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譲渡所得学説と租税裁判 : いわゆる「学説」と裁判例の関連性を中心に

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(1)

譲渡所得学説と租税裁判 : いわゆる「学説」と裁

判例の関連性を中心に

著者

鳥飼 貴司

雑誌名

鹿児島大学法学論集

46

1

ページ

23-46

別言語のタイトル

A Study on the relationship of the Capital

gains tax theory and tax cases

(2)

譲 渡 所 得 学 説 と 租 税 裁 判

い わ ゆ る

学 説 」 と 裁 判 例 の 関 連 性 を 中 心 に−

I

は じめ に

本稿 の 目的 は 、 譲 渡所 得 学説 が租 税 裁 判 例 に 与 え た影 響 を 考察 す る こ とで あ

る。

譲 渡所 得(所 得 税 法33条1項)は

、所 得 税 法 の解 釈 に お け る 主 要 な 論 争領 域

の 一つ で あ り、 キ ャ ピタル ・ゲ イ ン に対 す る課 税 の 問題 は 、 常 に所 得 理 論 上や

租 税 制 度 論 上 の 重 要 課 題 で あ る と 言わ れ て い る(1)。今 日にお い て も 、 譲渡 所 得

は 学 問 上 の課 題 だ け で は な く、 司法 試験 で も頻 繁 に 出題 され て い る重 要論 点 で

も あ る(2。

譲 渡 所 得 の 課 税 につ い て は 、主 に 清算 課 税 説(3)(増 加 益 清 算 説(4))と 言 われ

る考 え 方 に よ っ て説 明 が な され て い る。 こ の清 算 課 税 説 に対 して は 、従 来 か ら

様 々 な 学 問 上 の 批 判 や 疑 問 が 投 げ か け られ て い る が(5)、後 に述 べ る よ うに 実務

で は清 算 課 税 説 に従 っ た租 税 裁 判 例 が 出 され 続 け て い る。

租 税 裁 判 例 す な わ ち 実務 を理 論 的 に 支 え る の は い わ ゆ る"学 説"と

い うも の

で あ る が 、 学説 と裁 判 例 との 関連 性 を 考察 す る こ とは 、今 後 自分 自身 の研 究 活

動 を行 うに 当 た っ て も 、有 益 で あ る と考 え る。 税 法 学 とい う法 学 は どの よ うな

学 問 で あ る か 、 そ の よ うな 学 生 時代 か ら抱 き続 け て い た 素朴 な 疑 問 に対 す る 自

答 の き っ か け に なれ ば 幸 い で あ る。

II

民 法 規 範 と譲 渡 所 得 課 税

あ る 税 法 の 入 門 書 に 、 次 の よ うな 記 述 が あ る。 曰 く、 「

民 法 典 に 書 い て あ る

とお りに贈 与 が で き て 七地 取 引 が で き る社 会 な ん て 、 ど こに も な い の で す 」(6)

と。 こ の 主 張 の 意 味す る とこ ろ は 、税 金=租 税 とい うも の が私 的経 済 取 引 を 中

(3)

心 と す る 人 々 の 様 々 な 活 動 に 大 き な 影 響 を 与 え て お り(7)、民 法 に お け る 法 律 関 係 を 考 察 す る 上 で も 税 法 的 経 済 リ ス ク を 考 慮 に 入 れ て 法 律 効 果 を 検 討 しな け れ ば な ら な い こ と で あ る と 思 わ れ る 。 こ れ を 税 法 側 か ら 言 え ば 、 民 法 な ど 私 法 を 前 提 と して 、 私 的 経 済 生 活 上 の 行 為 や 事 実 を と り込 ま ざ る を 得 な い 場 合 が 多 い の で 、 税 法 は 程 度 の 差 は あ れ 宿 命 的 に 私 法 に 依 存 す る 関 係 に あ る(8)と 言 え る だ ろ う。 さ ら に 言 え ば 、 民 法 ・商 法(会 社 法)と 税 法 と の 関 係 は 、 公 法 と 私 法 と い う伝 統 的 な 公 法 私 法 二 元 論(9)と い う範 疇 は あ り な が ら も 、 一 般 法 と 特 別 法 と の 関 係 と い っ て も 言 い 過 ぎ で は な い(10)と 思 わ れ る(11)。 そ こ で 、 本 稿 は ま ず 民 法 規 範 と 譲 渡 所 得 課 税 の 関 わ り に つ い て 記 述 す る こ と に す る 。 譲 渡 所 得 の 「譲 渡 」 と は 、 国 語 辞 典 的 意 味 に お い て 「権 利 ・財 産 な ど を 他 人 に ゆ ず りわ た す こ と 」 だ と 思 わ れ る 。 財 産 な ど を 他 人 に 譲 り渡 す 際 に 、 対 価 と して 金 銭 な ど を 譲 り受 け る 、 つ ま り 自 己 の 財 産 権 と 相 手 の 金 銭 所 有 権 と の 交 換 で あ る(12)場合 に は 、 売 買 契 約 と し て 民 法555条 の 適 用 が 私 法 的 に は 生 じ る こ と に な る 。 民 法555条 は 、 「売 買 は 、 当 事 者 の 一 方 が あ る 財 産 権 を 相 手 方 に 移 転 す る こ と を 約 し 、 相 手 方 が こ れ に 対 し て そ の 代 金 を 支 払 う こ と を 約 す る こ と に よ っ て 、 そ の 効 力 を 生 ず る 。」 と 規 定 し て い る 。 こ の 売 買 契 約 の 税 法 的 表 現 と し て 譲 渡 所 得 と い う所 得 類 型 が 存 在 し て い る 。 す な わ ち 、 所 得 税 法33条1項 は 、 「譲 渡 所 得 と は 、 資 産(13)の譲 渡(…)に よ る 所 得 を い う。」 と 規 定 し て い る。 典 型 的 に は 、個 人Aが 個 人Bに 取 得 価 格3,000万 円 の 土 地 を5,000万 円 で 売 り渡 し た 場 合 、 個 人Aに 譲 渡 所 得 が 生 じ る こ と に な っ て い る 。 所 得 税 法33条3項 は 、 「譲 渡 所 得 の 金 額 は 、 … そ の 年 中 の 当 該 所 得 に 係 る 総 収 入 金 額 か ら 当 該 所 得 の 基 因 と な っ た 資 産 の 取 得 費 及 び そ の 資 産 の 譲 渡 に 要 し た 費 用 の 額 の 合 計 額 を 控 除 し、 そ の 残 額 の 合 計 額(… 「譲 渡 益 」)か ら 譲 渡 所 得 の 特 別 控 除 額 を 控 除 し た 金 額 とす る 。」 と 規 定 し て い る 。 例 え ば 譲 渡 費 用 が200万 円 、 譲 渡 所 得 の 特 別 控 除 額 が50万 円(所 得 税 法33条4項)だ っ た と す れ ば 、5,000万 円-(3,000万 円+200万 円)-50万 円=1,750万 円 と な る 。 こ の 際 、 譲 渡 さ れ た 財 産 権 な ど が 、 譲 渡 人 の 所 有(保 有)期 間5年 以 下 か5年 超 か に よ っ て 、 短 期 譲 渡 所 得(所 得 税 法33条3項1号)(14)と 長 期 譲 渡 所 得(所 得 税 法 33条3項2号 、 同 法22条2項2号)(15)に 区 分 され る 。 後 者 の 長 期 譲 渡 所 得 な ら

(4)

譲渡 所得 学説 と租 税裁判 ば 、1,750万 円 の"2分 の1"で あ る875万 円 が 「譲 渡 所 得 の 金 額 」(所 得 税 法 21条1項1号 、22条2項1号 ・2号)と な る 。 保 有 期 間 が5年 超 の 長 期 譲 渡 所 得 は 、 租 税 政 策 的 措 置 か ら"2分 の1"課 税 に な っ て い る(16)。 民 法 に お け る 通 常 の 売 買 契 約 を 念 頭 に 置 く と 、 こ こ ま で の 説 明 で 充 分 に 法 的 議 論 が な され る と 思 わ れ る が 、"税 法 の 世 界"に な る と さ ら に 話 が 進 ん で ゆ く 。 そ れ は 、 譲 渡 され た 財 産 権 な ど の 種 類 に よ っ て 所 得 分 類 が 譲 渡 所 得 で は な い 場 合 が 生 じ る の で あ る 。 所 得 税 法33条2項 は 、 「次 に 掲 げ る 所 得 は 、 譲 渡 所 得 に 含 ま れ な い も の とす る 。 一  た な 卸 資 産(…)の 譲 渡 そ の 他 営 利 を 目 的 と し て 継 続 的 に 行 な わ れ る 資 産 の 譲 渡 に よ る 所 得 二 前 号 に 該 当 す る も の の ほ か 、 山 林 の 伐 採 又 は 譲 渡(17)に よ る 所 得 」と 規 定 す る 。 譲 渡 さ れ た 財 産 権 が"山 林 の 伐 採 に よ る 立 木" の 場 合 に は 、 そ の 対 価 は 山 林 所 得(所 得 税 法32条)と な り、"商 品 な ど"を 譲 渡 し た 場 合(18)には 、 そ の 対 価 は 事 業 所 得(所 得 税 法27条)と な る(19)。 と こ ろ で 民 法555条 は 、 自 己 の 財 産 権 と 相 手 の 金 銭 所 有 権 と の 交 換 で あ る が 、 金 銭 所 有 権 以 外 の 財 産 権 の 交 換 に つ い て は 、 民 法586条 に 「交 換 は 、 当 事 者 が 互 い に 金 銭 の 所 有 権 以 外 の 財 産 権 を 移 転 す る こ と を 約 す る こ と に よ っ て 、 そ の 効 力 を 生 ず る。」 と規 定 され て い る(交 換 契 約)(20)。 典 型 的 に は 、 個 人Aと 個 人 Bは 、 各 々 等 価 の 土 地 を 有 し て お り、 こ の 不 動 産 を 交 換 し た ケ ー ス を 想 定 で き よ う。 こ の よ う な ケ ー ス で は 、 所 得 税 法58条(固 定 資 産 の 交 換 の 場 合 の 譲 渡 所 得 の 特 例)(21)が 適 用 され る 場 合 が あ り、 そ の 際 所 得 税 法33条 の 譲 渡 所 得 が な か っ た も の と み な され る 。 「譲 渡 」と い う通 常 の 国 語 的 意 味 か ら言 え ば 、今 ま で は 有 償 の もの で あ っ た が 、 無 償 に よ る 譲 渡(贈 与=民 法549条)や 有 償 で も 所 得 税 法 施 行 令169条 の 「資 産 の 譲 渡 の 時 に お け る 価 額 の2分 の1に 満 た な い 金 額 」 で 対 価 を 受 け る"低 額 譲 渡"の 場 合 少 し事 情 が 異 な っ て く る(所 得 税 法59条1項 参 照)。 III 譲 渡 所 得 課 税 の 主 要 裁 判 例 の 判 決 理 由 と 事 実 の 概 要 こ こ で は 、 譲 渡 所 得 に 対 す る 課 税 の 本 質(22に 関 す る 裁 判 例 に 絞 っ て 記 述 し て い く(23)。

