経済学
第13回
注意事項
次回(7/14),小テストを行う. » 企業の生産費用と完全競争市場における生産決定について 復習用に,講義で使ったスライドをホームページにアップし ている. http://tomoinoue.web.fc2.com/index.html前回の復習
固定費用の水準を決めたときに導くことができる平均費用 曲線のことを,「短期の平均費用曲線」と呼ぶ. 企業は,長期的には,それぞれの生産水準に対して平均 費用を最小化する固定費用の水準を選ぶことができる. 各生産量に対して平均費用を最小化するように固定費用 が選ばれた場合の生産量と平均費用の関係は「長期の平 均費用曲線(LAC)」で表される.AC3 AC8 AC6 LAC A D C 費用
前回の復習
長期的には,生産者は生産量に応じて適切な固定費用を 選択し,その生産量においては,長期の平均費用曲線と 短期の費用曲線が一致する. ただし,急にその生産量が変化すると,そのときの短期の 平均費用曲線に従って費用が決まる. 固定費用を再調整し,新しい生産水準に対応したものに 変更するまでは,長期の平均費用曲線から外れる.前回の復習
生産量が拡大するにつれて長期の平均費用が減少する 場合,規模の経済性があるという. 生産量が拡大するにつれて長期の平均費用が増加する 場合,規模の不経済性があるという. 生産量が拡大しても長期の平均費用が変わらず一定の 場合,規模に対する収穫不変の状況にあるという. → このとき,長期の平均費用曲線は水平になる.企業の生産費用のまとめ
費用の測り方 定義 表記 短期 固定費用 生産量に依存せずかかる費用 FC 平均固定費用 生産物1単位につきかかる固定費用 AFC = FC/Q 長期と短期 可変費用 生産物に応じてかかる費用 VC 平均可変費用 生産物1単位につきかかる可変費用 AVC = VC/Q 総費用 固定費用(短期の場合)と可変費用を 足し合わせた費用 TC = FC + VC 平均費用 生産物1単位につきかかる総費用 AC = TC/Q 限界費用 もう1単位生産量を増やしたときの総費 用の増加額 MC 長期 長期の平均費用 各生産量での平均費用を最小にするよ うに固定費用を選んだ場合の平均費用 LAC前回の復習
生産者であろうと消費者であろうと,すべての市場参加者 が価格受容者である市場のことを完全競争市場と呼ぶ. » 自らの行動で財の市場価格を変えることができない市場参加者 のことを価格受容者(プライス・テイカー)と呼ぶ. 産業が完全競争となるための必要条件(3つ): ① その産業に多くの生産者がいて,どの生産者も大きな市場シェ アをもたない. ② どの生産者の生産物であっても,すべて同じである(同質財であ る)と消費者が認識している. ③ その産業には自由参入と自由退出の性質がある.本日の内容
生産と利潤
生産と利潤
あるトマト農家の例を考える. トマト産業は完全競争であり,トマトの価格は1kg=1,800 円であるとする. » このトマト農家は生産量にかかわらず1kg=1,800円で売ることが できる. 総費用をこのように仮定すると,利潤が求められる.
