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Zoysiaターフに発生するラージパッチの効率的薬剤防除-香川大学学術情報リポジトリ

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香川大学農学部学術報告 第40巻 第1号 37∼45.1988

Zoysiaターフに発生するラージパッチ

の効率的薬剤防除

反保宏行・谷 利一

EFFICIENT CHEMICAL CONTROLOF LARGE

PATCH ON ZOYSIA TURF

HiroyukiTANPO,ToshikazuTANI

LargepatchcausedbyRhizo(10nlasohmiAGA2L2(IV)isoneofseriousdiseasesandmainlyoccursonzoysia

fairwaysofgolfcourseslocatedincentralandsouthernpartsofJapan Thisstudywasconductedtoestablish

anef汽cientcontrolofthediseasebyfungicideapplication Theresultsof鮎Idexperimentsfor4years(1985− 1988)indicated thatthechemicalsmoree庁ectivethan TPN−TMTDmixturearethreeselectivefungicides containingfultolanil,penCyCurOnanddiclomezine,andfournon−SelectivefungicidescontainingtoIchlophos− methyl,benomyl,iprodioneandfluazinam Thesechemicalsremarkablyreducedthediseasedevelopmentby twotimesapplication,Whenthesewerefirstappliedbeforeand/orattheinitiationofthediseaseappearance

TheformerthreeselectivefungicidesandtoIchlophosmethylandiprodionewerealsoeffectivebytheapplica−

tionafterwhenthepatchsymptomwasclearlyappearedLargescale6eldtestsusingpencycuronWPand

fultolanil−isoprothiolaneGconfirmedtheeffectivenessbyapplicationofoneortwotimes

ゴルフ場フェアウエイのZoysiaシ/㍉こ多発するラ、一・ジバyチ(病原7%Rhiboctonidsohmi,AG−2−2(ⅠⅤ))に対する 効率的薬剤防除法を確立する目的で,1985年より4カ年間にわたり圃場試験を行った。その結果,対照薬剤‘TPN・ TMTD混合剤(ダコグリーン)よりも有効と判定される薬剤として,選択的殺菌剤のフルーラニル含有剤,ペソシク ロン剤,ジクロメジン剤,非選択的殺菌剤のいレクロホスメチル剤,べノミル合着剤,フル■アジナム剤,イ■7’ロジオ ン剤をあげた。これらの殺菌剤は発病前またほ初発生期から2回施用することにより本病発生を顕著に抑制した。ま た,発病後に施用して治療的効果を期待できる薬剤として,前述した選択的薬剤3老とトルクロホスメチル剤および イブロジオン剤が看望であった。広面積処理による試験をペソシクロン水和剤とフルトラニル含有粒剤で実施し,そ の有効性を確認した。 緒 ゴルフ場における芝草ほ頻繁な刈り込なと踏H三などの過酷な条件下に置かれ 加えて/くッティングクオリティの維 持が要求されているために,はなはだ不適切な人工環境下での生育を余儀なくされている。そのために,芝草の病害 抵抗性は極端に低下していると考えられ,他の芝地にほみられない数多くの病害が発生する。 我が国において,Zoysia系シバであるコウライシバ(コウシュンシバ,Zoysid matrelhlMerT’)(1)ぉよびノシバ (Zoysiaj如onicaStend)は多くの場所に利用されている。なかでも,北海道および東北地力の山部を除いては,殆 んどのゴルフ場で植栽され 最も亜要な地被植物である。これら,Zoysiaシバの病害に対して,現在各地のゴルフ場 で実施されている防除のカ′策は殺蘭剤の多用による“予防”または◆●消毒’’が中心である。各ゴルフ場の7■ンケート 調査によると、年間ヰ均約20回におよぶ殺菌剤を投与している例が少なくない(7)。そのために,経費の著しい増高はも とより.副作用現象(Sideeffect)(6)による発病の増進,あるいは環境薫染をおこす恐れが懸念される。

