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自律型光ファイバ断線復旧技術によるRadio-over-Fiber有無線シームレス伝送システム

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自律型光ファイバ断線復旧技術による

Radio-over-Fiber

有無線シーム

レス伝送システム

大石

将之

a)

神谷

尚保

ベッカリ

アブデルモウラ

西村

公佐

田中

啓仁

Radio-over-Fiber-Based Seamless Optical and Radio Transmission System by

Autonomous Self-Healing Technique for Optical Fiber Failures

Masayuki OISHI

†a)

, Naoyasu KAMIYA

, Abdelmoula BEKKALI

,

Kosuke NISHIMURA

, and Keiji TANAKA

あらまし 光ファイバ通信インフラの耐災害性を向上させるためには,複数の光ファイバ断線区間を無線回線 でバックアップする Radio-over-Fiber (RoF) 伝送ベースの有無線両用通信システムが有効となる.本論文では, 複数の光ファイバ断線区間を自律的に,かつ信頼性高くバックアップするための技術として,ファブリ・ペロー・ レーザの自己注入同期を利用した光ファイバ断線復旧方式を提案し,ネットワークライフラインとして必要とさ れる復旧時間内に,光ファイバ断線区間を無線回線へ自律的に切替可能であることを実証したので報告する.更 に,提案方式を組み込んだ RoF 伝送システムの実験により,有線光ファイバ回線から無線回線への切替による 信号品質の劣化量を定量的に評価し,複数のバックアップ区間を含む有無線シームレス伝送システムの設計指針 を示す. キーワード radio-over-fiber,有無線両用通信システム,ファブリ・ペロー・レーザ,注入同期,光ファイバ 断線検出

1.

ま え が き

光ファイバ伝送システムは,大容量通信サービスを 支える重要なインフラであり,災害などにより光ファ イバ断線が生じた場合に社会へ与えるインパクトが大 きいため,迅速な復旧が求められる[1].現状のシステ ムでは,作業者が断線箇所へ出向いて復旧するため, 最低でも数時間程度を要する.復旧までの間は,光 ファイバ冗長ルートでバックアップするのが通常の対 策であるが[2], [3],大規模災害時には冗長ルートも断 線することが懸念される.一方で無線伝送は,光ファ イバのように物理的に断線することがなく,機動性や 臨時設営性にも優れていることから,断線した光ファ イバをバックアップする手段として期待される[4], [5]. また,光ファイバの断線は,橋・高架や断崖などの特 (株)KDDI研究所,ふじみ野市

KDDI R&D Laboratories Inc., 2–1–15 Ohara, Fujimino-shi, 356–8502 Japan a) E-mail: [email protected] 定の区間で発生する確率が高いため,そのような複数 の区間に無線伝送によるバックアップ回線をあらかじ め設置しておけば,迅速に復旧対応でき効果的であ る[6]. 複数の光ファイバ断線区間を無線回線でバックアッ プするための伝送技術としては,有線光ファイバ伝 送と無線伝送とをシームレスに変換でき,光ファイバ 伝送に迫る10 Gbit/s級の高速有無線伝送が可能な Radio-over-Fiber (RoF)技術が有望である[7]∼[10]. 複数区間で発生する光ファイバ断線に対応するために は,断線区間を自律的にバックアップする技術が必要 となる.無線バックアップ回線への切替動作は,災害 時におけるネットワークライフライン(安否確認や緊 急電話など)を直ちに復旧させるため,最長でも数分 以内で,可能な限り迅速に完了することが望ましい. 更に,回線切替の信頼性を上げるためには,回路構成 を極力簡素にする必要がある.しかしながら従来技術 では,複数の光ファイバ断線箇所を検出し,当該断線 箇所を無線回線で自律的にバックアップすることがで

(2)

ライフラインとして必要とされる復旧時間内に,光 ファイバ断線区間を無線バックアップ回線へ自律的に 切替可能であることを実証する.更に,提案方式を組 み込んだRoF伝送システムの実験により,有無線回 線切替による信号品質の劣化を定量的に解析し,複数 のバックアップ区間を含む有無線シームレス伝送を実 現するためのシステム設計指針を明らかにする. 本論文の構成は次のとおりである.2.では,RoF ベースの有無線両用通信システムの概要を述べ,本シ ステムにおける光ファイバ断線復旧の要求条件につい て説明する.3.において,提案する自律型光ファイバ 断線復旧方式について説明する.4.では,提案方式 による断線検出・切替実験と,提案方式を組み込んだ RoF伝送方式に基づく有無線シームレス伝送実験につ いて述べ,最後に5.で本論文をまとめる.

