Title
陰嚢内硬化性脂肪肉芽腫の1例
Author(s)
児玉, 浩一; 四柳, 智嗣; 布施, 春樹; 平野, 章治; 増田, 信二
Citation
泌尿器科紀要 (1999), 45(3): 211-214
Issue Date
1999-03
URL
http://hdl.handle.net/2433/114000
Right
Type
Departmental Bulletin Paper
Textversion
publisher
陰嚢 内硬化 性 脂 肪 肉 芽腫 の1例
厚 生 連 高 岡 病 院 泌 尿 器 科(部 長:平 野 章 治)
児 玉 浩 一*,四 柳 智 嗣,布 施 春 樹,平 野 章 治
厚 生 連 高 岡病 院病 理 部(部 長:増 田信 二)
増 田 信 二
SCLEROSING LIPOGRANULOMA OF THE SCROTUM : A CASE REPORT
Koichi KODAMA,
Satoshi YOTSUYANAGI,
Haruki FUSE and Shoji HIRANo
From the Department of Urology, Kouseiren Takaoka Hospital
Shinji MASUDA
From the Department of Pathology, Kouseiren Takaoka Hospital
We present a case of sclerosing lipogranuloma of the scrotum.
A 42-year-old man who had
complained of a painless intrascrotal mass of one week's duration visited our clinic. Physical
examination revealed a symmetrical Y-shaped hard mass around the penile base in the scrotum.
Laboratory examination showed no abnormal findings except for a 14.0% eosinophilia.
Magnetic
resonance imaging (MRI) with a surface coil showed an atypical mass at the penile base.
Percutaneous needle biopsy under ultrasound guidance was performed and histopathological findings
revealed lipogranuloma
accompanied by infiltrating multinuclear giant cells, eosinocytes and
lymphocytes. The tumor gradually disappeared during a 4-week administration of antibiotics and
antiphlogistics. We have also reviewed 95 cases of sclerosing lipogranuloma of the scrotum in the
Japanese literature.
(Acta Urol. Jpn. 45: 211-214, 1999)
Key words : Sclerosing lipogranuloma, Scrotum, MRI, Eosinophilia, Needle biopsy
緒
言
男 性外 性 器 に発 生 す る硬 化性 脂 肪 肉 芽 腫 は,比 較 的 稀 な疾患 で あ る.今 回,わ れ わ れ は陰 茎 根 部 に特 徴 的 なY字 型 を有 し,MRIに て 非 特 異 的 腫 瘤 と して示 さ れた1症 例 を経 験 し た の で 報 告 す る と共 に,本 邦 報 告 95例 につ い て 若干 の 文 献 的 考 察 を加 え る.症
例
患 者:42歳,男 性,会 社 員 主 訴:無 痛 性 陰嚢 内腫 瘤 家 族歴:特 記 すべ き こ とな し 既 往 歴:1996年8月22日 右 陰嚢 水瘤 に対 し陰 嚢 水瘤 穿刺 術 を施 行 され た. 現 病 歴:1週 間 前 よ り陰 嚢 内 の 無 痛 性 腫 瘤 に気 付 き,1997年ll月17日 当科 受 診 した. 初 診 時 現 症:陰 茎根 部 に 陰 茎 海綿 体 をY字 に取 り巻 くよ うに弾 性 硬 の腫 瘤 を触 知 した.尾 側 は縫 線 下 にの び て い た.陰 茎 海 綿 体 と の境 界 は 明 らか で な か っ た *現:金 沢 大 学 医 学 部 泌 尿 器 科 学 教 室 が,精 巣,精 索,精 巣 上 体 と は 連 続 性 を 認 め な か っ た.