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外来性RNA 分解機構の解明とRNA 医薬への臨床応用<要約>

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Academic year: 2021

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Nagoya City University Academic Repository

学 位 の 種 類 博士 (薬学) 報 告 番 号 甲第1704号 学 位 記 番 号 第350号 氏 名 野木森 拓人 授 与 年 月 日 平成 31 年 3 月 25 日 学位論文の題名 外来性 RNA 分解機構の解明と RNA 医薬への臨床応用 論文審査担当者 主査: 林 秀敏 副査: 星野 真一, 松永 民秀, 白根 道子

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学位論文内容要旨 外来性RNA 分解機構の解明と RNA 医薬への臨床応用 野木森 拓人 【序論】 真核生物において、mRNA 分解は①遺伝子発現制御、②mRNA 品質管理、③生体防 御機構という 3 つの局面で重要な役割を担っている。細胞内 mRNA は通常、翻訳終結

因子複合体eRF1-eRF3 による翻訳終結後、mRNA 3’末端ポリ(A)鎖の分解を開始段階か

つ律速段階として分解される。ポリ(A)鎖分解後、5’キャップ構造の脱キャップ反応を経

て5’-3’方向エキソヌクレアーゼにより mRNA 本体が分解される。一方で、ナンセンス

変異を持つ異常なmRNA は eRF1-eRF3 によるナンセンスコドン上での翻訳終結後、ナ

ンセンス変異介在型mRNA 分解 (Nonsense-mediated mRNA decay; NMD) により急速に

分解される。また、終止コドンを欠失した異常なmRNA に対するノンストップ型 mRNA

分解 (Nonstop decay; NSD) においては、リボソームが mRNA の 3’末端まで翻訳伸長後、 停止する。eRF1-eRF3 と相同な Dom34-Hbs1 が停止したリボソームの A 部位を認識し、 mRNA 分解を開始する。リボソームが翻訳途中にストールする構造をもつ異常な mRNA

に対するリボソーム停滞型mRNA 分解 (No-go decay;

NGD)においても同様に、Dom34-Hbs1 が分解開始に関与している。以上のように、正常、異常を問わず細胞内 mRNA の 分解においては、eRF1-eRF3 様の複合体が mRNA の識別及び分解開始において中心的 役割をはたしている。

一方で、ウイルスやバクテリアなどの病原体感染時には自然免疫系のひとつである 2’-5’-oligoadenylate synthetase (OAS)/RNase L システムがはたらくことが知られている。 OAS は外来から侵入した二本鎖 RNA を認識することで3分子の ATP から 2’-5’オリゴ アデニル酸(2-5A)を合成する。2-5A は不活性型単量体 RNase L を活性型二量体へと構

造を変化させる。活性型RNase L は外来性一本鎖 RNA を選択的に分解し、生成 RNA 断

片がRIG-I を活性化することでインターフェロン産生が亢進し感染が防御される。この

OAS/RNase L システムがどのように外来性ウイルス RNA を内在性 mRNA から区別し

分解しているのかについてはこれまで明らかにされてこなかった。本研究では、mRNA

分解において唯一未解明であった外来性ウイルスRNA の分解機構の全容を解明するこ

とを第一の目的とした。

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薬』の開発が急速に進展してきている。遺伝子治療にはこれまでDNA が用いられてお り、ゲノムへの挿入による遺伝子変異や癌化、ウイルスベクターを使用することによる 感染といった副作用が問題視されてきたが、mRNA 医薬はこのような DNA のもつ副作 用のない安全な薬として注目されている。しかしながら、外来性の人工 mRNA は生体 内において不安定であることが、その臨床応用実現に大きな障壁となっていた。人工 mRNA は、通常 5’末端にキャップ構造、3’末端にはポリ A 鎖を付加し生体内 mRNA を 模倣して合成されるため、生体内 mRNA と同じ分解機構で分解されるという誤った認 識のもと研究が進められてきた背景がある。そのため、RNA 安定化に関する試みはい ずれも良好な結果には至っていない。当研究室では生体内 mRNA の分解機構を解明し てきた背景から、人工 mRNA の分解機構について解析を行った結果、外来性の人工 mRNA は生体内 mRNA と全く異なる分解機構で分解されるという予想外の知見を得た。 本研究では、『mRNA 医薬』として用いる人工 mRNA の分解機構を解明し、その安定化 技術を開発することを第二の目的とした。

ウイルスRNA 及び人工 mRNA はいずれも生体にとって外来性 RNA であり、同様な

分子機構で分解されることを本研究において明らかにした。また、通常のmRNA 分解、

mRNA 品質管理に加え、外来性 mRNA の分解機構においても eRF1-eRF3 様の複合体が

翻訳と共役してmRNA 分解を引き起こすという「mRNA 分解全般に共通する普遍的メ カニズム」を明らかにした。 【本論】 1. 外来性ウイルス RNA を分解する生体防御機構の解明 当研究室ではこれまでに、一本鎖 RNA ウイルスである脳心筋炎ウイルス(EMCV)を モデルウイルスとして用いた解析により、ウイルス複製を制限する因子として Dom34 を新規に同定している(西浦修論, 川島修論)。また、EMCV の複製に関わる 3D ポリメ ラーゼをコードする領域に変異をいれ、複製を起こさないRNA コンストラクトを作製

