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MRI | 所報 No.53 | 移動軌跡データを用いた鉄道利用者の行動把握

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要 約 目 次

技術レポート

移動軌跡データを用いた

鉄道利用者の行動把握

加藤 勲  鯉渕 正裕 鉄道の運行計画や施設整備計画、駅周辺や沿線における関連事業の展開等におい て、個々の駅の利用者数や OD(乗車駅と下車駅)、移動経路、駅アクセスの方法 等を把握することは大変重要である。本研究では、携帯電話型のプローブデータ収 集機器である PhoneGPS を用いて鉄道利用者を対象にプローブパーソン調査を実 施し、鉄道利用者の交通行動把握における移動軌跡データの活用可能性について検 証した。プローブパーソン調査で得られるデータを鉄道に用いることができれば、 鉄道利用者の行動を省力・安価・短時間で把握したり、従来把握困難であった利用 経路の変化や駅周辺での行動等を把握することが可能になる。 本研究によって、輸送障害発生時の迂回行動、駅へのアクセス・駅からのイグレ ス経路の選択行動、途中の立ち寄り・買い物行動等について、移動軌跡データより 把握可能であることを検証した。 1.背景と目的 2.プローブパーソン調査の概要  2.1 調査の実施概要  2.2 取得データ 3.交通行動分析結果  3.1 輸送障害発生時の迂回行動の把握  3.2 駅アクセス・イグレス経路選択行動の把握  3.3 立ち寄り・買い物行動の把握  3.4 休日行動の把握 4.まとめと今後の課題

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Summary

Contents

Technical Report

Grasping Railway Users’

Behavior Using

Trajectory Data

Isao Kato, Masahiro Koibuchi

In railway operation planning and facilities improvement planning or the development of related businesses around stations or along railways, it is very important to grasp the number of users at each station and OD (stations where they get on and off trains), moving route, how to access the station, etc. In this study, using a mobile phone type probe data collecting device, PhoneGPS, a probe-person survey was conducted for railway users to verify the potentiality of use of the trajectory data in grasping the traffic behaviors of railway users. If data obtained by the probe-person survey can be used for railways, it becomes possible to grasp the behaviors of railway users with reduced labor, at low cost and in a short period of time or to grasp their change of path and their behaviors around stations that have conventionally been difficult to know. In this study, it was verified that behaviors for bypassing in the event of transportation problems, selecting the access path to the station/egress path from station, and stopover /shopping on the way can be grasped from the trajectory data.

1.Background and Purpose 2.Outline of Probe-Person Survey  2.1 Outline of Survey Implemented  2.2 Obtained Data

3.Traffic Behavior Analysis Result

 3.1  Grasping of Behavior for Bypassing in the Event of Transportation Problems

 3.2  Grasping of Behavior for Selecting Access Path to Station/Egress Path from Station

 3.3 Grasping of Behavior for Stopover/Shopping  3.4 Grasping of Behavior during Holidays 4.Conclusion and Future Challenges

