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バングラデシュにおける人的資源管理・開発と技能形成 : 企業票からの分析(下)

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バングラデシュにおける人的資源管理・開発と技能

形成 : 企業票からの分析(下)

著者

内田 智大

雑誌名

研究論集

82

ページ

85-105

発行年

2005-08

URL

http://doi.org/10.18956/00006272

(2)

バ ング ラデ シ ュに お け る人 的資 源 管 理 ・開発 と技 能 形 成

企 業 票 か ら の分 析(下)

内 田 智 大

5.仮 説 の 検 定 (1)第1の 仮 説 の 検 証   第1の 仮 説 は 、 「開発 途 上 国 で あ って も、 長 期 的 な雇 用 に基 づ く内 部 昇 進 制 の導 入 は 労 働 者 の技 能 形 成 に 資 す る可 能 性 が 高 い 」 で あ った 。 そ こで 、 まず 企 業 の 内部 昇 進 制 度 の導 入 に 注 目 す る。 表7は 、 職 位 別 の人 材 の充 足 方 法 を 示 して い る。 こ の結 果 は 、 幾 つ か の興 味 あ る結 果 を 示 して い る。1つ は 、 日系 企 業 が 役 職 付 き の人 材 を 充 足 す る のに あ た って 、 外 部 労 働 市 場 か ら の人 材 の補 充 よ りも 内部 昇 進 に よ る人 材 の充 足 に 重 点 を 置 い て い る こ とで あ る。 日系 企 業 の新 規 労 働 者 の入 り口は 、 通 常 一 般 労 働 職 か ら始 ま って い る。 こ の こ とは 、 従 来 か ら言 わ れ て きた 日本 的 経 営 方 式 が バ ン グ ラ デ シ ュに お い て も導 入 され て い る と言 え る。 内部 昇 進 制 度 の採 用 理 由 と して 、 第1に バ ン グ ラ デ シ ュの教 育 水 準 が 低 い た め に 、 外 部 労 働 市 場 か ら質 の高 い 労 働 力 を 採 用 す る こ とが 困 難 で あ る こ と、 第2に 内部 労 働 市 場 か ら登 用 す る方 が 労 働 者 に 関 す る情 報 も企 業 内で 蓄 積 され て お り、 採 用 ・登 用 の リス クコ ス トが 小 さ くな る こ と、 第3に 日系 企 業 の 業 種 が 現 地 で は ほ とん ど見 られ ない 業 種 で あ るた め に 、 他 の企 業 で の就 業 経 験 が 余 り重 要 で な い こ と等 が 挙 げ られ る。 特 に 、 バ ン グ ラ デ シ ュの よ うに 学 校 教 育 ・職 業 教 育 制 度 が 人 的 資 源 開 発 に 十 分 な役 割 を 果 た して い ない 国 で は 、 企 業 内訓 練 を 通 じて の技 能 形 成 の重 要 性 は 経 営 者 ・ 管 理 者 の間 で 強 く認 識 され て い る。 第2の 注 目す べ き事 と して 、 日系 企 業 の多 くが 一 般 労 働 職 に お い て未 経 験 者 を 採 用 して い る。 日系 企 業 の経 営者 管 理 者 は 異 口 同音 に 、 「就 業 経 験 の ない 未 経 験 労 働 者 の方 が 従 順 で あ り、 職 務 態 度 が 良い こ とに 加 え て 、 新 しい 技 能 を 習 得 しよ うとす る意 欲 が 大 きい 」 と述 べ た 。 日系 企 業2社 は 一 般 労 働 職 の充 足 に 経 験 者 を 主 に 採 用 して い るが 、 そ れ ら の業 種 は 下 着 メ ー カ ー と革 靴 製 造 で あ り、 同 じ業 種 の現 地 系 企 業 で 働 い た 経 験 を 持 って い る労 働 者 を 市 場 か ら容 易 に 調 達 し易 い 状 況 に あ るか らで あ る。 一85一

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  一 方 、 現 地 系 企 業 に 関 して はEPZ内 外 に 関係 な く、 管 理 職 や技 術 職 な どの 企 業組 織 の上 位 に 位 置 す る職 位 の人 材 の充 足 は 内部 昇 進 よ りも外 部 市 場 か ら調 達 す る傾 向が 強 い 。 そ れ に 対 し、 監 督 職 及 び 班 長 職 に 関 して は 内部 昇 進 が 主 な人 材 の充 足 方 法 と して 普 及 して お り、 一 般 労 働 職 の労 働 者 が 班 長 職 、 或 い は 監 督 職 まで 昇 進 で き る制 度 は 存 在 して い る。 特 に 、 監 督 職 に 関 して 内部 昇 進 制 度 を 人 材 の主 な充 足 方 法 と して採 用 して い るEPZ外 現 地 系 企 業 は7割 近 くに も及 ん で お り、 多 くのEPZ外 現 地 系 企 業 の経 営 者 ・管 理 者 は 実 力 とや る気 さえ あ れ ば 、 昇 進 は 可 能 で あ る と述 べ て い た 。 管 理 職 や 監 督 職 な どの 高 い 職 位 に 関 して 、EPZ外 現 地 系 企 業 の 内 部 昇 進 制 度 がEPZ内 現 地 系 企 業 よ りも若 干 浸 透 して い る が 、 これ は前 者 の操 業年 数 の平 均 が 後 者 よ りも5年 ほ ど長 い た め に よ る も ので あ る と推 測 され る。 現 地 系 企 業 で は 、 一 般 労 働 職 の人 材 の充 足 方 法 に 関 して7割 か ら8割 近 くの企 業 が 経 験 者 、 或 い は 未 経 験 者 と の併 用 を 採 用 して い るが 、 これ は 多 くの新 規 労 働 者 が 前 職 と 同 じ業 種 で 働 い て お り、 企 業 は 彼 らを 即 戦 力 と して 活 用 して い るか らで あ る。 表7  職位別の人材の充足方法 (単位:社 、()内 は%) 職位 人材の充足方法 日 系 企 業 (nニ12) EPZ内 現 地 企 業     (nニ21) EPZ外 現 地 系 企 業     (nニ43) 管理職   管理職経験者採用 班長 ・監督職か ら内部昇進   経験者内部昇進併用 3(25) 9(75) 0(0) 10(48) 6(29) 5(24) 17(40) 14(33) 12(28) 技術職   技術職経験者を採用 保全 ・技術員か ら内部昇進   経験者内部昇進併用 2(17) 10(83) 0(0) 12(57) 5(24) 4(19) 27(63) 10(23) 6(14) 監督職     監督職経験者採用 一般労働職 ・班長か ら内部昇進    経験者内部昇進併用 1(10) 9(90) 0(0) 6(29) 9(43) 6(29) 5(12) 29(67) 9(21) 班長職   班長職経験者採用 一般労働職か ら内部昇進  経験者内部昇進併用 1(8) 11(92) 0(0) 3(14) 13(62) 5(24) 12(28) 22(51) 9(21) 一般労働職  就業未経験者採用   就業経験者採用 経験者 ・未経験者併用 10(83) 2(83) 0(0) 6(29) 11(52) 4(19) 10(23) 17(40) 16(37) (出 所)質 問 票 よ り集 計 。 (注)括 弧 内 の 値 は カテ ゴ リー内 総 数 に 対 す る割 合 。   こ の よ うに 、 日系 企 業 と現 地 系 企 業 とい った 所 有 形 態 に よ る普 及 の程 度 の違 い は あ れ 、 一 般 労 働 者 の技 能 形 成 に 資 す る 内部 昇 進 制 度 が 監 督 職 まで 存 在 して い る と言 って も差 し支 え ない 。 しか し、 問 題 は 内部 昇 進 制 度 が 存 在 して い て も、 そ の制 度 を 機 能 させ る要 件 が 整 備 され て い る か ど うか で あ る。 具 体 的 に 言 え ば 、 第1に 一 般 労 働 者 の離職 率 が 低 く、 企 業 内に 長 期 競 争 モ デ ル が 機 能 す る状 況 に あ る こ と、 第2に 内部 昇 進 が 学 歴 な どに 規 定 され ず に 、 昇 進 とい う縦 のキ

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ヤ リアが 伸 び て い る こ とで あ る。 これ ら の要 件 が 満 た され て 初 め て 、 シ ス テ ムそ の も のが 労 働 者 の技 能 形 成 を 促 進 させ る こ とに な る。   内部 昇 進 制 度 が 機 能 す る1つ 目の要 件 と して 、 離 職 率 が 低 い こ とが 挙 げ られ る。 そ こで 、 ま ず 現 地 人 労 働 者 の離 職 状 況 に 注 目す る。 表8は 、 職 位 別 の離 職 状 況 に つ い て の認 識 を 示 して い る。 こ の結 果 を 議 論 す る前 に 、 留 意 して お くべ き こ とが1つ あ る。 離 職 率 を 具 体 的 な数 値 で は な く、 「高 い 」 「低 い 」 「どち らで もな い」 とい った 抽 象 的 な分 類 に よ る回 答 を 求 め た。 そ の理 由 の1つ と して 、 抽 象 的 な分 類 の方 が 企 業 の労 務 管 理 制 度 に 与 え る影 響 の 内実 を 捉 え 易 い と考 え た こ とが 挙 げ られ る。 す なわ ち、 日系 企 業 の回 答 者 に と って 離 職 率 の高 低 を 判 断 す る準 拠 枠 は 日本 の工 場 で 働 い て い る労 働 者 と の比 較 、 そ して 現 地 系 企 業 に と って は 同業 種 の他 社 と の比 較 で あ り、 仮 に 彼 らが 離職 率 を 「高 い 」 と判 断 す る な らば 、 内部 昇 進 制 度 を 初 め と した 適 切 な 労 務 管 理 シ ス テ ムが 機 能 せ ず 、 生 産 体 制 に 何 らか の支 障 を きた して い る こ とを 意 味 す る。 第2 の理 由 と して 、 多 くの経 営 者 ・管 理 者 は 下 位 の職 位 に な るほ ど正 確 な離 職 率 を 把 握 して お らず 、 離 職 率 の状 況 を 彼 ら の主 観 性 に 頼 ら ざ るを 得 ない こ とが あ る。 表8  職位別の離職状況 (単位:社 、()内 は%) 職位 離職状況 日系 企 業 (nニ12) EPZ内 現 地 系 企 業     (nニ21) EPZ外 現 地 系 企 業     (nニ43) 管理職     低 い     高 い どち らで もな い 10(83) 2(17) 0(0) 18(86) 0(0) 3(14) 39(91) 3(7) 1(2) 技術職     低 い     高 い どち らで もな い 9(75) 0(0) 3(25) 17(81) 1(5) 3(14) 31(72) 11(26) 1(2) 監督職     低 い     高 い どち らで もな い 9(90) 1(10) 0(0) 15(71) 4(19) 2(10) 35(81) 5(12) 3(7) 班長職     低 い     高 い どち らで もな い 9(75) 0(0) 3(25) 15(71) 4(19) 2(10) 33(77) 6(14) 4(9) 一般労働職     低 い    高 い どち らで もな い 3(25) 4(33) 5(42) 9(43) 7(33) 5(24) 22(51) 17(40) 4(9) (出 所)質 問 票 に よ り集 計 。 (注)括 弧 内 の 値 は カテ ゴ リー内 総 数 に 対 す る割 合 。   こ の よ うに 、 こ こで 示 した デ ー タ の長 所 と限 界 を 考 慮 した 上 で 現 地 系 企 業 の労 働 者 の離 職 率 に 注 目す れ ば 、 職 位 が 高 くな るに つ れ て 離 職 率 が 「低 い 」 と回 答 して い る企 業 の数 は 多 くな る 傾 向が あ る。 これ は 高 い 職 位 に 就 い て い る従 業 員 ほ ど、 離 職 して 転 職 す る コ ス トと リス クが 大 きい と判 断 して い るか らで あ ろ う。 また 、 日系 企 業 に お い て も役 職 付 き の労 働 者 の離 職 率 は 低 一87一

