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一端を短絡した結合線路を用いた低消費電力な電力合成回路

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Academic year: 2021

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(1)

一端を短絡した結合線路を用いた低消費電力な電力合成回路

青山

裕之

a)

大島

湯川

秀憲

高橋

米田

尚史

宮崎

守泰

Low-Loss Combiner Using Coupled Transmission Line with Short-Circuited

Terminal

Hiroyuki AOYAMA

†a)

, Takeshi OSHIMA

, Hidenori YUKAWA

, Toru TAKAHASHI

,

Naofumi YONEDA

, and Moriyasu MIYAZAKI

あらまし 終端抵抗を用いたアイソレーション付き電力合成回路は,所望の振幅・位相で励振した場合であっ ても,等価回路上,中心周波数以外の周波数において終端抵抗で損失が生じるという課題がある.本論文では, 前記課題の解決のため一端が短絡された結合線路を用いた電力合成回路を提案し,その動作原理について述べる. また,先行研究として,Gysel 電力合成回路/分配回路,ブランチラインカプラ及びラットレースカプラとの比較 検討を行い提案回路の有効性を検証している.設計例としてS 帯電力 2 合成回路の設計を行い,提案回路の実現 性を検証している. キーワード 電力合成回路/分配回路,結合線路,終端抵抗,耐電力

1.

ま え が き

近年,窒化ガリウムに代表される半導体を用いた 固体電力増幅器(Solid-State Power Amplifier.以下

SSPAとする)を用いた高出力増幅回路が着目されて いる.SSPAは小形,高いバイアス電源が不要かつ保 守が容易などといった長所があり[1],通信[2],レー ダ[3]及びマイクロ波加速装置[4]など多岐にわたって 利用されている.しかしながら,SSPAは一つあたり の出力電力は小さいため,高い出力を得るためには, 複数のSSPAでそれぞれ増幅した電力を電力合成回路 によって電力合成する必要がある.このとき,電力合 成回路には複数のSSPAで増幅された大電力が入力さ れるため,高い耐電力をもつことが求められる.また, 電力増幅器の個体ばらつきによるアクティブ反射係数 の変動を低減するため,電力合成回路はその入力端子 同士が互いにアイソレートされていることが望ましい. 文献[5]で示されているWilkinson電力合成回路/ 分配回路は,分岐回路,1/4波長インピーダンス変成 三菱電機株式会社情報技術総合研究所,鎌倉市

Information Technology R&D Center, Mitsubishi Electric Corporation, 5–1–1 Ofuna, Kamakura-shi, 247–8501 Japan a) E-mail: [email protected] 線路及びアイソレーション抵抗からなり,入力端子間 アイソレーションを実現する高周波帯の電力合成回 路/分配回路として広く知られている.Wilkinson電 力合成回路では,入力電力の振幅・位相にばらつきが 生じた場合にアイソレーション抵抗によってアクティ ブ反射係数が保たれる.しかしながら,回路に短絡端 がないためアイソレーション抵抗で生じた熱が放熱さ れにくく,回路の耐電力に課題があった.これに対し て,文献[6]ではWilkinson電力合成回路/分配回路 のアイソレーション抵抗を中心周波数で同等の特性と なるよう伝送線路と終端抵抗に置き換えたGysel電力 合成回路/分配回路が示されている.Gysel電力合成 回路では終端抵抗で生じた熱が短絡端を介し地導体に 放熱されることを利用して回路の耐電力を改善してい る.また,ブランチラインカプラやラットレースカプ ラのような方向性結合器[7], [8]も前記回路と同様にア イソレーション特性を有し,かつ,終端抵抗を利用し ていることからしばしば大電力の電力合成のために用 いられている.しかしながら,これらの終端抵抗を用 いた回路は,電力を所望の振幅・位相で励振した場合 であっても,中心周波数以外では終端抵抗で損失が生 じる.また,それに伴い終端抵抗で発熱が生じ,回路 の耐電力が劣化するといった課題がある.

