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地盤工学会北海道支部技術報告集第 5 5 号平成 27 年 1 月於室蘭市 細粒土の一面せん断試験から得られた 凍結融解による強度定数の変化 1. はじめに 北見工業大学大学院学生会員 佐々木貴 北見工業大学工学部 正会員 川口貴之 北見工業大学工学部 正会員 中村大 北見工業大学工学部 正会員 川

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Change of Strength Parameters by Freezing and Thawing Obtained from Box Shear Tests Using Fine Grained Soil

Sasaki, T., Kawaguchi, T., Nakamura, D., Kawajiri, S. and Yamashita, S.: Kitami Institute of Technology

細粒土の一面せん断試験から得られた

凍結融解による強度定数の変化

北見工業大学 大学院 学生会員 ○佐々木貴 北見工業大学 工学部 正会員 川口貴之 北見工業大学 工学部 正会員 中村大 北見工業大学 工学部 正会員 川尻峻三 北見工業大学 工学部 正会員 山下聡

1.はじめに

寒冷地の自然斜面や人工斜面における融雪期の斜面崩壊メカニズムを解明し,崩壊危険度の評価やより効 果的な対策法の検討に役立てることを目的として,筆者らは一連の試験システムを新たに構築し,斜面内土 要素の変形・強度特性が凍結融解履歴によってどのように変化するのかを把握しようと試みている 1).こ の 試験システムでは無限長斜面内の応力状態やせん断機構の再現に適していることや,せん断面が斜面内にで きる氷層(アイスレンズ)の方向とほぼ一致させることができることも勘案し,比較的研究例の多い三軸試 験2), 3), 4)ではなく,一面せん断試験を採用している.また,凍上試験によって供試体内にできるアイスレン ズが不均一であることを考慮し,一供試体内に複数のせん断面を設けることができるよう,通常よりも縦横 比が大きい立方体形状の供試体を作製できるモールド,これを設置可能な凍上試験装置と一面せん断試験装 置から構成されている1) 本文では,まず通常の縦横比で作製した供試体を用いた一面せん断試験結果との比較や凍上させた供試体 内のアイスレンズ分布を X 線 CT スキャンで評価した結果を示している.その上で,凍上性のある細粒土に 対して実施した定圧および定体積一面せん断試験結果を示し,これらの試験から得られた凍結融解による強 度定数の変化について議論している.

2.試験方法・条件・結果

表1は本研究で実施した一連の試験に関する試験条件をまとめたものである.試験に用いた試料は北見市 内で採取された風化火山灰であり,細粒分が 50%を超えているため「火山灰質粘性土」に分類される.ま た,地盤工学会基準である“凍上性判定のための土の凍上試験方法”に従うと「凍上性が高い」判定される 凍上速度 Uh(>0.3mm/h)大きく超える高い凍上性(Uh≒0.7mm/h)を有することが確認されている5).供 表1 試験条件のまとめ 土粒子密度 目標乾燥密度 目標含水比 鉛直応力 せん断速度 ρs (g/cm 3 ) ρd (g/cm 3 ) w (%) σv (kPa) (mm/min) CSCM 10-3 無 無 10 CSCM 50-3 無 無 50 CSST10-3 有 無 10 CSST50-3 有 無 50 CSFT10-3 有 有 10 CSFT50-3 有 有 50 CSCM 10-1 無 無 10 CVST10-3 無 無 10 CVST50-3 無 無 50 CVFT10-3 有 有 10 CVFT50-3 有 有 50 CVST10-1 有 無 10 CVST50-1 有 無 50 CVFT10-1 有 有 10 CVFT50-1 有 有 50 試験名 浸水 凍結・融解 せん断方法 定圧 0.05 26.0 1.29 2.56 定体積 地 盤 工 学 会 北 海 道 支 部 技 術 報 告 集 第 5 5 号 平成27 年1月 於 室 蘭市

(2)