2. RoF

伝送方式に基づく有無線両用通信

システム

図1に,RoF伝送方式に基づく有無線両用通信シス テムの概念図を示す.本システムでは,通信局(CO)-1 とCO-2とを接続する光ファイバ伝送路において,断 線の危険性が高い複数の区間に,無線伝送によるバッ クアップ回線があらかじめ組み込まれている.図1に 示すように,光ファイバが断線すると,有無線切替 ノードがそれを検出して,自律的に無線バックアップ 回線へ切り替える.光ファイバが断線していない場合, 光ファイバ伝送速度とCO-1からCO-2までの光ファ イバ伝送距離は,それぞれ100 Gbit/s程度と数十km 程度を想定している.一方,光ファイバ断線時には, 無線区間での伝送容量の制限から,RoFによる有無 線伝送速度を10 Gbit/s程度,バックアップすべき光 ファイバ長に相当する無線区間の伝送距離を1 km程 度と想定している. 無線バックアップ回線への切替動作は,災害時にお けるネットワークライフラインを直ちに復旧させるた め,例えば秒オーダなど,可能な限り迅速に完了する ことが望ましい.信頼性高く,かつ迅速に無線バック アップ回線へ切り替えるためには,有無線切替ノード にて以下の条件(1)∼(3)を満足する必要がある. (1)物理レイヤでの断線検出及び切替制御:切替ノー ドを簡素化でき,切替にかかる信号処理遅延を低減 可能. (2)自律的な切替制御:複数区間で発生する光ファ イバ断線に対応可能. (3)断線箇所の局所的な検出及び切替制御:予測困 難な複数区間で発生する断線箇所を確実に検出し,通 信局から孤立した区間もバックアップ可能.例えば, 図1に示すように,区間-1と区間-2で光ファイバが 断線した場合,区間-1の右側ノードと区間-2の左側 ノードが孤立し,これらのノードはCOと通信不可と なる. 条件(1)に示した物理レイヤでの光ファイバ断線 検 出 方 式 と し て ,OTDR (Optical Time Domain Reflectm-eter)技術が候補の一つと考えられる[11]. しかしながら,本手法ではCOに最も近い断線箇所 しか検出できないため,条件(2)及び(3)を満足でき ない.他に,光信号のSOP (States of Polarization) の変化から断線箇所を検出する技術が報告されている が[12],SOPの経時変化を正確に監視する必要がある ことから,切替ノードの構成が煩雑となり,条件(1) を満足できない.そこで,次章において,上記(1)∼ (3)の全ての条件を満足する新たな断線検出・回線切 替方式を提案する.

(3)

図 3 自律型光ファイバ断線復旧方式の概略構成

Fig. 3 Schematic diagram of the autonomous self-healing technique.

図 2 自己注入同期 FP-LD の概略構成 Fig. 2 Schematic diagram of a self-injection-locked

FP-LD.

3.

