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研 究 事 業 当 財 団 の 研 究 事 業 は 寄 生 虫 の 分 類 学 および 形 態 学 を 主 とした 研 究 活 動 が 主 体 である 日 本 寄 生 虫 学 会 をはじめ 諸 学 会 において 講 演 研 究 報 告 論 文 発 表 等 を 行 っている 他 方 長 年 継 続 し

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平 成 23 年 度 事 業 報 告 書

東京都目黒区下目黒 4 丁目 1 番 1 号

財 団 法 人 目黒寄生虫館

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1

研究事業

当財団の研究事業は寄生虫の分類学および形態学を主とした研究活動が主体である。日本寄生虫学会 をはじめ諸学会において講演・研究報告・論文発表等を行っている。他方、長年継続している目黒区内の 虫卵調査は、委託研究であると同時に、地域に貢献する活動としての側面も併せ持つものでもある。さらに は、日頃の研究成果や知識を基盤として他機関や広く一般に向けて助言・指導などを行っており、もって寄 生虫学の発展に寄与している。

Ⅰ. 研究活動

A. 論文 1. 小川和夫ら

1) Cardicola opisthorchis n. sp. (Trematoda: Aporocotylidae) from Pacific bluefin tuna Thunnus orientalis (Temminck & Schlegel, 1844) cultured in Japan.

Parasitology International, 60 (3), 307-312.

日本の養殖クロマグロの心臓に寄生する住血吸虫 Cardicola opisthorchis を新種として記載した。 2) Morphology and distribution of blood fluke eggs and associated pathology in the gills of cultured

Pacific bluefin tuna, Thunnus orientalis. Parasitology International, 61 (2), 242-249.

養殖クロマグロに寄生する住血吸虫 Cardicola orientalis と C. opisthorchis の虫卵は形態や鰓弁内の 集積部位が異なること、虫卵集積が鰓の血流を阻害していることを明らかにした。

3) Oral treatment of praziquantel as an effective control measure against blood fluke infection in Pacific bluefin tuna (Thunnus orientalis).

Aquaculture, 326-329, 15-19.

養殖クロマグロに寄生する住血吸虫の寄生に対してはプラジクアンテルの3日間連続経口投与が 有効であることを明らかにした。

4) Larval cestodes found in the skeletal muscle of cultured greater amberjack Seriola dumerili in Japan. Fish Pathology, 47(1), 33-36. 養殖カンパチの体側筋内に従来未知の四吻目条虫の幼虫が寄生していることを報告した。 2. 荒木 潤ら 1) <ミニ特集>アジア条虫症の1例。 病原微生物検出情報, 32(4), 14. 獨協医科大学越谷病院で診断された1アジア条虫症について報告した。

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2) 2010 年に関東地方で発生が相次いだアジア条虫について。 Clinical Parasitology, 22: 75-78.

平成 22 年に、日本では発生例のなかったアジア条虫の症例が相次ぎ、それについて感染源など の考察を行った。

3) Helminth fauna of a turtle species introduced in Japan, the red-eared slider turtle (Trachemys scripta elegans).

Research in Veterinary Science (2011), doi: 10. 1016/ j. rvsc. 2011. 10. 001

アメリカからペットとして持ち込まれ、いまや国内に土着しているアカミミガメの寄生虫を、東京近郊 の 2 箇所で調査した。その結果、単生類 2 種、吸虫類 3 種、線虫類 2 種の合計 7 種の蠕虫類が得ら れた。

3. 巖城 隆ら

1) Gastrointestinal parasites and associated pathological lesions in starving free-ranging African elephants.

South African Journal of Wildlife Research, 41(2): 167-172.

ケニアで旱魃のため死亡した多数の若いアフリカゾウから Grammocephalus clathratus、吸虫 Protofasciola robusta、および未同定の線虫が検出された。飢餓と脱水に加え、消化管内寄生虫によ る栄養失調が衰弱と死の原因となった。

B. 学会発表

1. 小川和夫ら

1) Control of parasitic diseases of fish in Japanese aquaculture.

