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英独仏における外国人問題への取り組み及びその課題に関する調査研究

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III. 英国における外国人問題への取り組みと課題

1.歴史的・社会的背景

英国は、かつて世界中に植民地を有する「日の沈まない帝国」と呼ばれ、植民地が 独立した後も、それらを英連邦(British Commonwealth of Nations)として統率してき た。これを背景に、かつての宗主国として英連邦の市民権保有者を受け入れてきた歴 史があり、長年の間、移民に対して多くの関心を払ってこなかったとされる。 英国における移民・外国人施策の特徴は、20 世紀前半における英連邦以外からの移 民規制、20 世紀後半における英連邦諸国も含めた規制強化、21 世紀に入ってからの国 際競争力向上のための高度技能者や熟練労働者を対象とした選択的規制緩和路線に大 別されると考えられる。 (1)英連邦以外からの移民規制 英国では、19 世紀のアイルランド人、19 世紀後半から 20 世紀初頭のユダヤ人の大 量流入を受けて、20 世紀初頭には 1905 年外国人法(Aliens Act)、1914 年国籍と外国 人の地位に関する法(British Nationality and Status of Aliens Act)、1914 年外国人制限 法(Aliens Registration Acts、1919 年改正)と、国籍や移民に関する英国の主要な法が 次々と制定された。

し か し 、 こ れ ら の 法 は 、 外 国 人 を 対 象 と し た も の で あ る た め 、 英 国 臣 民 ( British Subject)の身分を有する英連邦からの移民に対しては効力が及ばなかった。

(2)英連邦も含めての移民規制強化

1948 年英国国籍法(British Nationality Act)において、英連邦市民には、自動的に英 国における居住及び労働の権利が与えられた。そのため、経済発展につれて非熟練労 働力が必要とされた 1950 年代に、新英連邦諸国(1945 年以降に独立した旧植民地国、 具体的には西インド諸島、インド、パキスタン等)から大量の移民が流入した結果、 移民と以前からの英国民の間で摩擦が発生するようになった。1958 年に人種暴動が発 生したことを契機として 1962 年英連邦移民法(Commonwealth Immigrants Act)が成立、 労働許可(Work Permit)制度の導入により英連邦諸国からの移民にも制限が課され、 以降、漸次、受入の厳格化が進んでいる。 既存の法を整理して成立した 1971 年移民法(Immigration Act)では、居住権(Right of Abode)の有無による移民の区別が設けられ、自身かいずれかの親が本土生ま れ で ある者に限り居住権が付与されたことで、単純労働目的の移民が減少したとされる。 さらに、家族呼び寄せによる入国が抜け穴となっているとの指摘を受けて、1981 年英 国国籍法(British Nationality Act)では、両親のいずれもが本土生まれである場合を除 き、自身が本土生まれであっても自動的には市民権が付与されないこととなり、英国 への移民の門戸はより狭いものとなった。

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(3)移民政策の転換―高度技能者や熟練労働者を対象とした選択的規制緩和― 近年における経済成長の持続と、高齢化に伴う労働力人口の不足は、失業率の低下 につながり、専門分野の技能労働者、熟練労働者だけでなく、非熟練労働者について も、深刻な労働力不足につながった。これを受けて 2000 年に労働許可制度を改正、2001 年に開始して 30 年ぶりに移民規制を緩和した。さらに国際競争力維持・向上のため、 2002 年には高度技能者を対象とした「高度技能移民プログラム(Highly Skilled Migrant Programme; HSMP)」を導入する等、英国でも高度技能者や熟練労働者を対象に、移 民に対する規制の緩和措置をとりはじめた。 また、時々の需要にあわせて必要な制度を策定していたため、受入区分が巨大で複 雑なものとなった4ことで、入国審査官の判断の統一や、手続きの簡素化を課題として 抱えている。そこで、2005 年には国境管理5箇年計画を策定し、先端技術の活用や、 受入・在留制度の簡素化、客観性の向上、管理の強化等を進めている。 図表- 16 英国における移民政策関係の主要な法と近年の施策の変遷 年 名称 1905 外国人法(Aliens Act) ※就労が不可能になった段階で国外退去

1914 国籍と外国人の地位に関する法(British Nationality and Status of Aliens Act)

※英国国籍と外国人の地位を規定

1914 外国人制限法(Aliens Registration Acts)

※出入国管理の強化

1919 外国人制限法(Aliens Registration Acts)

※英連邦以外からの移民に対する規制強化

1948 英国国籍法(British Nationality Act)

※英連邦市民に居住と労働の権利を自動付与

1962 英連邦移民法(Commonwealth Immigrants Act)

※英連邦諸国からの移民も規制対象として労働許可制度導入。以降、漸次受入厳格化

1971 移民法(Immigration Act)

※既存の法律を整理統合し、居住権の有無による移民規制

1981 英国国籍法(British Nationality Act)

