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香川県下の市町における予算編成と議員の役割について--1992年の調査---香川大学学術情報リポジトリ

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香川県下の市町における予算編成と

議員の役割について

一 一

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9

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年の調査一一

西 山 一 郎

多忙な方のための簡潔な要約 Oこの調査の目的は,地方議員が住民の要望をどれだけ汲み取ってそれを 予算に反映しているか,また彼らがどのように地方団体の予算編成と審 議に参加しているかを明らかにすることである。 O調査は,香川県下の

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町の市町議会議員全員

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名)に

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聞から なる調査票を郵送し,

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月末から

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月初めにかけて実施 された。回収された有効な調査票は, 570通となり,回収率は, 79,2パー セントであった。 Oまず,議員が予算編成をめぐる諸問題にどのような形で行動するかを尋 ねた。その結果,常に一人の議員として行動すると言う回答が

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パーセ ントで最も多い。ついで多いのは,ある時には会派の一人としてある時 (1) この調査は,著者にとって初めてのものであるにもかかわらず,後に見るように成功裏 に行うことが出来た。それは,何よりも,きわめて多忙であるにもかかわらず,このよう な学術調査に真撃に協カして下さった県下の市町議会議員の方々のご協力の賜であり, 議員諸氏に心から感謝する。また,この調査を行うにあたって特別にお世話になった方々 (肩書きは当時のもの)は,香川県町村議会議長会事務局長・寒川博吉氏他の職員の方々, 高松市議会事務局事務局長・楠原彰氏他の職員の方々,香川大学経済学部長・坪井昭彦 先生,経済学部教授・瀬戸康明博士,経済学部教授・大薮和雄先生,経済学部助手・西尾 富美子さん,同・横田幹子さんであり,心からお礼を申し上げる。なお,集計は,今回も 西尾さんがその大部分を担当して下さった。

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-26ー 香川大学経済論叢 260 には一人の議員として行動すると言う回答である。 Oつぎに,市町の予算案に一人の議員ないし会派としての要望を盛り込む ように努力したことがこれまでにあるかどうかを尋ねたところ,約半数 の議員は r時々ある」と答えた。 Oでは,予算に関する要望は,どのような経路で執行部に申し入れている のであろうか。飛び抜けて多い回答は,係長や課長に直接会い要望する と言うものである。しかし,議員達は,首長を始めとする行政側の役職 者に予算に関する要望を出すとともに,議会での代表質問等においても 要望をしていることが分かつた。 0議員が執行部に予算要求を行う段階は,予算編成方針を策定する段階, 事業担当部課が要求を出す段階,そして,実施計画や基本計画を策定す る段階が主なものである。 0議員達の予算要求は,結局,首長の予算案に盛り込まれたであろうか。 「時々盛り込まれた」と言う回答が

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パーセント r常に盛り込まれた」 と言う回答が26パーセントであった。 0首長の予算編成に対して議会がどの程度の影響力を及ぽしていると議員 達は考えているのであろうか。首長の予算編成に対して非常に大きな影 響を及ぼしていると言う回答は, 18パーセントであるのに対して,ある 程度の影響を及ぽしていると言う田答が

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パーセント,予算編成に対し てあまり影響を及ぽしていないと言う回答が22パーセントであった。こ れは,予算の調整が首長に専属すると言う,現行の地方自治法にもとづ く制度をかなり正確に反映したもののように思う。 Oかなりの市町村議会では,全員協議会と称される非公式の会議が開催さ れ,予算案を含む複雑で利害の絡む問題について事前の調整が理事者側 と議員の聞でなされているようなので,それについて尋ねた。その結果, 予算案に関する全員協議会を持つことがあると言う議員は,全体の85 パーセントに達した。 Oそこで,予算案に関する全員協議会の意義について尋ねたところ,それ

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を支持し肯定する議員が大部分であり,それが持つ問題点を正確に認識 している議員は全体の6パーセントであった。 Oつぎに,最近の

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か年間において首長によって提出された予算案を議会 が修正したことがあるかどうかについて尋ねた。その結果,修正が全く 無かったと言う回答は,全体の

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パーセントであった。そして,ほぽ

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人に

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人の議員が,過去

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年聞に

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度ないし

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度,予算案の修正があっ たと答えた。 Oそこで,予算案の修正が全く無かったと答えた7割近い議員に,その理 由について尋ねた。その結果,最も割合の多い回答は,理事者と議会が 事前の調整を十分に行っているからと言うものであった。したがって, 全員協議会等による事前の調整は,予算案の無修正での議会通過に大き く貢献していると言えそうである。 O県下の市町議会における予算審議の日数は大体, 3月中旬の10日間前後 のようであるが,議員が所属する議会の予算審議の期間についてどのよ うに思っているかを尋ねた。その結果,

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パーセントの議員が,ちょう ど良い長さの期間であると思っていることが分かった。ただし, 15パー セントの議員は,短すぎると思っている。 O最後の

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つの設問で,予算編成における議員と住民との関係について尋 ねた。まず第lに,成立した予算が住民の要望をどの程度反映している かを尋ねた。その結果,

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パーセントの議員が「ある程度反映している」 と答えた。そして 2番目に多い回答は rあまり反映していない」で, 13パーセント, 3番目は r十分に反映している」で, 10パーセントで あった。さまざまな制約の下で編成される予算であるから, 4人の内3 人までの議員が,ある程度反映しているという回答を選んだのももっと もかもしれない。 Oつぎに,成立した予算について議員が住民に話しをしたり,住民から意 見を聞いたりしたことがあるかどうかについて尋ねた。その結果,定期 的に,あるいは機会があれば,住民と予算について話しをしている議員

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-28ー 香川大学経済論議‘ 262 は,全体の89パーセントである。 O以上が,今回の調査の概要であるが,これによって,市町の予算編成を めぐる議員達の行動や住民との関係がある程度明らかになったように思

I は じ め に 大方の行政学者の理解によれば,わが国の地方自治体は,その統治機構とし て二元主義,または二元代表性を採用している。すなわち,地方自治体は,行 政機関としての首長と審議機関としての地方議会とに分立し,首長ならびに議 会を構成する議員は有権者である住民の直接選挙で選出される。ところが,首 長制の基本型とされるアメリカ合衆国の大統領制とはことなり,議会は首長に 対して不信任の議決を行うことが出来,首長はこれに対して議会を解散するこ とが出来る。この様なわが国の地方自治体の機構は r議会主義を加味した首長 位 ) 臼 ) 主義の制度」とか「大統領制に議員内閣制のある種の要素を加味したもの」と か言われているが,このような制度は r地方自治の活発なアメリカにも見られ ない極めて独特な制度」であるという。 ところで,このようなこ元代表制の目指すものは,言うまでもなく「首長と (5) 議会を対等に機能的に分立させ,両者を抑制均衡の関係において活動させる」 ことにある。したがって,議会の任務は,民意を十分に行政に反映するととも (2 ) 黒田展之編r現代日本の地方政治家一一地方議員の背景と行動一一ー』法律文化社. 1984 年.97ページ。なお,この定義の出典は,東京都議会事務局調査部(高木鉦作・大森粥執 筆)r首長主義と地方議会一ー制度とその実際一一~ 1977年.110ページ,である。 (3 ) 村松岐夫・伊藤光利『地方議員の研究一一[日本的政治風土]の主役たち一- j日本経 済新聞社. 1986年.16ページ。なお,この定義の出典は,阿部斉「地方議会の機能と限 界J.成田頼明編著『現代社会と自治制度の琴亭』学陽書房. 1974年.290ページ,であ る。ただし,阿部教授の原文は rある穫の要素J(傍点は,西山〕ではなく rある種の 制度」である。そして,阿部教授は,つづけてこうした折衷的性格は,現実には首長 の権力を披行的に強化する結果に終わっているJ(向上)と言う。 (4 ) 佐々木信夫『都庁ーーもうひとつの政月予一一』岩波新書. 1991年.160ページ。 (5 ) 黒田編,前掲醤. 97ページ。なお,この章(r地方議員と政策過程J)は,橋本信之氏の 執筆である。