Eighth International Symposium on Fish Parasites, Vina der Mar, Chile, 平成 23 年 9 月。

シンポジウムの招待講演者として、日本の魚類養殖における寄生虫病対策について講演した。 2) Control of blood fluke infections in cultured Pacific bluefin tuna, Thunnus orientalis.

Eighth International Symposium on Fish Parasites, Vina der Mar, Chile, 平成 23 年 9 月。 日本の養殖クロマグロの住血吸虫症の対策について講演した。 3) クロマグロ住血吸虫に対するプラジクアンテルの最低有効量と体内動態。 平成 24 年度日本魚病学会春季大会、東京、平成 24 年 3 月。 クロマグロの心臓に寄生する住血吸虫 Cardicola opisthorchis に対しては、プラジクアンテル 7.5mg/kg 以上の用量で 3 日間連続経口投与することによって完全な駆虫が確認された。薬剤は投 与 10 時間後に魚体内からほぼ消失し、24 時間後には検出されなかった。 4) アユの肝臓に寄生する線虫類。 平成 24 年度日本水産学会春季大会、東京、平成 24 年 3 月。 島根県内河川で漁獲されたアユの肝臓に見いだされた多数の結節様構造物を形成する線虫幼 虫 に つ い て 、 寄 生 状 況 、 形 態 、 分 類 学 的 位 置 に つ い て 検 討 し た 。 遺 伝 子 解 析 結 果 で は 、 Cucullanus 属の数種と 99%以上の相同性が確認された。

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3 5) アユ肝臓に寄生する線虫類の寄生状況。 平成 24 年度日本水産学会春季大会、東京、平成 24 年 3 月。 島根県内 6 水系 7 河川について調査を行い、3 河川のアユに寄生を確認した。1 尾あたりのシスト 数は平均で 39.8 個、最高は 502 個であった。放流アユ、海産アユどちらにも寄生がみられた。 2. 荒木 潤ら 1) サルの糞便と共に見つかった虫様異物。 獣医臨床寄生虫学研究会第 24 回研究発表会、東京、平成 23 年 6 月。 サルの飼育室で糞便の近くに白く細長い異物が見つかり、寄生虫が疑われた。透過処理による検 査では構造がつかめず、薄切染色標本を作り検査したところ、精液の固まったものと判定された。 2) 2010 年に関東地区で集団発生したアジア条虫症について。 第 22 回日本臨床寄生虫学会、東京、平成 23 年 7 月。 平成 22 年に、日本では発生例のなかったアジア条虫の症例が相次ぎ、それについて感染源など の考察を行った。 3) 沖縄と北海道から得られたロイコクロリディウム幼生。 第 80 回日本寄生虫学会大会、東京、平成 23 年 7 月。 沖縄産と北海道産のロイコクロリディウム幼生が揃った。幼生であるので形態では大小の差しか区 別できず、DNA による検査を試みたところ、両幼生に差異が認められ、別種と判定された。