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い 。 但 し、EPZ外 現 地 系 企 業 の26%の 企 業 は技 術 職 の 離 職 率 に 関 して 「高 い 」 と回答 して お り、 これ は 技 術 職 の人 員 の充 足 に 関 して 外 部 労 働 市 場 が 機 能 して い る こ とを 示 唆 して い る。 表 7の 「人 材 の充 足 方 法 」 で も示 され た よ うに 、 技 術職 に 関 してEPZ外 現 地 系 企 業 の 約63%が 経 験 者 の採 用 を 挙 げ て お り、 そ の職 位 の労 働 者 の企 業 間 移 動 は か な りの程 度 に 上 って い る と推 測 され る。 あ るEPZ外 現 地 系 企 業 の管 理 者 は技 術 職 の離 職 率 が高 い要 因 と して、 「企 業 内、 或 い は 企 業 間 に お い て も技 術 職 の給 与 水 準 の格 差 が 大 き く、 そ れ に 対 して 不 満 を 感 じて い る技 術 者 が 容 易 に 離 職 して しま う」 と指 摘 した 。   一 方 、 一 般 労働 職 の 離職 率 は所 有 形 態 を 問 わ ず 、 「高 い」 と指 摘 した 企 業 が3割 か ら4割 を 占め て い る。 離 職 率 を 「高 い 」 と回 答 した あ る 日系 企 業 の経 営 者 は 、 一 般 労 働 職 と して 入 る新 規 労 働 者 の2∼3割 が1ヶ 月 以 内、6割 は1年 以 内に 辞 め る と答 え た 。 また 、 現 地 系 企 業 で 離 職 率 を 「高 い 」 と回 答 した 企 業 の中 に は 、2週 間 で3割 の労 働 者 が 、1ヶ 月 で5割 以 上 の労 働 者 が 離 職 す る とい うと こ ろ も珍 し くは なか った 。そ の一 方 で 、現 地 系 企 業 で 離 職 率 が 「少 な い」 と回 答 した 企 業 に お い て も、1∼2割 の労 働 者 が1ヶ 月 以 内に 離 職 す る と指 摘 して い た 。 こ の 事 実 か ら も、 現 地 系 企 業 で 「高 い 」 と回 答 した 企 業 だ け で は な く 「低 い 」 と回 答 した 企 業 で も、 そ の離 職 率 が 日本 的 な基 準 か らす れ ば か な り高 い こ とが 推 測 され る。 一 般 労 働 職 の門 戸 の入 り 口は 他 の職 位 に 比 べ る と遥 か に 広 い が 、 同時 に 出 口 も広 く、 多 くの労 働 者 が 内部 昇 進 を 誘 因 と して高 い技 能 を 習 得 す る前 に離 職 して しま う。 あ る 日系 企 業 の管 理 者 は 、 「バ ン グ ラデ シ ュの 一 般 労 働 者 は 労 働 条 件 に 対 して 満 足 しない とす ぐに 他 の企 業 へ 移 るが、 そ の 内 の何 人 か は 他 の 企 業 で の労 働 条 件 に 対 して も満 足 せ ず に 、 また 日系 企 業 に 戻 って くる。 定 着 率 の悪 い 労 働 者 の 賃 金 水 準 は い つ まで た って も上 昇 せ ず に 、 一 般 労 働 職 で の 出入 りを 繰 り返 して い る」 と述 べ た 。   こ の よ うな一 般 労 働 者 の高 い 離職 率 の要 因 と して 、 短 期 利 潤 の確 保 を 試 み る近 視 眼 的 な経 営 戦 略 が 挙 げ られ る。 あ るEPZ外 現 地 系 企 業 の管 理 者 は、 「一 般 労 働 職 で の 出入 りを 繰 り返 して い る労 働 者 の存 在 は 、 企 業 の労 働 コ ス トの上 昇 を 抑 え る点 か ら も貴 重 で あ る。 縫 製 業 の場 合 、 人 件 費 の安 い 非 熟 練 労 働 者 や 末 端 労 働 者 も確 保 す る必 要 が あ る。 また 、 昇 進 ポ ス トの数 に お い て も限 りが あ る こ とか ら、 一 般 労 働 職 で の離 職 率 の高 さは 労 働 費 用 の調 整 弁 と して 重 要 な役 割 を 果 た して い る」 と述 べ た 。 こ の よ うに 、 企 業 も多 くの生 産 労 働 者 を 労 働 市 場 か ら簡 単 に い く らで も調 達 で き る"使 い捨 て 労働 者(disposable  worker)"と して考 え て お り、 労働 者 と の間 に 長 期 的 な雇 用 関 係 を 構 築 しよ うとす る意 図 は 弱 い 。 需 要 の変 動 に 対 応 す る手 段 と して 雇 用 調 整 を 行 い 易 い よ うにpermanent  workerの 増 加 を 抑 え て、 temporary  worker、 apprentice、 casual workerな どの 非 正 規 労 働 力 の ス トッ クを 増 や そ う と して い る。 非 正 規 労働 者 の 占め る 割 合 が 大 き くなれ ば 、 長 期 で 働 い て 技 能 形 成 を 図 ろ うとす る労 働 者 が 減 少 す るだ け で は な く、 正 規 労 働 者 の中 で の競 争 原 理 も機 能 しな くな る恐 れ が あ る。

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を 広 く導 入 して い る。 しか し、 誤 解 して は な ら ない こ とは 労 働 者 が 長 期 的 な雇 用 関 係 を 望 ん で は い る も の の、 長 期 的 な昇 進 制 度 の採 用 を 受 入 れ て い ない こ とで あ る。 小 池(1994)は 長 期 競 争 モ デル 、 す なわ ち長 期 の働 きぶ りで 実 績 を 競 い 、 そ れ に よ って 報 酬 や 昇 進 が 決 ま って くる と い った モ デル が 日本 の労 働 者 の技 能 形 成 を 促 進 して きた と指 摘 した 。 しか し、 日系 企 業 の経 営 者 ・管 理 者 と の面 談 調 査 で 明 らか に な った こ とは 、 働 きぶ りと報 酬 ・昇 進 と の間 隔 が 長 くな る よ うな評 価 制 度 を 導 入 す る こ とは か え って 労 働 者 の労 働 意 欲 を そ ぐこ とに な る とい うこ とで あ った 。 日本 の長 期 競 争 モ デル は 大 勢 の競 争 プ レイ ヤ ーが 存 在 す る場 合 に は 機 能 す るか も しれ な い が 、 企 業 の規 模 が 小 さか った り、 或 い は 企 業 組 織 の中核 を 担 う候 補 者 が す ぐに 絞 られ る場 合 に は、 長 期 の選 抜 制 度 を 採 用 す る価 値 が 低 くな る。 あ る 日系 企 業 の管 理 者 は 、 「生 産 性 を 上 昇 させ るた め に は 労 働 者 間 の競 争 は 不 可 欠 で あ るが 、 成 果 を 処 遇 に す ぐに 反 映 して や ら ない と労 働 意 欲 が 薄 れ る」 と述 べ た 。 こ の よ うに 、 日本 の 内部 昇 進 制 度 の根 幹 で あ る長 期 競 争 モ デル が か え って 労 働 者 の労 働 意 欲 を 失 わ せ 、 ひ い て は 基 幹 労 働 者 の離 職 率 を 高 め て 技 能 形 成 を 妨 げ て しま う恐 れ もあ る。   内部 昇 進 制 度 が 機 能 す る2つ 目の要 件 と して 、 労 働 者 のキ ャ リア形 成 が 学 歴 な どに 規 定 され ず に、 労 働 者 の 能 力 に 応 じて 昇進 ル ー トが 伸 び て い る こ とが 考 え られ る。Nihei(1980)ら は 東 南 ア ジ ア5力 国 に お け る紡 績 工 場 の雇 用 制 度 を 比 較 し、 工 業 化 の水 準 が 低 い 国 ほ ど、 内部 労 働 市 場 を 形 成 す る度 合 い が 高 くな る こ とを 発 見 した 。 経 済 発 展 段 階 が 低 く、 工 業 化 が 緒 に つ い た ば か りの開 発 途 上 国 で は 、 企 業 は 未 熟 練 労 働 者 を 雇 用 す る こ とを 余 儀 な くされ て お り、 企 業 内訓 練 に よ って 技 能 形 成 を 行 って い く以 外 に は 方 法 が ない か らで あ る。 こ の こ とは 確 か に バ ン グ ラ デ シ ュの 日系 企 業 の経 営 者 ・管 理 者 か ら も聞 か れ た こ とで あ るが 、 そ の一 方 で バ ン グ ラ デ シ ュ社 会 の学 歴 偏 重 が 学 歴 に よ る労 働 市 場 の分 断 化 を もた ら して い る こ と も否 定 で き ない 。 更 に 、 労 働 力 を 外 部 労 働 市 場 か ら の調 達 に 依 存 す る場 合 、 職 位 は 学 歴 に よ って 規 定 され る こ とに な る。   表9は 生 産 現 場 労 働 者 の 昇 進 要 素 の重 要 性 を 経 営 者 管 理 者 に1(=全 く重 要 で な い)、2 (=余 り重 要 で な い)、3(=ど ち ら と も言 え な い)、4(=か な り重 要 で あ る)、5(=非 常 に 重 要 で あ る)の5段 階 評 価 して も らい 、 所 有 形 態 別 に 平 均 値 を 測 定 した も ので あ る。 また 、 表10は ウエ ル チ 検 定 を 用 い て 所 有 形 態 間 の格 差 に 関 して の検 定 結 果 を 示 して い る。 こ こで 、 注 目す べ き結 果 は 「学 歴 」 に 関 して 日系 企 業 と現 地 系 企 業 と の間 に 有 意 な差 が 見 られ た こ とで あ る(1%水 準 以 下 で 統 計 的 に有 意)。 これ は 、 日系 企 業 が 昇 進 基 準 と して 「学 歴 」 を現 地 系 企 業 ほ ど重 視 して い ない こ とを 示 して い る。 あ る 日系 企 業 の管 理 者 は 「以 前 、 大 卒 の労 働 者 を 何 人 か 雇 った こ とが あ るが 、 作 業 現 場 に 入 って 仕 事 を す る のを 嫌 が り、1年 以 内に み ん な辞 め て しま っ た」 と述 べ た 。 また 、 別 の 日系 企 業 の管 理 者 は 、 「事 務 職 は 学 歴 も必 要 と され るが 、 生 産 職 に 学 歴 は 全 く関 係 ない 。 バ ン グ ラ デ シ ュの教 育 機 関 は も と も と人 材 育 成 に 関 して の役 割 を 一89一