自律型光ファイバ断線復旧方式

本章では,複数の光ファイバ断線区間を自律的に, かつ信頼性高くバックアップするための技術として, FP-LDの自己注入同期現象を利用した新たな方式を 提案する. 3. 1 FP-LDの自己注入同期 通常,FP-LDはある波長範囲において複数の縦モー ドで発振するが,外部から光が入射すると,当該入射 光の波長にロックして発振する“注入同期”と呼ばれ る現象が生じる[14].図2は,自己注入同期FP-LD の概略構成を示している.単一モードファイバ(SMF) の両端にFP-LD,光反射器(OR)を接続し,SMF上 に光帯域通過フィルタ(OBPF)を挿入する.FP-LD が出射した光は,OBPFにおいて狭波長幅にスライス された後,対向のORにて反射されてFP-LDに同期 光として入射する.これにより,FP-LDは自身が出 射した光の波長にロックして発光する“自己注入同期” の状態となる.一方,SMFが断線すると,FP-LDに 同期光が入射しなくなるので,FP-LDは自己注入同 期の状態から外れる. 3. 2 提 案 方 式 提案する自律型光ファイバ断線復旧方式は,レーザ の注入同期状態の変化から光ファイバ断線を検出する 方式であるため,複雑な信号処理を必要とせず,簡易 な構成で信頼性の高い断線復旧を実現できる. 提案する自律型光ファイバ断線復旧方式の概略構成 を図3に示す.切替ノード1及び2は光ファイバで 互いに接続されており,あらかじめ無線バックアップ 回線が設けられている.切替ノード1は,光ファイバ 回線の断線有無を監視するFP-LD 1,当該FP-LD 1 から出射される光を分岐する光カプラ(CPL),波長 λ0 のデータ光信号と波長λ1 のFP-LD 1からの出 射光を合分波する波長分割多重(WDM)カプラ1-1, 切替ノード2から入射した波長λ2 の光と波長λ1 の FP-LD 1からの出射光とを合分波するWDMカプラ 1-2,切替ノード2から入射した波長λ2の光を反射す るOR,FP-LD 1の注入同期状態を監視するための 光ノッチフィルタ及び光受信器(PD),FP-LD 1の注 入同期状態の監視結果をもとに光ファイバ回線と無線 回線とを切り替える1 × 2光スイッチ(SW)で構成さ れる.また,切替ノード2は切替ノード1と同様の構 成であるが,FP-LD 2は切替ノード1とは異なる波 長λ2 の近傍で発光する.なお,FP-LD 1及び2は光 ファイバ回線の状態監視に利用し,データ伝送には用

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いない. 光ファイバ断線時の切替ノード1及び2の動作は同 様であるため,ここでは切替ノード1のみを参照して 説明する.切替ノード1のFP-LDは,フリーランニ ングの状態で,データ信号の波長λ0 とは異なる波長 λ1 の近傍で発光する.なお,図2では,FP-LDの出 射光を狭波長幅でスライスするためにOBPFを用い たが,図3では,波長λ0 近傍の光のみを透過させる ポートと,それ以外の波長の光を透過させる反射ポー トを備えるWDMカプラ1-1を用いている.光ファ イバ回線が断線していないとき,FP-LD 1から出射 された光は,WDMカプラ1-1で狭波長幅にスライ スされた後,光ファイバ回線を伝搬して切替ノード2 内のORで反射される.当該反射光は,再び光ファイ バ回線を伝搬し,FP-LD 1に入射する.これにより, FP-LD 1は自己注入同期の状態となる.切替ノード1 における光ノッチフィルタは,FP-LD 1の出射光から 同期光を除去した後,通過した光をPDに供給する. 一方,光ファイバ回線が断線した場合,切替ノード2 からの反射光が入射しなくなるので,FP-LD 1は自 己注入同期状態から外れる. 図4は,中心波長1550 nmのFP-LDを用いて, 図3に示す測定点(MP) (i)及び(ii)で取得した光ファ イバ断線前後の光スペクトラムを示している.光ファ イバ断線により,FP-LD 1の出射光が(a)から(b) に変わり,PDに入射する光が(c)から(d)に変化す る.したがって,光ファイバ回線が断線していない場 合にはPDに入射する光は微弱であるが,光ファイバ 回線が断線した場合には,FP-LD 1が自己注入同期 から外れるため,PDに入射する光のパワーが高くな る.PDへ入射する光パワーがあるしきい値を超えた 場合,PDの電気出力から生成したトリガ信号をもと に,1 × 2 SWの接続が断線した光ファイバ回線側か ら無線回線側に切り替わる.同様に,光ファイバが断 線状態から復旧すると,FP-LDは自己注入同期の状 態に戻り,1 × 2 SWの接続が光ファイバ回線側に切 り替わる.以上により,提案方式を有無線切替ノード に適用することで,光ファイバ断線検出及び回線切替 を自律的かつ局所的に実行できる. 自律型光ファイバ断線復旧には,他にも類似した方 式を適用可能と考えられる.例えば,各ノードにLD を配置して,ノード間でLD出力の反射光パワーを 監視する方式でも,光ファイバ断線を検出可能と考え られるが,この方式では,LDまたはPDが故障した 場合に誤って切替動作する.また,切替ノード1及び 2に同一波長帯で発光するFP-LDを配置し,FP-LD の出射光を対向ノードのFP-LDに入射することで, 二つのFP-LDを相互に注入同期の状態として,相互 注入同期の状態変化をもとに光ファイバ断線を検出 する方式を報告しているが[13],本方式においても, FP-LDが故障した場合に切替が誤作動する.無線回線 への切替に伴う信号品質の劣化を考慮すると,光ファ イバが断線した場合のみ回線切替が作動することが望 ましいため,これらの方式では光デバイス故障時にお ける信頼性が十分に確保できない.一方,自己注入同 期FP-LDを用いる提案方式では,光ファイバ断線が 発生した場合のみPDにて光検出する方式であること から,FP-LD及びPDが故障した場合であっても誤 作動することがなく,信頼性の高い切替動作を実現で きる[15]. また,相互注入同期FP-LDでは,切替ノード1及 び2の異なる環境下において独立に配置される二つの FP-LDの発振波長を合わせておく必要があり,環境 温度の変化による発振波長の変動を抑制しないと,相