生産と利潤
トマトの数量 Q(kg) 総収入 TR(円) 総費用 TC(円) 利潤 TR-TC(円) 0 0 1,400 -1,400 1 1,800 3,000 -1,200 2 3,600 3,600 0 3 5,400 4,400 1,000 4 7,200 5,600 1,600 5 9,000 7,200 1,800 6 10,800 9,200 1,600 7 12,600 11,600 1,000生産と利潤
総収入(TR)=市場価格(P)×生産量(Q) » この例では,総収入=1,800×トマトの数量 利潤=総収入(TR)-総費用(TC) 生産量が5kgのときに,利潤が最大化されている. » 最大の利潤=1,800円生産と利潤
生産者(企業)にとって最適な生産量とは,利潤を最大に する生産量である. ある生産量のときに,もう1単位生産を増やして利潤が増 加すれば,最適な生産量はもっと多いということになる. 反対に,もう1単位生産を減らして利潤が増加すれば,最 適な生産量はもっと少ないということになる.生産と利潤
もう1単位生産量を増やしたときに生み出される追加的な 収入のことを限界収入(MR)という. もう1単位生産量を増やしたときの費用は限界費用(MC). 追加的に1単位生産を増やしたときの収入の変化(MR)と 費用の変化(MC)を比べることで,利潤の変化がわかる. よる収入の変化額 もう1単位の生産増に 生産量の変化量 総収入の変化額 限界収入 = =生産と利潤
MR>MCのときは,生産量を1単位増やしたときに得られる 収入の増加が費用の増加よりも大きいから,生産を増や すことによって利潤が増加する. MR<MCのときは,生産を1単位増やすと利潤が減少する (生産を1単位減らすと利潤が増加する). MR>MCのときには生産量を増やし,MR<MCのときには 生産量を減らすことで,利潤を大きくすることができる. 利潤が最大のときには,MR=MCとなっている.生産と利潤
限界収入(MR)が限界費用(MC)と等しくなる水準まで生
産すれば利潤を最大にできる. → 生産者の最適生産量ルール
生産と利潤
トマトの数量 Q 可変費用 VC 総費用 TC 限界費用 MC 限界収入 MR 利潤増加分 MR-MC 0 0 1,400 1,600 600 800 1,200 1,600 2,000 2,400 1,800 1,800 1,800 1,800 1,800 1,800 1,800 200 1,200 1,000 600 200 -200 -600 1 1,600 3,000 2 2,200 3,600 3 3,000 4,400 4 4,200 5,600 5 5,800 7,200 6 7,800 9,200 7 10,200 11,600生産と利潤
限界収入はどの生産水準でも1,800で一定. Q≦5 のとき,生産量が増えると利潤増加分はプラス. Q≧5 のとき,生産量が増えると利潤増加分はマイナス. Q=5 が利潤を最大にする生産量. → このとき,限界費用=1,800=市場価格である.生産と利潤
企業が価格受容者であるとき,利潤を最大化するには, 市場価格(P)と限界費用(MC)が等しくなるような生産量 を達成すればよい. 価格受容者である企業の最適生産量の下では,P = MC が成立している. » 価格受容者である企業にとって,生産量を変化させても市場価 格は変わらないから,限界収入は価格に等しくなる. » 限界収入曲線は市場価格と同じ高さの水平線になる. » 最適生産量ルールから,P = MR = MC となる.生産と利潤
企業は限界費用と価格が等しくなる水準まで生産を行う. ただし,生産を行うならば,の話. その前に,生産を行うか行わないかを決めなければならな い. そのために,生産を行うことが利益になるのはどのような場 合かを考える.生産と利潤
トマト農家(企業)で利潤が生じるか損失が生じるかは何に
よって決まるのか?
企業の最小平均費用より市場価格が高いか低いかによっ
生産と利潤
トマト農家の短期の平均費用と限界費用 トマトの数量 Q 総費用 TC 限界費用 MC 平均費用 AC 0 1,400 1,600 600 800 1,200 1,600 2,000 2,400 -1 3,000 3,000 2 3,600 1,800 3 4,400 1,467 4 5,600 1,400 5 7,200 1,440 6 9,200 1,533 7 11,600 1,6571,800 600
生産と利潤
MC AC 1,400 3,000 価格 1,000 利潤=TR-TC で計算できるため, » TR>TC → 企業は利潤を得る. » TR=TC → 企業の利潤はゼロ. » TR<TC → 企業は損失を被る. 生産量 Q で割り,生産量1単位あたりの利潤で考えると, » P>AC → TR>TC → 企業は利潤を得る. » P=AC → TR=TC → 企業の利潤はゼロ. » P<AC → TR<TC → 企業は損失を被る. AC P AC Q Q P Q TC Q TR Q 利潤 − = − × = − =
利潤
市場価格が1,800のとき
1,800 600 1 2 3 4 5 6 7 0 C MC 1,400 3,000 AC MR = P 1,440 E Z 利潤=TR-TC =P×Q-AC×Q =(P-AC)×Q この長さは,P-AC 数量 価格生産と利潤