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果 た して い ない ので 、 学 歴 は 労 働 者 の能 力 を 測 る指 標 と して 全 く当 て に な ら ない 」 と述 べ た 。 但 し、 大 部 分 の 日系 企 業 は 現 地 系 企 業 と違 って 、 一 般 労 働 者 レベ ル で も一 定 の識 字 力 と算 術 能 力 を 要 求 して お り、2社 を 除 く 日系 企 業 が 採 用 予 定 者 に 要 求 す る学 歴 水 準 を 原 則 と して 教 育 歴 通 算 年 数10年 以 上 に 置 い て い る。 表9  生産現場労働者の昇進要素の重要性 日 系 企 業 (nニ12) EPZ内 現 地 系 企 業     (nニ21) EPZ外 現 地 系 企 業     (nニ43) 勤続年数 年齢 学歴 管理者 の評価 3.5 2.9 2.4 4.1 3.2 4.1 3.3 2.8 3.6 4.3 2.8 2.9 3.9 2.2 3.2 4.4 3.4 3.5 会社 の利益 同僚 と の協 力 平均 3.4 3.3 3.4 (出所)質 問票 よ り集計。 表10所 有 形 態 間 の 格 差 の 統 計 量

日系 一EPZ内 現 地 系 日系 一EPZ外 現 地 系 EPZ内 現 地 系 一 EPZ外 現 地 系 勤続年数 年齢 学歴 現地人管理者 の評価   0.46   0.27 -3 .38*** 一 〇 .83   1.11   4.04*** 一1 .31   2.54** 一2 .83*** 一1 .24 -0 .64   2.71** 一1 .74   2.34**   1.20 -0 .06 -1 .70 -2 .12** 会社 の利益 同僚 と の協 力 (注)***、**は それ ぞれ1%、5%の 水 準 で統 計 的 に有 意 で あ る こ とを 示 す 。   一 方 、 現 地 系 企 業 、 特 にEPZ内 現 地 系 企 業 の多 くの経 営者 ・管 理 者 は 「学歴 」 を 昇 進 の基 準 と して重 視 す る と回 答 した。 何 人 か の現 地 系 企 業 の経 営 者 ・管 理 者 は 、 「学 歴 の低 い 労 働 者 が た とえ 高 い 能 力 や 労 働 意 欲 を 持 って い て も、 管 理 者 、 監 督 者 と して 下 の労 働 者 を 管 理 ・指 示 した りす る こ とは 難 しい 。 なぜ な らば 、 バ ン グ ラ デ シ ュで は 学 歴 社 会 や 階 層 社 会 が 色 濃 く存 在 して お り、 低 い 学 歴 保 有 者 が 高 い 学 歴 保 有 者 に 対 し、 統 率 力 や 指 導 力 を 発 揮 しに くい 環 境 に あ るか ら で あ る 」 と述 べ た 。 この こ とは 、 「学 歴 」 を 昇 進 の尺 度 と して 重 要 視 して い な い と答 え た 日系 企 業 の経 営 者 ・管 理 者 か ら も 同 じよ うな意 見 が 聞 か れ た 。   次 に、 学 歴 に よ る実 際 の昇 進 の上 限 を 明 らか にす る た め に 、 「労働 者 の学 歴 別 昇 進 レン ジ」 に 注 目す る。 図2は 所 有 形 態 別 に バ ン グ ラ デ シ ュ人 労 働 者 の学 歴 に よ って 規 定 され る昇 進 キ ャ リアを 示 した も ので あ る。 日系 企 業12社 の 内、2社 は 初 等 教 育 修 了(教 育 歴5年)の 労 働 者 も 採 用 して い る。 そ の2社 の業 種 は1社 が 縫 製 業 、 も う1社 が 船 舶 チ ェー ン の製 造 で あ り、 前 者

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の操 業 年 数 は13年 、 後 者 は8年 で あ る。 初 等 教 育 修 了 以 下 の労 働 者 の昇 進 上 限 は 前 者 で 監 督 職 、 後 者 で班 長 職 ま で伸 び て い る。Secondary  School Certificate(SSC)(中 級 中等 学 校 修 了:教 育 歴10年)の 学 歴 を 持 った 労 働 者 の昇 進 の上 限 は 監 督 職 で あ り、1社 だ け が 管 理 職 まで 伸 び て い る。Higher  Secondary  Certificate(HSC)(上 級 中 等 学 校 修 了:教 育 歴12年)の 学 歴 を 持 っ た 労 働 者 の昇 進 上 限 は ほ とん ど の 日系 企 業 で 管 理 職 まで 伸 び て い る。 高 等 教 育 修 了 者 で も原 則 と して 一 般 労 働 職 か ら入 職 させ る方 針 を 採 って い るが 、 高 等 教 育 を 修 了 した 労 働 者 は 役 職 付 き の現 場 労 働 者 、 或 い は 事 務 職 か らキ ャ リアを ス タ ー トさせ ない と、 定 着 させ る こ とが なか なか 難 しい 。 図2  労働者の学歴別昇進 レンジ 日 系 国 ℃ N 内 現 地 系 国 ℃ N 外 現 地 系 初等教 育修 了以下 SSC修 了 HSC修 了 高等教 育修 了 初等教 育修 了以下 SSC修 了 HSC修 了 高等教 育修 了 初等教 育修 了以下 SSC修 了 HSC修 了 高等教 育修 了 一 般労働 職

班長職 監督職 管 理職

レ レ

(出 所)質 問 票 の 結 果 か ら筆 者 が 作 成 。 (注)実 線 で は 多 数 の 労 働 者 が そ の 職 位 まで 昇 進 して い る こ とを 示 し、 点 線 で は 昇 進 は 可 能 だ が 、 昇 進 して い る労 働 者 は 少 数 で あ る こ とを 意 味 す る。   一 方 、EPZ内 現 地 系 企 業 で は21社 の 内、18社 が初 等 教 育 修 了 以 下 の 学 歴 しか 持 って い ない 労 働 者 も雇 用 して い る。 そ の18社 の 内、5社 が 初 等 教 育 修 了 以 下 の労 働 者 を 班 長 職 に 就 け て い るが 、 残 りの13社 は一 般 労働 職 止 ま りで あ った 。SSC修 了 の労 働 者 で は 監 督 者 ま で キ ャ リア は 伸 び て い る が 、 管 理 職 に 就 い て い る労働 者 は 皆 無 で あ る。HSC修 了 で は管 理 職 まで就 い て い る労 働 者 は6社 で あ るが 、 監 督 職 まで の企 業 が 最 も多 い 。 高 等 教 育 修 了 者 で は 、 多 くの企 業                                  一91一