※市民権の自動付与中止 2000 労働許可制度の改正 ※技能労働者不足を補うため、30 年ぶりに移民規制を緩和 2002 高度技能移民プログラム(HSMP)の導入 ※高度技能者受入拡大のため、ポイント制度の導入 2003 高度技能移民プログラム(HSMP)の見直し ※高度技能者受入拡大のため、基準点を緩和

「国境管理(Controlling our borders)」-国境管理5箇年計画 ※入国管理行政の課題と改革方針の公表

2005

受入制度見直し案「選択的受入(Sellective Admission)」

※5箇年計画の方針に沿って、制度の単純化やポイント制度の導入案を提示 議会討議資料「ポイント制度(A Points-Based System)」

※「選択的受入」に対する意見をふまえて導入される、新しい受入制度の説明 2006 HSMPの改正 ※ポイント制度の第1区分(Tier1)に対応した点数制度に改正 資料)英国内務省移民国籍局資料等より作成 4

英国内務省「Selective Admission: Making Migration Work for Britain」(2005 年7月)には、受入区分は 70 種類を上回るとの記述がある。

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なお、近年の政策転換をふまえ、本調査の調査対象である議会討議資料(Command Paper)「ポイント制度」に関連する動きを整理すると、次図のようになる。 図表- 17 ポイント制度の変更と検討・計画に関連する文書の流れ 2 0 0 2 年 2 0 0 3 年 2 0 0 5 年 2 0 0 6 年 制 度 変 更 関 連 文 書 高度技能移民プ ロ グラ ム ( H S MP ) の導入 国境管理5 箇年計画 「 選択的受入」 「 ポイ ン ト 制度」議会討議資料 H S MP の基準点見直し ( 緩和) H S MP に新配点表導入 資料)英国内務省移民国籍局資料等より作成

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2.外国人問題の現状

(1)基本的政策・態度

英国における基本的な移民政策は、国際競争力の向上のために高度技能者を積極的 に受け入れるとともに、非熟練労働者については原則として受け入れないというもの である。

ただし、欧州経済地域(European Economic Area; EEA)協定5

によって、EEA域内 では人の移動の自由が原則として認められているため、EEA諸国市民は非熟練労働 者受入政策の例外となっている。英国は、2004 年欧州連合(European Union; EU)新 規加盟国のうち東欧8か国(Accession 8; A8)からも労働力を受け入れており6、非熟 練労働者を受け入れない措置は、事実上、EEA諸国以外からの移民を制限するもの となっている。 A 移民の定義 英国では、移民(international migration)の定義は、国際連合の定義(到着以前に1 年間以上外国に在住していた者のうち、入国時に1年間以上の滞在意図を表明した者) に対応7 している。そのため、英国籍者であっても移民に含まれる場合がある。 なお、国籍は基本的に生地主義によっており、両親が英国籍か定住者である英国出 生者、両親が血統以外の理由で英国籍を有する海外出生者は、英国籍を取得できる。 B 移民や外国人に対する基本的態度 近年は大幅な移民流入超過の状態にあるが、失業率は長年低下を続け、直近も低い 水準で推移している。そのため、移民と失業を結びつけた議論は多くなく、移民の多 い地域は豊かな地域と認識されることも多い。犯罪件数も減少しており、移民と犯罪 を関連付けた議論も多くない。 歴史的・社会的背景で述べたように、英国は長年の間移民受入国家であり続けたこ と、また主要な流入元が英連邦諸国であったことから、移民側に英国に対する理解や 尊敬もあった。そのため、移民を社会的統合する必要性が大陸諸国に比べて高くなく、 必ずしも英国への同化を求めないとする考え方が主流であった。 ただし、近年の流入者は東欧諸国をはじめ英連邦以外の国々が中心となっており、 状況は少しずつ変化しつつある。また、2005 年のロンドンテロ事件の犯人が、移民子 孫の英国人であったことを受け、英国人らしさ(Britishness)とは何かとする議論が発 生している。 5

EUと欧州自由貿易連合(European Free Trade Association; EFTA)諸 国(除スイス)の協定。スイスに 対しても、二国間協定(EC-Swiss Bilateral Agreements of 1999)によって、人の移動の自由は認められ ており、「ポイント制度」に関連した一連の文書には記載はないが、同様に取り扱われる。

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2004 年以降のEU新規加盟国(除マルタ、キプロス)に対しては労働者の移動に移行措置が認められ ているが、英国は 2007 年新規加盟のブルガリアとルーマニアに対してのみ移行措置を適用している。