(2)

そこで,本論文ではGysel電力合成回路の一部の伝 送線路を結合線路に置き換えた新たな電力合成回路を 提案する.本回路は所望の振幅・位相で励振した場合 には,等価回路上,周波数によらず終端抵抗での消費 電力が0となり,従来の電力合成回路と比較して低消 費電力な電力合成回路を実現できる. 本論文では,まず,2.で提案する電力合成回路の構 成とその動作原理について述べる.3.では回路シミュ レーション結果を基に先行研究例との比較を行う.4. では提案回路の電磁界シミュレーション結果を示し, 最後に5.にてむすびとする.

2.

提 案 回 路

2. 1 等 価 回 路 図1 (a),(b)に提案する電力合成回路の等価回路 と,提案回路を構成する要素回路をそれぞれ示す.本 回路は,n 個(n ≥ 2)の入力端子(Port 1∼n)と 出力端子(Port 0)をそれぞれ接続する1/4波長イ ンピーダンス変換線路と,結合線路と終端抵抗から 構成される.なお,図中の ZT iZeiZoi 及び Rii = 1, 2, · · · , n)はそれぞれ1/4波長インピーダン ス変換線路の特性インピーダンス,結合線路の偶奇 モードインピーダンス,終端抵抗の抵抗値を表す.ま た,θ は1/4波長インピーダンス変換線路及び結合線 路の電気長を表し,中心周波数においてθ = π/2 rad. となるよう設定される. 提案回路では,結合線路は入力端子が接続された伝 送線路上の対となる端子は短絡され,また,各結合線 図 1 提案する電力n 合成/分配回路の等価回路 路の短絡された端子と対角関係の端子は互いに接点O で接続される.更に接点Oが接続された伝送線路上の 対となる端子には終端抵抗が接続される. 提案回路では結合線路に短絡端を設けているため, 入力端子に接続された電力増幅回路から信号線を介し て電力合成回路へ伝熱してきた熱が短絡部を介して放 熱性のよい地導体へ放熱され,終端抵抗へかかる熱が 低減される.また,前述のように他の回路より伝熱し てきた熱と抵抗で発生する熱とを切り分けることがで き,耐熱設計が容易となるといった効果が見込まれる. 更に,以降に述べるように回路を設計することで,所 望の振幅・位相で励振した場合には,等価回路上,周 波数によらず終端抵抗での電力消費が生じず,かつ中 心周波数において入力端子同士が完全にアイソレート される. 2. 2 動 作 原 理 提案回路の基本的な動作は,Wilkinson電力合成回路 やGysel電力合成回路と同様に,同相で入力された電力 を合成する分岐回路として動作する.そこで,各入力端 子(Port 1∼n)へそれぞれ電力Pi (i = 1, 2, · · · , n) を入力した場合にアクティブ反射振幅が0となるよう な分岐回路を考える.なお,入力電力Pi は正の実数 であり,かつP1≤ P2≤ · · · ≤ Pnの関係であるとす る.ここで,入力電力Pi をその総和で規格化した電 力合成比ベクトルK を次式のように定義する. K = [K1 K2 · · · Kn]t ≡ [P1 P2 · · · Pn]t  n  i=1 Pi  (1) 電力合成比Ki(i = 1, 2, · · · , n)は互いにK1≤ K2 · · · ≤ Kn≤ 1の関係であり,また,その総和は1と なる.所望の電力Piで回路を励振した場合に,回路 の各伝送回路,結合線路及び終端抵抗における電力比 が所定となるためには,各部のインピーダンス及び抵 抗値は以下の関係を満足することが必要となる. ri= K1/Ki (2a) ZSi= riZS1 (2b) ZT i= riZT 1 (2c) Zei= riZe1 (2d) Zoi= riZo1 (2e) Ri= riR1 (2f) 式(2)からも明らかなように,図1で示した回路はイ