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が 監 督 職 か らス タ ー トさせ て い る。EPZ外 現 地 系 企 業 で は 、3社 を 除 く39社 が 初 等 教 育 修 了 以 下 の労 働 者 を 採 用 して お り、 そ の39社 の 内、 半 数 の20社 が 班 長 職 まで 、3社 が 監 督 職 まで の 職 位 に 昇進 させ て い る。 また 、SSC修 了 の 労 働 者 に 関 して は42社 が班 長 職 以 上 の職 位 に 昇 進 させ て い る。HSC修 了 の労 働 者 で は 、35社 が 管 理 職 ま で 昇進 させ て お り、 高 等 教 育 修 了 者 で はEPZ内 企 業 と 同様 、 技 術 職 ・監 督 職 な どの役 職 付 きの現 場 労働 職 か らス タ ー トさせ る場 合 が 多 い 。EPZ外 現 地 系 企 業 はEPZ内 現 地 系 企 業 と比 べ る と学 歴 よ りも実 力 に 応 じた 採 用 ・昇 進 制 度 を 導 入 して い る の が窺 わ れ る が 、 これ はEPZ内 現 地 系 企 業 の操 業年 数 が短 い ので 、 高 い 職 位 の労 働 者 の充 足 を 外 部 市 場 に 依 存 せ ざ るを 得 ない 状 況 に あ るか らで あ る と考 え られ る。 い ず れ に せ よ、 現 地 系 企 業 の方 が 総 じて 学 歴 に よ る労 働 市 場 の分 断 化 が 目立 って お り、 こ の こ とは 現 地 系 企 業 が 昇 進 基 準 と して 学 歴 の重 要 性 を 指 摘 して い た 前 の質 問 の回 答 結 果 と も整 合 的 で あ る。 (2)第2の 仮 説 の 検 証   第2の 仮 説 は 、 「労 働 者 の 技 能 水 準 に対 し、 公 正 な人 事 管 理 シス テ ムに よ って金 銭 的 な 報 酬 が 与 え られ れ ば 、 彼 ら の技 能 形 成 を 促 進 す る こ とが で き る」 で あ った 。 小 池(1994、196-197 ペ ー ジ)は 日本 人 労 働 者 の技 能 形 成 が 単 に 企 業 へ の忠 誠 心 とい った 目に 見 え ない 精 神 的 な も の よ って 促 進 され た ので は な く、 技 能 の形 成 ・向上 に 対 す る資 格 給 、 定 期 昇 給 、 査 定(評 価)に よ る昇 給 とい った 金 銭 的 な見 返 りが あ った か ら こそ 、 そ れ が 可 能 に な った と説 明 して い る。 加 え て 、 小 池 は 労 働 者 の縦 のキ ャ リアが 学 歴 に よ って 規 定 され 、 低 い 学 歴 保 有 者 の技 能 向上 意 欲 を 妨 げ る要 因 に な って も、 そ れ を 補 完 す る よ うな人 事 管 理 シ ス テ ムが 整 備 され て い れ ば 、 技 能 形 成 が 促 進 され る こ とを シ ン ガ ポ ール の企 業 事 例 に お い て 示 した 。 こ こで 、 第2の 仮 説 が バ ン グ ラ デ シ ュに お い て も成 立 す るか ど うか を 議 論 す る前 に 、 賃 金 体 系 の概 念 に 関 して 整 理 して お く。   基 本 給 は 資 格 給 、 本 給 、 査 定 に よ る成 績 給 、 年 齢 給 で 決 定 され る。 資 格 給 は 職 能 給 と も呼 ば れ 、 職 務 遂 行 能 力 に 対 す る報 酬 で あ る。 これ は 基 本 給 の昇 給 を 決 定 す る1つ の大 き な要 素 で あ り、 労 働 者 の中 長 期 の技 能 水 準 を 報 酬 に 反 映 させ て い る。 資 格 給 は 仕 事 が 同 じで も、 技 能 が 向 上 す る のに 従 って 上 の資 格 に 昇 格 して 昇 給 して い く。 す なわ ち、 学 歴 に よ って 規 定 され て 労 働 者 の縦 のキ ャ リアが 短 くて も、 或 い は 役 職 の ポ ス トが 不 足 して 昇 進 で き な くて も、 技 能 の 向上 が 見 られ る と、昇 格 に 伴 う金 銭 的 な 報 酬 が 補 償 され る こ とに な る。今 野(1996、46-47ペ ー ジ) は 資 格 給 の長 所 と して 、 第1に 異 な る仕 事 内容 を 共 通 の基 準 で 評 価 し格 付 け す る ので 、 人 事 管 理 の平 等 化 が確 立 され る こ と、 第2に 給 与 が仕 事 と離 れ て安 定 的 に 決 め られ る の で 、変 化 す る 仕 事 に 人 材 を 機 動 的 に 配 置 し易 くな る こ と、 第3に 個 人 の能 力 開 発 努 力 を 促 す 金 銭 的 誘 因 を 含 ん で い る こ とを 挙 げ た 。

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  次 に 、 本 給 は 入 職 時 の初 任 給 と定 期 昇 給 に よ って 決 定 され る。 初 任 給 は 通 常 、 学 歴 、 職 種 、 職 位 、 経 験 、 年 齢 な どに よ って 決 定 され る。 一 方 、 勤 続 年 数 に 従 って 給 料 が 上 が って い く定 期 昇 給 は2つ の要 素 か ら構 成 され て い る。1つ は 年 齢 や 勤 続 年 数 と と もに 自動 的 に 上 が る生 活 給 的 要 素 と、 も う1つ は 労 働 者 の技 能 向上 が 査 定 に よ り昇 給 と して 反 映 され る職 能 的 要 素 で あ る。 こ の定 期 昇 給 の生 活 給 的 要 素 の部 分 が 労 働 者 を 長 期 的 に 働 か せ る誘 因 を 与 え 、 且 つ 職 能 的 要 素 が 労 働 者 に 技 能 の 向上 を 図 らせ るた め の誘 因 を 与 え る こ とに な る。 す なわ ち、 定 期 昇 給 は 労 働 者 が 単 に 長 く働 け ば 昇 給 す る とい うので は な く、 技 能 の 向上 を 通 じて 職 務 遂 行 能 力 を 向上 させ る こ とが 昇 給 の程 度 を 決 定 す る こ とに な る。 査 定 に よ る定 期 昇 給 の職 能 給 と査 定 に よ る成 績 給 の違 い は 、 前 者 が 過 去 の数 字 に 上 積 み され て い くのに 対 し、 後 者 は 一 期 ご とに 評 価 され て い く 点 に あ る。 また 、 年 齢 給 は 技 能 が 全 く影 響 しない 賃 金 要 素 で あ り、 単 に 年 齢 が い くこ とで 、 給 料 は 自動 的 に 上 が る仕 組 み に な って い る。   バ ン グ ラ デ シ ュの企 業 の賃 金 体 系 に 注 目 して み る。 表llは 、 所 有 形 態 別 の賃 金 体 系 を 示 して い る。 これ は 幾 つ か の興 味 あ る結 果 と技 能 形 成 ・向上 に 関 わ る問 題 点 を 示 して い る。   第1に 、 日系 企 業 の1社 を 除 い て バ ン グ ラ デ シ ュの企 業 で は 、 資 格 給 も年 齢 給 も存 在 して い ない 。 これ は 、 基 本 給 の昇 給 率 が 定 期 昇 給 と査 定 に よ る成 績 給 に よ って 決 定 され る こ とを 示 す 。 資 本 の所 有 形 態 やEPZ内 外 を 問 わ ず 、 定 期 昇 給 に 関 して生 活 給 的要 素 よ りも査 定 に よ る職 能 給 要 素 の割 合 を 重 視 し、 個 々 の労 働 者 の昇 給 率 に 差 を つ け て い る企 業 が 大 半 で あ る とい う事 実 を 聞 き取 り調 査 か ら得 た 。 こ の よ うに 、 昇 給 率 を 決 定 す る際 の査 定 の役 割 は 非 常 に 大 きい も の に な って い る。 査 定 とは 労 働 者 の仕 事 ぶ りを 通 して 彼 ら の会 社 に 対 す る寄 与 度 を 評 価 し、 そ れ を 人 事 管 理 に 反 映 させ る こ とで あ るが 、 そ のた め に は 客 観 性 と公 平 性 が 確 保 され る必 要 が あ る。   表12は 、 労 働 者 に 対 す る査 定 の問 題 点 を 所 有 形 態 別 に 示 して い る。 査 定 の問 題 点 と して 最 も 多 く指 摘 され た の が 、 日系 企 業 で は 「職 務 評 価 の標 準 化 が進 ん で い な い 」、 現 地 系 企 業 で は 「客 観 的 デ ー タに 基 づ く評 価 しか で き ない 」 で あ った 。 現 地 系 企 業 の数 十 社 で 評 価 表 を 見 る こ とが で きた が 、 ど の企 業 に お い て も評 価 項 目が 職 務 態 度 や 勤 怠 状 況 とい った も のか ら構 成 され て お り、 労 働 者 の技 能 向上 を 細 か く評 価 して い る企 業 は 全 くなか った 。 こ の よ うに 、 労 働 者 の 技 能 の形 成 ・向上 が 技 能 の昇 格 基 準 表 な どを 通 じて 昇 進 ・昇 給 に 反 映 され る労 務 管 理 は 未 だ 確 立 され て い な い 。 あ る現 地 系 企 業 の経 営 者 は、 「技 能 の昇 格 基 準 表 な どを 作 成 す る と、 労 働 者 が 権 利 意 識 を 高 め て 昇 進 、 昇 給 を 要 求 す る よ うに な る。 企 業 業 績 の変 動 が 大 きい ので 、 作 成 し ない 方 が 人 件 費 の調 整 を し易 い 」 と述 べ た 。   また 、 勤 怠 な ど の客 観 的 な デ ー タに 基 づ く評 価 しか で き ない 理 由 と して 、 現 地 人 の評 価 者 に よ る査 定 能 力 の低 さや 不 透 明 さが 挙 げ られ る。 日系 企 業 に お い て も査 定 を 行 う際 に は 、 現 地 人 管 理 者 や 監 督 者 の意 見 を 参 考 に して い るが 、 従 業 員 間 に 存 在 す る派 閥 関 係 が 公 平 な評 価 を 行 う 障 害 に な って い る。 日本 人 経 営 者 ・管 理 者 の現 地 で の駐 在 期 間 が 短 い 程 、 或 い は 企 業 規 模 が 大 一93一

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き くな るほ ど、 日本 人 経 営 者 ・管 理 者 が 下 層 部 に い る従 業 員 の仕 事 遂 行 能 力 を 適 切 に 判 断 す る こ とは 困 難 に な り、 現 地 人 管 理 者 や 監 督 者 の意 見 に 頼 ら ざ るを 得 ない 。 しか し、 従 業 員 を 評 価 す る際 に 管 理 者 や 監 督 者 の個 人 的 な好 み や 主 観 的 判 断 が 入 る余 地 も大 きい た め 、 公 正 な評 価 が 行 わ れ ない 状 況 が しば しば 起 こ る。 こ の こ とは 、 現 地 系 企 業 に お い て も聞 か れ た 。 小 池(1991、 73-74ペ ー ジ)は こ の よ うな評 価 者 の恣 意 性 を 改 善 す るた め の方 策 と して 、 労 働 者 の技 能 水 準 を 職 場 全 体 の眼 に 晒 す よ うな仕 事 表 の導 入 を 提 案 して い るが 、 バ ン グ ラ デ シ ュの企 業 に お い て 査 定 結 果 の公 表 を 行 って い る企 業 は 皆 無 で あ った 。 表11所 有形態別賃金体系 (単位:社 、()内 は%) 日系 企 業 (nニ12) EPZ内 現 地 系 企 業     (nニ21) EPZ外 現 地 系 企 業     (nニ43) 資格給 有 り 無 し 無回答 1(9) 11(99) 0(0) 0(0) 21(100) 0(0) 0(0) 40(93) 3(7) 年齢給 有 り 無 し 無回答 0(0) 12(100) 0(0) 0(0) 21(100) 0(0) 0(0) 40(93) 3(7) 定期昇給 有 り 無 し 無回答 12(100) 0(0) 0(0) 21(100) 0(0) 0(0) 26(60) 14(33) 3(7) 個人 に対す る 能率給 有 り 無 し 無回答 2(17) 10(83) 0(0) 19(90) 2(10) 0(0) 40(93) 0(0) 3(7) 集 団に対す る 能率給 有 り 無 し 無回答 2(17) 10(83) 0(0) 3(14) 18(86) 0(0) 5(12) 35(81) 3(7) 皆勤手 当 有 り 無 し 無回答 12(100) 0(0) 0(0) 21(100) 0(0) 0(0) 40(93) 0(0) 3(7) 技能手 当 有 り 無 し 無回答 3(25) 9(75) 0(0) 0(0) 21(100) 0(0) 0(0) 40(93) 3(7) 住 宅 、通 勤 、 食 事 の生 活 手 当 有 り 無 し 無回答 12(100) 0(0) 0(0) 21(100) 0(0) 0(0) 6(14) 34(79) 3(7) 賞与 有 り 無 し 無回答 12(100) 0(0) 0(0) 21(100) 0(0) 0(0) 40(93) 0(0) 3(7) 退職積立金 有 り 無 し 無回答 12(100) 0(0) 0(0) 21(100) 0(0) 0(0) 8(19) 32(74) 3(7) (出 所)質 問 票 及 び 面 談 調 査 よ り集 計 。 (注)括 弧 内 の値 は カ テ ゴ リー 内総 数 に対 す る割 合 。