(5)

(1)最 高 裁 昭 和43年10月31日判 決(24)は 、 「譲 渡 所 得 に 対 す る 課 税 は 、 原判 決 引 用 の 第 一 審 判 決 の 説 示 す る よ う に 、 資 産 の 値 上 り に よ りそ の 資 産 の 所 得 者 に 帰 属 す る 増 加 益 を 所 得 と し て 、 そ の 資 産 が 所 有 者 の 支 配 を 離 れ て 他 に 移 転 す る の を機 会 に 、 こ れ を 清 算 し て 課 税 す る 趣 旨 の も の と 解 す べ き 」 と判 示 し た 。 い わ ゆ る 「榎 本 家 事 件 」(25)と呼 ば れ る 。 こ の 事 実 の 概 要 は 以下 の 通 り で あ る。Xが 本 件 不 動 産1をMに 、 本 件 不 動 産2をM雄 に そ れ ぞ れ 贈 与 し た(民 法549条)こ と で 、Xに 譲 渡 所 得 が あ る と し て な され た も の で あ る 。 そ も そ も 本 件 不 動 産 は 、Xの 父 親 で あ るS吉 の 所 有 で あ っ た 。 昭 和29年 にS吉 が 死 亡 し た こ と で 、S吉 の 妻(Xの 母 親)で あ るK、S吉 とKの 子 で あ るU吉 ・S満 ・Xが相 続 人(民 法887条1項 、890条) と し て 共 同 相 続(民 法898条)し た 。 被 相 続 人 のS吉 は 、 そ の 所 有 財 産 の 大 半 をU吉 の 妻 で あ るMに 遺 贈(民 法964条)し て い た 。Xら 共 同 相 続 人 は そ の 遺 留 分(民 法1028条)を 相 続 し た も の で あ っ た 。 本 件 不 動 産 は 、 遺 留 分 の 一 部 で あ っ た 。 こ れ を 他 の 相 続 財 産 を 含 め て 遺 産 分 割(民 法 907条)を し た 結 果 、XとS満 が 共 有(民 法249条)し た の で あ る 。XとS 満 は 、 実 家 の 財 産 が 散 逸 す る の を 避 け る 目的 が あ っ た 。 し か し 、 相 続 放 棄(民 法939条)を す る と 、全 相 続 財 産 は 結 局U吉 が 取 得 す る こ と に な る 。 こ のU吉 は 、 別 居 し て 家 業 を 顧 み な い 状 態 に あ る の で 、U吉 に 全 相 続 財 産 を 取 得 させ る こ と は 実 家 の 存 続 を 危 くす る。 家 業 に 専 念 し て い るU吉 の 妻MやU吉 とMの 娘Aの 夫 で あ るM雄 ら の 生 活 に 脅 威 を 与 え る 結 果 と な る と 考 え た 。 そ こ で 、XとS満 が い っ た ん は 相 続 し て 、 こ れ をMとM 雄 に 無 償 で 贈 与 す る こ と に し た 。 こ れ に 対 し て 被 告 税 務 署 長 は 、 原 告 の 昭 和35年 分 所 得 税 に つ い て 、 所 得 税 額23万3610円 、 無 申 告 加 算 税 額5万 8250円 と 決 定(国 税 通 則 法25条)し た と い う こ と で あ る(以 下、 諸 手 続 は 省 略)。 裁 判 結 果 は 、 第1審(浦 和 地 判 昭 和39年1月29日(26))は 一 部 却下 ・一 部 棄 却 で 原 告 控 訴 、 控 訴 審(東 京 高 判 昭 和40年9月10日(27)) は 棄 却 で 控 訴 人E告 、E告 審 棄 却 で 確 定 した(28)。 (2)最 高 裁 昭 和47年12月26日 判 決(29)は 、 「本 件 課 税 処 分 は 、 本 件 不 動 産 上 の Aの 持 分 の 譲 渡 に よ る 所 得 を 対 象 と す る も の で あ る が 、 一 般 に 、 譲 渡 所 得 に 対 す る 課 税 は 、 資 産 の 値 上 り に よ りそ の 資 産 の 所 有 者 に 帰 属 す る 増

(6)

譲渡 所得 学説 と租 税裁判 加 益 を 所 得 と し て 、 そ の 資 産 が 所 有 者 の 支 配 を 離 れ て 他 に 移 転 す る の を 機 会 に 、 こ れ を 清 算 して 課 税 す る 趣 旨 の も の と解 す べ き で あ る こ と は 、 当 裁 判 所 の 判 例 とす る と こ ろ で あ る(… 昭 和43年10月31日 第1小 法 廷 判 決 …)。 し た が つ て 、 譲 渡 所 得 の 発 生 に は 、 必 ず し も 当 該 譲 渡 が 有 償 で あ る こ と を 要 せ ず 、 昭 和40年 … 改TE前 の 旧 所 得 税 法(…)に お い て は 、 資 産 の 譲 渡 が 有 償 で あ る と き は 同 法9条1項8号 、 無 償 で あ る と き は 同 法5条 の2が 適 用 され る こ と と な る の で あ る が 、 前 述 の よ う に 、 年 々 に 蓄 積 され た 当 該 資 産 の 増加 益 が 所 有 者 の 支 配 を 離 れ る 機 会 に 一 挙 に 実 現 し た も の と み る 建 前 か ら 、 累 進 税 率 の も と に お け る 租 税 負 担 が 大 と な る の で 、 法 は 、 そ の 軽 減 を 図 る 目 的 で 、 同 法9条1項8号 の 規 定 に よ り 計 算 し た 金 額 の 合 計 金 額 か ら15万 円 を 控 除 し た 金 額 の10分 の5に 相 当 す る 金 額 を も つ て 課 税 標 準 と し た(同 条1項)の で あ る 。」 と 判 示 し た 。 い わ ゆ る 「割 賦 弁 済 土 地 譲 渡 事 件 」(30)と呼 ば れ る 。 こ の 事 実 の 概 要 は 以 下 の 通 り で あ る 。Xの 被 相 続 人 で あ るSは 、T百 貨 店 に 対 し 、土 地 建 物 を3,055 万2,000円 で 売 渡 し た(民 法505条)。 代 金 は 、 契 約 成 立 日 に 手 附 金(31)と し て100万 円 、残 金 を 毎,月50万 円 ず つ 支 払 を 受 け る こ と を 約 束 し た 。Sは 、 100万 円 を 受 領 し た が 、 翌 月 死 亡 し た 。Xは 、 被 告 課 税 庁 側 の 指 示 に し た が い 、Sの 譲 渡 所 得 額 を 売 買 代 金 全 額 で あ る3,055万2,000円 と し て 同 年 度 所 得 税 額 を 算 出 し て 申 告 し た 。 し か し 、Sが 現 実 に 取 得 し得 た 金 額 は 、 手 附 金 と 死 亡 月 分50万 円 の 合 計 で あ る150万 円 だ け な の で 、Xは 申 告 を 誤 り と し て 更正 の 請 求(国 税 通 則 法23条)を し た 。 課 税 庁 側 は 、 これ を 却 下 し た う え 、 譲 渡 所 得 金 額1,347万9,841円 、 所 得 税 更 正 額607万1,890 円 とす る 更正 を し た 。(以 下 、 諸 手 続 は 省 略)。 裁 判 結 果 は 、 第1審(熊 本 地 判 昭 和38年2月1日(32))は 請 求 認 容 で 被 告(課 税 庁)控 訴 、控 訴 審(福 岡 高 判 昭 和41年7月30日(33))は 原 判 決 取 消 ・被 控 訴 人(X)の 請 求 棄 却 で 被 控 訴 人(X)上 告 、 上 告 審 棄 却(X敗 訴)で 確 定 し た 。 (3)最 高 裁 昭 和50年5月270判 決(34)は 、 財 産 分 与 と し て さ れ た 不 動 産 の 譲 渡 は 、譲 渡 所 得 を 生 ず る も の と し て 、課 税 の 対 象 と な る と 判 示 して い る 。 い わ ゆ る 「名 古 屋 医 師 財 産 分 与 事 件 」(35)と呼 ば れ る。 こ の 事 実 の 概 要 は 以 下 の 通 り で あ る。Xが 所 有 し て い た 宅 地 と そ の 地 上 建 物 をKに 譲 渡 し

(7)

た 。 これ はXとKと

の 問 の離 婚 等 調 停 事 件 の 調 停 が成 立 し、 そ の調 停 の

結 果 財 産 分 与(36)として 譲 渡 した も の で あ る。 これ ら各 不 動 産 の譲 渡 に

よ っ てXは 何 等 の 所 得 も得 て い な い の に もか か わ らず 、課 税 庁 側 は 譲 渡

所 得 の 申告 が な され て い な い とXに 増 額 更 正 処 分 を した。(以 下、 諸 手

続 は省 略)。 裁 判 結 果 は 、第1審(名

古 屋 地 裁 昭和45年4月11日

判 決(37))