試体については,先述のように一辺 120mm の立方体形状であり,最適含水比よりも幾分乾燥側の含水比 w=26%,締固 め度 Dc=90%になる よう調 整・計 量した 試料を 3 分割 し,各層 40mm の高さ にな るまで 締固め ることで作製した.試験名については,最初の 2 文字は一面せん断方法を表しており,CS は定圧,CV は 定体積一面せん断試験である.次の 2 文字は供試体条件を表しており,CM は締固めて作製した直後の供試 体(以下,締固め供試体),ST は締固め後にせん断箱内で 3 日間浸水(通水飽和)させた供試体(以下,浸 水供試体),FT は締固め後に凍上試験装置に設置・浸水し,凍結融解履歴を与えた上で浸水させた供試体 (以下,凍結融解供試体)である.最後の 2 桁の数字は一面せん断開始時の鉛直応力,その後のハイフンに 続く数字は層数を表している. 表2は一連の試験から得られた主な試験結果をまとめたものであり,3 層供試体については各せん断面で 得られた最大せん断応力を示している.なお,浸水供試体と凍結融解供試体については変形・強度特性への 悪影響を考慮して負圧を与えることや大きな水頭差での通水を行っていないこともあり,完全飽和には達し ていないものの,いずれの試験でも 95%程度の飽和度は確保できていることが分かる. 定圧一面せん断試験方法については,反力板側(水浸箱底部)にあるロードセルの計測値をモニタリング しながら重錘の増減によってコントロールしており,供試体上端から 3, 6, 9cm の位置(それぞれ上層下 部,中層中心,下層上部に該当)を順にせん断している.その他,試験装置や方法の詳細については参考文 献 1)を参照して頂きたい.定体積一面せん断試験については,図1に示すように所定の鉛直応力が変化し 表2 試験結果のまとめ 初期含水比 初期乾燥密度 初期間隙比 せん断前の間隙比 せん断前の飽和度 最大せん断応力 w0 (%) ρd0 (g/cm 3 ) e0 e Sr (%) τm ax (kN/m 2 ) 25.1 30.0 29.3 61.4 61.6 63.5 11.0 13.5 10.1 38.9 50.4 47.8 8.7 11.2 10.2 38.3 43.7 40.9 CSCM 10-1 25.6 1.29 0.98 0.98 67.0 33.8 14.7 16.7 17.3 22.9 27.9 22.2 4.2 6.3 9.3 11.8 19.7 29.7 CVST10-1 25.8 1.29 0.98 0.98 96.5 13.4 CVST50-1 26.4 1.28 0.99 0.99 96.3 27.8 CVFT10-1 26.5 1.28 0.99 1.08 98.4 5.2 CVFT50-1 25.8 1.29 0.98 0.94 100.9 14.6 ※τmaxは上から順に供試体上層,中層,下層から得られた値 98.3 CVFT50-3 25.8 1.29 0.98 0.96 97.2 CVFT10-3 26.1 1.29 0.99 1.06 96.7 CVST50-3 26.4 1.28 0.99 0.99 97.1 CVST10-3 26.4 1.28 0.99 0.99 67.9 試験名 CSCM 10-3 26.3 1.28 0.99 0.99 93.2 0.99 CSFT10-3 25.7 1.28 0.98 1.05 94.7 CSCM 50-3 26.4 1.28 0.99 0.99 68.0 CSFT50-3 0.99 1.29 25.9 94.7 0.97 0.98 1.29 25.7 CSST10-3 94.8 0.98 0.98 1.29 25.7 CSST50-3

(3)

ないよう注意しながら載荷軸両端を固定することで鉛直 変位が生じないようにしている.また,定体積一面せん 断試験は浸水供試体と凍結融解供試体に対してのみ実施 した.