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1.背景と目的

交通施設の整備計画や輸送機関における輸送計画の立案、施策の評価等を行う際、旅客の 旅行実態に関する情報が必要となる。鉄道においても、個々の駅の利用者数や OD(乗車駅 と下車駅)、移動経路、出発地から駅への移動(アクセス)の方法や駅から目的地までの移 動(イグレス)の方法等を把握することは、運行計画や施設整備計画、駅周辺や沿線開発の 立案、サービス改善策の評価、見直し等を行う上で、大変重要である。 従来、鉄道旅客の旅行実態を把握するための調査は、各種行政機関や鉄道事業者によって 行われており、代表的な調査としては、パーソントリップ調査や大都市交通センサス等のア ンケート形式の調査、駅別乗降人員や列車別乗降人員等の調査員による実測調査があげられ る。また、近年、IC カード型の乗車券と自動改札が急速に普及し、駅別乗降人員等のデー タは、従来よりも比較的容易に取得できるようになった。 しかし、アンケート形式の調査や実測調査では、調査員の労力、調査コスト、調査実施か ら結果を得るまでのタイムラグの発生といった問題があるほか、自動改札データでは、乗車 駅から降車駅までの利用経路、出発地から駅あるいは駅から目的地といった列車利用以外の 交通行動の把握が困難である。 一方、人々の移動履歴を把握する手法として、GPS 技術を用いたプローブパーソン調査 が近年注目されている。プローブパーソン調査とは、数秒から数分間隔で緯度経度情報等 (プローブデータ)を連続して取得することで、人や自動車の移動軌跡を把握できるもので あり、道路行政分野においては、渋滞発生状況の分析や旅行時間の算出等に用いられてい る。また、プローブデータ収集機器については、GPS 機能搭載の携帯電話が普及し収集ツー ルとして活用できる状況になっている。 プローブパーソン調査によるデータを鉄道に用いることができれば、鉄道利用者の行動を 省力・安価・短時間で把握したり、従来把握することが困難であった利用経路の変化や駅周 辺での行動等を把握できる可能性がある。 本研究では、鉄道での移動軌跡データの利用に向けて、三菱総合研究所が開発した携帯電 話型のプローブデータ収集機器 PhoneGPS を用いて鉄道利用者を対象にプローブパーソン調査 を実施し、移動軌跡データによる鉄道利用者の行動把握の可能性を検討、検証した。 表 1.各種調査手法の特徴比較 調査手法 一般的な 調査頻度 1 回当たりの 調査期間 集計期間データ 調査負荷 調査費用 取得可能 データ例 データの性格 アンケート調査 (紙媒体) 数年に1回~ 年に数回 1 日~数日 数か月 大 高い OD 経路 実際の行動との乖離は把 握不可能 アンケート調査 (インターネット) 数年に1回~ 年に数回 1 日~数日 数週間 小 安い OD 経路 実際の行動との乖離は把 握不可能 調査員による 実測調査 年に数回 基本的に 1 日 数週間~ 数か月 大 高い 駅別・列車別 乗降者数 ほぼ全数把握 列車利用以外の交通行動 の把握が困難 プローブパーソン 調査 通年実施が可能 数日~ 数か月 数日~ 数週間 小 安い OD 経路 実際の行動をほぼ把握 作成:三菱総合研究所

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2.プローブパーソン調査の概要

2.1 調査の実施概要

プローブパーソン調査は、東京急行電鉄の協力を得て 2007 年と 2008 年に実施した。この うち 2007 年調査では、試行的に東京急行電鉄と三菱総合研究所の関係者を調査モニターと して 2007 年 11 月の約 1 か月間においてデータ収集を行い、混雑回避に向けた列車または経 路変更の有無、駅構内の移動経路、駅周辺での買い物行動、アクセス・イグレス経路、休日 の交通行動の把握を試み、鉄道における移動軌跡データの活用可能性を検討した。 2008 年調査では、前年調査の成果を受けて、調査モニターを一般の鉄道利用者に広げ、 収集したデータの集計、行動分析過程での精度向上、効率化を図るとともに、調査モニター によるデータの修正・削除、補足や質問等のコメント入力ができるシステム(WEB ダイア リー)を用いて、収集データの精度向上や調査実施の円滑化を図った。 以降、本稿では、2008 年調査の結果を中心に報告する。

(1)2008 年調査の実施概要

①データ収集期間 データ収集期間は、2008 年 10 月 19 日(日)〜 11 月 21 日(金)の約 1 か月間である。 ②調査モニター 調査モニターは、鉄道旅客の移動軌跡データの活用可能性を探るねらいから、一般の鉄道 利用者を対象とし、東京急行電鉄の電車モニターから募集した。 募集にあたっては、調査モニター数の制約上ある程度まとまった地域を対象にすることと し、路線の新規開業によるサービス変化の生じた港北ニュータウン及び周辺地域の居住者を 対象として、32 人の調査モニターを募った。 ③検証項目 鉄道利用者の交通行動のうち、輸送障害発生時の迂回行動、駅へのアクセス・駅から目的 地までのイグレス経路の選択、帰宅途中における立ち寄り・買い物行動、休日の交通行動に ついて、実態把握の可能性を検証した。

