ニックリッシュの『経営経済』についての一考察
(その④)
牧
浦
健
二
要旨 本稿では,ニックリッシュの経営学の体系を明らかにするため,彼の著『経営経済』 の第2巻を3分割し,その最後の部分(S.443570)を,適宜に翻訳しながら,検討する。本 稿では,3 )経営での価値の関係の均衡の維持で書かれた,評価論に続く,静態的な価 値の関係の理論と,Ⅱ経営の活動について検討する。このような考察により,分業経済体制 の下では,労働の体化として共同体が形成されているという事実が指摘される。 キーワード ニックリッシュ,経営での価値の循環,経営の活動,労働の共同 原稿受理日 2017年5月16日Abstract In this treatise, we conducted research on Nicklisch’s book“Business Economy”, in German “Die Betriebswirtschaft”. This paper divides the second volume into three parts, and traces the last part(pp.443570), by discretionary translation. First, we considered the theory of value relations from statical view point. Secondly, we investigate business actions. By this consideration, natinal economy and business unit have the system for the division of labor and make collaborating.
Key words Nicklisch, H., circulation of value in business unit, business action, collaborating on the work
は じ め に
ニックリッシュは,『経営経済』の第2巻では,「経済恐慌期」(1929年から1933年)に 顕著になった,経営の活動に関連した問題,たとえば,支払い能力,経営プロセスの価値 の全体で運動する数値などを取りあげる。その際,シュマーレンバッハ(Schmalenbach, E.)は,既に,帝国税法(Reichsabgabenordnung)の「通常の価値(gemeiner Wert)」 について同意すること(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.414.),在庫管理で,補充者から注 文される「指令点」(Bestellpunkt)と呼ばれる在庫量を正常有り高(Normalbestand) と呼んだこと(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.453.),原価(Kosten)と必要経費を調達 側ではなくて,販売側から解説されるモノとみなしたこと(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.528.),減耗(Abnu¨ tzung)と必要経費を区分する必要性を考えないで,同一の減耗に対 して, 異なる減価償却費を算定する,複数の減価償却法を認めたこと( Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.537538.),給付単位か総必要経費の立場かを明らかにしないで,固定的, 逓減的と逓増的に増加する必要経費を区分したこと(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.550 551. )などが, ニックリッシュにより問題視された。 このため,「シュマーレンバッハ流 〈【筆者補足】の手続き〉は,数理上での本質( mathematische Natur)である。その価 値は思考訓練(Denkschulung)に及ぶ。しかし,与えられた状況の探求にはこれらは役 に立たない」(Nicklisch, H. 1929/32. S.621622 u. Vgl.S.555.)とニックリッシュはみな した。 本稿では,ニックリッシュが,1929年から1932年に第7版として出版した『経営経済』(Die Betriebswirtschaft)の第2巻の, 3 )経営での価値の関係の均衡の維持の, 既に考察し た評価論に続く,静態的な価値の関係の理論と,Ⅱ経営の活動について検討する。 静態的な価値の関係の理論 ① このタイトルの下で問題になる,価値の関係 まず,共通して,各時点に対して,総ての経営にとって最適な価値の関係が存在するこ とが言われるべきである。これらはそうあるべきモノ(So -sein -sollen)を示唆する。実 際のモノがこれらに一致しているのかは,別の問題である。「最適」( optimal )という言 葉は,ここでは,二重の意味を有する。一方で,経営の資産と資本は特定の時点に対して 最適に構成されると考えられるため,表示( Ausdruck )は,総てのこの部分について有効である。判定(Beuerteilung)は[経営のための]目的(Betriebszweck)から行われ る。この場合,しかしまた,現実に与えられる構成(Zusammensetzung)の前提の下で, 前提がまた不都合であるとしても, 個々の資産部分,あるいは,資本部分の最適な規模 (Gro¨ ße)について語られる。状況の不都合は,経営が維持されるべき時に,給付が応じる べき,色々の部分の規模に関する要求をする。たとえば,過剰な資本が与えられれば,お そらく品性方正なビジネスマンの用意周到(Sorgfalt)がなければ,なおさら多くの貨幣 性資金(flu¨ ssiges Mittel)が維持されるに違いない。このような〈【筆者補足】運用され ない,手元資金が増加する〉状況では,脅威の焦点にある,個々の対象が注目され,最適 な規模についての問いがこの対象に関係付けられる。しかし,全体の最適な構成は目立た なくなる。 この〈【筆者補足】全体の〉最適な構成から実際の関係は外れる( abheben ) が,実際(Ist)のより良い判定が可能になる。総ての意識は,背後のネットワーク(Netzwerk) が理解できる程には,恵まれていない。できるだけ多くを理解できるようにする(sehend zu machen)ことが,ビジネスマンの後継者の科学的な育成と,経済活動者の再教育の問 題である。 このための最良の資料を内部と外部の経営比較が提供する( Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.443444.)。 個々の関係を見渡せるように整理しようとする者は,資本の関係と,資産の関係と,両 者の相互の関係に区分すべきである。最初の〈【筆者補足】資本の関係の〉グループには, 企業家資本と信用資本の関係,資本準備金( Kapitalreserve )や,余分な(u¨ brig )企業 家資本に対する総資本の関係が属する。 第二の〈【筆者補足】資産の関係の〉グループに は,総資産に対する,[経営のための]フォンド(Betriebsfond),未活用資産(brachliegendes Vermo¨ gen)や,投機資産(spekulatives Vermo¨ gen)の関係,[経営のための]フォンド に対する,準備資産(Reservevermo¨ gen),設備と[循環する]資産(umlaufendes Ver- mo¨ gen )の関係が含まれる。第三の〈【筆者補足】資本と資産の相互の関係〉は,満期の 債務(fa¨ llige Verbindlichkeit)(短期信用資本の部分)対 貨幣性資金(liquides Mittel), 短期の信用資本 対 [循環する]資産,(企業家資本+長期信用資本) 対 [経営のための] フォンド,資本準備金 対 資産準備金(Vermo¨ gensreserve),更新勘定(Erneuerungskonto) の金額 対 設備の更新のために準備されるべき価値の総額,保証資本(Delkrederekapital) 対 保証資産(Delkrederevermo¨ gen),臨時の債務(Eventualverpflichtung) 対 臨時の 請求権(Eventualforderung)を形成する(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.444.)。 総てのこのような関係は経営の活動の大きな均衡問題と結び付けて研究されるべきであ る(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.444.)。