3.供試体縦横比の違いに関する検討

地盤工学会基準である「土の圧密定圧一面せん断試験方 法」と「土の圧密定体積一面せん断試験方法」には,いず れも直径 2cm,高さ 6cm の円盤形を標準とし,供試体断面 は正方形や長方形でも良いが,高さは直径の 1/3 程度とす ることが記載されている6) 図2は高さが底辺の 1/3 となる 1 層分のみとした供試体 と,それを 3 層重ねることで立方体形状とした供試体に対 して実施した一面せん断試験結果を比較したものである. 図2a)は締固め供試体に対して実施した定圧一面せん断試 験 , 図 2 b)と図2c)はそれぞれ浸水供試体と凍結融解供試 体 に 対 し て 実 施 し た 定 体 積 一 面 せ ん 断 試 験 結 果 を 比 較 し たものである.3 層供試体で実施した全ての 試験において,中層のせん断時には先に上層をせん断した際にできたせん断面が残っている状態でせん断し ており,この影響もあってかダイレイタンシー特性には多少の違いが見られる.しかし,最大せん断応力に それほど大きな違いはなく,本試験システムによって 3 層供試体における各層のせん断特性の違いを相対的 に把握できると判断した.また,凍結融解などによる強度定数の変化についても十分に評価しうると判断し た.なお,簡易定圧試験を用いた他の研究により,本試験システムのように反力板側の垂直応力で強度を整 図2 層数が異なる一面せん断試験結果の比較 a) 定圧- 締 固め供 試体 b) 定 体積- 浸水供 試体 c) 定体積 - 凍結融 解供試 体 0 5 10 0 10 20 30 40 3 0 −3 0 10 20 せん断変位, δ (mm) せ ん 断 応 力 , τ ( k N /m 2 ) 10kPa ∆Η ( m m ) 上層 中層 σ ( k N /m 2 ) 鉛 直 応 力 鉛 直 変 位 CSCM10−3 膨張 圧縮 1 層 CSCM10−1 下層 0 5 10 せん断変位, δ (mm) 10kPa 50kPa CVFT50−3 CVFT10−3 CVFT50−1 CVFT10−1 中層 上層 下層 1 層 0.02 −0.02 0 5 10 0 10 20 30 40 −0.1 0 0.1 0 20 40 60 せん断変位, δ (mm) 中層 1 層 下層 CVST10−3 CVST50−3 CVST10−1 CVST50−1 50kPa 10kPa 上層 0.02 −0.02 図1 載荷軸の固定方法概略図

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理すれば,強度定数は供試体高さの影響を受けないことが示されている7), 8)

4.凍上させた供試体のアイスレンズ分布に関する検討

写 真 1 は 凍 結 融 解 供 試 体 と 同 様 に 作 製 し た 凍 上 試 験 終 了 後 の供試体を凍結したまま試験装置から取り出し,X 線が透過し やすいよう側面をカットし,約 5cm の矩形断面としたものであ る.側面は岩石切断機でカットしたが,撮影面は切断による表 面の融解部分を丁寧にナイフで削り取っている.写真中のピン はマイクロフォーカス機能を用いて X 線 CT 撮影をした中心高 さを示しており,3 層のそれぞれ中心付近としている。各層の 境界は撮影面から肉眼観察と供試体全体の X 線 CT 撮影から確 認した. 図3は各層の中心付近を 15mm 角の立方体範囲で X 線 CT 撮 影し,その中心断面画像を比較したものである(概ね写真1中 の□).それぞれの画像は撮影で得られた CT 値のヒストグラム において,撮影範囲には土粒子と氷のみが存在すると考えて二 値化するための閾値を設定し,色調の異なる 2 色で表現してい る.表3は撮影後の供試体を層ごとに分割して体積,質量,含 水比を計測し,その計測値から概略的に算出した土粒子と空隙 (全て氷と仮定)の体積比等をまとめたものである.閾値については,CT 値のヒストグラムを氷と土粒子か らなる2つの正規分布で近似できるとし,それらが重なり合う点としている.ただし,これによって二値化 された体積比が表3中の体積比と概ね一致することも確認している. 表3に示した計算結果からも明らかであるが,図3から 3 層の中で上層(供試体上部)に存在する氷の量 が最も多いことや,土粒子の集合体(団粒)の周辺に概ね霜降状に氷が発達していることが視覚的に確認で きる.また,写真1や表3からいずれの層も凍上しているが,中層や下層に比べて上層の凍上量がとりわけ 大きいことが確認できる. 写真1 X 線 CT 撮影した凍上供試体 供試体上層 供試体中層 供試体下層 図3 二値化した凍上供試体の X 線 CT 画像 :土粒子 :氷 表3 凍上供試体の各層における諸量のまとめ 体積 質量 含水比 間隙比 V (cm3) m (g) w (%) e 土粒子 氷 上層 177.0 230.0 93.3 2.8 26.3 73.7 中層 135.7 207.1 54.1 1.6 38.7 61.3 下層 131.0 200.9 51.2 1.5 39.7 60.3 体積比 (%) 層名

(5)

