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光技術を援用するミリ波・テラヘルツ帯レーダ・イメージング技術

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招待論文

光技術を援用するミリ波・テラヘルツ帯レーダ・イメージング技術

菅野

敦史

関根

徳彦

††

笠松

章史

††

山本

直克

川西

哲也

†,†††

Millimeter- and Terahertz-Wave Imaging Technology Enabled by Photonics

Atsushi KANNO

, Norihiko SEKINE

††

, Akifumi KASAMATSU

††

,

Naokatsu YAMAMOTO

, and Tetsuya KAWANISHI

†,†††

あらまし 光変調技術による広帯域周波数逓倍技術を実現し,それを用いたミリ波帯・テラヘルツ帯レーダの 原理実証を行った.光変調による光周波数コム信号を利用することで,マイクロ波帯から300 GHz テラヘルツ 帯信号への周波数変換が可能となった.また,光周波数逓倍によるミリ波信号放射を利用したレーダ及び透過・ 反射イメージング技術の原理実証を行い,光分配による取得像の高度化可能性を示した. キーワード 光変調,ミリ波,テラヘルツ,レーダ,非破壊イメージング

1.

ま え が き

非接触で物体情報を得るセンシング技術は,一般生

活のバックエンド領域で使用されるものから,一般消

費者の目に触れられる領域へと技術ステージが変わり

つつある.例えば,自動車用衝突防止システムでは光

学カメラによるものから,電磁波を利用したレーダ技

術まで既に実用化・実装が進んでおり,非接触での測

距・物体情報の検知がなされている

[1]

[3]

.一般に,

レーダ技術においては,その測距分解能は利用する電

波の周波数帯域幅に依存するため,高精度な測距には

広帯域の電波が欠かせず,広帯域が得やすい高周波電

波の利用が進んでいる.加えて,検知可能な物体サイ

ズは電波の波長に依存するため,小さいターゲットま

での距離を高精度で測距するにはミリ波やテラヘルツ

波の利用が必要不可欠である.実際,

2000

年にシャル

ル・ド・ゴール空港で発生したコンコルド墜落事故は,

国立研究開発法人情報通信研究機構ネットワークシステム研究所, 小金井市

Network System Research Institute, National Institute of In-formation and Communications Technology, 4–2–1 Nukui-kitamachi, Koganei-shi, 184–8795 Japan

††国立研究開発法人情報通信研究機構未来ICT研究所,小金井市 Advanced ICT Research Institute, National Institute of In-formation and Communications Technology, 4–2–1 Nukui-kitamachi, Koganei-shi, 184–8795 Japan

†††早稲田大学理工学術院,東京都

Faculty of Science and Engineering, Waseda University, 3– 4–1 Ohkubo, Sinjuku-ku, Tokyo, 169–0072 Japan

前の旅客機から脱落した幅数

cm

の金属片により引き

起こされていることから,空港滑走路における異物探

知レーダシステムには数

cm

程度の物体の検知能力が

必要とされている

[4]

.そのため,

90 GHz

等のミリ波

帯を利用する異物検知レーダ技術の研究開発・実証試

験が進んでいるが,更なる高精度化を行うにはテラヘ

ルツ帯への周波数向上により実現可能であると考えら

れる

[5]

[8]

一方,非接触センシング技術として物体内部を非破

壊で検査する非破壊イメージング技術も重要である.

空港等における保安検査・手荷物検査では

X

線など

の透過力の高い光を用いたものが普及している.ロジ

スティックセンターにおいては隠蔽された内容物を破

壊すること無く確認する手段が安全・安心の実現のた

めにも急務であるものの,

X

線そのもの高エネルギー

性による損傷

(

例えば,写真用フィルムなど

)

に加え

X

線を取り扱うためには資格が必要なこともあり全

ての集配所・ロジスティックセンターへの配備は現実

問題として困難である.そこで,ミリ波帯・テラヘル

ツ帯電波を用いるイメージング技術が注目されてい

[9], [10]

.実際,空港保安検査における人体スクリー

ニングにおいては従来の金属探知ゲートからミリ波帯

電磁波を用いた全身スクリーニングへ置き換えが進ん

でいる

[11], [12]

.一般的に,電波を用いたイメージン

グにおいては,その波長がイメージ分解能に直結する

ため,高解像度なイメージングにはミリ波帯更にはテ

(2)

ラヘルツ帯の利用が欠かせないが,高周波になるにつ

れ透過力の低下のみならず電波伝搬における大気減衰

の増加などにより,原理的に短距離での応用とせざる

を得ない.そこで,適切な電波放射位置まで効率的に

信号を配送する伝送路技術が必要であるものの,従来

の同軸ケーブル・導波管技術では伝送損失が非常に大

きいため大規模なネットワークの構築は困難であった.

