとも封抗力を有せしむべきとの主張ある所以 である。 そして本件は正にこの登記がない場合の借地擁の問題なのであ る。即ち被告はAより土地を賃借しその地上に家屋を建てながら 保存登記をせなかったその聞に土地の所有者が攣った場合である。 法の上からは登記なき借地灌は封抗力を有せないのだから被告は 原告に封抗し得ないわけである。然し判決は﹁造営濫用一の法理 を以て被告に封抗力を認めた。この様に建物の登記なくとも借地 構の第三者に封ずる封抗力を認めた到決は他にも現われている ︵神戸地方裁町所、昭和二五年三月二日、下級裁判所裁判例集三 一九頁︶。 借家法第一條ノニには﹁建物ノ賃貸人ハ自ラ使用スルコトヲ必 要 gスル⋮腸△口甘六ノ他正雨勝ノ宙玉茎アル場入一口韮門サレハ梗貝貸借ノ更新, ヲ抵ミ又請契約ノ申入ヲ爲スコトヲ得ス﹂と規定している。この ﹁其ノ他正當ノ事由アル場合﹂と云う一般條碩︵塞白概念︶は﹁必=六
ズシモ賃貸入ノ利害が賃借人ノ利害ヨル大ナルコトヲ要スルモノ ニ非ス﹂ ︵大唐昭和一八年二月=一日︶から﹁賃貸人及賃借人隻 方ノ利害得失ヲ比較考察スル外、爾進ンデ公鞍上砒會上各般ノ事 情ヲ参酌シナケレバナラヌノデアッテ賃貸人ブ便釜掛比シテ賃借 人ノ韻二又ハ苦痛力著シク大デアルトキハ解約正書ノ理由ガナイ ト解⋮サネバナラヌ﹂︵東山泉匪晶裁判所判決、昭和一七年ご月ご一口H、 とその丙容を攣えたのである。借地法第四條の更新拒絶の場合の ﹁但土地所有者力自ラ土地ヲ使用スルコトヲ必要トスル場合其ノ 飽正書ノ事由アル場合﹂は借家法第一條ノニのそれと規を一にす るものである。本件において判決が原告に正當の事由なしと見た のは正に正常な判断である。 ﹁自己の罐利を行使するものは何人に呈しても不法を行うもの ではない﹂︵£三型謬。。狽Oロ臨港♪ロO同昌魯凶ゆO嵩冒罫ユ讐昌︶とか ﹁自己の罹利を行使する者は何人をも害することはない﹂︵腐。同三− 薯・二・・。葺豊ヨ雪占①戸・蜂貝︶と云う諺に依って示される罹利 絶⋮封の原理はローマ法以來の法原理でありそれが又私有財制度殊 に所有檀不可侵の原則の反面をなしたのである。 一般的に朧利の正鴬ならざる行使を禁止すべしとの論議は 浄露ζ屋の問題として現われた。元來幹露犀讐①と云うことは﹁無 ⋮駄なことについての璽﹂と云う意味で、今日でも英語、フランス 語では﹁理由のない孚﹂と云う凶暴をもつている。然るにドイツ では宅観約な要素が附加されて﹁箪に他人に損害を加えることを 目的とする﹂灌利の行使は之を許さすとした ︵一︶ざ﹀窃警=髭 亀O o冒霧閑①07室一乗コ志気鋤q瓜巴鱒 ≦⇔ロ= 蕗。西川﹃ 号︻戸葵く。⇔犀剛︼鉾ぎ昌 ぎロρ。ぎ葺﹀三霞聲訟。ぎぎ巨盛麟二旨讐昌︶。然るにスイス民法 第二條は﹁明瞭な罐利の濫用は法の保護を受けない﹂と規定して 主概的要件を除いた一わが民法第一條の新規定はスイス民法に ならったものである。即ちドイツ民法は世利の濫用ありゃ否や は、灌利行使者の加害目的と云う主導的要素を要件とするが、後 者においては、具体的の罐利行使が法律の目玉並に法律の認める 下竪の本質に反せないかどうかの客搬的工臨に依って濫用の有無 が決せられるのである。ソヴイエート・ロシヤ民法第一條も亦 ﹁灌利は赴會的経導爆圏的に反して行使せらる、場合を除き法律 上の保謹を受く﹂と規定した︵この規定はbロσQ三什卸邑葺=琵ロ一邑 ぎく璽の考えに負う所が多いとオわれている。 ﹁これらの規定は 浴薫騨^5オ累がいうように﹃ブルジョア國家の所謂肚艶事秩序なる ものは、私榎の行使が杜會的秩序に貢献するということを要求し ないで、たゴそれが秩序を繁さないということだけで満足して居 たのであるから上揚の手利澱用禁止の規定や之に興する判例は、 融資を傑護することを目的としないで、た亨個別的なる私人を保 護することを目的としているものである﹄とも考えられるであろ う。之に反してソヴイエ﹁卜民法第一條は﹃私灌は其の行使に常 って規準たるべき一般的拘束のある定まった砒曾纏濟的の目的を 内在せしめていることを前提とするものであるから﹄、灌利自体 の本質的内容としで祉會約の拘束力を認めて、そこに纏利の義務 性を與えようとしたものであるといえる。此の点に激てソヴイエ 到 例 研 究 ート民法の規定はドイツやλイス民法の規定よbも速かに進んだ ものといわねばならない﹂ ︵末川博 ソヴイエート・ロシヤの民 法と勢働法 三一頁以下︶︶。 わが民法は昭和二三年の改正迄丁丁濫用禁止の規定を持たなか った。その理由はドイツ民法第一剛強理由書の﹁何人も其の瀬利 を行使することは︸法によb與えられた意思丙容を實現する謂で ある。それで其の罐利者が灌利を行使して利釜を主張することを 殊更紛孚させるような規定を設けることは實際にも訴訟上も頗る 不得である。近世立法は皆此の種の規定に反勤の趣向を執り、茸 案も亦之に與したのであった﹂のに依るか、或いはその檬な規定 なくとも第九〇條で解決出來るものと考えたのかは詳でない。罐 利濫用の禁止はもと市民法的権利の限界を示した常然の承認にす ぎなかったが、羅利濫用の禁止が宅観的なものから客観的なもの えと鑛大せられた時それは最早や市民法的櫻利の常然の隈界一 灘利は猫立雫等の宅体者において認められるものである限bそれ は絶封的恣意ではあb得ないから一ではなくして灌利そのもの 、限界を示すものとなるのである。判決が搬利濫用に興すいて、 法文からは到底封抗し得られない借地罐に樹抗力を與えたのは第 一條の解離を誤らなかったものと云える。下級裁仁所なればこそ の感を深くするのである。下級審胎内の研究も亦無意義ではな い。 最後に民法第三八八條はいわゆる法定地上構について規定して いるが、然しこれは宅地所有者が自ら地上に建物を築造所有し、 一一七
判例研究
その一方を担傑化しようとする場合にのみみとめられるものであ って、抵當欝欝定當時土地と建物とが同一入に属することを必要 とする。ところが本件の如く土地と建物か別個の人に属する時は 土地の賃貸人と、その地上に築造された賃借人の建物の賃借入と の關係はど61なものであろうか。 元來民法は宅地と建物とを別個の所有罐の客体とする︵民法第 入監條一項、不動琵登記法第一四條一項、 笛叩一五條一項︶。 從っ てこの建前を貫徹するときは、建物のみの賃借人は建物のみの引 渡をうけて建物のみを支配する。そしてこの点に付いては自己の 有する建物の賃借罐をもつて馬入にも醤抗し得る筈である。池主 に弔しても主張し得るわけである。ところが若しこの賃貸人と宅 地の賃貸人との賃貸關係が解除された場合はどうなるか。民法は 飽く迄賃貸借不自由の原則を貫ぬいている︵第六一二條︶。從っ て若し宅地と建物賃貸人の賃貸惜が解除され旭宅の承諾がなけれ ば建物賃借人は如何ともしかたいことになるQ 敷地と離れては存在せない建物を敷地と離れて存在するとする 即ち敷也利用楼を伴なわない建物の存在を椴想する⋮槻弓論の露結 である。淺井博士は到例研究の中で次のように述べられる﹁もし 建物の賃借入の敷地不法占有を理由として、建物の賃借人が敷地 を明渡し、ひいては建物から退去することを請求し得る罐利を地 主について認めるときは、不富に建物の賃借人の三蔵は害され、 本玉地主が請求し得る肥土を越えて地理の講求灌⋮を認めることに なる。