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金融機関の規制監督における規制当局の行動(2・完)米国の金融規制監督における「先送り」の問題を手がかりとして-香川大学学術情報リポジトリ

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(1)

金融機関の規制監督における

規制当局の行動( ・完)

―― 米国の金融規制監督における

「先送り」の問題を手がかりとして ――

目 次 第 章 はじめに−問題の所在と本稿の対象− 第 章 金融規制監督における規制の先送り 第 節 年代のS&L 危機における貯蓄金融機関の破綻 第 節 サブプライムローン危機における金融機関の不正行為 第 章 規制の先送りへの法的対応 第 節 年FDICIA に基づく早期是正措置(PCA)の導入 第 節 年ドッドフランク法における法的対応(以上,第 巻第 ・ 号) 第 章 ドッドフランク法における規制の先送りに関する構造的な問題 第 節 ドッドフランク法の概要 第 節 金融安定監督評議会(FSOC) 第 節 早期改善措置(ER) 第 節 整然清算権限(OLA) 第 章 わが国の金融規制監督における規制当局の行動 第 節 早期是正措置 第 節 金融機関の破綻処理 第 章 むすびに代えて(以上,本号)

(2)

第 章 ドッドフランク法における規制の先送りに関する

構造的な問題

米国では,

年代の S&L(Savings and Loan Association,以下,

「S&L」

という)危機およびサブプライムローンの問題を端緒とする近時の金融危

機のいずれにおいても,規制当局が問題のある金融機関に対して規制権

限・監督権限の行使を適切に行使しなかったり,これを控えたりしていた

ことが明らかとなった。このことから,S&L 危機への対応として,早期

是正措置(Prompt Corrective Action,以下,「PCA」という)という客観的

なルールに基づく行政措置の制度が

年連邦預金保険公社改善法

(Federal Deposit Insurance Corporation Improvement Act of

,以下,

「FDICIA」という)に基づいて導入され,他方,サブプライムローン危機

へのそれでは,貯蓄金融機関監督局(Office of the Thrift Supervision,以

下,「OTS」と い う)の 廃 止 や 消 費 者 金 融 保 護 局(Consumer Financial

Protection

Bureau,以下,「CFPB」という)の設置などドッドフランク法

を通じた規制監督体制の見直しに関する法制度の整備が行われている。

しかし,冒頭でも述べたように,米国の金融システムを揺るがす大きな

問題へと発展したこの つの金融危機の原因に共通する規制の先送りとい

う問題に関しては,ドッド=フランク・ウォールストリート改革消費者保

護法(Dodd-Frank Wall Street Reform and Consumer Protection Act of

以下,「ドッドフランク法」という)に基づいて構築・整備された新たな

規制監督体制や破綻処理の枠組み等においても,それが指向されうる構造

的な問題があることが指摘されている。そこで以下では,規制の先送りの

可能性という観点から,OTS の廃止や CFPB の設置と同じく規制監督体

制の見直しの一環として同法に基づいて設置された金融安定監督評議会

(Financial Stability Oversight Council,以下,「FSOC」という)のほか,早期

改善措置(Early Remediation,以下,「ER」という)や整然清算権限(Orderly

Liquidation Authority,以下,「OLA」という)といった各制度が抱える構

(3)

造的な問題について検討する。

第 節 ドッドフランク法の概要

ドッドフランク法は,低所得者やマイノリティなど貸付条件に選択肢を

持たないサブプライム層への濫用的な貸付行為と当該ローン債権を証券化

した非伝統的金融商品への投資を背景として

年に顕在化したサブプ

ライムローンの問題が,信用不安から大手金融機関の経営危機や破綻へと

波及する事態に至ったことを受けて,こうした事態への対応を目的として

制定されたものである。そのため,ドッドフランク法の前文には,金融シス

テムにおける説明責任と透明性の改善により米国の金融安定化を促進する

こと,“too big to fail(大きすぎて潰せない)”を終焉させること,金融機

関の救済に終止符を打つことにより納税者を保護すること,および濫用的

な金融サービス慣行から消費者を保護すること,が同法の目的として明記

されている。ドッドフランク法は,金融安定化の維持,公的資金による金

融機関救済に伴うモラルハザードの発生,消費者保護など現代の金融シス

テムが抱える問題に対する包括的な規制立法である。そのため,全

で構成される膨大な量もさることながら,その内容も,先述した OTS の

廃止(第 編)や CFPB の設置(第

編)のほか,米国の金融安定化に

影響を及ぼすノンバンク金融会社に対して規制強化を図るための FSOC の

設置および連邦準備制度理事会(Federal Reserve Board,以下,「FRB」と

いう)のノンバンク金融会社等に対する規制権限・監督権限の拡大・強化

(第 編),大規模な金融機関を対象とした新たな破綻処理制度として連邦

預金保険公社(Federal Deposit Insurance Corporation,以下,「FDIC」とい

う)によって運営される OLA の確立(第 編),付保預金限度額を

ドルから

ドルへ引き上げる時限的措置の恒久化(第 編)

!

,銀行

および銀行持株会社による自己勘定取引やヘッジファンド等に対する持分

の取得等の禁止(第 編),FRB による預金金融機関への緊急貸出の制限

(第

編),

年緊急経済安定化法(Emergency Economic Stabilization

(4)

Act of

: EESA)に基づいて創設された不良資産買 取 プ ロ グ ラ ム

(Troubled Asset Repurchase Program)による金融安定化のための公的資金

枠の減額(第

編)等まで非常に多岐にわたっている

"

第 節 金融安定監督評議会(FSOC)

米国の金融システムでは,二元銀行制度(dual banking system)の下で

NBA

を根拠法とする国法銀行(national bank)と州法を根拠法とする州法

銀行(state bank)という つの異なる商業銀行が併存する。そのため,

こ れ ら の 規 制 当 局 も,連 邦 レ ベ ル に お い て 通 貨 監 督 局(Office of the

Comptroller of the Currency,以下,「OCC」という),FRB および FDIC,

州レベルでは各州の州規制当局と FRB および FDIC となる

#

。貯蓄金融機

関に関しても連邦免許については OCC(ドッドフランク法以前は OTS)

$

州免許

%

については州規制当局と FDIC が中心となり,信用組合(credit

! 年の緊急経済安定化法(Emergency Economic Stabilization Act of : EESA) は,「米国の金融システムを流動的かつ安定した状態へ回復させること」を目的とし て制定され(§ (a)),これにより, 年末までの時限的措置として,預金の付保 限度額が , ドルから , ドルへ引き上げられた。 , ドルの付保預金 限度額は 年の住宅保護支援法(Helping Families Save their Homes Act of , Pub. L. No. − , Stat. )によって 年末まで延長されたが(§ (a)( ) (A)),ドッド=フランク・ウォールストリート改革消費者保護法(Dodd-Frank Wall

Street Reform and Consumer Protection Act of )の制定により付保預金限度額の 引上げが恒久化されている( U. S. C.§ (a)( )(E))。なお,付保預金限度額 の引上げに伴い,付保預金金融機関が連邦預金保険公社(Federal Deposit Insurance Corporation : FDIC)に納付する預金保険料の算定ベースについても,預金総額から 連結総資産に変更されている( U. S. C.§ (b))。

" ドッドフランク法の概要については,LexisNexis, Reforming the Nation’s Financial System : Analysis of the Dodd-Frank Wall Street Reform and Consumer Protection Act of

, − ( )による。

# 州法銀行については,連邦準備制度に加盟している場合は連邦準備制度理事会 (Federal Reserve Board : FRB),非加盟の場合には FDIC による規制の対象となる。

U. S. C.§ (q)( )(A)・( )(A). $ U. S. C.§ (q)( )(c).

% 州免許の貯蓄金融機関とは,建築貸付組合(building and loan association),貯蓄貸 付組合(savings and loan association),ホームステッド組合(homestead association)ま たは協同組合銀行(cooperative bank)をいう。 U. S. C.§ (b)( ).