光技術,特に光ファイバ技術は,光ファイバそのも

ののが有する低損失性,光を搬送波として利用するが

故の原理的な広帯域性にアドバンテージをもち,信号

を劣化なく伝送する媒体として非常に有用である.ミ

リ波・テラヘルツ信号を光信号に重畳して伝送できれ

ば低損失で遠方まで伝送できることに加え,中央集

約・多数張り出し型のネットワーク構成も実現可能に

なる.つまり,高度信号処理や高精度信号発生など電

力・精度・設置面積などが大きいものは中央処理部に

集約し,無線フロントエンドとポスト処理部のみをリ

モート側に配置することができる.リモート側装置の

低コスト化が可能になるだけでなく,光ファイバによ

る信号分配により多数リモート装置設置による大面積

をカバー可能なミリ波レーダシステムの実現が可能に

なる

[13]

.しかしながら,従来の光変調技術では周波

数帯域が数

10 GHz

程度までと制限されており,直接

的な信号重畳は難しかった.近年の光集積回路技術の

発展により光変調器そのものの高度化が進み,光変調

動作点を最適化し光変調・復調システムを周波数逓倍

装置として構成することで,マイクロ波帯信号入力で

あっても,伝送・復調後にはミリ波・テラヘルツ波信

号として発生させることが可能になってきた

[14]

本論文では,光変調技術を援用するミリ波帯・テラ

ヘルツ帯レーダ・非破壊イメージング技術について概

説する.高精度なレーダ信号生成には,光技術による

周波数逓倍手法が欠かせないため,光変調及び光周

波数コム技術を用いた高次逓倍の実現について述べ

た後,その応用として光ファイバネットワーク接続型

ミリ波レーダ技術及び

300 GHz

帯レーダ技術につい

てそのコア技術と可能性を展望する.また,光ファイ

バ技術によりミリ波信号をフィードした透過・反射イ

メージングによる隠蔽物検査の実現可能性について議

論する.

2.

光技術によるミリ波・テラヘルツ帯周波

数逓倍技術

光ヘテロダイン手法による周波数下方変換

ミリ

波・テラヘルツ発生

は,要求される周波数離調した

二つの光信号をフォトダイオード

(

光ミキサー,

PM)

へ導入することで差周波発生を引き起こし,光周波

数からミリ波帯・テラヘルツ帯信号へ周波数下方変換

する技術である.フォトダイオードの帯域は単一走行

キャリアフォトダイオード技術の進展から

1 THz

超える帯域が実現されている

[15]

.一方,周波数離調

した光信号生成については種々の方法が採用されてお

り,同期したレーザー

2

台を用いる方法,モード同期

レーザーを用いる方法等が挙げられる

[16], [17]

.一般

に,ミリ波・テラヘルツ波を含む自由空間への電磁波

放射に対しては電波法等の規制の対象になる.つまり,

発生される電磁波の周波数揺動などを電波法等で規定

される許容値内に収める必要があるため,本論文では

特に周波数揺動の小さい信号発生手法として,光変調

を利用する光ヘテロダイン信号発生手法

(

1)

につい

て議論する.

2. 1

光変調による周波数逓倍

光ファイバ通信で用いられる通信波長帯光信号の周

波数は波長

1.55 μm

時でおよそ

195 THz

であるが,

2

成分光信号

(

光参照光と光信号

)

をフォトダイオード内

で混合することで周波数下方変換することが可能であ

る.前述のとおり,レーザー

2

台を用いる手法では環

境温度変化等による波長揺動により下方変換後の周波

数が変動するため,高安定なマイクロ波・ミリ波帯原

振を用い光変調により信号生成する手法が周波数揺動

抑制の観点では適している.しかしながら,一般的に

市販されている光変調器はその周波数特性が

30 GHz

図 1 光変調器による (a) 周波数 2 逓倍構成,(b) 周波数 4逓倍構成,(c) 周回型光周波数シフタの原理 Fig. 1 Configuration of (a) frequency doubler,

fre-quency quadrupler by optical modulation techniques, and (c) recirculating frequency shifter for optical frequency comb generation.

(3)

程度に制限されるため,高周波ミリ波やテラヘルツ波

の発生は直接的には困難である.そこで,マッハ・ツェ

ンダ干渉計型光強度変調器

(MZM)

の動作点最適化に

より,入力信号周波数に対して整数倍逓倍した周波数

離調を有する光信号の生成を行うことで,結果として

高周波・広帯域な周波数逓倍器の実現が可能である.