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38 香川大学農学部学術報賃 第40巻 第1号(1988) このような殺菌剤多用の防除体系をもたらした背景は必ずしも単純ではないが,最大の原因として,それぞれの病 害に対して卓効のある殺菌剤の導入が立ら遅れていることがあげられる。ゴルフ場における使用薬剤の種類をみると, 抗菌スペクトラムほ広いが殺菌力ほ必ずしも強くないものが多く,それらの殆んどは植物体内への浸透移行性がない。 また,適切な効果試験や安全性の裏付けがなく,したがって登録されていない農薬を使用している事例も少なくな い(7)。 以上のような現状をふまえ,筆名らほゴルフ場のZoysiaシバに発生する重要病害を対象に,適切な殺菌剤の選択と その施用法を確立する目的で,圃場試験を進めてきた。本論文では,主として,コウライシバおよびノシバのフェア ウエイに発生する菓腐病(以下通称に従いラージィぺッチと称する)に対する試験結果を報告する。試験成績は1985年 から1987年の3カ年間に行ったもののうちから,有効性の認められた殺菌剤をとりあげた。さらに,1988年に広面積 で実用試験を行った結果をあわせて,本病に対する効率的防除法を提唱したい。 本研究の遂行にあたり,小豆島カントリークラブ(以下CC),高松グランドCC,高松CCからは格別の援助をう仇 元専攻生の林聴(現・日本シェ1−リング㈱),湊丁伸(現・㈱ニチノ・一緑化)ほじめ多くの諸氏の協力をえた。ここに 深く感謝の意を表する。また,種々の便宜と有益な助言を賜った日本植物防疫協会牛久研究所荒木隆夫博士および木 曽賭博士,ならびに.各種殺菌剤を供与された関係各社に深謝する。 材料および方法 1試験場所 下記の3カ所のゴルフ場フェアウエイで実施した。 小豆島カントリー・クラブ香川県小豆郡内海町福田 高松グラントカントリークラブ 香川県木田郡三木町朝倉 高松カントリ1→倶楽部,城山ゴルフ場 香川県坂出市西庄町城山 特記以外はコウライシバとノシバの混植地で,小豆島CCおよび高松グラントCCでは10∼15年前から毎年春期と 秋期の2軌ラージパッチが多発している。高松CCの試験地ほ1987年8月にコウライシバを植え付仇1988年4月に 始めてラージ/くッチが発生した場所である。 2.供試薬剤および施用 供試薬剤ほ第1表のとおりで,担子菌頼または尺ゐまzo(わ紹まαSO血刀去に選択的殺菌力のある主式分を含有する4種瑛と, と,非選択的殺菌剤を含有する5種頼である。ダコグリーンほ古くから各地のゴルフ場で常用されている薬剤で,本 試験では対照薬剤として用いた。表中の人畜・魚毒性ほ農薬の手引(昭和62年版)(2)に準ずるもので,習ほ人畜に対す る毒性が普通物取扱い,Aほ通常の使用方法で毒性の問題ほない,Bは血時に広範囲に使用する場合には十分注意す る,Cほ飛散,流出の恐れのある場所では使用しない,である。 第1表 供試薬剤 主 成 分 商 品 名 形 (含有量%) 副 (含有量%) 成 分 人畜・魚毒性 Ⅰ群 グラステン 粒 剤 フルトラニル (5) イソプロチオラン(4) 啓一B グラステン 水和剤 フルトラニル (25) イソプロチオラン(20) 普−B モン・セレン′ 水和剤 ペソ・ンタロソ (25) 普wB モンガ・−ド 水和剤 ジクロメジン (20) 普…A Ii群 Y−855* 粉 剤 トルクロホスメチル(3) キャブタン (3) 普−B ベンレートT 水和剤 べノミル (20) TMTD (20) 普−C フロンサイド 水和剤 フルアジナム (50) 普−C ロブラール 水和剤 イブロジオン (50) 普−A ダコグリーン 水和剤 TPN (50) TMTD (30) 普一C Ⅰ群 主成分が担子菌頼またほ斤ゐよzocわ乃∠αSO由乃∠に選択的に有効な殺菌剤 ⅠⅠ群非選択的殺菌剤 *試験番号