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(2)統計からみた移民の現状

統計に基づき、英国の近年の移民の現状を整理する。

通常は、いずれの国においても、出入国管理官の許可がなければ入国できないのが 大原則であるが、英国の出入国統計には、EEA諸国の市民の移動と、共通旅行区域 (Common Travel Area)協定に基づいたアイルランドとの移動において例外が存在す る。その上、英国においては、市民や在留外国人に対する普遍的強制的な登録制度が なく、ほかの欧州諸国でみられるような、登録に基づいた網羅的な統計が作成できな い。そのため、国際移動統計も推定に基づいているが、共通旅行区域が対象に含まれ ていないため、最も重要な移民送出国と考えられるアイルランドからの移民統計が不 十分となっている。 これに加えて、法や慣行の変化に伴い、統計上の用語の定義も頻繁に変更されるこ とから、さまざまな論文、文献等においても統計からの実態把握の困難さが指摘され ている8ことにも留意が必要である。 A 流入 近年の英国では移民の流入数が大幅に増加して 2004 年には 58 万人に達しており、 近年の流入水準は史上最大といわれている。 図表- 18 英国における移民流入・流出数の推移 0 1 0 0 2 0 0 3 0 0 4 0 0 5 0 0 6 0 0 7 0 0 1 9 9 5 1 9 9 6 1 9 9 7 1 9 9 8 1 9 9 9 2 0 0 0 2 0 0 1 2 0 0 2 2 0 0 3 2 0 0 4 (千人) 流入(In flo w ) 流出(O u tflo w ) 増減(n et flo w ) (年) 資料)英国国立統計局「Control of Immigration: Statistics United Kingdom」(2006 年8月)より作成

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David A Coleman(福田亘考、千年よしみ訳)「英国の移民政策」『人口問題研究』55-4(平成 11 年 12 月)国立社会保障・人口問題研究所等

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近年の失業率は 1998 年(6.3%)から 2004 年(4.8%)までの間、低下基調であった。 図表- 19 英国における失業率の推移 4 .8 5 .0 5 .2 5 .1 5 .5 6 .0 6 .3 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 0 1 9 9 8 1 9 9 9 2 0 0 0 2 0 0 1 2 0 0 2 2 0 0 3 2 0 0 4 (%) (年) 資料)国際通貨基金(IMF)「World Economic Outlook」(2006 年)

B 在留 英国における移民出身国は、地理的に近接しつながりも深いアイルランドが 12.9% を占めて最も多く、英連邦諸国からの移民も多い。しかし、米国、独国、仏国等の英 連 邦 諸 国 以 外 の 先 進 国 も 上 位 に あ り 、 ま た 国 単 位 で の 移 民 数 が 少 な い 「 そ の 他 」 が 44.1%を占め、多国籍化が進んでいることが特徴である。 図表- 20 英国における移民出身国(2004年) アイルランド, 1 2 .9 % インド, 6 .0 % アメリカ, 4 .7 % イタリア, 4 .2 % ドイツ, 3 .4 % フランス, 3 .3 % 南アフリカ, 3 .2 % パキスタン, 3 .0 % ポルトガル, 2 .9 % オーストラリア, 2 .8 % ジンバブエ, 2 .6 % バングラディッシュ, 2 .4 % ポーランド, 1 .7 % ナイジェリア, 1 .5 % スペイン, 1 .4 % その他, 4 4 .1 %

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移民の出身地域としては、歴史的経緯から英連邦諸国の出身者が多いが、近年の流 入状況をみるとEU諸国の出身者が増加しており、2003 年の 64 千人が 2004 年には 117.3 千人と 1.83 倍となっている。その中心はA8であり、特にポーランドからの移 民が多い。 図表- 21 英国における国籍別移民流入・流出数(2004年) -1 5 0 -1 0 0 -5 0 0 5 0 1 0 0 1 5 0 2 0 0 2 5 0 英国 EU諸国 英連邦諸国 そのほか 流入 流出 増減 (千人)

資料)英国国立統計局「Control of Immigration: Statistics United Kingdom」(2006 年8月)より作成 図表- 22 東欧8か国(A8)の労働者による登録申請者数(2006年6月時点) 0 5 0 1 0 0 1 5 0 2 0 0 2 5 0 3 0 0 チェコ エストニア ハンガリー ラトビア リトアニア ポーランド スロバキア スロベニア (千人)