(5)

図 5 光ファイバ断線検出・回線切替実験の構成

Fig. 5 Experimental setup for optical fiber failure detection and switching.

互注入同期の状態を安定に保つことができない.これ に対し,自己注入同期FP-LDを利用する提案方式で は,FP-LDが自ら出射した光で注入同期する方式で あるため,上記のような温度制御機構を必要とせず, 装置簡素化の観点からも有利である. 有無線シームレス伝送システムでは,光ファイバ断 線により伝送速度を100 Gbit/sから10 Gbit/sへ切 り替える際,送信及び受信器の変復調方式を同時に切 り替えることを想定している.そのため,COにおい て,いずれかのノード間で光ファイバ断線が発生した ことを検知する必要があるが,例えばOTDR法を用 いることで,COから最も近いノード間での光ファイ バ断線を検知可能である.COにおける伝送速度切替 は,ノード間の回線切替とは独立した動作であるため, 提案する自律型切替のコンセプトに相反するものでは ない.なお,送信器の構成をほとんど変更することな く,伝送速度を切り替える技術については,文献[6]で 報告している.

4.

提案方式による

RoF

有無線シームレス

伝送実験

本章では,提案方式による光ファイバ断線検出・回 線切替実験により,光ファイバ断線区間を無線バック アップ回線へ自律的に切替可能であることを示す.更 に,提案方式を組み込んだRoF伝送システムの実験 により,有無線回線切替に伴う信号品質の劣化を定量 的に解析することで,複数の無線バックアップ区間を 含む有無線シームレス伝送を実現するためのシステム 設計指針を示す. 4. 1 光ファイバ断線検出・回線切替実験 提案する自律型光ファイバ断線復旧方式の原理確認 のため,図5に示す切替ノード1から2に向かう片方 向のみの構成で,光ファイバ断線検出・回線切替実験を 行った.光データ信号を模擬するため,波長1535 nm で発光するDFB-LDを切替ノード1の外部に,また 切替ノード1及び2を接続する1 km長のSMFの接 続状態を監視するため,中心波長1550 nmで発光す るFP-LDを切替ノード1の内部に,それぞれ配置し た.FP-LDが出射した光を切替ノード2内のORで 切替ノード1に向けて反射し,FP-LDを自己注入同 期の状態とした.なお,本実験で用いたWDMカプ ラの波長λ1 側の通過幅は1550 ± 1.5 nmで,光ノッ チフィルタの反射幅は3 nmである.FP-LDへの注 入光をPD-1,光ノッチフィルタ通過後の光をPD-2, 1 × 2 SWのSMF側への出射光をPD-3,1 × 2 SW の無線回線側への出射光をPD-4で,それぞれ受信し た.切替ノード1と2の間に挿入した1 × 1 SWの切 替制御によりSMFの断線を模擬し,断線前後におけ るPD-1∼4の受光パワーの変化を測定した. 図6に,FP-LDへの注入光パワーに対するPD-2 における受光パワーの変化を示す.FP-LDへの注入 光パワーは,切替ノード1と1 × 1 SWの間に配置し