マッハ・ツェンダ干渉計型光強度変調器

(MZM)

おいて,バイアス動作点を伝達関数の最小透過点とす

ることで偶数次高調波成分を抑圧し,奇数次成分が強

調される搬送波抑圧・両側波帯

(DSB-SC)

変調が実現

される.

±1

次側波帯が強調された光

2

成分が変調技

術として実現され,光成分間周波数差が

MZM

駆動周

波数の

2

倍となることから,光技術による周波数

2

倍器が構成される

(

2)

.一般に

MZM

は時間経過に

応じてバイアス点がドリフトするため,長時間の安定

した運用に際しては,自動バイアス制御装置

(ABC)

の導入が不可欠である.図

2

ABC

動作有無の比較

を示すが,

ABC

無しの場合は

10

分ほどで

DSB-SC

条件が崩れている事がわかる一方,

ABC

動作時はス

プリアス抑圧比およそ

40 dB

以上の安定した生成が実

現可能である.

周波数

4

逓倍を実現するためのバイアス動作点は,

伝達関数の最大透過点である.偶数次成分を強調し,

奇数次成分を抑圧することで,

0

(

搬送波成分

)

±2

次成分を取り出すことが可能である.搬送波成分は

MZM

変調器に後置する光ノッチフィルタ

(ONF)

より抑圧が可能であるが,一般的にファイバーブラッ

グ回折格子等で実装される

ONF

3 dB

阻止帯域幅

12 GHz

程度以上が限界であり,離調周波数が小さ

い場合には適用が困難である.しかしながら,

MZM

図 2 (a)MZM駆動周波数 16 GHz 時の DSB-SC 光スペ クトルと (b) 自動バイアス制御時の各成分の安定性 Fig. 2 (a) optical spectrum of DSB-SC modulation operated at 16 GHz and (b) temporal varia-tion of each component of optical modulavaria-tion signal with and without an automatic bias controller.

の駆動周波数帯域幅はいまや

30 GHz

超に達しており,

入力周波数が

20 GHz

以上の場合においては

ONF

阻止帯域は

±2

次成分にはほぼ影響を与えない.つま

り,

25 GHz

を超える帯域を有する

MZM

を用いるこ

とで周波数離調

100 GHz

を超えるミリ波帯に対応可

能な周波数逓倍器が実現できる.図

3

に光

4

逓倍時

の光スペクトル

(MZM

駆動周波数

24 GHz)

を示す.

ONF

の採用により搬送波が抑圧され,スプリアスと

して支配的な

1

次成分と所望成分

(2

次成分

)

との比は

およそ

30 dB

程度が実現された.

1

次成分と

2

次成分

の周波数差は

24 GHz (±1

次と

±2

次成分の差周波

)

及び

72 GHz (±1

次と

∓2

次との差周波

)

であるため,

適切なミリ波帯帯域透過フィルタを用いることで十分

な抑圧が可能である.フォトミキサーにて変換後の

96

GHz

ミリ波信号は抑圧比

40 dB

以上が実現されてお

り,十分に高品質な信号が得られる.

2. 2

光周波数コムによる生成

更なる高周波化を実現するには広帯域な光周波数コ

ムから

2

成分を抜き出す手法が挙げられる.光周波

数技術を用いる光周波数コム発生手法として,深い変

調度による高調波発生を利用する手法,光変調器を縦

続接続する手法,周回型光周波数シフタ

(RFS)

によ

る手法等が挙げられる

[18]

[20]

.前

2

者の手法では

各成分間の位相関係が一定となることから光パルスの

生成も可能であり,非線形光学効果によるパルス圧縮

を援用することで

3 THz

を超える帯域幅の周波数コ

ム光源が実現されている

[21]

RFS

は光ファイバルー

プ内に周波数シフタを装荷することで,逐次的な光周

波数シフトを引き起こし結果として光周波数コム手法

を得る手法である.光周波数シフタとして,入れ子型

図 3 (a) MZM駆動周波数 24 GHz 時の周波数 4 逓倍動 作時光スペクトルと (b) 光ミキサーで変換した後の 96 GHz信号の様子

Fig. 3 (a) optical spectrum of optical frequency qua-drupling at a frequency of 24 GHz, and (b) power spectrum of 96-GHz millimeter-wave signal converted by a photomixer.

(4)

図 4 RFSによる広帯域光周波数コム信号のスペクトル

Fig. 4 Optical spectrum of broad-bandwidth optical frequency comb signal gen-erated by the RFS.

MZM—

いわゆる光

IQ

変調器

を用い搬送波抑圧・単

側波帯

(SSB-SC)

変調を行うことで,変調器駆動周波

数だけ光周波数シフトが実現される.図

4

10 GHz

駆動の

RFS

による光周波数コム発生を示す

[22]

.発生

された光周波数コム成分は

1.6 THz

程度に達するが,

1554–1562 nm

付近に雑音が支配的となる帯域がある.