は棄 却 で 原 告 控 訴 、控 訴 審(名古

屋 高 裁 昭 和46年10月28日

判 決(38))は

棄 却 で 控 訴 人E告 、E告 審 棄 却 で 確 定 した 。

譲 渡 所 得 に対 す る課 税 の 最 高 裁 にお け る リー デ ィ ン グケ ー スは 、 以 上 の3つ

で あ る と思 わ れ る。 興 味 深 い 事 実 と して 、 昭 和43年判 決 を昭 和47年判 決 が 理 中

中の 判 断 で 引用 し、 昭 和47年 判 決 を昭 和50年 判 決 が 理 由 中の 判 断 で 引 用 す る と

い う現 象 が 行 わ れ て い る。この よ うに い わ ば"既 成 事 実 化"さ れ る こ とに よ っ て 、

清 算 課 税 説 と考 え方 が 租 税 裁 判 実 務 の 中で 醸 成 され て きた と言 え るだ ろ う。 現

在 で も租 税 裁 判 実 務 で は、 清 算 課 税 説 を採 用 して い る。 例 えば 、 い わ ゆ る 「

之 江 市 井 地 山造 成 地 事件 」(39)と

呼 ば れ る松 山 地 裁 平 成3年4月18日

判 決(40)は、

土 地 等 の 資 産 の譲 渡 に よ る所 得 が譲 渡 所 得 と して課 税 の 対 象 に され て い るの

は(所 得 税 法33条1項)、

資 産 の 値 上 が りに よ りそ の資 産 の 所 有 者 に帰 属 す る

増加 益 を所 得 と して 、 そ の 資 産 の 所 有 者 が 支 配 を離 れ て 他 に移 転 す るの を機 会

に、 これ を清 算 して 課 税 す る趣 旨の もの で あ る(最 高 裁判 所 … 昭 和50年5月27

0… 民 集29巻5号641頁

以 下)。」 と判 示 した。

た だ し、 「

榎 本 家 事 件 」 の よ うな民 法 上 の 贈 与 契 約 に 基 因 す る無 償 の譲 渡 へ

の 所 得 課 税 は 、現 行 法 で は解 消 され て い る。

筆 者 が 所 有 し て い る 旧 所 得 税 法(昭

和23年3月31日

法 律27号)(41)5条

の2第1項(時

価 に よ る譲 渡 とみ なす 場 合)は

、 次 の よ うに規 定 して い た。

遺 贈(包 括 遺 贈 及 び 相 続 人 に対 す る遺 贈 を 除 く。)又 は 贈 与(相 続 人 に対 す

る贈 与で被 相 続 人 た る贈 与者 の 死 亡 に 因 り効 力 を生 ず る も の を 除 く。)に 因 り

第9条

第1項 第7号

又 は第8号

に規 定 す る資 産 の移 転 が あ っ た場 合 にお い て

は、 遺 贈 又 は贈 与の 時 にお い て 、 そ の 時 の 価 額 に よ り、 同項 第7号 又 は 第8号

に規 定 す る 資 産 の 譲 渡 が あ っ た も の とみ な して 、 こ の法 律 を適 用 す る。」 旧所

得 税 法9条1項7号

は現 行 法32条 の山 林 所 得 で あ り、8号 は 現 行 法33条 の 譲 渡

所 得 で あ る。

(8)

譲渡所得学説 と租税裁判

これ に対 して 、現 在 の所 得 税 法 第59条 第1項

は 、次 の よ うに規 定 して い る

次 に掲 げ る 事 由 に よ り居 住 者 の 有 す る 山 林(事 業 所 得 の基 因 とな る も の を

除 く。)又 は譲 渡 所 得 の 基 因 とな る資 産 の移 転 が あった 場 合 に は 、 そ の 者 の 山

林所 得 の金 額 、譲 渡 所 得 の金 額 又 は雑 所 得 の金 額 の 計算 に つ い て は 、 そ の 事由

が 生 じた 時 に 、 そ の 時 に お け る価 額 に相 当す る金 額 に よ り、 これ らの 資産 の譲

渡 が あ っ た もの とみ なす 。

贈 与(法 人 に対 す る もの に限 る

。)又は 相続(限定 承 認 に係 る も の に限る 。)

若 し くは遺 贈(法

人 に 対す る も の及 び個 人 に 対す る包 括 遺 贈 の うち 限定

承 認 に係 る 挙)のに 限 る。)

著 し く低 い価 額 の対 価 と して政 令 で 定 め る額 に よ る譲 渡(法

人 に対 す る

も の に 限 る。)」

現 行 法 と旧所 得 税 法 第5条

の2第1項

とを対 比 す れ ば 、括 弧 書 に よ っ て 「

人 か ら法 人 に対 す る贈 与」に限定 され て い るの で 、「

個 人 か ら個 人 に対 す る贈 与」

に は譲 渡 所 得 課 税 が適 用 され な くな っ た の で あ る。

な お 、贈 与を受 け た受 贈 者 が第 三 者 に対 して 売却 す れ ば 、譲 渡 所 得 が発 生す

る こ とに な る。 所 得 税 法 第60条 第1項

は 、次 の よ うに規 定 して い る。

居 住 者 が 次 に 掲 げ る事 由 に よ り取 得 した前 条 第 一 項 に規 定 す る資 産 を譲 渡

した場 合 に お け る 事業所 得 の金 額 、 山 林所 得 の 金額 、譲 渡 所 得 の 金額 又 は雑 所

得 の金 額 の計 算 に つ い て は 、 そ の者 が 引 き続 き これ を所 有 して い た も の とみ な

す 。 一

贈 与 、 相 続(限

定 承 認 に係 る もの を除 く。)又 は遺 贈(包 括 遺 贈 の う

ち 限 定承 認 に係 るも の を 除 く。)」

結 局 、贈 与 の場 合 に は 、贈 与者 の課 税 は繰 延 べ られ 、受 贈 者 は贈 与者 が所 有

者 で あ っ た期 間 の増 加 益 を含 め て清 算(課 税)す

る法 シ ス テ ム に な っ て い る。

IV

譲 渡 所 得 学 説 に お け る"通

説"と"有

力 説"

清算 課 税 説 に対 して は 、 実務 家 か ら批 判 の 声 が上 が っ た。

い わ ゆ る 「

名古 屋 医 師財 産 分 与 事件 」 の訴 訟 代 理 人 で あ っ た竹 下重 人 弁護 士

は 、「

榎 本 家 事 件 」 の第1審

で あ る 浦和 地 裁 昭和39年1月29日

判 決 に対 して 「

民 は 自己 の 有す る資 産 を 有償 で な けれ ば譲 渡 して は な らな い義 務 を負 うの もで

(9)

は な く、 無 償 譲 渡 を した た め に納 税 資 金 の 引 当て とな るべ き対 価 を取 得 しな い

者 に まで 納 税 を強 制 す る こ と と な る上 記 の よ うな 『み な し譲 渡 』 の 規 定 は 、 税

制 の 面か ら私 的 取 引の 自 由 を制 限 す る こ と とな る不 合 理 な もの とい わ な けれ ば

な らな い 」(42)と

し、 「

割 賦 弁 済 土 地 譲 渡 事件 」 の 控 訴 審 で あ る福 岡 高 裁 昭 和41

年7月30日

判 決 に 対 して も 「

わ れ わ れ は 、譲 渡 所 得 の 本 質 を理 解 す るた め に 、

抽 象 的 な キ ャ ピ タル ・ゲ イ ン論 か らで は な く、 実 定 法 の 具 体 的 検 討 か ら始 めな

けれ ば な ら ない と考 え る」(43)と

批 判 す る。

結 論 と して 、 譲 渡 所 得 に 対 す る課 税 を 次 の よ う に解 した 。 「(所得 税 法36

条1項

の)『 収 入 す べ き 』 と は 、経 済 取 引上 は そ れ だ け の 値 打 ち が あ る とい う

意 味 で の 客観 的 価 額 な ど をい うの で は な く、 法 律 上 の 権 利 と して 取 得 す る こ と

の で き る もの 、 譲 渡 所 得 に 関 して い えば 、 契 約 、 行 政 処 分 、 執 行 行 為 、 法 律 の

規 定 等 に よ って 、 譲 渡 資 産 の 対 価 と して 定 め られ た もの をい うこ とは 明 らか で

あ る。 す なわ ち(所 得 税)法33条

にい う資 産 の 譲 渡 は 対 価 を伴 う有 償 譲 渡 を規

定 した もの と解 釈 す べ き もの で あ る。 譲 渡 所 得 は 、 本 質 的 に、 対 価 を伴 うか 否

か を 問 わ な い とす る前 記 裁 判 例 の 考 え 方 は 実 定 法 に 根 拠 を有 しな い 独 断 で あ

る。

」(44)