市場価格が最小平均費用よりも高ければ利潤が発生し, 低ければ損失が発生する. » この企業の最小平均費用は,生産量が4のときの1,400である. 市場価格>最小平均費用ならば,利潤を生む生産水準 が存在する. このときに,限界費用と市場価格が等しくなる生産量を達 成すれば,利潤が最大になる. » 価格が1,800であれば,生産量5で最大利潤1,800となる.損失
市場価格が1,000のとき
1,000 600 1 2 3 4 5 6 7 0 C MC 1,400 3,000 AC MR = P 1,467 A Y 利潤=TR-TC =P×Q-AC×Q =(P-AC)×Q < 0 この長さは, AC-P=-(P-AC) 数量 価格生産と利潤
市場価格<最小平均費用ならば,利潤を生むような生産 水準は存在しない. どんな水準の生産量を達成しても,損失を被る. » 価格が1,000のときには,限界費用が価格と等しくなるように生産 しても(生産量を3としても)1,400の損失を被る. » それ以外の生産量を選んでも損失が大きくなるだけ.生産と利潤
企業の利潤がゼロになるときの市場価格は,企業が価格 受容者のときの損益分岐価格と呼ばれる. » 損益分岐価格=最小平均費用である. » 市場価格>損益分岐価格 → 企業が利潤を獲得. » 市場価格<損益分岐価格 → 企業が損失(マイナスの利潤) を被る. » この企業(トマト農家)の損益分岐価格は1,400となる. では,市場価格が損益分岐価格よりも低ければ,企業は 生産をやめるのか?生産と利潤
市場価格が損益分岐価格よりも低く,企業が損失を被っ ても,短期的には生産を続けた方がいい場合がある. 総収入<総費用でも,総収入>可変費用であれば,企 業は生産を行う. 生産をしてもしなくても固定費用は負担しなければならな いので,固定費用は,短期的な状況においての,生産を するかしないかの決定には影響しない.生産と利潤
生産をやめれば可変費用はゼロになるため,可変費用は 生産をするかしないかの判断に影響する. 生産しようがやめようが,どちらにしろ固定費用はかかるの で,総収入が可変費用よりも大きいか小さいかで生産する かしないかを決める.生産と利潤
トマト農家の短期の平均費用と平均可変費用 トマトの数量 Q 可変費用 VC 総費用 TC 平均可変費用 AVC 平均費用 AC 1 1,600 3,000 1,600 3,000 2 2,200 3,600 1,100 1,800 3 3,000 4,400 1,000 1,467 4 4,200 5,600 1,050 1,400 5 5,800 7,200 1,160 1,440 6 7,800 9,200 1,300 1,533 7 10,200 11,600 1,457 1,657 最小平均可変費用の点(AVC曲線の底の点A)では,平均 可変費用は1,000で,生産量は3である. 生産をするかしないかの短期的な決定について, ① 市場価格が最小平均可変費用よりも低いとき ② 市場価格が最小平均可変費用よりも高いか,または等しいとき の2つのケースについて考える.
生産と利潤
1,800 C MC 1,400 3,000 AC E 1,200 1,000 A AVC
生産と利潤
800 ① 数量 価格生産と利潤
① 市場価格が最小平均可変費用よりも低いとき » P<AVC ⇒ TR<VC → 企業は可変費用を回収できない. » このとき,企業は生産をやめる. 生産をやめれば可変費用はゼロになるため,この場合,生産をやめた方が 損失は小さくなる. » 最小平均可変費用は,短期的に企業が生産をやめる価格水準 に等しくなっている. → この価格水準を操業停止価格と呼ぶ. P×Q AVC×Q1,800 C MC 1,400 3,000 AC E 1,200 1,000 A AVC
生産と利潤
800 ② 数量 価格生産と利潤
② 市場価格が最小平均可変費用よりも高いか,または等し いとき 市場価格>最小平均可変費用の場合 » P=MCとなる生産量では,P>AVCとなる. → 企業は可変費用を上回る総収入を得る. » 企業は短期的には生産を続けるべきである. P=MCとなるような生産量を実現することで,利潤を最大化,もしくは損失を 最小化する.» 市場価格が損益分岐価格よりも高ければ,P=MCとなる生産量 を選択することで利潤が最大化する. » 市場価格が操業停止価格と損益分岐価格の間にあるとき,P= MCとなる生産量を選択することで損失が最小化する. 価格が最小平均費用よりも低いため,損失となる. しかし,価格が最小平均可変費用よりも高いため,P=MCとなる生産量で は可変費用分と固定費用分の一部を回収できる. 生産を続ける場合の損失 → 固定費用の未回収分 生産をやめる場合の損失 → 固定費用の全額 生産を続けた方が損失が小さい.
生産と利潤
生産と利潤
市場価格=最小平均可変費用の場合 » P=MCとなる生産量では,P=AVCとなる. → 企業は可変費用に等しい総収入を得る. » 企業はP=MCとなる生産量だけ生産してもいいし,まったく生産し なくてもいい. → どちらを選択しても,損失=固定費用となる.A