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39 反保宏行,谷 利一ZoysiaタMフに発生するラ、一ジバyチの効率的薬剤防除 水和剤の施用ほ所定倍数に水で希釈し,タンク車で所定畳を散布した。ただし,第5義一2め散布には如露を用いた。 粒剤は粒状肥料散布機で散布した。粉剤のY−855ほ微粉のために均一散布が困難であったので,所定畳を水に懸濁し てタンク孝で散布した。いずれの試験とも,散布直後の降雨ほなかった。なお,第5表−2の試験では,パッチ周縁部 が中心になるように試験区を設定した。その他の事項については各試験結果の真の脚注に記載する。 3発病調査と薬効評価 フェアウエイに多発した本病の状況ほ写真Aのとおりである。また,写真Bほ昨夏に新植した芝地に今春発生した パッチであるが,その進展状況が極めて急速な事例である。本病ほ年間2回発生する。通常,春期には4月上旬に初 発生がみられ,6月中旬までパッチ面積の拡大とパッチ数の増加が継続する。それ以降ほ自然治癒する。秋期にほ10 月中・下旬に発生しほじめ,病勢は11月中旬に衰える。パッチ跡は翌年まで残り(写真C),春期にほ再度周縁部が活 発となって拡大することが多い(写真D)。 発病調査は試験区内のパッチ数 ,ならびに試験面掛こ対してパッチの占める面積の百分率を求める方法によった。 /くノチ進展の有無については,パッチ周縁部に鮮明な茶褐色部のある場合を進展(活動中)(写真D,E),ない場合 を停止とみなした(写真F)。また,秋期の/くヅチ跡を旧パッチ(写真C,F),新しく発生した/ミグチを新/くヅチ(写 真E)とした。 薬剤の効果判定にほ,パッチ数,パソナ面積(旧パッチで停止しているものは除く)のほかに,最終調査時のパッ チ面積より,下式によって防除価を求めた。 防除価=〔1一 車 〕×100(%) その他の事項は実験結果の項に示す。 実 験 結 果 1985年から1987年までの3カ年間にわたり,春期の発生を対象に防除試験を行った。また,1985年および1988年に ほ病勢の状態を調査し,治癒効果を検討した。1988年にほ,実用性を確認するために,有望な薬剤について大面積の 試験を行った。 1 防除試験 (1)1985年すでにパッチが発生し始めた時期に第1回散布を行った。結果ほ第2蓑のとおりである。無処理区 の結果が示すように,試験(1),(2)ともに,5月10日までパッチ発生は進行し,大発生の状態となった。そのためか, 対照薬剤のダコグリーンの効果ほあまりなかった。一一方,供試薬剤ほ5種類とも高い防除効果を示した。 (2)19鈍年J初発期は4月10日頃であり,第1回散布は発病前に行ったことになる。5月20日までの無処理区の 発生状態からして,ほほ中発生の年であったといえる。対照薬剤を含め,供試4薬剤の処理区で完全に発病を抑制し た(第3表)。 (3)1987年こ初発生ほ4月上旬であったが第1回散布ほ3月下旬である。この年の発生状況は5月22日の無処理 区でのパγチ面積率が10%未満であるので,小発生であったといえる。ダコグリーンを含め, 供試5薬剤とも優れた 防除効果を示した(第4表)。 以上のように,この3カ年間の試験でほ年次によって発生状況が異なるが,対照薬剤のダコグリーンの効果は大発 生時には極端に低いことがうかがえる。これに対して,ペンシクロソ剤(そソセレン),イブロジオン剤(ロブラール), フルアジナム剤(フロンサイド)は大発生時に卓効があった。また,中または小発生時にもフルトラニル含有剤(グ ラステン)およびジクロメジン剤(モソガード)は対照薬剤に比べて同等またはやや高い効果を示した。したがって, 本報告に示す供試薬剤ほすべて有望であるといえる。他の薬剤数種についても,同時に試験を行ったが,対照薬剤よ りも効果が劣るために本報告からは割愛した。なお,薬害は全ての供試薬剤区で発生しなかった。 2 パッチ進展阻止効果 1985年の試験は発病が始まってから薬剤散布を行ったので,発病後の病勢におよばす影響の調査が可能であった。 さらに,1988年には症状が十分に進行した段階で薬剤を施用して進展阻止を調査した。結果は第5表のとおりである。 1985年の試験の進展パッチ率をみると,第1回散布後13日目ですでにペンシクロソ剤およびイブロジオン剤の2区 で進展ほ完全に停止している。また,第2回散布後22日目の調査ではトルクロホスメチル含有剤も進展を完全に阻止 した。一方,ベノミ ル含有剤およびフルアジナム剤の効果は不十分で,対照薬剤のダコグリーンとほぼ同等であった。