5.凍結融解による強度定数の変化

図4は 3 種類の方法で作製した 3 層供試体(a):締固 め,b):浸水,c):凍結融解)で実施した定圧一面せん 断試験において,各層で得られた最大せん断応力τfとそ の 時 の 鉛 直 応 力σf を プ ロ ッ ト し , そ れ ぞ れ を 直 線 で 結 ぶことで得られた内部摩擦角φdと粘着力 cdを比較した ものである.層によってばらつきはあるものの,供試 体 を浸水させることで主に cdが大きく低下すること, 凍 結融解させることで全般的にはφd,cdともにわずかに 低 下することが確認できる. 図5は 2 種類の方法で作製した 3 層供試体(a):浸水 b):凍結融 解 )で 実施し た 定体積 一面せ ん断試 験にお い て,同様に各層のτfとσfをプロットし,それぞれを直 線 で 結 ぶ こ と で 得 ら れ た 内 部 摩 擦 角φ'と 粘 着 力 c'を 比 較 したものである.なお,図中にはせん断中のせん断応 力 と 鉛 直 応 力 の 推 移 に つ い て も 示 し て い る . 浸 水 供 試 体 に つ い て は , 特 に 低 応 力 下 で 過 圧 密 的 な 挙 動 を 示 す た め に 定 圧 一 面 せ ん 断 試 験 結 果 と 比 べ て 粘 着 力 は 大 き く,内部摩擦角は小さい結果となっている.また,凍結 融 解 供 試 体 に つ い て は , 他 の 研 究 成 果 で も 報 告 さ れ て い る よ う に 凍 結 融 解 で ダ イ レ イ タ ン シ ー 特 性 が 変 化 す るために,浸水供試体と比べて c'が低下し,代わりにφ' は 大 き く な っ て い る .図 6 は 定 体 積 一 面 せ ん 断 試 験 に おいて,せん断開始時の鉛直応力とτfから得られた浸水 供 試 体 と 凍 結 融 解 供 試 体 の 内 部 摩 擦 角φcu と 粘 着 力 ccu を比較したものである.浸水供試体については,φ',c' と 比 べ て そ れ ほ ど 大 き な 違 い は な い が , 凍 結 融 解 供 試 体 に つ い て はφcu はφ' と 比 べ て か な り 小 さ く な っ て お り,ccuは c'と比べてわずかに大きくなっている. 一方,層による強度定数の違いについて比較すると, い ず れ の 図 に お い て も 凍 結 融 解 供 試 体 で は 上 層 のτf が 最 も 小 さ く な っ て お り , そ れ に 伴 っ て 内 部 摩 擦 角 が 小 さくなっている.これについては,図3に示したよう に ア イ ス レ ン ズ の 量 が 大 き く 影 響 し て い る も の と 思 わ れ , ア イ ス レ ン ズ の で き 方 や そ の 量 が 土 の せ ん 断 強 度 や ダ イ レ イ タ ン シ ー 特 性 の 変 化 に 大 き く 関 与 す る こ と がより明確になったと考えている.また,τfおよびダ イ レ イ タ ン シ ー 挙 動 の 違 い は 定 体 積 一 面 せ ん 断 で 特 に 顕 著である(図5b)参照).これについては,定体積一面 せ ん 断 試 験 で は 定 圧 一 面 せ ん 断 試 験 の よ う に せ ん 断 中 に 圧 縮 挙 動 が 生 じ な い た め , 融 解 後 に も 残 存 し て い た アイスレンズによる土構造の損傷(≒クラック)がよ り 顕著に反映したためではないかと考えている. 図4a) 定圧‐締固め供試体の強度定数 図4b) 定圧‐浸水供試体の強度定数 図4c) 定圧‐凍結融解供試体の強度定数 0 20 40 60 80 0 20 40 60 80 せ ん 断 応 力 , τ ( k N /m 2 ) 鉛直応力, σv (kN/m 2 ) φd =43° c d=20 c d=15 φd =41° φd =39° : 上層 : 中層 : 下層 c d=20 CSCM10−3 CSCM50−3 0 20 40 60 80 0 20 40 60 80 せ ん 断 応 力 , τ ( k N /m 2 ) 鉛直応力, σv (kN/m2) φd =36° cd =3 cd =3 φd =45° φd =43° : 上層 : 中層 : 下層 cd =0 CSST10−3 CSST50−3 0 20 40 60 80 0 20 40 60 80 せ ん 断 応 力 , τ ( k N /m 2 ) 鉛直応力, σv (kN/m2) φd =36° cd =1 cd =1 φd =37° φd =41° : 上層 cd =3 CSFT10−3 : 中層 : 下層 CSFT50−3