一般に,光変調器の挿入損失・変調度を考慮すると光

周波数シフトの変換効率はおよそ

−10∼ −20 dB

度であるため,その補償のために光ファイバループ内

EDFA

等の光増幅器を装荷する必要があるが,そ

の自然増幅光雑音

(ASE)

の影響により信号対電力雑

(SN)

比が劣化する.そこで,周波数ループ内に信

号帯域外雑音を抑圧するフィルタバンクを挿入するこ

とで実効的な

SN

比の向上が可能となる

[23]

.反射型

液晶と回折格子をベースとした

1

入力

2

出力プログラ

マブル波長選択スイッチ

(WSS)

を光フィルタバンク

として利用し,光周波数コム間隔

25 GHz

に対し,阻

止帯域

(12.5 GHz

)

,透過帯域

(12.5 GHz

)

を繰

り返す構成とすることで,光周波数コム成分間の帯域

外雑音の抑圧を実現した

[24]

.図

5

に挿入前後の光ス

ペクトルの変化を示す.得られた

SN

比として

1THz

を超える領域においては

10 dB

以上の改善が示され

た.また

1

入力

2

出力

WSS

の片方の出力を所望成分

の取り出しポートとして設定・利用することも可能で

あり,別途光フィルタバンクを光周波数コム光源後に

後置する必要がないことも利点である

[25]

光周波数コム光源から任意の

2

成分をとりだす光フィ

ルタバンクとして,アレー導波路回折格子

(AWGF)

を利用することが一般的であるが,前述した

WSS

利用することも可能である.

1

入力

1

出力構成におい

て任意の

2

成分を直接出力することが

WSS

では容

易に実現可能であるが,多入力

AWGF

に光スプリッ

タを前置し,所望離調チャネル間隔分に相当する入力

図 5 (a) WSSを光ファイバループ内に装荷した周回型 光周波数シフタの構成と (b) 得られた光周波数コム 信号 (黒:WSS なし,赤:WSS あり),及び,(c) 1548 nm近辺の拡大図

Fig. 5 (a) configuration of WSS-implemented RFS system, (b) obtained optical frequency comb signal without the WSS (black) and with the WSS (red), and (c) its enlarged spectra at a wavelength around 1548 nm.

ポートへそれぞれ入力することでも

1

出力で

2

成分信

号の直接出力が可能である.

2. 3

非コヒーレント光源の実現

上述した光周波数逓倍器では一般的にコヒーレント

光源が構成可能である.周波数揺動が抑えられている

ため,関係法規への準拠が容易であることのみならず,

通常のハーモニックミキサーとしての利用も可能であ

ることから,後述するレーダ信号の生成も可能である.

しかしながら,透過・反射イメージングにおいてはそ

のコヒーレンシーの高さからモワレ等のイメージ雑音

が発生することがある

[26]

.そこで,非コヒーレント

光源を光技術で構成する必要がある

[27], [28]

6

EDFA

を雑音源として構成したミリ波帯非

コヒーレント光源ブロック図を示す.

EDFA

から発生

(5)

図 6 (a)非コヒーレント光源の構成図と (b) 75–100 GHz 相当の非コヒーレント信号光スペクトル

Fig. 6 (a) configuration of incoherent optical signal source, and (b) optical spectrum of incoherent signal at a frequency of 75–100 GHz.

された

ASE

雑音は

AWGF

を介して光

2

成分様に整

形される.光パワーレベル調整のため,再度

EDFA

て増幅することで,所望の非コヒーレント光信号が得

られる.図

6 (b)

75–100 GHz

帯域幅を有する光

2

成分信号のスペクトルを示す.

25 GHz

グリッド対応

AWGF

を利用することで,離調した非コヒーレン

ト光信号が得られた.本信号を光ミキサーにてヘテロ

ダインを行うことで,広帯域の非コヒーレントミリ波・

テラヘルツ信号が得られる.白色ガウス雑音をフィル

タリングした光源であるため,コヒーレンス長の正確

な推定は困難であるが,中心周波数

87.5 GHz

,帯域

25 GHz

のローレンツ関数と考えた場合のコヒーレ

ンス長はおよそ

1.2 mm

程度であり波長の半分以下で

あるため,十分な非コヒーレント性が実現できている

と言える.

3.