つ ま り、所 得 税 法33条1項

は 、 他 の 所 得 分 類(利 子 ・配 当 ・不 動 産 ・事 業 ・

給 与 ・退 職 ・山林 ・一 時 ・雑)と

同 じ規 定 と して 収 入 金 額 を定 め る所 得 税 法36

条1項

に絡 めて 有償 に よ る譲 渡 を規 定 した もの で あ る と解 す るの で あ る。 た だ

し、

所 得 税 法36条1項

の 「

別 段 の定 め」 の一 つ と して所 得 税 法59条1項

が あ る。

この 規 定 の 立 法 政 策上 の 適 否 は と もか く、 無 償 譲 渡 の 場 合 で も譲 渡 所 得 と して

課 税 す る規 定 で あ るが 、 資 産 の 時 価 が そ の 資 産 の 取 得 ・維 持 ・譲 渡 の た め に支

出 した 金 額 を超 え る部 分 で あ る こ とは 、 有 償 の 譲 渡 所 得 の 場 合 と異 な らな い と

主 張 され て い るの で あ る。

こ の よ うな 考 え 方 は 、 譲 渡 益 説(45)(譲 渡 益 所 得 説(46))と 呼 ば れ て い る。 譲

渡 益 説 に与 す る論 者 に は、 水 野 武 夫 弁 護 士(47)、田中治 教 授(48)などが い る。

なお 、 「

譲 渡 所 得 課 税 を め ぐ る 問題 に 対 して 、 司法上 ま た は 立 法上 、 具 体 的

な対 応 を と る場 合 に は、 課 税 の しくみ を説 明 す る にす ぎな い 増加 益 清 算 課 税 説

はそ の論 理 的根 拠 に は な りえ な い もの と考 え る」(49)と

して 、清 算 課 税説 の 意 義

及 び 射 程 範 囲 の 再 考 を主 張 す る論 者 もい る。

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譲渡 所得 学説 と租 税裁判 これ に 対 し て 、 清 算 課 税 説 が 学 説 的 に も"通 説"で あ る 原 因 は 、 金 子 宏 教 授 の 影 響 で あ る こ と は 疑 い の 余 地 が な い だ ろ う。 日本 に お け る 税 法 の 代 表 的 な 体 系 書 に お い て 、 金 子 教 授 は 次 の よ う に 記 述 す る 。 「(譲渡 所 得 の)本 質 は 、 キ ャ ピ タ ル ・ゲ イ ン(capital gains)、 す な わ ち 所 有 資 産 の 価 値 の 増 加 益 で あ っ て 、 譲 渡 所 得 に 対 す る 課 税 は 、 資 産 が 譲 渡 に よ っ て 所 有 者 の 手 を 離 れ る の を 機 会 に 、 そ の 所 有 期 間 中 の 増 加 益 を 清 算 し て 課 税 し よ う とす る も の で あ る(最 判 昭 和43年10月31日月 報14巻12号1442頁 、 最 判 昭 和47年12月26日 民 集26巻10号2083 頁)」(50)と。 譲 渡 所 得 を 課 税 対 象 とす る こ とへ の 反 対 論 ① 譲 渡 所 得 は 所 得 で は な い ② 譲 渡 所 得 は 物 価 上 昇 に よ る 資 産 価 値 の 名 目 的 増 加 に す ぎ な い ③ 資 産 を 所 有 者 の 手 に 封 じ 込 め る 効 果(lock-in effect)な い し凍 結 す る 効 果(freezing effect)を も ち 、 国 民 経 済 上 好 ま し く な い な ど の 批 判 を 、 そ れ ぞ れ 斥 け て い る 。 これ は 「所 得 税 と キ ャ ピ タ ル ・ゲ イ ン 」(初 出 ・租 税 法 研 究3号 ・1975年)と い う論 文 で 詳 細 に 論 じ られ て い る(51)。 金 子 説 は 、 租 税 論 に お け る 所 得 概 念 が 所 得 源 泉 説(制 限 的 所 得 概 念)か ら純 資 産 増 加 説(包 括 的 所 得 概 念)へ の 移 行 、 純 資 産 増 加 説 に お け る 所 得 が 納 税 者 の 担 税 力 を 増 加 させ る す べ て の 利 得 で あ る こ と を 丹 念 に 論 じ た 「租 税 法 に お け る 所 得 概 念 の 構 成 」(52)(初 出1966年 ・1968年 ・1975年)を 前 提 に 、 キ ャ ピ タ ル ・ ゲ イ ン へ の 課 税 を 主 張 され て い る 。 無 償 譲 渡 の 課 税 に つ い て は 、 「所 得 税 法 は 、 資 産 の 譲 渡 に よ り収 入 と し て 実 現 し た キ ャ ピ タ ル ・ゲ イ ン に 対 し て の み 課 税 す る こ と を 原 則 と し て い る が 、 例 外 的 に 、 一 定 の 無 償 の 譲 渡(法 人 に 対 す る 贈 与 お よ び 遺 贈 、 限 定 承 認 に か か る 相 続 お よ び 包 括 遺 贈)ま た は 著 し く低 い 対 価 に よ る 法 人 へ の 譲 渡 が あ っ た 場 合 に は 、 時 価 に よ る 譲 渡 が あ っ た も の と み な し て い る(59条)。 こ れ は 『み な し譲 渡 』 と 呼 ば れ る が 、 未 実 現 の キ ャ ピ タ ル ・ゲ イ ン に 対 す る 課 税 の 例 で あ っ て 、 キ ャ ピ タル ・ゲ イ ン に 対 す る 無 限 の 課 税 繰 延 を 防止 す る こ と を 目 的 と し て い る 。 未 実 現 の キ ャ ピ タ ル ・ゲ イ ン も 理 論 上 は 所 得 で あ る か ら 、 そ れ に 対 す る 課 税 は 、 所 得 税 の 性 質 を 失 う も の で は な い 」(53)と 記 述 す る 。 た だ 、 い わ ゆ る 譲 渡 益 説 へ の 批 判 は され て い な い 。 こ れ は 不 思 議 な こ と で あ る 。 見 解 の 相 違 と され て い る だ ろ う か 。 な お 、 清 算 課 税 説 に 与 す る と思 わ れ る 論 者 で も 、 「裁 判 例 は 、 判 示 の 文 言 の

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上 で は 清 算 課 税 説 を 採 用 し続 け て い る が 、 … ゴ ル フ 会 員 権 贈 与事 件 や 土 地 改 良 区 決 済 金 事 件 な ど で 示 され た 判 断 を 、 『譲 渡 に よ っ て 納 税 者 が 得 た(手 も と に 残 っ た)所 得 は い く ら か 』と い う点 を 重 視 し た も の と 理 解 す る な ら ば 、一 定 程 度 、 譲 渡 益 説 へ の 傾 き を 示 し て い る と も 考 え られ る 点 に は 注 意 が 必 要 で あ る 。」(54) と 記 述 して い る 。 在 野 の 実 務 家 が 疑 問 を 投 げ か け た 譲 渡 益 説 が 、 一 定 程 度 立 法 や 裁 判 例 へ 影 響 を 与 え た の で は な い だ ろ うか 。 Vお わ り に こ れ ま で 、 譲 渡 所 得 に 関 す る 裁 判 例 と 主 要 学 説 を 素 材 に し て 、 所 得 税 法 解 釈 の 傾 向 を 見 て き た 。 い わ ゆ る 清 算 課 税 説 に つ い て は 、 裁 判 例 す な わ ち 実 務 が 主 導 して き た 考 え で あ っ た が 、 有 力 学 者 が そ の 考 え 方 に 対 し て 理 論 的 根 拠 を 与 え て し ま っ た 感 が あ る 。 そ れ に よ っ て 清 算 課 税 説 が 通 説 に な っ て しま っ た こ と は 否 め な い 。 す な わ ち 、 譲 渡 所 得 学 説 に お け る 通 説 は 、 他 説 と の 論 争 に 打 ち 勝 っ て 通 説 の 地 位 を 得 た 訳 で は 決 して な く 、 実 務 の 理 論 的 支 柱 に 納 ま る こ と に よ っ て 通 説 の 地 位 を 得 た と 解 して も言 い 過 ぎ で は な い と 思 わ れ る 。 そ の 一 方 で 、 清 算 課 税 説 へ の 批 判 ・再 考 を 促 す 有 力 説 に も 、 現 行 の 所 得 税 法 解 釈 の 体 系 的 説 明 が 完 全 に 出 来 て い る の か と い う疑 問 も 生 じ る 。 包 括 的 所 得 概 念 か ら 清 算 課 税 説 へ と 繋 が っ て い る 通 説 に 代 わ る 考 え 方 を 打 ち 出 せ る の か が 、 今 後 の 学 問 的 課 題 に な る の で あ ろ う。 そ の 意 味 で 通 説 を 簡 単 に 賛 美 す る こ と な く 、 理 論 的 に"対 話"す る こ と が 税 法 学 者 と して の 役 目で は な い か と 考 え る 。 〈注 〉 (1)黒 川 功 「譲 渡 所 得 学 説 と税 法 解 釈 学 の 方 法 論(1)」 税 理28巻9号(1985年)115頁 。 (2)近 年 で は 出 題 が な され て い な い が 、 平 成18年 度 第1問 、 平成19年 度 第1問 、 平成 20年 度 第1問 と出 題 が な され た 。 (3)佐 藤 英 明 『ス タ ンダ ー ド所 得 税 法 〔補正2版 〕』(弘 文 堂 ・2011年)83頁 。 (4)大 塚 正 民 「み な し譲 渡 制 度 に関 す る シ ャ ウプ勧 告 とア メ リカ税 制 との 関 連(1)」 税 法 学306号(1976年)21頁 。 な お 、 同 「み な し譲 渡 制 度 に 関 す る シ ャ ウ プ勧 告 とア メ リカ 税 制 との 関 連(2・ 完)」 税 法 学307号(1976年)1頁 参 照 。

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譲渡 所得 学説 と租 税裁判 (5)黒 川 ・前 掲 注(1)115頁 。 (6)佐 藤 英 明 『プ レ ップ租 税 法[第2版]』(弘 文 堂 、2010年)10頁 。 (7)佐 藤 ・前 掲 注(6)11頁 。 (8)金 子 宏 「租 税 法 と私 法− 借 用 概 念 及 び租 税 回 避 につ い て− 」『租 税 法 理 論 の 形 成 と 解 明 上 巻 』(有 斐 閣 、2010年)385頁 。 (9)関 哲 夫 『要 説 行 政 法 〔新 訂 版 〕』(酒 井 書 店 ・2005年)9頁 以 下参 照 。 (10)北 野 弘 久 『現 代 企 業 税 法 論 』(岩 波 書店 、1994年)34頁 。 (11)円 中 二 郎 『行 政 法 総 論 』(有 斐 閣 ・1957年)110頁 は、 「私 法 上 の 関 係 が 、 行 政 法 上 の制 限 に服 す る とか 、 行 政 作 用 の 結 果 と して 種 々 の 私 法 的効 果 が 発 生す る とか の 例 は 極 め て 多 い。 殊 に、 従 来 、 完 全 に私 法 が 支 配 して い た私 経 済 生 活 の 分 野 に対 す る 国 家 の権 力 的 統 制 そ の 他 の 権 力 的 介 入 が近 時 とみ に拡 大 す る傾 向 に あ り、 そ れ だ け 、 私 法 と行 政 法 との 交渉 し合 い 関 連 し合 う場 が広 汎 に わ た る よ うに な っ た。 そ して 、 今 日で は 、 私 法 と行 政 法 とが 一 つ の 法 律 関 係 の 中 に 融 合 して 現 れ 、 そ こ に新 ら しい法 の 部 門 が 形 成 され る傾 向 が あ る」 と指 摘 して い た。 経 済 法 ・労 働 法 ・ 社 会 法 ・企 業 法 を そ の 具 体 例 とす る。田 中博士 が 、 こ こ に(租)税 法 を加 えて お られ な い の は 、 意 図 的 な の か否 か は 判 然 と しな い 。 しか し、金 子教 授 の 見 解 な ど、 い わ ゆ る東 大 学 派 の 諸 先 生 方の 見解 を 参 照 して も、 私 法 と行 政 法 が 融 合 す る分 野 に税 法 を加 え て も問題 な い と思 われ る。 (12)我 妻 榮 『債 権 各論 中 巻一(民 法 講 義V2)』(岩 波 書店 ・1957年)239頁 参 照 。 (13)所 得 税 基 本 通 達33-1は 、 「譲 渡 所 得 の 基 因 と な る 資 産 とは 、 法 第33条 第2項 各 号 に 規 定 す る 資 産 及 び 金 銭債 権 以 外 の 一 切 の資 産 を い い 、 当該 資 産 に は 、 借 家 権 又 は行 政 官 庁 の 許 可 、 認 可 、割 当 て等 に よ り発 生 し た事 実 上 の権 利 も含 まれ る。」 と す る。 な お 、伊 川 正 樹 「譲 渡 所 得 の 基 因 とな る 『資 産 』 概 念− 増 加 益清 算 課 税 説 の 門考− 」名 城 法 学57巻1・2号(2007年)141頁 参 照 。 (14)た だ し、 「短 期 譲 渡 所 得 の 課 税 の 特 例 」 が 、租 税 特 別 措 置 法32条 に規 定 され て い る。 (15)た だ し、 「長 期 譲 渡 所 得 の課 税 の特 例 」 が 、 租 税 特 別 措 置法31条 以 下 に 規 定 され て い る。 (16)池 本 征 男 『所 得 税 法 理 論 と計 算 〔6訂 版 〕』(税 務 経 理 協 会 ・2010年)92頁 ∼93頁 は 、「譲 渡 所 得 に対 す る課 税 は 、保 有 期 間 中 にお け る資 産 の値上 が り益(キ ャ ピタル ・ ゲ イ ン)に つ い て 、 そ の 資 産 が 売 買等 に よ り所 有 者 の 支 配 を 離 れ て 他 に移 転 す る