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表12所 有形態別の査定の問題点 (単位:社) 日 系 企 業(nニ12) EPZ内 現 地 系 企 業(nニ21) EPZ外 現 地 系 企 業(nニ43) 職 務 評 価 の 標 準 化 の 困 難      6 客 観 的 デ ー タの み に よ る評 価:3 問 題 な し      3 客 観 的 デ ー タの み に よ る評 価:10 問 題 な し       6 職 務 評 価 の 標 準 化 の 困 難       5 客 観 的 デ ー タの み に よ る評 価:26 職 務 評 価 の 標 準 化 の 困 難      14 問 題 な し       9 (出 所)質 問 票 よ り集 計 。 (注)複 数 回 答 可 能 。   第2の 特 徴 と して 、 能 率 給 を 導 入 して い る 日系 企 業 は 極 め て 少 ない のに 対 し、 大 部 分 の現 地 系 企 業 は 個 人 に 対 す る能 率 給 を 導 入 して い る こ とが 挙 げ られ る。 能 率 給 の長 所 は 労 働 者 に よ っ て 生 産 され た 量 だ け 報 酬 に よ って 反 映 させ 、 労 働 意 欲 を 高 め させ る こ とに あ る。 そ れ は 一 見 仕 事 へ のや る気 を 向上 させ 、 生 産 性 を 上 昇 させ るた め の重 要 な賃 金 体 系 の一 種 に 思 え るが 、 労 働 者 の技 能 形 成 に と って 幾 つ か の不 利 な条 件 を 含 ん で い る。小 池(1994、39-40ペ ー ジ 、211ペ ー ジ)に よ って も指 摘 され て い る よ うに 、 第1の 問 題 点 は 能 率 給 が 出来 高 に よ って 収 入 を 決 定 す る こ とか ら、 労 働 者 が 経 験 の幅 を 広 げ て 技 能 形 成 を 図 ろ うとす る誘 因 が 働 か な くな る。 特 に バ ン グ ラ デ シ ュで は 、 中 長 期 的 な技 能 形 成 を 報 酬 に 反 映 させ る資 格 給 の よ うな賃 金 体 系 が 存 在 し て い ない た め に 、 労 働 者 も短 期 的 に 収 入 が 下 が る 自分 の持 ち場 以 外 へ の移 動 に 消 極 的 に な ら ざ るを 得 ない 。 能 率 給 の第2の 問 題 点 と して 、 そ れ が 労 働 者 の生 産 量 へ の貢 献 を 反 映 して も、 生 産 の質 まで 評 価 で き ない こ とで あ る。 そ れ ゆ え 、 労 働 者 も生 産 量 を 第 一 義 に 考 え 、 製 品 の質 へ の関 心 が ど う して もお ろそ か に な る。 第3の 問 題 点 は 、 そ の賃 金 体 系 の導 入 が 労 働 者 間 の協 調 関 係 を 損 な う恐 れ が あ る。 労 働 者 は 少 しで も時 間 の ロスを 無 くす た め に 、 自分 の仕 事 のみ に 関 心 を 持 つ よ うに な り、 技 能 形 成 の要 件 の1つ で あ る労 働 者 間 の技 能 に 関 す る情 報 資 源 の共 有 化 や 互 換 性 の機 能 が 働 か な くな る懸 念 が あ る。   第3の 特 徴 と して 、 定 期 昇 給 、 住 宅 手 当 、 医 療 手 当 な ど の生 活 手 当 、 現 金 給 与 以 外 の報 酬 で あ る退 職 積 立 金 に 関 して、EPZ内 外 で か な りの違 い が 見 られ る。 これ ら の雇 用 条 件 の違 い は 、 EPZ内 外 の 雇 用 規 則 の策 定 と行 使 の違 い に起 因す る。 EPZ内 企 業 で働 い て い る労働 者 の雇 用 条 件 はBEPZAの 規 則 に よ って か な りの 程 度 ま で遵 守 され て い る の に対 し、 EPZ外 企 業 で は 雇 用 保 障 が 成 文 化 され て い ない か 、 或 い は され て い て も企 業 に よ る恣 意 的 な行 動 を 監 視 す る機 関 が 存 在 して い な い。 この結 果 、 多 くのEPZ外 現 地 系 企 業 は立 地 条 件 に 起 因 す る雇 用 規 則 の 縛 りの違 いを 労 働 費 用 の削 減 手 段 と して活 用 して お り、 そ れ がEPZ外 企 業 で働 い て い る労 働 者 の労 働 意 欲 や 技 能 向上 意 欲 を 損 な う恐 れ が あ る。   これ ま で の賃 金 体 系 に 関 す る議 論 よ り、 バ ン グ ラ デ シ ュで 生 産 活 動 して い る企 業 、 特 に EPZ外 企 業 の賃 金 体 系 に は労 働 者 の 技 能 形 成 を 促進 す る よ うな金 銭 的 誘 因 が 欠 如 して い る こ とが わ か った 。 そ れ ゆ え 、 第2の 仮 説 が 成 立 して お らず 、 バ ン グ ラ デ シ ュの企 業 は 企 業 内養 成 方 式 が 十 分 に 定 着 しに くい 状 況 に あ る と言 え る。 第2の 仮 説 が 成 立 す るた め に は 、 第1に 定 期 一95一

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昇 給 の職 能 給 要 素 や 成 績 給 を 査 定 す る際 の客 観 性 と公 平 性 の確 保 、 第2に 労 働 者 の技 能 形 成 ・ 向上 を 中 長 期 的 に 促 進 す る資 格 給 の存 在 や 仕 事 の難 易 度 に よ って 差 を つ け る技 能 手 当 の整 備 、 第3に 長 期 的 な雇 用 関 係 を 促 進 させ る よ うな法 ・制 度 の導 入 と、 そ れ を 企 業 に 遵 守 させ る よ う な政 府 機 関 に よ る監 視 機 能 の強 化 が 挙 げ られ る。 特 に 、 第2の 点 は 職 務 評 価 の基 準 化 が 困 難 ゆ え に 、 仕 事 内容 の異 な る労 働 者 を 共 通 に 評 価 、 格 付 け で き る資 格 制 度 の存 在 が こ と さ ら意 義 を 持 つ よ うに な る。 八 幡(1999、ll5-ll6ペ ー ジ)が 指 摘 して い る よ うに、 OJTの 効 率 性 を 上 げ るに は そ れ を 無 計 画 に 実 施 す る ので は な く、 技 術 者 や 監 督 者 が 個 々 の労 働 者 の職 務 能 力 を あ らか じめ 仕 事 表 な ど の作 成 を 通 じて 整 理 し、 ど の職 務 が 一 人 前 に で き る よ うに な った か を 定 期 的 に チ ェ ッ ク しなが ら指 導 す る こ とが 重 要 に な って くる。 (3)第3の 仮 説 の 検 証   第3の 仮 説 は 、 「労 働 者 が 職 場 内 の複 数 の職 務 や 関 連 した隣 の職 場 の 職 務 を 経 験 す る こ とは 彼 ら の技 能 の幅 を 広 げ るだ け で は な く、 深 い 技 能 を 習 得 す る こ とに も資 す る」 と設 定 した 。 こ の仮 説 を 検 証 す るた め に 、 企 業 の配 置 転 換 に よ り、 労 働 者 が ど の程 度 まで 移 動 して い るか を 調 べ る必 要 が あ る。 但 し、小池(1994、59ペ ー ジ)が 指 摘 して い る よ うに 、 単 に 配 置 転 換 の有 無 だ け を 聞 い て もそ の移 動 の実 態 は わ か ら ない 。 そ の 内実 を 理 解 す るた め に 、 配 置 転 換 の程 度 を 測 る枠 組 み を設 定 す る必 要 が あ る。 筆 者 が 小 池 の分 析 枠 組 み(1994、159ペ ー ジ)に 少 し修 正 を 加 え て 、 労 働 者 の配 置 転 換 の度 合 い を 見 るた め の枠 組 み を 設 定 す る。 そ の枠 組 み は 、1)生 産 労 働 者 は ほ とん ど1つ の持 ち場 の仕 事 だ け こ な し、 め った に 移 動 しない2)部 門 内 の2∼3 箇 所 程 度 の持 ち場 を 移 動 、3)班 長 単 位 内 の移 動 、4)監 督 者 単 位 内 の移 動 、5)自 分 の部 門 を 越 え て 関 連 の深 い 部 門 の移 動 とい った よ うに5つ に 分 類 され る。 表13 一般労働者の配置転換の程度 (単位:社 、()内 は%) 日系 企 業 (nニ12) EPZ内 現 地 系 企 業     (nニ21) EPZ外 現 地 系 企 業     (nニ43) ほ とん ど移 動 な し 職 場 内 の2∼3の 持 ち 場 を 移 動 班長の単位以内の移動 0(0) 2(17) 6(50) 4(33) 0(0) 10(48) 11(52) 0(0) 0(0) 0(0) 29(67) 14(33) 0(0) 0(0) 0(0) 監督者の単位以内の移動 関連のあ る部門を越えての移動 (出 所)質 問 票 及 び 面 談 調 査 よ り集 計 。 (注)括 弧 内 の 値 は カテ ゴ リー内 総 数 に 対 す る割 合 。   表13は 、 一 般 労 働 者 の配 置 転 換 の程 度 を 示 した も ので あ る。 ア ン ケ ー ト調 査 で は 全 て の 日系 企 業 が 一 般 労 働 者 に 配 置 転 換 を 通 じて 複 数 の持 ち場 を 担 当 させ るだ け で な く、 部 門 を 越 え て の 仕 事 も担 当 させ て い る と回 答 して い た 。 しか し、 聞 き取 り調 査 で そ の 内実 を 確 か め る と、 部 門