さりとて、建物のみの賃借人の建物のみの占有を敷地にま 一︸八 で適法に及ぼしめることは、正當でない。いわばかような矛盾し た法律状態が現出するに至るのはわが民法が建物と土地とを各自 別個馬立な物と瑚て立法したことに職由するのであって、かよう な矛盾は理論的にはとうてい合理的な解決を導き出し能わぬ。從 っτかような場合には両者の利害を調整し得るような便宜的な解 決をもたらすより他あるまい﹂と云うておられる︵解説民事裁判 例 一七〇頁 淺非教授、建物賃借人の賃料支梯債務と敷地の不 法占有による損害賠償債務︶。 通常かような場合考え得ることは建物の所有者が借地法第四 條、第一〇條に依り買取請求罐を行便し、宅地所有者が新に建物 の所有者となり、從って建物の賃貸人となって、建物の賃借人は この者から建物を賃借すると云う陰口を生するであろう。何故な ら買取請求搬が行使されると、それが形成権である常然の結架と して、建物の所有権は宅池所有者に一軸し、建物賃借人との間に 借家法第一條によって直接建物利用の法律關係が生するからであ る。このように煩らわしい關係の生するのも結局は、民法が賃貸 借不自由の原則を固執し、又登記を以て封抗要件としているから であり、到決が椴利濫用の法理を以て、両者を是正せんとしつ∼ あるのは、ローマ法の流れを汲む器機としての賃借灌の物樺化の 準備とさえ思われるのである。そして今や凡ゆる点において賃借 罐に物忘としての地位を與えてよいのではないか。尤もその際公 示に就て考慮が携わるべきことは云う迄もない。二 家屋の賃貸借契約を便用貸借契約に更改した場合における借家人の要素の錯誤の認定
認定昭和二六年三百朽縄〇日八朔決 ︵大阪地方裁到所柵脂和二五年 ︵レ︶第三九号、家屋明渡請求握訴事件︶下級裁判所民事裁到例集 第二巻第三号︸=一郭以下 棄却。 ︹事實︺ 擦訴人︵昭和五b六年頃から貸家業を瞥み、約五〇軒の 貸家と二軒のア。ハートを駈有す︶は、訴外AよりAが被擦訴入Y ︵昭和一五年一月頃よりAから借受け、同所に家族三名と共に居 住して煙雲小笹業を望んでいる六二歳の主婦、忍声程度は小學校 四年の課程を纏ただけ︶に賃貸していた家構を昭和二二年三月頃 買受け﹁同年八月︸日電控訴人と協義の上、從來の賃貸借契約を 爾後は無償使用賃借契約に改め、返読の時期を定めないで貸渡 し、握訴人において必要の生じたときは何時にても翼壁を求める ことができることにし﹂昭和二三年三月三日ニケ月以内に本件家 件を明渡されたい旨催告し.ニケ月の善趣が來たが被捧訴人が明 渡さないので本訴に及んだQ 被控訴人は﹁控訴入の主張するような承諾の意思を表示してい ない。﹂﹁使用貸借証書を差入れたことはこれを認めるが、被擦乱 入はこれを從來通りの賃貸借契約証書と信じてこれに署名捺邸し たに止まり、これが使用貸借契約の読過であるとは全然知らなか ったのであるからこれにより右契約通りの便用貸借契約が成立し たものと云うことはできない。假に擦訴人主張のような契約承諾 判 例 研 究 の意思表示が行われたとしても、被捧訴人は賃貸借契約をするも のと誤解してこの証書を霞入れたものであり、しかもこの誤解が なかったならば被捧訴人はこのような.意思表示をしなかったであ ろうから、被控訴人の承諾は要素に錯誤がある無効のものであ る﹂と擦降した。 ︹判決理由︺ 裁判所は﹁被擦訴人としては右のように契約証が改 められτ為これに特別の愚昧があるものとは考えす、たゴ家主が 攣ったので生壁のために家詰証髪入れなおすものと考えていたの に過ざないのであって右契約の結果被捧訴人と捧訴人との太件象 屋使用の關係について借豪法の適用がなくなり﹂、﹁捧訴人から借 家法第一條の二に所謂﹃正の常事由﹄がなくても何時でも本件家 屋明渡の請求を受けるようになる等のことは奄然知らなかったこ とを認めることができ﹂ ﹁もし被擦訴人が捧訴入に正常の理由が ない場合でも、何時にても、本件家屋の明渡を講求されるように なると云う本件契約の効果を知っていたとすれば、假令無償とな るにしτも、甘み慣れた家屋を明渡さねばならなくなると云う重 大な結果を生すべき本件契約を締結しなかったのであろうという ことは、容易にこれを推認することができ、又、世聞一般の普通 の人蓬がこのような場合に身を置いたとしても、借家法の保護が なくなり、何時でも明穫請求に懸じなければならなくなることをこ九
到例研究
知っていたとすれば、いくら無償でもこのような契約を締結する ことはなかったであろうことは纒瞼階上明かであるから、本件契 約はこの点において被控訴人にとう、正に要素に錯誤のある契約 であると謂わなければならない﹂とし控訴入の請求は失血である とした。被控訴人に軍大な過失があるとの控訴人の主張は認めな かった。 ︹解読︺ 勃決は勿論正否である。説明を加うべきものは殆んどな い。たマ現今の杜曾事情の下では控訴人のように借家人の法律的 無知につけ込まんとする悪らつな家主があの手この手と手段を選 んで借家人︵善良な︶の地位をおびやかさんとしつ、あることを 知るのである。た駁然しこ∼に現われたのは氷山の一角でありた まノ\被控訴人において重利感情を持ち巳つ裁判所に事件を持ち 込む何らかの機會に志まれていたので幸い地位を保ち得たのであ るが、わが國では今爾灌利えの感心はにぶく、又祉曾一般が罐利 を主張昂來得るような塞氣をもたす、むしろそこには灌力えの屈 叫ご○ 從が灌利を抑璽するものとして働らき、お人よしはお人よしとし て、狡獺な人聞は下旬な手段に俵って、樺利の宅張を自ら破棄 し、徒らに灌カー封建的家父劇的仁義i秩序を維持すること になり絡つでいるのである。訴外Aが控訴入に費草した本件目的 家屋も、實はA個人は非常にお人よしであり常然宅止すべき蕪利 を持っていたのかも知れない。だがそのような樺利主張を自己の 責任においてなすことなく、控訴人Xに費渡すということによb 自己の灌利を費ってしまい、自らは意識せないで悪らつな貸家業 者を手助けしていることになっていたのかも知れない。何れにし ろ⋮判決が﹁現在一般に普及している法律知識の程度を以てして は、賃貸借契約を返澱期限を定めない使用貸借契約に更改すれば 借家人は借家法の保護を奪われ、何時にても家屋明渡の講求に鷹 じなければならなくなるというような法律上の効果は一般人とし てはこれを知らないのが普通である﹂と云っているのは、喜んで よいのか悲しんでよいのか。三 建物の費買及び土地の賃貸借についての通諜虚儒表示の認定
昭和二六年三月三日判決︵東京池方裁到所昭和二四年︶回第五 〇三〇号、建物牧去土地明渡請求事件︶下級裁判所裁判凝集第二 巻第三号四五頁以下 棄却。 ︹事實︺ 原切口Xは雲外Aに原菖の所有にか∼る土地を、木造建物 の所有を目的とする約定で賃貸した。所がAは賃料を支彿わない から賃貸借契約を解除した﹁そこでAは本件建物を牧淫してその 敷地である本件土地を原告に明渡す義務があるのであるが、右家 屋には現に被告が居住し原告に饗抗しうべき何等の樺限なくして その敷地である本件土地を不法に占著しているので門店に旨し建物より退去することを要求す﹂るため本訴に及んだ。 