② 静態的な価値の関係の下で活動する,均衡問題 タイトルの言葉は,ここでは常に,経営にとり順調な(gedeihlich)均衡を考える。こ れは,統一体として拘束された運動である,規模の間で支配する,均衡である。このよう な均衡は成果が大きいに違いない。これによれば,均衡は,数理上,あるいは,物理上で はなくて,有機的に考えられる。この意味では,均衡は,統一体の肢体の間での相互の関 係であり,統一体に対して,このような相互の関係により,肢体は,存在し,影響する。 経営に対するその目的は,この統一体に安全性を与えることである。このため,均衡問題 は,総て,保証(Sicherung)の問題に繋がる。この問題は,リスク問題から始まり,3 つの部分問題に区分される。その内,1 つは,循環の中断(Umlaufsunterbrechung)に 対する保証,他は,循環の縮小(Schma¨ lerung des Umlaufs)に対する保証を取り扱う。 3 つ目は信用保証(Kreditsicherung)の部分問題と呼ばれる(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.444445.)。 a)リスク問題 ここでは,リスクの区分(Gliederung)についてのできる限り完全な展望を獲得するこ とのみが試みられる。一般には,リスクは,外観上では,方針( Richtung )により区分 される。これは,目標を達成するために,投入される,諸力と手段に関連して行われる。 後者〈【筆者補足】手段〉では,これは所有(Besitz)と非所有であり,前者〈【筆者補足】 諸力〉では,その際,現われる,活動(Beta¨ tigung)と非活動である。所有,あるいは, 非所有のリスクは,活動,あるいは,非活動のリスクに接合する。もちろん,所有リスク では,〈【筆者補足】たとえば,設備の所有が技術革新による陳腐化のリスクを有するよう に〉,活動の問題とは独立した,残余( Rest )が残される。総ての4つの方針では,経営 の循環が停滞(Sto¨ rung)なしに行われるのかが問題になる。非所有は,〈【筆者補足】た とえば, 特許の利用権の承認のように〉,資産側からの本質上での抑制であり,非活動は その結果である。このようなケースでは, 余分な(u¨ brig )資産に関する価値の低下と, 組織と経営共同体の存続(Bestand)での不都合(Nachteil)が現われうるが,この場合, リスクの出口(Ausfluß)を示唆する(darstellen)(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.445.)。 克服されるべき,困難の所在地(Sitz)によれば,自然の中にその源泉のある,リスク と,人間の中に源泉を有する,リスクがある。自然の側に,経済の対象の性質(Beschaffenheit) により与えられる,脅威が総て存在する。その際,人間にはこれら脅威を回避することが できないことが前提にされる。このような可能性が存在すれば,その源泉が人間の中に探
されるべき,リスクにわれわれは関係すべきである。このような境界は,はっきり引かれ るように,見える。しかし,境界はそうではない。というのは,どのような人間によりそ の経過〈【筆者補足】境界の線引き〉( Verlauf )が決定されるべきであるのかという問題 が残されているからである。問題は,人間にとり,このために考察されるモノが,まず問 われる時には,単純化される。確かに,個々のケースで事情に詳しくない(sachunkundig) 者である。彼らの内,これは,しばしば,非常に少ない共通した才能を有する者である。 彼らの残りは,最も少ない才能を与えられた者である。そこで,両源泉の領域の区分のた めに,少ない共通した才能,専門知識の不足と,非常に少ない専門知識というリスク領域 が生ずる。総ての3つの領域は,明らかに,人間に帰せられるべきリスクの領域に属する。 自然のリスクは別のものである(jenseits)。これには,また,われわれが非常に強い力に ついて語る,総てのケースが属する。人間の領域は,リスクを発生させる,動機を与える, 影響の種類により,更に区別される。影響は,人間が所属する,経済外の結合(Verband) から始められうる。このような結合は憲法上での結合と,他の社会の結合に区別される。 これら領域のリスクは, また, 直接には,才能と教育の不足(Unzula¨ nglichkeit),並び に,人間の意識の限界のせいにされうるが,これは,個々の人間が,また,経済では,完 全に不充分であることをもたらす。これは,また,景気変動のリスクに属する,困窮をも たらす。不足は,この場合,不足が内在している,特殊なリスクを伴う,あらゆる種類の 経済上での関連(Zusammenschluß)に一致している(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.446.)。
オーバーパーライター(Oberparleiter, K.:Formen- und Risikenlehre des Waren-handels, Berlin 1930.)は,商品取引機能により商品取引きのリスクを区分した(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.446.)。この点,ニックリッシュは,「オーバーパーライターの分類は,明ら かに,経営学(Betriebslehre)の立場ではなくて,取引論(Verkehrslehre)の立場から 企てている。リスクを経営上で管理する(meistern)という課題にとり,これは充分では ない」(Nicklisch, H. 1929/32. S.447.)と考えた。 ところで,リスクが経営内で結び付いていると考えると, このリスクに対して保証 (Sicherung)をもたらすべき,器官(Organ)による区分が理解される。これは,特別な 領域にリスクが現われる,行動グループに代表される。このようなモノは,調達,製造, 管理(Verwaltung),販売,成果の分配(Ertragsverteilung)である。今やここでは, 再び,列挙したモノの肢体が同一のランクを有するのかという問題が生ずる。調達,製造 と販売ではこれに対して疑いはない。成果の分配では異なる。これに対しては,先にあげ た,成果の獲得(Ertragserzielung)がある。このような関連では最初は,これらは同一
ランクである。その後,成果の獲得と成果の分配のリスクは区分されるべきである。前者 の成果の獲得は,調達,製造と販売のリスクに更に区分される。管理は全体の経営プロセ スを突き抜けている。成果の獲得の機会と価値は,成果の分配のそれと同様に,管理され る。このため,また,特別なリスクが全体の経営を通じて広がっている。観察者は,成果 の獲得と成果の分配に同一のランクを管理に与えることを認めることは適切である。しか し,この管理は異なる次元にある。すなわち,これは,個々の経営の部分と活動から統一 体を創造する,給付の手段である(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.447.)。 また,オーバーパーライターの機能別のリスク(Funktionsrisiko)内,信用リスクは まだはっきり(sicher)しない。〈【筆者補足】たとえば,支払手形で商品を購入し,その 売却代金で返済する場合のように〉, 信用リスクが受け取られるべき時には, 特別な調達 リスク,その後,資本の使用リスクと,最後に,返済の条件と時点に関連したリスクが存 在する。しかし,信用資本だけではなくて,企業家資本に対しても,このような問題は, 両者では,また異なり,異なってはっきりと現われる時,設定される。特殊な信用リスク は,包括的な資本リスクに共に含まれる。このような特別な信用リスクは,損失の可能性 が現れうる,至る所(u¨ berall)にある。というのは,損失は,総てのケースで,資本損失 ( Kapitalverlust )であるからである。この資本損失は,また,循環で停滞が発生しうる 至る所で存在する。……これは,たとえ,資本がただ資産の形式にのみ改造されうるとし ても,妥当する(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.447-448.)。 経営は,リスクを,個々の資産の部分と資本の部分についての配分で追求する。その克 服は,このような洞察なしには,できない。リスクが作用を及ぼす脅威がある,個々の価 値に結び付いて,初めて,リスクはその根拠まで認識される。このような関連では,設備 資産と,[循環する]資産(umlaufendes Vermo¨ gen)に,正に,総ての個々の資産の有 り高と資本の有り高に対して,リスクは存在する。その際,リスクは不均一に分布してい ることが示される(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.448.)。 リスクのグループ化は,リスクが作用する,仕方( Art )により,行われうる。〈【筆者 補足】たとえば,人身事故の補償のように〉,継続して高い経営支出(Betriebsausgabe) で発生することで現われる仕方と,〈【筆者補足】たとえば,債務の遡及義務のように〉驚 くほどの巨額の損失をもたらす他の仕方が存在する(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.449.)。 最後に,全体のリスクは,これが資本部分に配分される様式により,区分されうる。そ の際には,保証関係で表示される,リスクに対する資本提供者の責任性の相違が注目され るべきである(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.449.)。