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英国人口に比して、移民の年齢構成は生産年齢(18~49 歳)の占める比率が高く、 移民は労働力人口の増加に寄与しているとされる。 また、職種構成をみると、1998~2003 年に流入した移民の 43.4%が高度技能の業務 に就き、22.7%が簡易業務に従事しているが、これは英国全体での数字とほぼ同程度 である。しかし、2004 年にEUに新規加盟した国から流入した移民だけでみると、高 度技能の業務の比率は 10.9%であり、簡易業務が 61.8%である。 図表- 23 英国における移民の年齢別・職種別構成 人口構成 2 0 0 6 年 第1四半期 1 9 9 8 -2 0 0 3 年 に来た移民 2 0 0 4 -2 0 0 5 年 に来た移民 2 0 0 4 -2 0 0 5 年に 新規EU加盟国から 来た移民 総数(千人) 5 8 ,9 8 7 1 ,4 3 4 8 1 5 2 0 0 1 8 -2 4 歳 5 ,2 6 7 1 9 9 1 9 6 6 6 8 .9 % 1 3 .9 % 2 4 .0 % 3 3 .2 % 2 5 -3 4 歳 7 ,6 3 8 5 9 9 2 8 9 7 8 1 2 .9 % 4 1 .8 % 3 5 .5 % 3 8 .8 % 3 5 -4 9 歳 1 3 ,1 3 2 3 2 0 1 2 4 2 4 2 2 .3 % 2 2 .3 % 1 5 .2 % 1 2 .1 % 生産年齢人口 3 6 ,7 2 3 1 ,1 8 3 6 5 0 1 7 6 6 2 .3 % 8 2 .5 % 7 9 .7 % 8 7 .8 % 1 )生産年齢人口のうち、労働力人口に該当し ないフルタイムの学生 1 ,8 4 8 1 0 3 7 9 ※3 生産年齢人口に占める% 5 .0 % 8 .7 % 1 2 .2 % 2 )生産年齢人口のうち就業者 2 7 ,3 3 2 7 7 6 4 1 2 1 4 2 生産年齢人口に占める% 7 4 .4 % 6 5 .6 % 6 3 .5 % 8 0 .9 %  a :専門的・管理的業務(高度技能)※1 1 1 ,6 0 0 3 3 7 1 4 6 1 5 就業者に占める% 4 2 .4 % 4 3 .4 % 3 5 .3 % 1 0 .9 %  b :中間的業務 1 0 ,5 7 7 2 6 3 1 1 5 3 9 就業者に占める% 3 8 .6 % 3 3 .9 % 2 7 .9 % 2 7 .3 %  c:加工製造・機械技師等(簡易業務) 5 ,1 7 4 1 7 6 1 5 2 8 8 就業者に占める% 1 8 .9 % 2 2 .7 % 3 6 .8 % 6 1 .8 % 平均給与(£/週)  a :専門的・管理的業務(高度技能)※1 , 2 5 8 2 6 3 1 6 2 0 3 1 7   各カテゴリーの平均の標準偏差 ※4 5 .3 4 5 .9 5 8 .8 6 3 .7  b :中間的業務 2 6 6 2 9 6 2 4 3 2 2 4   各カテゴリーの平均の標準偏差 ※4 2 .6 1 7 .4 1 8 .0 2 2 .0  c:加工製造・機械技師等(簡易業務) ※2 2 5 2 2 4 5 2 3 3 2 3 8   各カテゴリーの平均の標準偏差 ※4 3 .7 1 6 .8 1 6 .3 1 7 .4 外国人移民 注釈)※1:専門職に関連・付随する職業を含む ※2:雇用されており生産年齢にある者 ※3:サンプル数が小さすぎるため省略 ※4:各カテゴリーの構成や統計調査上の階層を考慮せず重み付けした平均値の標準誤差を示す 資料)英国内務省移民国籍局資料

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(3)施策・制度 A 出入国管理 EEA諸国以外の国々の市民が6か月以上滞在する場合は、事前に入国査証(Entry Clearance)を取得しなくてはならない。入国査証申請の9割超が就業や事業等の労働 に関連する非定住目的、残りが定住者の家族等の定住目的として位置付けられている。 労働可能な入国査証の代表的なものとしては下表のようなものが挙げられる。 図表- 24 入国査証(Entry Clearance)による代表的な労働者受入制度 制度名 対象 オペア(Au Pair) 住み込み家事手伝いとして英語を学ぶ 17~27 歳の独身者 経営者 £200 千以上の自己資金を投資して、国内労働者2人以上の 雇用を生み出す経営者 ○高度技能移民プログラム(HSMP) 学歴、職歴、年収、業績、特別加点の5つの分野での獲得点 数が規程の得点を上回る高度技能人材 起業家 科学技術分野関連事業を起ち上げようとする起業家 投資家 £百万以上の自己資金を投資する投資家 ユース・エクスチェンジ・スキーム 旅行に付随の範囲で単純労働する 17~27 歳の英連邦市民 科学・工学科目修了者スキーム 認定教育機関において工学等を修了した留学生 代表駐在員 国外企業の支店設立準備駐在員(1名のみ) ●季節農業等労働者制度(SAWS) 季節農業労働に従事する者 英国由来外国人(UK Ancestry) 英国出生した祖父又は祖母を持つ 17 歳以上の英連邦出身者 注釈)制度名の冒頭●は数量割当制度、○はポイント制度 資料)英国内務省移民国籍局資料等より作成

◆高度技能移民プログラム(Highly Skilled Migrant Programme; HSMP)

本調査の主要な関心である、英国におけるポイント制度に基づいた移民プログラム は、現在、HSMPのみである。HSMPについては後述するが、2006 年 11 月に配 点表が見直され、12 月から新基準で実施されている。

◆季節農業等労働者制度(Seasonal Agricultural Workers’ Scheme; SAWS) EEA諸国以外に居住する 18 歳以上の全日制学生(ルーマニアとブルガリア国籍者 は学生でなくとも可)が季節農業労働に従事するために入国することを許可する仕組 みで、数量割当制(quota-based)である。 2007 年の割当は 16,250 人だが、EU加盟国でありながら労働者の移動に対する移行 措置の対象となっているルーマニアとブルガリアに、うち4割が割り当てられる。ま た、2008 年以降は全てがこの2か国に割り当てられる予定となっており、この2か国 の移行措置が終了する 2010 年末をもって制度も終了する。 英国内務省移民国籍局からの委託を受けたオペレーターによって運営される。労働 者は農業労働者や飼育者として派遣先の農場でのみ労働することが認められ、5週間 ~半年の在留が認められるが、期間が終了次第に出国しなくてはならない。

