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評価結果の概要 事例69

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Academic year: 2021

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診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業 評価結果の概要 本概要は、関係者への説明に用いるため、申請医療機関及び患者遺族に対して 報告された「評価結果報告書」をもとに、その概要をまとめたもの。 1 対象者について ○ 年齢:80歳代 ○ 性別:男性 ○ 診療の状況: S 状結腸狭窄あり、精査目的で入院。肺炎併発あり、治療し、入院 20 日目大 腸内視鏡施行。内視鏡後、腸穿孔出現。緊急開腹術にて下行結腸癌を認め、 癌部と穿孔部大腸切除し人工肛門を設置する。その 2 日後不整脈出現と共に 血圧低下。直後昇圧剤を使用。心臓マッサージを開始するも心拍なし。1 時 間 30 分後死亡。 2 結論 (1)経過 4 年前から便潜血が陽性であったが、消化管病変の精査は行われていなかっ た。A 医院受診時(外来 1 日目とする)、左下腹部に圧痛が認められ、B 消化 器クリニック紹介、外来 34 日目下部消化管内視鏡検査が施行され、直腸と S 状結腸、下行結腸にポリープが認められたほか、下行結腸に狭窄病変があり、 それより奥には内視鏡は挿入できなかった。ポリープは内視鏡下に切除、狭 窄病変から生検組織が採取された。組織診断は「下行結腸のポリープは粘膜 内癌(内視鏡下切除で根治)、S状結腸と直腸のポリ−プは腺腫(良性大腸腫 瘍)。下行結腸狭窄部からの生検組織には悪性所見は認められない」という 結果であった。外来 68 日目再度下部消化管内視鏡検査が施行され、下行結 腸の狭窄部より再度生検組織が採取されたが、浮腫状正常粘膜という結果で あったため(外来 76 日目に判明)、A 医院より C 病院に造影 CT 検査が依頼さ れた。 外来 76 日目から背部痛出現、81 日目に近医で胸部レントゲン検査が施行さ れ、両下肺野に粒状陰影が認められ、血液検査で炎症マーカーの CRP は陽性 であった。外来 84 日目から全身倦怠感出現、37.1℃の発熱が出現した。81 日目に採取された喀痰の培養結果が判明し、グラム陰性桿菌 2+、陰性球菌 2+、陽性桿菌 1+、陽性球菌 3+であった。 外来 88 日目 C 病院で腹部造影 CT が施行され、下行結腸の腫瘍性病変と腹水、

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肺炎が指摘された。 外来 89 日目から 4 日間 A 医院で抗生物質ロセフィン 1g/日の点滴静脈投与が 行われた。 外来 94 日目 C 病院外科受診、翌日入院となった。 入院 1 日目 肺炎治療を優先する必要があり、C 病院呼吸器内科に入院。C 病院外科より、 A 医院へ、「肺炎で呼吸器内科に入院、下行結腸狭窄病変に対しては、体力が 回復すれば、8 月 5 日に大腸内視鏡検査の予定」と返信された。入院時、身 長:156cm、体重:38Kg、BMI:15.5 白血球数 7780 CRP 6.62 喀痰細菌培 養検査が施行され,培養結果は Candida albicans: 3+, normal flora(正常 細菌叢) 2+であった。入院 1 日目から抗生物質メロペン 0.5g×3/日が投与 された。 入院 2 日目 「誤嚥性肺炎が疑われる。解熱傾向が認められ、胸部レントゲン検査では 7/16 と比べ、肺野病変は少し改善。食後すぐに横にならないこと、口腔内衛 生環境をキープすること」と診療録に記載されている。体温 36.9℃ 白血球 数 10360、CRP 3.65 入院 6 日目 自覚症状変化なし シャワー時も呼吸困難なし。労作時 O2 1 リットルで SPO2 88% 安静時酸素吸入なしで SPO2 94% 呼吸リハビリ開始となる。体温 37.0℃ 白血球数 8490、CRP 2.76 入院 8 日目 3 日間便秘あり。体温 37.2℃ 白血球数 8310、CRP 2.79 左胸水の増加が見 られたため、左胸腔穿刺で胸水 50ml が吸引除去、胸水は浸出性 胸水中の CEA(胃癌・大腸癌・肺癌の腫瘍マーカー)値は 13.9(胸水の正常値は不明) 入院 9 日目 体温 37.4℃ 胸水貯留の原因として心不全の可能性もあるので、心エコ−検 査と血中 BNP 測定が施行された。心エコーでは、「上室性期外収縮が頻発、 一過性ショ−トラン,右心負荷、肺高血圧(右心圧(推定)45mmHg(異常高値)) が認められた。肺高血圧は肺病変の影響が疑われる」、と診断された。BNP は、94.5 であった。排便あり。 入院 12 日目 胸部単純レントゲン写真、胸部 CT 検査施行された。「腫瘍病変認めず、結核 を疑う所見もなし、誤嚥性肺炎の可能性は否定できない」と診断され、抗生 物質が、メロペンから、ダラシン 1A + ファーストシン 1g に変更さ