4) ブルーギル(Lepomis macrochirus)に見つかった Eustrongylides 属幼線虫について。 第 71 回日本寄生虫学会東日本支部大会、東京、平成 23 年 10 月。 平成 23 年 4 月から利根川下流域、潮来周辺で漁獲されるブルーギルの寄生虫の検査で、赤い線 虫が見つかった。検査の結果 Eustrongylides 属線虫の幼虫であることが分かった。 3. 巖城 隆ら 1) アリに寄生する線虫 ~ メルミス類について。 獣医臨床寄生虫学研究会第 24 回研究発表会、東京、平成 23 年 6 月。 沖縄県で採集されたオオズアリから見つかった線虫について形態観察を行ない 、糸片虫科 Mermithidae の寄生期後幼虫と同定された。日頃、メルミス類にあまり触れる機会のない獣医寄生虫 学関係者にこの線虫類を紹介した。 2) ハヤブサの筋肉にみられた 2 種の顎口虫幼虫(寄生性線虫)。 日本鳥学会 2011 年度大会、大阪、平成 23 年 9 月。 熊本県で保護され死亡したハヤブサの筋肉に認められた被嚢線虫は、有棘顎口虫の第 3 期後期 幼虫、および日本顎口虫の第 3 期後期幼虫と同定された。ハヤブサから顎口虫幼虫が発見されたの は今回が初めてと考えられる。 3) 日本の野生鳥類にみられた寄生蠕虫類について。 第 17 回日本野生動物医学会大会、東京、平成 23 年 9 月。 昭和 58 年から平成 22 年に日本国内で保護後に死亡あるいは死体拾得され冷凍保管された野 生鳥類 33 種 60 羽について、主に消化管内の寄生蠕虫類を調べ、うち 22 種 33 羽から吸虫類 11

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4 種、条虫類 8 種、線虫類 14 種、鉤頭虫類 3 種(未同定種を含む)を検出した。 4) ネズミ盲腸蟯虫虫卵の隔離飼育室内の分布状況について。 第 31 回日本実験動物技術者協会九州支部研究発表会、鹿児島、平成 23 年 11 月。 実験用マウスの蟯虫の感染再発防止のために、蟯虫卵の飼育室内分布状況調査を飽和蔗糖液 による浮遊法または粘着テープ法で行った。その結果、マウスは使用済みの床敷き、ケージ、フタを 介して感染している可能性が高かった。 5) チュウシャクシギにみられた寄生蠕虫類について。 第 81 回日本寄生虫学会大会、兵庫、平成 24 年 3 月。 沖縄県で平成 20 年に死亡したチュウシャクシギの消化管から吸虫 4 種、線虫 3 種が検出され、 このうち 5 種が日本では初報告の属あるいは種であった。Pittacium 属は中国・南米のシギ・チドリ類 から報告されている種とは形態がかなり異なり、新種の可能性も含めて検討中である。 6) ニホンザルから見つかった吸虫 Ogmocotyle ailuri。 第 153 回日本獣医学会学術集会、埼玉、平成 24 年 3 月。 宮城県で平成 22 年に駆除されたニホンザルから検出された吸虫は Ogmocotyle ailuri と同定され た。野生ニホンザルからの検出は今回が初めてである。 C. 研究助成 1. 小川和夫 1) (独)日本学術振興会 科学研究費補助金 平成22~24年度 基盤研究(B) 「クロマグロ住血吸虫症の対策に向けての基礎研究」研究代表者 クロマグロ養殖が盛んになるにつれて顕在化してきた住血吸虫症の対策確立を目的として、鰓 弁に集積した虫卵の検査法を開発し、プラジクアンテル製剤(PZQ)の経口投与による駆虫試験を 実施した。また、in vitroにおいて心臓寄生のCardicola opisthorchisのPZQ耐性を測定した。

2. 巖城 隆 1) (独)日本学術振興会 科学研究費補助金 平成22~24年度 基盤研究(C) 「日本の野生鳥類の寄生虫相に関する調査と寄生虫相データベースの構築」 研究代表者 日本産野生鳥類の寄生虫相の調査のため、鳥類寄生虫を広く採集し形態学的観察により同定 を行うと共に、寄生虫の塩基配列データを解析し遺伝子データベースに登録する。さらに、従来の 日本産鳥類の寄生虫相データを整理・統合し、データベースを作成し公開する。 2) 厚生労働省 厚生労働科学研究費補助金 平成21~23年度 「新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究事業」(主任研究者 吉川泰弘) 研究協力者 野生キツネへの駆虫薬入りベイト散布によるエキノコックス症感染源対策の研究に関し、北海道 小清水町でのキツネの糞便の探索・採取と、キツネのエキノコックス流行状況の評価を担当した。