(3)

図 2 偶モード等価回路と奇モード等価回路 ンピーダンス比が異なるn 個の要素回路と負荷抵抗 が互いに並列接続された回路となっている.このよう な回路において,入力端子の反射係数及び入力端子間 の通過振幅は,図2に示すように要素回路同士の接点 を開放あるいは短絡とした偶モード/奇モード等価回 路の入力反射係数Γe,Γoを用いて以下のように表現 できる(付録参照). Sii= KiΓe+ (1 − Kio (3a) Sij=  KiKje− Γo) (3b) ここで,j1 ≤ j ≤ nかつj = iを満たす任意の整 数である.式(3)より,図1で示した回路において入 力反射係数及び入力端子間の通過係数を同時に0とす るためにはΓe = Γo= 0となればよいことがわかる.

なお,図2においてO.C.は開放端(Open Circuited)

を表す.図2 (a)で示した偶モード等価回路では結合 線路の四つの端子のうち接地されていた端子と対角の 位置関係にある端子が開放される.また,図2 (b)で 示した奇モード等価回路では前記の位置関係にある 端子が短絡される.次に,図2で示した偶モード/奇 モード等価回路に対して,それらの結合線路の終端条 件に着目し図3に示す等価回路を基に結合線路を等価 変換[9]する.等価変換により得られた回路を図4に 示す.偶モード等価回路では結合線路が回路変換され, 図4 (a)に示したように入力端子側に先端短絡1/4波 長スタブが,終端抵抗側に先端開放1/4波長スタブが それぞれ接続された回路となり,入力端子と終端抵抗 が完全に分離された回路となる.これより,入力端子 の電源電圧V1,V2をV1= V2として励振した場合に は周波数によらず終端抵抗での電力消費が生じない. 図 3 結合線路の等価回路 図 4 回路変換後の偶モード/奇モード等価回路 また,偶モード等価回路は,中心周波数では入力端子 と負荷が1/4波長インピーダンス変換線路によって接 続された回路となるため,次式のように特性インピー ダンスを決定することで,偶モード等価回路における 反射係数Γe はΓe= 0となる. ZT i=  ZSiZL0/Ki (4) 一方,奇モード等価回路は図4 (b)に示したように 入力端子と終端抵抗が1/4波長線路で接続され,かつ 入力端子と終端抵抗にそれぞれ並列に1/4波長先端 短絡スタブが接続された回路へ等価変換できる.した がって,中心周波数では入力端子と終端抵抗は1/4波 長線路を介して接続される.そのため,次式のように 結合線路の偶奇モード特性インピーダンスと終端抵抗 値を決定することで,奇モード等価回路における反射 係数Γo はΓo= 0となる.

(4)

1 ZSiRi = Yoi− Yei 2 (5) ここで,YeiYoi はそれぞれ結合線路の偶奇モード 特性アドミタンスを示し,Yei= 1/ZeiYoi = 1/Zoi で表される.以上のように,式(4),(5)のように回 路パラメータを決定することで,中心周波数において Γe= Γo= 0とすることができ,図1で示した回路に おいて入力反射係数及び入力端子間の通過係数を同時 に0とすることができる. 2. 3 設 計 手 順 提案回路の各回路パラメータは以下の手順により設 計される. 1)入力電力Pi (i = 1, 2, · · · , n)を基に式(1)よ り電力合成比ベクトルKを求める. 2)出力端子の負荷インピーダンス ZL0 及び入力 端子の内部インピーダンスZS1 を決定する. 3)式(4),(5)よりZT 1Ze1Zo1R1 を決定す る.このとき,Ze1Zo1R1 は式(5)を満足 する範囲で自由度があるため,実現可能なイン ピーダンス及び抵抗値の組み合わせを設定すれ ばよい. 4)式(2)から他の回路パラメータを求める. 等価回路の回路パラメータが得られれば,あとはそれ らを実現するよう電磁界シミュレーターなどを用いて 回路の実構造を設計すればよい.