(6)

受光パワーの変化

Fig. 6 Optical power received by the PD-2 as a function of the injection power into the FP-LD.

た可変光減衰器(VOA)を調節して変化させた.図6 から,FP-LDへの注入光パワーが−10 dBmより低 くなると,FP-LDが注入同期の状態から徐々に非同 期の状態へ遷移していくことが確認できる.本実験に 用いたFP-LDの光出力パワーが+8 dBmであったこ とから,注入同期状態を維持するためには,切替ノー ド1と2の間の往復伝搬光損失が18 dBまで許容さ れることとなる.したがって,切替ノード1と2の間 の光パワーバジェットは,18 dBの半分の値(9 dB) と見積もられる.また,通常,FP-LDを注入同期さ せるためには,注入光の偏波状態をTEモードに保持 することが最も効率的であるが[14],本実験で用いた 注入同期FP-LDの偏波依存損失(PDL)は0.9 dBと 小さかった.以上により,提案する断線復旧方式は, PDLのマージンを往復で1 dBと見込んで,8 dBの 光パワーバジェットを有するシステムに適用可能であ るといえる.なお,適用するFP-LDによりPDLが 1 dBよりも大きくなることも想定されるため,実用 上は,偏波依存性の小さいFP-LDを適用することが 望ましい. 図7に,SMF断線前後におけるPD-1からPD-4 の受光パワーの経時変化を示す.SMFの断線により, FP-LDへの注入光パワー(PD-1)がなくなると,光 ノッチフィルタの直後に配置したPD-2への入射光パ ワーが増加し,光ファイバ回線と無線回線とを切り替 える1 × 2 SWが,SMF側(PD-3)から無線バック アップ回線側(PD-4)へ正しく切替制御されているこ とが確認できる.本実験で用いた1 × 2 SWは,光 図 7 PD-1から PD-4 の受光パワーの経時変化 Fig. 7 Optical powers received by the PD-1 to the

PD-4 as a function of elapsed time.

ファイバの経路を機械的に制御する方式に基づくた め,経路切替時に振動が発生し,PD-4の受光パワー にチャタリングが生じている.FP-LDが注入同期か ら外れる時間,すなわち,SMF断線検出にかかる時 間は0.13 ms,1 × 2 SWが安定し無線回線への切替が 完了するまでの合計時間は2.4 msであり,有無線両 用通信システムに適用するにあたり十分な切替速度で あることを確認した.断線検出時間:0.13 msは,自 己注入同期FP-LDの状態遷移に,切替時間:2.4 ms から断線検出時間:0.13 msを除いた2.27 msは,本 実験で用いた1 × 2 SWの回線切替に,それぞれ起因 する.断線検出時間については,FP-LDの物理現象 に起因するためこれ以上の短縮は見込めないが,切替 時間に関しては,より高速切替が可能な光スイッチを 適用することで短縮可能である.以上により,提案方 式を用いることで,簡易な装置構成で,自律的かつ迅 速な光ファイバ断線復旧が実現できる見込みを得た. 4. 2 RoF有無線シームレス伝送実験 有無線両用通信システムにおいて,無線バックアッ プ区間数や光ファイバ伝送距離などのシステムパラ メータを設計するためには,有線光ファイバ伝送を無 線伝送に切り替えた場合の信号品質の劣化を定量的に 把握する必要がある.そこで,提案する自律型光ファ イバ断線復旧方式を組み込んだ10-Gbit/s RoF有無 線シームレス伝送実験を行った. 図8に実験構成を示す.光送信器と光受信器とを接 続する光ファイバ伝送路上に,提案方式による有無線 切替ノード1及び2を挿入した.光送信器と有無線 切替ノード1,有無線切替ノード2と光受信器は,そ

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図 8 10 Gbit/s有無線シームレス切替伝送の実験構成

Fig. 8 Experimental setup for 10 Gbit/s optical and radio seamless transmission.