することで、ウイルスRNA の半減期を測定した結果、Dom34 に依存したウイルス RNA

の分解が見られ、Dom34 が EMCV-RNA の分解にはたらいていることを明らかにしてき

た(西浦修論)。コクサッキーウイルス(CVB1)でも同様に検証したところ、Dom34 及び RNase L に依存した分解が見られ、Dom34, RNase L は RNA ウイルス種によらず広くウ

イルス RNA の分解に機能していることが示唆された。そこで Dom34 がウイルスに特

有な配列を認識していると仮説をたて、EMCV の欠失変異体及び部分的に EGFP 等の

遺伝子に置換したキメラ変異体を作成し、RNA の細胞内半減期を測定した。その結果、

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RNA をすべて EGFP の配列に置換したもの(5xFlag-EGFP) でさえDom34 依存性を示した。そこで、同じ 5xFlag-EGFP の配列をもつプラスミドを細胞に導入しmRNA を発現させ たところ、Dom34 に依存した分解は消失した(Fig.1)。以上 の結果から、Dom34 はウイルスに特有な RNA 配列を認識 しているのではなく、外来性であることを識別してRNA を 分解していることが示唆された。

Dom34 と RNase L はともにウイルス RNA の分解にはたらくことか ら、次に、Dom34 と RNase L との相互作用を解析した。CRISPR/Cas9

システムにより、ゲノム中のRNase L 遺伝子に FLAG タグを付加した

HeLa 細胞を作製し、抗 Flag 抗体による免疫共沈降をおこなった結果、 Dom34 と RNase L との共沈降が観察された(Fig.2)。また、Dom34/RNase L を共にノックダウンした条件下で EMCV の複製効率の変化を測定 したところ、単独ノックダウンと比較して差は見られなかったことか

ら(Fig.3)、Dom34 と RNase L は協同して機能することが示唆された。Dom34 はこれま

で、翻訳に依存して異常なmRNA を認識することが報告されている。外来性 RNA 分解

もDom34 依存性が見られることから、翻訳を引き金として引き起こされることが示唆

される。翻訳阻害剤シクロヘキシミドを添加した際の外来性RNA の半減期を測定した

ところ、有意な安定化が見られた。以上のことから外来性RNA は翻訳に依存した形で

Dom34 に認識され、Dom34 と RNase L の相互作用を介して分解除去されることが示唆 された。RNase L は 2-5A により活性化されることで二量体を形成する。この構造変化 がDom34 との相互作用に影響を与えるか検証するため、二量体を形成できない RNase L 変異体発現ベクターを作成し、免疫共沈降法を用いて Dom34 との相互作用を解析し た。その結果、野生型と比較して二量体形成できないRNase L 変異体では Dom34 との 相互作用が60%減弱した(Fig.4)。また、ショ糖密度勾配遠心法によりポリソーム分画を 行ったところ、活性型の二量体 RNase L がポリソームへと局在化する様子が観察され た。以上の結果から、Dom34 は活性型 RNase L と相 互作用し、翻訳中の外来性RNA へリクルートするこ と で 外 来 性 RNA の分解を 促進すること が明らかとな った。 Control! Dom34! Time (h)! siRNA! !-actin mRNA! 5×Flag-! EGFP! mRNA! pCMV-TO-5×Flag-EGFP! 1! 2! 3! 4! 5! 6! 7! 8! 5.0 ±1.1 ! 4.3±1.0! 0! 3! 6! 9! 0! 3! 6! 9! B! (kb)! Control! Dom34! 5×Flag-EGFP mRNA! 1.0! 1.5! 1! 2! 3! 4! 5! 6! 7! 8! lane! t1/2 (h)! 1.9 ±0.3 ! 3.8±0.4*! 0! 1! 2! 3! 0! 1! 2! 3! A!

Fig.1 (A) Northern blot RNA

(B) Northern blot mRNA

Input! (2%)! FLAG-! IP! Dom34! (WB:anti-Dom34)! 5×Flag-RNase L! RNase L! (WB:anti-RNase L)! GAPDH! (WB:anti-GAPDH)! HeLa ! HeLa/5 × F la g -R N a se L ! HeLa ! HeLa/5 × F la g -R N a se L ! 47! 87! 33! 1! 2! 3! 4! Fig.2 Dom34 RNase L 5×Flag-RNase L" wt/Y312A" − 5×Flag-" RNase L IP RNaseA + − 59 (WB: anti-Myc) (WB: anti-Flag) − 83 − 47 + + + a n ti -F la g a n ti -F la g a n ti -F la g − − − wt + + 5×Myc-Dom34" Y3 1 2 A 5×Myc-Dom34 − wt Y31 2 A 3×dilution 1" 2" 3" 4" 5" 6" (kDa)"

Fig.4 Dom34 RNase L

(Y312A) Control! Dom34! Time (h)! siRNA! !-actin mRNA! EMCV! RNA! RNase L! Dom34! RNase L! 4! 5! 6! 7! EMCV (MOI = 1)! 4! 5! 6! 7! 4! 5! 6! 7! 4! 5! 6! 7! (kb)! 2.0! 1.5! 8.0! 10.0! 1! 2! 3! 4! 5! 6! 7! 8! 9!10!11!12! 13!14!15!16! lane!