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外国人労働者については、入国査証によるほか、雇用主が申請する労働許可制度に よる受入がある。労働許可の申請にあたっては、指定された労働力不足業種等を除き、 雇用者は労働市場テスト(Resident Labour Market Test)によって、適切な広告媒体に 4週間募集広告を掲載し、EEA諸国の労働者では代替できないことを証明する必要 がある。また、労働許可の申請が受理された場合、別途、入国査証等の所定の在留許 可を得る必要がある。 図表- 25 労働許可証(Work Permit)による代表的な労働者受入制度 制度名 対象 ビジネス及び商務 企業内転勤、役員級、対英投資者、労働力不足業種 資格能力を要求する職(労働市場テスト必要) 職業訓練・研修制度 職業訓練や研修を目的とするEEA域外出身者 スポーツ及び芸能 一定の技能を有する芸能人、スポーツ選手(原則労働市場テスト必要) インターンシップ 以前に同じ雇用主でインターンシップを受けたことがない学生 ●業種別割当制(SBS) 食品製造業に就くブルガリアとルーマニアからの単純労働者 注釈)制度名の冒頭●は数量割当制度 資料)英国内務省移民国籍局資料等より作成 B 在留管理 入国後に滞在理由や期間等に変更があった場合は、英国内務省移民国籍局に居住許 可証(UK Residence Permit)を申請することになるが、外国人登録のような在留管理 的制度は一部の例外を除き存在しない。 一部の例外とは、当局の指定した要注意国(旧共産諸国及び中東や南米のテロ頻発 国)からの移民を対象とした登録制度と、A8を対象とした労働者登録制度(Worker Registration Scheme; WRS)であり、いずれも日本人は対象となっていない。 C 社会的統合 入 国 時 に 英 語 力 を 要 求 す る ほ か 、 難 民 に 対 し て は 個 人 統 合 プ ロ グ ラ ム ( Personal Integration Programme)等を用いて社会的統合が円滑に進むように配慮しているが、一 般の移民については、歴史的経緯からも英国は社会的統合の優先度が低い。 (4)運用組織体制

英 国 で は 、 英 国 内 務 省 ( Home Office)の部局 である移民 国籍局(Immigration and Nationality Directorate; IND)において移民問題の政策・施策レベルの決定が行われる。 社会的統合の実施にあたっては、地方政府への委託のほか、英国お得意の公民連携 事業(Public Private Partnership; PPP)の枠組みによる民間委託も活用されており、そ の中心となるのは慈善団体(Charity)である。

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図表- 26 英国における外国人問題の運用組織体制の概略

内務省移民国籍局 (Immigration and Nationality Directorate, Home Office) 移民受入、在留管理、社会統合の政策・施策の検討 中央政府 移民受入 移民の定義:国際連合の定義に準じる (到着以前に1年間以上外国に在住しており、入国 時に1年間以上の滞在意図を表明した者) ※英国籍者であっても移民の定義にあてはまる場 合がある 在留管理 地方政府 民間 地方自治体 一般的な行政サービスの一環として、教育、住宅を提供 中央政府からの委託による施策の実施 スコットランド、ウェールズ 一定の自治権を有し、独立した議会・政府等 によって異なる内政方針 民間団体 競争入札等による中央政府からの受託によって事業を 実施 慈善団体の場合は、企業や個人の寄付金を活用して、 団体の目的に応じた独自活動も実施 社会統合 PPPの枠組み等によって、実施段階は委託 政策・施策の決定においては、移民受入、在留管理、 社会統合の全てについて、中央政府が主体だが、実施 は、地方自治体や民間団体への委託によっている。

A 英国内務省移民国籍局(Immigration and Nationality Directorate; IND) ロンドン郊外の Croydon に所在し、帰化、難民申請に加えて移民に係る問題を扱い、 外国人問題、移民問題を所管している。移民国籍局は8部局で構成されている。 B 慈善団体(Charity) 英国の民間非営利部門(Voluntary Sector)の主体は慈善団体と呼ばれ、我が国の公 益法人や公益信託、特定非営利活動法人(NPO)に相当する。広義には、政党、労 働組合、クラブ等も含まれ、関心、活動範囲や組織構造も多岐・多様である。 慈善団体として認められるには、組織が私的利益のためでなく、公的利益のための 目的を持つことが必須要件である。慈善団体の登録、規制、監査等の権限を有するの は、慈善団体委員会(Charity Commission)と呼ばれる政府部門の組織であり、登録 されれば、各種税制において優遇措置を受けることができる。