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機 会 に 、 そ の 保 有 期 間 中 の 値上 が り益 に 相 当 す る所 得 の 実 現 が あ っ た も の と して 一時 に課 税 す る もの で あ り、 そ の 発 生 形 態 が非 同 帰 的 、 不 規 則 的 で あ る こ とか ら、 継 続 的 に 発 生 す る所 得 と の担 税 力 の 差 を 考 慮 して 、 長 期保 有 の資 産 に 係 る譲 渡 所 得 に対 して は 、 超 過 累 進 税 率 を緩 和 す る た め に2分 の1課 税 と され るな ど の措 置 が と られ て い る」 と説 明 す る。 (17)名 古 屋 高 判 昭 和48年11月30日 税 務 訴 訟 資 料71号1057頁 は 、 所 得 税 法33条2項1号 にい う 「営利 を 目的 と して 継 続 的 に 行 わ れ る 資 産 の譲 渡 に よ る所 得 」 に 当 る か ど うか は、(1)譲 渡人 の既 往 に お け る資 産 の 売 買 同数 、 数 量 ま た は金 額 お よ び 売 買 の 相 手 力 、(2)売 買 の た め の 資 金 繰 り、(3)売 買 を 行 うた め の 施 設 、 売 買 に 当 っ て の 広 告 、宣伝 等 の 方 法 、(4)そ の 譲 渡 に 係 る資 産 の取 得 お よび 保 有 の状 況等 を 総 合 し て 判 断 す るの が 妥 当で あ る と判 示 して い る。 な お 、本 件 の評 釈 と して は 、中川 一 郎 ・ シ ュ トイ エ ル141号(1973年)1頁 が あ る。 (18)不 動 産 業 者 が 販 売 用 に所 有 す る土 地 ・建 物 な ど不 動 産 は 、そ の 業 者 に とっ て"商 品" とな るの で 、 そ の 不 動 産 を 売 買 した こ とに よ っ て 得 た 対 価 は事 業 所 得 に該 当 す る。 た だ し、 所 得 税 基 本 通 達33-3は 、 所 得 税 法33条2項1号 の 事 業 所 得 に 該 当す る よ うな 譲 渡 で あっ て も、 そ もそ も販 売 の 目的 で取 得 した も の で 、極 め て 長 期 間(お お む ね10年 以上)引 き 続 き所 有 して い た 不動 産 の 譲 渡 に よ る所 得 は 、 譲 渡 所 得 に 該 当す る もの とす る、 ま た 、 所 得 税基 本 通 達33-5は 、事 業 所 得 に該 当す る場 合 で あ っ て も、 そ の 区 画 形 質 の変 更 等 に係 る土 地 が 極 め て 長 期 間 引 き続 き所 有 され て い た もの で あ る とき は 、そ の 七地 の 譲 渡 に よ る所 得 の うち 、 区 画 形 質 の変 更 等 に よ る利 益 に対 応 す る 部 分 は 事 業 所 得 と し、 そ の 他 の 部 分 は 譲 渡 所 得 と して 差 し 支 え な い とす る。 この 点 に 関 して 、 東 京 高 判 昭 和48年5月31目 行 政 事 件 裁 判 例 集 24巻4・5号465頁 は 、「所 得 税 法 は 、ひ と し く資 産 の 譲 渡 に よっ て 生 じた 所 得 で あっ て も、 これ を 課 税 の 対 象 とす る場 合 、 税 負 担 の 衡 平 を 図 る見 地 か ら 一律 の 取扱 を す る こ とな く、 概 して 臨 時 的 、偶 発 的 に発 生 す る所 得 に つ い て は 、 経 常 的 、 計 画 的 に発 生 す る所 得 に 比 較 して 担税 力 にお い て 劣 る と ころ か ら、 これ を 譲 渡 所 得 と して 、 経 常 的 、計 画 的 に 発 生 す る所 得 と 区別 して課 税 の 対 象 と して い る の で あ る。 これ に反 し、 同 じ く資 産 の譲 渡 に よ る所 得 で あ っ て も、 経 常 的 、計 画 的 に発 生 す る もの は 、 所 得 税 法上 譲 渡 所 得 に は 該 当 しな い も の と され て い る の で あって 、 同 法 第33条 第2項 第1号 が 、 … い わ ゆ る た な 卸 資 産 の 譲 渡 そ の 他 営 利 を 目的 と して

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譲渡 所得 学説 と租 税裁判 継 続 的 に行 われ る資 産 の譲 渡 に よ る所 得 を譲 渡 所 得 か ら除 外 して い る の は 、 右 の 趣 旨 を 示 す も の で あ る。 例 え ば 、 不 動 産 業 者 が 転 売 の 口 的 で 他 か ら取 得 した 七地 は ま さ し く右 に い わ ゆ る た な 卸 資 産 で あ っ て 、 こ れ が 分 譲 に よつ て 得 られ る所 得 は 、譲 渡 所 得 に は 該 当せ ず 、 同 法 第27条 に 定 め る事 業 所 得 と して 課 税 上 譲 渡 所 得 とは別 箇 の 取 扱 が され る の で あ る。」 と判 示 す る。 なお 、社 会通 念 に 照 ら し事 業 と み られ ない 場 合 に は、 事 業 所 得 で は な く雑 所 得 に 該 当す る こ と に な る。 名 古 屋 高 裁 金 沢 支 部 判 決 昭 和43年2月28日 行 政 事 件 裁 判 例 集19巻1・2号297頁 、 東 京 地 判 昭和48年7月18日 税 務 訴 訟 資料70号637頁 、 最 判 昭 和56年4月24日 最 高 裁 判 所 民 事 判 例 集35巻3号672頁 な ど参 照。 (19)東 京 地 判 昭 和31年6月23日 行 政 事 件 裁 判例 集7巻6号1528頁 は 、 譲 渡 所 得 と は 、 山林 所 得 な らび に営 利 を 目的 とす る継 続 的 行 為 に よ り生 じた所 得 を 除 い た 不 動 産 、 動 産 そ の 他 の 資 産 の 譲 渡 に よ る所 得 を い うも の で あ る か ら、 佃 人 経 営 の 印 刷 業 を 自己 の 主 宰 す る会 社 組 織 に 移 行 させ る 目的 で 同族 会 社 を設 立 し、 営 業 用 動 産 を右 会 社 に 売 却 した 行 為 は 、営 利 の 口的 も な く、 か つ そ の 性 質 上 継 続 的 行 為 で も な い か ら、 右 売 却 に よ る譲 渡 の 対 価 は 、譲 渡 所 得 で あ る と判 示 す る。 高 松 高 判 昭 和31 年10月20目 最 高 裁 判 所 民 事 判 例 集14巻11号2370頁 は 、山 林 所 得 とは 、山 林 経 営 に よ る 所 得 を指 す もの と解 され て い る の で 、 山林 経 営 の 実 を 伴 わ な い 場 合 の 山林 立 木 の 譲 渡 に よ る所 得 は 、特 段 の 事 情 の な い 限 り、 い わ ゆ る譲 渡 所 得 に該 当 す る も の と解 す る を相 当 とす る と判 示 した。 高 松 高 判 の上 告 審 で あ る最 判 昭 和35年9月 30日 最 高裁 判 所 民 事 判 例 集14巻11号2330頁 も、山 林 を 買受 け2年11月 後 に 譲 渡 し た場 合 で も 、 そ の間 山林 経 営 の 実 体 が な い 場 合 は 、 右 譲 渡 に よ る所 得 は 山 林 所 得 で は な く譲 渡 所 得 と解 す べ き で あ る と控 訴 審 判 決 を維 持 した。 (20)我 妻 ・前 掲 注(12)340頁 は 、 「交 換 は 、 歴 史 的 に は 、 お そ ら く売 買 よ り先 に 発 達 し た もの で あ ろ う。 然 し、 貨 幣 経 済 の 発 達 した 今日 で は 、 需 要 供 給 の 調 和 を は か る 制 度 と し て の社 会 的 採 用 は 少 い 。 た だ 、 特 殊 の場 合 に 、 物 資 の利 用 者 相 互 の 間 の 配 分 を 合 理 的 に す る た め に特 別 の 意 義 を有 す る こ とが あ る に過 ぎな い 。」 と 半 世紀 前 に記 述 して い る。 池 田真 朗 『新 標 準 講 義  民 法 債 権 各 論 』(慶 応 義 塾 大 学 出版 会 ・ 2010年)90頁 も 「交 換 は 、 物 と物 と を交 換 す る契 約 で 、 お そ ら く歴 史 的 に は 最 も 早 く成 立 した契 約 形 態 だ と思 わ れ る(こ れ が 貨 幣 経 済 の 発 達 に 伴 っ て物 と金 銭 と で 交換 を す る よ うに な る の が 売 買 で あ る)。 今 で は こ の契 約 が行 わ れ る こ と は少 な