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40 香川大学農学部学術報告 第40巻 第1号(1988) 第2表1985年度防除試験 (1) (小豆島CC,フェアウエイ) 東釈倍数 パッチ個数/100m2 パッチ面畷率(%) 薬剤名 防除価 (倍) 4月5日 4月18日 5月10日 4月5日 4月18日 5月10日 モン/セレン′ 1,000 34 39 05 90 110 15 954 Y−855 10g/m2* 4 0 55 17 90 120 25 925 30g/m2 4 2 60 20 130 230 5。0 84 6 ロブラール 1.500 29 44 20 90 180 25 923 1.000 52 27 10 150 150 1−5 954 ダコグリーン 750 24 54 40 80 230 150 538 無 処 理 22 75 109 40 450 325 処理 1区100∼150mg,2ゼ/m2(モソセレソほ1ゼ/m2)散布(第1回4月5日,第2回4月18日) *粉剤を水に懸濁して使用。 (2) (′J\豆島CC,フェアウエイ) 希釈倍数 パッチ個数/100m2 パッチ面積率(%) 薬剤名 防除価 (倍) 4月5日 4月18日 5月10日 4月5日 4月18日 5月10日 ベンレ…トT 1,000 60 100 130 225 200 125 669 フロンサイド 2,000 60 160 90 200 375 200 500 1,000 50 60 50 150 300 125 669 ダコグリ,−ン 750 60 160 110 200 525 300 250 無 処 理 60 140 180 150 200 400 0 処理1区50m2,2ゼ/mz散布(簾1回4月5日,第2回4月18日) 第3蓑1986年度防除試験 (高松グランドCC,フェアウエイ) 薬 剤 名 希釈倍数(倍) パッチ個数/100m2 パッチ面贋率(%) 防 除 価 モ;/・セレこ/ 1,000 0 1000 ベンレートT 1,000 1000 フロンサイト 2,000 0 0 1000 1,000 0 0 1000 ダコグリい・・・・ソ 750 0 1000 無処理 117 213 0 処理1区210m2,1ゼ/m2(ベンレートT,ダコグリーンは2ゼ/m‡)散布(第1回4月7日,簸2回4月21日) 調査日5月20日 1988年の試験でほ4種の薬剤を供試し,散布は1回だけとした。散布後15日目の調査によると,フルトラニル含有剤, ペソシクロソ剤およびジクロメジン剤処理区でほいずれも/ミグチ周縁の褐色帯は消失した。一方,フルアジナム剤ほ 褐色の程度は低くなったものの,なお褐色帯は残存していた。 以上の結果より,ペソシクロン剤(キンセレン),トルクロホスメチル含有剤(Y−855),フルトラニル含有剤(グ ラステン),ジクロメジン剤(そンガード)およびイブロジオン剤(ロブラール)は発生後に散布しても病害の進展を 阻止する効果が高いと判定される。一項,べノミル合着剤(ベンレートT)およびフロンサイド剤(フルアジナム)