◆ASI(Action for Social Integration)の場合

慈善団体であるASI(Action for Social Integration)は、ロンドン郊外の Edmonton Green に立地する有限責任の会社組織(Private Limited Company by guarantee)で、難民 や社会的少数者の生活に対する支援を行うことを主目的としている。英国には同様の 活動を行う団体は多数あるが、多くは国別・地域別等で特定の社会的少数者を対象と した活動であり、ASIは国・地域を横断的に対象としている点で特徴がある。

平均的な慈善団体は、公的資金からの財源がおよそ半分、個人・企業等の民間資金 からの財源が半分とのことだが、ASIでは、中央政府による社会的統合政策に対応 した事業提案の募集(Call for Proposal)に対して、適切な事業提案を行い受託するこ とで毎年の活動資金の 35%を確保しているほか、宝くじ基金からの活動資金が同程度 あることから、平均的な慈善団体に比べると公的資金の占める割合が高い。

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3.課題・問題点と対応

(1)課題・問題点 国境管理5箇年計画、「選択的受入」から整理すると、英国において大きな課題と されているのは、受入制度の簡素化、労働許可と在留許可の一本化、受入判断の客観 性の担保、強力な在留管理の実施の4点である。 A 受入制度の簡素化 その時々の需要にあわせて必要な制度を策定していたため、受入制度の仕組みが膨 大な数になり、さらに、相次ぐ制度の改編で、制度そのものが極度に複雑化している。 受入制度の簡素化を通じて、英国の移民政策全般の方針を明確にし、その目的を果 たすことができる柔軟な制度を構築する必要がある。 B 労働許可と在留許可の一本化 現状は、労働許可を取得した後に、指定の在留許可を取得する必要があるが、受入 制度の簡素化に対応して、5種類の区分の在留許可への一本化が提案されている。 なお、国境管理5箇年計画の時点では、4種類に区分することが提案されていたが、 「選択的受入」の時点で一時的労働者から学生が独立し、以降は5種類となっている。 C 受入判断の客観性の担保 制度が複雑化したことを受けて、入国管理官による可否の判断も難易度が高まって おり、その判断も主観的なものとなってきている。 これに対応して、簡素化された各区分に対する基準の明確化、客観性の担保のため、 ポイント制度の導入が提案されている。 D 強力な在留管理の実施 外国人登録制度等の強力な在留管理制度を有しておらず、管理がいきとどかない。 そのため、保証人制度の導入により、雇用者や大学による外国人管理の仕組みが提 案されている。 (2)対応 上記の課題A~Cに対しては受入制度の改善として、受入区分の簡素化とポイント制 度を導入するとして対応が進められている。同じくDは在留管理の改善として、保証 人制度を導入するとして対応が検討されている。

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A 受入制度の改善-受入区分の簡素化とポイント制度の導入 a) 改善の方針 今後、英国における就業、研修、就学等を想定した受入制度は、原則として9 全てポ イント制度が導入される方針であり、受入管理システムの中心となる制度である。 ポイント制度は自国労働市場へのアクセス規制の一種で、受入基準の客観性の高い 制度であって、主として高度技能者の受入に用いられている。 英国でも 2002 年に高度技能者を対象とした移民プログラムHSMPとしてポイン ト制度が導入されているが、英国内務省では、2005 年 7 月の「選択的受入」での提案 内容に対して、33 問のアンケートを実施し、165 雇用者と 130 大学等からの意見を聴 取した上で、「ポイント制度」を発表している。このアンケートでの代表的な意見は 下記のようなものである。 図表- 27 「選択的受入」におけるポイント制度の提案に集まった代表的な意見 ■第1区分と第2区分は技能労働者としてまとめてしまっても良いのではないか。 ■特に医療部門を想定して、第3区分(一般労働者)であっても英語力を必要とすべき。 ■転校や転学科する際に、学生が毎回申請しなくても良いようにすべき。 ■一時的労働者が技能労働者に転換する際に、帰国を条件としないようにすべき。

資料)英国内務省移民国籍局「A Points-Based System: Making Migration Work for Britain」(2006 年)

この議論をふまえて 2006 年3月に公表された「ポイント制度」に沿って 11 月には 配点表が見直され、12 月から新しい基準で実施された。第2区分での実施は 2008 年 からの予定で、その他の区分に対しても段階的に導入される予定である。 「ポイント制度」が公表されてからの新聞の論調や慈善団体の意見等では、旧制度 でHSMPの適用を受けた移民が、新制度では資格を延長できない可能性が危惧10 れているとのことである。その理由のひとつとしては、旧制度では配偶者の学位や就 労経験等も点数化されていたが、新制度ではこれらは得点の対象とならないことが挙 げられる。また、旧制度では出身国の経済力や年齢に応じて配点表が異なっていたが、 これが一本化されたことで、やはり得点を獲得できなくなる場合があることも考えら れる。 9 英国由来外国人(UK Ancestry)等の特殊な位置付けの在留資格は対象外となる。 10

Joint Council for the Welfare of Immigrants「High Skilled migrants left in the lurch again by Home Office」 (2006 年 11 月)等