3.

回路シミュレーションと比較検討

ここでは,提案回路の回路シミュレーション結果を 示す.また,終端抵抗での消費電力に関し,提案回路 と先行研究例[6]∼[8]との比較検討を行い,提案回路 の有効性を示す. 3. 1 回路シミュレーション まず,提案回路において電力合成比 K1,K2 を K1 : K2 = 0.5 : 0.5 あるいはK1 : K2 = 1/3 : 2/3 とした場合の回路パラメータの計算例を表1及び表2 に示す.なお,ここでは,いずれの電力合成比の場合 においても負荷インピーダンスZL0 を50 Ωとした. K1 : K2 = 0.5 : 0.5 とした場合には,各伝送線路及 び抵抗のインピーダンスを含め対称回路となり,また, K1 : K2 = 1/3 : 2/3とした場合には,各伝送線路 及び抵抗のインピーダンスがそれぞれ1/2倍の関係 となっていることがわかる.次に,図1で示した回路 においてn = 2とした電力2合成回路について表1 及び表2を基に回路シミュレーションを行った.結果 表 1 回路パラメータ(K1:K2= 0.5 : 0.5 の場合) 表 2 回路パラメータ(K1:K2= 1/3 : 2/3 の場合) 図 5 提案回路の回路シミュレーション結果 を図5に示す.図5 (a),(b)ではそれぞれ横軸を規格 化周波数,縦軸をSパラメータの振幅特性としてい る.なお,ポート番号については図1で示したよう に出力端子をPort 0,入力端子をPort 1,2とした. 図5 (a)に着目すると規格化周波数1において通過係 数S10,S20 がともに|S10| = |S20| = −3.01 dBと なっており,等振幅となっていることが確認できる. 同様に図5 (b)より,通過係数S10,S20 はそれぞれ

(5)

|S10| = −4.77 dB|S20| = −1.76 dBとなっており, その電力差は1 : 2すなわち3.01 dBとなっているこ とが確認できる.また,いずれにおいても規格化周波 数1では反射係数S00,S11,S22 及び入力端子間の 通過係数S12がともに0となっていることが確認でき る.これより,提案回路は,2. 2で述べたように,中 心周波数において各端子が無反射となり,かつ,入力 端子同士が完全アイソレートされていることが確認で きる. 3. 2 終端抵抗での消費電力 次に,提案回路と先行研究との比較検討結果を示し, 提案回路の有効性を検証する.ここでは先行研究例と してGysel電力合成回路[6],ブランチラインカプラ 及びラットレースカプラ[7], [8]との比較を行った.こ こでは,所望の励振振幅・位相で各回路を励振した場 合における終端抵抗での消費電力を入力電力の合計値 で規格化した,規格化消費電力Lに関して比較した. 規格化消費電力L は終端抵抗の代わりに解析ポート (例えばPort 4とする)を設けた回路の散乱行列の要 素を基に計算でき,次式で与えられる. L =√K1S41+ K2S42ejΔθ 2 (6) ここで,Δθ はPort 1とPort 2の励振位相差を示 し,ブランチラインカプラではΔθ = −π/2 rad.と し,他の回路ではΔθ = 0 rad.とした.図6に規格化 消費電力L の計算結果を示す.同図(a),(b)はそれ ぞれ電力合成比をK1: K2= 0.5 : 0.5とした場合と, K1: K2= 1/3 : 2/3とした場合の計算結果を示して いる.なお,提案回路及びGysel電力合成回路につい ては二つある終端抵抗のうち,入力される電力が大き い方の計算結果を示している.本計算結果より,提案 回路を除く他の回路に関しては,中心周波数において は終端抵抗での消費電力が0となるものの,中心周波 数から離れるのに伴い,消費電力が大きくなっている. これに対し,提案回路ではいずれの電力合成比におい ても終端抵抗での消費電力が0となっていることがわ かる. このように,先行研究として挙げた回路はいずれも 中心周波数以外では終端抵抗において消費電力が生じ るが,提案回路は所望の振幅・位相で励振したときに, 周波数によらず終端抵抗へ電力が入力されず,終端抵 抗での消費電力が0となることがわかる.以上より提 案回路の有効性を示した. 図 6 規格化消費電力L の計算結果

4.