(2)データ収集方法

プローブパーソン調査の実施にあたっては、モニターに GPS 機能を搭載した携帯電話型 のプローブデータ収集機器 PhoneGPS を携行してもらい、移動軌跡データを収集するとと もに、インターネット上で移動軌跡データが閲覧可能な WEB ダイアリーを用いて、補足 データを入力してもらうようにした。 ① PhoneGPS による移動軌跡データの収集 PhoneGPS は、GPS 機能を搭載した携帯電話にデータ収集のための専用アプリケーショ ンをインストールしたプローブデータ収集機器である。PhoneGPS では、一定の時間間隔で

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の緯度経度情報の取得機能に加え、ダイヤルキーの操作を通してあらかじめ設定した移動目 的や利用交通機関の選択が可能である(例:1 番キーは出社、2 番キーは帰宅等)。取得した 緯度経度情報は、携帯電話の内蔵メモリに一時的に蓄積され、移動が終了したタイミング、 すなわちデータ取得終了時に全データがサーバに送信される。 本研究では、出社、買い物、帰宅等の目的を持った移動で、かつ、出発地から目的地まで 5 分以上かけて移動した単位を 1 トリップと定義し、このトリップの単位でデータを取得し た。データ取得の具体的な操作は、出発、交通手段(徒歩、電車、バス、自動車、自転車等) の変更、到着のそれぞれのタイミングにおいて、調査モニターが携帯電話端末上で行うように した。 ・出発時 : アプリケーションの出発ボタンを押し、移動目的と利用交通機関をあ らかじめ設定されている選択肢から番号キーにより選択 ・交通手段変更時 : 利用交通機関を選択肢から番号キーにより再選択 ・到着時 : 到着ボタンを押す(到着ボタンを押した際には、取得した移動軌跡 データが自動的にサーバに送信される) なお、緯度経度情報は、1 秒間隔で取得した。 ② WEB ダイアリーによる移動軌跡データの修正や補足データの入力 WEB ダイアリーは、WEB 上で GPS 携帯電話により収集した移動軌跡データを閲覧でき、 かつ携帯電話端末では取得していない出発地や目的地の名称の入力、誤って取得・入力した データの修正・削除を行うことができるシステムである。移動軌跡データについては、地図 上で実際の移動軌跡を確認することが可能であり、出発地や目的地の名称を入力する際に、 地図上に示された移動軌跡により行動を振り返ることができる。さらに、1 回のトリップ データごとにコメントを入力することができ、移動時の状況や経路選択理由の補足等を自由 に記入できる。 図 1.データ取得に関する一連の流れ

出発時

移動中

到着時

当日夜

1 日ごとに繰り返し 移動ごとに繰り返し 作成:三菱総合研究所

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図 2.WEB ダイアリー画面 取得したデータ(移動 履歴)が確認可能 トリップごとにコメント が記入可能 移動軌跡を地図上で見る ことが可能 作成:三菱総合研究所

2.2 取得データ

(1)トリップデータの概要

取得データにおけるトリップ数は延べ 1,013 人日で 2,138 トリップである。1 人 1 日当た りのトリップ数は 2.1 トリップで、平日は 2.5 トリップ、休日は 1.5 トリップとなっている。 また、移動目的別では、帰宅が 39%、出社・登校が 29%、業務が 11%で上位を占める。 図 3.1 人 1日当たり平均トリップ数 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 1 0 /1 9 1 0 /2 0 1 0 /2 1 1 0 /2 2 1 0 /2 3 1 0 /2 4 1 0 /2 5 1 0 /2 6 1 0 /2 7 1 0 /2 8 1 0 /2 9 1 0 /3 0 1 0 /3 1 11 /1 11 /2 11 /3 11 /4 11 /5 11 /6 11 /7 11 /8 11 /9 11 /1 0 11 /1 1 11 /1 2 11 /1 3 11 /1 4 11 /1 5 11 /1 6 11 /1 7 11 /1 8 11 /1 9 11 /2 0 11 /2 1 1 人 1 日 当たり 平均 トリップ 数 平均2.1 作成:三菱総合研究所 図 4.移動目的(N=2,257)注 その他 買い物 観光・レジャー 帰宅 39% 出社・登校 29% 業務 11% 7% 4%10% 作成:三菱総合研究所 調査日(2008 年) 注:補完データを含む

