中国における夫婦法定財産制に関する変遷
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(2) 横浜国際経済法学第 20 巻第 2 号(2011 年 12 月). ことにする。. 一 法定共有財産の限界に関する変遷 1.2001 年改正前における法定共有財産制度の内容 夫婦財産制に関しては、 「1980 年婚姻法」第 13 条 1 項において「夫婦は婚 姻継続中に取得した財産を夫婦共有とするが、双方が別途の約定がある場合に はこの限りでない」と、極めて簡単に夫婦共有財産制と夫婦契約財産制の併用 を規定している。当該条文により、婚姻後に取得した財産は夫婦共有であるが、 婚前の財産は個人に帰属するとしていることを窺い知ることができる。 「1950 年婚姻法」では第 10 条で「夫婦双方は、家庭財産に対して平等な所有権と処 理権を有する」と規定していた。ここでの「家庭財産」とは、男女の婚前財産、 婚姻継続中に取得した財産及び未成年子の財産を示している 3)。中国建国後初 の婚姻法である「1950 年婚姻法」は、旧ソ連の影響を受けて夫婦法定財産制 として一般共有財産制を採用している。契約財産制に関して明文規定はなされ なかったが、立法理由書で「当然、当該包括的な規定は、夫婦間において男女 権利平等と地位平等原則に基づき如何なる家庭財産の所有権、処理権と管理権 に関する自由約定を妨げなく. . . 」と説明している 4)。 「1980 年婚姻法」は、一 般共有財産制を夫婦婚姻中取得共有財産制に変更した上で夫婦契約財産制に関 する明文規定も置かれた。しかし、婚姻中に夫婦個人財産である特有財産 5)に ついては、何の規定もなされなかった。 1993 年、夫婦婚姻中取得共有財産の詳細として最高人民法院より「離婚事 案審理における財産分与問題に関する若干意見」 (以下「若干意見」 )が出され、 この第 2 条で婚姻中の共有財産が「一方または双方が、①取得した収入と購入 した財産、②相続あるいは贈与によって得た財産、③知的財産により取得した 経済利益、④生産や経営により取得した収益、⑤取得した債権、⑥その他合法 的な取得物」と規定された。また、 「若干意見」第 6 条により、婚前の個人財 28.
(3) 中国における夫婦法定財産制に関する変遷*. 産を婚姻中に双方が共同使用、経営、管理する場合には、不動産とその他高価 値の生産手段については 8 年、貴重な生活資料については 4 年を経過した後、 夫婦共有財産と見なされることとなった。当該規定に対しては「所有権変動に 関する当時の現行法である民法通則に抵触している」 、 「所有権取得に関する法 理にも違反し、取得時効制度のない我が国の法制度に一致してない」 、 「夫婦特 有財産を保護する国際的な観点に合致してない」等の批判があった 6)。 「婚姻 後 8 年を経過した後、夫婦は個人財産を失い、婚前の財産は共有財産とみなす」 とした当該司法解釈の趣旨は、 「1950 年婚姻法」に規定した夫婦一般共有財産 制に戻ったかのようであり、1980 年婚姻法は施行されているものの、実務上 は 1950 年から 30 年間に施行された 1950 年婚姻法の一般共有財産制の影響が 強かったのではないだろうかと思われる。. 2.2001 年改正後における法定共有財産制度の内容 1981 年から 2001 年までの 20 年で中国経済は迅速に発展し、個人財産も著 しく増加した。 「1980 年婚姻法」に規定していた財産制も時代に合わなくなり、 2001 年の法改正につながった。 2001 年の改正では夫婦婚姻中所得共有財産制は変更せず、 「若干意見」第 2 条の内容を条文化した。 「婚姻法」第 17 条で「婚姻中に取得した財産を夫婦共 有財産とみなす」と包括的に規定した後、列挙する形で次の財産が夫婦共有財 産であると明確にした。すなわち①賃金、ボーナス、②生産や経営による収益、 ③知的財産権による収益、④相続、あるいは贈与によって得た財産、ただし遺 言や贈与契約で夫婦の一方に帰属すると明言のある場合を除く、⑤その他の 共有財産である。上述の列挙財産は、 「若干意見」第 2 条の内容と比較すると、 言語の修正と順番の調整以外ほぼ一致しているが、重要な相違点はとして「若 干意見」に規定した相続あるいは贈与によって得た財産に但書を追加している ことである。この但書に規定している「明言」を如何に判断するかについては、 司法解釈に委ねている。また、賃金は収入のことを指すとの学説 7)がある。 「生 29.