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くな った が 、 そ れ で も 当然 存 在 す る。」 と記 述 して い る。 (21)所 得 税 法58条 は 、 「居 住 者 が 、各 年 にお い て 、1年 以 上 有 して い た 固 定 資 産 で 次 の 各 号 に掲 げ る もの を そ れ ぞ れ 他 の 者 が1年 以上 有 して い た 固 定 資 産 で 当該 各 号に 掲 げ る もの と交 換 し、 そ の 交 換 に よ り取 得 した 当該 各 号 に 掲 げ る 資 産 をそ の 交 換 に よ り譲 渡 した 当該 各 号 に掲 げ る 資 産 の譲 渡 の 直 前 の 用 途 と 同一 の 用 途 に供 した 場 合 に は 、 第33条 の 規 定 の 適 用 に つ い て は 、 当 該 譲 渡 資 産 の 譲 渡 が な かっ た もの とみ な す 。 一 土 地  二 建 物  三 機 械 及 び 装 置  四 船 舶  五 鉱 業 権 」 と 規 定 す る。 (22)竹下 重 人 「譲 渡 所得 課 税 の 二 、三 の 問題 点 」シ ュ トイエ ル100号(1970年)107頁 が 、「わ が 国 の所 得 税 法 上 の譲 渡 所 得 の本 質 に 言及 した 裁 判例 と して つ ぎ の よ うな も の が み られ る」 と して採 り上 げ た 浦 和 地 判 昭 和39年1月29日 と福 岡 高 判 昭 和41年7月 30日 は 、 い ず れ も譲 渡 所 得 課 税 に お け る重 要 裁 判 例 の 下 級 審 で あ る。 (23)い わ ゆ る 「榎 本 家 事 件 」 以 前 の譲 渡 所 得 に 関 す る税 務 訴 訟 の 代 表 的 な も の を 掲 げ て お く。 これ ら の特 色 は 、 学 説 の 引用 も あ ま りな く、 単 に 現 行 の 所 得 税 法33条 と 36条 の 要 件 に 該 当す るか 、 が 争 点 とな っ て い た よ うで あ る. (1)名 古 屋 地 判 昭 和35年9月30円(訟 務 月 報6巻11号2196頁)は 、 自 己 の有 す る不 動 産 を もっ て 他 人 の 債 務 の代 物 弁 済 と して 譲 渡 した場 合 の 譲 渡 価 額 は 、 他 人 が 受 けた 利 益 で は な く、 右 不 動 産 の価 額 で あ る と判 示 す る。 この 事 実 の 概 要 は 以 下 の 通 りで あ る。 原 告2名 は 、 あ るA会 社 の 重 役 で あ っ た が 、A会 社 がB会 社 に 対 し 当 時1101万40円 の 債 務 を負 担 して い た。 原 告 等 は この 債 務 を整 理 す る た め に、 原 告a は 自分 が所 有 す る不 動 産 を 、 原 告bは 自分 が 所 有 す る 不 動 産 を、 そ れ ぞれA会 社 に 売 渡 し、A会 社 は これ をB会 社 に対 す る債 務 の代 物 弁 済(民 法482条)と してB会 社 に譲 渡 した 。 原 告aは 自分 の 不 動 産 を480万 円 でA会 社 に 売 渡 し、 そ の 売 買 代 金 中 355万7373円 に つ い て は 、 原 告aがA会 社 に 対 し 同額 の 債 務 を負 担 し て い た の で こ れ と対 等 額 に お い て 相 殺(民 法505条)し 、 そ の 残 額 約124万 円 を受 領 した。 原 告b は 自分 の 不 動 産 をA会 社 に 対 し176万 円 で 売 渡 し、 そ の売 買 代 金 中68万4045円 に つ い て は原 告bがA会 社 に対 し同額 の 債 務 を負 担 して い た の で これ と対 等 額 に お い て 相 殺 し、 そ の残 額 約107万 円を 受 領 した。 これ に 対 して 、 所 轄 税 務 署 長 は 、 原 告 等 が 不 動 産 をB会 社 に 対 し1101万40円 で 売 渡 した もの と認 定 して 、 原 告aに 対 し123万 4490円 、 原 告bに 対 し7万3050円 の 納 税 義 務 あ る 旨の 更正 決 定 を した 。 原 告 等 は 、

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譲渡 所得 学説 と租 税裁判 所 轄 税 務 署 長 に 対 し 当 時 の 再 調 査 請 求 した と ころ 棄 却 な どを され た の で 、 更 正 決 定 は 違 法 で あ り、 これ を維 持 し た審 査 決 定 も違 法 で あ る と して 、 取 消 訴 訟 を提 起 した。 裁 判 結 果 は 、原 告 の請 求 認 容 で確 定 した。 (2)最 高 裁 昭 和36年10月13日 判 決(最 高 裁 判 所 民 事 判例 集15巻9号2332頁)は 、 当 時 の 所 得 税 法9条1項8号(現 行 の 所 得 税 法33条 に 相 当)の 「資 産 の譲 渡 に 因 る 所 得 」 の 「総 収 入 金 額 」 と は 、 「譲 渡 資 産 の 客 観 的 な価 額 を 指 す もの で はな く、 具 体 的 場 合 に お け る現 実 の 収 入 金 額 を 指 す も の と解 す る の が 相 当 で あ る。」 と判 示 した 。 控 訴 審 で あ る 東 京 高 裁 昭 和34年12月26日 判 決(最 高 裁 判 所 民 事 判 例 集15 巻9号2353頁)は 、「お よ そ抵 当権 に よ っ て担 保 され土 地 を 売 買す る に 当つ て は 、 そ の 売 買価 格 は 諸 種 の要 素 に よ っ て決 せ られ る に せ よ、 一般 的 に は そ の抵 当債 務 の額 、 買 主 が抵 当 権 実 行 に よ っ て 当該 不 動 産 の所 有 権 を失 うべ き危 険性 等 を考 慮 に入 れ た 上 、 何 等 の 負 担 な か りせ ば そ の土 地 の 有す べ き 客観 的 価 格 よ り減 額 され て決 せ られ る の で あ る が 、 か く して決 定 せ られ た 売 却 価 格 そ の も の を 以 て 、 譲 渡 所 得 に 関す る 所 得 税 法 第9条 第1項 第8号 にい う 『総 収 入 金 額 』 に該 当 す る も の と解 す べ き で あ る。 従 っ て そ の 売 買代 金 よ り更 に被 担 保 債 権 額 を控 除 した もの を 以 て 、 『総 収 入 金 額 』 と認 め るべ き で は な い 。」 と判 示 し た。 こ の 事 実 の概 要 は以 下の通 りで あ る.原 告 は 、A会 社 に 対 し、 自分 の 所 有 す る土 地 を、 抵 当権 を抹 消 し て所 有権 移 転 登 記 と 引渡 をす る約 定 で 代 金560万 円 を も っ て 売 渡 した 。 しか し原 告 は 、被 告で あ る所 轄 税 務 署 長 か ら不 動 産 譲 渡 に よ る所 得 申 告 を す る よ うに 懲慂 ・ 指 示 を 受 け た 。 そ の 指 示 に よ れ ば 、 売 買 代 金 中土地 の 再 評 価 価 額154万2200円 、及 び 当 時 の 租 税 特 別 措 置 法18条(現 行 の35条)に よ る 買換 資 産 買 人 価 格 等153万6326 円(原 告 が 七地 の 買換 と して取 得 した の 建 物 代 金150刀 円及 び これ に 付 随 す る諸 費 用3万6326円 の 合 計)を 控 除 した上 、譲 渡 所 得 金 額252万1474円 で あ る と した 。 さ らに 当 時 の 特 別 控 除15万 円 を 控 除 し、 そ の10分 の5に 相 当 す るll8万5737円 を所 得 金 額 と して 、 これ か ら当 時 の 概 算 所 得 控 除 そ の 他 各 控 除 合 計13万6000円 を 差 引 い た残 額104万9700円 を課 税 され る所 得 金 額 、 そ の 税 額47万2365円 との こ と。 原 告 は こ の 指 示 通 りに確 定 申 告 を した。 しか し、本 件 売 却 不 動 産 に つ い て は 、B会 社 が 、 C相 互 銀 行 に 対 して 負 担 す る極 度 額300万 円 の債 務 の た め 根 抵 当権 を設 定 して い た。 原 告 は 、 買 主 のA会 社 か ら、 売 買代 金 の 内300万 円 の 前 払 を うけ 、 これ をC相 互 銀 行 に 支 払 い 、抵 当 権 設 定 登 記 を抹 消 した 上 、 所 有権 移 転 登 記 手 続 を した。 これ に

