突然発症する足指の痛み 1週目(11月6日放送分) 痛風 ある日突然、足の親ゆびの付け根の関節が赤く腫れて痛みだします。痛みは激烈 で2、3日は全く歩けなくなるほどの痛みです。発作的な症状なので痛風発作 と呼びますが、これはたいていの場合、1週間から10日たつとしだいに治ま って、しばらくすると全く症状がなくなります。ただし油断は禁物で、半年か ら1年たつとまた同じような発作がおこります。そして繰り返しているうちに、 足首や膝の関節まで腫れはじめ、発作の間隔が次第に短くなってきます。また 関節の症状だけでなく、尿酸は腎臓から尿として排出されるので、尿酸が増え れば腎臓にも負担がかかり処理しきれなかった尿酸が結晶化して腎臓の中にた まってしまい、腎障害を起こしてしまうことがあります。腎障害を気がつかず に放っておくと腎不全、さらに尿毒症を起こし、死に至ることもあります。 痛風は圧倒的に男性に多い病気です。これほど男女差のはっきりした病気も少ない のですが、理由は痛風の原因である尿酸の血液中の濃度(血清尿酸値)が女性 では男性より低いからです。これは女性ホルモンに腎臓からの尿酸の排泄を促 す働きがあるからで、閉経後に女性ホルモンの分泌が減ると尿酸値は少し上昇 します。つまり50歳を越えると男女の尿酸値の差は小さくなります。痛風発作 は血清尿酸値が7.0 mg/dlを越える状態が数年間以上は続かないと起こりません。 この7.0 mg/dlになるのに平均的な男性では尿酸値が1.5mg/dl上昇すると到達し てしまいますが、女性では3.0 mg/dl上昇しないと到達しませんので女性はなか なか高尿酸血症にならず痛風にもなりにくいのです。 日常生活で気をつけることは 1.定期的な検診で尿酸値の値を確認する。 2.ストレスや過労を避ける。 3.脂肪を取り過ぎない。 特に動物性脂肪は尿酸の排泄を抑制します。 4.プリン体を含む食品を多くとらない。 プリン体を多く含む動物の内臓、魚の干 物、乾物などは極力控えるようにしてください。
5.アルコールはひかえめに。 アルコールを代謝するときに尿酸が作られます。と くにビールはプリン体を含むだけでなく、高エネルギーであるため肥満の助長 効果もあります。 6.水分を十分にとる。 尿量が増えると尿酸の排泄も増えます。高尿酸血症では、1 日に2L程度の尿量を確保するため、1日に1L程度の水分を余分にとるよう勧め られています。(ただし、肝・腎・心疾患などで水分摂取に制限のある方は注意 が必要です)
突然発症する膝の痛み 2週目(11月13日放送分) 偽痛風 この病気は仮性痛風あるいは偽痛風 Psedogout, さらに 軟骨石灰化症ともよばれ ます。一過性、または反復性に痛風のような激しい関節炎を生じますが、尿酸 結晶以外の結晶により引き起こされる関節炎をいいます。主としてピロリン酸 カルシウムで軟骨の石灰化を伴うことからピロリン酸カルシウム結晶沈着症 (CPPD結晶沈着症)や軟骨石灰化症とよばれております。 ピロリン酸は肝細胞や軟骨細胞など種々の細胞で合成され、総合成量は一日に数kg に達します。濃度の上昇したピロリン酸とカルシウムは軟骨内でピロリン酸結 晶を形成します。軟骨内の結晶は酵素、外力による関節破壊により、関節腔内 へ脱落します。関節腔内では結晶はIgGという免疫グロブリンを吸着し、それを 多核白血球、単球、滑膜細胞などが貪食します。破壊された細胞からはライソ ゾーム酵素や種々の走化因子が放出されて炎症が増強します。 急性発作時には当該関節の腫脹、局所発熱、強い疼痛があり、関節の動きが悪くな るものが多くなります。CPPD結晶があっても急性発作性関節炎を来たさないこ ともあります。発作のないときには、通常の変形性関節症のような病像をとり ますが、膝では内反変形を来たしているものが多いようです。 偽痛風発作は数日またはそれ以上持続し、1∼数箇所の関節炎が特徴です。急性痛 風発作のように突然出現して自然に軽快しますが。このような発作の大半は膝 関節におこります。また約半数の患者さんでは多くの関節の変形が進行します。 治療は? 急性発作時には局所の安静、冷罨法などを行ない、必要ならステロイド剤の関節腔 内注射を行ないます。決定的な治療法はないので対症療法が主体であり、関節 機能の再建には人工関節置換術が行なわれることもあります。