b)保証問題 リスクの作用(Auswirkung)は,循環の中断(Umlaufsunterbrechung),あるいは, このような作用の方向での停滞(Sto¨ rung )である。その際,資産の循環,あるいは,財 務の循環が問題になる。前者の資産の循環では,停滞,あるいは,中断が,決済財の運動, あるいは, 販売の担い手(Umsatztra¨ ger )の運動に現われうる。財務の循環では,新し い資本を調達すること,あるいは,信用を返済する,可能性が無くなりうることが問題に なる。両循環が密接に相互に結び付いていることから, 叙述での次の困難が生ずる (Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.449.)。 この点,循環の縮小(Umlaufsschma¨ lerung)の作用があり,積極的と消極的に取り扱 われうる。縮小の原因が研究され,元に戻すか,あるいは,排除される(zuru¨ ckbilden) 時には,取り扱いは積極的である。〈【筆者補足】たとえば, 為替リスクに対してリスク ヘッジをするように〉,経営が,だが発生する,損失を負担する準備をする時には, 消極 的と言われる。またここでも,様々な部分での資産の循環,あるいは,循環が展開される, 様々な条件による財務の循環が,問題になる。縮小が,中断を示唆する程度に,到達され うることは,簡単に洞察されうる。既に以前から長く,縮小はこの方向での脅威を示唆し てきた。ここに再び,以下の叙述で注目されるべき,異常な密接な関連がある(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.449450.)。 最後に,保証(Sicherung)の領域では,中断と縮小に対する方策が,丁度,これら方 策が最も必要である時に, 妨害される, あるいは, 不可能になる, 現象が現われうる。 一般には,他人資本の支援が必要にされる, ケースが問題になる。 ここでは, 信用能力 (Kreditfa¨ higkeit)の保証が問題になる(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.450.)。 α)部分問題:循環の中断に対する保証 i )(逆行と共に)製造価値の循環で
強力な成り行き(Folgen ho¨ herer Gewalt)をここでは完全に無視することは,誤りで あろう。従って,経営はこれらに対して準備をすべきである。とにかく,これらが発生す るケースに対して,代償(Wertersatz)を配慮し,これにより,復興(Wiederaufbau) と継続した営み(Weiterfu¨ hrung)が保証されるべきである(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.450.)。 これには,更に,ストライキとロックアウトによる労働の中断が含まれる。これに係わ るこのようなテーマでは,「労働の」部分で,経営への労働の統合, 経営共同体と, 労働
力の調達について既に述べたことが想い出されるべきである(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.450 u. S.301302.)。 継続した[経営のための]労働(Betriebsarbeit)では,調達と販売の停止,並びに, [経営のための]労働の不完全な準備が, ここで問題にされるような脅威をもたらす。 そ の際,工具,機械と建物の補充( Ersatz )が調達のために考慮される( rechnen )。同様 に,また,適切な労働力についての調整( Einstellung )が〈【筆者補足】考慮される〉。 停止を回避するために, 充分な価値の有り高の質と容量で,合目的な相互の関係が場所 (Ort)と機関(Stelle)で適時にあるべきである。大規模経営は,この目的のために,総 ての事業の時点に対して,予測と正当な容量(Soll- und Richtmenge)と,予測と正当 な時間について,これらを守っている,器官(Organ)への正確な指示により,正確なシ ステムを予め展開する(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.450-451.)。零細な経営では,進歩 的な頭脳の経験に支えられた考慮と,慎重な頭脳の再教育で充分である。しかし,停滞と 中止を回避するのに役に立つ, 容量と時間の関係の像( Bild )が手元にあるべきである (Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.451.)。 ニックリッシュは,1912年の『一般商事経営学』から呈示してきた具体例を,市場状況 と,容量と時間による部門プロセスの調整のために,補足して,再呈示する(Vgl.Nicklisch, H. 1925. S.215217.;Nicklisch, H. 1912. S.158160.)。ここでは,市場のために作業する 製造業(Industrieunternehmung)の工場(Fabrik)に対する工業品在庫(Fabrikatelager) の関係を対象とする。その際,顧客の注文が工場に与えられることは除外されないが,こ こで語られることは,企業の社内取引経営(Eigenhandelsbetrieb)であり,工業品在庫 に対する新しい指令(Bestellung)が行われる時と,指令がどのような大きさであるのか という問題に意義がある。その際,以下の数値が必要である(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.451452.)。 1.容量による取引高(U/月) 2.a)工場経営が,所属の機関の見解に従って,新しい指令されたモノの引き渡しの 開始までに必要とする期間〈【筆者補足】つまり,給付期間( Lieferfrist )〉(F/月)。こ れは,在庫生産と連動しているが,顧客の注文が多かったり,あるいは,少なかったりす る範囲で存在することにより,影響されうる。 b)経営がこの期間の経過後に給付できる,容量〈【筆者補足】つまり,給付容量 (Liefermenge)〉(Q/月)。 3.a)最低で使用されるべき容量(最小有り高〈【筆者補足】つまり, 安全在庫量〉
=M), b)新しい指令に対するシグナルになるべき容量〈【筆者補足】つまり, 命令点で の在庫量〉(N), c)事業が損害を与えるべきでない時に,越えられない,容量(最高有り高=H), d)Mに到達するための期間〈【筆者補足】つまり,Mの補充期間〉(X/月), 4.a)需要が新しい指令により補充される, 期間〈【筆者補足】つまり, 引渡期間〉 (Z/月), b)新しい指令の大きさ〈【筆者補足】製造量〉(B)。 あげられた,若干の大きさは,時間単位は月間で見積もられる。そこで,売上高は月間 売上高と解される(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.452.;Nicklisch, H. 1925. S.215216.; Nicklisch, H. 1912. S.159.)。 M=X・U〈【筆者補足】最小有り高=その補充期間×月間取引高〉である。 有り高N =M+F・U=(F+X)・U〈【筆者補足】命令点での有り高=最小有り高+給付期間× 月間取引高〉である。この有り高は,正常な関係の下では最小有り高が浸食されずに,F 〈【筆者補足】給付期間〉に対して充分である,大きさであるべきである。Q=U〈【筆者 補足】給付容量=月間取引高〉であるべきである。Z〈【筆者補足】引渡期間〉はH〈【筆 者補足】最高有り高〉に従うべきである。 ZをF〈【筆者補足】給付期間〉より長く採る ことは有利である。これは,製造をできる限り可能にするために,特に行われるべきであ る。言われたことに従って, 正常では,B=F・U〈【筆者補足】製造量=給付期間×月 間取引高〉である。Hは,直接的には,Bの給付後に与えられる。つまり,正常な関係の 下では, H=(F+X)・U〈【筆者補足】最高有り高=(給付期間+最小量の補充期間) ×月間取引高〉である。 これは……大きさN〈【筆者補足】命令点での在庫量〉が, 新し い注文が行われるべき,時点を意味することにある。給付が行われる前に,最低点(Tiefpunkt) はX・U〈【筆者補足】最小量の補充期間×月間取引高〉に達する。給付は,有り高を, 再び存在すべき,(F+X)・Uに補充する。〈【筆者補足】ただし〉,Z〈【筆者補足】引渡 期間〉が今までのF〈【筆者補足】給付期間〉より長く選択されるため,F・Uより大き い,注文に移行すれば,後者のF・Uが給付される前に,この内の前者〈【筆者補足】X・ U〉は生ずるべきである。というのは,移行が,そうでなければ,有り高Mが下回られる ことをもたらすからである。 その後では,困難なしに, Z〈【筆者補足】引渡期間〉に等 しい時点で,常に,リズムは繰り返される。規模 H〈【筆者補足】最高有り高〉の意義は, このような状況(Sachlage)では,正常な時点では小さい。異常な関係が起こる(einsetzen)