れぞれ20 km長のSMFで接続した.提案方式を適 用した有無線切替ノード1及び2は,両者を接続す る1-km SMFが断線した場合に,自律的にバックアッ プ回線へ切り替わる構成とした.本実験では,1-km SMFの断線検出・回線切替に伴う伝送ペナルティを定 量的に解析するため,無線伝送区間に相当するPDと IMの間を同軸ケーブルで模擬した.したがって,無 線伝送による自由空間伝搬損失や大気減衰などのレベ ル変動の影響は,本実験では考慮していない. 光送信器において,二つの無相関な5 Gbaudの15 段擬似ランダムビット列(PRBS-15)信号を,IQミキ サを用いて13.75 GHzの10-Gbit/s QPSK信号に変 換した.当該10-Gbit/s QPSK信号を用いて,光強 度変調器(IM)により中心波長1535 nmのRoF信号 (光変調度:25%)を生成した.エルビウム添加光ファ イバ増幅器(EDFA)によりRoF信号を光増幅した後, 20-km SMFを介して有無線切替ノード1へ入射した. 有無線切替ノード1において,波長分散によりRoF信 号の両サイドバンド間で生じるRFパワーフェージン グの影響を補償するため[16],−340 ps/km(20-km SMF伝送時の波長分散量に相当)の分散補償ファイ バモジュール(DCM)を挿入した. 1-km SMFが断線していないとき,RoF信号は当 該1-km SMFを介して有無線切替ノード2に入射 し,有無線切替ノード2のEDFAで光増幅された後, 20-km SMFを伝搬して光受信器に到達する.一方, 1-km SMFが断線した場合は,有無線切替ノード1及 び2にてバックアップ回線へ自律的に切り替え,有無 線切替ノード1内のPDで受信した10-Gbit/s QPSK 信号を,有無線切替ノード2内のIMにおいて中心 波長1535 nmのRoF信号に再変換した後,20-km SMFを伝搬して光受信器に到達する.光受信器では, −340 ps/kmのDCMで波長分散の影響を補償後に 直接検波した10-Gbit/s QPSK信号を,IQミキサを 用いて13.75 GHzのトーン信号とミキシングするこ とで,二つの5 Gbaudベースバンド信号へ変換した. 当該ベースバンド信号をオシロスコープに取り込み, オフラインのデジタル信号処理を施して,受信ベース バンド信号の信号対雑音比(SNR)を測定した. 有線光ファイバ伝送を無線伝送に切り替えた場合の 信号品質の劣化を解析するため,図8に示すように, 光送信器におけるEDFA直後(A),有無線切替ノー ド1におけるDCM直後(B),有無線切替ノード2に おけるEDFA直後(C),及び光受信器におけるDCM 直後(D)の計4箇所で,光ファイバ断線有無における SNRを測定した.図9に,光ファイバ断線有無にお けるSNRダイヤグラムとコンスタレーションを示す. (A)から(B)の区間,すなわち,光送信器から有無線 切替ノード1までの20-km SMF伝送区間では,SNR が21.3 dBから21.1 dBに劣化することが確認でき る(SNR劣化量:0.2 dB).本SNR劣化は,DCMに よる波長分散補償の過不足に起因すると想定される. (B)から(C)の区間において,光ファイバが断線して いない場合にはSNRの劣化は見られないが,光ファ イバが断線した場合には,RoF信号への再変換により SNRが21.1 dBから20.0 dBへ劣化する(SNR劣化 量:1.1 dB).最後に,(C)から(D)の区間,すなわ ち,有無線切替ノード2から光受信器までの20-km SMF伝送区間では,1-km SMFの断線有無に依存せ ず,SNRの劣化量は0.2 dBである.