(5)

union)は全国信用組合管理機構(National Credit Unions Administration :

NCUA)

!

,銀行持株会社および貯蓄金融機関持株会社については FRB

"

(後

者についてドッドフランク法以前は OTS)に分かれる非常に複雑な規制

監督体制が取られている。そこでドッドフランク法では,FSOC が,議決

権を有する

名の規制当局の代表者(voting members)と議決権のない

名の代表者(nonvoting members)で構成される包括的な会議体として

設置され(ドッドフランク法

条(a)項)

#

,特定の金融セクターを軸に展

開されてきたこれまでの金融規制改革とは異なる規制監督体制が構築され

ている。

FSOC

は,金融の安定を脅かすリスクを特定すること,株主や債権者等

の市場関係者の政府救済に対する期待を除去して市場規律を促進するこ

と,および金融の安定に対する脅威に対応すること,を目的として設置さ

れている(ドッドフランク法

条(a)項( )号)

$

。したがって,その任務

! U. S. C.§§ , , . " U. S. C.§ (q)( )(F)・(G). 銀行持株会社が金融持株会社となる場合には, ( )当該銀行持株会社の子会社である預金金融機関の全てにおいて,資本が充実(well capitalized)していること,( )当該銀行持株会社の子会社である預金金融機関の全て において,経営が良好(well managed)であること,( )当該銀行持株会社の資本が 充実し,経営が良好であること,( )当該会社がグラムリーチブライリー法(Gramm -Leach-Bliley Act)の制定以前に銀行持株会社に認められていなかった活動に従事す るかもしくは会社の株式を取得および保有すべく金融持株会社になることを選択する 宣誓書,および上記 つの要件を満たす証明書を FRB に提出しなければならない。 U. S. C.§§ (p), (l)( ).

# U. S. C.§ (a). 金融安定監督評議会(Financial Stability Oversight Council : FSOC)は,財務長官を議長として,財務長官のほか,FRB 議長,通貨監督局(Office of the Comptroller of the Currency : OCC)局長,消費者金融保護局(Consumer Financial Protection Bureau : CFPB)局長,証券取引委員会(Securities Exchange Commission : SEC)委員長,FDIC 総裁,商品先物取引委員会(Commodity Futures Trading Commission : CFTC)委員長,連邦住宅金融庁(Federal Housing Finance Agency : FHFA)長官,全 国信用組合管理機構(National Credit Unions Administration : NCUA)理事長および上 院の助言と承認を得て大統領が任命する独立した保険の専門家の 名が議決権を有 し,金融調査局(Office of Financial Research : OFR)局長,連邦保険局(Federal Insurance Office : FIO)局長および州保険当局・州銀行当局・州証券当局の各代表者の 名が 議決権のない構成員となる。 U. S. C.§ (b)( )・( ).

(6)

も,他の規制当局からの情報収集や情報共有の支援,金融サービス市場の

監視,FRB の監督下にあるノンバンク金融会社および大規模な銀行持株

会社に関する健全性基準についての提言等であり(ドッドフランク法

条(a)項( )号)

!

,他の規制当局のように営業免許の交付や検査・監督,法

執行に関する権限が FSOC に与えられているわけではない。しかし,ドッ

ドフランク法制定の引き金となった近時の金融危機では,銀行等の預金金

融機関ばかりか,投資銀行や保険会社等も経営危機や破綻に陥る深刻な事

態に陥ったことから,同法において,FRB の監督対象となるノンバンク

金融会社(nonbank financial company)

"

についての新たな規制概念が導入

され,その認定が FSOC の最も重要な任務となっている

#

。この認定に係る

FSOC

の意思決定

$

は,議決権を有する構成員の 分の 以上の賛成によっ

て成立するものの,議長である財務長官の賛成(affirmative voting)が必

要となる(ドッドフランク法

条(a)項( )号)

%

。すなわち,このことは,

財務長官に事実上の拒否権が与えられていることを意味する

&

。そのため,

独立の規制当局を「選ばれし市場の番人(chosen market watchdog)」とし

! U. S. C.§ (a)( ).

" 「ノンバンク金融会社(nonbank financial company)」とは,( )米国以外の国で設立 され,主として金融業務に従事する会社(銀行持株会社を除く)と,( )連邦法または 州法に基づいて設立され,主として金融業務に従事する会社(銀行持株会社, 年 農業信用法(Farm Credit Act of : FCA)に基づく農業信用制度加盟機関,国内の 証券取引所,決済機関,証券スワップの執行機関もしくは証券スワップ・レポ取引登録 業者,デリバティブ決済機関,または CFTC に登録されたスワップの執行機関もしく はスワップ・レポ取引業者を除く)をいう。 U. S. C.§ (a)( )(A)・(B)・(C). なお,「主として金融業務に従事する(predominantly engaged in financial activities)」 とは,( )( 年銀行持株会社法(Bank Holding Company Act of : BHCA) 条(k)項に定める)会社もしくは全ての子会社の金融業務より生じる年間総収入およ び つ以上の付保預金金融機関の所有もしくは支配より生じる年間総収入が当該会社 の連結年間総収入の %以上である場合,または( )(BHCA 条(k)項に定める)会 社もしくは全ての子会社の金融業務に関連する連結資産および つ以上の付保預金金 融機関の所有もしくは支配に関連する連結資産が当該会社の連結資産の %以上で ある場合,のいずれかに該当することをいう。 U. S. C.§ (a)( ).

# Stavros Gadinis, From Independence to Politics in Financial Regulation, California Law Review , ( ).

(7)

て金融危機の度に規制権限・監督権限の拡大・強化を繰り返してきたこれ

までの金融規制改革とは異なり

$

,大統領の政治任用者(political appointees)

である財務長官に最終的な意思決定を委ねる FSOC の制度的枠組みに関し

ては,金融規制における政治的影響力の拡大を招き,金融の安定とは異な

る要因の影響を受けやすいことが懸念される。学説からは,行政当局の政

策判断の基礎は合理性へのアピールにあるが,他方で選挙は合理性を前提

としない国民の意思へのアピールであり,金融規制を政治的責任に委ねる

ことは,ある意味で金融規制における科学的根拠の存在を拒絶するに等し

いという見解や

%

,政治家の最優先目標は選挙での再選であり,いつ効果が

表れるか判らず,またそれに対する報酬も特にない金融規制を適切に実行

! FSOC は,ノンバンク金融会社における重大な財務危機またはその業務の性質・範 囲・規模・集中度・相互関連性が米国の金融の安定に脅威をもたらすと考えられる会 社を,FRB の監督対象となるノンバンク金融会社として認定する。FSOC はこの認定 にあたり,当該会社について,( )レバレッジの程度,( )オフバランスシートのリ スクの程度および内容,( )他の重要な金融会社および重要な銀行持株会社との取 引・関係の程度および内容,( )家計,企業,州および地方政府への信用の供給者と しての重要性,および米国の金融システムへの流動性の供給者としての重要性,( ) 低所得者やマイノリティ等への信用の供給者としての重要性,およびその破綻がこれ らのコミュニティにおける信用の利用可能性に与える影響,( )管理している資産の 程度,および管理下にある資産の所有が分散している程度,( )業務の性質・範囲・ 規模・集中度・相互関連性,( ) つ以上の主たる金融規制当局によって規制を受け ている程度,( )金融資産の金額および性質,( )短期資金への依存度を含め,負債 の金額およびタイプ,( )FSOC が適当とみなすその他いっさいのリスク関連要素, の各事項を考慮することになる。 U. S. C.§ (a)・(b).