被告は之に草し次の如く抗算した。即ち本件家爆は元訴外Bの 所有であって被缶は大正一四年中Bよりこれを賃料某で賃借して いたのであるが吃昭和二三年五月頃原鱈がBより買受け同時に被 告に⋮旨し無勢韓土を理由に建物明渡講求訴訟を早起して來たもの である。然し原告は右訴訟において勝訴の見込がないのを知り右 訴訟は出線二四年四月頃休止瀾了にしてしまった。そこで原銭は 次のような苦肉の策に出たのである。 ﹁すなわち、原告は自己が 代表取締役として實権を有している某會託の取締役たる訴外Aと 合意の上伺人に封し本件家屋を費渡し、昭和ご四年四月二二日そ の所有罐移韓登記を了したヒ同人に封しその敷地である本件土地 につき賃貸借契約を締結したように假幽し、次いで同人をしてそ の地代を滞納させたヒ亀田より同人に讃し原告主張のような池代 麦梯の催告及びその不携を條件とする契約解除の意思展示を爲し これにより原告とA間の本件土地賃貸借契約は解除せられたと 主張し建物の居佳者である被告に湿し本訴を提起して來たのであ る。以ヒのように原告とA間の前記建物の費買その敷地である本 件土地の賃貸借及びその解除は何れも右両名が相通してなした虚 ⋮偽表示であって法律上無効であるばかりでなく、このように箪に 被告を本件家屋より追出す手段として右両名が馴合いの上本訴を 提起するが如きことは樺利の濫用としデ、到底許さるべきことでは ない。よって原告の本訴詰求は失雷である﹂と。
到例研究
﹁判決埋由︺ ﹁Aが、もし眞に本件建物た自己の所有とする意思 を以て前記の代金にて買受け、その建物所有の爲に原告と本件土 地の賃貸借契約を結・ハだものであれば、その建物の代金額に比し て極めて僅少の額に過ぎない地代の支梯を契約の常初より濯滞す るというようなことは現在の純濟事情の下においては異例のこと というべく] ﹁Aのこれら一蓮の行動は、何等かの特殊事情のな い限り麺常人が自己の所有建物に煙しとるべき楷置とは到底考え られない﹂ ﹁原告がさきに太件建物を賀受けた事實とその月的買 受直後覆告に封し﹂明漉訴訟を提起したこと、原告とAとの職業 上の特殊關係、Aより被告に饗する賃料の支⋮彿ないし明渡の講求 がなされた形跡の存しないこと等をも右事實と併せ考えるとき は﹁原名とAとの聞になされた本件建物の費買及び本件圭地の賃 貸借は、それが常事者の同意に出でたものとは到底認め難く、む しろ、被告の主張するように、原告が被呼に封ずる本件建物の明 渡講求を急ぐの余りその一方便としてAと馴合の上両者相通じて なした虚無の意患表示であると認定するのが相常であって﹂ ﹁從 って、原言とAとの右拳螺及び賃貸借はいすれも法律上無効であ る﹂とし本訴請求は理由なきものとして棄却した。 ︹解説︺ 前述周の解説で述べたように、賃借権は相常強化された とは云うもの∼、工事罐として物灌の如き排他性を持たないた め、その間隙をぬって、あの手この手と手のこんだ術策が葬され るのである。本件も正にこうした術策の一ッを示すものである。 一一二判 例 研 究 この様な術策が弄された所以はHの解説でや、詳細に述べた如く 賃借灌が物罹でない結果民法第六=一條の貸借譲渡不自由の原 則を悪用せんとするものなのである。法の形式論理からは用いら れた術策それ自身は如何にもその通りである。そして一般にはこ のような虚傭表示を盧俗表示であると見つけることは中々に困難 である。そこで通常は形式論点に賢い、賃借主は全く不安な地位 に陥入れられるのである。賃借樫が物縷たらざる不合理の最もあ ざやかな實例の一ツをこ、に示されたのである。