(4) 横浜国際経済法学第 20 巻第 2 号(2011 年 12 月). 産と経営による収益は個人特有財産とする」とした意見もあったが、採用され なかった 8)。したがって、婚姻中に一方が取得した株権や会社の持分権等は共 同財産であり、離婚の際には分与しなければならない。 上述 の 法定共有財産 の 限界 に 関 す る 法律規定 に 対 し て、最高人民法院 は 2001 年から 2011 年までに三つの解釈を公布して詳細を解釈した。以下、法定 共有財産の限界に関する解釈の変遷について論じることにする。 まず「司法解釈(一) 」では法定夫婦財産の管理に関する事項について解釈 がなされた。第 17 条では日常家事と非日常家事の範囲に分けて規定している。 日常家事の範囲なら夫婦のいずれか一方が処分を有するが、非日常家事の範囲 なら夫婦双方の同意が必要である。第三者は夫婦双方の同意があると信じるに 値する理由がある場合には、夫婦の一方が同意しないことや知らないことを もって、善意の第三者に対抗できないと定めている。附言すれば、当該解釈は 日本の日常家事代理権に関する最判昭和 44.12.18 の判旨を踏まえたと考えられ るが、生産と経営による収益を共同財産であると定めている中国法の下で、如 何に日常家事と非日常家事の範囲を区分するかが問題である 9)。 また「司法解釈(二) 」では、夫婦共有財産の限界に関して「婚姻法」第 17 条 3 号に規定した「知的財産権の収益」と、第 17 条 5 号に規定した「その他 の共有財産」に関して二つの解釈がなされた。前者は、婚姻関係継続中に実 際に取得した、あるいは明確に取得できる財産的な収益のことである( 「司法 解釈(二) 」第 12 条) 。後者は、①一方が個人財産で投資による取得した収益、 ②双方が実際に取得したあるいは取得すべき住宅手当や住宅積立金、③双方が 実際に取得したあるいは取得すべき年金、破産による配当金である( 「司法解 釈(二) 」第 11 条) 。 最後に、 「司法解釈(三) 」で、 上述の「司法解釈(二) 」第 11 条に示した「一 方が個人財産で投資による取得した収益」を共有財産であるとの解釈をし、さ らに、 「一方が個人財産による取得した収益を果実と自然増値以外、夫婦共有 財産である」と規定した( 「司法解釈(三) 」5 条) 。 「司法解釈(二) 」第 11 条 30.
(5) 中国における夫婦法定財産制に関する変遷*. に「投資」という文言があったが、 「司法解釈(三) 」5 条には「投資」という 文言が置かれていない。 「司法解釈(二) 」補足的な解釈として 「司法解釈(三) 」 があるわけだが、 「果実と自然増値」は投資による収益ではないことを明確に したといえる。2010 年 11 月の「意見稿」では「但し、他方が果実及び増値収 益に貢献があった場合には、夫婦共同財産であると認定することができる」と いう但書があったが、 「貢献」の認定が難しい為に削除された。しかし最高人 民法院は、個人財産を婚姻後の収益を投資収益、果実と増値の三つに分け、投 資収益は共同財産に、また果実と増値は個人財産にと明確に分ける一方、増値 収益に貢献があった自然増値でない積極増値(主動増値) 、例えば、他方の不 動産修繕による増値を共同財産であるとし 9、結局、削除された但書と同じ趣 旨の法解釈をしている。. 二 法定特有財産の限界に関する変遷 夫婦財産制に関し、2001 年の改正で夫婦特有財産制度が従来の夫婦婚姻中 所得共有財産制と夫婦契約財産制に加わり、三つの制度が併用されることに なった。新たに設けられた夫婦特有財産制では、第 18 条で夫婦一方の財産と して個人に帰属するものを規定している。すなわち①婚前財産、②身体傷害に より賠償された医療費、身体障害者生活補助費等の費用、③遺言や贈与契約で 夫婦の一方のみに帰属すると明言された財産、④一方が専用する生活用品、⑤ その他一方に帰属すべき財産である。 「司法解釈(一) 」第 19 条において「婚姻法」第 18 条に規定している夫婦一 方の個人財産を婚姻関係の延長に伴い、夫婦共有財産に転化しないことを明確 にした。即ち「若干意見」6 条を廃止したわけである。この廃止により、夫婦 一般共有財産制(1950 ~ 1980 年) 、婚姻中取得共有制(1980 ~ 1993 年) 、婚 姻中取得共有制の法律を持ちながら 4 年或いは 8 年間婚姻関係を継続する夫婦 間では夫婦一般共有財産制をとるといった実務運用解釈(1993 年~ 2001 年 12 31.