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(2)移動軌跡データ取得状況

移動軌跡データ(GPS データ)は、建物内や地下等、GPS 衛星からの電波を受信できない 位置では測位不可能である。列車乗車時は、乗車位置によっては車両の屋根の影響で GPS 衛星からの電波を受信し難い環境となるが、概ね列車乗車時においても連続的に移動軌跡 データを取得できていることが確認された。ただし、地下区間においては、GPS 衛星から の電波が受信できないため、移動軌跡データを取得できない。 図 5.取得した移動軌跡データ例 作成:三菱総合研究所

3.交通行動分析結果

移動軌跡データを用いて、輸送障害発生時の迂回行動、駅へのアクセス・駅から目的地ま でのイグレス経路の選択行動、帰宅途中における立ち寄り・買い物行動、休日の交通行動に ついて分析を行った。

3.1 輸送障害発生時の迂回行動の把握

列車の運転見合わせ、大幅なダイヤ乱れ等輸送障害が発生した際に、利用者は迂回や滞留 等の行動をとるが、これらの実態を把握することで適切な案内や輸送計画に役立てられる可 能性がある。迂回や滞留等の行動は、輸送障害に巻き込まれた地点や輸送障害発生からの経 過時間、運転再開見通し等によりさまざまであり、これらの行動を正確に把握することは容 易ではない。しかし、本研究では移動中に連続的な移動軌跡データを取得することで、迂回 行動をとったタイミングや、利用した経路を把握できた。ここでは、2 つの行動把握例を示す。

(1)行動把握例 1:他路線を利用した迂回

この例では、東急東横線が不通になった際に、東急田園都市線の鷺沼方面から東急大井町 線・東横線・多摩川線を利用する通勤経路に代えて、JR 南武線経由で通常とは異なる駅で下 車する迂回ルートが選択されている(図 6)。この迂回行動については、出社トリップを開始 する前の段階で障害が発生しており、あらかじめ迂回経路を決めて行動していたことが考え られ、通常の所要時間と比較しても大幅な遅れを生じることなく通勤していることが確認で きた。 鉄道路線上の移動軌跡と 時間間隔の把握が可能

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図 6.輸送障害発生時の迂回行動(他路線を利用して迂回したケース) 田園都市線 大井町線 東横線 多摩川線 下丸子 多摩川 自由が丘 二子玉川 溝の口 平間 南武線 南武線を利用 作成:三菱総合研究所

(2)行動把握例 2:徒歩による迂回

この例では、東急東横線が不通になった際に、東横線都立大学駅から自由が丘経由二子玉 川方面へ移動する経路を変更し、別路線である東急大井町線緑が丘駅まで徒歩で移動する迂 回ルートが選択されている(図 7)。この迂回行動の結果、通常の経路よりは所要時間を要 したものの、東横線の運転再開まで待った場合と比べて大幅に早く目的地にたどり着くこと ができている。 図 7.輸送障害発生時の迂回行動(徒歩で迂回したケース) 大井町線 東横線 目黒線 自由が丘 都立大学 大井町線 東横線 自由が丘 都立大学 緑が丘 緑が丘まで徒歩で移動し 大井町線を利用 作成:三菱総合研究所

3.2 駅アクセス・イグレス経路選択行動の把握

駅へのアクセス経路及び駅から目的地までのイグレス経路や利用している交通機関につい て把握することは、鉄道にとっての端末交通サービスのあり方を検討したり、端末交通機関 の利用行動をモデル化する場合等に重要である。本研究では、移動経路や移動速度を分析す ることで、アクセス・イグレス経路、交通機関の選択実態を把握できた。ここでは、2 つの 行動把握例を示す。