(6)

図7は先に示した凍結融解による強度定数の変化が具体的に斜面の安定性にどのように寄与するのかを把 握するため,浸水供試体と凍結融解供試から得られた強度定数を式1に代入し,それぞれから算出された浸 透流のない無限長斜面の安全率 Fsを比較したものである.なお,図7a)は定圧一面せん断試験から得られた φdと cd,図7b),c)はそれぞれ定体積一面せん断試験から得られたφ'と c',φcuと ccuを用いて計算された Fsを 比較したものである. (1) ここで,z はスライス厚であり,本研究の主旨を考えて 0.25~2m の範囲で計算した.また,各強度定数は凍 結融解の影響が顕著に表れていると考えられる上層で得られた値を使用した.湿潤単位体積重量γt について はそれぞれの試験で 16.9~17.3kN/m3の範囲にあったが,強度定数による違いを明確にするため 17.1kN/m3 統一した. 図7a)に示した計算結果から,cdは凍結融解でわずかにしか減少していないにも関わらず,Fsは比較的大 きく減少して いることが分 かる.また,図7b)からφ' は 凍 結 融 解 で 大 き く 増 加 し て い る に も 関 わ ら ず , c'が 低下したことで Fsが大幅に低下しており,特に層厚が小さい範囲で顕著であることが確認できる.さらに , 図7c)でも主に ccuの減少によって Fsが大きく減少している.以上のことから,凍結範囲となる斜面表層 で は内部摩擦角に比べて粘着力の方が Fsに大きく影響し,凍結融解による粘着力の低下が斜面の不安定化に 大 図5 定体積一面せん断から得られた強度定数(有効応力表示) a) 浸水供試 体 b) 凍結融 解 供試体 0 20 40 60 80 0 20 40 60 せ ん 断 応 力 , τ ( k N /m 2 ) 鉛直応力, σv (kN/m2) φ' =12° c' =12 c' =12 φ' =13° φ' =19° : 上層 : 中層 : 下層 c' =13 CVST10−3 CVST50−3 0 20 40 60 80 鉛直応力, σv (kN/m 2 ) φ' =27° c' =0 c' =1 φ' =33° φ' =37° : 上層 : 中層 : 下層 c' =2 CVFT10−3 CVFT50−3

α

φ

α

α

γ

tan

tan

cos

sin

t s

+

=

z

c

F

図6 定体積一面せん断から得られた強度定数(全応力表示) a) 浸水供試 体 b) 凍結融 解 供試体 0 20 40 60 80 0 20 40 60 せ ん 断 応 力 , τ ( k N /m 2 ) せ ん 断 応 力 , τ ( k N /m 2 ) 鉛直応力, σv (kN/m2) φcu =12° ccu =14 ccu =13 φcu =7° φcu =16° : 上層 : 中層 : 下層 ccu =16 CVST10−3 CVST50−3 0 20 40 60 80 鉛直応力, σv (kN/m 2 ) φcu =11° ccu =3 ccu =2 φcu =28° φcu =19° : 上層 : 中層 : 下層 ccu =4 CVFT10−3 CVFT50−3

(7)

きく関与していると解釈できる.過去の研究では凍結融解履歴を受けていない試料に対し,いわゆる”閉式 ” での凍結融解履歴を与えて一面せん断試験や三軸試験を実施し,粘着力が低下することを報告しており,凍 結融解履歴によって粘着力が低下するという同様な結果が得られている9), 10), 11) 最後に,図7a)~c)に示した凍結融解供試体から得られた 3 組の強度定数による Fsの違いについて比較 す ると,層厚の小さい範囲では定体積一面せん断試験から得られたφ'と c'を用いて 計算し た Fsが最も小さく , 定圧一面せん断試験から得られたφdと cdに比べて凍結融解による Fsの変化も顕著であることが分かる.今 後,このことが試料や供試体作製条件によってどの程度変化するのかについても明らかにしていきたいと考 えている.