(6) 横浜国際経済法学第 20 巻第 2 号(2011 年 12 月). 月 24 日)を経て、再び婚姻中取得共有制に落ち着いたことになる。 「司法解釈(二) 」では、夫婦特有財産の内容に関して三つの条文が置かれた。 それは、①軍人の死亡保険金、身体障害補助金、医療生活補助金は個人に帰属 する財産である( 「司法解釈(二) 」第 13 条) 、②軍人の退役費、自主的な転職 の為に支給された補助費等の一時金は、夫婦婚姻関係継続年数により個人に帰 属する財産と夫婦共同財産とにわける( 「司法解釈(二) 」第 14 条)とし、婚 姻関係継続年数が増えれば増えるほど、夫婦共同財産に帰属する割合を高くす るとした。上述の二つの解釈は「婚姻法」第 18 条 2 号の一身専属原則を踏ま えたと評価できる。また、③「婚姻法」第 18 条 3 号の財産認定について、結 婚前に親の出資で夫婦のために家屋を購入した場合には、夫婦双方に対する贈 与と明確に表示したことを除き、自分の子に対する贈与と認定するが、結婚後 に親の出資で夫婦のために家屋を購入した場合には、夫婦一方に対する贈与と 明確に表示したことを除き、 夫婦双方に対する贈与と認定する ( 「司法解釈(二) 」 第 22 条) 。いずれも明確な意思表示を要件としているが、結婚時期を判断基準 とし、意思表示の要件は正反対である。 また「司法解釈(三) 」第 7 条では、夫婦一方に対する贈与や相続財産の認 定に関して、 「司法解釈(二) 」第 22 条で規定した基準を判断するひとつの意 思表示として 「登記」を結婚後の 「明確な意思表示」であると規定した。即ち、 「結 婚後に(夫婦)一方の親の出資より子に不動産を購入した場合、所有権登記を 出資側の子の名義にするときは、婚姻法第 18 条 3 号の規定に基づき、自分の 子に対する一方的な贈与として、当該不動産は夫婦一方的な個人財産と認定す ることができる」としている。. 三 実務上における夫婦法定財産の認定 ここで実務上、法規定や司法解釈の規定した夫婦法定財産の条文を如何に適 用するかについて考察することにする。 32.
(7) 中国における夫婦法定財産制に関する変遷*. 1. 「婚姻継続中」の判断時点について、実務では「婚姻継続中」期間の算出を 男女が入籍した後、即ち、結婚証に記載された時間から正式に離婚あるいは配 偶者の死亡までの間としている。2000 年の離婚事案 11)では、2000 年 1 月 20 日 に離婚判決が下されたものの、原告が財産分与に対する不服のため控訴した後、 被告が 2000 年 2 月 18 日に購入した宝くじに当たった 15 万元の帰属について、 裁判所は「原告と被告は一審で離婚成立の判決が下されたものの、一方の控訴 により一審の判決の法的効力が生じなかった。この間にいずれかの一方が取得 した財産については、法律の定めにより夫婦共同財産とする」との判決を出し た。 2.分割されてない遺産。1997 年、離婚事案の継続中に、原告は被告の父が婚 姻継続期間中に死亡した事実に基づき、被告及び被告の母を相手に相続の訴え を提起したが、被告は相続放棄した 12)。双方の離婚事案を通して、人民法院 は「若干意見第 2 条 2 号に規定している相続による得た財産とは、実際に取得 した財産と指す」と解していると理解することができる 13)。この点について は 「司法解釈(三) 」第 15 条で、 相手に分割されてない相続遺産がある場合は 「相 続人の間において実際に遺産分割が行われた後、別途で提訴すること」を告知 しなければならないとしている。 3.金メダルの所有権帰属。1993 年の離婚事案 14)で、原告がスボーツで取得し た 17 個の金メダルの帰属について、一審と二審とも当該金メダルを「栄耀の 象徴であり、一身専属である」と解し、原告の個人に帰属する財産と認定した。 4.登記と夫婦共同不動産の認定 一般市民にとって、もっとも高価値を有する家庭財産は不動産である。不動 産が夫婦の共同財産であるか否かの判断基準は、当然「婚姻法」第 17 条、第 18 条、第 19 条に従うが、より詳細な規定は司法解釈にゆだねられている。 中国の不動産改革は 1995 年頃より実施された。職場や国から賃借した不動 産を個人に販売することにしたが、登記名義人は賃借人しかできない 15)。そ の背景の下で、 「司法解釈(二) 」では「一方が結婚前に借りた家屋を結婚後の 33.