設 計 例

ここでは,提案する電力合成回路の一例として,電 力等合成回路の設計例を示し,提案回路の実現性を検 証する.なお,本設計例では中心周波数は2.5GHzと し,電磁界シミュレーションにより表1に示した各回 路パラメータを実現するよう設計を行った.設計した 電力合成回路の構造を図7に示す.同図(a),(b)は それぞれ設計した電力合成回路の透視図,分解図を示 し,図(c)は設計に用いた基板の層構成を示す.図7 で示した構造では,3. 2と同様に終端抵抗での消費 電力を計算するため,二つの終端抵抗の代わりに解 析ポート(Port 3,4)を設けている.また,本回路 は3枚の両面基板にエッチングで配線パターンを形成 し,それらを積層する構成を採用している.これによ り,結合線路に関して幅広面結合を用いることができ, 大きな結合度を実現することができる.なお,ここで は,図7 (c)に示したように各基板の配線パターン層

(6)

図 7 設計した電力合成回路の構造 をL01∼L06と呼称する.なお,図中には示されてい ないがL01及びL06は地導体であり,L03及びL05 に配線パターンを設けている.また,結合線路の四つ の端子のうち入力端子が接続された端子と対となる端 子は短絡する必要がある.そこで,L05とL06を接 続する導体を配置し,それと配線パターンを接続する ことで短絡させる構造とした.更に,Port 1とPort 2の中間地点に合成回路の構造対称面を跨ぐようイン ピーダンス整合用の浮遊導体をL03に配置している. これは,奇励振時に浮遊導体が仮想電気壁により短絡 されることを利用したものであり,偶モード反射係数 を変化させずに奇モード反射係数のみを調整するため に設けている. 図 8 電力合成回路の設計結果 図 9 規格化消費電力L の電磁界解析結果 設計した電力合成回路の電磁界シミュレーション 結果を図8に示す.なお,電磁界シミュレーションで は導体損及び誘電体損は無損失としている.反射係 数S00,S11 に着目すると,設計中心周波数2.5GHz においてともに振幅が最小となっていることがわか る.アイソレーションS12は2.65GHzにおいて最小 となり,設計中心周波数と比べて高周波側にシフトし ているものの,設計中心周波数2.45GHzにおいては |S12| = −27.7 dBとなり,良好なアイソレーション特 性が得られていることが確認できる.また,通過係数 S10,S20 は|S10| = |S20| = −3.01 dBとなり,等振 幅となっていることがわかる.次に,提案回路と先行 研究例[6]∼[8]に関して電磁界シミュレーション結果 を基に終端抵抗での規格化消費電力Lを算出した.そ の計算結果を図9に示す.本計算結果では,提案回路 を含む四つの回路について図7 (c)の緒元を基に電磁 界シミュレーションにより回路を設計し,得られたシ ミュレーション結果を基に計算した.図9より,他の 回路は中心周波数付近で零点が生成され,零点周波数

(7)

から離れるのに伴い規格化消費電力L が大きくなっ ている.これに対し,提案回路は広帯域に規格化消費 電力 L を小さく設計できており,解析周波数2.1∼ 2.9 GHzにおいて最大0.0016以下となった.これよ り,提案回路の実現性を確認するとともに,実構造に おいても先行研究例と比較して終端抵抗での消費電力 が小さいことを確認した.

5.