6.まとめ

本研究で得られた知見を以下にまとめる. ・供試体縦横比が異なる試験と比較した結果,本研究で用いた方法によって立方体形状である 3 層供試体か ら各層のせん断特性の違いを相対的に把握することや,凍結融解などによる強度定数の変化を評価す るこ とは概ね可能だと判断した. ・X 線 CT 撮影等から凍上させた供試体において上層の凍上量が最も大きく,多くのアイスレンズが存在す ることを確認した.また,3 層の中で上層の最大せん断応力が最も小さいことから,アイスレンズのでき 方やその量が土のせん断強度やダイレイタンシー特性の変化に大きく関与すると考えられた. ・凍結融解による最大せん断応力やダイレイタンシー挙動の変化は定体積一面せん断試験の方が顕著であっ た.これは定体積一面せん断試験では定圧一面せん断試験のようにせん断中に圧縮挙動が生じないた め, 融解後にも残存していたアイスレンズによる土構造の損傷(≒クラック)がより顕著に反映したため では ないかと考えられる. ・本試験で得られた強度定数を用いた無限長斜面の安全率計算から,凍結範囲となりうる斜面表層では内部 摩擦角に比べて粘着力の方が安全率に大きく影響し,凍結融解による粘着力の低下が斜面の不安定化 に大 きく関与していると考えられた.また,層厚の小さい範囲では凍結融解供試体の定体積一面せん断試 験か ら得られたφ'と c'を用いて 計算し た安全 率が最 も小さ く,定 圧一面 せん断 試験か ら得ら れたφdと cdに比べ て凍結融解による安全率の変化も顕著であることが分かった. b) φ',c' c) φcu,ccu a) φd,cd 図7 無限長斜面における安全率 Fs スライス厚 浸水 凍結融解 0.25m 0.5m 1.0m 2.0m 20 30 40 50 0 1 2 3 4 5 6 7 CV−cu 斜面の傾斜角,α 20 30 40 50 0 1 2 3 4 5 6 7 CV 斜面の傾斜角,α 20 30 40 50 0 1 2 3 4 5 6 7 CS 斜面の傾斜角, α 安 全 率 , Fs

(8)

参考文献 1) 佐々木貴,川口貴之,中村大,山下聡:凍結融解の有無が締固めた細粒土の一面せん断挙動に与える影 響, 地盤工学会北海道支部技術報告集,Vol.54,pp.69-74,2014. 2) 石川達也,尾崎悠太,三浦清一:凍結融解作用を受ける火山灰質粗粒土の力学特性の評価試験方法の 検 討,土木学会論文集 C,Vol.64,No.3,pp.712-717,2008. 3) 小野 丘, 三 田 地利 之: 粘 性 土の 軸対 称 三 軸応 力下 に お ける 凍結 ・ 融 解履 歴に つ い て, 土木 学 会 論文集, No.617/III-46,pp.275-282,1999. 4) 小野丘,小玉大樹,加藤幸輝:凍結・融解履歴を受ける正規圧密および過圧密飽和粘土の性質について, 土木学会論文集,No.743/III-64,pp.47-57,2003. 5) 中村大,鈴木輝之,後藤隆司,金学三,伊藤陽司,山下聡:凍結融解による土の透水係数及び間隙比の 変化,土木学会論文集 C,Vol.67,No.2,pp.264-275,2011. 6) 地盤工学会:地盤材料試験の方法と解説,二分冊の2,pp.667,2009. 7) 高田直俊,大島昭彦,坂本佳理:一面せん断定圧試験における供試体層厚の影響,第 31 回地盤工学研 究発表会講演集,pp.669-670,1996. 8) 住武人,大島昭彦,高田直俊,深見知亨:一面せん断定圧試験における供試体層厚の影響(第 2 報),土 木学会第 52 回年次学術講演会概要集,III-A,Vol.30,pp.60-61,1996. 9) 福田誠,青山清道,小川正二:凍結-融解を受けた土の強度低下,土木学会第 33 回年次学術講演会講 演概要集,pp.464-465,1978. 10) 長沢 徹 明, 梅 田安 治 :土 の 強さ に 及ぼ す 凍結 融 解過 程 の影 響 ,農 業 土木 学 会論 文 集,Vol.60,pp.19-25, 1975. 11) 青山清 道,小 川正二 ,福田 誠:凍 結-融 解を受 けた土 の力学 特性, 土木学 会第 34 回年次学 術 講演会 講. 演概要集,pp.77-78,1979.

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