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に首長の行う行政を監視することにある。この点において,議会は首長と全く 対等平等の関係にある。ところが,現実には,首長があらゆる面において議会 より優位に立ち,議会はその批判的機能を失い,空洞化が存在すると言われて 久しい。ある調査によっても,議員自身,行政当局の方が主人公であり,議員 はわき役であると考えているようである。すなわち,行政当局が主役であると 言う考え方は r予算などのように行政の側が原案作成者であることを制度上予 定されている事項に限らず,条例その他議会の方が主役でなければならないよ うな事項にもあてはまる現在の地方議員の一般的態度である。」と,村松教授は 言う。そして,加藤教授は,わが国の地方団体を r世界に類例を見ない独特の 強首長・弱議会型」と規定する。 さて,本稿での私の課題は,地方財政の種々の分野の中でも特に予算編成に 限定して,二元代表制の下で議員がどのように行動しているか,もっとはっき り言うと,議員がどのように予算編成と審議に参加し,住民の要望をどれほど (6 ) 古くは,星野氏による「一般的にいって地方議会の運営はきわめて低調である。J(星野 光雄「日本の地方政治一一イ主民自治と保守革新の対決一一』東洋経済新報社, 1958年, 162 ページ)と言う指摘がある。その後,橋本氏は,わが国の自治体においては「首長優位でJ, 「議会の評価の低いのが一般的といってよいだろうJ(黒田編,前掲書,98ページ)と言い, 塩見氏は,議員は「全般に勉強不足であり,自治体行政全般の立場から行政当局に議案の 修正や反省を迫るといったケースはほとんど見られない。J(塩見譲「非所属市民派議員に かける期待J,坂田期雄編『いま,地方議会は一一選挙,住民,執行部その間(はざま) で一一』ぎょうせい, 1987年, 22ページ)と言う。最近では,ある対談の中で,富野嘩 一郎氏が「地方議会を見ているとわかるんですけれども,人材はそう多くはない。これは はっきり言っていいと思う。〔地方議会は〕地方自治の中でいちばん弱い部分だと私は 思っています。J(f世界』第590号, 1994年1月, 114ページ)と言っている。富野氏は, 前逗子市長であるが,新聞報道によれば,1994年4月に島根大学法文学部の教授に就任し 地域環境政策論等の講義を担当するという。そして,学歴は,京都大学理学部(宇宙物理 学)卒,東京大学大学院(天文学)中退である (r朝日新聞J1994年1月20日 日 本 経 済新聞J1994年1月21日他)。 (7) 村松・伊藤,前掲醤, 167~168 ページ。 ( 8) 加藤芳太郎『自治体の予算改革』東京大学出版会, 1982年, 208ページ。なお,蛇足で あるが r世界に類例を見ない」とは,アメリカの大統領制とイギリスの議員内閣制Jに比 較してのことのようである。ところで,加藤教授の規定は,伊東教授と佐藤教授の書物に おいても引用され,両教授はそれに賛意を表しているように見える(伊東弘文『入門 地 方財政』ぎょうせい, 1992年, 241ペ ー ジ : 佐 藤 進 r地方財政総論〔改訂版)J税務経 理協会, 1993年, 58ページ)。

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-30ー 香川大学経済論叢 264 汲み取ってそれを予算に反映しているかを検証しようとする事である。もちろ ん,地方自治法によれば,予算案の提出は,首長に専属する権限であり,議会 は,首長の予算提出権限を侵害しない範囲において増額修正をすることが出来 るとされている。また,自治体事務の

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割を占める国の機関委任事務について は,議会は質問権しか無く,その内容は問題に出来ない。したがって r日本の 地方議会は予算に関する発言権は〔が?)著しく制約されている。」)ということ になる。したがって,こと財政に関しては,議会の地位は首長に比較して劣位 であり,対等平等とはいえない。私の調査は,このような現行制度を与件とし て受け入れたうえで,議会の最も重要な任務である行財政責任

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ty)を議会あるいは議員がいかほどにはたしているのか,あるいははたしていな いのかを明らかにすることである。 II これまでの研究 わが国の地方自治体の予算編成における地方議員の役割についての最初期の 調査は,三宅教授のグループによるものであろう。この調査は,京都市議会議 員

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名を対象に,

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年現在における彼らの行動と意見を解明しようとした 調査であるが,市議会議員が市の予算編成にどのように関与したかについては, 次のようである。すなわち r市議による関与は予算過程の初期段階と後におい て強く,中聞において弱い,という傾向が指摘されよう。とりわけ, (新規事業 の)wアイデアを捻出する段階』と〔予算の) H"執行段階』において最も強く関 与している。そして

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予算見積書作成段階』においては,最も弱い関与の程度 が示されているりということである。この調査に続いて,日本の地方自治の厳 (9 ) 佐々木,前掲書, 163ページ。 (10) 調査票に添付された「香川県下の市・町における予算編成と議員の役割についての調査 にあたってのお願い」において,私は私どもの調査の目的は,自治体の予算編成にお ける議会と執行部,ならびに住民の方々との関係を解明することであるりと書いた。 (11) 三宅一郎・福島徳寿郎・村松岐夫編 r都市政治家の行動と意見』京都大学人文科学研究 所, 1977年, 189~190 ページ。 (12) なお,ここで言う「予算過程」とは施政方針j,rアイデアj, r予算見積書j, r理 財 局原案j,r市長原案j,r執行」の各過程を指す。

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存を確信し,それを精力的に実証しようとする村松教授と伊藤教授は,その後 の調査〔以下,-村松・伊藤調査」と言う〕にもとづいて『地方議員の研究』を

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年に発表した。そして,両教授は,地方議会の重要性を,-執行部が,議案 提出に当たり,議会や会派の意向にこれほど気を使うのは,議会が自治体の重 要な意志決定者の

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つであることの証明ではなかろうか。」として,全員協議会 などのインフォーマルな協議や交渉の過程に注目する。しかし,議員が予算編 成におけるインフォーマルな過程において住民の要望をどのように汲み取り, それをどのように予算に反映したのかについては不明のままである。 つぎは,黒田教授のグループによる,

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月現在の

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市区町(神戸市, 新宿区,川本町等)の

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名の議員を対象にした調査である。この調査では, 地方議員が住民の抱える問題や要望をどのように処理したのかを,議会での条 例作成,予算要求,行政当局に対する働きかけの3点において明らかにしよう とするが,肝心の予算編成の側面はなぜか取り上げられていない。 ところで,黒田教授のグループによる調査とほぽ同じ時期に行われた,間教 授のグループによる調査がある。それは,都市議員の態度や行動を解明するた めに大阪府下の

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市の市議会議員を対象に

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年に行われたもので ある。調査票は,予算過程の諸段階における市議会議員の関与の程度について 尋ねる設閉会含むが,その分析結果は,-とくに市政方針段階,新規事業計画作 成段階,市長原案作成段階の3つの段階において,議員達は活発な『働きかけ』 (13) この調査は, 1978~79 年に,京都府下の市町村議会議員全員(総数は不明)を対象に行 われたものである(村松・伊藤,前掲書はしがきJ,1ページ本文, 12ページ)。 (14) 村松・伊藤,前掲醤.123ページ。 (15) なお,村松・伊藤両教授は議会による予算審議がいかに行政倶jiに対して影響力を持 つものであるかを,多くの事例を提示しながら主張するJ(向上.92ページ)と言うが, その「主張」の展開が私には十分に読み取れなかった。 (16) 黒田編,前掲脅.54ページ。 (17) 政治・法意識研究班『都市議員の態度と行動一一大阪府自治体議員に関する調査報告 一一'.Jj, r調査と資料」第47号,関西大学経済・政治研究所.1982年。 (18) 向上書.182~183 ページ。ここで言う「予算過程」は,注 (12) のものと同じである。そ して,この設問(問 56)は,三宅教授らの調査察の設問(Q16)と同じである。三宅一郎・ 福島徳寿郎・村松岐夫編,前掲脅.258~259 ページ,を見よ。