と,この規模は増える。そこでは,販売は停滞し,[在庫のための]指令(Lagerbestellung) は,工場経営を操業するためにのみ,与えられる。増加する事業過程ではHが常により大 きくされる。このHがN〈【筆者補足】古い命令点〉を上回る。というのは, 注文の時点 での古いNより,M+である,給付でのより大きな補充がより大きくなるからである。こ の場合,Nは上方に〈【筆者補足】増加するという〉結果になるに違いない。 過程は反転 (Umschwung)まで繰り返される。工場経営が継続できることが,ここでは常に前提にさ れる(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.452453.)。 さしあたり,このような問題について,完全に統一的でない専門用語が展開されてきた。 その際,「恒常的な有り高」(eiserner Bestand)という表示がどのような有り高規模に適 用されるべきかが問題になる。規模Nに対して「指令点」( Bestellpunkt )と呼ばれる。 シュマーレンバッハはこの有り高を正常有り高(Normalbestand)と呼んだ。M〈【筆者 補足】最小有り高〉は,ナーラス(Narath, H.:Die Ermittlung des wirtschaftliche gu¨ nstigen Lagerbestandes, des gu¨ nstigsten Zeitpunktes der Nachbestellung und der Gro¨ ße des Reservelagerbestandes, in.ZfB. 1927. )により,準備最低有り高( Reser-vemindestbestand)と呼ばれる。たとえ,実際に「堅固な」(eisern)有り高とみなされ る,有り高はM〈【筆者補足】最小在庫量〉である(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.453.)。 ii )財務の循環 ここには,資本の調達に対する要求と,資本の返済に対する義務に応じられない,あら ゆるケースが属する。決済手段の逆行(Ru¨ cklauf)の上記で言及した中断は,資本の調達 ニックリッシュでは,生産と販売を区分して,生産では在庫生産が行われるという前提下で叙 述されている。しかし,給付期間(F/月)と給付容量(Q/月)が決まっているならば,定期定 量補充が基調となる。そこで,給付容量(Q/月)=月間取引高(U/月)を確保するために,た とえば,月末毎に補充するために,給付期間に合わせた,製造グループ数で給付されるならば (たとえば,以下の図5のように,給付期間が2ヶ月間であるとして, 2 つのグループで給付さ れるならば),月末の有り高が最高有り高(H)となる。個々のグループには,給付期間後に,指 令されるため, 命令点での在庫量(N)は,最高有り高(H)=(F+X)・Uとなる。その時の 製造量(B)=F・U〈【筆者補足】製造量=給付期間×月間取引高〉である。ところで,月間販 売量は月間製造量に一致することが理想であるが,月間販売量が月間製造量を下回れば,売残品 を含めた最低在庫量は増加する。この状況が,a点以降で図示されている。 図5 在庫の有り高の変化(筆者作成)
の要求を惹き起こし,この場では,財務の循環に接合される。財務の循環は,このように して,ここで論議されるべき,中断と停滞に関与する。更に,支払い義務について簡単に 語られるべきである(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.455456.)。 資本の調達と支払い義務が問題になる。前者は,ここでは,第二のモノと密接な関連に ある。すなわち,資本の調達の方針での支払い義務の圧力(Druck)がここでは本質的で ある。このような要求がどのような強さで現れるのかは, 経営の支払い能力(Zahlungs- fa¨ higkeit)がどのような大きさであるのかに依存する(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.456.)。 この問題は,循環の中断と停滞に関係する,あらゆる他の問題より,非常に明瞭に現れ る。支払い能力は,資産の流動性(Liquidita¨ t )の側面に左右される。資産のより大きな 部分が迅速に,かつ,確実に,貨幣性資金(liquides Mittel)に転換される程,この流動 性はより大きい。他の側面では,この貨幣性資金は支払い義務の金額(Ho¨ he)により影響 される。このため,流動性〈【筆者補足】支払い能力の程度(Grad der Liquidita¨ t)〉の表 示はこれら両者の総額の相互の割合である(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.456.)。
更に,算出される比率値(Verha¨ ltnisza¨ hl)の意義にとり,減耗される(benutzen), 資材が本質的である。算出される比率値が決算値(Bilanzzahl)であれば,今や,名目的 な(nominal)支払い能力について語られうる。これが,実際の(effektiv)支払い能力 と比較されるべきである。この実際の支払い能力は, また, 貸借対照表に含まれてない 〈【筆者補足】たとえば,取引価格の値上がりや値下がりの可能性などの〉, 資産部分と支 払い義務を考慮すべきである。 支払い能力にとっては,既に存在するモノと同様に〈【筆 者補足】たとえば, 借入金の返済や社債の償還の請求などの〉, その確定の期間後に短期 に満期になる義務が同様に重要である。支払い能力は,産業での賃金支払い期間を指摘す る必要がある。その他,実際の支払い能力では,〈【筆者補足】たとえば,売掛債権や商品 などの〉,貸借対照表では全く表示を見付けられないが, 個々の所属する資産額の質が重 要である(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.456457.)。 文献では,たった今説明された,支払い能力の問題に対して,粗雑な専門用語( bunte Terminologie)が展開され,レーマン(Lehmann, M. R.)は流動性度(Liquidita¨ tsgrad) を流動性と呼んだ。彼は,資産の流動性に対して,換金可能性(Liquidierbarkeit)と呼 び,これがなければ,資産の特性として,確実に不適当(abwegig)であると認知すべきで あると主張した(Vgl.Lehmann, M. R.:Allgemeine Betriebswirtschaftslehre, 3.Aufl., Wiesbaden 1956.)。レ・クーテレ(Le Coutre, W.)は,流動性度を相対的な流動性(relative Liquidita¨ t),レーマンの換金可能性を絶対的(absolut)と呼ぶ(Vgl.Le Coutre, W.:
Praxis der Bilanzkritik, Band Ⅱ Berlin-Wien 1926.)。名目的な流動性度は,多くの文 献により,決算上の(bilanza¨ ßig ),あるいは,見かけ上( scheinbar )のモノ,実際の ( effektiv )流動性度は,内部の( inner ),あるいは,現実( wirklich )のモノと呼ばれ る。レーマンは,構成上での(konstitutiv)モノと処理上での(dispositiv)モノを区分 する。彼は,前者を,資本調達(Finanzierung)により条件付けられるように,支払い能 力と解する。第二のモノは,販売の変動と経営管理(Betriebsfu¨ hrung )に基づく。この 第二の特別なモノについて,シュマルツ(Schmaltz, K.)は詳細な研究調査を行った(Vgl. Schmaltz, K.:Bilanz und Betriebsanalyse in Amerika, Stuttgart 1927.)。なお,若 干の著者により,支払い準備(Zahlungsbereitschaft)について語られてきた。しかし, このような言葉の意味は, 説明された関連とは相違する。これは, 特定の義務の返済 ( Bezahlung )での支払い能力に先鋭化することを示唆する。また,そこには,支払い自 体の事務上での準備(bu¨ roma¨ ßige Vorbereitung)が含まれている(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.457.)。
貸借対照表の資本側の個々の項目(Posten)は,支払い能力のためのその意義が研究調 査されるべきであるが,受取手形,〈【筆者補足】取引先での〉未回収債権(Kreditoren), 顧客の頭金(Anzahlung der Kundschaft),保証金項目(Delkredereposten),更新勘 定(Erneuerungskonto)と類似した特徴の他の項目での金額,支出の保証のための引当 金,貸し方の担保(Passivhypotheken)と社債,臨時の債務(Eventualverpflichtung), 年金基金,一時的な負債( transitorisches Passiv )と利益である( Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.458.)。受け取り手形(Akzept)の意義は少しの解説を必要とする。〈【筆者補 足】取引先での〉未回収債権( Kreditoren )は上記でまず広く解釈された( nehmen )。 これは,継続的とその他に区分されるべきである。 ……〈【筆者補足】取引先での〉未回 収債権(Kreditoren)はその満期により把握され,報告されるべきである。このような要 求は,貸借対照表では,規則上では(regelma¨ ßig),充されていない(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.458.)。 資産側では,年金基金の資産と同様な資産有り高は問題にはならない。 保証資産 (Gewa¨ hrleistungsvermo¨ gen)は全額で分離されるべきである。譲渡された,あるいは, 抵当に入れられた資産部分は,また,貸借対照表では,このようなモノとして特徴付けら れるべきである。設備は考察されない。これら設備のためにすぐに新しい支出が発生する 限り,これら支出は考慮されるべきである。ここでは,支出の保証のための引当金が想い 出される。半製品はここでは除外される。手元在庫はそれ自体では換金されない。緊急の