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2. RNA 医薬の安定化及び高効率発現系の確立

ウイルスRNA の分解機構の研究と並行して、mRNA 医薬として用いる人工 mRNA の

分解についても解析を行った。上述の通り、ウイルスRNA 分解の解析から、偶然にも

人工 mRNA がウイルス RNA と同様、Dom34-RNase L 複合体によって分解されている

ことが明らかにしている。RNase L の上流因子として OAS が機能していることから、

人工mRNA 分解への OAS の関与を解析した。OAS ファミリーは OAS1, OAS2, OAS3,

OASL の 4 種で構成されており、長鎖の RNA に対しては OAS3 が優先的に機能してい るという報告がある。そこで、OAS3 ノックダウン下での外来性 RNA の半減期を測定 した。OAS3 と Dom34 はいずれも単独でノックダウンした場合において、半減期の延 長が観察された。一方で、OAS3 と Dom34 ダブルノックダウン条件においては更なる

延長は観察されなかった。以上のことから、OAS3 は Dom34-RNase L による外来性 RNA

分解の上流において機能することが示唆された。以上のことから、人工 mRNA は、 OAS3/RNase L と Dom34 によって分解され、これらの因子を標的として阻害すること により、人工 mRNA を細胞内において安定化しその発現量を亢進することが可能とな った。 また、mRNA 医薬のみならず、miRNA 医薬の安定性制御を目的にその分解機構の解明 を試みた。その結果、化学合成したmiRNA についても細胞内で OAS/RNase L システム により分解されることを見出しており、miRNA を用いた治療においても OAS/RNase L を阻害することで治療効果の増大が期待される。 【総括】 1. 外来性ウイルス RNA を分解する生体防御機構の解明(Fig.8) OAS/RNase L 系は 1970 年代に自然免疫機構の一種として発見されて以来、多くの研 究が進められてきたが、ウイルス RNA の識別をはじめとする分解 機構の詳細については不明であ った。本研究では、RNA ウイルス 複 製 を 制 限 す る 因 子 と し て Dom34 を新規に同定することに 成功し、ウイルス RNA をはじめ とした外来性 RNA の分解機構の 全 容 を 解 明 し た 。(i) 外 来 性

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とオリゴアデニル酸合成酵素OAS3 が活性化し、(ii) ATP を基質にしてこれを重合した 2-5A という化合物を合成する。(iii) この 2-5A が RNA 分解酵素 RNase L を不活性な単 量体から活性型の二量体へと変換する。(vi) その一方で、外来 mRNA は細胞内におい てリボソームによって翻訳をうけるが、外来 mRNA 上でリボソームが停止し、(iv) こ の停止したリボソームを識別してDom34 が会合して、ここに活性型 RNase L を呼び込 むことで、(v) 外来 mRNA が急速に分解される。今回明らかにした分解機構は RNA ウ イルス種に依らず、外来から侵入したRNA を普遍的に除去していることから、生体防 御機構において重要な役割を担っていると考えられる。 2. RNA 医薬の安定化及び高効率発現系の確立

人工合成 mRNA もまた、外部から侵入した RNA であり、ウイルス RNA と同様に

Dom34-RNase L による外来性 RNA 分解機構によって分解されることを明らかにした。 OAS3 をはじめとする分解因子を阻害することにより、人工合成 mRNA の安定化を実 現した。これまで mRNA 医薬はその不安定性のため臨床応用が困難であったが、本研 究によりmRNA 医薬の細胞内安定化が可能となった。本研究において開発した mRNA 安定化技術は、mRNA 医薬による遺伝子治療のみならず、①ウイルス疾患の治療、②癌 免疫療法、③iPS 細胞の作成、④疾患原因因子の補充療法など広範な臨床応用に適応さ れることが期待される。mRNA 医薬の分解に関わる因子を高効率に阻害する阻害剤の 開発が今後の研究課題である。 【基礎となる報文】

1. Takuto Nogimori, Kyutatsu Nishiura, Sho Kawashima, Takahiro Nagai, Yuka Oishi, Nao Hosoda, Hiroaki Imataka, Yoshiaki Kitamura, Yukio Kitade, Shin-ichi Hoshino

Dom34 mediates targeting of exogenous RNA in the antiviral OAS/RNase L pathway.

Nucleic Acids Research, 2019, Vol. 47, 432-449.

2. Takuto Nogimori, Nao Hosoda, Shin-ichi Hoshino

Stabilization and efficient expression of exogenous synthetic mRNA.

Manuscript in preparation

3. Takuto Nogimori, Kazuya Furutachi, Koichi Ogami, Shin-ichi Hoshino OAS/RNase L system degrades exogenous miRNA.

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【特許等】

1. 人工合成 mRNA の発現を効率化する技術 発明者: 星野 真一、細田 直、野木森 拓人

参照

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