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-32- 香川大学経済論議 266 を展開しているようであるりと言うことである。したがって,京都市の市議会 議員の行動とは異なるが,その理由についての言及はない。 最 後 は , 小 林 教 授 の グ ル ー プ に よ っ て 別

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年 に 行 わ れ た 調 品 あ る 。 こ の 調 査では,財政政策過程における地方議員の態度という魅力的な分析項目が設け られているが,その内容は,地方議員が予算編成にどうかかわったかではなし 財政改革,減税など歳入歳出にかんする一般的態度について調査をしたもので ある。そして,今日の自治体の財政政策の決定に関しては r官僚優位でしかも 増 分 主 義 的 と さ れ る 一 般 的 な 仮 設 が も る 程 度 検 証 さ ば た と す る に と ど まる。 これらが,管見にふれた調査のすべてであるが,以上のように,予算編成過 程における地方議員の役割については,これまでにも断片的な調査が行われて いるものの,きわめて不完全である。つまり,予算編成過程と地方議員の役割 に焦点をあてて独自に調査したものは,わが国においてこれまでに無かったよ うに思う。そこで,私は,香川県という限られた地域ではあるが,市町の議員 全員を対象に,予算編成と議員の役割という表題で調査票を作成しアンケート 調査を行ってみた。 III 調 査 の 概 略

ω

さて,今回の調査の概要である。調査票は,これまでの先行する調査芸品参 (19) 政治・法意識研究班『続都市議員の態度と行動J(研究双番第53冊),関西大学経 済・政治研究所, 1984年, 60ページ。なお,この章(,市議会と政策過程J)の執筆者は, 山川雄巴氏である。 (20) この調査は,全国の341区市を対象にしたものであるが,議員は,これらの自治体の議 会議長,第一与党幹事長,第一野党幹事長のそれぞれ341名を対象とする。 (21) 小林良彰他『アンケート調査にみる地方政府の現実一一政策決定の主役たち一一』学陽 欝房, 1987年, 137ページ。 (22) 資料1'香川県下の市・町における予算編成と議員の役割についての調査」を見よ。 (23) 例えば,市議会運営に関するアンケートJ(全国市議会議長会都市行政問題研究会『新 時代に即応した市議会機能の向上策についての意見u982年2月,151~161 ページ), '地 方自治に関する調査(議員用)J ((財団法人 自治研修協会〕地方自治研究資料センター 『地方議員と住民リーダーの政治参加の態容研究.,g1982年3月, 237~249 ページ), '全国 自治体議員アンケート調査J(黒田編,前掲番,付録, 1~11 ページ)等。

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考にしつつも,先に述べたようにこの種の調査がこれまでに行われなかったた め,ほとんど独自に作成することになった。そして,この調査票を,香川県下 (25) の5市38町の地方議会議員722名に郵便で送付して, 1992年9月末から 1993 自 由。 年2月初めにかけて実施された。調査票発送後 2名の議員が死亡し,調査対 象議員は, 720名となった。回収は1993年2月2日に574通自が到着したのち 打ち切り,回収率は, 79..7パーセントに達した。ただし,回収された574通の 調査票の内 1通は回答拒否 1通は病気のため回答不能 1通は回答辞退, I通は入力不能であり,有効回答は, 570通となった。そこで,有効回答570通 について審査を始めたところ,回答未記入や指示通りの回答でない調査票が続 出し,結局,有効回答のちょうど30パーセントに達する 171通について回答者 に問い合わせをしなければならなかった。問い合わせは, 1993年5月中旬から, 西尾さんと手分けをして電話で行い,どうしても連絡の取れない議員に対して は,郵便で尋ねた。問い合わせの作業は,同年10月初句まで行われた。その結 果,どうしても問い合わせが出来ない調査票は最終的に2通となった。しかし, 大薮教授の示唆により,完全ではなくともせっかく調査票を返送してくれた以 上,その

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通も分析対象に加えた方がよいと判断し,問い合わせが出来なかっ た項目は不明として処理することにした。したがって,有効な調査票も 570通 (24) したがって,設問の中には,回答者を若干戸惑わせるものがあったと推測される。後に 記すように,その結果,一層改良すべき設問のあることが判明し,再度の調査を行う必要 のあることが分かつた。 (25) 1992年8月末現在の市・町議会議員724名を対象とした。ただし,調査票発送時の同年 9月末までに2名が議員を辞職したので,笑際に調査票を発送することができた議員は, 722名である。なお,市議会議員名簿は,県下5市の議会議長会の事務局をも兼職する高 松市議会事務局において調査の趣旨を説明したうえでコピーして頂き,町議会議員名簿 については,香川県町村議長会事務局において,香川県町村議会議長会編『香川県町村自 治名鑑(地方自治法施行45周年記念)J 1992年,を購入し,使用した。なお,香川県下に おいては, 1970年2月以降「村」はない。 (26) 詳しく言うと,調査察は, 1992年10月15日を締切日として,同年9月28日に発送さ れた。督促は,郵便により調査察と督促状をその都度送付する形で,同年10月末と11月 末の2回行った。 (27) なお,分かっている範屈でこの間に3名の議員の方が亡くなった。物故者の方々にたい して心からご冥福を祈る。

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-34- 香川大学経済論叢 ω となり,実質的な回答率は, 79..2パーセントとなる。

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回答者のプロフィーノレと回答の分析の方法 268 570名 の 回 答 者 に つ い て そ の プ ロ フ イ ー ル を 少 し 見 て お こ う 。 570名 の う ち 5 市 の 議 員 は116人である。 5市 の 議 員 総 数 は 147名であるから,回答率は, 78 9パ ー セ ン ト で あ る 。 ま た , 回 答 を く れ た 38町 の 議 員 は 454名 で あ り , 議 員 総 数 は573名 で あ る か ら , 回 答 率 は 79..2パーセントである。つぎに, 570名 の 議 員 を 当 選 回 数 で 分 類 す る と , 第1表 の よ う で あ る 。 こ れ は , 調 査 表 の 間 14の「議 第1表 回答議員の当選回数別分布 当 選 回 数 議 員 数 ( 人 ) 構 成 比 ( % ) 1 回 141 24,,7 2 図 109 19,,1 3 回 99 174 4 回 80 14,,0 5 回 51 8“9 6 回 46 8,,1 7 回 18 3,,2 8 回 13 2,,3 9 回 3 0,,5 10 回 5 0,,9 11 回 4

..7 12 回 1

..2 ぷE2コN 計 570 100,,0 (28) この回収率をもって成功とみなすのは,先行する調査の回収率との比較による。例え ば,京都府下の地方議員を対象とする調査の回収率は rちょうど50%J (村松・伊藤,前 掲書 rはしがきJ,ページ)であり, 940名の地方議員を対象にした別の調査では,回 収率が47,4パーセントとなり異例の高率J(黒田編,前掲書はしがきJ,2ページ) と言う。また,愛媛県下の市町村会議員1,314名を対象とする調査では,回収率が, 46, 0パーセントであった(北原鉄也「地方政治家における政治化とその社会的背景(上) 一一愛媛県下市町村会議員調査一一J,r都市問題研究』第35巻第 3号, 1983年3月, 102 ページ)。他方,回収率の高い調査には,岡山県と神奈川県下の市町村会議員を対象にし た調査がある。すなわち,岡山県下の1,377名の議員を対象にした調査の回収率は, 90 3パーセントであり,神奈川県下の 1,061名を対象にした調査では, 8L8パーセントであ り,後者については r好成績」と言っている(岡山大学地方自治研究会『市町村会議員 調査報告一一岡山と神奈川の比較- J1985年3月 7ページ)。