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図 9 光ファイバ断線有無における SNR ダイヤグラムとコンスタレーション Fig. 9 SNR diagram and constellations with or without fiber failure.

以上の実験結果から,10-Gbit/s QPSK信号に対す るSMF伝送ペナルティ(SNR劣化量)は10 kmあ たり約0.1 dBと見積もられ,有無線両用通信システ ム全体に与えるインパクトは大きくないと言える.一 方,有無線伝送路の切替に伴うSNR劣化量は1.1 dB で,SMF伝送ペナルティと比較して影響は大きいが, 7%オーバヘッドの前方誤り訂正符号(FEC)限界と なるSNR:8.5 dB(ビット誤り率:3.8 × 10−3に相 当)[17]に対してその影響度は小さく,十分なSNR マージンを確保可能である. 切替ノード1から2に向かう片方向のみの構成で は,FP-LD監視光の多重によるSNR劣化は確認さ れなかったが,実システムでの双方向伝送時には,光 ファイバ内非線形の影響を考慮する必要がある.本実 験では,機材の都合により,監視光として1550 nm, データ信号として1535 nmが中心波長の光源をそれ ぞれ用いたが,実用上は,監視光を1.3 μm帯,デー タ信号を1.5 μmとすることが望ましい.このような 波長配置とすることで,非線形光学効果の一つである 誘導ラマン散乱を回避可能な,120 nm以上の十分な 波長間隔を確保できる[18]. SNRと無線バックアップ区間数の関係を図10に示 す.実線は実際の測定値,点線は実験結果から見積も られる計算値を,それぞれ示している.図9の実験結 果では,光送信器直後のSNRが21.3 dBで,有無線 図 10 SNRと無線バックアップ区間数の関係 Fig. 10 10 Relationship between SNR and the number

of backup radio sections.

伝送路の切替に伴うSNR劣化量が1.1 dBであった ことから,1箇所の光ファイバ断線をバックアップし た場合のSNRは20.2 dBとなる.SMF伝送を考慮 しない場合,FEC限界が8.5 dBであることから,11 箇所の光ファイバ断線までバックアップ可能(11箇所 バックアップ後のSNR:9.2 dB)であると見積もら れる.なお本計算では,バックアップ区間における光 再変調のノイズ成分が理想的な白色ガウス雑音に基づ き,各バックアップ区間におけるSNR劣化量が一様

(9)

に1.1 dBとなると想定している.実際のシステムで は光ファイバ伝送ペナルティを考慮する必要があるが, 図1のCO-1から2までの合計光ファイバ伝送距離を 高々100 kmとすると,図9の実験結果から100 km 伝送によるSNR劣化量は約1 dBと見積もられる. したがって,光ファイバ伝送ペナルティも含めた 場合,10箇所の光ファイバ断線までバックアップ可 能(100-km SMF伝送及び10箇所バックアップ後の SNR:9.3 dB)であると考えられる.実際のバック アップ区間では,無線伝送時の大気減衰量の変動(実 際に使用する周波数帯の伝搬特性に依存)などにより, IMへのRF入射パワー揺らぎが懸念される.無線伝 送区間はノイズ成分がないため,大きなSNR劣化要 因とはならないが,劣化量として最大0.5 dBを見積 もると,7箇所までバックアップ可能と計算される.以 上の考察から,複数のバックアップ区間を含む有無線 シームレス伝送を実現するためのシステム設計指針を 明らかにした.

5.