(8) 横浜国際経済法学第 20 巻第 2 号(2011 年 12 月). 共同財産で購入するにあたり、一方の名義で所有権証書に登記した場合、その 家屋は夫婦共同財産と認定する」 ( 「司法解釈(二) 」第 19 条)とした。しかし 実務レベルでは一方が結婚前に借りた家屋を結婚前の個人財産で購入した場合 でも、不動産の登記時間が結婚後であれば、夫婦共同財産と認定するとした事 案がしばしば見受けられた 16)。当該事情では個人婚前財産とすべきであると の学説 17)があるが、明確な解釈がないため、実務レベルでは実質的な出資を 判断基準とする見解と、不動産登記時間を判断基準とする見解が分かれてい る 18)。 贈与された財産の認定基準は、上述したように「司法解釈(二) 」第 22 条及 び「司法解釈(三) 」第 7 条により明確となった。同時に離婚時における不動 産の分与方法も、夫婦共同不動産の認定にも繋がって大議論となっているため、 ここで少々述べることにする。 中国では、結婚に際して男が家屋を準備し、女が嫁入り道具を用意する慣習 がある。今日では男は頭金支払の後ローンを組んで家屋を準備し、女が内装工 事を行うのが一般的である。その場合、登記は通常男性となることが多い。ま た、近年では不動産バブルより不動産価額が高騰しつつため、結婚前に不動産 を購入するのが一般的となっている。夫婦の一方が、結婚前に頭金を支払い、 ローンを組んで不動産を購入し、結婚後に共同財産でローンを返済し、その後 離婚する場合には、当該不動産は法的に如何に分割されるのだろうか。 「司法 解釈(三) 」第 10 条によれば、結婚前に一方が頭金を準備し購入した不動産分 割について、夫婦双方の分与の協議が成立しなかった場合には、裁判所は、当 該不動産の帰属を登記名義者にし、返済の終わっていないローンも、登記名義 人の負債とする判決を下すことができ、また夫婦双方が結婚後に共同で返済し た金額および上昇した財産価値を、婚姻法第 39 条 1 項 19)の原則に従い、登記 名義者は相手側に補償しなければならないとした。不動産価値が下がった場合 は、夫婦共同で返済したローンを如何に返済するかは同条に規定されてないた め問題となる。 「意見稿」では、その場合には「補償金額は夫婦共同財産で返 34.