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員として現在何期目ですか」と言う聞の回答を整理したものであるが, 24..7 ノT一セントが当選1回の議員で最も多い。そして,当選1回の議員の場合,後 にみるように,議員としての在任期聞が短いため,設問に答えられない者が若 干出てきた。これは,設聞が十分に考えて設計されていなかったことによる。 なお,当選1回から4固までの議員の割合は75..2パーセントであり,全体の3 分の2を占める。他方,当選 6回以上のいわゆる古参議員は, 15..9パーセント である。 政党別に回答者を見ると,それは,第2表のようである。政党名の最後の「そ の他」について説明すると,それは,回答者が調査票の回答欄に挙げられた政 党名を選ばずに,あえて別に記した党派を纏めたものである。すなわち,具体 的には r単なる無所属」とか「白紙無所属」とか記しているものである。この 点については,政党の分類が十分ではなかったと私自身反省している。すなわ ち r無所属」は,保守と革新に単純に

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分できるわけではなく,その中間とい うか,どちらにも組みしない者がいるということに思いいたらなかったという ことである。この点は,次の調査で改善を加えることにして,第

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表を見れば, 最も多いのは保守系無所属であり,全体の44..6パーセントである。ついで多い 第2表 回 答 議 員 の 政 党 別 分 布 政 党 名 議 員 数 ( 人 ) 構 成 比 ( % ) 自 由 民 主 党 191 33..5 日 本 社 会 党 33 5..8 公 明 党 25 4

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4

民 社 党 2

.

.

4

日 本 共 産 党 33 5"8 社 会 民 主 連 合

諸 派 4

7 保 守 系 無 所 属 254 44..6 革 新 系 無 所 属 22 3..9 そ の 他 6 1.1 ぷE』3 言十 570 100..0 〔注〕 構成比は,小数点以下第2位を四捨五入したために,合計が100..0%に ならない。

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36 香川大学経済論叢 270 第 3表香川県下の市町議会議員の届出政党別分布 政 ~も<. 議 員 数 ( 人 ) 構 成 比 ( % ) 自 由 民 主 党 48 6..6 日 本 社 会 党 29 4..

公 明 党 29 4..0 日 本 共 産 党 37 5..1 民 ネ土 党 2

..3 社 会 民 主 連 合

諸 派 1

..1 無 所 属 578 79..9 ぷ口与 724 100..0 (注] 香川県選挙管理委員会調べ。 のは,自民党の33.5パーセントであるが,保守系無所属の議員の中にも若干の 自民党員がいるのではないかと私は推測している。それらに続くのは,社会党 と共産党の5..8パーセントであり,以下,公明党の 4ゎ4パーセント,革新系無 所属の3..9パーセント,諸派の0..7パーセント,民社党のO“4パーセントであ る。そして,このような政党別分布は,回答者本人が自ら名乗った政党に従っ たものであり,その信濃性はかなり高いと思われる。ところで,第3表は,香 川県選挙管理委員会の調べによる県下の市町議会議員724名の政党別分布であ 自 由 る。これは,直近に行われた選挙において立候補者が立候補に際して届け出た 政党である。この調べは, 1992年 12月末日に行われたものであり,直近に行わ れた選挙とは大部分が1991年の市町選挙をさす。ただし, 5町の選挙は, 1993 年に行われたものである。この表と先の第2表を比較すると,第1に,自由民 主党の議員が大きく食い違っているということである。これは,多分,選挙時 には無所属で出馬したが,実際には自由民主党の党籍を持っている議員がいた ということであろう。第2に,日本社会党と諸派は,届出の数より回答者の数 が多くなっているが,これは,当選後,党籍ないし党派の移動があったという ことかもしれない。 それにしても,回答議員の政党分布をみれば,議員の政党化率,すなわち全 (29) なお,議席総数は734名であり,この時点で10名の欠員があった。

(13)

議員に占める自民党から諸派までの議員の割合は,印刷6バ一セントである。地 方議会の政党化については,天川晃氏が, 1974年に r市議,町村議では,無所 属は最大の勢力である。町村議では

9

割近くがこれに属する。これは,ここ

1

0

ω

年の年次変化をみてもほぼ一定の傾向としてみることができるりと言い,村 松・伊藤調査も,天川氏の指摘は r1978~79 年現在のデータについてもほぼ妥 31 ) 仰 ) 当する。」と言っている。今回の回答議員の政党別分布を市議会と町議会に分 けて示すと,第 4表と第 5表のようである。県下 5市の場合,保守系無所属と 第4表 回答議員の政党別分布(市議会議員) 政 党 名 議 員 ( 人 ) 構 成 比 ( % ) 自 出 民 主 ~ 与 53 45..7 日 本 社 会 党 16 13“8 公 明 党 10 8..6 民 ネ土 党 1

..9 日 本 共 産 党 9 7.8 社 会 民 主 連 合

諸 派 2 1.7 保 守 系 無 所 属 21 18..1 革 新 系 無 所 属

そ の イ也 4 3..4 ぷE2コh 言十 116 100..

(30) 成田編著,前掲書, 308ページ。 (31) 村松・伊藤,前掲書, 80ページ。 (32) しかし,天川説が市町村議会議員の政党分布の実態を正確に把握しているかどうかは 検討を要するであろう。と言うのは,天川氏の主張の根拠になっている資料は,自治省選 挙部の『地方公共団体の談会の議員および長の所属党派別人員ならびに長の就任回数調』 であるからである。私は,現在それを見ることは出来ないが地方自治年鑑』から類推 すると,議会議員の所属政党は選挙の立候補に際して議員が届け出た政党によって分類 されているように思う。議員の「所属政党」と言う場合それをどの時点で把援するかであ るが,北原氏も指摘する(北原,前掲論文, 102~103 ページ)ように,議員は立候補の際 に届け出た政党会派を当選後議会に登録する際に変更するし,また,登録政党と議員が実 際に党員となっている政党とは違う場合があるからである。もし「所属政党」を届出政党 や登録政党でなく,その議員が実際に所属している政党で分類すると,私の調査からの推 測であるが,全国的にみても市町村議会における無所属の議員はかなり減少するように 思う。したがって,天川説は,議員の届出政党によるものであることを念頭におくことが 必要であるように思う。なお,村松・伊藤両教授の場合は,資料として『地方自治年鑑』 を使い,議員の党派別分布は「立候補の届出の党派による」と断っている。

(14)

-38- 香川大学経済論叢 第5表回答議員の政党別分布(町議会議員) 政 党 名 議 員 ( 人 ) 構 成 比 ( % ) 自 由 民 主 ;!らJ, 138 30

.

.

4

日 本 社 会 党 17 3..7 公 明 党 15 3,,3 民 干土 党 1 0..2 日 本 共 産 党 24 5..3 社 会 民 主 連 合

諸 派 2

.

.

4

保 守 系 無 所 属 233 5L3 革 新 系 無 所 属 22 4,,8 そ の 他 2

.

.