む す び

本論文では,結合線路を用いた高耐電力な電力合成 回路について提案した.Gysel電力合成回路などの先 行研究例では,理想的な励振条件であっても中心周波 数以外では終端抵抗での損失が生じるという課題が あった.これに対し,提案回路は,所望の振幅・位相 で励振をした場合には,等価回路上,終端抵抗での損 失が周波数によらず0となる特徴をもつ.回路シミュ レーションにより提案回路が前述の動作をすることを 確認し,提案回路の有効性を示した.提案回路の設計 例として,電磁界解析によりS帯電力2合成回路を設 計し,設計した回路構造においても電力合成回路とし て動作するとともに,終端抵抗での消費電力が中心周 波数以外の帯域でも非常に小さいことを示し,提案回 路の実現性を確認した. 文 献

[1] M. Casto, M. Lampenfeld, P. Jia, P. Courtney, S. Behan, P. Daughenbaugh, and R. Worley, “100W X-band GaN SSPA for medium power TWTA replace-ment,” IEEE 12th Wireless and Microwave Technol-ogy Conference, FL, USA, pp.1–4, April 2011. [2] N. Escalera, W. Boger, P. Denisuk, and J. Dobosz,

“Ka-band 30 watts solid state power amplifier,” IEEE MTT-S Int. Microw. Symp. Dig., vol.1, pp.561– 563, June 2000.

[3] K.H. Kim, Y.R. Lee, J.H. Joo, G.W. Choi, H.J. Kim, J.J. Choi, and D.M. Park, “2.7 - 3.1 GHz, 1.5 kW pulsed solid-state power amplifier with auto-matic gain equalization circuit for radar application,” Proc. IEEE Radar Conference 2007, pp.1044–1048, April 2007.

[4] S.H. Lee, D.H. Lee, and J.H. Chang, “X-band 1kW SSPA using 20-way hybrid radial combiner for ac-celerator,” Proc. Asia-Pacific Microw. Conf., pp.1–4, Dec. 2016.

[5] E.J. Wilkinson, “An N-way hybrid power divider,” IRE Trans. Microw. Theory Techn., vol.8, no.1, pp.116–118, Jan. 1960.

[6] U.H. Gysel, “A new N-way power divider/combiner suitable for high-power application,” IEEE MTT-S Int. Microw. Symp. Dig., vol.75, pp.116–118, May

1975.

[7] W. Tyrrell, “Hybrid circuits for microwaves,” Proc. IRE, vol.35, no.11, pp.1294–1306, Nov. 1947. [8] C.G. Montgomery, R.H. Dicke, and E.M. Purcell,

Principle of Microwave Circuits, pp.309–313, London, UK: IET, 1987.

[9] G.L. Matthaei, L. Young, and E.M.T. Jones, Mi-crowave Filters, Impendence-Matching Networks, and Coupling Structures, pp.224–226, Norwood, MA, USA: Artech House, 1980.

(3)の導出 ここでは,式(3)の導出過程について説明する. まず,図A· 1に示すようにインピーダンス比が異 なる n 個の要素回路が接続された n ポート回路に ついて考える.要素回路同士のインピーダンス比rij (i, j = 1, 2, · · · , n)は次式のように定義され,それら は各入力端子からの入力電力比Ki(i = 1, 2, · · · , n) によって表される. rij= Ki/Kj (A·1) なお,Ki は正の実数であり,その総和は1となるよ う規格化されているものとする.ここで,p番目の要 素回路(p = 1, 2, · · · , n)に着目すると,それ以外の 回路はインピーダンス比だけが異なる構成要素が等し い回路が互いに並列接続されていることから,それら を合成すると図A· 2に示す回路が得られる.本図に