ミリ波・テラヘルツ帯レーダ技術

光技術による周波数逓倍器を利用することでマイク

ロ波帯の高精度原振をミリ波帯・テラヘルツ帯へ周波数

変換することができるようになる.そこで,ミリ波帯及

びテラヘルツ帯における周波数変調連続波

(FM-CW)

レーダ技術の検証を行った.図

7

94 GHz

帯ミリ

FM-CW

レーダの実証システムを示す

[29]

.中心

周波数

23.5 GHz

,帯域幅

1 GHz

,掃引時間

10 μs

マイクロ波帯

FM-CW

信号

(

のこぎり波形状

)

を任意

波形発生器にて生成し

MZM

に導入する.

MZM

は上

記の光周波数

4

逓倍条件にて駆動し

ONF

にて搬送波

成分抑圧後に

EDFA

にてレベル調整を行った.光信

号は光ファイバを伝送し,受信側の

PM

にてミリ波

図 7 光周波数 4 逓倍技術を利用した 92–96 GHz FM-CWレーダの原理実証システム図

Fig. 7 Block diagram of proof-of-concept demonstra-tion of 92–96 GHz FM-CW radar system using an optical frequency quadrupler.

信号

(

周波数

92–96 GHz)

へ変換された.ミリ波帯パ

ワー増幅器

(PA)

にてレベル調整後,アイソレーター

(ISO)

3 dB

方向性結合器

(Coupl.)

を介してアンテ

ナ利得

24 dBi

のホーンアンテナより自由空間へ放射

された.ターゲットより反射されたミリ波信号は放射

と同じアンテナを介して方向性結合器へ入力され,結

合ポート先の低雑音増幅器

(LNA)

により増幅された

後,ショットキーバリアダイオード

(SBD)

で検波さ

れた.

FM-CW

レーダは原信号とターゲットからの反

射信号を混合させることにより,得られる中間周波数

(IF)

から距離を計測する.方向性結合器の指向性は

30 dB

程度であるため,その漏れ信号を原信号として

利用し反射信号と混合させることにより測距を行った.

SBD

にて変換された

IF

信号は増幅器にてレベル調整

の後デジタイズされた.

ターゲットとして金属板を用いた場合の測距原理の

実証を行ったところ,得られた中間周波数と距離の関

係は線形を維持しており

FM-CW

レーダが光技術を

援用した信号生成手法においても有効であることが示

された

(

8)

4 GHz

幅の

FM-CW

レーダの測距分

解能は

ΔR = c/2f

BW

(c

は光速,

f

BW

は掃引周波

数幅

)

およそ

3.6 cm

程度である.周波数帯域として

92–100 GHz

帯を用いた光技術援用レーダでは実験的

におよそ

8 cm

のレーダ分解能が得られており,適切

なデジタイザー・増幅器・アンテナを用いることで

400

m

先における

1

インチ直径・高さの金属柱の検出にも

成功している

[8]

FM-CW

レーダでは帯域幅の増大がレーダ測距分

解能の向上に直接寄与するため,高精度な測距には

広帯域化が欠かせない.更なる高周波化により利用

(6)

図 8 (a) 92–96 GHzレーダ信号の光スペクトルと (b) ターゲット相対距離として 0,20,40 cm の場合に 得られた IF 信号のスペクトル

Fig. 8 (a) optical spectrum of 92–96 GHz radar sig-nal, and (b) IF power spectra with various rel-ative distance to the target of 0, 20, and 40 cm.

図 9 光周波数コム手法を用いた 300 GHz FM-CW レー ダシステム実証実験構成図

Fig. 9 Block diagram of 300-GHz FM-CW radar sys-tem using an optical frequency comb source.

可能帯域が広がることは容易に想像できるが,光技

術,特に光周波数コム技術を利用することで逓倍数の

変更・最適化が容易に行える.そこで,同様の信号を

光変調器へ導入し,変調器を過大入力駆動させること

で高調波成分を誘起させた,周波数逓倍器を構成し,

300 GHz

テラヘルツ帯における

FM-CW

レーダの検

証を行った

[30]

.図

9

に単一

MZM

による光周波数コ

ム信号発生と

FM-CW

信号装荷した光周波数コム信

号のスペクトルを示す.周波数は

25 GHz

中心とし

1

GHz

掃引幅とした.

300 GHz

の中心周波数を得るに

±6

次の高調波を取り出して

12

逓倍する必要があ

るため,

WSS

にて当該成分を取り出し光

2

成分信号

とした

(

10)

300 GHz

ハーモニックミキサーとデ

ジタイザーを用いて時間掃引スペクトログラムを計測

した結果も図

11

に示す.スペクトログラムに掃引線

形性のひずみがみられるが,高速な掃引速度・掃引切

り替えを実現したための任意波形発生器のひずみに起

図 10 (a) 25 GHz CW入力時,(b) FM-CW 信号入力 時,(c) WSS・EDFA・光フィルタ後の 300 GHz 離調 FM-CW 信号の光スペクトル

Fig. 10 Optical spectra with (a) 25-GHz CW input and (b) FM-CW signal input. (c) Opti-cal spectrum of 300-GHz-separation FM-CW signal is also shown.