" U. S. C.§ (a)( ). FSOC は, 年 月 日 に AIG と GE キ ャ ピ タ ル, 月 日にプルデンシャル・フィナンシャル, 年 月 日にはメットライフ をそれぞれ FRB の監督対象となるノンバンク金融会社に認定している(www.treasury. gov/initiatives/fsoc/designations/Pages/default.aspx)。なお, 年 月 日にノンバン ク金融会社の認定に関する最終規則(Authority To Require Supervision and Regulation of Certain Nonbank Financial Companies, Fed. Reg. (April , ))が公表 されている(http://www.treasury.gov/initiatives/fsoc/rulemaking/Documents/Authority% to % Require % Supervision % and % Regulation % of % Certain % Nonbank % Financial% Companies.pdf)。当該最終規則の内容を紹介するものとして,小出篤「「シ ステム上重要な」ノンバンク金融会社(nonbank SIFI)の決定に関する最終規則・指 針」金融法研究第 号 頁以下( 年)。

# Gadinis supra note , at . $ Id. at .

(8)

する政治家のインセンティブを否定ないしそれに疑義をはさむ考え方が示

されている

"

。また,選挙サイクルが政治家による金融危機への対応にズレ

を生じさせるという観点から,政治家は国民の長期的な利益に資するよう

な措置でも,選挙までに確たる成果を得ることができない場合にはこれを

控える可能性があることも指摘されている

#

。さらに,「規制される側」の

金融機関がその豊富な資源を利用して「規制する側」を取り込もうとする

問題については,規制当局と同様に政治家が「規制する側」であるときも

問題になりうるところ,政治家に大きな実権を委ねる制度が,積極的なロ

ビー活動や政治献金

$

の増加を通じて将来の規制者(future regulators)との

関係強化を図ろうとする大きなインセンティブを金融機関に与えかねない

点で,金融機関が政策決定過程に及ぼすであろう影響力は,「規制する側」

が規制当局の場合よりも深刻であると評価されている

%

第 節 早期改善措置(ER)

ドッドフランク法では,問題のある金融機関への早期介入を実現しよう

とする点から,ER の制度が預金金融機関を対象とした PCA と機能的に類

似する制度として導入されている

&

。ER の目的は,FRB の監督対象となる

ノンバンク金融会社および連結総資産

億ドル以上の銀行持株会社(以

下,「システム上重要な金融会社」という)が支払不能に陥り米国の金融

システムの安定の潜在的な障害となる可能性を最小限にくい止めるため

! Adam J. Levitin, The Politics of Financial Regulation and the Regulation of Financial Politics : A Review Essay, Harvard Law Review , ( ).

" Id. at .

# Id ; Gadinis, supra note , at − .

$ 年以降,ロビー活動費に関して金融業界が全ての業界のトップに位置してお り, 年の大統領選挙の際には,個人を含め,金融サービス部門より提供された 政治献金の額は 億 , 万ドルであった。Levitin, supra note , at .

% Gadinis, supra note , at − .

& Cheryl D. Block, Letting Go of Binary Thinking and Too-Big-To-Fail : Preserving A Continuum Approach To Systemic Risk, Brooklyn Journal of Corporate, Financial & Commercial Law , ( ).

(9)

に,システム上重要な金融会社が講じるべき特定の改善措置を確立するこ

とにある(ドッドフランク法

条(b)項)

!

。そこで

FRB には,FSOC お

よび

FDIC と協議して ER に関する規則そのものを策定する権限が付与さ

れており(ドッドフランク法

条(a)項)

"

,具体的な規則の内容として,

( )規制資本,流動性政策およびその他の先行指標を含め,会社の財務状

況を示す手段を定めること,( )会社の財務状況の悪化に伴い,(A)財務

状況の悪化した初期の段階では,資本の分配,企業買収および資産拡大に

対する制限の要件,および(B)財務状況の悪化が進んだ段階では,資本

回復計画,増資の要請,関係会社との取引の制限,経営陣の交代および資

産売却の要件を含め,段階的に規制が強化される要件を設定すること,が

それぞれ要求されている(ドッドフランク法

条(c)項)

#

このように,ER の制度では,システム上重要な金融会社の財務状況を

評価する基準と当該基準の下でシステム上重要な金融会社に対して発動す

べき改善措置の内容を具体的に設定する広範な権限が規制当局である

FRB に付与されている。そのため,ER は,図 で示されるように

$

, 段

階の資本区分(資本充実・資本適正・資本不足・著しく資本不足・危機水

準の資本不足)と各資本区分(特に下位 つの資本区分)に該当する預金

金融機関に対して発動すべき具体的な是正措置の内容をあらかじめ定めて

おくことにより規制当局の裁量的判断に制限を加えようとする

PCA の制

度とは大きく異なる

%

。もっとも,PCA もまた,問題を先送りにしようと

する規制当局の裁量の余地を減らし,金融機関への適切な対応を確保する

完全な機能を備えるものではない。例えば,

年から

年第 四半

! U. S. C. § (b). " U. S. C. § (a). # U. S. C. § (c). $ 拙稿「金融機関の規制監督における規制当局の行動( )―― 米国の金融規制監督に おける「先送り」の問題を手がかりとして ――」香川法学第 巻第 ・ 号 頁( 年)を参照。

(10)

期にかけて,PCA における資本不足以下の資本区分に該当する

の銀

行のうち

行が破綻し,これに該当せず破綻した銀行も

行あった

!

しかも,PCA による危機対応が後手に回ったことがその後の調査におい

て規制当局から指摘されたばかりか

"

,規制当局が各資本区分に該当する金

融機関に対して発動すべき是正措置のタイミングやそうした措置の内容に

一貫性がなかったことも明らかにされている

#

。そのため,PCA ですら規制

の先送りを十分に阻止できなかった点を考慮すると,ER の制度はさらに

その実効性に欠けると批判されている

$

。また他の学説も,遅行指標(lagging

indicator)

%

である自己資本比率を基準とする PCA に問題があることを認め

つつ

&

,ER では規制当局が定めるべき会社の財務状況を示す手段として規

制資本や流動性政策その他先行指標の評価を多分に織り込んでいるもの

の,このような数値やデータに基づく評価が会社の財務状況を正確に示

し,破綻の可能性を予測できるか疑問であることや,より多くの判断要素

を含む複雑な規制は結果として規制当局による人為的操作につながりやす

いことから,ER と PCA を比較すれば,後者よりも前者に規制の先送りに

! Government Accountability Office(GAO), Report to Congressional Committees : Bank Regulation, Modified Prompt Corrective Action Framework Would Improve Effectiveness, ( ). その他の の銀行のうち 行は 年第 四半期まで資本不足かも し く は 問 題 銀 行 の リ ス ト に 含 ま れ, の 銀 行 は 他 の 銀 行 と の 合 併 や 任 意 清 算 (voluntary liquidation)により解散し,残る 行は資本不足に分類されずに事業を継続 した。Id. at − . " Id. at . # Id. at − .