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Ⅱ. 委託研究

「砂場における寄生虫卵調査」 目黒区教育委員会の委託により行われている調査で、平成 23 年度は目黒区立の 3 小学校・2 中学校が 対象であった。平成 23 年 8 月 10 日と平成 24 年 2 月 2 日の 2 回、各施設の砂場とその付近から砂を採取 し、寄生虫卵の有無を調査した。その結果、1 施設の砂場から猫回虫卵が検出された。また、複数の施設で は砂場以外の構内で猫の糞便が見つり、猫回虫卵および毛細線虫卵と思われる虫卵が検出された。児童 が日常利用する場所に猫の糞便が見つかることから猫の侵入は明らかであり、砂場を含めた施設構内の糞 便による汚染には十分な注意が必要と思われる。運動・作業後の手洗いの励行などが必要であることを報 告書にまとめた。(荒木潤、巖城隆)

Ⅲ. その他の研究活動

A. 寄生虫に関する助言および指導 博物館来館者による質問,および電話で受けた質問等はそれぞれ105件、30件であった。一般から 依頼された寄生虫同定・異物鑑定は32件であった。そのほか、大学の修士論文(2大学2論文)、卒業 論文(2大学3論文)の作成に関して指導・助言を行なった。 B. 標本・文献の収集・貸出 1. 標本 収集数 寄生虫 80種(未同定種を含む) 140点 外部からの標本寄贈 27件 90点 外部への研究用標本貸出 2件 11点 2. 文献など 文献等の資料貸出は 20 件 22 点であった。当財団では図書・逐次刊行物の購入ないし寄贈によっ て、さらなる資料の充実を図っている。平成 23 年度に収集された図書・逐次刊行物の一例を次に示 す。これらの他にも、国内外の研究者・諸機関から多数の論文別刷の寄贈を受けた。 1) 図書

Fish Parasites: Pathobiology and Protection 購入 Echinostomes as experimental models for biological research 購入 Infectious diseases and pathology of reptiles : color atlas and text 購入 The Biology of Echinostomes: From the Molecule to the Community 購入 Die Saitenwürmer 購入 図説獣医寄生虫学 第 3 版 寄贈 Museums in Japan : selected 100 寄贈

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6 2) 逐次刊行物

The Journal of Parasitology Vol. 97 購入 Helminthological Abstracts Vol. 80 購入 Journal of Helminthology Vol. 85 購入 Systematic Parasitology Vol.78~80 購入 博物館研究 Vol. 46 購入 魚病研究 Vol. 46 寄贈 秋田医学 Vol.38 寄贈 動物園水族館雑誌 Vol. 52 寄贈 帝京医学雑誌 Vol.34 寄贈 水産総合研究センター研究報告 No.31~34 寄贈 The Pakistan Journal of Zoology Vol. 43 寄贈 The Korean Journal of Parasitology Vol. 49 寄贈

博物館事業

当財団の建物は 1 階と 2 階に常設展示室を設けており、設立以来、一貫して無料開館を継続してきた。常 設展示に加え、特別展示の企画・開催も年 1 回のペースで行っている。展示室の公開のみならず、学習会 の実施や資料の頒布などの幅広い啓蒙活動を通じて、広く一般に向けて寄生虫学に関する科学知識の普 及を図っている。さらに、博物館法で定義されている登録博物館という立場と責任から、博物館学芸員課程 を受講する実習生の受け入れにも積極的である。

Ⅰ. 展示活動

1. 開館日数および来館者数 平成 23 年度の開館日数は 310 日であった。来館者総数は約 63,600 名であり、1 日あたり約 205 名の換 算となる。昨年度とほぼ横ばいの傾向で来館者数が推移したといえる。 全来館者のうち、事前申込みを受けた見学者数は 2,023 名にのぼった。ただし、予約をせずに来館する 場合もあるため、団体見学の実態は必ずしも明確ではない。全体と比較して 3%程度という割合は、昨年度と 同様の傾向である。団体・グループ見学の一例を以下に示す。 都立瑞穂農芸高校 37 名 目黒第三中学校F組 17 名 世田谷美術館 26 名 東京学芸大学付属世田谷中学校 30 名 特定 NPO 法人 SUN 20 名 目黒区東山学童保育クラブ 57 名 新渡戸短期大学 56 名 自衛隊高等工科学校 3 教隊 1 区隊 28 名 慶應義塾中学部 21 名 東京電子専門学校臨床検査学科 45 名