場合には,これらが,[経営のための]フォンドの境界の外にまだあり,このため,投機 上での価値として予測されるべきである限り,これらに頼られうる。これは,しかしまた, 売却(Vera¨ ußerung)が簡単で,確実に可能であり,その際,経営の外観(Ansehen)の 損傷(Scha¨ digung)が回避されうる時にのみ妥当する(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.459 460.)。商業と工業の売掛金(Warendebitoren)では,満期日での支払い猶予期間(Frist) が重要である。これについての洞察が与えられるべきである。貸借対照表では,これらは 表示されない。多分,この貸借対照表では,一度も,〈【筆者補足】取引先での〉未払い債 務( Debitoren )と銀行預金は区分されていない。有価証券も,また,これらが上場され ても,全く流動的とはみなせない。その市場は,正常な関係の下でも,一部を除外するこ とを困難にする程,狭く,かつ,不規則である。項目がこの有価証券に継続した参加を統 合するケースに対しては,これはより良く完全に分離されうる。証券の有り高の関連につ いての洞察のみが確実な判定を可能にする。継続した参加はこれには関係はない。手形の 有り高では,個々の手形の品質(Qualita¨ t)〈【筆者補足】たとえば,貸倒リスクや手形割 引率〉が問題になる。この品質は,貸借対照表からは困難にのみ判定されうる(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.460461.)。 ここで前に述べた,考慮に基づいて,決定日に対する貨幣性資金の総額が評価され,算 出される。その際,異なる等級(Ordnung)の流動性が区別される。現金,振替え預金と 銀行預金(Giro- und Bankguthaben)が第一位,手形,有価証券と売掛金(Warendebitoren) が第二位に組み入れられる。 製品が第三位, 原材料が第四位である(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.461.)。
貨幣性資金と債務(Verindlichkeit)の対比により,流動性の程度(Grad der Liquidita¨ t) と,これと共に,支払い能力(Zahlungsfa¨ higkeit)に対する表示(Ausdruck)が算出さ れる。既に上記では,これに対して複数の段階が存在することが指摘された(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.461462.)。……〈【筆者補足】銀行以外の〉事業部門では,最後の先鋭化, すなわち, 短期の負債に対する第一位の貨幣性資金の比率は幾分後退している。 これに 代わって,短期の負債に対する全体の貨幣性資金の比率が幾分より強く強調される (Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.462.)。 支払い能力が共通して頼る,比率(Verha¨ ltnis)は,資産に対する企業家資本と信用資 本の比率〈【筆者補足】つまり, 資産・資本比率〉である。 これは, 文献と実務で最も長 く認識されてきた。また,これは,上記で繰り返して与えられた,レーマンの考慮でも, 明らかである。このような関連をまず強く公式化してきた,功績は, プリンズホーン
(Prinzhorn, K.:Finanzielle Fu¨ hrung kaufma¨ nnischer Gescha¨ fte, Berlin 1902.)に帰 せられる。彼の研究は思考上で厳密に区分された数値で既に作業された( Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.467468.;Nicklisch, H. 1912. S.139.)。 ニックリッシュは,商取引きを4つのケースに分けて,検討する。まず,〈【筆者補足】 信用が与えられたり,受け取られない〉第1のケースでは,総ての自己資本が商品に投入 され,他人資本は要求されない。総ての使用可能な自己資金(eigenes Mittel)は,商品 の取引きによる成果の獲得に向けられる。債務が形成されず,新しい商品が販売された商 品の売上げから支払われるため,支払い能力は完全である。もちろん,期間外の特別に好 都合な購入機会に対しては全く余裕(Spielraum)は残されていない。というのは,企業 は,この場合,それ以上の自己資金は好都合であるが,かなりの支出なしには供給されえ ないからである(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.469.;Nicklisch, H. 1925. S.213.;Nicklisch, H. 1912. S.153.)。 〈【筆者補足】信用が受け取られない〉第2のケースでは,商品の増加のために利用可能 な自己資金が分配されることを示す。信用が維持されるべきである。自己資本の一部が, 〈【筆者補足】相手先での〉未払い債務( Debitoren )の形式を受託させられる。計算され た価格が聞き入れられる時には,この投下資本(Anlage)は全く拙い事業ではない。これ がもたらす金利(Zins)は,銀行が預金に対して提供するモノよりかなり高い。もちろん, これは,このため,このように流動的ではなくて,むしろまた,信頼できる銀行での預金 のように確実ではない。しかし, 商品取引きでは,貸付期限利子〈【筆者補足】いわゆる 売り掛け利子〉(Zielzins)が獲得するより,通常の期間では,より多く儲けられる。成果 獲得力( Ertragskraft )はここでは弱まるように見える( Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.469.;Nicklisch, H. 1925. S.213-214.;Nicklisch, H. 1912. S.153154.)。 第3のケースは,第2のケースと反対のモノを形成する。支払猶予( Ziel )は承認しな いが,しかし,要求する。商品の有り高は自己資金だけではなくて,むしろまた他人資金 も表わす(vorstellen)。成果予測は,ここでは,自己資本に対する関係では,最初の例よ りより大きい。しかし, 支払い能力は,企業が〈【筆者補足】取引先での〉未回収債権 (Kreditoren)を規則的に支払えるか否かに,商品の売却の規則性の程度に依存するため, ワイマール期に,支払い能力について文献上での検討が行われ,自己資本は負担を保証するモ ノとみなして,資本構成比率を重視する姿勢から,支払い能力は資産の拘束期間と資本の利用可 能期間に依存するモノとみなして,資産・資本比率を重視する姿勢に変更された。 ニックリッ シュもこのような主張者の一人と考えられているが,彼は急激な経済恐慌に直面した時には,貸 借対照表の勘定と項目を,資産では換金能力から,負債は利用可能性から再評価すべきであると 主張した(Vgl.Nicklisch, H. 1925. S.171172.)。
不完全である(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.471.;Nicklisch, H. 1925. S.213 u. S.214.; Nicklisch, H. 1912. S.153 u. S.154.)。 〈【筆者補足】同様に信用が与えられ,受け取られる〉第4のケースは,最も好都合なモ ノとして現われる。使用可能な自己資本は,商品事業による成果の獲得のために総て投入 される。信用の承認による取引きの促進は,また,信用が請求されることにより,可能で ある。このため,受け取られるものと,同一の支払い期限を有する信用が与えられるため, 支払い能力は危なくない(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.471.;Nicklisch, H. 1925. S.213 u. S.214.;Nicklisch, H. 1912. S.153 u. S.154.)。 最近〈【筆者補足】1931年頃〉,プリンズホーン(Prinzhorn, K.)の原則に対する異論 が繰り返して申し立てられている。工業では異なるという指摘は簡単に回避される。この ような指摘では,正常な期間では,〈【筆者補足】取引先での〉未回収債権(Kreditoren) より,〈【筆者補足】取引先での〉未払い債務( Debitoren )はより大きいべきである。と いうのは,〈【筆者補足】取引先での〉未払い債務( Debitoren )は完成した生産物に対す る対価を意味し,原材料と補助材料に対する以前の支出のみではなくて,むしろまた,賃 金のための支出も取り戻されるべきであるからである。