$ Block, supra note , at − . 岩原紳作「金融危機と金融規制−アメリカのドッ ド・フランク法を中心に−」小出篤=小塚荘一郎=後藤元=潘阿憲編『企業法・金融 法の新潮流:前田重行先生古稀記念』 頁(商事法務, 年)。

% 自己資本比率が金融機関に対する是正措置の発動基準となる早期是正措置(Prompt Corrective Action : PCA)については,検査官が問題を発見したときには自己資本が 既に悪化している傾向にあり,特に PCA 導入以前の 年から 年の間に破綻 のリスクの高かった大部分の金融機関は,PCA の下では過小資本以下の資本区分に 分類されなかったことが指摘されている。GAO, supra note , at .

& Jonathan M. Edwards, FDICIA v. Dodd-Frank : Unlearned Lessons about Regulatory Forbearance, Harvard Business Law Review , ( ).

(11)

つながる構造的な問題があることは明白であるとして,ドッドフランク法

において規制当局の裁量に大きく依存する ER の制度を導入したことは,

同じく規制の先送りが問題となった

年代の S&L 危機における貴重な

教訓が生かされていないと指摘している

!

なお,ER の制度に関する具体的な規則の内容については,「金融安定

化法(Financial Stability Act of

)」

"

といわれるドッドフランク法の第

編の制定から

ヶ月以内に当該規則の策定が求められていた

#

。FRB は

ER

に関する規則を策定していたものの

$

,引き続き検討を要するとして,

当該最終規則の公表は見送られている

%

第 節 整然清算権限(OLA)

先述したように,サブプライムローン危機において信用不安から大手金

融機関の経営危機や破綻へと波及する深刻な事態に発展したものの,預金

保険制度の対象となる預金金融機関以外の金融機関の破綻を処理する特別

な法的枠組みはこれまで用意されていなかった。そのため,ベアスターン

ズに対してニューヨーク連邦準備銀行(Federal Reserve Bank of New York)

および JP モルガンチェースからの緊急融資が活用されたり,AIG に対して

! Id. at − .

" Pub. L. No. − , §§ − , Stat. − ( ).

# James H. Pannabecker, Practical Guide to the Wall Street Reform and Consumer Protection Act : Understanding and Implementing Regulatory Changes Under the Dodd-Frank Act, § . [ ] − ( ).

$ Enhanced Prudential Standards and Early Remediation Requirements for Covered Companies ; Proposed Rules, Fed. Reg. (January , ). ER に関する FRB の 規則案の内容については,小立敬「国際基準との調和も踏まえた米国 SIFI 規制」野 村資本市場クォータリー Vol. − WINTER 頁以下( 年)を参照。 % FRB のプレスリリース(Board of Governors of the Federal Reserve System, Press

Release, February , )(http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/bcreg/ a.htm)または 年 月 日に公表された銀行持株会社および外国銀行組織 の厳格なプルーデンシャル基準に関する最終規則(Enhanced Prudential Standards for Bank Holding Companies and Foreign Banking Organizations ; Final Rule, Fed. Reg.

(12)

は連邦政府による

.%の株式取得と引換え ,

億ドル(当初

ドル)の融資が行われたりするなど,一部の金融機関について公的資金に

よる救済措置が講じられたものの,ウェルズファーゴによるワコビアの救

済合併,リーマンブラザーズやワシントン・ミューチュアルの破綻にみら

れるように,金融危機への対応に一貫性がなかったことで金融機関の破綻

処理は混迷した

!

。そこでドッドフランク法では,金融の安定に重大な影響

を与える金融会社を対象として,当該金融会社の清算手続を強制する OLA

という新たな破綻処理の枠組みが同法第 編において整備されている

"

OLA

の対象となる金融会社は,連邦法または州法に基づいて設立もし

くは組織された金融会社で,( )

年銀行持株会社法(Bank Holding

Company Act of

: BHCA) 条(a)項に定める銀行持株会社,( )FRB

の監督対象となるノンバンク金融会社,( )

( )または( )以外で,FRB が

金 融 業 務 ま た は そ の 付 随 業 務 で あ る と 決 定 し た 業 務 に 主 と し て

(predominantly)従事する会社

#

,または( )

( )から( )の会社の子会社で,

FRB

が金融業務またはその付随業務であると決定した業務に主として従

! Paul L. Lee, The Dodd-Frank Act Orderly Liquidation Authority : A Preliminary Analysis and Critique-PartⅡ, The Banking Law Journal, Vol. , Issues , , − ( );Rebecca N. Duffy, The Moral Hazard of Increased Deposit Insurance : What the s Savings and Loan Crisis Can Teach Us about Responding to the Current Financial Crisis, Drake Law Review , − ( ). サブプライムローン危機 における金融機関の状況とその後の動向については,Eamonn K. Moran, Wall Street Meets Main Street : Understanding the Financial Crisis, North Carolina Banking Institute Journal , − ( )。

" ドッドフランク法 条によれば,整然清算権限(Orderly Liquidation Authority : OLA)の目的とは,「米国の金融の安定に重大なリスクをもたらす破綻金融会社を, そのリスクを緩和し,かつ,モラルハザードを最小化する方法で清算するために必要 な権限を定めること」であり,その運用においては,( )債権者および株主は金融会 社の損失を負担すること,( )金融会社のその状況について責任のある経営者はその 地位を維持できないこと,および( )FDIC およびその他の所定の規制当局は,経営 者,取締役および第三者を含む金融会社のその状況について責任を負う全ての当事者 が,損害賠償,原状回復,報酬の返還またはその他利得の返還等を含め,責任に応じ た損失を負担することを確実にするために必要かつ適切な全ての措置を講じることが 求められている。 U. S. C.§ (a).

(13)

事する会社(付保預金金融機関または保険会社である子会社を除く)であ

り(ドッドフランク法

条(a)項( )号(A)

(B))

"

,このうちシステミッ

クリスクの決定を受けた対象金融会社(covered financial company)

#

につい

て,FDIC を財産保全管理人(receiver)とする清算手続が行われることに

なる

$

。財産保全管理人である FDIC には,対象金融会社およびその資産,

株主,取締役・役員の権利や権限等を承継して,対象金融会社の事業の運

営や財産の管理,債権の回収等を行うほか,承継金融会社(bridge financial

company)の設立,他の金融会社との合併および資産・負債の移転,有効

な債務の支払い,株主および無担保債権者による損失負担,対象金融会社

の取締役・役員に対する責任追及,上級経営幹部または取締役からの報酬

の返還等を通じて対象金融会社を清算する広範な権限が付与されている

(ドッドフランク法

条)

%

! 金融業務またはその付随業務より生じる当該会社の連結収入が当該会社の連結総収 入の %に満たない場合には,主としてそうした業務に従事する会社とはみなされ ない。 U. S. C.§ (b).

" U. S. C.§ (a)( )(A)・(B). ただし, 年 FCA に基づいて営業免許の 交付を受けた農業信用制度加盟機関または連邦住宅企業金融安定化・健全 化 法 (Federal Housing Enterprises Financial Safety and Soundness Act of : FHEFSSA)に

定める政府機関または規制対象企業は含まれない。 U. S. C.§ (a)( )(C). # U. S. C.§ (a)( ).