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7 2. 特別展示 平成 23 年 4 月 29 日から 9 月 25 日まで「ツツガムシとつつが虫病」と題して、古くから東北地方の農村で 恐れられていたつつが虫病に関する特別展を実施した。パネルではつつが虫病の概要や風習、ツツガムシ の生活環等を解説し、顕微鏡やルーペを用いて実物標本を展示した。また、今回は新たな試みとして、詳 細を A4 版のリーフレットにまとめ、コーナーの傍らに設置したところ多数の来館者の目に留まるところとなっ た。なお、この企画には評議員の髙橋守氏の協力を仰いだ。 3. 展示室パネルおよび液浸標本の整備 1) 案内図 入口からすぐ左手に館内の案内図を新たに設置した。各展示の位置を記号で区分し、展示物を館内 の場所ごとに表示することで来館者の便宜を図るものとした。 2) 展示パネル「寄生虫の多様性」 1 階展示室は寄生虫学の総論的な内容を中心とする。平成 5 年のリニューアルオープン以来、入口の パネルでは大半の動物門が寄生虫を含むことを写真や図を用いた動物系統樹で示してきた。その後の 研究が進むにつれ、遺伝子情報に基づいた生物の系統解析や電子顕微鏡による微細構造研究は著し い進歩を遂げている。これらの研究を踏まえ、極力新しい情報を取り入れた寄生虫の系統図を作成し、 「寄生虫の多様性」と冠した大型パネルを作成し、平成 23 年 12 月に公開した。新しいパネルでは多くの 動物群で様々な動物が寄生虫として知られ、形態も寄生様式も多様であるということが示されている。な お、この展示更新にあたっては財団法人全国科学博物館振興財団の平成 23 年度全国科学系博物館 活動等助成事業による助成を受けた。 3) 展示パネル「人の寄生虫」 1 階展示室の奥に展示されている標記のパネルはかねてより大型標本瓶の露出展示が注目されてき たが、先の震災を受けて展示方法の見直しが喫緊の課題となっていた。展示業者との検討の結果、標 本瓶を内側にはめ込むよう設計されたパネルを新たに製作し、平成 23 年 9 月に公開した。更新にあたっ ては、これまで主として大型の寄生虫を展示していたのに対して、ヒトノミや鞭虫など比較的小型の寄生 虫も加えたことにより、人間の寄生虫も多様であることを示した。LED 照明を配してすっきりとしたパネル に仕上がり、来館者からも好評である。 4) 標本の配置換え 1 階中央の陳列ケースにはいろいろな動物に寄生する多種多様な寄生虫の実物標本が 100 本以上 並び、来館者の興味の対象となっている。新たに鰓尾類の一種やカワシンジュガイなどの展示も加わっ たため、それに伴って標本瓶の配置換えが行われた。 2 階展示室は寄生虫の生活史を中心に実物標本や写真を用いて展示解説を行っている。1 階の陳列 ケースの配置換えに伴い、2 階の陳列ケース内部も一部の標本が移動された。さらに展示解説のための キャプションも全体的に見直し、新たに作成したものが配置されている。