4

4口"- 計 454 100,,0 [注) 機成比は,小数点以下第2位を四捨五入したため,合計が1000%になら ない。 第6表 議 長 ・ 副 議 長 の 経 験 議 員 数 ( 人 ) 構 成 比 ( % ) いずれの経験も無し 398 69..8 議長を経験した 63 1L1 副議長を経験した 78 13..7 現在,議長である 34 6..0 現在,副議長である 29 5..1 ぷE』3 570 100.0 〔注〕 重複回答であるので,構成比の合計は100.0%にならない。 272 その他を合わせると,それは全議員の

2

1

.

5

パーセントで,政党化率は,

7

8

.

5

パーセントである。また,町議会の場合,保守系・革新系無所属とその他を合 わせると,それは

5

6

.

5

パーセントであり,政党化率は,

4

3

5

パーセントとなる。 香川県には村がなく,都市化した県であると言えるかもしれないが,全国的に みても,市・町議会議員の政党化率は,香川県下の市・町議会議員のような傾 向を示すといえるかもしれない。 調査票の問

1

6

では,議長や副議長の経験の有無を聞いた。その結果は,第

6

表の通りである。この回答の中には,かつて議長や副議長を経験した者もいる し,かつてそれらを経験し現在,議長や副議長である者もいる。集計の結果は,

(15)

6

表のように,いずれの経験もないと言う者が

6

9

.

.

8

パーセントであるのに対 して,過去にそれらを経験した者が

2

4

.

.

8

パーセント,現職の議長と副議長が

1L1

パーセントである。 さて,回答の分析は,単純集計とクロス集計を組み合わせて行う。クロス集 計は,回答者を,第

1

に,市

(

1

1

6

人)と町

(

4

5

4

人)に区分し,第

2

に,回答

ω

者の人数が片寄らないように,回答者が所属する議会のある市町の人口数に よって

4

段階に区分する。すなわち,

3

9

0

0

人以上

1

万人未満

(

1

7

4

人),

1

万 人以上

1

9

千人未満

(

1

7

9

人),

1

9

千人以上

6

万人未満

(

1

3

7

人),

6

万人 O~ 以上

3

2

9

千人

(

8

0

人)である。第

3

に,市町の平成

3

年財政力指数によって, これも回答者数をにらみながら

4

段階に区分した。すなわち,

0

.

.

1

6

9

以上

0

.

.

3

5

0

未満

(

1

3

7

人),

0

.

.

3

5

0

以上

0

.

.

4

5

0

未満(1

6

8

人),

0

.

.

45

0

以上

0

.

.

6

0

0

未満

(

1

2

3

人),

0

.

6

0

0

未満

1

.

.

0

5

1

(1

4

2

人)である。第

4

に,田答者を当選回数によって

4

つの グループに区分した。すなわち,当選

1

回の議員を第

1

のグループ(1

4

1

名), 当選

2

回と

3

回の議員を第

2

のグループ

(

2

0

8

名),当選

4

回と

5

回を第

3

のグ ループ(1

3

1

名),当選

6

回以上を第 4グループ

(

9

0

名)とした。第

5

に,回答 者を,政党別に区分した。すなわち,自由民主党

(

1

9

1

名),日本社会党

(

3

3

人), 公明党

(

2

5

人),日本共産党

(

3

3

人),保守系無所属

(

2

5

4

名),革新系無所属

(

2

2

人),その他(1

2

人)である。ここで言う「その他」は,諸派

4

名,民社党

2

名, そして第2表で言う「その他」の6人からなる。このように纏めた理由は,

1

0

名以下の場合には分析する際の数値が小さくなりすぎるので「その他」として

ω

一括したと言うことである。最後に,議長・副議長の経験の有無によって区分 した。その際,いずれも経験していない者を第

l

のグループ

(

3

9

8

人),過去に 日 目 議長・副議長を経験した者を第

2

のグループ

(

1

0

9

人),現職の議長・副議長を (33) 自治省行政局振興課編r全国市町村要覧』平成4年版,第一法規,による。なお,人口 は,平成4年3月末現在の住民基本台帳人口である。 (34) 向上。ただし,過去3カ年の単年度数値の平均値である。 (35) ただし,以下のクロス集計の数値を示す図においては,技術的制約で最大6本の棒グラ フまでしか作図できないため rその他」は,示すことが出来なかった。もちろん,付録 のクロス集計表には「その他」のパーセンテージも掲げられている。 (36) 彼らの中には,過去に議長や副議長を経験した者もいるが,現職であることを優先し た。

(16)

-40- 香川大学経済論叢 274 第3のグループ (63人)とした。 V 問1から問3に対する回答の分析 問 1 さて,まず最初に,議員が予算編成をめぐる諸問題に対応する際にど のような形で行動するかを尋ねた。この設問には複数回答で答えてもらい,そ の単純集計の結果は,第 1図のようである。すなわち r常に一人の議員として 行動する」と言う回答が最も多く, 44“9パーセントであり,第 2は rある時に は会派の一員として,ある時には一人の議員として行動する」と言う回答が34..

2

パーセントである。その他はかなり小さくなるが rある時には党の一員とし て,ある時には一人の議員として行動する」と言うのが13..3パーセント r常 に会派の一員として行動する」と言うのが

1

0

5

パーセント r常に党員の一人 として行動する」と言うのが7..7パーセントである。したがって,県下の市町 議会議員の場合,予算編成をめぐる行動形態としては,概括的に言えば,一人 の議員として行動すると言うのが中心で,それに続くのが会派の一員ないし一 人の議員として行動すると言うことである。先にみたように,県下の市町議会 議員の政党化率は高いように思われるが,それにしても,政党化の程度は市町 仰) 議会議員を通じてはほぼ半分であり,残りの半数は無所属である。したがヲて, 第1図 予算編成をめぐる行動形態 党員の一人として 会派の一員として 常に一人の議員として 党の一員ないし一人の3義員として 会派の一員ないし一人の議員として その他 (37) 第2表を見よ。 44.9

o

5 10 15 20 25 30 35 40 45 50(%)

(17)

依然として一人の議員として行動出来る余地がかなりあることを表しているよ うに思う。 なお,村松・伊藤調査によって,京都府下の地方議会の様子を見ると,自民 党以下無所属までの全会派は議会が問題を決定する際には大体においてあらか じめ会派としての態度の決定を行うようである。会派としての態度の決定を「い つもする」と「問題によりそうする」とを合わせたパーセントでみると,共産 党が96“2パーセントで最も高く,ついで社会党の90..2パーセント,以下,民 社党87..5パーセント,社民連750パーセント,自民党71..1パーセント,公明 党66..6パーセントである。それに対して,無所属は63..0パーセントであり, 日 副 会派としての態度の決定の割合が最も低い。したがって,無所属の場合,やは り一人の議員として行動する余地が比較的大きいと言えそうである。 ところで,予算編成をめぐる行動形態の回答のクロス集計を見ると,いくつ かの興味深い様子がうかがわれる。まず市町別に見ると,クロス集計の結果は, 第2図のようである。この図を見ると,.常に一人の議員として行動する」と言 う回答の割合と「ある時には会派の一員として,ある時には一人の議員として 行動する」と言う回答の割合とが,市と町では対照的になっていることが分か 第2図 予算編成をめぐる行動形態(市・町) 党員の一人として 会派の一員として 常に一人の議員として 党の一員ないし一人の議員として 会派のーιI員主いし 人の議員として その他

10 20 図 市 図 町 (38) 村松・伊藤,前掲書, 100~101 ページ。 34.5 30 40 53..5 52..6 50 60(%)

(18)