$ 対象金融会社がブローカー・ディーラー(covered broker or dealer)の場合には,財 産保全管理人である FDIC により,証券投資家保護公社(Securities Investor Protection Corporation : SIPC)が管財人(trustee)として任命され, 年証券投資家保護法 (Securities Investor Protection Act of : SIPA)所定の権限と義務の全てを有するこ

とになる。 U. S. C.§ (b). % U. S. C.§ . OLAの内容については,森下哲朗「欧米における金融破綻処 理法制の動向」FSA リサーチレビュー第 号 頁以下( 年)が詳しい。そのほ か,岩原・前掲注 頁以下,小立敬「米国における金融制度改革法の成立−ドッ ド=フランク法の概要−」野村資本市場クウォータリー Vol. − SUMMER 頁以 下( 年),同「米国 FDIC による SIFIs の破綻処理戦略−シングル・ポイント・ オブ・エントリーの概要−」野村資本市場クウォータリー 年春号ウェブサイト 版掲載論文 頁以下( 年)(http://www.nicmr.com/nicmr/report/repo/ / spr web.pdf),澤井豊=米井道代「ドッド=フランク法による新たな破綻処理制度」預金 保険研究第 号 頁以下( 年),若園智明「米国における包括的金融規制改革 法の全体像」証券経済研究第 号 頁以下( 年)を参照。

(14)

OLA の制度は,FDIC が銀行等の付保預金金融機関を対象として実施す

る連邦預金保険法(Federal Deposit Insurance Act,以下,「FDIA」という)

の破綻処理制度をモデルとしている

!

。そのため,ドッドフランク法の OLA

における FDIC の権限は,FDIA における FDIC のそれとかなり類似した

ものとなっている

"

。しかしながら,FDIA に基づく預金金融機関の破綻処

理において,FDIC は,自己の裁量により,付保預金金融機関に財産保全

管理処分を命じて,破綻処理手続に着手することができるのに対して

#

ドッドフランク法の下では FDIC の主導で清算手続を開始することができ

ない

$

。すなわち,OLA の対象となる対象金融会社を決定するシステミッ

クリスクの決定において,FDIC および FRB は,それぞれの理事会の 分

の 以上の賛成を得ることを条件として,自己の判断または財務長官の要

請により,FDIC を財産保全管理人に任命すべしとする旨の書面による勧

%

を財務長官に対して行うべきかどうかを検討することになる(ドッドフ

ランク法

条(a)項( )号(A))

&

。この勧告を受けて,財務長官が大統領

と協議して,( )金融会社が債務不履行かまたは債務不履行のおそれがあ

る,( )金融会社の破綻および他の適用可能な連邦法または州法の下での

その処理が,米国の金融の安定に重大な悪影響を与える,( )金融会社の

債務不履行を阻止するために利用可能な民間部門の代替措置がない,( )

! Lee, supra note , at . " 澤井=米井・前掲注 頁以下。 # U. S. C. § (a)( )(A). $ Gadinis, supra note , at .

% 書面による勧告には,( )金融会社が債務不履行かまたは債務不履行のおそれがあ るか否かについての評価,( )金融会社の債務不履行が米国の金融の安定に与えるで あろう影響の説明,( )金融会社の債務不履行が,低所得者,マイノリティ,恵まれ ない地域の経済状況または金融の安定に与えるであろう影響の説明,( )金融会社に 対して本法第 編に従って講じられる措置の内容および範囲に関する勧告,( )民間 部門の代替措置が金融会社の債務不履行を阻止する可能性についての評価,( )連邦 倒産法の下でのケースが金融会社に不適切である理由の評価,( )金融会社の債権 者,取引先,株主およびその他の市場参加者に対する影響の評価,および( )当該会 社が 条における金融会社の定義を満たすか否かについての評価,が含まれなけれ ばならない。 U. S. C. § (a)( ).

(15)

本法第 編に従って講じられる措置が米国の金融の安定に与えるであろう

影響を考慮して,本法第 編に従って講じられる措置の結果,金融会社の

債権者,取引先,株主およびその他の市場参加者の請求や利益に与える影

響が適切である,( )金融システムに対する潜在的な悪影響,財務省の一

般資金への負担ならびに金融会社の債権者,取引先および株主の側の過度

のリスクテイクを増大させる可能性を弱める措置の実効性を考慮すると,

条に基づく措置がそのような悪影響を回避しまたは弱めるものであ

る,( )連邦規制当局が連邦規則(federal order)に従って転換可能な債務

証券の全部を転換するよう金融会社に命じている,および( )当該会社が

条所定の定義を満たすものである,と決定した場合に(ドッドフラン

ク法

条(b)項)

"

,財務長官から FDIC および対象金融会社に対して,シ

ステミックリスクの決定に関する通知が行われることになる(ドッドフラ

ンク法

条(a)項( )号(A)

(ⅰ))

#

。ただし,対象となる金融会社の取締役

会には財務長官によるこの決定に異議を唱える機会があり,その場合,財

務長官はコロンビア特別区連邦地方裁判所に対して FDIC を財産保全管理

人に任命する権限を財務長官に付与する命令を求める申立てを行う(ドッ

ドフランク法

条(a)項( )号(A)

(ⅰ))

$

。裁判所は,対象金融会社が債務

不履行かまたは債務不履行のおそれがあり,かつ,

条(a)項( )号に

おける金融会社の定義を満たすとする財務長官の決定が恣意的かつ当てに

ならないもの(arbitrary and capricious)であるか否かについて

時間以

! U. S. C. § (a)( )(A). 対象となる金融会社がブローカー・ディーラーであ るかまたは金融会社の最も大きい米国子会社がブローカー・ディーラーである場合 は,SEC および FRB は,自己の判断または財務長官の要請により,当該書面による 勧告を行うべきかどうかを検討することになるが,当該勧告にはそれぞれの理事会の 分の 以上の賛成と,FDIC との協議が求められる。これに対して,対象となる金 融会社が保険会社または金融会社の最も大きい米国子会社が保険会社である場合に は,FRB の理事会の 分の 以上の賛成と,FIO 局長の承認および FDIC との協議が 求められる。 U. S. C. § (a)( )(B)・(C). " U. S. C. § (b). # U. S. C. § (a)( )(A)(ⅰ). $ U. S. C. § (a)( )(A)(ⅰ).

(16)

内に決定を行い,これに当たらないと判断すれば,財務長官に FDIC を対

象金融会社の財産保全管理人として任命する権限を付与する命令を発する

(ドッドフランク法

条(a)項( )号(A)

(ⅲ)

(ⅳ)

(Ⅰ))

!

。しかし,裁判所

がこれに当たると判断する場合には,財務長官に対してその理由を示した

書面が交付されるとともに,財務長官は当該申立てを修正する機会を与え

られる(ドッドフランク法

条(a)項( )号(A)

(ⅳ)

(Ⅱ))

"

。地方裁判所の

決定に対して,財務長官および対象金融会社は,

日以内であればコロ

ンビア特別区巡回控訴裁判所に上訴可能であり,控訴裁判所の決定につい

ても同じく

日以内に連邦最高裁判所による上訴が認められる(ドッド

フランク法

条(a)項( )号)

#

システミックリスクの決定については,複数の要因に基づいてその可否

を検討することが要求されている。そのために学説からは,いかなる状況

でも規制当局がシステミックリスクの決定を行うことができる点では過度

に包括的なもの(over-inclusive)であるが,他方で OLA を適用しないと

いう裁量も排除されていない点で包括性に欠けるもの(under-inclusive)で

あり,財務長官,FRB および FDIC が異なるインセンティブや動機により

当該決定を行う仕組みでは後者の可能性がより高くなることが指摘されて

いる

$

。すなわち,FDIA に基づく預金金融機関の破綻処理において,FDIC

は,他の連邦法や州法の規定,国法銀行に対して検査・監督を行う OCC

等の連邦規制当局のいかなる決定にも関係なく,自己を付保預金金融機関

の財産保全管理人に任命することができる

%

。これに対して,OLA の下で

は,財務長官,FRB,FDIC の合意がなければ,FDIC は財産保全管理人に

! U. S. C. § (a)( )(A)(ⅲ)・(ⅳ)(Ⅰ). 裁判所が 時間以内にこの決定を行 わない場合には,当該申立ては認められ,財務長官は FDIC を財産保全管理人に任命 し,直ちに清算手続が開始されることになる。 U. S. C. § (a)( )(A)(ⅴ). " U. S. C. § (a)( )(A)(ⅳ)(Ⅱ). # U. S. C. § (a)( ). $ Edwards, supra note , at .