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を 越 え て 労 働 者 を 移 動 させ る のは 入 職 時 に 労 働 者 の適 材 適 所 を 見 極 め るた め や 、 緊 急 時 の欠 員 補 充 要 員 と して 移 動 させ るた め で あ り、 全 て の 日系 企 業 は 基 本 的 に 労 働 者 を 同 じ職 場 内 の持 ち 場 に 限 定 し移 動 させ て い た 。 何 れ に せ よ、 労 働 者 に 複 数 の持 ち場 や 異 な る職 場 を 経 験 させ る こ と は 日系 企 業 が現 地 人 従 業 員 の多 能 工 化 を 図 ろ うと して い る意 図 の表 れ で あ る6)。配 置 転 換 を 積 極 的 に 実 施 す る理 由 と して 、 多 くの企 業 が 人 員 の不 足 して い る部 門 や 持 ち場 へ の応 援 を 挙 げ て お り、 労 働 者 の不 意 の退 職 や 欠 勤 へ の対 応 、 需 要 の変 動 に 基 づ く生 産 体 制 の変 化 へ の対 応 、 2004年 以 降 の労 働 組 合 の解 禁 に よ って 予 想 され る労 働 者 の ス トライ キ 活 動 へ の準 備 と して 、 労 働 者 の多 能 工 化 を 急 い で い る。 こ の よ うに 、 日系 企 業 で は 配 置 転 換 が 生 産 現 場 の労 働 構 成 の偏 りを 是 正 し、 企 業 内資 源 の適 正 な配 分 を 図 る こ とに お い て 重 要 な役 割 を 果 た して い る と考 え ら れ る。 また 、 配 置 転 換 を 行 って い る別 の理 由 と して 、 労 働 者 が 他 の持 ち場 や 部 門 を 経 験 す る こ とで 自分 の受 け 持 って い る職 務 の全 体 に 占め る位 置 付 け を よ り理 解 し易 くな る こ と、 職 務 の平 等 主 義 化 や 労 働 者 間 の集 団 主 義 の強 化 を 図 ろ うと して い る こ とが 挙 げ られ る。   一 方 、 現 地 系 企 業 に お い て 同 じ職 場 内 で の 配 置 転 換 を 実 施 して い る企 業 の割 合 はEPZ内 現 地 系 企 業 全 体 で52%、 縫 製 業 だ け に 限 定 す れ ば50%で あ っ た の に 対 し、EPZ外 現 地 系 企 業 で は 約30%に しか 過 ぎ なか った 。 配 置 転 換 を 行 って い る と回 答 した 企 業 で も、 職 場 内 の移 動 は2 ∼3部 門 と非 常 に 限 られ た 範 囲 で の移 動 で あ った 。現地系企業 の人材育成に関す る方針 と して は 、 配 置 転 換 を 通 じて 多 能 工 化 させ る よ りも、 む しろ 同 じ職 場 内 の限 られ た 持 ち場 の職 務 に 特 化 させ て 生 産 性 を 上 げ る とい うや り方 を 導 入 して い る。 企 業 の第 一 義 的 目標 が 量 産 効 果 の増 大 に あ る場 合 、 企 業 は 近 視 眼 的 な経 営 戦 略 を 採 る可 能 性 が 高 くな り、 生 産 効 率 を 一 時 的 に 下 げ る 恐 れ のあ る配 置 転 換 の実 施 に は 消 極 的 に な る。 こ う した 作 業 組 織 の編 成 は 労 働 力 の人 的 資 源 の 質 と も絡 ん で お り、 多 くの現 地 系 企 業 は 技 能 の幅 や 深 さを 追 求 す る よ りも、 む しろ テイ ラ ー ・ フ ォー ド的 管 理 思 想 に 基 づ く作 業 工 程 の徹 底 した 細 分 化 、 分 業 化 、 単 能 工 化 に よ って 生 産 性 の 向上 を 図 ろ うと して い る。 また 、 労 働 者 側 に と って も新 しい 技 能 を 習 得 す る こ とは チ ャ レン ジ で あ り、 配 置 転 換 は 彼 らに あ る意 味 の フ ラ ス トレー シ ョンを 堆 積 させ るだ け で は な く、 企 業 が 配 置 転 換 を 通 じて 多 能 工 を 育 成 しよ うと意 図 して も、 多 くの現 地 系 企 業 で 導 入 され て い る能 率 給 の導 入 が 労 働 者 に 多 能 工 化 を 拒 否 させ る こ とに な る。 更 に 、 彼 ら の企 業 組 織 内で の地 位 や 序 列 を 乱 す よ うな配 置 転 換 に対 す る抵 抗 も生 じ る と考 え られ る。 あ るEPZ内 現 地 系 企 業 の経 営 者 は 、 「EPZへ 進 出 した 当初 、配 置 転 換 を通 じて従 業 員 に 幅 広 い 技 能 を 身 に 付 け させ よ うと試 み た 。 しか し、 従 業 員 が 新 しい 技 能 を 覚 え よ うとす る意 欲 に 欠 け て い た り、 広 範 囲 の技 能 を 習 得 す る こ とに 大 き な負 担 を 感 じた り して 、 企 業 の意 向を 実 現 す る こ とが 難 しか った 。 そ れ ゆ え 、 今 の 目標 は単 能 熟 練 工 の育 成 に置 い て い る」 と述 べ た 。特 にEPZ外 現 地 系 企 業 の5社 に お い て は 、 一 般 労 働 者 の欠 勤 に よ って 労 働 構 成 の変 化 の対 応 が 迫 られ た と きに は 、 「リ リー フマ ン」 と呼 ば れ た 比 較 的 幅 の広 い 技 能 を 習 得 して い る班 長 クラ ス の労 働 者 が 生 産 ライ ンに 入 って そ の 一97一

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変 化 に 対 応 して い る。   今 まで の議 論 か ら、 多 くの現 地 系 企 業 で は 労 働 者 の職 務 が 特 定 の持 ち場 や 部 門 に 限 定 され て い る一 方 で 、 日系 企 業 で は 労 働 者 が 部 門 内 の持 ち場 の移 動 を 通 じ技 能 形 成 を 図 って い る こ とが わ か った 。 そ の結 果 、 日系 企 業 の労 働 者 は 現 地 系 企 業 の労 働 者 に 比 べ て 幅 広 い 技 能 を 習 得 して い る こ とが わ か った 。 しか し、 第3の 仮 説 で は 頻 繁 な職 務 の移 動 が 労 働 者 に 多 能 工 的 と も言 う べ き複 数 の持 ち場 を こ なせ る技 能 を 習 得 させ る と 同時 に 、一般労働者に生産現場 の機械 の異常 や 段 取 りな ど の変 化 に 対 応 で き る深 い 技 能 を も習 得 させ る のに 資 す る と設 定 した 。小 池(1987) は 、 一 般 作 業 な ど の定 常 業 務 だ け で は な く、 技 術 員 や 保 全 工 が 本 来 担 当 す る よ うな職 務 も こ な す こ とが で き る技 能 を 持 って い る一 般 労 働 者 を 知 的 熟 練 労 働 者 と呼 び 、 タイ や マ レー シ アに お け る現 地 系 企 業 の一 般 労 働 者 の約2割 が こ の レベ ル に 達 して い る こ とを 発 見 した 。 本 研 究 で は 一 般 労 働 者 が 深 い 技 能 を 習 得 して い るか ど うか を 検 証 す るた め に、 生 産 現 場 の異 常 や 変 化 に 関 連 した2つ の質 問 を 用 意 した 。 第1の 質 問 は 「製 品 構 成 の変 更 に 際 して 、 そ れ を め ぐる段 取 り 業 務 の補 助 に誰 が 対 応 す る のか 」、 第2の 質 問 は 「日常 的 に起 こ る異 常 が 機 械 に生 じた 場 合 、 主 に 誰 が 対 応 す る のか 」 で 、 現 場 の生 産 性 を 左 右 す る非 定 常 的 な事 態 に 誰 が 主 に 対 処 して い る か を 尋 ね た。 「異 常 の対 応 」 や 「段 取 り業 務 の補 助 」 は表6で 示 した 技 術 ・技 能 水 準 の評 価 枠 組 み に 照 ら し合 わ せ る な らば 、 第2段 階 に 相 当 して い る。 表14 生産現場の変化や異常に対応す る担当者の比較 (単位:社 、()内 は%) 日 系 企 業 (nニ12) EPZ内 現 地 系 企 業     (nニ21) EPZ外 現 地 系 企 業     (nニ43) 日常 レベ ル で 起 こ る 機 械 の 異 常 へ の 対 応 日本 人 管 理 者:2(17) 現 地 人 管 理 者:6(50) 現 地 人 技 術 者:3(25) 監 督 者        1(8) 技 術 者:2(10) 監 督 者:10(48) 班 長     9(43) 技 術 者:4(9) 監 督 者:34(79) 班 長     5(12) 製品構成の変更に伴 う  段取 り業務の補助 日本 人 管 理 者:7(58) 現 地 人 管 理 者:5(42) 管 理 者:20(95) 技 術 者:1(5) 管 理 者:41(95) 技 術 者:1(2) 監 督 者:1(2) (出 所)質 問 票 よ り集 計 。 (注)括 弧 内 の 値 は カテ ゴ リー内 総 数 に 対 す る割 合 。   表14は 、生 産 現 場 の変 化 や 異 常 に 対 応 す る担 当者 の 比較 を 示 して い る。 「異 常 の対 応 」 に 関 して 、 日系 企 業 で は 現 地 人 管 理 者 や 技 術 者 が 主 に 対 応 して い る。 大 部 分 の 日系 企 業 の輸 出市 場 先 が 顧 客 の要 求 水 準 が 高 い 日本 で あ る こ とか ら、 日本 の工 場 と 同 じ レベ ル の設 備 機 械 を 導 入 し て い る企 業 が 多 い 。 そ れ ゆ え 、 多 くの 日系 企 業 で は 設 備 機 械 に 異 常 や 故 障 が 起 きた 時 、 一 般 労 働 者 に は 一 切 そ れ に 触 れ させ ず に 、 監 督 者 を 呼 ぶ よ うに 指 示 して い る。 そ して 監 督 者 が 手 に 負 え ない 時 、 日本 人 や 現 地 人 管 理 者 に 知 らせ る こ とに な って い る。 一 方 、 現 地 系 企 業 に お い て も