-42ー 香川大学経済論叢 276 る。すなわち r常に一人の議員として行動する」と言う回答が,市では 11.2パー セントであるのにたいして,町では53..5パーセントとなっている。他方 rあ る時には会派の一員として,ある時には一人の議員として行動する」と言う回 答の割合は,市では52..6パーセントであるのに対して,町では29..5パーセン トである。したがって,町議会議員は一人の議員として行動する傾向が大きく, 市議会議員は会派の一員として行動するとともに一人の議員としても行動する という傾向があると言えそうである。なぜ市と町でこのように違うのかは,第 4表と第5表を見れば分かる。すなわち,先にみたように,市では無所属の割 合が「その他」を含めて21..5パーセントであるのに対して,町では無所属が「そ の他」を含めて56..5パーセントと市の3倍近くになっており,市より町の方が 一人の議員として行動できる余地が大きいのである。 このような状況は,人口規模とも関係がある。第 3図を見よ。すなわち r常 に一人の議員として行動する」と言う回答の割合は,人口が大きくなるにした がって減少し rある時には会派の一員として,ある時には一人の議員として行 動する」と言う回答の割合は,人口が増加するにしたがって増大している。 つぎに,予算編成をめぐる行動形態を,政党別にみれば,第4図と第 5図の ようである。まず第1に r常に党員の一人として行動する」と言う回答は,共 第3図 予算編成をめぐる行動形態(人口規僕) 党員の一人として 会派の一員として 常に一人の議員として 党の一員ないし一人の議員として 会派の一員ないし一人のi義員として その他

10 20 30 40 50 60(%) fZl3千9百人 -1 万人医~1万人 -1万9千人医?il 1万9千人 -6 万人 ~6万人 -32万9千人

(19)

第 4図 予 算 編 成 を め ぐ る 行 動 形 態 ( 政 党 別 ) 党員の一人として 会派の一員として 常に一人のJ義員として

o

5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 66 65 70 75 80(%) 区3 自民党匡ヨ社会党医E 公明党~共産党~保守系無所属医盟革新系無所属 第5図 予算編成をめぐる行動形態(政党別) (つづき) 党の一員ないし一人のi義員として 会派の一員ないし一人の議員として その他 40 50 60(%) f2ZI自民党図社会党図公明党協共産党図保守系無所属医盟革新系無所属 産党が69..7パーセントで,その他の政党とは格段の違いを見せている。これに 続くのは,社会党であるが,その割合は27..3パーセントとかなり小さくなる。 第

2

に i常に一人の議員として行動する」と言う回答の割合を見れば,政党で は,自民党が37..7パーセントで最も大きく,社会党,公明党,共産党となるに したがって減少し,共産党は9..1パーセントである。したがって,言うまでも ないが,共産党議員の特徴は,一人の議員と言うより一人の党員として行動す

(20)

-44 香川大学経済論叢 278 るということである。他方,無所属を見ると保守系が59..1パーセントであり, 革新系が63ド6パーセントである。したがって r常に一人の議員として行動す る」と言う議員の特徴は,無所属であるということであろう。第3に rある時 には党の一員として,ある時には一人の議員として行動する」と言う回答は, 単純集計では, l3..3パーセントと小さいが,この回答を政党別にみれば,第 5 図のように,社会党議員が54..5パーセントであり,共産党議員が 52“Oパーセ ントである。したがって,党員の一人ないし一人の議員として行動すると言う のが,社会党と共産党のもう一つの特徴であろう。第 4に rある時には会派の 一員として,ある時には一人の議員として行動する」と言う回答の割合を見れ ば,政党別では,自民党議員が最も多く, 45..0パーセントであり,社会党,公 明党,共産党の議員になるにしたがって減少し,共産党議員の場合は 6..1パー セントにすぎない。他方,無所属議員では,保守系が33..5パーセント,革新系 が22“7パーセントである。 間2 つぎは,市・町の予算案に,一人の議員としての要望あるいは党ない し会派としての要望を盛り込むよう努力をしたことがあるかどうかの質問であ る。その単純集計の結果は,第 6図のようである。すなわち,最も多いのは予 第6I

予算案にたいする要望 しばしばある (370%)

(21)

算案に対する要望を盛り込むように努力したことが「時々ある」と言う回答で, 49..3パーセントである。ついで多いのは,そういう努力をしたことが「しばし ばある」と言う回答で, 37.,0パーセントである。しかし,そういう努力をした ことが「あまりない」と言うやや否定的な回答が13..7パーセントあった。つま り

7

人に一人の議員が否定的な回答をしたわけである。 つぎに,この設問の回答のクロス集計を見ょう。まず第一に,市議会議員と 町議会議員に分けてみると,第7図のようである。すなわち,予算案に対する 第7図 予算案にたいする要望(市・町) 66 4 しばしばある 時々ある あまりない

o r

o

w

~ ~ ~

w r

o

~(%) 図 市 図 町 第8図 予算案にたいする要望(人口規模) しばしばある 713 時々ある あまりない

o

10 20 30 40 50 60 70 80 90(%) 1Zl3千9百人-1万人医ヨl万人-1万9千人医週l万9千人-6万人[WJ6万人-32万9千人

(22)

-46- 香川大学経済論叢 280 要望をしばしば行うと言う回答の割合は市議会議員の場合が多く,町議会議員 の場合は時々行うと言う回答の割合が多い。そして,あまり行わないと言う回 答は町議会議員が16“3パーセントで,市議会議員の3..4パーセントに較べかな り多いと言えよう。ここから想像されるように,人口規模でみると,クロス集 計の回答は,第8図のようである。すなわち,しばしば行うと言う回答は,人 口が大きくなるにしたがってその割合が増大し,他方,時々行うという回答の 割合はその逆の傾向を示している。そして,あまり行わないと言うのは,人口 6万人から 32万 9千人まででは3,,8パーセントとかなり小さくなる。すなわ ち,人口規模が増大するにつれて予算要望に努力するという議員の割合も増大 するということである。また,この設問の回答を,財政力指数でクロスさせる と,第g図のようである。すなわち,しばしば行うと言う回答の割合は,財政 力指数が高くなるにしたがって増大し,時々行うという回答の割合はその逆の 傾向を示している。 予算要望に努力をする割合が議員の当選回数とどのように関係するのかを示 したのが第 10図である。これを見ると,しばしば行うと言う議員の割合は,当 選回数に比例していることが分かる。すなわち,しばしば要望を行う議員は当 選

1

回の場合には

1

9

,,

9

パーセントであるのに対して,当選

6

回以上の場合には 第g図 予算案にたいする要望(財政力指数) しはしばある 6日6 時々ある あまりない

o

10 20 30 40 50 60 70(%) IZZIO 169-0 350

:

r

s

0,350-0450~0450-0600 ~O 600-1 051

(23)

第1日図 予算案にたいする要望(当選回数) しばしばある 58.9 時々ある あまりない

o

10 20 30 40 50 60 70 80(%) 図 l回 図2回・3回 図4回・5田 園 6回以上 第11図 予算案にたいする要望(政党別) しばしばある 時々ある あまりない

o

10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 (%) rn 自民党~社会党医E 公明党 IWJ共産党~保守系無所属医萄革新系無所属 54..4パーセントとなっている。言うまでもなく,時々行うと言う回答の割合は, 当選回数と逆の関係である。注目すべきは,あまり行わないと言う回答の割合 が当選

1

回の議員の場合には

2L3

パーセントと

2

回以上に比較しでかなり高 くなっていることである。これは,初当選の議員の場合には,議員としての経 験も浅く,理事者側との折衝や議会運営の手順など何かにつけて不慣れなため と思われる。 最後に,政党別に回答の割合を見ると,それは第11図のようである。すなわ

(24)

-48- 香川大学経済論議ー 282 ち,しばしば要望を行うと言う政党の第1位は共産党で87..9パーセント,第2 位は社会党で51叶5パーセント,第3位は公明党で40..0パーセント,第4位は 自民党で35..6パーセントである。無所属の議員の場合は時々行うという割合が 比較的高く,保守系の場合はそれが54..3パーセント,革新系の場合は63..6パー セントである。また,あまり行わないと言う回答の割合を見ると,無所属と自 民党が比較的高い。共産党の場合,この回答はない。 問3 では,予算要求はどのような経路で執行部に申し入れるのであろうか。 この設問の回答(複数回答)の単純集計は,第12図のようである。すなわち, 飛び抜けて多い回答は r係長や課長に直接会い,要望する」で, 69..5パーセン トである。これに続く回答は r議会での代表質問や一般質問において執行部に 要望するj,43..7パーセント r金額の大きさによって助役に頼んだり,首長に 直接頼んだりするj,42..3パーセント r常任委員会において執行部に要望す るj,35..4パーセントである。後は,少し小さくなるが r問題によって党また は会派としての要望書を首長に出す」が19..7パーセント r全員協議会におい て執行部に要望する」が17..1パーセント r常に会派としての要望書を首長に 出す」が14..0パーセント r決算委員会において執行部に要望する」が12“Oパー セントであり,更に小さいのが「常に党としての要望書を首長に出す」で,

7

.