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反保宏行,谷 利一 Zoysiaタ、−一一−フに発生するラージパッチの効率的薬剤防除 41 第4表1987年度防除試験 (小豆島CC,フェアウエイ) 薬 剤 名 希 釈倍数(倍) パッチ個数/100m2 パッチ面帯率(%) 防 除 価 グラステン 15g/m2* 13 14 835 20g/m2 0 0 1000 モン′セレン′ 1,000 03 15 825 モソガード 1,000 0 0 1000 7ロ 1,000 07 882 ダコダリ、一ソ 750 10 16 812 無 処 理 53 85 0 処理 1区150m2,1ゼ/m2(ダコグリーンは2ゼ/m2) 散布(第1回3月27日,第2回4月13日)調査日5月22日*粒剤 第5表 パッチ進展阻止効果 (1)1985年 (小豆島CC,フェアウエイ) 進展パッチ率(%)ホ 薬 剤 名 希釈倍.数(倍) 4月5日 4月18日 5月10日 モン′、セレ′ン′ 1,000 100 0 0 Y− 855 30g/mヱ 100 233 0 ベンレ・一卜T 1,000 100 600 46“2 フロンサイド 1,000 100 909 60小0 ロブラ、−ル 1,000 100 0 0 ダコグリーーン 750 100 566 618 無 処 理 100 709 977 処理 第2表参照 *周縁褐変パッチ数/全パッチ数×100 (2)1988年 (高松CC,コウライフェアウエイ) 周縁褐変度* 薬 剤 名 希釈倍数(倍) 5月25日 6月10日 グラステン(水) 500 一日+ モン′−ヒレン′ 1,000 ・川− モンガード 1.000 −H十 フロンサイド 1,000 1什 十−≠ 無 処 理 −H十 1≠ 処理 1区3連制,1ゼ/m℡を5月25日に散布 */くソテ周縁が数cm褐変を≠(写真D,E参照),褐変なしを−とし(写真F参照),中間を等分に表示 は発生直前の散布によって高い効果が期待される薬剤であるといえよう。 3.広面積の施用試験 (1)モンセレン水和剤 キンセレン剤は1985年より3カ年にわたって継続して好成紙をあげてきたので,その有効性を確認するために,高

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42 香川大学農学部学術報告 第40巻 第1号(1988) 松グランドCCのフェアウエイ36ホールで1,000倍液,1ゼ/m2の散布を発病前の3月27日,28日に.タンク孝で行った。 一・部残した無散布箇所では4月中旬よりパγチが発生し始めたが,散布箇所には全く発病がみられなかった。さらに, 4月27日,28日に第2回散布を行い,5月24日に鹿庭コース10番と16番,氷上コース15番の3ホー・ルで発病を調査し た。結果は第6蓑のとおりである。 無処理区の発生パッチ数は5、・14個/1,000m2であったが,それに対し,処理区でほ10番か−ルにわずかに発生した だけで,ほぼ完全に防除できたといえる。 その後の観察で,パッチ数はさらに増加しているとみうけられたので,6月7日に10番か−ルで再度詳細な調査を 行った。結果は第7表−1のとおりで,無処理区の進展パッチ数ほ5月27日の53から104に増えていた。昨秋発生し たパッチ跡の括動も大型パッチで活発であった。それに対し,処理区では前回調査時からの増加ほみられなかった。 また,昨秋のパッチ跡で再度活動しているものほなかった。 以上の結果より,モンセレン水和剤ほ1g/m2,2回の施用で十分な効果をあげられるといえる。また,第2回散布 後より41日目の調査でも効果は持続しており,本剤の残効性ほ極めて長期間におよぶものと考えられる。 前述のように,ラ1一ジ バッチは通常ほ6月中旬からほ自然治癒するので,本結果ほ1期,2回の散布で十分である ことを示している。 第6表1モソセレンの防除効果 (高松グランドCC,フェアウエイ) 試験面積(m2) 進展パッチ数*1 コ・−・ス 番号 処 理 区 無 処 理 区 処 理 区 無 処 理 区 鹿庭コース 10番 4,000 4,000 3(08)*2 21(53) 16番 4,500 4,500 0 62(138) 氷上コース 15番 3,000 2,000 0 21(10−5) 処理1β/m2散布(第1回3月27日,第2回4月27日) ★1周縁が褐変しているパッチ *2()内は1,000m2当たりの数 (2)グラステン粒剤 フルトラニルを主成分とするグラステン水和剤について,筆名ら(4)ほ,1982年と1983年に小豆島CCで試験を行い, 極めて優れた成績をえた。なかでも,1983年4月13日に1回だけ施用した区で,32日後でも防除価75(ダコダリ・一ソ では20)を示した点で注目された。さらに,1987年の試験では,新しく開発されたグラステン粒剤区で卓効がみられ た(第4表参照)。これらの結果に基づいて,1988年春期にグラステン粒剤による広面積の試験を行うこととした。 結果は第7表−2および写真G,Hのとおりである。旧パッチの合計値で明らかなように,試験地における昨秋の発 生状態は激甚であった。また,無処理区でほ旧パγチの殆んどが春期に再度活動していた。このような発生状況下に おいて,グラステン粉剤は20g/m才,1回の施用で卓越した防除効果を示した。調査ほ5月21日であるが,その後の観 察では6月中旬でも効果ほ持続していた。 以上のように,本剤も極めて実用性の高い優れた防除剤であるといえる。 考 察 ラージ パッチは斤ゐzo(わ乃2αSO血刀よ(菌型AG−2−2(ⅠⅤ))(59)に基づく比較的新しい病害で,10数年前に中,四国, 関西地方でZoysiaシバのフェ7ウェイに出現した(8)。その後,九州北部や中部,関東にまで蔓延し,現在は約200のゴ ルフ場に発生している。静岡県,神奈川県でほ90%以上のゴルフ場でみられるといわれている。発生コースでほ被害 面群が大きく,直径10m以上の円型パγチとなって芝目が殆んど消失し,土壌が裸出することも少なくない(写真A, C参照)。このような被害の甚大さからして,各コルフ場ともその防除には多額の出費を余儀なくされている。 現在のところ,本病の発生が定着したゴルフ場における防除法は殺菌剤に依存する以外にない。有効な薬剤として ほ,経験的にPCNB剤があげられてきた。しかし,筆名らの試験によると,本剤は必ずしも優れた薬剤とはいえない。