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Ⅱ. 教育普及活動

1. 体験学習会 平成 23 年 8 月 19・20 日、6 階生涯学習室において、小・中学生を対象に「魚の寄生虫を探そう!」を開 催した。サンマ、ホッケ、ウバガイを解剖して寄生虫を採集し、虫の名前を調べて標本をつくる作業を行った。 館内掲示および公式サイト上で参加者を募り、申し込んだ 10 名が参加した。 2. 博物館学芸員課程実習生の受け入れ 博物館学芸員資格取得のための実習生の受入れを随時行っている。実習生は日常的な業務に携わるこ とで博物館運営への理解を深めている。実習内容は日々の清掃や来館者対応に始まり、資料整備や展示 物の製作・加工、解剖実習など多岐に渡る。平成 23 年度は以下の 13 大学、計 18 名が参加した。 東京工芸大学 東京海洋大学 日本女子大学 聖心女子大学 東京農業大学 九州保健福祉大学 多摩美術大学 専修大学 帝京科学大学 武蔵野美術大学 八洲学園大学 麻布大学 東京大学 3. 教育用標本の頒布 昭和 50 年代に日本寄生虫学会からの委託により発足した「教育標本サプライセンター」を前身として、医 学系の大学や教育機関等を対象に寄生虫標本を販売している。平成 23 年度は 13 機関から依頼を受け、 寄生虫卵液浸標本 49 本、スライド標本(塗沫染色・組織薄切等)266 枚を販売した。

Ⅲ. 標本・図書・別刷の整備、電子情報化

1. 標本の整備と電子情報化 公式サイト上ではデータベース「目黒寄生虫館所蔵タイプ標本一覧」を随時更新している。平成 24 年 3 月時点における収録数は 1,187 種にのぼり、公開当初の 1,043 種と比べ 144 種が追加されたことになる。ま た、日本産哺乳類ならびに鳥類の寄生蠕虫類リストについても随時更新を続けている。 2. 図書・別刷等の整備と電子情報化 地下書庫に保管された蔵書 4,844 冊および学術雑誌 306 種のデータ入力・目録整備が完了した。また、 紙ベースで管理されていたネガフィルム約 1400 本・カラースライド約 2700 枚についても当年度中にパソコン 入力を終えた。これにより所蔵資料の活用がさらに活性化されることが期待される。さらに、従来図書カード で整備されてきた論文の別刷もパソコンによる入力を続けており、早い段階でのデータベース化を目指して いる。

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出版・広報事業

刊行物は事業活動報告を兼ねて関連研究機関や博物館に送付しており、希望する来館者には有償で 頒布している。当財団の事業活動に対してはマスコミからの取材申し込みも多いが、事前に内容を吟味した 上で対処している。 1. むしはむしでもはらのむし通信(広報誌) 年 1 回の頻度で刊行している広報誌(カラー20 頁)で、平成 23 年 12 月に第 191 号を刊行した。巻頭読 み物には富樫一巳氏(東京大学)から「松枯れ-マツを枯らすマツノザイセンチュウ」の寄稿を受けたほか、 更新した常設展示の解説および特別展「ツツガムシとつつが虫病」の実施記録などを掲載した。 さらに、平成 23 年 7 月には当広報誌の前身となった「目黒寄生虫館月報/ニュース」全 179 号を PDF フ ァイル化し、公式サイト上で無償公開を開始した。初期の研究報告や寄生虫学に関する多様なコラムなどが 掲載されており、財団の活動や歴史の紹介に留まらず、寄生虫学の啓蒙活動自体としても大きな意義をも つものである。 2. 目黒寄生虫館ガイドブックおよび寄生虫学関連書籍の頒布 展示ガイドブック和文版/英文版(カラー16 頁)を発売中である。館内の様子や展示物の解説、寄生虫に まつわるコラムを掲載している。また、館内では寄生虫学に特化した関連書籍の閲覧・頒布が可能となって おり、啓蒙活動の一助となっている。「寄生虫のふしぎ(技術評論社)」「寄生虫の奇妙な世界(誠文堂新光 社)」に代表される当館著作または監修の書籍をはじめとして十数種類を展開している。 3. ウェブサイト 公式サイト(http://www.kiseichu.org/)では目黒寄生虫館からの情報発信、すなわち事業内容や開館案内 等を紹介するページを設けている。また、法人運営の観点からもインターネットを用いたディスクロージャー が求められていることから、寄附行為や役員名簿の公表により財団の情報公開に努めている。 平成 23 年度の訪問者数は 243,363 アクセス(1 日平均 667 人)であった。月間 20,000 人以上が閲覧して いる換算となり、博物館に対する世間の関心はある程度得られているものと思われる。とりわけ、今年度は twitter など SNS サイトからのリンクが増えたことが顕著であった。近年ではインターネット上の口コミを通じて 様々に紹介がなされている。館外での話題性が高まることで、新たな見学者やリピーターの獲得が見込まれ る。 4. 取材対応 毎年様々なマスコミから取材や誌面掲載の依頼を受け、平成 23 年度も例年並みの計 50 件の申請があっ た。そのうち学術的要素の大きい取材や、博物館の周知に相応しいと判断される媒体 35 件について取材対 応または画像提供を行った。内訳はテレビ、ラジオ 7 件、新聞 2 件、雑誌・冊子類 16 件、ウェブサイト 10 件 であった。