突然発症する肩の痛み 3週目(11月20日放送分) その1.石灰沈着性腱板炎 (せっかいちんちゃくせいけんばんえん) 石灰沈着性腱板炎は、肩関節を包んでいる腱(けん)や靭帯(じんたい)などの組 織を合わせて腱板(けんばん)といいますが、その部分に沈着したリン酸カル シウム結晶によって肩峰下滑液包の炎症が生じる、結晶性滑膜炎の一つです。 結晶性滑膜炎の代表は痛風ですが、石灰沈着性腱板炎も痛風に匹敵する強い疼 痛と運動制限をきたします。典型的には、急激に発症し、1∼2週間ほどで次第 に痛みと運動制限が軽減します。沈着した石灰はいわば炎症の燃料のようなも のですから、これを早く除去することは患者の痛みを早く消退させる意味があ ります。強い痛みが突然起こるので、あわてて病院へ来院される方もいらっし ゃいます。レントゲン検査で石灰化(石灰の沈着 )がみつかれば診断がつきま す。1∼2週で吸収されれば自然に治りますが、痛みが強いときは内服薬や注射 を行うことがあります。 その2.腱板損傷 (けんばんそんしょう) 肩関節は靭帯の中でもとても複雑な動きが可能な関節で、腱板という筋肉群や靭帯 (じんたい)などの組織で周囲を支持され守られています。この腱板が何らか の原因で傷ついた状態が腱板損傷です。原因としては転倒や打撲、スポーツ外 傷などにより発生する場合と、老化現象として肩の使い過ぎが加わり発生する 場合とがあります。 肩の痛みのために動かせなくなるという症状がでます。特に腕を上げる力が低下し、 横から上のほうに腕を上げるとき、70∼120°くらいの範囲で痛みがみられます。 損傷の程度により完全断裂(完全に切れた状態)と部分断裂(部分的に切れた 状態)とに分かれます。損傷の程度により手術が必要となります。レントゲン で明らかな所見がない場合MRIという検査で診断と損傷の程度がわかります。 損傷が大きい場合は可及的早期に手術をしたほうが治療成績も良好です。
原因なく出現する関節の痛み 4週目(11月27日放送分) 関節リウマチ 「関節リウマチ」の大きな特徴は「関節の腫れ」です。「関節リウマチ」はじっ としていても痛い程の腫れが特徴で、その痛みは「かみつかれたような痛さ」 といわれるほどです。手首や手足の指の関節にあらわれることことが多く、左 右両側の関節に生じます。 「腫れと痛み」は、免疫機構の異常による関節の炎症が原因で生じます。 免疫機 構とは、体内に侵入してきた細菌やウイルスなどの外敵を攻撃し排除するシステム で、本来、健康を保つ働きがあります。しかし、何らかの原因でこのシステムに異 常が生じると免疫機構が自分の体の成分や組織を外敵と間違って、自分自身を攻撃 してしまうのです。関節の中で免疫機構と正常な組織との間に争いが起こると、関 節は炎症を起こします。これが「関節リウマチ」です。 関節内で炎症が続くと、 関節全体を包み込んでいる関節包の内側にある「滑膜」に血管や細胞が増え、「滑 膜」自体が厚く腫れてしまいます。正常な状態の「滑膜」には関節の動きをなめら かにする働きがあります。そのため、「滑膜」が腫れると関節の動きがぎくしゃく する、こわばるなどの症状が生じるほか、炎症が進行すると骨の軟骨部分や靱帯、 さらには骨そのものを破壊してしまいます。 リウマチには3つのタイプがあります。 あまり進行しないタイプ 軽症のまま経過します。関節の破壊は比較的ゆっくりと進行し、手や足の指などの 小さな関節に変型や障害が生じることもありますが、膝や股関節といった大きな関 節ではさほど大きな障害は見られません。ほとんどの方はそれほど大きな機能障害 が起こらないので、家庭でも職場でも自立した日常生活を送ることができます。ま た、関節の腫れや炎症も次第に治まっていきます。 徐々に進行するタイプ 病状が長年にわたって徐々に進行し、全身の関節が破壊されます。このタイプでは 早期治療でよい結果が得られる場合がありますが、「関節リウマチ」が進行して複 数の関節が同時に炎症を起こしてしまうと、薬物療法での効果が得られにくくなっ てしまいます。また、関節が壊れて痛い時、鎮痛剤を多用しすぎて副作用が問題に なることも。このような場合は医師と相談しながら適切なタイミングで関節の手術 を行い、痛みをやわらげ、歩く、手を使うといった運動機能を保つことが大切です。 急速に進行するタイプ 関節リウマチと診断されてから、10年以内にほとんどすべての関節が破壊され高度 な機能障害を来すタイプです。現在では手術が発達しているので、関節破壊をはや くみつければ手術療法で自立した生活が可能となりました。 いずれにしても最近は効果のある抗リウマチ剤が開発されましたので、早期診断し 最初から抗リウマチ剤を服用し症状がおさまってきたら薬を減量していくという 治療が主流になっております。