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強皮症の皮膚線維化におけるノルエピネフリンの役割

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Academic year: 2021

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103 ─  ─ 2018;68:103~104

 北関東医学会奨励賞

強皮症の皮膚線維化におけるノルエピネフリンの役割

上原 顕仁

1 1 群馬県前橋市昭和町3-39-15 群馬大学医学部附属病院皮膚科 はじめに  全身性強皮症は,皮膚および内臓臓器の線維化,血管障 害,免疫異常を特徴とする発症機序不明の全身性疾患であ る.皮膚硬化は皮膚の真皮内に存在する線維芽細胞からの 過剰な膠原線維の産生が関与している.強皮症のほとんど の症例はレイノー現象を初発症状としている.レイノー現 象は,手指の小動脈の攣縮(一過性収縮)が起こり,末端 部が一過性に虚血になり,手指の色調が発作的に変化する 現象である.寒冷刺激や精神的ストレスによって,末梢神 経から放出されるノルエピネフリンが,血管の収縮を引き 起こすことが原因の一つと考えられている.  このように,強皮症の血管障害(特にレイノー現象)と ノルエピネフリンとの関係については知られているが,強 皮症の皮膚線維化におけるノルエピネフリンの役割は明ら かになっていない.そこで,本研究では,強皮症の皮膚硬 化(線維化)におけるノルエピネフリンの役割を解明する ことを目的とした.  我々は,皮膚の線維化に関わる因子として,IL-6に注 目した.IL-6は,線維芽細胞の分化,増殖を誘導し,線 維化を亢進させると考えられている.皮膚線維芽細胞から のIL-6産生を誘導するものとして,IL-1などが知られて いるがノルエピネフリンについては知られていない. 方法  正常人と強皮症患者3ペアの皮膚由来の線維芽細胞にノ ルエピネフリンなどの試薬で刺激し,IL-6,Ⅰ型コラーゲ ンなどの産生をmRNA,タンパクレベルで測定した. 結果  ノルエピネフリン刺激によって線維芽細胞から,濃度, 時間依存性にIL-6産生がみられ,強皮症由来線維芽細胞 では,正常由来と比べてIL-6産生が亢進していた.また, アドレナリンα受容体作動薬であるオキシメタゾリン刺激 ではIL-6産生亢進はみられず,β受容体作動薬であるイソ プロテレノール刺激ではIL-6産生亢進がみられたことや, β受容体阻害剤であるプロプラノロール処理によってノル エピネフリンによるIL-6産生が抑制されたことより,ノ ルエピネフリン刺激によるIL-6産生は,主にβ受容体を介 することが示唆された.正常人と強皮症患者由来線維芽細 胞において,アドレナリン受容体の発現量に差はみられな かった.また,細胞内シグナルについて検討を行い,ノル エピネフリンはアドレナリンβ受容体を介してp38のリン 酸化を亢進させ,IL-6産生を誘導することを明らかにした. また,p38の阻害剤であるSB203580やsiRNA法による p38の発現抑制によって,ノルエピネフリンによるIL-6 の産生が抑制された. 文献情報 投稿履歴:  受付 平成29年11月9日  採択 平成29年12月7日 論文別刷請求先:  上原顕仁  〒371-8511 群馬県前橋市昭和町3-39-15        群馬大学医学部附属病院皮膚科  電話:027-220-8284  E-mail: [email protected]

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104 ─  ─ 強皮症の皮膚線維化におけるノルエピネフリンの役割  またエンドセリン-1との関係について検討した結果, 強皮症由来線維芽細胞において,ノルエピネフリン刺激に よるIL-6産生は,エンドセリン-1刺激によって相加効果 を示した.ノルエピネフリンと可溶性IL-6受容体による 刺激によって,線維芽細胞からのⅠ型コラーゲンの産生が 増加することも明らかにした.また,さらにβ受容体阻害 薬あるいはp38阻害薬を投与すると,それぞれにおいてⅠ 型コラーゲンの産生が有意に抑制された.ノルエピネフリ ン刺激によって,線維芽細胞の増殖能は亢進し,特に,強 皮症由来線維芽細胞では,正常由来より亢進していた. 考察  これまでに,寒冷刺激やストレスにより誘導されるノル エピネフリンが血管平滑筋に作用して血管収縮をおこすこ とが,レイノー現象を引き起こす原因の一つとして考えら れていた.しかし今回の研究によって,ノルエピネフリン が線維芽細胞上のβ受容体と結合し,p38のチロシンリン 酸化を介してIL-6産生や,増殖能の増加,Ⅰ型コラーゲ ンの産生増加を引き起こすことと,これらの反応が強皮症 由来線維芽細胞では亢進することを明らかにし,ノルエピ ネフリンが強皮症の線維化に関与することが示唆された. また,β受容体阻害剤であるプロプラノロール処理や,p38 の阻害剤であるSB203580によってノルエピネフリンによ るIL-6産生およびⅠ型コラーゲン産生が抑制されたこと より,プロプラノロールやSB203580が強皮症の線維化の 治療に応用できる可能性が示唆された. 結語  今回の結果より,ノルエピネフリンは強皮症の2つの主 要病態である,血管障害と線維化の両方に関与する可能性 が示唆された.強皮症の皮膚硬化が,寒冷刺激を受けやす い四肢末端より始まる原因として,これらの機序が関与す る可能性が示唆された.寒冷を防ぐことが末梢血管障害の 予防だけではなく,皮膚硬化の予防にもつながる可能性が 示唆された.また,in vitroでノルエピネフリンによる IL-6産生を抑制したアドレナリンβ受容体阻害剤とp38阻 害剤が線維化の治療へ応用できる可能性が示唆された. 謝辞  平成29年度北関東医学会奨励賞を戴くにあたり,北関 東医学会役員の先生方,そして本研究に対して御指導,御 鞭撻を賜りました,群馬大学大学院医学系研究科皮膚科学  石川 治教授,茂木精一郎先生と研究グループの皆様,関 係者の皆様に深謝致します. 引用文献

1.Motegi S, Leitner WW, Lu M, et al. Pericyte-derived

MFG-E8 regulates pathologic angiogenesis. Arterioscler

Thromb Vasc Biol 2011; 31: 2024‒2034.

2.Motegi S., Garfield S., Feng X, et al. Potentiation of plate-let-derived growth factor receptor-β signaling mediated by integrin-associated MFG-E8. Arterioscler Thromb Vasc Biol 2011; 31: 2653‒2664.

3.Uehara A, Motegi S, Yamada K, et al. Mechanistic insight

into the norepinephrine-induced fibrosis in systemic sclerosis. 

参照

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