(17)

任命されず,特に金融政策の運営と金融の安定確保の役割を担う FRB

と,預金保険基金への損失を最小限にくい止めようとする FDIC との間

で,当該意思決定に係る結論が分かれることも大いにありうるとして

!

,規

制の先送りの可能性が懸念されている。また他の学説からは,財務長官が

大統領と協議のうえシステミックリスクの決定を行う点で,OLA におけ

る清算手続開始の拒否権が FDIC ではなく財務長官に事実上与えられてい

ることとなり

"

,こうした金融規制における政治的影響力の拡大は,FSOC

のみならず OLA にも共通する問題であると考えられている

#

第 章 わが国の金融規制監督における規制当局の行動

年代における金融機関の不良債権の増加や破綻金融機関の増大,

銀行の海外営業拠点における不正事件への処理の不手際等がきっかけとな

り,こうした問題に対する批判の矛先が,金融機関のみならず,規制当局

として適切に対応すべき立場にあった大蔵省の金融行政手法にも向けられ

るようになった。こうした事態を踏まえて,平成 年

月の大蔵省金融

制度調査会答申「金融システムの安定化のための諸施策−市場規律に基づ

く新しい金融システムの構築−」において,金融機関の経営の健全性確保

のための方策として早期是正措置の導入の必要性が提言され,これを受け

! Edwards, supra note , at . FRB は 年任期の 名の理事で構成されており, 各理事は金融,農業,工業,商業上の利益および国の地理的区分を公正に代表する者 が上院の助言と承認を得て大統領によって任命される( U. S. C. § )。FDIC で は,通貨監督官(Comptroller of the Currency : COC),CFPB 局長および上院の助言と 承認を得て大統領が任命する 名の米国市民(うち 名は州銀行監督の経験者)で理 事会が構成される( U. S. C. § (a)( ))。したがって,こうした指摘は,シス テミックリスクの決定においてそれぞれ 分の 以上の賛成を要する FRB および FDIC の各理事会にも当てはまるものと思われる。

" Gadinis, supra note , at .

# FSOC および OLA の制度において政治任用者(political appointees)である財務長 官が果たす主導的な役割は,両制度に共通する政治的影響力の問題として認識されて いる。Id. at − .

(18)

て,翌年 月に成立した「金融機関の経営の健全性確保のための関係法律

の整備に関する法律(平成 年法律第

号)」により,米国と同じくわが

国でも早期是正措置の制度が導入,平成

年 月より実施されている。

世界的な金融危機へと波及したサブプライムローンに端を発する近時の

金融危機において,その震源地である米国ではドッドフランク法を制定し

てこれに対応したものの,当時のリーマンブラザーズの破綻がセンセー

ショナルであったこともあり,

月,国際的な金融安定を促進す

る役割を担う金融安定理事会(Financial Stability Board,以下,「FSB」と

いう)

!

により,「金融機関の実効的な破綻処理の枠組みの主要な特性」(以

下,「主要な特性」という)

"

が策定され,G

カンヌサミットにおいて「破

! 金融安定理事会(Financial Stability Board : FSB)は,効果的な規制,監督および他の 金融政策の実施を促進するために,各国の金融当局と国際基準策定機関(international standard setting bodies : SSBs)の作業を国際レベルで調整すべく設立された国際機関で ある。Financial Stability Board(FSB), Charter of the Financial Stability Board, Article . FSBは, 年に設立された金融安定フォーラム(Financial Stability Forum : FSF)を 前身として,FSF の任務を強化・拡大すべく 年 月の G ロンドンサミットに おいて改組され,①アルゼンチン,オーストラリア,ブラジル,カナダ,中国,フラン ス,ドイツ,香港,インド,インドネシア,イタリア,日本,韓国,メキシコ,オラン ダ,ロシア,サウジアラビア,シンガポール,南アフリカ,スペイン,スイス,トルコ, 英国,米国および EU の各国・地域の金融当局の代表者,②国際決済銀行(Bank for International Settlements : BIS),国際通貨基金(International Monetary Fund : IMF), 経済協力開発機構(Organization for Economic Co-operation and Development : OECD) および国際復興開発銀行(International Bank for Reconstruction and Development : IBRD)といった国際金融機関,および③バーゼル銀行監督委員会(Basel Committee on Banking Supervision : BCBS),支払決済委員会(Committee on Payment and Settlement System : CPSS),グローバル金融システム委員会(Committee on the Global Financial System : CGFS),国際会計基準審議会(International Accounting Standards Board : IASB),保険監督者国際機構(International Association of Insurance Supervisors : IAIS) および証券監督者国際機構(International Organization of Securities Commissions : IOSCO)といった国際的な基準策定,規制,監督および中央銀行の組織,で構成されて いる。Financial Stability Board(FSB), Articles of Association of the Financial Stability Board(FSB)(of January ), Article ( )・( ), List of FSB Members(as amended on March )( ).

" Financial Stability Board(FSB), Key Attributes of Effective Resolution Regimes for Financial Institutions, October ( )(http://www.financialstabilityboard.org/wp-content/uploads/r_ cc.pdf ?page_moved= ). な お, 年 月 日 に 改 定 版 (Financial Stability Board(FSB), Key Attributes of Effective Resolution Regimes for

(19)

綻処理制度に関する新たな国際基準」

!

として国際的に合意された。他方

で,国際通貨基金(International Monetary Fund,以下,「IMF」という)の

対日 条協議報告書

"

や金融セクター評価プログラム(FSAP)のレポート

#

は,わが国における金融機関の破綻処理に関して,証券会社や保険会社等

のノンバンクを対象とする破綻処理の枠組みの構築や追加的な対応が求め

られた

$

。こうした国際的な動向や要請を踏まえて,わが国でも,平成

年 月の金融審議会「金融システム安定等に資する銀行規制等の在り方に

関するワーキング・グループ」(以下,「WG」という)により金融機関の

破綻処理の枠組みのあり方について検討が開始され,翌年 月の WG 報

告書「金融システム安定等に資する銀行規制等の見直しについて」におい

て,「特に,預金取扱金融機関以外の金融機関については,市場等を通じ

てグローバルに伝播する危機に対して,その秩序ある処理が必ずしも制度

的に担保されていないことから,先述した「主要な特性」や IMF のレポ

ートにおける指摘を踏まえて,新たな制度を設ける必要がある」との提言

がなされた

%

。これを受けて,平成

年の「金融商品取引法等の一部を改

Financial Institutions, October ( ))が 公 表 さ れ て い る(http://www. financialstabilityboard.org/wp-content/uploads/r_ .pdf)。FSB の「主要な特性」につ いては,小立敬「金融機関の破綻処理の枠組みを変える「主要な特性」:破綻処理の 新たな国際基準と欧米の取組み」週刊金融財政事情 巻 号 頁以下( 年), 佐賀卓雄「破綻処理スキームの国際的枠組みの構築」証券経済研究第 号 頁以下 ( 年),山本和彦「金融機関の秩序ある処理の枠組み」金融法務事情 号 頁以下( 年)を参照。

! Communiqué G Leaders Summit−Cannes− − November , Section . 外務省 ホームページ(http://www.mofa.go.jp/policy/economy/g _summit/ /communique.html) を参照。

" International Monetary Fund(IMF), Staff Report for the ArticleⅣ Consultation, IMF Report No. / , − ( )(http://www.imf.org/external/pubs/ft/scr/ /cr

.pdf).