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よ って 原 告 の譲 渡 所 得 額 は 、 被 告 の指 示 した252万1474円 か ら、 さ らに根 抵 当 権 設 定 登 記 抹 消 の た め に 支 払 った300万 円 を控 除 した残 額 とな ら な けれ ば な らな い もの で 、 結 局 譲 渡 所 得 額 は な か っ た こ と に な る。 原 告 は 、確 定 申 告後 、 申告 額 が誤 っ て い た こ とに 気 付 い た 。被 告 に 対 し、譲 渡 所 得 税 額 につ き 更正 請 求 の 申立 を した が 、 更 正 請 求 棄 却 の決 定 を うけた 。 さ らに東 京 国 税 局 長 に 対 し、 審 査 の請 求 を した が 、 請 求 を棄 却 され た。 原 告 は、 所 得 税 の 確 定 申 告 に よ る譲 渡 所 得 は 存 在 し な い もの で あ る か ら、 申 告 は 当 然 無 効 で あ り、 原 告 に は 所 得 税 法 に 定 め る納 税 義 務 が な い と して 、 取 消 判 決 を 求 め る た め 出 訴 に及 ん だ 。 裁 判結 果 は、 第 一審(横 浜 地 判 昭 和33年11月28日 最 高 裁 判 所 民 事 判 例 集15巻9号2346頁)一 部 却下 ・一 部 棄 却 で 原 告 控 訴 、控 訴 審 棄 却 で控 訴 人上 告 、上 告 審 棄 却 で 確 定 した 。 本 件 の主 な 評 釈 と して 、 田 中真 次 ・法 曹 時 報13巻12号(1961年)116頁 、 浦 谷 清 ・民 商 法 雑 誌46巻4号(1962 年)156頁 、 須 貝脩 一・シ ュ トイ エ ル5号(1962年)22頁 、 北 野 弘 久 『租 税 判 例 百 選 』(有 斐 閣 ・1968年)76頁 、 泉 水 一 ・税 経 通 信33巻14号(1978年)164頁 、一 杉 直 ・ 税 経 通 信39巻15号(1984年)114頁 な どが あ る。 (3)大 阪 高 裁 昭 和38年9月23日 判 決(税 務 訴 訟 資 料37号840頁)は 、 譲 渡 所 得 は 、 資 産 の譲 渡 に よ り利 得 が 何 らか の 形 で 実 現 し、 も し くは 実 現 され た とみ な され る 場 合 にの み 発 生 し、 等 価 物 の 交 換 か ら は譲 渡 に よ る所 得 は 発 生 しな い との 主 張 は 、 所 得 税 法 の 規 定 に反 す る独 自の 見 解 で あ っ て 採 用 で き な い と判 示 した 。 こ の 事 実 の 概 要 は 以 下の 通 りで あ る。Y税 務 署 長 は 、XがK不 動 産 と の 間 で 、X所 有 の 土 地 とK不 動 産 所 有 のt地 との 交 換 契 約 を締 結 した こ とに よ り、Xに 譲 渡 所 得 が あ る と して 課 税 処 分 を した。 しか し、Xの 交 換 契 約 の 相 手力 はK不 動 産 で は な く、K鉄 道 会 社 で あ っ て 、 当 時 の 租 税 特 別 措 置 法16条 の 規 定 が適 用 され るべ き で あ り、 本 件 交 換 契 約 にか か わ らず 、 土地 の譲 渡 は な かっ た もの とみ な され るか ら、Xに は 譲 渡 所 得 は発 生 しない と して 、 当 時 の審 査 請 求 を経 て 出訴 した 。 本 件 控 訴 審 にお い てX 側 は 、 「本 件 土 地 交換 契 約 に よ っ て、 控 訴 人 に は譲 渡 に よ る所 得 は な い。 所 得税 に お け る所 得 の 意 義 如 何 につ い て は、 い わ ゆ る(1)所 得 源 泉 説 と(2)純 資 産 増 加 説 と が 主 た る もの で 、前 者 は 、 一 定期 間 にお け る 各 種 の 勤 労 、 事 業 、 資 産 よ り生 ず る 継 続 的 な 収 入 か ら、 そ れ を得 る た め の 必 要 経 費 を控 除 した 残 額 を 所 得 とす る 考 え 方 で あ り、 後 者 は、 一 定 期 間 内 に お け る財 産 増 加 の総 額 か らそ の期 間 の 財 産減 少 額 を控 除 した 残 額 を 所 得 とす る 考 え方 で 、 資 産 の 売 却 ま た は 交 換 に よ る利 得 も課

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譲渡 所得 学説 と租 税裁判 税 の 対 象 とな るの で あ り、 わ が 国 の 所 得 税 法 は 大 体 に お い て(2)の 純 資 産 増 加 説 を 採 っ て い る。 そ して 、 これ に よれ ば 、譲 渡 所 得 の 課税 対 象 は 資 産 の 移 転 に よ っ て 利 得 が な ん らか の 形 で 実現 され 、 も し くは 実 現 され た とみ な され る場 合 で な けれ ば な らず 、 控 訴 人 は 本 件土 地 の 譲 渡 に よ りな ん らの 利 得 を え て い な い か ら、 譲 渡 所 得 を 課 せ られ る理 由 は な い 。」 と主 張 した 。 この 主 張 に対 して 大 阪 高 裁 は、 「現 行 所 得 税 法 上 『所 得 』 の 意 義 は 明確 に され て お らず 、 そ の 意 義 に つ い て は 控 訴 人 主 張 の よ うな諸 学 説 が そ の 代 表 的 な もの で あって 、 所 得 税 法 が 原 則 的 に は 所 得 源 泉 説 に 拠 りな が ら、 純 資 産 増 加 説 に接 近 しつ つ あ る点 は 、 一般 に 承 認 され て い る とこ ろ で あ る。 しか しな が ら、 右 学 説 は 、 い うま で もな く 実 定 法上 の も の で は な い か ら、 これ ら学 説 を もっ て 直 ち に税 法 上 の 所 得 の 概 念 を決 定 す る こ とは で き な い.要 は、 所 得 税 法 自体 の 諸 規 定 よ り これ を 明 ら か に す る ほ か な い 。 と こ ろ で 、 所 得 税 法(昭 和30年 当 時施 行 の も の)第9条 第8号 に よれ ば 、 資 産 の譲 渡 に よ る 所 得 と は、 そ の 年 中 の総 収 入 金 額 か ら 当該 資 産 の 取 得 価 格 、 設 備 費 、 改 良 費 、 及 び 譲 渡 に 関 す る経 費 を控 除 した 金 額 と明 定 され て お り、右 譲 渡 所 得 の計 算 規 定 自 体 が 同 所 得 の意 義 を定 め て い る の で あって 、譲 渡 所 得 は 、資 産 の 譲 渡 に よ り利 得 が な ん ら か の形 で 実 現 し、 も し く は 実 現 され た とみ な され る 場 合 で な け れ ば 発 生 しな い と の控 訴 人 の 主 張 は 、 前 記 所 得 税 法 の 規 定 に 反 す る独 自の 見 解 で あ っ て 採 る を え な い 。」 と してX側 の 主張 を斥 け た 。 裁 判 結 果 は 、 第 一審(大 阪 地 判 昭 和35 年12月23日 行 政 事 件 裁 判 例 集11巻12号3330頁)棄 却 で 原 告控 訴 、 控 訴 審 棄 却 で 控 訴 人 上 告 、 上 告 審 不 受 理(大 阪 高決 昭 和38年12月18日 税 務 訴 訟 資 料37号1200頁) で確 定 し た。 今 回 筆 者 が調 べ た と ころ に よれ ば 、 この 大 阪高 裁 の 裁 判 に お い て 初 め て 譲 渡 所 得 関 連 の 税 務 訴 訟 にお い て 、 所 得 の 意義 に お け る 所 得 源 泉 説 と純 資 産 増 加 説 で は あ る けれ ども 、学 説 の 引 用 が な され て い る。 (4)最 高裁 昭 和40年9月24目 判 決(最 高裁 判所 民 事 判例 集19巻6号1688頁)は 、「代 位 弁 済 に よ る求 償 権 は、 代 金 納 付後 、 担保 権 者 に代 金 交付 が な され る こ と に よ り、 そ の 代 位 弁 済 的 効 果 と して 発 生 す る 権 利 で あ っ て 、 所 論 の ご と く、 競 売 の 対 価 た る性 質 を有 す る もの で は な い 。 そ れ 故 、 譲 渡 所 得 の 対 象 は競 落 代 金 そ の もの で あって 、 求 償 権 の 取 立 が 事 実 上 不 能 で あ る と して も、 か か る事 情 は、 譲 渡 所 得 の 成 否 に 何 等 の 消 長 を も き たす もの で は な い と い わ な けれ ば な らな い,」 と判 示 した。 こ の事 実 の概 要 は 以 下 の 通 りで あ る。 原 告 は 、A会 社 等 に 対 し店 舗 及 び 住 宅 を賃 貸

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して い た。 原 告 は、 昭 和32年 ∼ 昭 和34年 各 年 分 の 店 舗 及 び 住 宅 賃 貸 借 の 収 人 金 及 び 経 費 に 関す る記 帳 を せ ず 、 か つ これ に 関す る原 始 記 録 を も保 存 して い な か っ た。 原 告所 有 の 資 産 が代 価1070万100円 で競 落 譲 渡 され た。 資 産 の競 落 代 金 は 、B会 社 の 債 務 に充 当 され 原 告 は現 実 の収 益 を 得 て い な い 。 またB会 社 に対 す る 求償 権 の 行 使 も事 実上 不 能 で あ る か ら譲 渡 所 得 と は な らな い と主 張 した 。 これ に 対 して最 高 裁 は、 判 決 理 由 で 「抵 当 権 実 行 の た めの い わ ゆ る任 意 競 売 は、 担 保 権 の 内容 を 実 現 す る換 価 行 為 で あ っ て 、 競 落 人 は 目的 不動 産 の 所 有 権 を 承 継 取 得 す る も の で あ るか ら、所 得 税 法9条1項8号 にい う資 産 の 『譲 渡』 に 該 当す る とい うべ きで あ る。 しか して 、 資 産 の譲 渡 に よ っ て発 生 す る譲 渡 所 得 につ い て の 収 人 金 額 の 権 利 確 定 の 時 期 は 、 当 該 資 産 の 所 有 権 そ の 他 の 権 利 が 相 手 方 に 移 転 す る 時 で あ る が 、任 意 競 売 に お る 所 有 権 移 転 の 時 期 は 競 落 代 金 納 付 の 時 と解 す る の が相 当 で あ る(大 審 院 昭 和7年2月290判 決 民 事 判 例 集11巻397頁)か ら、競 売 に よ る譲 渡 所 得 に つ い て は 、代 金 納 付 の 時 に権 利 が確 定す る 、 とい うべ き で あ る。」 と した 。 裁 判 結 果 は 、 第 一審(長 崎 地 判 昭 和39年2月21日 最 高裁 判 所 民 事 判 例 集19巻6号1691頁)棄 却 で 原 告控 訴 、 控 訴 審(福 岡 高 判 昭 和39年9刀29日 最 高 裁 判 所 民事 判 例 集19巻6号 1702頁)棄 却 で 控 訴 人 上 告 、 上 告 審 棄 却 で 確 定 し た。 本 件 の主 な 評 釈 と して 、 渡 部 吉 隆 ・法 曹時 報17巻11号(1965年)161頁 、山 田二 郎 ・法 律 のひ ろ ば19巻1号(1966 年)46頁 、 藤 田宙 靖 ・法 学 協 会 雑 誌84巻4号(1966年)162頁 、 須 貝 脩 一・シ ュ ト イ エ ル53号(1966年)1頁 、 清 永 敬 次 ・民 商法 雑 誌54巻5号(1966年)89頁 、 吉 田 富 士 雄 ・『租 税 判 例 百選 』(有 斐 閣 ・1968年)78頁 、町谷 勇 次 ・税 経 通 信33巻14号(1978 年)124頁 な どが あ る. (24)訟 務 月 報14巻12号1442頁 。主 な 評 釈 と して 、大 塚 ・前 掲 注(4)、 竹 下 ・前 掲(22)の 他 、 吉 良 実 ・シ ュ トイ エ ル86号(1969年)8頁 、佐 藤 孝 行 ・判 例 評 論202号(1975年)28頁 、 山 田康 王 ・税 務 事 例9巻4号(1977年)13頁 、浅 沼潤 三郎 ・民 商 法雑 誌77巻2号(1977 年)274頁 、 石 井健 吾 ・法 曹時 報30巻11号(1978年)1835頁 、 藤 田良 一 ・税 経 通 信 33巻14号(1978年)98頁 、清 永敬 次 『和 税 判 例 百選 〔第2版 〕』(有 斐 閣 ・1983年) 70∼71頁 、 大 島 隆 夫 ・税 経 通 信39巻15号(1984年)8頁 、 岡 村 忠 生 『租 税 判 例 百 選 〔第3版 〕』(有 斐 閣 ・1992年)60頁 が あ る。 (25)金 子 宏 ・佐藤 英 明 ・増 井 良啓 ・渋 谷 雅 弘 編 著 『ケ ー ス ブ ッ ク租 税 法 〔第3版 〕』(弘 文 堂 ・2011年)257頁 。