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b) 仕組みの概略 外国人は、技術・資格等により高度技能者、技能労働者、一般労働者、学生、一時 的労働者の5つに区分され、区分ごとに用意された点数表から点数を計算し、条件を 充足していることを客観的に確認した上で申請を行うことになる。 これまでは、雇用者による労働許可申請・取得後に在留許可を申請する手順だった が、今後は自己申告制度である在留許可申請に一本化されるため、手続きの簡素化が 図られる。 図表- 28 ポイント制度における申請受入区分 区分 要約 説明 第1区分 (Tier1) 高度技能者 学識者、研究者、投資家、起業家等 第2区分 (Tier2) 技能労働者 英国内で充足できない分野の技能労働者、企業内転勤等 第3区分 (Tier3) 一般労働者 短期的な労働力不足を補う労働者 第4区分 (Tier4) 学生 学生 第5区分 (Tier5) 一時的労働者 いわゆるワーキングホリデー、ボランティア、興業等

資料)英国内務省移民国籍局「A Points-Based System: Making Migration Work for Britain」(2006 年)

b.1. 第1区分(Tier1)高度技能者 高度技能者を対象とした第1区分について、「ポイント制度」に記載されている配 点表は下表の通りである。 図表- 29 第1区分における配点表 学位 前年の収入 (単位:千£) 年齢 英国における就労経験 または学士号 学士号(30 点) 16~18(5 点) 27 歳以下(20 点) 有り(5点) 修士号(35 点) ~20(10 点) 28~29 歳(10 点) 博士号(50 点) ~23(15 点) 30~31 歳(5 点) ~26(20 点) ~29(25 点) ~32(30 点) ~35(35 点) ~40(40 点) 40~(45 点)

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◆高度技能移民プログラム(Highly Skilled Migrant Programme; HSMP) HSMPは、高学歴者や医師・獣医師資格取得者等の高度技能者の英国への移住を 促進することを目的に、2002 年に開始されたポイント制度である。国内の求人なしに 移住が可能であり、労働市場テストの対象にもならない。2年間の滞在が許可された 後、さらに3年間の滞在延長が可能であり、合計5年間高度技能移民として就労した 後、永住権の申請が可能となる。 「ポイント制度」第1区分に対応して、2006 年 11 月に配点表が見直され、12 月か らは学位、年収、年齢、英国での就労経験または学士号取得の4分野での合計点数が 基準である 75 点を上回るか、英国内務省指定の大学でMBAを取得することが求めら れている。 また、これに加えて新しく英語力の証明が必要となり、英国で学士号を取得してい ない場合は、IELTS(International English Language Testing System)6以上の英語 力を有することが条件となっている。 「ポイント制度」における第1区分の配点表や基準点と、実際にHSMPとして導 入された配点表や基準点は同一となっている。 図表- 30 2006年12月のHSMP配点表の変化 ◇旧制度(合格基準 65 点) ※28 歳以上の日本人を対象とした配点表11 学 位 正 社 員 就 労 経 験 前 年 の 収 入 ( 単 位 : 千 £ ) 専 門 分 野 実 績 そ の 他 学 士 号 ( 15 点 ) 5 年 以 上 博 士 号 は 3 年 以 上 ( 25 点 ) 40~ ( 25 点 ) 特 筆 す べ き 実 績 ( 15 点 ) パ ー ト ナ ー が 学 士 号 以 上 ( 10 点 ) 修 士 号 ( 25 点 ) 管 理 職 2 年 以 上 を 含 む 5 年 以 上 ( 35 点 ) 100~ ( 35 点 ) 極 め て 優 秀 な 実 績 ( 25 点 ) 就 労 可 能 な 医 師 免 許 ( 50 点 ) 博 士 号 ( 30 点 ) 管 理 職 5 年 以 上 を 含 む 10 年 以 上 ( 50 点 ) 250~ ( 50 点 ) 世 界 ト ッ プ 級 の 実 績 ( 35 点 ) ◇新制度(合格基準 75 点) 学位 前年の収入 (単位:千£) 年齢 英国における就労経験 または学士号取得 学士号(30 点) 16~18(5 点) 27 歳以下(20 点) 有り(5点) 修士号(35 点) ~20(10 点) 28~29 歳(10 点) 博士号(50 点) ~23(15 点) 30~31 歳(5 点) ~26(20 点) ~29(25 点) ~32(30 点) ~35(35 点) ~40(40 点) 40~(45 点) 注釈)専門分野実績の得点は目安であり、審査官の判断によって異なる。 資料)英国内務省移民国籍局資料等より作成 11旧制度では年齢(28 歳以上・未満)と国籍(経済力に対応した4区分、日本は最上位の区分)に対応 して配点表が異なっていた。