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「異 常 の対 応 」 は 主 に 技 術 者 、 監 督 者 、 班 長 とい った 役 職 付 き の従 業 員 に よ って 任 され て お り、 一 般 労 働 者 が そ の問 題 に 対 応 す る企 業 は 皆 無 で あ る 。 す なわ ち、 日系 企 業 及 び 現 地 系 企 業 に お け る一 般 労 働 者 は 定 常 業 務 と非 定 常 業 務 の両 方 を こ なせ る段 階 に は 未 だ 至 って い ない こ とが 窺 わ れ る。 こ の こ とは 「段 取 り業 務 」 で も 同 じで あ り、 資 本 の所 有 形 態 や 企 業 の立 地 地 域 に 関 係 な く、 そ の対 応 が 日本 人 や 現 地 人 管 理 者 ・技 術 者 に よ って 管 轄 され て い る。   これ まで の議 論 よ り、 小 池 に よ って 知 的 熟 練 と呼 ば れ た 深 い 技 能 に 関 して は 、 日系 企 業 の一 般 労 働 者 に お い て も未 だ 定 着 して お らず 、 職 務 の境 界 線 が 職 位 間 で 明確 に 引 か れ た ま まで あ る。 日系 企 業 で は 不 足 部 署 の対 応 と して の配 置 転 換 の利 点 が 議 論 され るが 、 一 般 労 働 者 の技 能 水 準 が 深 い 技 能 とい った 熟 練 幅 の拡 大 に は 至 って い ない 。 そ れ ゆ え 、 第3の 仮 説 は 現 地 系 企 業 に お い て 成 立 して お らず 、 日系 企 業 に お い て も部 分 的 に しか 成 立 して い ない こ とが 示 され た 。   こ こで 最 後 に 、 日系 企 業 の一 般 労 働 者 に 知 的 熟 練 と呼 ば れ た 深 い 技 能 が 形 成 され ない 要 因 を 検 討 した い。 また 、 多 くの現 地 系 企 業 、特 にEPZ外 現 地 系 企 業 が 労働 者 の 技 能形 成 方 式 と し て 、 多 能 工 化 で は な く単 能 工 化 を 導 入 して い る要 因 を 便 益 ・費 用 の観 点 か ら も考 察 して み る。 表15 企業内訓練の問題点 (単位:社) 日系 企 業(nニ12) EPZ内 現 地 系 企 業(nニ21) EPZ外 現 地 系 企 業(nニ43) 技 術 ・技 能 の秘 匿         7 基 本 的知 識 ・技 能 の低 さ:6 訓 練 時 間 の不 足       6 基 本 的知 識 ・技 能 の低 さ:14 訓 練 時 間 の不 足      13 訓 練 効 果 の把 握 の 困難      7 訓 練 時 間 の 不 足      31 訓 練 ス タ ッフの 不 足      20 基 本 的 知 識 ・技 能 の 低 さ:15 予 算 不 足       15 (出 所)質 問 票 よ り集 計 。 (注)複 数 回 答 可 能 。   労 働 者 が 持 ち場 や 職 場 の移 動 を 通 じて 技 能 を 習 得 す る過 程 は 、 企 業 内訓 練 の主 要 な一 方 式 で あ るOJTに 他 な ら ない 。 ほ とん ど の 日系 企 業 の教 育 訓 練 方 法 は 、 OJTに 限 られ て い る。 しか し、 そ もそ も技 能 形 成 の重 要 な方 法 で あ るOJTを 機 能 させ る た め の条 件 が 果 た して バ ン グ ラ デ シ ュに お い て 存 在 して い るか ど うか を 議 論 す る必 要 が あ る。 泉(1993、44-45ペ ー ジ)は 、 OJTが 労 働 者 の技 能 形 成 を 促 進 させ る条 件 の1つ と して 、 先 輩 が仕 事 を 通 じて後 輩 を 指 導 す る互 助 的 な雰 囲 気 が 職 場 に存 在 す る こ とを 挙 げ た7)。本 研 究 で は 、 企 業 がOJTを 中 心 と した 企 業 内訓 練 で ど の よ うな問 題 に 直 面 して い るか を 尋 ね た 。 そ の結 果 が 、 表15で 示 され て い る。 日系 企 業 に よ って 指 摘 され た最 も大 き な問 題 点 は 、 「技 術 ・技 能 の秘 匿 」 で あ る。 上 層 部 に い る現 地 人 労 働 者 は 自分 た ち の技 術 や 技 能 の優 位 性 を 維 持 した い 傾 向が 強 く、 労 働 者 間 の技 術 ・ 技 能 の伝 達 は 簡 単 に は い か ない 。 特 に 、 深 刻 な失 業 問 題 を 抱 え て い るバ ン グ ラ デ シ ュの労 働 構 造 に お い て は 、 比 較 的 労 働 条 件 の 良い 日系 企 業 で 一 度 職 を 失 うと、 そ れ と 同等 以 上 の労 働 条 件 の職 を 見 つ け る こ とは 難 し くな る8)。加 え て、 日系 企 業 の 業 種 が 他 の現 地 系 企 業 で は 見 られ な 一99一

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い こ とか ら、 転 職 して も 日系 企 業 で 習 得 した 技 能 や 経 験 を 他 の企 業 で 活 用 す る こ とが 難 しい 。 また 、 「技 術 ・技 能 の秘 匿 」 の 問 題 は現 場 主 義 の 欠 如 とも絡 ん で い る。 学 歴 の高 い管 理 者 や 技 術 者 が 現 場 に 出た が ら ない こ とは 東 南 ア ジ アを 中 心 とす る多 くの先 行 研 究 に お い て も指 摘 され て い る こ とで あ るが 、 バ ン グ ラ デ シ ュもそ の例 外 で は ない 。 企 業 組 織 の階 層 化 が 管 理 者 や 技 術 者 に 特 権 意 識 を 植 え 付 け て 、 現 場 か ら の情 報 が 吸 い 上 げ られ な くな り、 ひ い て は 新 しい 知 の創 造 が で き な くな る。 こ の よ うに 、 「現 場 主 義 の 欠 如 」 は生 産 部 門 と管 理 部 門 間 の コ ミュ ニ ケ ー シ ョン の希 薄 化 を 引 き起 こ し、 企 業 全 体 の生 産 性 を 低 下 させ る危 惧 が あ る9)。   こ の よ うな問 題 を 回 避 し、 個 人 の技 術 や 技 能 が 組 織 で 共 有 化 され るた め に は 、 個 人 の利 益 と 組 織 の利 益 が 一 致 す る こ とが 必 要 で あ り、 そ れ らを 他 人 に 教 え る こ とが 彼 ら の雇 用 を 脅 か す よ うな こ とに な ら ない よ うな人 事 管 理 シ ス テ ムが 確 立 され る必 要 が あ る。 表9の 昇 進 の評 価 基 準 に お い て も示 され た よ うに 、 日系 企 業 は 「同僚 と の協 力 」 を 最 も重 要 な項 目と して 挙 げ て い る。 技 術 ・技 能 の秘 匿 とい った 問 題 を 解 決 す るた め に は 、 日本 人 経 営 者 ・管 理 者 が 同僚 や 部 下 に 対 す る指 導 を 積 極 的 に 行 って い る従 業 員 を き ちん と した 人 事 考 課 に よ って 評 価 し、 昇 進 ・昇 給 と い った 形 で の物 的 報 酬 に 反 映 させ る こ とが 重 要 で あ る 。 す な わ ち、 「仕 事 が で きる」 だ け で は な く、 「仕 事 が 教 え られ る」 とい う こ と も報 酬 に 反 映 され る よ うな査 定 制 度 を 構 築 す る必 要 が あ る。   また 、 日系 企 業 が 企 業 内訓 練 を 実 施 す る際 の2番 目の 問 題 点 と して、 「基 本 的 知 識 ・技 能 の 低 さ」 を 挙 げ て い る。 小 池(1991、68ペ ー ジ)は 日本 人 労 働 者 が 知 的 熟 練 を 習 得 で きた 要 因 の 1つ と して 、 日本 人 労 働 者 が 最 低9年 程 度 の整 備 され た 学 校 教 育 を 受 け て い た こ とを 挙 げ て い る。 学 校 教 育 の普 及 に よ って 、 労 働 者 は 職 場 で の経 験 を 整 理 で き るた め の基 本 的 、 科 学 的 知 識 を 身 に 付 け る こ とが で き、 そ の結 果 、 彼 らが 作 業 課 題 に 必 要 な動 作 を 瞬 時 に と る こ とが で き る 能 力 の獲 得 に つ なが った と指 摘 して い る。 日系 企 業12社 の 内10社 まで が 新 規 労 働 者 の学 歴 資 格 を 原 則 と してSSC修 了(教 育歴 年 数10年)以 上 に 置 い て い る が、 バ ン グ ラデ シ ュの 量 、 質 と もに 低 水 準 の人 的 資 源 開 発 が 労 働 者 の技 能 形 成 に 必 要 な素 養 を 欠 如 させ て い る と考 え られ る。 何 人 か の 日本 人経 営 者 ・管 理 者 は 、 「バ ン グ ラデ シ ュ人 は 日本人 と比 べ て 器 用 で あ る」 と指 摘 した が 、 同時 に 「基 礎 教 育 の欠 如 が 作 業 改 善 能 力 、 トラ ブル 処 理 能 力 、 判 断 能 力 の低 さ の原 因 に な って い る ので は ない か 」 とい う声 も多 く聞 か れ た 。 こ の意 味 で は 、 企 業 が 労 働 者 の 「基 本 的 知 識 ・技 能 の低 さ」 をOJTに よ って補 完 す るだ け で は な く、QCサ ー クル や講 習 とい った Off-JTに よ る企 業 内訓 練 プ ロ グ ラ ムを 用 意 し、 企 業 負 担 に よ る成 人 教 育 を 受 け させ る よ うな 配 慮 も必 要 に な って くる10)。これ は 日系 企 業 及 び 現 地 系 企 業 に よ って 挙 げ られ て い る 「訓 練 時 間 の不 足 」 の問 題 と も合 わ せ て 、 企 業 が 長 期 的 な人 材 育 成 を 積 極 的 に 策 定 ・実 施 す る必 要 性 を 示 唆 して い る。   EPZ外 現 地 系 企 業 の7割 近 くが 、 そ してEPZ内 現 地 系 企 業 の約5割 が 労 働 者 の技 能 形 成 方