(9) 中国における夫婦法定財産制に関する変遷*. 済した部分の二分の一に下回ってはいけない」としたが、利益を共に享有し、 損失も共に負うべきとの見解が多数を占めたため、当該文言は削除された 20)。 「司法解釈(三) 」第 10 条は女性の利益を保護していないとの批判がマスコ ミで相次いだが、最高人民法院は、①当該不動産は、婚前財産と婚後の共同財 産の混合財産であり、②離婚際における分与は、当事者間の協議を優先とし、 ③当該規定は、人民法院に離婚財産の分与方法の一つとして規定したものであ るため「しなければならない」 (中国語で「応当」 )と言う文言ではなく、判決 を下すことが「できる」 (中国語で「可以」 )と言う文言をつけており、④特殊 な場合には、ローンの返済者の配偶者、即ち、ローンの返済者でない者に所有 権の帰属の判決を下す場合には返済義務も同人に負わせなければならない、と 説明した。また、同条を適用する際には個人の婚前財産を保護すると共に、女 性と子の利益を保護しなければならない離婚原則( 「婚姻法」第 39 条 1 項) 、 離婚における扶養原則( 「婚姻法」第 42 条) 、共同財産の利益の保護、債権者 である銀行の利益も損害してはならないと強調した 21)。 しかし上述の原則を如何に同時に遵守するのかという疑問が残る。今後、実 務では不動産登記者に所有権を帰属させる判決を下すのが圧倒的多数となり、 結局不動産物権変動の公示方法と公信力として、取引上大きな法的効力を有す る登記が離婚時における財産分与の原則となるし、物権法上の登記の効力を身 分法である婚姻法に強く適用することは不当であると思われる。同条は男性の 利益を保護するとの意見が市民間でも論じられるようになり、 「司法解釈(三) 」 の施行後、銀行の同意を得て不動産登記簿に夫婦他方の名前を追加するといっ た動きが見られた。この方法で同条の適用を避けようとしたわけである。. 四 今後の課題 夫婦法定財産制度の規定は、夫婦双方が第三者との取引や債務の返済を行う ために大きな役割を果たすと同時に、共同財産の管理や使用及び離婚時におけ 35.
(10) 横浜国際経済法学第 20 巻第 2 号(2011 年 12 月). る財産分与に関しても重要な役割を果たしている。統計によると、中国では離 婚カップルが年々増え、1985 年の 45.79 万組だった離婚件数は 2009 年の 246.80 万組まで大幅に増加した。離婚率(crude divorce rate)は 1985 年の 0.44‰か ら 2003 年の初めての 1‰超え 1.05‰に達し、2009 年の 1.85‰まで増加した 22)。 このような背景の下で、2008 年から、 「婚姻法」に対する「司法解釈(三) 」 の作業が始まり、今年 8 月 13 日の施行となった 23)。夫婦法定財産に関する規 定において、 「司法解釈(三) 」が「司法解釈(一) 」及び「司法解釈(二) 」と 著しく異なる点は、特有財産の範囲を明確にしたことと、不動産の登記を強調 した二点であろう。当該変更は 2007 年 10 月 1 日に施行された「物権法」にお ける登記の効力や果実の帰属の規定と合せる傾向が窺え、中国の「婚姻法」の 性質は、もともとの身分法を中心としたところは身分法と財産法の両方を重視 する性質に、また夫婦法定財産制については共有財産を中心としたところは共 有財産と特有財産の公平な併用に、契約財産制という複合財産制に変遷した。 それは、台湾の法学者である林秀雄教授が指摘した「今日の各国の夫婦財産制 は、厳格に言えば、単純個別財産制でもなく、単純共有財産制でもない」24)姿 をそのまま現しているといえよう。 中国民政部の統計によれば、2003 年以前は裁判離婚数が協議離婚数より多 かったが、2002 年に半々 25)となった後逆転し、裁判離婚数は 70 万組前後を維 持しているが協議離婚数は年々増え続け、2006 年より協議離婚数は裁判離婚 数の倍となった。次の表は、協議離婚数と裁判離婚数の推移を示している。 . 䆠䴒ႊᮠ ˄з㍴˅ 㻱ࡔ䴒ႊ˄з ㍴˅ ᒤ. ᒤ. ᒤ. ᒤ. ᒤ. ᒤ. ᒤ. . . (* 上述のデータは中国統計年鑑と中国民政年鑑による。 ) 36.