(1)行動把握例 1:出社時の交通機関選択

この例では、駅へのアクセスの際に移動経路は同じであるものの、バスと徒歩で交通機関 田園都市線から大井町線・東 横線・多摩川線を経由する通 常のルートを、南武線経由に 変更した例 都立大学駅から自由が丘駅乗 り 換 え で 大 井 町 線 に 向 か う ルートを、緑が丘駅まで徒歩 で移動し、大井町線を利用す るルートに変更した例

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を使い分けている。バス利用と徒歩の違いについては、移動軌跡データのプロット間隔から 確認できる(図 8)。 図 8.出社経路における利用交通機関選択行動 徒歩のケース バスのケース 移動軌跡の間隔の 違いから移動速度 (交通手段)の違い を確認 作成:三菱総合研究所 移動軌跡データを用いてバスの旅行速度を推計すると、駅近傍において速度が大きく低下 しており(図 9)、道路混雑状況によりバスと徒歩を使い分けていることが窺える。 図 9.移動軌跡データより算出した路線バスの区間旅行速度 駅 駅前交差点 バス停 600m 平均所要時間1分40秒 (21.4km/h) 260m 平均所要時間3分50秒 (4.1km/h) 作成:三菱総合研究所

(2)行動把握例 2:帰宅時の経路選択

この例では、帰宅時に自宅の最寄り駅から自宅まで帰宅する経路について、2 つの経路を 日によって使い分けている。出社時は自動車での送迎により毎日同じ経路を利用しており、 帰宅時はバスの出発時刻によって 2 通りのバスルートを使い分けている(図 10)。 図 10.帰宅時における経路選択行動 作成:三菱総合研究所 移動軌跡データのプロット間隔から、 バスと徒歩の判別が可能 位置と時刻の情報から、区間ごと のバスの旅行速度の推計が可能 端末交通において、複数のバス 路線、自家用車を使い分けてい る例 駅 バス停 バス停 バス バス 徒歩 徒歩 車(送迎) 出社時は車(送迎) で駅へアクセス 帰宅時はバスを利用 (2ルートあり)

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3.3 立ち寄り・買い物行動の把握

乗降駅や経由地での立ち寄りや買い物行動を把握することは、乗車券類の企画や商業施設 の販促等の検討に有効と考えられる。本研究では、移動軌跡データを分析することで、通勤 先、途中駅、自宅最寄り駅での立ち寄り、駅周辺での立ち寄り範囲等が把握できた。

(1)行動把握例 1:途中駅での立ち寄り

帰宅経路途中の乗り換え駅における立ち寄り、乗り換え駅でない途中駅での立ち寄り等、 従来容易には把握できなかった途中下車の実態と立ち寄り地域が把握できる(図 11、図 12)。 図 11.乗り換え駅での立ち寄り行動 大井町線 東横線 自由が丘 乗り換え駅である自由が丘 にて飲食の立ち寄りあり 作成:三菱総合研究所 図 12.非乗り換え駅での立ち寄り行動 帰宅経路 田園都市線 二子玉川 駒沢大学 立ち寄り・買い物 作成:三菱総合研究所

(2)行動把握例 2:主要駅周辺での立ち寄り範囲

主要駅においては、多くの調査モニターが立ち寄り行動をとっており、立ち寄り行動の 移動軌跡を重ねて地図上に示すことで、立ち寄り行動圏を把握できる。具体例として、恵 比寿、渋谷、銀座の 3 例を示す。本研究で収集したデータからは、恵比寿、渋谷では半径 250m 圏内のエリアでの立ち寄り行動が主であり、銀座では半径 150m 圏内のエリアでの立 ち寄り行動が主であることがわかる(図 13)。 乗り換え駅(自由が丘)で 下車して駅周辺に立ち寄っ ている例 利用経路上の途中駅(駒沢大学) で下車して駅周辺に立ち寄って いる例