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43 反保宏行,谷 利一 Zoysiaターフに発生するラージパッチの効率的薬剤防除 第7義 広面積による実用試験(1988) (1)モソセレン(高松グランドCC,フェアウエイ) パッチ個数/1,000m2 旧パッチ*2 パッチの大きさ*】 新パッチ 進 展 停 止 合 計*3 処理区 大型 0 0 63 63 中 型 0 0 15 15 小 型 08 0 0 0 合 計 08 7 8 78 無処理区 大型 0 45 08 53 中 型 18 10 05 15 小 型 28 0 3 0 合 計 46 58 13 71 処理1区4,000m2,1,000倍液を1ゼ/m2散布(第1回3月28日,第2回4月27日)調査日6月7日 *1大型 5m2以上,小型1m2未満,中型 両者の中間 *2昨秋発生したパッチ跡で,周縁部が褐変しているもの(進展)(写真D参照),およびしていないもの(停止) (写真F参照)。新/くヅチはすべて褐変していた(写真E参照)。 *3昨秋の発生状況が示されている。 (2)グラステン粒剤(小豆島CC,フェアウエイ) パッチ個数/1,000m2 旧パッチ*2 パッチの大きさ*1 新パッチ 進 展 停 止 合 計*3 処理区 大型 0 330 330 中 型 10 10 13 0 140 小 型 0 0 90 9。0 合討 10 10 550 560 無処理区 大型 10 350 20 370 中 型 10 200 10 210 小 型 13 0 100 10 110 合 計 150 65。0 40 690 処理1区1,000m℡,3月30日に20g/m才を散布 調査日5月21日(無処理区のパッチ面積率は35%) *1*2*3第7表−(1)脚注参照 その後,小林(き)によってレレクロホスメチル剤(ダランサー)の卓効性が示され,筆者らも直ちに試験を行い,その 優れた効果を追認した。本剤は現在でも多くのゴルフ場で使用され 防除剤としての評価は高い。ただし,価格の点 で問題があり,一般のゴルフ場で広面積にわたって施用するには必ずしも適当な薬剤とはいえない。本研究では,防 除効果に優れ,より安価で,かつ,人畜・魚毒性の低い殺菌剤を探索する目的で,すでに一般作物に適用されている 殺菌剤のいくつかについて試験を行った。 3カ年間の試験成績に基づく限りでは,選択的殺菌剤のフルトラニル含有剤(グラステン),ペンシクロソ剤(モソ セレン),ジクロメジン剤(モンガード)が,また,非選択的殺菌剤のトルクロホスメチル剤(Y−855),べノミル含 右剤(ベンレーl、T),イブロジオン剤(ロブラール),フルアジナム剤(フロンサイド)が有望である。このうち,