おいてPort EPort pを除いたPort 1∼nを合成

して得られるポートを示し,要素回路pと要素回路E のインピーダンス比rE は次式のよう表せる. rE= ⎛ ⎜ ⎝ n  i=1 i=p 1 rpi ⎞ ⎟ ⎠ −1 = Kp 1 − Kp (A·2) 図 A· 1 複数の要素回路から構成される回路

(8)

図 A· 2 要素回路 p 以外を合成してなる 2 ポート回路 次に,図A· 2で示した回路に対して偶奇モード理論 に基づき回路解析を行う.本回路において線分T-T に対して電圧分布が偶対称となるような励振を考える. このような電圧分布は次式のように二つの電源に等し い電圧を与えた場合に生じる. VP = VE= V0 (A·3) このとき,線分T-T には仮想磁気壁を適用でき,ま た,Port p及びPort Eからそれぞれ回路へ入力され る電力PpePEeは以下のように表される. Ppe= |Vp|2/ZSp= |V0|2/ZSp (A·4a) PEe= |VE|2/ZSE = |V0|2/rEZSp= Ppe/rE (A·4b) したがって,Port EからPort pの入力電力の1/rE 倍の電力を入力すればよい.次に,本回路において線 分T-T に対して電流分布が奇対称となるような励振 を考える.このような電流分布は次式の励振条件を与 えた場合に得られる. VP = −VE/rE= V0 (A·5) このとき,線分T-T には仮想電気壁を適用でき,ま た,Port p及びPort Eからそれぞれ回路へ入力され る電力PpoPEo は以下のように表される. Ppo= |Vp|2/ZSp= |V0|2/ZSp (A·6a) PEo= |VE|2/ZSE = |−rEV0|2/rEZSp= rEPpo (A·6b) したがって,Port E からPort pの入力電力のrE倍 の電力を入力すればよい.以上に述べた二つの励振条 件を基に電力波は図A· 3のように表される.なお,本 図において電力波の負号は位相反転を表す.式(A·3) あるいは(A·5)の励振を与えた場合において,Port p 及びPort Eでのアクティブ反射係数は互いに等しく, 図 A· 3 電源電圧と電力波の関係 それらは図A· 2において線分T-T を開放/短絡とし た偶モード/奇モード等価回路の入力反射係数Γe,Γo とそれぞれ等しい.次に,図A· 3 (a),(b)で示した二 つの回路の重ね合わせを考えると,以下の関係式が得 られる. ap= ae+ ao (A·7a) ap= be+ bo (A·7b) aE= 1r E ae− rEao (A·7c) bE=1r Eae− rEao (A·7d) また,各電力波は以下の関係式で表される. Spp= bp/apa E=0 (A·8a) SEp= bE/apaE=0 (A·8b) SEE= bE/aEap=0 (A·8c) SpE= bp/aEap=0 (A·8d) Γe= be/ae (A·8e) Γo = bo/ao (A·8f) ここで,式(A·7c)においてaE= 0とすると, ae= rEao (A·9) となり,式(A·7)(A·9)を連立すると以下の関係式 が得られる. Spp= 1 1 + rE(rEΓe+ Γo) (A·10a)

(9)

SEp= r E 1 + rEe− Γo) (A·10b) 同様に,式(A·7a)においてap= 0とすると, ae= −ao (A·11)