.

7

パーセントである。 したがって,事業担当課の係長や課長に直接会い予算をつけるように要望す 第12図 予 算 要 求 の 経 路 常に党の要望書を首長に 常に会派の要望書を首長に 党または会派の要望書を首長に 係長や課長に直接要望する

1

h

め%Aう心ゲウケHんノYMH//A品wYρW仏MγJρHM%HがHYAAノ 勿H

//Wノ/γ/ノノ/グγAA必4422313 27 F22d222 69 5

助役や首長に頼む 代表質問などで要望 全員協議会で要望 常任委員会で要望 官~初動~35,.4 決算委員会で要望 その他 手 = φ

10 20 30 40 50 60 70 80(%)

(25)

る方法が最も多く行われているようであるが,助役や首長に直接会って頼むと 言うこともかなり行われている。市町議会議員は,そのように首長から係長ま での行政側の役職者に直接要望する一方,また,議会での代表質問や一般質問, 常任委員会,決算委員会においても予算について要望をしている。さらに,す ぐ後でも取り上げるが,全員協議会も予算要望をする場である。そして,最後 に,会派ないし党としても執行部に予算について要望を出すというように,ほ とんどあらゆる経路と機会を通じて予算にかんする要望を出していることが分 かる。 つぎに,予算要求の経路についてのクロス集計を少し見る。この設問の回答 を市町に分けてみると,第 13図のようである。すなわち r係長や課長に直接 会い,要望する」と言う,単純集計において最も多い回答は市議会議員が

5

5

ι

パーセントであるのに対して,町議会議員は73..7パーセントであり,町議の方 がこの経路をよく使っているようである。これは,町役場の方が規模も小さし 議員と行政との接触が密であることを表しているのであろうか。「議会での代表 質問や一般質問において執行部に要望する」と言う回答の割合と「金額の大き さによって助役に頼んだり,首長に直接頼んだりする」と言う回答の割合とは, 市と町の間でそれほど大きなちがいはない。しかし r常任委員会において執行 第13図 予 算 要 求 の 経 路 ( 市 ・ 町 ) 常に党の要望書を首長に 常に会派の要望書を首長に 党または会派の要望書を首長に 係長や課長に直接要望する 助役や首長に頼む 代表質問などで要望 全員協議会で要望 常任委員会で要望 決算委員会で要望 その{也

o r

o

20 ~ ~ 50 00 70 ~(%) 図 市 図 町

(26)

50ー 香川大学経済論叢 284 部に要望する」と言う回答の割合は,市議会議員が25.9パーセントであるのに 対して,町議会議員は38..2パーセントである。これは,町議会の常任委員会で は予算要求を出す機会が市議会に比較してより多くあると言うことであろう か。「常に会派としての要望書を首長に出す」と言う回答の割合と「問題によっ て党または会派としての要望書を首長に出す」と言う回答の割合は,市議会議 員の方が町議会議員に較べかなり大きい。これは,すでに見たように市議会の 方が町議会に比較して政党化率が高いことの表れと思われる。他方[""全員協議 会において執行部に要望する」と言う回答の割合は,市議が

4

.

5

パーセントで あるのに対して町議の方は

2

0

8

パーセントである。つまり,町議会議員は,市 議会議員に比較して全員協議会で予算に対する要望を多く行っているというこ とである。 つぎは,予算要求の経路を当選回数とクロスさせてみよう。第 14図と第15図 を見よ。まず第

1

に興味を引くのは[""イ系長や課長に直接会い,要望する」と言 う回答の割合が当選回数と逆の関係になっていることである。すなわち,当選 1回の議員の場合は, 76.,6パーセントであるが,当選回数が増大するにつれて その割合は漸減し6回以上となると 65..0パーセントとなっている。しかし[""金 額の大きさによって助役に頼んだり,首長に直接頼んだりする」と言う回答の 第14図 予算要求の経路(当選回数) 常に党の要望書を首長に 常に会派の要望書を首長に 党または会派の要望書を首長に 係長や課長に直接要望する 助役や首長に頼む

o

10 20 30 40 50 60 70 80 90(%) 四 1回 図2回・3回 図4回・5田 園6回以上

(27)

第15図 予算要求の経路(当選回数) (つづき) 代表質問などで要望 全員協議会で要望 常任委員会で要望 決算委員会で要望 その{也

o

5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60(%) 四1図 図2回・3回 図4回・5回 協6回以上 割合は,当選

1

回の議員の場合には

3

2

.

4

パーセントと最も小さい。したがって, 当選

1

回の議員の場合,助役や首長に予算について要望するのはやや難儀なこ とのようである。他方,当選

1

回および当選

2

回・

3

回の議員の場合は i議会 での代表質問や一般質問において執行部に要望する」がかなり多く, 46..8パー セントと 48.4パーセントである。したがって,当選回数の少ない議員の場合, 係長や課長に直接要望するか代表質問や一般質問において執行部に要望するか であるようである。当選回数が6回以上の議員の場合には i常任委員会におい て執行部に要望する」と言う回答の割合がかなり多くなっているのは,古参議 員の貫禄を示すものであろうか。 最後に,政党別に予算要求の経路を見れば,第16図と第17図のようである。 いくつかの興味を引く点を列挙すれば次のようである。第

1

に,単純集計で最 も回答の割合の多かった「係長や課長に直接会い,要望する」と言うのは,政 党会派の間で特別のちがいはない。つぎに i議会での代表質問や一般質問にお いて執行部に要望する」と言う回答の割合は,比較すれば,社会党 (806パー セント)と共産党

(

6

9

.

7

パーセント)が多いと言えるであろう。「全員協議会に おいて執行部に要望する」と言うのは,保守系無所属が

2

2

.

.

6

パーセントでやや 多いのに対し,共産党ではこの回答を選んだ議員はいない。「常に会派としての

(28)

-52 香川大学経済論叢 第16図 予算要求の経路(政党別) 常に党の要望書を首長に 常に会派の要望書を首長に 党または会派の要望書を首長に 係長や課長に直接要望する 助役や首長に頼む

o

10 20 30 40 50 60 70 80(%) 区3 自民党区ヨ社会党医3 公明党~共産党~保守系無所属医留革新系無所属 第17図 予 算 要 求 の 経 路 ( 政 党 別 ) (つづき) 代表質問などで要望 全員協議会で要望 常任委員会で要望 決算委員会で要望 その他

o

5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 80 85 90(%) 区3自 民 党 図 社 会 党 図 公 明 党 閣 共 産 党 図 保 守 系 無 所 属 国 革 新 系 無 所 属 286 要望書を首長に出す」と言う回答の割合は,自民党がいちばん多く 24..4パーセ ントであるが,社会党,公明党,共産党となるにしたがってその割合が漸減し ている。そして r常に党としての要望書を首長に出す」と言う回答の割合は, 共産党が66..7パーセントで格段に大きい。また r決算委員会において執行部 に要望する」と言う回答の割合も,共産党が33..3パーセントで,これ又,格段 に大きい。

(29)

V

I

4

から問

6

に対する回答の分析 問4 執行部に対して予算要求を出すのは,予算編成のどの段階であろうか。 この設問の単純集計の結果は,第 18図のようである。最も割合の多い回答は, 「執行部が予算編成方針を策定する段階である」で,

4

7

..4ノT一セントである。続 いて多いのは r事業担当部課が要求を提出する段階である」で42句3パーセン ト r執行部が実施計画や基本計画を策定する段階である」で30..3パーセント である。そして,やや小さくなるのが r予算編成の時期以外である」で

1

8

.