む す び

本論文では,複数の光ファイバ断線区間を自律的に, かつ信頼性高くバックアップするための技術として, ファブリ・ペロー・レーザの自己注入同期を利用した 光ファイバ断線復旧方式を提案し,ネットワークライ フラインとして必要とされる復旧時間内に,光ファイ バ断線区間を無線バックアップ回線へ自律的に切替可 能であることを実証した.提案方式により,従来は作 業者が出向いて対応していた複数箇所の光ファイバ断 線を,信頼性高く自律的に,かつ迅速に復旧可能とな る.更に,提案方式を組み込んだRoF有無線シーム レス伝送実験により,有無線回線切替による信号品質 の劣化を定量化することで,複数のバックアップ区間 を含む有無線シームレス伝送を実現するためのシステ ム設計指針を明らかにした.本検討結果は,光ファイ バ通信インフラに対して社会的に求められている耐災 害性を向上させるために有益となる. 本 研 究 成 果 は ,独 立 行 政 法 人 情 報 通 信 研 究 機 構 (NICT)の委託研究「高い臨時設営性を持つ有無線 両用通信技術の研究開発」により得られたものである. 文 献

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[8] A. Kanno, K. Inagaki, I. Morohashi, T. Sakamoto, T. Kuri, I. Hosako, T. Kawanishi, Y. Yoshida, and K. Kitayama, “20-Gb/s QPSK W-band (75-110 GHz) wireless link in free space using radio-over-fiber tech-nique,” IEICE Electron. Express, vol.8, no.8, pp.612– 617, April 2011.

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[11] N. Tomita, H. Takasugi, N. Atobe, I. Nakamura, F. Takaetsu, and S. Takashima, “Design and perfor-mance of a novel automatic fiber line testing system with OTDR for optical subscriber loops,” J. Light-wave Technol., vol.12, no.5, pp.717–726, May 1994. [12] J. Pesic, E.L. Rouzic, N. Brochier, and L. Dupont,

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[17] ITU-T Recommendation G.975.1, “Forward error correction for high bit-rate DWDM submarine sys-tems,” 2004.

[18] I.P. Kaminow and T.L. Koch, Optical fiber telecom-munications, 3rd ed., vol.A, Academic Press, 1997. (平成 26 年 10 月 10 日受付,27 年 2 月 2 日再受付, 6月 9 日公開) 大石 将之 (正員) 平 18 東工大・工・電気電子卒.平 20 同大 学院理工学研究科修士課程了.同年 KDDI (株)入社.以来,高速光アクセス伝送技 術,マイクロ波フォトニクス技術の研究に 従事.現在,(株)KDDI 研究所光アクセス ネットワークグループ研究員.平 24 国際 会議 COIN Young Engineer Award,平 25 本会学術奨励賞 各受賞. 神谷 尚保 (正員) 平 19 東京工科大・コンピュータサイエ ンス卒.平 21 慶大大学院政策・メディア研 究科修士課程了.同年 KDDI(株)入社. 現在,(株)KDDI 研究所スマートワイヤレ スグループ開発エンジニア.高速光アクセ ス伝送技術の研究を経て,現在,無線通信 による端末制御技術の研究に従事. 西村 公佐 (正員:シニア会員) 昭 61 東工大・工・電子物理卒.昭 63 同 大学院理工学研究科修士課程了,平 20 同 大学院総合理工学研究科博士課程了.昭 63 国際電信電話(株)(現 KDDI(株))入社. 以来,可視発光半導体材料・素子,光信号 処理技術,光アクセスネットワーク技術等 の研究開発に従事.現在,(株)KDDI 研究所アクセスネット ワーク部門研究マネージャー.応用物理学会,SID 各会員. 田中 啓仁 (正員) 平 6 阪大・工・電子情報卒.平 8 同大学 院工学研究科修士課程了.同年国際電信電 話(株)(現 KDDI(株))入社.以来,長 距離大容量光伝送技術,光アクセス伝送技 術の研究に従事.平 13 米・マサチューセッ ツ工科大留学.現在,(株)KDDI 研究所光 アクセスネットワークグループリーダー.博士(工学).平 15 本会学術奨励賞受賞.

図 3 自律型光ファイバ断線復旧方式の概略構成
図 5 光ファイバ断線検出・回線切替実験の構成
Fig. 6 Optical power received by the PD-2 as a function of the injection power into the FP-LD.
図 8 10 Gbit/s 有無線シームレス切替伝送の実験構成
+2

参照

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