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神経系細胞におけるクロマチンの核内配置

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Academic year: 2021

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神経系細胞におけるクロマチンの核内配置

群馬大学小児科のアレルギーグループに所属していた 私がサイトカイン研究に興味をもって大学院生となり, 田賀哲也教授研究室の門を叩いたのは 1999 年のことで した. 田賀教授は, interleukin (IL)-6サイトカインの研 究で世界を牽引してきた大阪大学の岸本忠三先生の下 で, 当時の岸本研究室のまさに屋台骨となる研究成果を あげられた後に, 東京医科歯科大学の難治疾患研究所に て研究室を主宰しておりました. IL-6といえば, 免疫学 野での研究成果が注目されますが, その受容体 gp130 を利用するサイトカインは, IL-11, leukemia inhibitory factor (LIF), oncostatin M (OSM), ciliary neurotrophic factor (CNTF) など複数あり IL-6ファミリーサイトカ インと称され多様な機能を有します. gp130はユビキタ スに発現しており, 神経発生にも重要であることが当時 わかりつつありました. 特に, 胎生期神経幹細胞からの アストロサイト 化には, gp130を介した信号伝達が主 要な役割を担っており, その 子機構の解明が当時の田 賀研究室での主要研究テーマでした. そこで, 臨床では アレルギーグループに属しているものの, 大学院ではサ イトカインによる神経幹細胞の 化制御を研究すること となりました. マウス胎仔脳から胎仔期の神経幹細胞を 調製し IL-6ファミリーサイトカインで刺激するとアス トロサイト特異的マーカーである glial fibrillary acidic protein (GFAP) を発現するアストロサイト 化が誘導 されます.私の最初の実験は,可溶性 IL-6受容体と IL-6 を予め結合させた融合タンパク質 FP6によるアストロ サイト 化誘導でした. 次に, IL-6ファミリーサイトカ インと同時添加することで相乗的にアストロサイト 化 を誘導することができる bone morphogenetic protein (BMP)2が,一方で神経 化を抑制することを見出し,そ の 子基盤を明らかにしました. さらに, この BMP2と Nocth 信号伝達系にクロストークがあることも報告しま した. さて, IL-6ファミリーサイトカインによるアストロサ イト 化誘導は, 活性化された STAT3が標的配列に結 合して転写誘導することにより引き起こされます. しか し, このような信号伝達経路だけでは, 細胞種により gp130活性化への応答が異なることは説明出来ません. 例えば, 同じ神経幹細胞でも, 胎生の早い段階の神経幹 細胞は gp130を活性化してもアストロサイトへ 化し ません. そこで 2000年当時徐々に脚光を浴びていたエ ピジェネティクス機構, なかでも DNA メチル化に着目 しました.STAT3はメチル化されている DNA には結合 出来ず, 胎生早期の神経幹細胞や神経系以外の細胞では, GFAP遺伝子の STAT3結合配列が高度にメチル化され ていることを見出しました. DNA メチル化が, アスト ロサイト 化のタイミングを決める重要な因子であるこ とがわかったのです. 2002年に大学院終了後, 日本学術振興会の特別研究員 として小児科に戻り, アレルギーの発症や病態とエピ ジェネティクスの関連についての研究に着手したところ で, 米国に留学することになり, その後は小林靖子助教 が中心となり継続, 発展させて, アレルギーやネフロー ゼにおける DNA メチル化の変動を検討し成果をあげて います. 小児科に戻ってきた頃には, 次々とヒストン修飾やそ の重要性が明らかとなり, まさにエピジェネティクス研 175 Kitakanto Med J 2013;63:175∼176 1 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学大学院医学系研究科生体防御機構学講座小児科学 平成25年2月26日 受付 論文別刷請求先 〒371-8511 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学大学院医学系研究科生体防御機構学講座小児科学 滝沢琢己

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究が爆発的に活発になりつつある時でした. あまりに多 くの参入者がいるのを見て, 少し毛色の異なる仕事をし てみたいと思っていたところ, 非常に興味深い 説に出 会いました. クロマチンの細胞核内の配置とその構成因 子の動態に関する論文 で, それを読んで次に自 が研 究するのはこれだ とひらめきました. 著者は, 留学先 となる米国 National Cancer Instituteの Tom Misteliで した. 2004年に Human Frontier Science Program Orga-nization (HFSPO) の長期フェローとして彼の研究室に 留学しました. そこで, 手始めに得意な系として GFAP 遺伝子の DNA FISH と RNA FISH をしたところ,偶然 GFAP遺伝子が多くのアストロサイトで単アリル発現 していることを見出し, 発現アリルと非発現アリル間で 細胞核内での位置が異なることを明らかにしました. ま た, 自 の論文に関連する 説を書く機会にも恵まれま した. 4年間の留学の後,2008年から奈良先端科学技術 大学院大学に助教として赴任してからは, アストロサイ ト 化の系に加えてニューロンでの遺伝子座の配置やク ロマチン動態の研究を開始しました. 2011年 4月より現 所属になりましたが, 奈良先端の時からの学生 3人と共 に「アストロサイト 化の過程における遺伝子座配置の 変動」「ニューロンにおけるヒストン代謝」「ニューロン 成熟過程における遺伝子座配置の変動」をテーマに研究 を継続することが許されています. 特に遺伝子座配置は, その重要性がようやく明らかになりつつある研究 野 で, 自 たちの研究成果が 野の発展に寄与できる可能 性を えて取り組んでいます. こ れ ま で curiosity drivenを モットーに 誰 も 知 ら な かったことが自 の手や目の前で明らかにされることに 興奮して, 研究して来ました. 多くのひとが当たり前だ と思っていたり気が付かないことにこそ貴重な宝が隠さ れているのではないかと思っています. 今後は, 臨床に 還元できるような研究にも独自の視点で切り込んでいけ れば幸いです. 文 献

1. Takizawa T, Yanagisawa M, Ochiai W, et al. Directly linked soluble IL-6 receptor-IL-6 fusion protein induces astrocyte differentiation from neuroepithelial cells via activation of STAT3. Cytokine 2001; 13: 272-279. 2. Nakashima K, Takizawa T, Ochiai W, et al.

BMP2-mediated alteration in the developmental pathway of fetal mouse brain cells from neurogenesis to astrocytogenesis. Proc Natl Acad Sci USA 2001; 98: 5868-5873. 3. Takizawa T, Ochiai W, Nakashima K, and Taga T.

Enhanced gene activation by Notch and BMP signaling cross-talk. Nucleic Acids Res 2003; 31: 5723-5731. 4. Takizawa T, Nakashima K, Namihira M, et al. DNA

methylation is a critical cell-intrinsic determinant of astrocyte differentiation in the fetal brain. Dev Cell 2001; 1: 749-758.

5. Kobayashi Y, Aizawa A, Takizawa T, et al. DNA methylation changes between relapse and remission of minimal change nephrotic syndrome. Pediatr Nephrol 2012; 27: 2233-2241.

6. Misteli T. Protein dynamics: implications for nuclear architecture and gene expression. Science 2001; 291: 843-847.

7. Takizawa T,Gudla PR,Guo L,Lockett S,and Misteli T. Allele-specific nuclear positioning of the monoallelically expressed astrocyte marker GFAP. Genes Dev 2008; 22: 489-498.

8. Takizawa T, Meaburn KJ, and Misteli T. The meaning of gene positioning. Cell 2008; 135: 9-13.

9. Takizawa T, and Meshorer E. Chromatin and nuclear architecture in the nervous system. Trends Neurosci 2008; 31: 343-352.

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参照

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