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収益事業

1. オリジナルミュージアムグッズの委託販売 展示室 2 階のミュージアムショップは、いわば博物館における展示機能の延長空間と位置づけられる。当 財団では十年来、来館者のニーズに応える形でオリジナルグッズを販売してきた。創設者亀谷了が発見し た単生虫をデザインしたTシャツや、ロゴマークのフタゴムシをモチーフにした小物など、ユニークさから来館 記念に購入する見学者は多い。これらの販売収入は無料開館を続ける法人運営の中でも極めて重要な収 入源となっている。 また、昨年度から締結された在庫管理に関わる一連の業務委託の一環として、平成 23 年度から委託業 者のサイト上においてミュージアムグッズの通信販売が開始された。遠方で来館が難しい方への販売も可能 となり、ミュージアムグッズが博物館を超えて流通するようになった。従来に増して話題性が高まり、博物館全 体の知名度の向上や新たな見学者の獲得につながることが期待される。 2. 駐車場管理 当財団が基本財産として所有する神奈川県緑区の土地を整備し、駐車場収入を得てきた。当該土地は 長年に渡り博物館資料を保管する倉庫として利用してきたが、老朽化によって取り壊さざるをえなかった。し かし、駐車場管理という事業形態は本来の事業目的とは合致しないため、処分を承認する理事会・評議員 会の議決を経て、平成 24 年 2 月に売却した。土地の簿価分は基本財産に補填し、その他の売却益は今後 の公益活動に供するものとして文部科学省から基本財産一部処分の承認が得られたことによる。 3. 博物館に設置する自動販売機収入について、雑収入を計上した。

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庶務事項

Ⅰ. 理事会・評議員会開催

1) 平成 23 年度第 1 回定例理事会開催 開催日時 平成 23 年 6 月 19 日(日) 午後 1 時~2 時 開催場所 目黒寄生虫館 6 階 生涯学習室 理事数 10 名 出席理事数 10 名 (欠席なし) 下案を審議し、可決承認した。 第 1 号議案 平成 22 年度事業報告書案ならびに平成 22 年度収支決算書案の件 第 2 号議案 研究活動基金規程の改正案の件 第 3 号議案 科学研究費補助金事務取扱規程案の件 第 4 号議案 新制度移行に伴う当財団における最初の評議員の選任方法案の件 2) 平成 23 年度第 1 回定例評議員会開催 開催日時 平成 23 年 6 月 19 日(日) 午後 2 時~3 時 開催場所 目黒寄生虫館 6 階 生涯学習室 評議員数 10 名 出席評議員数 10 名 (欠席なし) 下案を審議し、可決承認した。 第 1 号議案 平成 22 年度事業報告書案ならびに平成 22 年度収支決算書案の件 第 2 号議案 研究活動基金規程の改正案の件 第 3 号議案 科学研究費補助金事務取扱規程案選の件 第 4 号議案 新制度移行に伴う当財団における最初の評議員の選任方法案の件 3) 平成 23 年度第 1 回臨時理事会開催 開催日時 平成 23 年 12 月 18 日(日) 午後 1 時~1 時 45 分 開催場所 目黒寄生虫館 6 階 生涯学習室 理事数 10 名 出席理事数 10 名 (欠席なし) 下案を審議し、可決承認した。 第 1 号議案 基本財産(土地)の処分の件