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れた。白血球数 8860 CRP 3.69 入院 13 日目 喀痰細菌検査が施行された(3 日後に結果判明) 入院 14 日目 体温 36.6℃ 胸水貯留に対し、左胸水が 530ml 穿刺除去された。 入院 15 日目 白血球数は 7580 だが、CRP が 5.39 に増加した。胸部レントゲン写真では前 日胸水除去するも左胸水量は変化がみられなかった。 入院 16 日目 体温 37.3℃ 喀痰細菌培養検査結果が(Stenotrophomonas maltophilia(グ ラム陰性桿菌): 3+,Candida albicans(真菌): 3+ )と判明した。 入院 18 日目 全身倦怠感あり。「大腸内視鏡検査大丈夫でしょうか。」と患者本人から内科 担当医に質問があり、内科担当医からは外科の先生に聞いておくと返答があ った(看護記録上)。 入院 19 日目 白血球数 8580 CRP 5.77 胸部単純レントゲン写真で右胸水の増加が認め られた。抗生物質がファーストシン、ダラシンから、チエナム、ミノマイシ ンに変更された。 入院 20 日目 朝、O2 1.5 リットルで SpO2: 90〜92% 9:00 大腸内視鏡検査の前処置薬のニフレック服用できず 12:20 微温湯 8 リットルで腸洗浄 13:40 出診 大腸内視鏡検査 (14:20-15:05 35 分間)施行された。SD junction に腫瘤 あり、全周性で狭窄高度、内視鏡は通過できず、狭窄部位 1 ヵ所を生検 15:20 帰室。検査後、腹部緊満、嘔吐あり。17:30 腹部 CT 検査施行され、「腹 腔内遊離ガス像あり、消化管穿孔による腹膜炎」と診断された。CT 室で急変 (全身振戦、腹部膨満、腹痛、顔色不良症状)あり。 緊急手術 麻酔時間 19:55-23:05 4 時間 01 分 手術時間 20:33-23:20 まで 2 時間 47 分 ハルトマン手術(D2)癌腫と穿孔部の切除+人工肛門造設術 (上下腹部正 中切開にて開腹、S 状結腸に縦走する穿孔あり、腹腔内便汁汚染あり。S 状 結 腸 - 下 行 結 腸 接 合 部 近 く の 下 行 結 腸 に 腫 瘍 触 知 腫 瘍 は Si( 後 腹 膜)P0H0N0[肉眼的に後腹膜側の漿膜にまで腫瘍の浸潤を認める 腹膜転移、

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肝転移、リンパ節転移は認めない] stage II 穿孔部の肛門側で S 状結腸 切離、左結腸動脈、S1 動脈、S2 動脈根部で結紮(D2 郭清)、左結腸切離術施 行 下行結腸人工肛門造設 術中輸液量 2550ml 出血量 少量 尿量 120ml) [術後経過] 術後 1 日目 2:00 心室性期外収縮の 2 連脈が続くが自然消失した。一時血圧 70mmHg 台 低下、アルブミン製剤を点滴。体位変換で SpO2低下(92〜93%)血圧低下が 認 め ら れ 、 FiO2 を 0.5 か ら 0.6 へ 増 量 、 血 圧 低 下 も 認 め ら れ た 。 Propofol(1.5-2.0mg/kg/hr)を投与しても開眼、意思疎通はかれる状態なの で、もう少し深く麻酔をかけることを考慮されたが、血圧が低いので麻酔を 深くかけることは困難と判断された。