# International Monetary Fund(IMF), Japan : Financial Sector Stability Assessment Update, IMF Country Report No. / , ( )(http : //www.imf.org/external/pubs /ft/scr/ /cr .pdf).

$ これについては,金融審議会「金融システム安定等に資する銀行規制等の在り方に 関するワーキング・グループ」(第 回)議事録( 年)(http://www.fsa.go.jp/singi/ singi_kinyu/ginkou_wg/gijiroku/ .html)を参照。

(20)

正する法律(平成

年法律第

号)」による預金保険法改正に伴い,同

法第 章の において,「金融システムの安定を図るための金融機関等の

資産及び負債の秩序ある処理に関する措置」(以下,「金融機関の秩序ある

処理」という)が規定され

"

,金融業全体(預金取扱金融機関,保険会社,

金融商品取引業者,金融持株会社等)を対象とした新たな破綻処理の枠組

みが整備されている。

第 節 早期是正措置

早期是正措置は,銀行法

条 項および

条の

第 項に定める業

務改善命令または業務停止命令の一環として,金融機関の経営の健全性を

確保すべく金融機関の自己資本比率の状況によって必要があると認められ

る場合に金融庁により自己資本比率や経営そのものの改善につながる措置

が発動されるものである(銀行法

条 項,

条の

第 項)

#

。具体的

には,「銀行法第

条第 項に規定する区分等を定める命令(平成

日総理府・大蔵省令第

号)」に定める内容に基づいて,図 の

ように規制対象となる金融機関

$

を各資本区分に分類し,下位 つの資本区

! 金融システム安定等に資する銀行規制等の在り方に関するワーキング・グループ 「金融システム安定等に資する銀行規制等の見直しについて」 頁( 年)(http:// www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/ − / .pdf)。 " 第 章の 「金融システムの安定を図るための金融機関等の資産及び負債の秩序あ る処理に関する措置」の新設に伴い,預金保険法の目的規定が改正され,同法 条の 「並びに金融危機への対応の措置等」が「金融危機への対応の措置並びに金融機関等 の資産及び負債の秩序ある処理に関する措置等」に改められるとともに(預金保険法 条),預金保険機構の業務に「金融機関の秩序ある処理に係る業務」が加えられて いる(預金保険法 条)。 # 早期是正措置の発動はその対象となる金融機関に不利益をもたらす行政行為であ る。したがって,金融庁が金融機関に対して早期是正措置を発動する場合には,原則 として聴聞または弁明の機会の手続および不利益処分の理由の提示が求められ(行政 手続法 条 項, 条),当該処分について金融機関に不服があるときは審査請求 をすることができる(行政不服審査法 条)。 $ 国内銀行と同等に全ての外国銀行支店に対して銀行法が適用されるところ,外国銀 行支店には自己資本比率規制が定められず,長らく外国銀行支店に対する自己資本比 率規制および早期是正措置が適用されない状態が続いていた。そこで,金融審議会「金

(21)

分(第 区分・第 区分・第 区分の ・第 区分)に該当する金融機関

に対して,経営改善計画の提出から業務停止まで段階的に規制が強化され

ることになる(銀行法第

条第 項に規定する区分等を定める命令 条

項・ 項, 条 項)

!

。これにより,( )金融機関の経営状況を客観的

な指標でとらえ,適時に早期是正措置を講じることにより,その経営の健

全性確保と経営破綻の未然防止を図ること,( )是正措置の発動ルールの

明確化を図ることにより,行政の透明性確保にも資することとなること,

融システム安定等に資する銀行規制等の在り方に関するワーキング・グループ」にお いて,自己資本比率規制のあり方についても検討が行われた。しかしながら,外国銀 行支店のバランスシート上に資産があっても,母体の外国銀行の破綻時において実際 に国内に資産がなければ,国内預金者が最終的に十分な弁済を受けられなくなるおそ れがある点で規制の実効性に問題があることや,諸外国では支店単位での規制がほと んど課されていないことから,慎重に検討することが適当であるとして,外国銀行支 店に関する自己資本比率規制および早期是正措置の適用に関する規定の整備は見送ら れている。金融システム安定等に資する銀行規制等の在り方に関するワーキング・グ ループ・前掲注 頁。 自己資本の充実の状況に係る区分(単体・連結) 国際統一基準(平成 年 月 日より適用) 国際統一基準 国内基準 非対称区分 ①普通株式等Tier 比率 .%以上 ②Tier 比率 %以上 ③総自己資本比率 %以上 %以上 %以上 第 区分 ①普通株式等Tier 比率 . %以上 .%未満 ②Tier 比率 %以上 %未満 ③総自己資本比率 %以上 %未満 %以上 %未満 %以上 %未満 第 区分 ①普通株式等Tier 比率 . %以上 . %未満 ②Tier 比率 .%以上 %未満 ③総自己資本比率 %以上 %未満 %以上 %未満 %以上 %未満 第 区分の ①普通株式等Tier 比率 %以上 . %未満 ②Tier 比率 %以上 .%未満 ③総自己資本比率 %以上 %未満 %以上 %未満 %以上 %未満 第 区分 ①普通株式等Tier 比率 %未満 ②Tier 比率 %未満 ③総自己資本比率 %未満 %未満 %未満 早期是正措置の概要

(22)

および( )金融機関が破綻した場合の破綻処理コストの抑制を図ること

"

,の効果が期待されている

#

なお,海外営業拠点を有する金融機関には国際統一基準が適用され,

そうでない金融機関には国内基準が適用されるところ(銀行法第

条第

項に規定する区分等を定める命令 条 項・ 項, 条 項・ 項),

平成

月に公表されたバーゼル銀行監督委員会(Basel Committee on

Banking Supervision : BCBS)「バーゼルⅢ:より強靭な銀行および銀行シ

ステムのための世界的な規制の枠組み」

$

を受けて「銀行法第

条の の

規定に基づき,銀行がその保有する資産等に照らし自己資本の充実の状況

が適当であるかどうかを判断するための基準(平成

年金融庁告示第

! 長期信用銀行(長期信用銀行法 条,長期信用銀行法第 条において準用する銀 行法第 条第 項に規定する区分等を定める命令),信用金庫(信用金庫法 条 項,信用金庫法第 条第 項において準用する銀行法第 条第 項に規定する区分 等を定める命令),信用協同組合(協同組合による金融事業に関する法律 条 項, 協同組合による金融事業に関する法律第 条第 項において準用する銀行法第 条 第 項に規定する区分等を定める命令),労働金庫(労働金庫法 条 項,労働金庫 法第 条第 項において準用する銀行法第 条第 項に規定する区分等を定める命 令),保険会社(保険業法 条 項,保険業法第 条第 項に規定する区分等を 定める命令),金融商品取引業者(金商法 条, 条の 第 項),農林中央金庫(農 林中央金庫法 条 項,農林中央金庫法第 条第 項に規定する区分等を定める命 令),農業協同組合(農業協同組合法 条の 第 項,農業協同組合法第 条の 第 項に規定する区分等を定める命令),漁業協同組合等の水産業協同組合(水産業 協同組合法 条の 第 項,水産業協同組合法第 条の 第 項に規定する区分 等を定める命令)についても,早期是正措置およびこれに類似する制度がある。 " 森田利洋「新たな金融システムの構築に向けて⑴ 健全性確保法」時の法令 号 頁以下( 年)。 # 平成 年度までの早期是正措置の発動実績の累計は,銀行等 件,信用金庫 件,労働金庫 件,信用組合 件,系統金融機関(農林中央金庫,信用農業協同組 合連合会 機関,信用漁業協同組合連合会 機関(平成 年 月末)) 件となっ ている。金融庁『金融庁の 年(平成 事務年度版)』 頁( 年)。