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12 4) 平成 23 年度第 1 回臨時評議員会開催 開催日時 平成 23 年 12 月 18 日(日) 午後 2 時~2 時 45 分 開催場所 目黒寄生虫館 6 階 生涯学習室 評議員数 10 名 出席評議員数 9 名 (欠席 1 名) 下案を審議し、可決承認した。 第 1 号議案 基本財産(土地)の処分の件 5) 平成 23 年度第 2 回定例理事会開催 開催日時 平成 24 年 3 月 10 日(土) 午後 1 時~2 時 開催場所 目黒寄生虫館 6 階 生涯学習室 理事数 10 名 出席理事数 9 名 (欠席 1 名) 下案を審議し、可決承認した。 第 1 号議案 基本財産の繰入(700 万円)承認の件 第 2 号議案 減価償却引当資産の繰入(600 万円)承認の件 第 3 号議案 平成 23 年度補正事業計画書案ならびに平成 23 年度補正収支予算書案の件 第 4 号議案 減価償却引当資産の取崩(1600 万円)承認の件 第 5 号議案 平成 24 年度事業計画書案ならびに平成 23 年度収支予算書案の件 6) 平成 23 年度第 2 回定例評議員会開催 開催日時 平成 24 年 3 月 10 日(土) 午後 2 時 30 分~3 時 30 分 開催場所 目黒寄生虫館 6 階 生涯学習室 評議員数 10 名 出席評議員数 9 名 (欠席 1 名) 下案を審議し、可決承認した。 第 1 号議案 基本財産の繰入(700 万円)承認の件 第 2 号議案 減価償却引当資産の繰入(600 万円)承認の件 第 3 号議案 平成 23 年度補正事業計画書案ならびに平成 23 年度補正収支予算書案の件 第 4 号議案 減価償却引当資産の取崩(1600 万円)承認の件 第 5 号議案 平成 24 年度事業計画書案ならびに平成 23 年度収支予算書案の件

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Ⅱ. 省庁および自治体等への届出事項、他

平成 23 年 4 月 1 日 平成 22 年度「国と特に密接な関係がある特例民法法人への該当性について」報告書 総務省・文部科学省 6 月 24 日 平成 22 年度事業報告書および収支決算書届 文部科学省 6 月 24 日 最初の評議員の選任方法に関する認可申請書 文部科学省 9 月 6 日 平成 23 年度「砂場の寄生虫卵調査」中間報告書 目黒区教育委員会 12 月 18 日 基本財産の一部処分承認申請書 文部科学省 平成 24 年 1 月 6 日 平成 23 年度特例民法法人概況調査票届 文部科学省 2 月 21 日 平成 23 年度「砂場の寄生虫卵調査」成績報告書 目黒区教育委員会 3 月 5 日 休日労働・時間外労働に関する協定書 品川労働基準監督署 3 月 14 日 平成 23 年度事業計画書および収支予算書の変更届 文部科学省 3 月 14 日 平成 24 年度事業計画書および収支予算書届 文部科学省 その他、各種調査書類等への回答 文部科学省等

Ⅲ. 省庁からの承認・認可、他

平成 23 年 7 月 19 日 最初の評議員の選任に関する理事の定めの認可 文部科学省 平成 24 年 1 月 31 日 基本財産の一部処分承認 文部科学省

Ⅳ. 人事

平成 23 年 4 月 1 日 小川和夫館長 着任 (平成 23 年 3 月 31 日 町田昌昭前館長の退任に伴う)

参照

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