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式 と して 、 多 能 工 化 で は な く単 能 工 化 を 導 入 して い る。 多 能 工 化 の最 も大 き な便 益 は 、 そ れ が 労 働 者 の離職 や 欠 勤 に よ る労 働 構 成 の変 化 に 迅 速 に 対 応 し、 企 業 内資 源 の適 正 な配 分 を 達 成 で き る こ とで あ る。 しか し、 高 い 人 口 の成 長 率 と相 侯 って 大 量 の労 働 力 の ス トッ クを 抱 え て い る 縫 製 業 の労 働 市 場 で は 、 企 業 は 融 通 的 に 労 働 力 を 調 達 で き る。 特 に 、 安 価 で 標 準 的 な製 品 が 大 量 に 生 産 され て い る段 階 で は 、 一 般 労 働 者 に 求 め られ て い る技 能 レベ ル は そ れ ほ ど高 度 な も の で は ない 。 縫 製 業 を 中 心 と した 現 地 系 企 業 は バ ン グ ラ デ シ ュの よ うな買 い 手 有 利 の労 働 市 場 に お い て 、 労 働 者 の離 職 に 伴 う新 規 労 働 者 を 雇 用 す る コ ス トが 多 能 工 と して 育 成 す るた め の コ ス トよ り低 い と判 断 した ので 、 企 業 側 に 多 能 工 を 求 め る誘 因 が 小 さ くな った と推 測 され る。 特 に 、 多 能 工 と して の訓 練 費 用 はOJTを 通 じて行 うに して も、 一 時 的 で あれ 労働 者 の 生産 性 を 低 下 させ る こ とに な る。 ま た 、QCサ ー クル 、 講 習 、 訓 練 セ ンタ ー へ の 派 遣 な どのOff-JTを 実 施 す る場 合 は、 そ れ らの直 接 的 訓 練 費 用 に 加 え て 、 労 働 者 がOff-JTに 参 加 しな け れ ば 逸 失 しな か った で あ ろ う本 来 の生 産 活 動 の寄 与 分 も機 会 費 用 と して 考 慮 す る必 要 が あ り、 多 能 工 化 の シ ス テ ムを 導 入 す る こ とは 企 業 側 に 大 き な コ ス ト負 担 を 強 い る こ とに な る。   現 地 系 企 業 が 多 能 工 化 を 導 入 しなか った 別 の要 因 と して 、 資 本 使 用 的 な技 術 進 歩 で 大 量 生 産 を 行 い 、価 格 競 争 力 を 高 め よ うと した経 営 戦 略 に あ る と考 え られ る。Gerschenkron(1962) が ヨ ー ロ ッパ の工 業 化 の歴 史 か ら結 論 付 け た よ うに 、 工 業 化 の歴 史 が 遅 け れ ば 遅 い ほ ど、 資 本 装 備 率 を 増 加 させ る よ うな資 本 使 用 的 技 術 を 導 入 す る傾 向が 強 い 。 これ は バ ン グ ラ デ シ ュの よ うな初 期 の工 業 化 段 階 に あ る低 開 発 国 に お い て も当 て は ま る こ とで あ り、 縫 製 業 を 中 心 と した 現 地 系 企 業 の多 くが 外 国か ら高 度 な設 備 機 械 を 導 入 し国際 競 争 力 を 高 め よ う と した11)。特 に 、 バ ン グ ラ デ シ ュ政 府 は 政 策 金 融 を 通 じて 輸 出志 向型 現 地 系 企 業 に 対 し低 金 利 の資 金 を 供 与 して い る こ とか ら、 企 業 の資 本 装 備 率 の上 昇 に も拘 わ らず 、 資 本 の調 達 費 用 の上 昇 が 抑 え られ 、 そ の結 果 、 資 本 使 用 的 な技 術 を 導 入 す る誘 因 が 大 き くな った 。 こ の よ うな物 的 資 本 投 資 に よ る高 い 水 準 の利 潤 率 が 企 業 側 に 多 能 工 化 な どを 通 じて 人 的 資 本 投 資 の収 益 率 を 向上 させ よ うとす る 誘 因 を 小 さ く した と推 測 され る。   また 、 多 能 工 化 を 図 るに は あ る程 度 の時 間 を 要 す る こ とか ら、 そ の技 能 形 成 方 式 は 中 長 期 的 な雇 用 関 係 を 前 提 とす る。 しか し、 そ れ は 同時 に 労 務 費 の 固 定 化 を 意 味 す る。 加 え て、EPZ 内 の企 業 が 正 規 労 働 者 と して採 用 した場 合 、BEPZAの 雇 用 規 則 に よ って 定 期 昇 給 、 手 当 、 退 職 金 な どの 労 務 費 の固 定 化 が必 然 的 に起 こる。 そ の た め 、EPZ内 企 業 は 労 務 費 の 固定 コス ト を 回 収 す る方 策 と して 、 多 能 工 化 を 通 じて 質 の 良い 労 働 力 を 内部 で 養 成 ・確 保 しよ うとす る誘 因 が 大 き くな る。 一 方 、 多 くのEPZ外 の企 業 は雇 用 規 則 か らの しば りが 弱 く、 労 働 者 と の長 期 的 雇 用 に 起 因 す る労 務 費 の固 定 化 を 回 避 す る こ とが で き るた め に 、 技 能 形 成 の単 機 能 主 義 を 選 択 す る誘 因 が 大 きか った。 この 結 果 、EPZ内 外 とい う生 産 拠 点 に よ って も技 能 形 成 方 式 の 違 い が 見 られ た と推 測 され る。 一101一

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6.お わ り に   今 や 企 業 は 日系 企 業 や 現 地 系 企 業 と い った資 本 の 所 有 形 態 、EPZ内 外 とい った生 産 拠 点 、 業 種 に 関 係 な く、 国 際 大 競 争 の時 代 に 生 き残 りを か け て 生 産 性 の 向上 や 製 品 の質 の 向上 を 図 ろ うと して い る。 そ の経 営 戦 略 の1つ の手 段 と して 、 人 的 資 源 管 理 ・開 発 制 度 が 高 く位 置 付 け ら れ て い る。 本 稿 で は 、 労 務 管 理 シ ス テ ムや 生 産 管 理 シ ス テ ム とい った 経 営 戦 略 に 関 す る概 念 が 労 働 者 の技 能 形 成 と ど の よ うな関 連 を 持 って い るか を 検 討 して きた 。 こ こで 明 らか に な った こ とは 、 以 下 に 要 約 され る。   第1に 、 第1の 仮 説 で あ る 「開 発 途 上 国 で あ って も、 長 期 雇 用 に 基 づ く内部 昇 進 制 度 の導 入 は 労 働 者 の技 能 形 成 に 資 す る可 能 性 が 高 い 」 に 関 して は 、 資 本 の所 有 形 態 や 職 位 に よ る普 及 の 程 度 の違 い は あ れ 、 内部 昇 進 が バ ン グ ラ デ シ ュの企 業 に お い て 制 度 と して 存 在 して い た 。 しか し、 問 題 は そ の制 度 を 機 能 させ る要 件 が 十 分 に 満 た され て お らず 、 労 働 者 の技 能 形 成 を 促 進 さ せ る こ とに つ なが って い ない こ とで あ る。 特 に 現 地 系 企 業 で は 、 需 要 の変 動 に 対 応 す るた め に 正 規 労 働 者 の数 を で き るだ け 抑 え て 、 短 期 利 潤 の確 保 を 試 み る近 視 眼 的 な経 営 戦 略 が 労 働 者 と の長 期 的 な雇 用 関 係 を 構 築 しに くい 条 件 を 作 って お り、 一 般 労 働 職 の離職 率 を 高 め て い る。 ま た 、 昇 進 のキ ャ リア の伸 び が 学 歴 に よ って 規 定 され て お り、 そ の結 果 、 現 地 系 企 業 で は 高 い 職 位 の人 員 調 達 を 外 部 労 働 市 場 に 依 存 す る こ と も多 く、 縦 のキ ャ リア の伸 び を 誘 因 と した 技 能 形 成 が 制 約 を 受 け て い る。 一 方 、 幾 つ か の 日本 企 業 に お い て は 内部 昇 進 制 度 の根 幹 を な して きた 長 期 競 争 モ デル が 基 幹 労 働 者 の離 職 率 を 高 め 、 ひ い て は 彼 ら の技 能 形 成 の促 進 に 支 障 を きた し て い る。 日系 企 業 は 人 材 の 内部 調 達 を 重 視 し、 一 定 の人 数 の基 幹 工 を 内部 育 成 しよ うと試 み て い るが 、 未 だ そ の仕 組 み を 構 築 す るた め に 努 力 して い る過 程 に あ る。 こ の こ とか らす れ ば 、 現 段 階 で は 現 地 系 企 業 及 び 日系 企 業 の両 方 に お い て 第1の 仮 説 は 部 分 的 に しか 成 立 して お らず 、 特 に 前 者 は 今 後 もそ の仮 説 の成 立 を 難 し くさせ る 内部 環 境 を 後 者 よ りも持 って い る こ とが 示 唆 され る。   第2に 「労 働 者 の技 能 水 準 に 対 し、 公 正 な人 事 管 理 シ ス テ ムに よ って 金 銭 的 な報 酬 が 与 え ら れ れ ば 、 彼 ら の技 能 形 成 を 促 進 す る こ とが で き る」 とい う第2の 仮 説 に 関 して は 、 日系 企 業 及 び 現 地 系 企 業 と も部 分 的 に しか確 認 で き な か った 。EPZ内 で操 業 して い る企 業 は所 有 形 態 に 関 係 な く、 そ の労 務 管 理 制 度 はBEPZAの 雇 用 規 則 に よ って 大 き く規 定 され て く る。 BEPZA は 年 当 た りの 労 働 者 の昇 給 率 を 最 低10%以 上 に 義 務 付 け て お り、 そ の金 銭 的 な 報 酬 制 度 が EPZ内 の 企 業 で 働 い て い る労 働 者 の技 能 形 成 を促 進 させ る誘 因 に な る。 一 方 、 EPZ外 現 地 系 企 業 の大 部 分 の労 働 者 は 労 働 組 合 に 加 入 して い ない た め 、 企 業 側 は レン ト(収 益)を 独 占 して 労 働 分 配 率 の上 昇 を で き るだ け 抑 え よ うとす る誘 因 が 働 く。 企 業 が そ の よ うな モ ラル ハザ ー ド 的 行 動 に 走 る と、 そ れ を 抑 制 す る手 段 を も って い ない 労 働 者 は 必 然 的 に 労 働 意 欲 や 技 能 向上 意

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