$ Basel Committee on Banking Supervision(BCBS), Basel Ⅲ : A global regulatory framework for more resilient banks and banking systems( )(www.bis.org/publ/bcbs _dec .pdf). なお, 年 月 日に改定版(Basel Committee on Banking Supervision(BCBS), Basel Ⅲ : A global regulatory framework for more resilient banks and banking systems, rev June ( ))が公表されている(www.bis.org/publ/bcbs

(23)

号)」が改正されたことに伴い,銀行法第

条第 項に規定する区分等を

定める命令も改められ,早期是正措置の発動基準となる「自己資本の充実

の状況に係る区分」に関して,新たな国際統一基準が 年間の経過措置を

経て平成

年 月

日より適用されている

!

(第 区分)

金融機関が第 区分の資本区分に分類される場合には,経営改善計画

(原則として資本増強に係る措置を含む)の提出および実行が命じられる。

具体的な運用については,金融庁「主要行等向けの総合的な監督指針」

(以下,「監督指針」という)

"

に委ねられており,計画全体として経営の健

! 新たな国際統一基準の適用に関する経過措置については,第 区分を除き,平成 年 月 日から平成 年 月 日までの期間は,非対称区分(①普通株式等 Tier 比率 .%以上;② Tier 比率 .%以上;③総自己資本比率 %以上),第 区 分(① 普 通 株 式 等Tier 比 率 . %以 上 .%未 満;② Tier 比 率 . %以 上 .%未満;③総自己資本比率 %以上 %未満),第 区分(①普通株式等Tier 比 率 . %以上 . %未満;②Tier 比率 . %以上 . %未満;③総自己資本比率 %以上 %未満),第 区分の (①普通株式等Tier 比率 %以上 . %未満; ②Tier 比率 %以上 . %未満;③総自己資本比率 %以上 %未満)とされ, さらに平成 年 月 日から平成 年 月 日までの期間については,非対称区 分(①普通株式等Tier 比率 %以上;② Tier 比率 .%以上;③総自己資本比率 %以 上),第 区 分(① 普 通 株 式 等Tier 比 率 %以 上 %未 満;② Tier 比 率 . %以上 .%未満;③総自己資本比率 %以上 %未満),第 区分(①普通株 式等Tier 比率 %以上 %未満;② Tier 比率 . %以上 . %未満;③総自己 資本比率 %以上 %未満),第 区分の (①普通株式等Tier 比率 %以上 % 未満;②Tier 比率 %以上 . %未満;③総自己資本比率 %以上 %未満)と されている(銀行法第 条第 項に規定する区分等を定める命令附則 条)。 " 当該監督指針でいう「主要行等」とは,主要行,新生銀行,あおぞら銀行,シティ バンク銀行およびゆうちょ銀行をいう(主要行等向けの総合的な監督指針Ⅰ−( ))。 地方銀行,第二地方銀行,信用金庫,信用組合および労働金庫に関する早期是正措置 の具体的な運用については,金融審議会金融分科会第二部会報告「リレーションシッ プバンキングの機能強化に向けて」(平成 年 月 日)を受けて「リレーション シップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」で策定された「中小・ 地域金融機関向けの総合的な監督指針」のⅡ− − に委ねられている。そのほか, 保険会社は「保険会社向けの総合的な監督指針」Ⅱ− − ,金融商品取引業者(第一 種金融取引業者)については「金融商品取引業者向けの総合的な監督指針」Ⅳ− − をそれぞれ参照。

(24)

全性を確保できるものであることが重視され,その実行にあたっては,

基本的に銀行の自主性が尊重されることになる(監督指針Ⅲ− − − −

( )①)。

(第 区分)

金融機関が第 区分の資本区分に分類される場合には,自己資本の充実

に資する措置として,資本の増強に係る合理的と認められる計画の提出お

よび実行,配当または役員賞与の禁止またはその額の抑制,総資産の圧縮

または増加の抑制,取引の通常の条件に照らして不利益を被るものと認め

られる条件による預金または定期積金等の受入れの禁止または抑制,一部

の営業所における業務の縮小,本店を除く一部の営業所の廃止,付随業務

(銀行法

条 項)その他の銀行業に付随する業務,他業証券業務等(銀

行法

条)または担保付社債信託法その他の法律により営む業務の縮小

または新規の取扱いの禁止,その他金融庁長官が必要と認める措置,が命

じられる。当該金融機関が銀行法

条の 第 号に規定する子会社等を

有する場合や銀行持株会社およびその子会社にあたる場合には,子会社等

の業務の縮小および子会社等の株式または持分の処分がこれに含まれる

(銀行法第

条第 項に規定する区分等を定める命令 条 項, 条

項)。

これらの措置については,金融機関の経営実態に即して措置を講じる必

要があることから,金融機関の意見を踏まえるものの,自己資本比率の

早期改善を実現すべく金融庁の判断によってその措置の内容が定められ,

金融機関は個々の措置ごとに命令を達成することになる(監督指針Ⅲ−

− − −( )①)。

(第 区分の )

金融機関が第 区分の の資本区分に分類される場合には,自己資本の

充実,大幅な業務の縮小,合併または銀行業の廃止等の措置のいずれかを

(25)

選択した上で,当該選択に係る措置の実施が命じられる。

この措置の対象となる金融機関は特に著しい過小資本の状況にあること

から,これを速やかに改善するかもしくは銀行業務の継続を断念すること

が求められることになる(監督指針Ⅲ− − − −( )①)。

(第 区分)

金融機関が第 区分の の資本区分に分類される場合には,業務の全部

または一部の停止が命じられる。

(改善までの期間)

国際統一基準が適用される金融機関は,少なくとも 年以内(原則とし

て翌決算期まで)に当該資本区分に係る自己資本比率の範囲を上回る水準

を回復する計画であることが求められる。他方で,国内基準が適用される

金融機関については,第 区分における改善計画は原則として 年以内に

自己資本比率が %以上となる内容の計画であること,第 区分の措置お

よび第 区分の における合併(金融機関が解散会社となる場合)または

銀行業の廃止以外の措置については,原則として 年以内に少なくとも自

己資本比率が %以上となるための措置であることが求められる(監督指

針Ⅲ− − − −( )②)。

こうした発動基準については,金融機関の破綻に伴う混乱や財政負担の

観点から高い水準を望む規制当局と,規制当局による経営への関与を避け

ようと低い水準を望む経営者や株主等の金融機関関係者との間の利害調整

の結果

!

という側面があるにせよ,是正措置の発動ルールの明確化による行

政の透明性確保という効果や,バブル経済の発生と崩壊の過程で検査・監

督による事前のチェック機能が必ずしも果たされていなかったという教訓

! 木下信行『金融行政の現実と理論』 頁(社団法人金融財政事情研究会, 年)。

参照

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