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譲渡 所得 学説 と租 税裁判 (26)行 政 事 件 裁 判 例 集15巻1号105頁 。 な お 、 評 釈 と して 、 波 多 野 弘 ・シ ュ トイ エ ル36 号(1965年)15頁 、吉 良 実 『租 税 判例百選 』(有 斐 閣 ・1968年)82頁 が あ る。 当 時 、 税 法 研 究 所 所 員 で あ っ た 吉 良 教授 は 、 「本 件 で 重 要 な こ とは 、 ま ず 第1に 、 事 実 認 定 の段 階 で 実 質 課 税 の原 則 を納 税 者 の た め に適 用 しな か っ た 点 で あ り、 第2に は 、 資 産 の 無 償 譲 渡 の 場 合 に所 得 あ りや 否 や とい う問題 に 対 して積 極 に判 断 して い る 点 で あ る 」と し、吉 良教 授 独 自の” 実 質 所 得 課 税 論” を 展 開 され て い る。 吉 良 実 『所 得 課 税 法 の論 点 〔第2版 〕』(中 央 経 済 社 ・1984年)参 照 。 (27)税 務 訴 訟 資料41号1004頁 。 (28)最 高 裁 の 判 決 理 由は 、 「売 買 交 換 等 に よ りそ の 資 産 の 移 転 が 対 価 の 受 人 を伴 うと き は 、 右 増 加 益 は 対 価 の うち に 具 体 化 され る の で 、 これ を課 税 の 対 象 と して と ら え た の が 旧所 得 税 法(…)9条1項8号 〔現 行 法33条1項 〕 の規 定 で あ る。 そ して 、 対 価 を 伴 わ な い 資 産 の移 転 に お い て も、 そ の 資 産 に つ きす で に 生 じて い る 増 加 益 は 、 そ の 移 転 当 時 の 右 資 産 の 時 価 に 照 して 具 体 的 に把 握 で き る もの で あ る か ら、 同 じ く こ の移 転 の 時 期 に お い て 右 増 加 益 を課 税 の 対 象 とす るの を相 当 と認 め 、資 産 の 贈 与、遺 贈 の あった 場 合 に お い て も、右 資 産 の増 加 益 は 実現 され た も の とみ て 、 これ を前 記 譲 渡 所 得 と同 様 に 取 り扱 うべ き もの と した の が 同法5条 の2〔 現 行 法59 条1項 〕 の 規 定 な の で あ る。 … 右 規 定 は 決 して 所 得 の な い と こ ろ に課 税 所 得 の 存 在 を 擬 制 した もの で は な く、 ま た い わ ゆ る応 能 負 担 の 原 則 を 無 視 した もの と も い い が た い 。」 「この よ うな課 税 は 、 所 得 資 産 を時 価 で 売 却 して そ の 代 金 を 贈 与 した 場 合 な ど との釣 合 い か らす る も 、 ま た 無 償 や 低 額 の 対 価 に よ る 譲 渡 に か こつ け て 資 産 の 譲 渡 所 得 課 税 を 回避 し よ う とす る傾 向 を 防 止 す る うえ か らす る も、 課 税 の 公 平 負 担 を期 す るた め妥 当 な も の とい うべ き で あ り、 こ の よ うな 増 加 益 課 税 につ い て は 、 納 税 の 資 力 を生 じな い 場 合 に納 税 を強 制 す る も の とす る非 難 もま た あ た らな い。」 とい うも の で あ る。 (29)最 高 裁 判 所 民 事 判 例 集26巻10号2083頁 。 判 決 理 由 で 、 最 高 裁 は 「代 金 の 支 払 方 法 が長 期 に わ た る割 賦 弁 済 に よ る と きは 、 特 定 の 年 度 に集 中 して 課 税 す る こ とな く、 割 賦 金 の 支 払 また はそ の 弁 済 期 毎 に そ の 都 度 資 産 の 譲 渡 が あ る と み て 、 当 該 弁 済 期 等 の 属 す る年 度 毎 に 個別 的 に課 税 す べ き で あ る とす る 見解 は 、 と うて い 採用 し 難 い の で あ る。 もつ と も、割 賦 払 い の 期 間 が 長 期 に わ た る と き は 、 売 主 は 、 初 年 度 に お い て現 実 に 入 手 した 代 金 額 が過 少 で あ る に もか か わ らず 、 よ り多 額 の 納 税

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を一 時 的 に 必 要 とす る こ と に な るわ け で 、 これ は も とよ り好 ま しい こ と で は な い が 、 前 述 の よ うに、 年 々 に 蓄 積 され た 増 加 益 が 一挙 に 実 現 し た も の とみ る 制 度 の 建 前 か ら して 、や む を えな い と ころ とい わ な け れ ば な らな い 。」 と判 断 した 。 な お 、 裁 判 長 は 田 中二 郎 博 士 で あっ た 。主 な 評 釈 と して 、堺 沢 良 ・税 経 通 信28巻6号(1973 年)209頁 、 清 永 敬 次 ・民 商 法 雑 誌69巻1号(1973年)159頁 、 一 杉 直 ・税 経 通 信 33巻14号(1978年)150頁 ・税 経 通 信39巻15号(1984年)76頁 、 渡 辺 徹 也 『租 税 判 例 百 選 〔第4版 〕』(有 斐 閣 ・2005年)74頁 が あ る。 (30)金 子 ほか ・前 掲 注(25)『ケ ー ス ブ ッ ク』260頁 。 (31)手 附 とは 、 例 え ば100万 円 の物 を 買 うの に10万 円 だ け先 に 渡 す こ とで あ る。 池 田 ・ 前 掲 注(20)70頁 は 、 「平 成16(2004)年 改 正 ま で の条 文 で は 手 附 と書 い て い た。 ち な み にわ が 国 の伝 統 的 な 法 文上 の 用語 法 で は 、 『付 』 と 『附 』 を 自動 詞 と他 動詞 で 使 い 分 け て い る とい わ れ る」 と し、 同16頁 は 「『附 』 は 『つ く』 とい う 自動 詞 的 意 味 、 『付 』 は 『つ け る』 とい う他 動 詞 的 意 味 で使 わ れ 」 た と し、 民 法 の 条 文 で は き ちん と使 い 分 け られ て い た と指 摘 す る。 な お 、 元 々 は 道 垣 内 弘 人 『ゼ ミナ ール 民 法 入 門 〔第2版 〕』(日本 経 済新 聞社 ・2003年)278頁 で 指 摘 され て い た そ うで あ るが 、 今 回 確 認 で きな か った 。 (32)高 等 裁 判 所 民 事 判 例 集19巻4号380頁 。 熊 本 地 裁 は 、 「総 収 入 金 額 とは そ の収 入 す べ き金 額(金 銭 以 外 の 物 又 は権 利 を 以 て 収 入 す べ き場 合 にお い て は 、 当該物 又は 権 利 の価 額)の 合 計 金 額 に よ る もの と され て お り、 この 規 定 等 か らす れ ば 、 法 は 所 得 を把 握 す る の に 、 原 則 と して 、 金 銭 、物 、 権 利 を現 実 に 取 得 で き た と き で な く、 金 銭 、物 、権 利 を取 得 で き る 地位 即 ち権 利 を 取 得 した と き を もって 損 益 発 生 の と き と して い る もの と 言 うこ とが で き る(い わ ゆ る権 利 確 定主 義)。 こ の 建 前 か らす れ ば 、 売 買 に よ り資 産 を譲 渡 した と き は 代 金 債 権 を 取 得 した とき に譲 渡 所 得 が 発 生 した も の とみ るべ き こ とに な る。 … しか し な が ら、 右 の権 利 確 定主 義 に よ る と の原 則 も常 に絶 対 的 な もの で は な く、衡 平の 見地 か ら所 得 の 実 態 に即 応 して そ の 適 用 を ゆ る め 更 に は 現 実収 入主 義 に よ る 方 が 妥 当 で あ る と考 え られ る場 合 も あ ろ うか ら、 そ の よ うな 場 合 に は 例 外 的 に右 原 則 の適 用 を 排 除す べ き も の と考 え る。 … 本 件 にお い て は 権 利 確 定主 義 の原 則 を そ の ま ま に適用 す べ き も の で は な く、 例 外 的 に現 実収 入 主 義 を 適 用 す べ き場 合 で あ る と認 め るの が 相 当 で あ る。」 と判 断 した 。主 な 評 釈 と して 、 清 永 敬 次 ・シ ュ トイ エ ル15号(1963年)1頁 が あ る。

参照

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