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香川大学農学部学術報告 第40巻 第1号(1988) 44 発生後でも効果が期待できる薬剤としては,選択性のある上記3剤とトルクロホスメチル剤およびイブロブオン剤が あげられよう。したがって,発生初期のパノチに対してスポット処理する場合にほこの5剤が推奨されよう。また, 人畜・魚毒性の面からみると,ジクロメジン剤とイブロジオン剤が最も安全といえる(第1表参照)。ただし,後老ほ 耐性菌の問題があり,連続的な使用はつつしもほうがよかろう。 広範囲の面積で試験した結果でも,ペソシクロこ/剤の卓効性は証明された。本剤は残効性が極めて長期間にわたる ために,散布回数ほ少なくてよい。ジクロメジン剤についても,同様の効果が期待できるが,評価についてほ,なお 今後の研究にまちたい。フェア■ウェイほ1ゴルフ場でも20、30万m2におよぷ広大な面積である。そのために,水和剤 よりも糧剤の使用を好むゴルフ場が少なくない。本研究でクラステン粒剤をとりあげたのほそのためである。試験結 果は十分に満足するに足るもので,発生前の1回の施用によっでそ・の期の発生ほほは完全に抑制された。本研究以外 にも,3月中旬または3月下旬に1回施用して完全に防除した成績がある(筆者ら,未発表)。 防除薬剤の最終的選択にはゴルフ場の立地条件,作業日程,毒性,薬価等,種々の要素が加味されるべきである。 本研究の結果より,竃効薬剤は教程におよび,それぞわに特性がある点を強調したい。なお,本研究に供試した薬剤 のうち,ラ・一ジ バッチに登録認可されているのほグラステン,ベンレ血l∵T−,ロブラ・一ルである(トルクロホスメチ ル剤ほ単剤でほブランサー水和剤として登録済)。他の薬剤は現在申請中であるときいているのて,ここに明記してお きたい。 引 用 文 献 し1)北村文雄 日本芝草学会編,芝地と緑化,ノフト (5)鬼木正臣・小林堅志・荒木隆男・生越明日植病 サイエンス社,東京,pp5−28(1988) 報52,850−853(1986) (2)化学工業日報社腐 農薬の手引(昭和62年版),化 (6)谷 利一一・芝草研究,13,77−82(1984) 学工業日報社,東京,pp798−805(1987) (7)谷 利一・芝草研究,15,25−34(1986) し3)′J\林堅志 芝草研究12,149−157(1983) (8)谷 利一 日本芝草学会編,芝地と緑化,ソラト (4)日本植物防疫協会編 目植防委託試験成績野菜等 サイエンス社,東京,pp197−205(1988) 関係(殺菌剤)(27),726(1982),(28),686−687 (9)吉川 功 グリーン研究報告集(34),23−42(1978) (1983) (1988年6月15日受理) 写真説明 Aり ラージ パソチが大発生したフェアウエイ B。.パッチの進展状況 1987年8月に新ヰ乱1988年春期に初めて発生したが,写桑撮影時(5月25日)にほ大型パソテに生長している。 C… 裸出したパッチ跡 秋期に発生したパノチの損傷箇所は翌年の春になっても裸地に近い状態で残る。 D.活動中の旧パノチ パソナの周縁部に茶褐色帯を形成し,拡大中である。 E\新たに発生したパノチ パソチ周縁部の茶褐色帝は鮮明であるが,パッチ内の芝芽はあまり減少していない。 F.停止中のパッチ パッチ周縁部の茶褐色帯が消失している。 G,グラステン粒剤による防除試験 中央の白線より右が処理区.左が無処理区。 H.同 上 無処理区し左、)のパソチは活動中であるが.処理区(右)は.健全なターフと区別がつかない。

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参照

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