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なお、社会的統合においては言語力が必要との認識から、英国では受入において英 語力の証明を求める方針である。実際、改正されたHSMPで英語力が条件となった ことを受け、今後、企業内転勤等に対しても同様の条件が課せられると、我が国のよ うな非英語圏諸国の企業が英国で活動する上で適切な人材を送り込めない可能性があ り、不利益が想定される。 b.2. 第2区分(Tier2)技能労働者 技能労働者を対象とした第2区分は英国内での就職先がある人(企業内転勤も含む) が対象である。「ポイント制度」に記載されている点数表は下表の通りで、基準点は 50 点である。 図表- 31 第2区分における点数表 学位等 想定される収入 (単位:千£) そのほか NVQ3(5 点) 15~18(5 点) 指定された労働力不足業種の求人(50 点) 学士号(10 点) ~19.5(10 点) 労働市場テスト済の求人(30 点) 修士号(10 点) ~21(15 点) 企業内転勤者(50 点) 博士号(15 点) 21~(20 点)

資料)英国内務省移民国籍局「A Points-Based System: Making Migration Work for Britain」(2006 年)

全国職業資格(National Vocational Qualifications; NVQ)は、英国で最もよく用いら れている、現場での職業能力を判定する資格である。職場における記録と観察、継続 教育による学習結果等がまとめられて審査がなされる仕組みであり最低1~最高5の 5段階で評価される。この第3水準(NVQ3)は、一定の熟練度が要求される内容 であり、外国人の場合も、業務遂行能力を証拠として整理、提出することで、NVQ 3以上の職業能力を有すると示さなくてはならない。

また、そのほかの区分では、労働力不足業種は技術顧問機関(Skills Advisory Body; SAB)に お いて定め ら れること と なってい る ほか、企 業 内転勤者 に ついては 、 英国と 同程度の給与水準で6か月以上雇用されているNVQ3以上の技能者であることが求 められている。

b.3. 第3区分(Tier3)一般労働者

一般労働者については、業種別割当制(Sector-Based Scheme; SBS)、季節農業等労 働者制度(Seasonal Agricultural Workers’ Scheme; SAWS)の数量割当制(quota-based)、 運営者認定(operator-led)、期間限定(time-limited)に基づく制度により管理されて いたが、今後はEU新規加盟諸国からの労働者で充足されることから、原則として受 入対象とならない。これに対応して、SAWSについては 2010 年末で終了することと されている。 S A B が 設 定 す る 労 働 力 不 足 業 種 に お け る 一 時 的 な 労 働 力 不 足 へ の 対 応 に つ い て は、別の制度が検討されることとなっている。

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b.4. 第4区分(Tier4)学生 学生については、現在の区分を簡素化し、「ポイント制度」に記載されている対応 表は下表の通りである。 図表- 32 第4区分における対応表 学生区分 扶養家族の帯同 対象者 一般学生 (General Student) 可 学士課程以上、または 15 時間/週以上の昼間部 生徒 (School) 不可 18 歳以下の全日制の生徒 勤労学生

(Study through work) 可 検討中

資料)英国内務省移民国籍局「A Points-Based System: Making Migration Work for Britain」(2006 年)

一般学生は1週間に 20 時間(休暇中はフルタイム)までの労働が認められる。生徒 は 16 歳以上であれば、一般学生と同条件で労働が認められる。勤労学生は、一般学生 と同じ条件での労働に加えて、学習課程に関連しての労働が認められる。 また、本人が 12 か月以上英国に在留する場合で帯同する扶養家族がいれば、扶養家 族も労働が認められる。 b.5. 第5区分(Tier5)一時的労働者 いわゆるワーキングホリデーについては、対象年齢は 18 歳~30 歳、滞在期間は最 大2年間の単一制度にまとめることで、わかりやすいものとされる。 第2区分の条件を満たすことができなかった期限付き労働者が第5区分にあたり、 芸術・スポーツ、ボランティア、宗教、交換、国際協定の5区分に大別される。 B 在留管理の改善-保証人制度(sponsorship)の導入 不法残留者対策として、在留管理の仕組みを構築することが求められているため、 保証人制度を導入する。これは、英国内務省移民国籍局が、移民を受け入れる企業・ 大学を認証し、企業・大学が労働者や学生を認証するという形式で在留管理を行う制 度である。ただし、ポイント制度における第1区分については、積極的に受け入れる という方針から、そもそも雇用先企業や大学の存在が前提とはなっておらず、保証人 制度への対応は不要である。 企業または大学等での受入先が決まっている労働者及び学生に対しては、英国内務 省 移 民 国 籍 局 が あ ら か じ め 保 証 人 と し て 認 証 済 み の 企 業 ・ 大 学 か ら の 保 証 人 証 明 (Certificate of Sponsorship)を提出することが義務付けられる。 保証人となった外国人に不審な動向がみられる場合や、退職や転職または雇用条件 や職務内容等の変更等があった場合は、英国内務省移民国籍局に速やかに報告するこ とが義務付けられる。企業、大学は一定期間ごとに認証の更新手続きを行うが、適切 な管理をしていない場合は、認証されない等の不利益を被る。 外国人についての情報は、各企業、大学が管理することとなり、英国内務省移民国 籍局は必要に応じてこれらの団体に情報提供を依頼するかたちとなる。

参照

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