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図 13.主要ターミナルにおける立ち寄り範囲 上左:恵比寿(1km) 中央:渋谷(1km) 上右:銀座(500m) 横(長辺)のスケール 恵比寿 銀座 渋谷 作成:三菱総合研究所

3.4 休日行動の把握

休日の行動に関する情報は、通勤・通学以外での鉄道利用の促進や商業施設の販促等を進 める上で重要である。本研究では、移動軌跡データから休日の行動実態を把握した。一例と して、自宅から最寄り駅までの距離と利用交通機関との関係をみると、自宅から最寄り駅ま での距離が 1km 強までの範囲においては、自宅から最寄り駅までの距離が短い場合は徒歩、 距離が長くなるにしたがって自動車の利用が増える傾向がつかめる(図 14)。 図 14.自宅から最寄り駅までの距離と交通機関利用割合 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 (%) 9 7 5 7 2.0 4.6 5.8 1.6 最寄り駅までの距離 遠い 400m以下 800m以下 1,200m以下 1,200m超 該当モニター数(人) 平均トリップ数 自転車 バス 電車 車 徒歩 近い 駅へのアクセスが 不便な分、車利用が多い 近隣の商業施設への買い物 トリップの可能性 駅周辺の商業施設への 買い物トリップの可能性 作成:三菱総合研究所 駅周辺地域の移動範囲の把握例

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4.まとめと今後の課題

本研究では、道路交通分野で活用が進んでいる移動軌跡データ(プローブデータ)につい て、鉄道利用者の交通行動実態把握への活用可能性を検証した。また、移動軌跡データの 取得にあたっては、GPS 機能を搭載した携帯電話型プローブデータ収集機器とWEBダイア リーを用いた。 本研究にて取得した移動軌跡データの分析の結果、鉄道利用時においても十分な精度で データ取得が可能であることがわかるとともに、輸送障害発生時の迂回行動、駅へのアクセ ス・駅からのイグレス経路及び利用交通機関の選択行動、途中の立ち寄り・買い物行動、休 日の行動等について詳細に把握できることが検証され、鉄道利用者の交通行動実態把握を行 う上で、移動軌跡データの有用性が示唆された。 移動軌跡データを収集、分析することで、パーソントリップ調査などの大規模調査に頼ら ざるを得なかった個々の路線や沿線の行動実態を短期、安価で捉えられる可能性がある。ま た、GPS 機能付きの携帯電話の普及により、大量のデータを収集することも可能になって きており、多様な交通行動の収集、分析も可能になる。 今回の研究成果を踏まえ、今後はダイヤ改正等の輸送サービスに関する施策、イベント・ キャンペーン実施時における鉄道利用行動の変化、駅や駅周辺の整備、商業施設立地時の行 動変化の分析等における移動軌跡データの活用が考えられる。なお、移動軌跡データの活用 においては、個人行動の特定につながらないよう、データの匿名化への十分な配慮を要す る。 謝辞 本研究の実施にあたっては、東京急行電鉄の太田雅文氏をはじめ、関係者の皆様に多 大なご協力をいただいた。また、調査モニターとして東急電車モニターの皆様にもご協力い ただいた。そして、東京工業大学 屋井鉄雄教授には多くのご助言をいただいた。この場を 借りて、ご協力いただいた皆様に、謹んで感謝の意を表する。

参考文献

[1] 「PhoneGPS」(http://www.its-club.net/). [2] 目黒浩一郎,佐藤賢:「行動分析調査ツールとしての GPS 携帯電話の可能性」『土木計画学研究・ 講演集』Vol.34(2006). [3] 目黒浩一郎,佐藤賢:「GPS 携帯電話を用いた行動分析のトータルソリューション」『土木計 画学研究・講演集』Vol.35(2007). [4] 目黒浩一郎:「GPS 携帯電話を活用した交通行動データ収集処理手法の開発」『情報処理学会 第 33 回高度交通システム研究発表会』(2008). [5] 「JSTE プローブ研究会」(http://www.probe-data.jp/rental/sys2_index.html).

参照

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