これによっては,プリンズホーン に反することは何も語られず,むしろ,工業に対する彼の原則の適用では,〈【筆者補足】 取引先での〉未払い債務( Debitoren )により払い戻されるべき,賃金と他の「内部の」 支出が,この払い戻しにより初めて取り戻されることを明らかにする。プリンズホーンで は,銀行信用が,たとえば,季節変動に関連して,どのように編入されるのかと,長期信 用がどのように組み入れられるべきかという問題は重要である。特に,銀行信用によるそ れ〈【筆者補足】短期信用〉が目立っている。 シーズンの準備にとり, 現金によってのみ 販売され,その結果,全く〈【筆者補足】取引先での〉未払い債務(Debitoren)が発生し ない時でも,プリンズホーンの商業資本〈【筆者補足】つまり, 取引先での未回収債権 (Kreditoren)〉の他にも,銀行の信用資本もまた商品の調達のために利用されるべきであ る。……長期の信用では,個々の販売行為による返済(Zuru¨ ckzahlung)の直接的な依存 関係の脅威はないため,プリンズホーンの出発点,つまり,支払い能力の維持は,全く役 この主張は,1912年の『一般商事経営学』から行われてきたが,一定の自己資金を商品取引き に利用できる企業が,信用取引きを導入することにより,収益力と支払い能力にどのような変化 が生ずるのかを4つのケースに区分して説明する。これは,「循環する資産」と資金の源泉の関 係を検討するものであり,売掛債権による信用供与は,貸倒れリスクと共に,販売促進効果をも たらすモノとみなされる。反面,買入債務による信用授受は,自己資金の不足を補足するが,支 払い期限までに,掛買いした商品が換金できなければ,支払い手段を別途に準備しなければなら なくなる。反面,返済期限より早い販売により回収した資金は,資金の転用が可能になる。なお, 支払い能力は,企業や企業集団ベースでの収支計算により判定されるべきモノである。
に立たない。セイデル( Seidel, K.:Das fremde Kapital im Unternehmen, in.ZfB. 1924.)と,彼の後のザンディヒ(Sandig, C.:Das Problem des Fremdkapital, Stuttgart 1929.;Sandig, C.:Die Grenze der wirtschaftlichen Verwertbarkeit des Fremdkapital in der Unternehmung, Stuttgart 1930.)は,関連を完全に否定した(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.471.)。前者は,プリンズホーンが疑わしいとして否定したことを,正に, 信用資本と資産の関係のための前提にすることにより,これを行った。彼は,商品信用の 安全性が商品の販売に依存することにより始めた。このため,新しい信用の採用は,金額 と満期において,商品の前提にされる販売により左右される(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.471472.;Seidel, K., 1924.)。ザンディヒは,信用資本の使用がどのような部分を正当 化するのかをより正確に見付け出すために採用した,資産の関連の研究の成果に,自らの 否定を根拠付けた。その際,短期の信用にとっては,市場の準備ができ,市場での販売予 定の資産部分(marktreifer und -naher Vermo¨ genteil)が最も良く役に立つことを見付 けた。というのは,これらでは,その貨幣価値の返済がすぐに行われるからである。その 他,特に,設備の適性が長期に亙って続く。企業家資本は,より多くのリスクを伴って保 存される,他の資産と対比される(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.471472.;Sandig, C. 1929.)。シュミット(Schmidt, F.:Grundriß der Betriebswirtschaftslehre, Band 2: Die Betriebsverwaltung 1927.)は,まだ,彼が,個人企業には借り方の信用と貸し方の 信用の調節についての傾向が存在するという仮定を主に根拠とした,価値均等(Wertgleichheit) により,プリンズホーンに最も近い。また,彼は,たとえば,価格水準の変化において, 乖離(Abweichung)を与えたように思われる。プリンズホーンの原則の否定に対して, 信用資本と,返済を保証する,資産の間での関係が,また,供与者の見解によれば,存在 することが指摘されるべきである。充足が探されるべき,境界が資産の側でのどこに引か れるか,すなわち,〈【筆者補足】取引先での〉未払い債務( Debitoren )内のみか,ある いは,市場の準備ができ,市場での販売予定の財の内のみかが疑問に思われる。更に,商 品有り高が他者の資金(fremdes Mittel)により保有されるべきである時,普通の短期の 商品信用が,通常では,困難にのみ充たされる(ausreichen)ことが確認されうる。債務 者と債権者が,確実に,その方針が長期に充分に守られている,上昇の景気を予測すると, そうであろう。しかし,だれがこれをできるのか。この場合,シーズンの準備のケースで は,銀行信用のような,他の種類の信用が問題になる。しかし,景気変動の準備のための 信用は,確実には,同様に上手く予測できない(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.472.;Schmidt, F. 1927.)。
流動性の問題に対する活発な関心では, その際, ダイナミックな関連( dynamische Zusammenhang)が問題になるのか否かという問題が提出されることは不思議ではない。 これは様々な機関( Stelle )で起こる。問題は肯定される。根拠付けのために,経営のダ イナミックとの関連と,価値の流れ(Wertstrom)と,経営プロセスの組織による影響が 指摘される(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.473.)。リーガー(Rieger, W.:Einfu¨ hrung in die Privatwirtschaftslehre. Nu¨ rnberg 1928.)は,このような見解を,決算期間によ る資産と資本の関連が変化しない時には,全く流動性問題が存在しないことにより,否定 する。これにより,彼は,この流動性問題は,時点問題でなくて,期間問題であり,正に, これにより,ダイナミックであると考える。このような解釈は同意できない。支払い能力 の問題は,たとえ,これにとり意義のある,将来の総ての現象が考慮されるべきであると しても,むしろ,時点問題である。これは,これら支払い能力が総ての時点に対して与え られるべきであることに,今や,表示されている。しかし,リーガーは,支払い能力が, 経営の存在と,組織上での再展開にとり必要である限り,存在する必要があるという点で は,正しい。彼はこれを以下のように表現する。すなわち,この支払い能力が企業の利益 獲得努力を過程で妨げることは許されない。しかし,この点で, 流動性比率(Liqui- da¨ tsverha¨ ltnis)の特徴は,経営の活動に確固さと確実性(Festigkeit und Sicherheit) を与える,静態的なモノとして存在する。ここで,ダイナミックな問題が提出されるなら ば,必要な程度を上回った,支払い能力の増大は,収益(Erfolg)をもたらしうるべきで ある。しかし,これは現実ではない(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.473.)。 β)部分問題:循環の縮小に対する保証 i )(逆行を含めた)製造財の循環で ここでは,まず,最初の部分問題〈【筆者補足】循環の中断に対する保証〉に対する限 界が更により強く描かれる(ziehen)べきである。これは,また,両者〈【筆者補足】循環 の中断と循環の縮小に対する保証〉の間での関係が更に明らかにされるという意義で共通 している。あそこ〈【筆者補足】生産〉では,停滞と中断の脅威,ここ〈【筆者補足】販売〉 では,循環の縮小(Umlaufsschma¨ lerung)の脅威である。あそこでは,中止(Stockung) 黒字倒産の例を引き出すまでもなく,ニックリッシュの支払い能力の問題は,時点問題である という主張は正しい。しかし,資金の不足を解消するために,資本利益率はもちろん,資産・資 本比率や自己資本比率を一定限度内に維持する,「構造上の流動性」の維持がなければ, 長期的 な将来の流動性の確保は困難であると本稿では考える。また,適切な資産・資本比率や自己資本 比率を維持しておらなければ,資本供与者の信頼が得られないとみなす。