術後呼吸状態は、酸素化不良であったが(FiO2 0.6 で pO2 80 台(PEEP 5) CPAP モードで管理し、PEEP を高めに管理(~10cmH2O) 日中 FO2 0.5 PEEP10 PS12→5 と順調に weaning(人工呼吸による管理を弱めていって挿管されて いる管を抜く準備をする)できたが、夕方、体位交換を機に SpO2 低下 (89%)pO2 55mHg と悪化、FiO2 0.6 まであげて SpO2 96-97%に保つように管 理された。胸部単純写真では胸水多量認められた。 術後の循環動態は不安 定で、イノバン 5γ、アルブミナーによる輸液負荷にもかかわらず、収縮期 血圧 80-90mmHg であった。体位交換時収縮期血圧が 70 台となるが、自然に 回復した。体位変換時に血圧が下がるのは輸液不十分によるものと診断され ていた。尿量は 70ml/時で異常なく、心室性期外収縮、上室性期外収縮は散 発で認められた。 術後 2 日目 胸部レントゲン写真で左右両側に胸水が貯留していた。 10:00 トロッカーが挿入留置され、左胸水が 600ml 除去された。イノバン (昇圧剤)6γ使用下で収縮期血圧は 74〜100mmHg で推移していた。 14:00 家族との面談がなされた。挿管されていたが、意思の疎通は可能で あった。 14:39 体位変換は行われず、仰臥位のままで殿部下にシートを挿入し、陰 部清拭がなされた。シート挿入時、自ら殿部を持ち上げようとする動きがあ った。 14:40 slow VT(脚ブロック様波形という記載もあり)出現。さらに血圧が 低下し、心停止が認められた。 16:09 CPR 続けるが心拍再開せず、死亡が確認された。

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(2)調査及び評価の結果 直接の死因は、呼吸不全による低酸素血症、および急性循環不全である。しか しながら、大腸内視鏡検査後の緊急開腹手術により、以前から罹患されていた 呼吸不全がさらに悪化したことと、もともとの肺高血圧に加えて術後の循環血 液量の低下などの諸要因が重なった結果であり、S 状結腸穿孔がその経緯に大 きな影響を及ぼしたことは明らかである。 3 諸提言 (1)再発防止の提言 評価結果を踏まえて同様の事例の再発防止に資する提言: 本事例は、呼吸不 全による低酸素血症が原因で死亡したことが最も考えられる。大腸内視鏡検査 で生じた大腸穿孔に対する緊急開腹手術を受けたことが、検査前から認められ ていた呼吸不全状態の悪化の原因となっていることから、ハイリスク症例の内 視鏡検査の適応評価にあたっては、偶発症に対する治療に関しても十分にその 適応を評価することに留意すること必要であり、その旨医療現場に周知すべき である。特に、本例においては、肺炎治療のために呼吸器内科に入院した際に 予約された日に予定通り内視鏡検査が施行されており、内視鏡検査の適応に関 して外科と呼吸器内科の間でのディスカッションの記録が診療録に記載されて おらず、内視鏡検査の適応を評価した責任科の所在が明確にされていない。本 例のようなハイリスクな症例においては、内視鏡など侵襲を伴い、偶発症の可 能性が考えられる検査に際しては、その偶発症に対する治療も含めた適応評価 を関係各科間で連携を取りながら行う必要があると考えられる。 (2)その他の提案 本事例では、以下2点に関し、患者/家族の方の十分な理解を得られていなかっ た可能性が考えられ、説明に際し、さらなる配慮が必要であると考えられる。 ・大腸内視鏡検査に際し、検査前の全身状態、偶発症により重篤な状態に陥る 可能性と検査の意義・必要性に関し、外科・呼吸器内科から患者・家族に説明 し、十分に理解していただいた上でインフォームドコンセントをとる必要があ ったと考えられる。 ・術後 2 日目に家族と面談され、意思の疎通が可能な状態まで回復されていた のに、その 30 分後に急変され、亡くなっておられる。意識が回復し、一見、全 身状態は改善しているようにみえるが、依然として人工呼吸管理・昇圧剤の持 続投与が必要で、呼吸・循環動態とも極めて不安定な状態であること(体位変 換により重篤な状態(低酸素・低血圧の悪化)に陥る)を家族の方に十分理解 していただいておく必要があったと考えられる。

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(参 考) 地域評価委員会委員 (13名) 臨床評価医 日本消化器病学会 常任評価委員 日本呼吸器外科学会 常任評価委員 日本内科学会 常任評価委員 日本内科学会 常任評価委員 元地方裁判所判事 総合調整医 日本法医学会 総合調整医 日本消化器内科学会 解剖執刀医 日本法医学会 解剖担当医 日本病理学会 臨床立会医 日本外科学会 法律家 弁護士 法律家 弁護士 その他 NPO法人市民団体 調整看護師 (評価の経緯) 地域評価委員会を1回開催し、その間及びその後において適宜、電子媒体適宜意見 交換を行った。

参照

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