賃借櫻を物罐化 =一二 すべき急務がHr−国の判例を通じ痛感させられるのである。幸い 本件においては心機表示が立証されたので賃借主はその地位を保 ち得たのであるが、若し詠手表示がもっと巧妙になされた場合は どうであろうか。賃借纏は強化されたと云うもの∼思えば地震費 買のそれと同じく實際上は薄氷上のコンクリートに過ぎない。法 釜澤等の上からも法砒會學の上からも下級審の到例は洵に興昧あ る問題を提出しているものと云わねばならない。 四 罹災都市借地借家臨時庭理法第一〇條の借地椛.に基く妨害排除請求の可否 昭和二六年三山月二〇口目判決︵⋮甲府地串ヵ裁判所昭和二三年例焔第一二 三号、建物差響土地明渡請求事件︶下級裁判所裁到例集第二雀第 三号一〇七頁以下 棄却。 ︹事實︺ 言外Bは訴外A所有の土地を大正六年賃借してその上に 家屋を建設所有していた。原菖xは大正七年Bから右土池賃借灌 を地上家屋と共に賃貸人の承諾を得て適法に⋮譲り受けAから土地 を賃借していた。原告は同地上に更に家屋を建設所諾した。所が 昭和二〇年七月本件土製上の原告所有家屋は職災によって全部焼 失した。︸方土地所有者Aは昭和一二年二月=二日本件土地を訴 外Gに費渡した。被乞Yは右Cより本件土地を賃借しその上に建 物を建設所有している。 原各は次の如く主張した。訴外CへAより土地を買い受けた者︶ は本件土地の所有罐を坂得するとともにその賃貸人の地位をも承 議し、從って原告は本件土地につき同人を賃貸人とせる賃借纏を 有する。然るに被告は本件土地上に建物を建設所有して右四池を 占有し、原告がこれにつき有する賃借櫻を侵害しτいるから、右 賃借朧に基いて同建物の牧人及びその敷地である土地の明渡を求 める。 七道は之に⋮詳し次の如く抗蔵した。被告は土地の新取得者Cよ り普通建物所有の目的で賃借し、右賃借罐に能いτ本件土池を適 法に占有しているものである。而も原告は本件土地の賃借搬につ いて登記がなく、叉罹災前本件土地上にあったその所有家屋の登 記もなかったのだから罹災都市借地借家臨時客理法第噌○條の保 護は受けられないとo
“ ︹判決埋由︺ 判決理由は極めて簡箪である。即ち賃借纏⋮は債罐で あり排他性がないと云うにつきる。 ﹁罹災建物が滅失した富時か ら引き績きその建物の敷地に賃借罐を有する者が右建物滅失後そ の敷魁を賃借罐に基いて占有している第三者に書しその明渡を請 求できるかどうかの点につき考える﹂とし﹁賃借罐が我が民法上 一種の債灌であることは同法の編母上の位置、規定の丙容その他 によって明白であり、建物所有を目的とする土地賃借纏について は建物保護に賭する法律、借地法等により、賃借入の地位が著じ く強化されたことは疑いないけれども、それは未だ賃借権の債機 である本質を攣更するまでに至ったものと解すべきではない。而 して七五は物差と異りいわゆる排他性のない結果たとえ罫抗要件 を縮⋮えた賃借濯を有する者と錐も別個に.賃借灌の設定を受けた第 三者の罐利行使の結栗による侵害をその賃借罐に基き排除し得な いことは疑のないところである。このことは本件の如く罹災都市 借地借家臨時麗埋法箪二〇條によって保護される賃借灌と錐も異 るところはない﹂からこの点だけで原告の請求は理由がないとし て棄却した。 ‘ ︹解読︺ 判決が﹁この点だけで原告の請求は理由がない﹂と他の 点は省略しτいるので主として曝露が問題とした点のみについて …遮 ラる。賃借灌がわが民法上債㎝催であることは通常認あられる威 である︵岡村玄治氏は賃借罐物質説を主張された!法単語林第 一七、 一八、二二雀一︶。わが民法はローマ法の流れを汲むも