と,これに続く,プロセスの調整,ここでは,循環の停滞を伴わない価値の減少( Wert-minderung)である。ここでは,「減少(Minderung) 」という表示は価値の差異(Wert-differenz)に関係している。これは,2 つの側面から,減少できる。すなわち,完成され た価値の個々の単位に対する原価(Kosten)と必要経費が増大し,売上げ,成果(Ertrag) と利益は減少しうる。縮小を回避する,あるいは,克服するための努力は,両側面を考慮 に入れるべきである。これらのために攻撃点(Angriffspunkt)が創造されることが前提 である。これは,予測値,あるいは,基準値(Soll- oder Richtwert)の作成(Aufstellung) により行われる。以前の期間の業績は,このためには,完全に足りない。ここでは,将来 に対して評価される,予測値が用いられる。というのは,縮小を回避することは,後から はできないからである。この関連は,ここで「縮小」という言葉で考えられているモノに ついて,更に詳細に説明することが必要である。 これは, 既に起こった, 価値の損害 (Werteinbuße)ではなくて,むしろ,威嚇している(drohen),価値の損害と解される。 正確に言えば,ここで問題にするモノは,威嚇されているモノのみである(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.473474.)。ここではまた,縮小の意義は,現在の水準との比較のみではな くて,むしろまた,将来の可能性との比較を示唆する。その見積もりでは,同一の事業部 門の他の自立した経営に対する関係が重要な役割を果たす。しかし,常に,縮小では,静 態的な性質の関係の変更が問題になる。すなわち,価値の縮小による経営の安全性の脅威 が問題になる。〈【筆者補足】たとえば, 自己金融による設備投資が過剰生産になるよう な〉,安全性の限界を上方で超過する,成果(Ertrag)は,その使用が,そこから安全性 への脅威が生ずるように行われうるためにのみ,ここでは,関心がある( Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.474.)。 大規模経営では,内部経営上の決済価格(innerbetrieblicher Verrechnungspreis)の 形式で予測値が,このような関係では,利用される。これは,経営外の決済価格,カルテ ルの決済価格とは区別される。価格(Preis)という名称は,個々の経営の作業場,部門と 機関(Betriebswerk, -abteilung und -stelle)の間で,決済(Verrechnung)を取引き なしで済ませる,市場があると仮定する。しかし,このような仮定は誤りである。現実に 市場がそこには存在しないためだけではなくて,むしろ,とにかく,価格の性格が異なっ ているべきであるためである。決済価格は固定しているべきである。これは,できる限り 長期間に亙りそうであるべきである。この価格が変更されるべきである時には,不承不承 でのみ行われる。このような調整は比較基準としての意義に基づいている。変更は,転換 (Umstellung)のあらゆる計算技術上での困難と,長期に亙って役に立つことの制限を伴
う,このような基礎から他の基礎への移行を意味する。 予測のコントロールは実際にあ り, また,前者の予測が将来を示唆する時には, だが常に, 起こった過去の現実の価値 (ta¨ tsachlicher Wert)から,そのコントロールは行われる。このようにして,予測値と実 際値の双方向でのコントロールが生ずるが,そこでは,後者の実際値は3つの様式で,す なわち,その観察が特に問題になる,不変の実際値,個々の経営の平均値と,事業部門の 平均として,現われる。また,特徴のある数値は実際の資料(Istmaterial)から算定され うる。このような実際の内, 後者の2つは明らかに再び基準値(Normzahl)の意味での 評価値(Meßzahl)として予測の性格(Sollcharakter)を有するのに対して,予測値は最善 値(Bestzahl),あるいは,目標値(Zielzahl)とみなせる。平均は正しい判定を見付ける ための支援(Hilfe)である。最善値は内部経営上での決済価格である。この決済では自然 に経営の状況の統一された像が生ずるべきである時には,この内部経営上での決済価格か らの隔たり(Abstand)は,総てのケースで,決済により同時にもたらされるべきである。 その判定では,この場合,予測値の最高額が一緒に考慮されるべきである(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.474475.)。 隔たりは,この場合,個々の給付,部門,肢体的な経営と全体でのこのようなモノとし て示される。後者の全体での隔たりは,他のモノにより,分解され,説明される(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.475.)。 予測値の問題は, 理論と実践で, 最近10年間〈【筆者補足】1921年から1931年〉では, 常に繰り返して取り扱われた。これら予測値の問題は,その際,基準値,平均値,あるい はまた,特徴のある数値の問題とは分離されなかった。経営経済上での文献は,しかも, 主に,この特徴のある数値と係わった。フンメル(Hummel, O.:Das Rentabilita¨ ts- und Wirtschaftlichkeitsproblem, Stuttgart 1927.)は,完全に統一して,この事情を克服し よう(meistern)とした(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.475.)。以下の解説は,これを更 に展開する,努力についての展望(U bersicht )を与える。 体系的な様式で, このような¨ 過程はまずアメリカ合衆国で始まった。われわれは,これについては,1927年までの期間 に対しては,シュマルツ(Schmaltz, K.:Bilanz - und Betriebsanalyse in Amerika, Stuttgart 1927.)の信頼できる研究を有する(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.475476.)。 アメリカの文献の主要な主張者は,資産の構造で紹介した,ウォール(Wall, A.:Analytical Credits, Indianapolis 1921.),事業期間の必要経費分析をした,ギルマン(Gilman, St.; Analysing Financial Statements, New York 1925.),事業期間の必要経費分析に従事 した,ビリス(Bliss, J.:Financial and Operating Ratios in Management, New York
1923. ),経営上での要素の測定可能性に努力した,ローエ( Roe, J.W.:Measurement of Management, in.Journal of Mechanical Engineering, Vol.45. 1915.)である。更 に,必要経費と景気変動についてのハーバード大学の公開された研究が加わる。この点, ニックリッシュによれば,合衆国の展開は,信用需要者である会社のコントロールでの信 用供与者の困難と,内部で最も確実に,かつ,最高収益(erfolgsrechst)のある組織で経 営をするという根拠を有する(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.476.)。 ドイツでも,第一次世界大戦後に,実践による実際の資料を基準値( Normzahl )に加 工するために,一連の機関が努力した。また,たとえば,国家統計局(Statistisches Rechsamt) と,景気調査のための機関(Institut fu¨ r Konjunkturforschung)がこのような資料を 集めて,公開してきた。経済活動者に自らの状態の判定のためにより多くの確実性を与え ようとしている。そして,貿易経済のための専門委員会(Fachausschuß fu¨ r Handelswirt- schaft)と共同で,ベルリン商科大学の貿易に対する研究機関(Forschungsstelle fu¨ r Han-del an der Berliner HanHan-dels-Hochschule),卸しと小売りの連合(Verba¨ nde des Groß- und Kleinhandels)が基準値としての指導値(Richtzahle)を提供している(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.476477.)。
ニックリッシュは,まず,信用のコントロールの領域で活動した,ウォールの手続きに ついて説明する(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.477479.)。
また,貿易経済のための専門委員会(Fachausschuß fu¨ r Handelswirtschaft),貿易に 対する研究機関(Forschungsstelle fu¨ r Handel),卸しと小売りの連合(Verba¨ nde des Groß- und Kleinhandels)が合同して,貿易のための,標準値(Normzahle)の意味で の指導値( Richtzahle )を得るために, 努力してきた。これらは, ウォールのように, 個々の経営の比率値の数理上での平均ではなくて,むしろ,特徴的な数値を探している。 その際,これらの立場は,信用供与者と信用のコントロールの立場ではなくて,経営の指 導者の立場である。これらが用いる資料は,決算資料ではなくて,むしろ,実践によるア ンケート用紙により, 徴収する。 処理される,領域は,主に,必要経費と売上高の構成 (Aufwands- und Umsatzgestaltung)である(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.477479.)。