図 11 286.8 GHzを LO 周波数とした 300 GHz FM-CWレーダの放射信号のスペクトログラム Fig. 11 Obtained spectrogram of 300-GHz FM-CW

radar signal down-converted by the LO op-erated at 268.8 GHz.

因する.

294–306 GHz (IF

周波数では

7.2–19.2 GHz

に相当

)

FM

信号が発生されていることが見てとれ,

12 GHz

掃引

(FM-CW

レーダの理論距離分解能およ

1.2 cm

,上述

96 GHz

帯レーダ比として

3

)

が実

現された.

測距性能を評価するため,コーナーリフレクター

キューブをターゲットとし,アンテナ利得およそ

49

dBi

のオフセットパラボラアンテナに送信・受信部分

を接続した

(

12)

.得られた

IF

周波数成分にサテ

ライトピーク構造などが見られるが,これは,コー

ナーリフレクターキューブの支持支柱及び移動ステー

ジからの反射によるものである.本実験では信号処理

として

FFT

処理のみを行っているが,平均化処理や

Constant false alarm rate (CFAR)

処理等のレーダ

信号処理により不要成分の抑圧が可能になると考えら

(7)

図 12 (a)得られた IF 周波数スペクトルと (b) IF 周波 数のターゲット相対距離依存性

Fig. 12 (a) Obtained IF power spectrum at a receiver and (b) IF frequency dependence on the tar-get distance.

れる.

IF

周波数と相対距離は線形関係を維持してお

り,光周波数コム方式においても光周波数逓倍器の動

作及びテラヘルツ帯

FM-CW

レーダの実証ができた

といえる.

IF

信号のメインピーク近傍に現れているサ

テライトピークはレーダ信号発生に用いた任意波形発

生器の波形生成性能によるものであるため,

PLL

を用

いたシンセサイザーシステム等高精度な信号発生装置

を利用することで,更なる高分解能化が可能になると

期待される.

4.

ミリ波帯透過・反射イメージング

本節では上述した光技術によるミリ波・テラヘルツ

信号生成技術を光源として利用した非破壊イメージン

グ技術について述べる.一般的な非破壊透過イメージ

ングの構成図を図

13

に示す

[31]

.光源から発生され

た信号は増幅器にて信号レベルを調整され,アンテナ

若しくは準光学レンズを用いて全視野を照射するよう

にビーム幅が調整される.ターゲットに照射され,透

過した信号がアレー検出器で検波される仕組みであ

る.アレー検出器は,ミリ波・テラヘルツ帯において

はアンテナ装荷型のショットキーバリアダイオードア

レー若しくはトランジスタアレーを用いることが可能

であり,電気・電子技術のみで構成可能である.本論

文ではアンテナ構造をゲートに装荷したトランジスタ

アレー

(TeraSense

社製

)

をリアルタイムカメラとし

て用い原理実証を行った

[32]

.周波数は

88 GHz

帯と

図 13 88 GHzミリ波帯透過イメージング実証システム Fig. 13 Transmission imaging system at 88 GHz.

図 14 (a)ティーバッグとカッター刃,(b) クッションバッ グ内のカッター刃を紙製封筒内へ封入したときの (左) 光学像と (右) ミリ波透過像

Fig. 14 Obtained images of (a) tea bags with cut-ter blades. (b) Optical (left) and millimecut-ter- millimeter-wave (right) images of a cutter blade in the cushioning bag in the paper envelop.

し,アンテナ前での信号放射電力は高出力進行波管増

幅器を利用し

2 W

とした

[33]

.得られた透過イメージ

ングの結果を図

14

に示す.金属物質においては表面

反射の影響によりミリ波信号が透過せずに像が得られ

ることが確認された.一方,プラスチック等の比較的

ミリ波に対して損失の小さい物質に関しては減衰波す

るものの透過像が確認され,プラスチック袋に封入さ

れたティーバッグの中身を確認することができた.隠

蔽物質の検出については,クッションバッグの中にい

れたカッター刃を更に紙製封筒にいれたものの透過イ

メージングを行い,隠蔽されたカッター刃の検出に成

功した.このことより,本技術はベルトコンベヤー上

を搬送される荷物のセキュリティ検査などにも適用可

能であると言える.