となり,式(A·7)(A·8)及び(A·11)を連立すると以 下の関係式が得られる. SEE= 1 1 + rEe+ rEΓo) (A·12a) SpE= r E 1 + rEe− Γo) (A·12b) ここで,Port pPort qq1 ≤ p ≤ nかつq = p の任意の整数)の通過係数について考える.Port qPort E に含まれており,その内部インピーダンスと Port E のそれとの比rF は次式で与えられる. rF = ⎛ ⎜ ⎝ n  i=1 i=p 1 rqi ⎞ ⎟ ⎠ −1 = Kq 1 − Kp (A·13) これより,図 A·1 で示した回路においてPort pPort q の間の通過係数は次式で表される. Sqp=√rFSEp (A·14) なお,通過振幅Spq についても上式の導出を pq を入れ替えて行うことで導出でき,Spq= Sqpとなる. よって,図A·1で示した回路において,その入力反射 係数及び通過振幅は式(A·10a)及び(A·14)を基に入 力電力比Ki を用いて以下のように表される. Spp= KpΓe+ (1 − Kpo (A·15a) Spq=KpKqe− Γo) (A·15b) ただし,p = 1, 2, · · · , nであり,q1 ≤ p ≤ nか つq = pの任意の整数である. (2019 年 6 月 19 日受付,10 月 3 日再受付, 2020年 3 月 31 日公開) 青山 裕之 (正員) 平 24 埼大・工・電気電子卒.平 26 同大 大学院修士課程了.同年三菱電機(株)入 社.以来,マイクロ波回路の研究開発に従 事.平 30 年度本会学術奨励賞受賞. 大島 毅 (正員:シニア会員) 平 7 神奈川大・工・電気卒.平 9 電通大 大学院博士前期課程了.同年三菱電機(株) 入社.以来,アンテナ給電回路の研究に従 事.現在,同社情報技術総合研究所アンテ ナ技術部勤務.平 14 年度本会学術奨励賞, 平 24 年度本会論文賞各受賞.IEEE 会員. 湯川 秀憲 (正員) 平 3 早大・理工・応用物理卒.平 5 同大 大学院修士課程了.同年三菱電機(株)入 社.以来,マイクロ波回路の研究開発に従 事.IEEE 会員. 高橋 徹 (正員:シニア会員) 平 4 早大・理工・電気卒.平 6 同大大 学院修士課程了.同年三菱電機(株)入社. 以来,レーダ/通信等の各種アンテナ,レー ダ/データリンク等の各種無線システムの 研究開発に従事.現在,同社情報技術総合 研究所アンテナ技術部に勤務.博士(工学). 平 11 年度本会学術奨励賞,平 23,26∼28 年度本会通信ソサ イエティ活動功労賞,平 25,30 年度本会通信ソサイエティ論 文賞(優秀論文賞)各受賞.IEEE シニア会員. 米田 尚史 (正員) 昭 63 東北大・工・通信卒.平 2 同大大 学院修士課程了.同年三菱電機(株)入社. 以来,マイクロ波・ミリ波帯分波回路,同 分配回路等のアンテナ給電回路の研究開発 に従事.その間,平 9 東北大大学院博士課 程了.現在,同社情報技術総合研究所勤務. 平 15∼18 本会論文誌(和文 C)編集委員,平 23∼25 エレソ財 務幹事,平 25∼27 エレソ副会長.平 2 年度本会篠原賞,2005 R&D 100 Awards (R&D Magazine),各受賞.博士(工学).

宮崎 守泰 (正員:シニア会員) 昭 57 千葉大・工・電気卒.昭 59 同大 大学院修士課程了.同年三菱電機(株)入 社.以来,マイクロ波の電力分配回路,分 波回路,能動回路等のアンテナ給電系及び マイクロ波送受信回路の研究に従事.現在, 同社電子システム事業本部技師長.平 17 R&D 100 Awards (R&D Magazine),平 22 電気科学技術奨 励賞(オーム技術賞)各受賞.博士(工学).IEEE シニア会員.

図 2 偶モード等価回路と奇モード等価回路 ンピーダンス比が異なる n 個の要素回路と負荷抵抗 が互いに並列接続された回路となっている.このよう な回路において,入力端子の反射係数及び入力端子間 の通過振幅は,図 2 に示すように要素回路同士の接点 を開放あるいは短絡とした偶モード / 奇モード等価回 路の入力反射係数 Γ e , Γ o を用いて以下のように表現 できる(付録参照). S ii = K i Γ e + (1 − K i )Γ o (3a) S ij =  K i K j (Γ e − Γ

参照

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