(11) 中国における夫婦法定財産制に関する変遷*. 協議離婚数が裁判離婚数 2003 年より逆転した現象は、市民が離婚時に理性的 な面を見せていることを窺わせる一方、財産分与や子の親権に関する協議をす る夫婦の数が大幅に増えたことにより、契約意識が強くなっていることも現 している。公証データによると、婚姻中における夫婦財産協議をした件数は、 2008 年で 48971 件、2009 年で 47266 件であった 26)。 今後の中国民法の立法により法定共有財産と特有財産をより明確に規定し、 より夫婦財産契約制に関する法整備を進めることが今後の課題となると考えら れる。 * 本稿は、江蘇大学優勢学科研究補助金(PAPD)により研究成果である。 1)2001 年 12 月 24 日に「 『中華人民共和国婚姻法』の適用にかかる若干の問題に関する解釈 (一) 」 ( 「司法解釈(一) 」と略称する)が公布され、同日より施行された。2004 年 4 月 1 日に「 『中華人民共和国婚姻法』の適用にかかる若干の問題に関する解釈(二) 」 ( 「司法 解釈(二) 」と略称する)が施行された。2011 年 8 月 9 日に中国最高人民法院より「 『中 華人民共和国婚姻法』の適用にかかる若干の問題に関する解釈(三) 」 ( 「司法解釈(三) 」 と略称する)が公布され、同月 13 日より施行された。 2)中国夫婦財産契約制度に関しては、才杰: 「日中夫婦財産契約制度の比較研究――中国婚 姻法改正の視点から――」 、 「国際公共政策研究」11(1)と 12(2)を参照されたい。 3) 「中華人民共和国婚姻法起草経過と起草理由に関する報告」 、中国人民大学民法研究室編: 『中華人民共和国民法資料編(第 2 冊) 』 (中国人民大学出版社、1954 年)275 頁。 4)前掲書、276 頁。 5)中国の多数説は、夫婦の個人財産を特有財産と称する。馬原: 『新婚姻法条文釈義』 (人 民法院出版社、2002 年)134 頁、 巫昌禎=夏吟蘭: 『婚姻家庭法学』 ( (中国政法大学出版社、 2007 年)118 頁、楊大文: 『親族法』 (法律出版社、2004 年)133 頁。 6)田嵐: 「夫婦の一方の有する不動産の所有権の移転に関する規定に対する疑問」 、 「法学家」 1999 年 4 期 73 頁―78 頁。 7)楊大文前掲書、129 頁。 8)黄松有編: 『最高人民法院婚姻法司法解釈(二)に対する理解』 (人民法院出版社、2004 年) 109 頁。 9)詳細については拙稿「夫婦日常家事代表権制度を確立する必要について」 、 「江海学刊」 37.
(12) 横浜国際経済法学第 20 巻第 2 号(2011 年 12 月). 2009 年 2 期を参照されたい。 10)最高人民法院民事審判庭第一庭編著: 『最高人民法院婚姻法司法解釈 (三) 理解と適用』 (人 民法院出版社、2011 年) 、96 - 98 頁。 11)国家裁判官学院、中国人民大学法学院編: 『中国審判案例要覧(2001 年民事審判案例巻) 』 (中国人民大学出版社、2002 年)23 頁。 12)当該ケースでは、法定相続人でない原告は中国民事訴訟法により原告不適格であるため、 却下されるべきであったと思われる。 13)最高人民法院中国応用法学研究所編: 『人民法院案例選(民事巻 1992 - 1999) 』 (中国法 制出版社、2000 年)37 頁。 14) 『中華人民共和国最高人民法院公報』1995 年 2 期。 15)その根拠は、1998 年 7 月に国務院より公布された「城鎮住宅制度改革に関する通知」 (国 发 199823 号)であった。 16)筆者が代理した事案があった。 17)裴樺: 『夫婦共同財産制研究』 (法律出版社、2009 年)87 頁。 18)前掲注 10) 、161 頁。 19)中国婚姻法 39 条 1 項は、離婚際に財産分与において女性と子の利益を保護する原則で ある。 20)前掲注 10) 、165 頁。 21)前掲注 10) 、166、167 頁。 22)中国統計局編: 『中国統計年鑑』 (中国統計出版社、2010 年)887 頁。 23)前掲注 10) 、7 頁。 24)林秀雄: 『夫婦財産制に関する研究』 (中国政法大学出版社、2001 年)6 頁。 25)2002 年の協議離婚数は 50.3 万組で、裁判離婚の数は 60.4 万組であった。中国民政部編: 『中国民政年鑑』 (中国統計出版社、2008 年)24 頁。 26)中国統計局編: 『中国統計年鑑』 (中国統計出版社、2010 年)887 頁。. 38.
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