(8)

一方,非破壊検査の観点から物体の形状判別は非常

に重要であるが,透過像の観察では外形

(

輪郭

)

の判

別は容易に可能となるものの,不透明物体における

照射面側の表面構造の取得は困難である.その場合,

反射像を取得することにより表面構造

(

テクスチャ含

)

の判別が可能となり,物体同定の精度を向上させ

ることができる.図

15

に反射イメージングの実験構

成図を示す

[34]

.光源は

75–100 GHz

帯非コヒーレン

ト光源を用いたが,後段

PA

の帯域制限により

90–97

GHz

とした.およそ

2 W

まで増幅されたミリ波信号

はアンテナ利得

23 dBi

のホーンアンテナを介して自

由空間に放射され,ターゲットに対して焦点距離

1 m

のテフロン製レンズにて平行光として照射した.反射

したミリ波信号は焦点距離

1 m

のレンズペアにてテ

ラヘルツカメラ上へ結像される光学系とした.開口数

(NA)

はおよそ

0.11

であるため,理論的な像解像度は

0.61λ/NA

よりおよそ

18 mm

と推測される.金属泊

でライン・スペースを作成し取得像の解像度を計測し

た結果もあわせて図

15 (b–c)

に示す.およそ

15 mm

のライン・スペースを明瞭に確認することができ,

NA

図 15 (a)非コヒーレント光源による反射イメージング構 成図,(b) 10 mm,15 mm,20 mm 間隔のライ ン・スペース光学像と (c) ミリ波反射イメージ Fig. 15 (a) Configuration of reflection imaging

sys-tem based on an incoherent light source. Ob-tained (b) optical and (c) millimeter-wave images of 10-mm, 15-mm, and 20-mm lines and spaces under tests are shown.

から推測される解像度とほぼ一致した.スタンドオフ

状態で波長の

5

倍程度の反射イメージング解像度が実

現可能であることが示された.

光技術を援用するメリットの一つは,ミリ波帯導波

管・同軸ケーブルに比して非常に低損失な

(

およそ

0.2

dB/km)

光ファイバを伝送路として利用可能なことで

あり,信号の分岐も容易なことが挙げられる.つまり,

パッシブ型光ファイバネットワークのような多分岐分

配構成によりミリ波信号を配送・分配することが可能

であり,反射イメージングで潜在的に問題となる照射

配置問題を解決できる可能性がある.そこで,図

16

のようにミリ波照射系を光ファイバ分岐にて

2

系統

用意し,照明強度の向上のみならず陰影領域の解消も

図った

[35]

.出力はそれぞれ

500 mW

程度に設定し

た.図に一方向照射時及び二方向照射時の反射像を示

図 16 (a)光分配による多灯反射イメージング構成図と (b)カメラ側からみたレンズ・ターゲット写真.(c) 左から,左側照明のみ照射,両照明照射,右側照 明のみ照射時のミリ波反射イメージ

Fig. 16 (a) Set-up configuration of multi-irradiation reflection imaging system based on an cal fiber distribution network and (b) opti-cal image of the target and lenses obtained at the location of the camera. (c) Ob-tained millimeter-wave images by (left panel) one irradiation from left-hand side, (mid-dle panel) irradiations from both sides, and (right panel) one irradiation from right-hand side.

(9)

す.ターゲットは直径およそ

6 cm

のアルミ缶とした.

一方向照射時は,照射方向の側面からの反射が支配的

となり,筒状形状物体では照射と反対側の形状を判別

することが難しい.そこで,二方向照射とし両側面か

らの反射を捉えることで輪郭が検出され,ミリ波帯に

おいても物体形状の推定が可能になることが示された.

5.

む す び

光技術を援用するミリ波・テラヘルツ帯

FM-CW

レーダ技術及び非破壊透過・反射イメージング技術に

ついて概説した.光変調技術による周波数逓倍により

マイクロ波帯

FM-CW

レーダ信号から

90 GHz

帯ミ

リ波レーダ信号,

300 GHz

FM-CW

信号の逓倍が

実現をレーダ動作の原理検証を通して確認した.また

光ファイバ増幅器の

ASE

雑音と光フィルタリングを

利用した非コヒーレント光源技術についても概説し,

ミリ波帯反射イメージングに適用し像が得られること

を確認した.非破壊透過イメージング・反射イメージ

ングともテラヘルツカメラを利用することで像の取得

が可能であることが示され,また,光分配方式の適用

による多照明化による対象物の判定の原理も確認され

た.光ファイバそのものが有する広帯域性・低損失性

を積極的に利用することにより,分散アンテナシステ

ムによる高精度・大面積スキャンレーダの実現のみな

らず,中央集約型信号分配方式の適用による低コスト

化・省フットプリント化にも寄与すると期待される.