.

9

パー セントである。したがって,市町議会議員が予算要求を出す大部分の段階は, 当該年度の予算編成方針を策定する時や事業担当部課が要求を提出する段階, 実施計画や基本計画を策定する段階のようである。また,予算編成の時期以外 でも予算要求をする事がある。しかし,財政主管課の査定 (63パーセント)や 首長査定の時期

(79

パーセント)に予算要求をするのは適当ではないようで, それらの回答の割合はかなり小さくなる。 つぎに,この設問の回答のクロス集計を少し見てみよう。まず,市町議会議 員別にみると,第19図のようである。この図でやや興味を引くのは r執行部 が予算編成方針を策定する段階である」と言う回答では,市議の場合

5

9

8

パー セントと町議に比較してやや多く,他方 r予算編成の時期以外である」と言う 回答では,逆に,町議の方が

2

0

8

パーセントと市議に比較して多くなっている 第18図 予算要求を行う段階 実施計画・基本計画の策定時七勿勿'l'///h-必勿勿勿勿勿'l'///h-勿30.3 予算編成方針の策定時 彰ク妙手W///////#///////////必Wh-勿'l'//////h-ゴ47ゎ4 事業担当部課が要求を出す時彰μμμμμμμ手必手必必μμμ00.μμ必必分42..3 財政主管課の査定時 首長査定の時 予算編成の時期以外 その他 不明 7,.9 18.,9

2

o

5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55(%)

(30)

-54- 香川大学経済論叢 第19図 予算要求を行う段階(市・町) 実施計画・基本計画の策定時 予算編成方針の策定時 事業担当部課が要求を出す時 財政主管課の査定時 首長査定の時 予算編成の時期以外 その他 不明 o ro

w

~ ~

w w

ro(%) 図 市 図 匝 ] 第20図 予算要求を行う段階(当選回数) 実施計画・基本計画の策定時 予算編成方針の策定時 事業担当部課が要求を出す時 財政主管課の査定時 首長査定の時 予算編成の時期以外 その他 不明 F事琴琴号号号車 288

o

5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60(%) 図 l回 図2図・3回 国4回・5回 閣6回以上 という点である。このことから,市議会議員の方が正規の予算編成過程の中で 予算要求をするのに対して,町議会議員の方は,予算編成過程以外で予算要求 をする傾向があると言えるであろうか。 当選回数で見るとどのような傾向があるであろうか。第20図を見よ。この図 で興味を引くのは,首長査定の段階で予算要求をすると言う回答の割合は当選 回数が多くなるのに比例して増大していること,また,財政主管課の査定段階 で予算要求をすると言う回答が当選6回以上の議員の場合には 12..5パーセン

(31)

第21図 予算要求を行う段階(政党別) 実施計画・基本計画の策定時 予算編成方針の策定時 事業担当部課が要求を出す時 財政主管課の査定時

o

5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70(%) 図 自 民 党 図 社 会 党 図 公 明 党 協 共 産 党 図 保 守 系 無 所 属 闇 革 新 系 無 所 属 第22図 予算要求を行う段階(政党別) (つづき) 首長査定の時 予算編成の時期以外 その他 不明

5 10 15 20 25 30(%) 図 自 民 党 図 社 会 党 図 公 明 党 閣 共 産 党 図 保 守 系 無 所 属 臨 革 新 系 無 所 属 トとかなり多くなっていることである。先に財政主管課や首長査定の段階で予 算要求をするのは,全体的には少ないと言ったが,古参議員になればなるほど そういう場合にも予算要求をする傾向があるようである。 最後に,政党別にこの設問の回答の割合を見ると,第21図と第22図のよう である。この図からうかがえる特徴的な点を列記すれば,第

1

に r執行部が予 算編成方針を策定する段階である」と言う回答の割合は,社会党が64..5パーセ

(32)

56- 香川大学経済論叢 290 第23図 予算要求は予算に感り込まれたか 常に盛り込まれた 時々盛り込まれた 68. 1 ほとんど盛り込まれなかった その他

o r

o

w

~ 40 ~ ~ 70 80(%) ントで高い。「事業担当部課が要求を提出する段階である」は,比較的にである が,革新系無所属が

5

2

.

.

6

パーセント,保守系無所属が

4

5

.

.

8

パーセントで高い。 また i財政主管課の査定段階である」と言う回答は,共産党が

1

5

.

.

2

パーセン トで高い。更に i首長査定の段階である」は,共産党が

1

8

.

.

2

パーセント,社 会党が

1

6

.

.

1

パーセントで高い。「予算編成の時期以外である」も,共産党が

2

4

“ 2パーセントと高い。 間

5

2

から問

4

において予算要求をどのような経路で,どの段階で行う かを尋ねた後,では,議員個人ないし政党会派の予算要求が,結局,首長の予 算に盛り込まれたのかどうかを問 5で尋ねた。その単純集計の結果が,第 23図 のようである。すなわち i時々盛り込まれた」と言う回答が最も多く,

6

8

1

パー セント i常に盛り込まれた」と言う回答が

2

6

.

.

4

パーセントであり,両者を合 自 由 わせると

9

4

5

パーセントとなる。この数値をどのように評価するのかは,比較 の基準がないので,現在はなんとも言えない。しかし iほとんど盛り込まれな かった」と言う否定的な回答の割合は1..

8

パーセントであるから,予算要求の 実現の程度はかなり高いと,議員たちは感じているようである。 つぎに,クロス集計のいくつかを紹介してみよう。市町議会議員別にみると, (39) この設問の回答についての反省を言えば常に盛り込まれた」と「時々盛り込まれた」 との表現の聞には,かなり懸隔があるということである。つまり常に盛り込まれた」 の次に「たいてい(ほとんどの場合)盛り込まれた」と言う設聞が必要であったことに気 づいたのである。

(33)

第24図 予算要求は予算に盛り込まれたか(市・町) 常に盛り込まれた 時々盛り込まれた ほとんど盛り込まれなかった その{也

o

10 20 30 40 50 60 70 80(%) 図 市 図 阿I 第25図 予算要求は予算に盛り込まれたか(財政カ指数) 常に盛り込まれた 時々盛り込まれた ほとんど盛り込まれなかった そのT也

o

10 20 30 40 50 60 70 80(%) m O 169-0 350~ 0 350-0 450 Ii:忍0.450-0.600f@j0600-1 051 第24図のようである。「常に盛り込まれた」と言う回答は,市議の場合, 36“6 パーセントであるのに対して,町議の場合は, 23..4パーセントと若干小さい。 これは,財政力指数に関係があるのではないかと思い,財政力指数とクロスさ せてみると,第25図のようである。すなわち,財政力指数が0..450未満の団体 の議員と 0..450以上の団体の議員とでは,回答の割合に差があることが分かる。 例えば,財政力指数が0,169-0..350の団体の議会の議員の場合は r常に盛り 込まれた」と言う回答の割合が23,.0パーセントであるのに対して, 0れ600-1.,

参照

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