この点,ニックリッシュは,機関誌「商業学と商事実践」の1929年に掲載された,1927年 のクリーニング業界(Wa¨ scheeinzehlhandel )のデータを例にして,全体の平均と,最小 規模と最大規模の売上高に対する必要経費の構成を表示した(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.480.)。また,一瞥では,売上高(Umsatz),従業員の人数,立地の住民に対する,単位 当たりの総必要経費が増加するような印象を与える表を呈示するが,これは誤りであると
考える(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.481.)。そして,彼は,売上高ではなくて,正しい 基準,すなわち,必要経費 対 [経営による]給付を算定し,総ての等級でほぼ同じである と主張する(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.482.)。
また,ドイツ機械製造組合(Verein Deutscher Maschinenbaustalten)が熱心に取り 組み(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.482.;VDMA.:Unkostensa¨ tze und Nebenbetriebskos-tensa¨ tze in Maschinenfabriken und verwandte Betrieben als Vergleichsziffern zur Beurtei-lung der Wirtschaftlichkeit. Ausgabe Ⅰ, 1925;Ausgabe Ⅱ, 1927;Ausgabe Ⅲ, 1929.), 経営比較のために, 資本収益性(=特殊な利益÷総稼働資本),回転率(=売上高÷総稼 働資本)と,必要経費係数(=必要経費÷総稼働資本)を,企業別に記載した(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.482484.)。なお,これら分析では,ニックリッシュの「百分率貸借対照表 が,その項目(Posten)を,全体と相互に,必然的に関係付ける。その項目の内,1 つ, あるいは,複数が,総資産,あるいは,総資本のより高い百分率を,今までより要求すれ ば,これは,1 つ,あるいは,複数の他の勘定(Konto)の犠牲で行われる」(Nicklisch, H. 1929/32. S.485 u. Vgl. S.347348.)という見解が強く働いている。〈【筆者補足】ニッ クリッシュは,その代表例として,第6版の『経済的経営学』で1900年から1918年まで記 載した,ベルリンでの電気関連企業(elektrische Unternehmung)での売掛金(Debitoren) と有価証券の構成比率の間での正反対の変動を呈示したが(Vgl.Nicklisch, H. 1925. S.157 Bild 7. ),第7版の『経営経済』では,更に1926年までのデータを追加して,このような 変動が継続されていることを示唆する(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.486 Abb.4.)〉。 ところで,ニックリッシュは,価値の関係での変更を正確に明らかにするために,百分 率貸借対照表の項目での構成比率を時系列で図示する。〈【筆者補足】ただし,1918年から 1923年は金マルクで表示されたため,削除するが(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.488.)〉, 具体的には,初版の『一般商事経営学』からの,〈【筆者補足】1912年から1918年の分析に, 1923年から1929年の補足が行われた〉A.E.G. の借り方側の構成比率(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.488 Abb.6.;Nicklisch, H. 1925. S.154 Bild 4.)では,特に1928年の貸借対照 今日のように,物価や為替の変動が大きい時,構成比率は,絶対額が,維持,あるいは,増大 されても,減少することがありえる(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.485.)。この点,経営,企業 や経済についての最近の分析では,既存のデータと計算ソフトを用いて,相関分析を行うことが 盛んに行われているが,このような分析では,しばしば,既存のデータが上場会社の決算書であ れば,過去値による税務貸借対照表とその補足データであり,たとえば,稼働資本はもちろん, 納税義務基準から実現利益を換算し,秘密準備金を含めた,留保利益を算定するだけでもかなり の困難を伴う。また,たとえば,経営,企業,経済の制度の変更により,データの連続性が失わ れていることが忘却されている。更に,総合値や平均値に基づく相関分析から,個別企業におけ る原因による結果を見極めることが確実にできるのであろうか。
表で,決算規則の変更により,他の電力会社(Elektrizita¨ tsgesellschaft)での参加資本が かなり増加したのに対して,有価証券はほぼ同程度で減少を経験した( Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.490.)。貸し方側の構成比率(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.489 Abb.7.; Nicklisch, H. 1925. S.155 Bild 5.)では,たとえば,第一次世界大戦後と同様に,1925年 から1928年で,他人資本の比率が非常に増加したが(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.489.), 総資本に対する株式資本と準備金の比率は減少した(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.493.)。 また,初版からの,〈【筆者補足】1912年から1918年の分析に,1923年から1929年の補足 が行われた〉Dresdner Bank の借り方側の構成比率(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.492 Abb.9.;Nicklisch, H. 1925. S.163 Bild 10.)では,たとえば,1924年以降,現金と,銀 行での預金が減少したのに対して,手形と未払い債務( Debitoren )〈【筆者補足】銀行以 外の貸付金〉は増加した(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.495.)。貸し方側の構成比率(Vgl. Nicklisch, H. 1929/32. S.494 Abb.10.;Nicklisch, H. 1925. S.164 Bild 11.)では,たと えば,1924年から1928年で銀行に預金された貸付け資金(Kreditoren)〈【筆者補足】つま り,他人資本〉の比率がかなり増加したが,総資本に対する株式資本と準備金の比率は減 少した(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.495.)。なお,Dresdner Bank は,1925年に海外 からの資本調達,1927には,海外活動を活発にしている貿易と工業の部門に対して,保証 金付き事業(Remboursgescha¨ ft)の育成を重視した,事業展開を行った(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.497.)。 なお,ニックリッシュのように,1923年から192 9年をインフレーション期の後(Nachinfla-tionsjahre)と呼ぶことが妥当であるのかは問題にされるべきであるが,ニックリッシュ によれば,「決済価格(Verrechnungspreis)と基準価格(Richtpreis)の手段が,内部 より既により早く,販売の側面から適用されていた。この側面では,保証は売上高を重ず る(gelten)。このための手段は,カルテルへの連合(Zusammmenschluß)と市場支配の 傾向を有する他の構成体である」(Nicklisch, H. 1929/32. S.498.)。前者では,共同体と しての販売( gemeinschaftlicher Verkauf )を有するこのような連合が考えられる。こ れらは,全く,カルテル決済価格とカルテル基準価格を展開した,モノであり,これは, その本質では,内部の予測価格と基準価格とは異なる。決済価格は,ここでは,給付され たカルテルの商品の容量単位に対する傘下会社へのカルテルの販売機関の予測である。し かし,これは,決済で,実際に用いられるべき,予測である。基準価格は,ここでは,カ ルテル機関が競争のない領域で指定された,販売価格に対する基礎である。これは,下方 でのこのような販売価格の限界とみなされる(Vgl.Nicklisch, H. 1929/32. S.498.)。決済