実用化へ向けた高感度化においては,ミリ波・テラヘ

ルツ帯問わず,信号電力の増強が必須である.ミリ波

帯・テラヘルツ帯増幅技術として,

1 W

級以上の出力

を目指した進行波管型増幅器の研究開発が進んでおり,

その適用による測距レンジの延伸化や高感度化なども

含め実用化への期待が高まる

[36]

.また,本論文では

光技術援用信号生成のみを取り扱ったが,近年ミリ波

から直接光信号へ変換する研究開発も進んでいる

[37]

SN

比の向上などの課題があるものの,更なる省フッ

トプリント化が見込まれるため,今後の研究開発の進

展に注目したい.

謝 辞 非 破 壊 イ メ ー ジ ン グ 技 術 の 研 究 開 発 に あ

たり

NEC

小田氏,東京インスツルメント川村氏,

Krayushkin

氏,

NEC

ネットワーク・センサ増田氏,

NICT

福永氏にご助力いただいた.また,本研究の

一部は総務省・電波資源拡大のための研究開発,総

務省

SCOPE (

受付番号

#165003010)

JSPS

科研費

JP16K06406

として実施された.

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(11)

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(平成 29 年 3 月 19 日受付,7 月 25 日再受付, 11月 13 日公開)

菅野 敦史 (正員)

平 11・筑波大・第一・物理卒.平 17 同 大大学院博士課程修了.同年,同大学理工 学研究科ベンチャービジネスラボラトリー 特別研究員.平 18 独立行政法人情報通信 研究機構入構.この間,超高速光変調,光 ファイバ無線技術の研究開発に従事.現在, 国立研究開発法人情報通信研究機構ネットワークシステム研究 所ネットワーク基盤研究室主任研究員.理博.IEEE,日本応 用物理学会,レーザー学会各会員.

関根 徳彦 (正員)

平 11・東大大学院工学系研究科博士課程 修了.同年 (株) 富士通研究所入社.平 14 東大生産技術研究所助手.平 17 独立行政 法人情報通信研究機構入構.この間,半導 体量子ナノ構造のテラヘルツ領域における 物性とデバイス応用に関する研究に従事. 現在,国立研究開発法人情報通信研究機構未来 ICT 研究所フ ロンティア創造総合研究室・研究マネージャー.工博.IEEE, 応用物理学会各会員.

笠松 章史 (正員)

平 3 上智大・理工・電子電子工卒.平 9 同大大学院博士課程修了.同年,同大学理 工学部電気電子工学科助手.平 11 株式会 社富士通研究所入社.平 14 独立行政法人 通信総合研究所(現・情報通信研究機構) 入所.この間,ミリ波・テラヘルツ波を用 いた無線通信技術,及びそれに用いる送受信機と極微細半導体 デバイスの研究開発に従事.現在,国立研究開発法人情報通信 研究機構未来 ICT 研究所フロンティア創造総合研究室上席研 究員.工博.応用物理学会会員.

山本 直克 (正員)

平 7・電機大・工学部・電気工学卒.平 12・同大学大学院博士課程修了.同年,同 大学工学部電気工学科助手.平 13・独立行 政法人通信総合研究所入所.量子ドット等 の半導体ナノ構造や,異種材料利用 (ヘテ ロジニアス) による広帯域・光電子融合デ バイス技術,大波長空間光伝送システム技術など,光アクセス 基盤技術全般の研究開発に従事.現在,国立研究開発法人情報 通信研究機構ネットワークシステム研究所ネットワーク基盤研 究室・研究マネージャ,先端 ICT デバイスラボ・ラボ長.東京 電機大学客員教授.工博.日本応用物理学会会員.

川西 哲也 (正員)

平 4・京大・工・電子卒.平 6 同大学大 学院修士課程修了.同年松下電器入社,平 9京大大学院工学研究科博士後期課程修 了.同年同大学ベンチャービジネスラボラ トリー特別研究員.平 10 郵政省通信総合 研究所 (現情報通信研究機構) 入所.平 16・ カリフォルニア大学サンディエゴ校客員研究員.平 27・早大・ 基幹理工学部電子物理システム学科教授,情報通信研究機構研 究統括兼務.工博.IEEE フェロー.

Fig. 3 (a) optical spectrum of optical frequency qua- qua-drupling at a frequency of 24 GHz, and (b) power spectrum of 96-GHz millimeter-wave signal converted by a photomixer.
Fig. 4 Optical spectrum of broad-bandwidth optical frequency comb signal gen- gen-erated by the RFS
図 6 (a) 非コヒーレント光源の構成図と (b) 75–100 GHz 相当の非コヒーレント信号光スペクトル
図 8 (a) 92–96 GHz レーダ信号の光スペクトルと (b) ターゲット相対距離として 0,20,40 cm の場合に 得られた IF 信号のスペクトル
+3

参照

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