第 663 回健康教育講座
「性器脱」苦痛の日々からの脱出
開催日 平成 19 年 7 月 4 日(水) 講 師 三輪レディースクリニック院長 三輪 是 近年の高齢化に伴い老齢化に伴う疾患が増加しています。婦人科領域における性器脱も その一つで、治療をしている患者数は一年間に5万から10万人程度ですが、潜在患者数 は500万人に上ると推定されています。この事は、如何に受診出来なくて悩んでいる人 たちが多いかという事を示しています。 婦人科領域における手術では機能温存、再建の手術は少なく、性器脱にたいする手術は この中に入る重要な手術の一つです。一般的に手術効果は良好で、多くの人が機能を取り 戻して満足されています。サブタイトルを『苦痛の日々からの脱出』としたのは、性器脱 に伴う諸症状で秘かに悩んでいる人たちに少しでも早くこれらの治療を受けてもらい、快 適な日々を取り戻してもらうためです。 性器脱とは、子宮あるいは膣が、膣外に出てくる疾患の総称で、 膣上部が脱出してくると子宮脱となり、前膣壁が脱出してくると膀胱瘤、後膣壁が脱出し てくると直腸瘤、小腸が出てくると小腸瘤とよばれています。 このような症状は、主に骨盤の筋肉や靭帯の衰えが始まる閉経期以後に始まり、特に出 産時の骨盤底筋の損傷が大きい人ほど発症し易いとされています。最近のミシガン大学か らの報告によると、分娩時に肛門挙筋の大きな損傷が認められたものほど性器脱になりや すく、肛門挙筋の損傷の予防と治療を行う事が、性器脱の発生率を減少させるのに重要で あるとしています。 治療対象になるか否かは患者自身の自覚症状で決まり、基本的には日常生活に支障を来 した場合が治療対象となります。 治療方法には保存的療法と手術療法が挙げられますが、手術療法が基本となります。保 存的療法としてはリングペッサリーの挿入が広く行われています。これは、治療用リング を膣腔内に装着して脱出を防ぐ方法で、容易であることより何らかの理由で手術が出来な いような症例に適しています。欠点としては膣腔内に炎症を来しやすいため定期的なリン グの洗浄管理が必要であり、この疾患が高齢者や合併症のある人が多いことより、通院そ のものが負担になることです。手術療法は性器脱の種類、程度、患者の生活習慣、全身状 態によってどの術式を選択するかを決めます。またハイリスクの人が多いので麻酔方法の選択、術中術後の管理も重要な手術要因の一つです。 子宮脱の症例には、基本的には子宮摘出に加え前後の膣壁形成術を行っていますが、症例 によっては子宮を温存し、その支持靭帯を縫縮する術式を選択しています。若い時に子宮 を摘出している症例にも小腸瘤を伴う膣脱を発症することが有ります。これらの症例に対 しては、膣断端と骨盤内の靭帯を縫合する術式を選択しています。 また若い人で、子宮頚管が延長するために子宮下垂と診断される場合が有ります。これは、 膣外に脱出した子宮膣部の損傷のための出血や性交障害を来すことがあるので治療対象に なります。子宮を温存し子宮頚管を短縮する術式が選択されます。 これらの手術を行っても満足できない結果に終わり、再手術を余儀なくされる場合も有り ますが、多くの症例では良好な結果が得られているので早期の受診をお勧めします。 性器脱の予防法は有るのでしょうか? 基本的な原因が骨盤底を支えている骨盤底筋の老化、分娩時の骨盤底筋群の損傷ですので、 個人差があり的確な予防法は無いと考えています。しかしながら、骨盤底筋を鍛えること で性器脱の発症を少しでも遅らせたり、合併症である尿失禁を改善させることは期待出来 るので、症状が出る前の若い時からの骨盤底筋体操をお勧めします。 愛知県医師会 〒460-0008 名古屋市中区栄4-14-28 TEL:052-241-4143