他 に,右 陰 嚢 水 瘤 を 認 め た 以 外,陰 嚢 内 容,前 立 腺 に は 異 常 を 認 め な か っ た. 初 診 時 検 査 成 績:末 梢 血 白 血 球 数8,800/μ1と 正 常 で あ っ た が,白 血 球 分 画 に お い て 好 酸 球 増 多 (14.0%)お よ び リ ン パ 球 減 少(21.0%)を 認 め た. CRP陰 性 で,そ の 他 検 血,血 液 生 化 学 お よ び 尿 所 見 に異 常 は 認 め な か っ た 。 臨 床 経 過:1997年ll月17日 陰 嚢 部MRI検 査 を 施 行 し た.Tl強 調 像 に て,陰 嚢 皮 下 脂 肪 層 に 引 き続 い て,陰 茎 根 部 に 軟 部 組 織 と等 信 号 を 呈 す る 辺 縁 不 整 の 腫 瘤 性 病 変 を 認 め(Fig.1(a)),同 部 は ガ ド リ ニ ウ ム に て 均 一 に 増 強 さ れ た(Fig.1(b)).T2強 調 像 で は, 腫 瘤 は 高 信 号 と し て 描 出 さ れ た.経 皮 的 超 音 波 検 査 で は,病 変 は 内 部 エ コ ー 不 均 一,辺 縁 不 整 の 腫 瘤 と して 描 出 さ れ た.ll月18日 局 所 麻 酔 下 に 超 音 波 ガ イ ド経 皮 的 腫 瘤 針 生 検 術 を 施 行 し,黄 白 色 の 組 織 が 採 取 さ れ た. 病 理 組 織 学 的 所 見:脂 肪 組 織 内 に 発 生 した 肉 芽 腫 で 多 核 巨 細 胞 が 分 布 し(Fig.2(a)),好 酸 球,リ ン パ 球 浸 潤 を 多 数 伴 っ て い た(Fig.2(b)).212 泌 尿 紀 要45巻3号1999年 (a) (b) Figl.(a)Tl-weightedtransverseMRI showedamass(arrowheads)atthe penilebaseinthescrotum.Thein-tensityofthemasswassimilartothat ofsofttissue.(b)Gd-DTPAenhanced TI-weightedMRIshowedenhance-mentofthemass. 術 後経 過:陰 嚢 内硬 化 性 脂 肪 肉芽 腫 と診 断 した.消 炎 剤 お よ び 生 検 後 の 感 染 予 防 の た め 抗 生 剤(mino-cycline)を 経 口投 与 し保 存 的 に経 過観 察 した,生 検 施 行1週 間後,腫 瘤 が 縮 小 傾 向 に あ った た め,消 炎剤 に 加 え抗 生 剤 も投 与 継 続 す る こ と に した.自 覚症 状 出現 後5週 間経 過 した1997年12月18日 触 診 上腫 瘤 は 消失 し て い た.現 在 再 発 は認 め て い ない.
考
察
陰 嚢 内 硬 化 性 脂 肪 肉 芽 腫 は,1950年 にSmetana ら1)に よっ て局 所 へ の 異 物 注 入 や 外 傷 に よ っ て皮 下脂 肪 組 織 に発 生 す る炎 症 性 肉 芽 腫 と して 提 唱 され た疾 患 概 念 で あ る.病 理 組 織 学 的 に は,脂 肪 組織 内 の 多核 巨 細 胞,類 上 皮 細 胞 お よ び間 質 へ の 好 酸 球,リ ンパ 球, 組 織 球 を 中心 と した炎 症 細 胞 浸 潤 よ りな る肉 芽 腫 を特 徴 と して い る,本 疾 患 の原 因 と して,外{￡2'3),寒 冷 暴 露4),陰 茎 会 陰 部 の 圧 迫5・6),性 交 中 の 陰 茎 根 部 捻 転7),高 位 精 巣 摘 除 術 後 のペ ン ロ ー ズ ドレー ン8) な どが報 告 されて い るが,ほ とん どの 場 合 は 原 因 不 明 で あ る.末 梢 好 酸 球 増 多例 の報 告 の 多 い こ と,Oflox一熱蒜鱗:畿{::総
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(a) r曼 」 、Fド ウ ゲ ・気 翻 轟='・∴ 桝∼ 臨∼
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Fig2. (b) Iipogranulomaaccompanied filtratingmultinuclear' (a)Histopathologicalfindingsrevealed by 91ant (arrow)andinflammatorycells(H& E,×50),(b)Histopathologicalfind-ingsshowedinfiltrationofnumerous inflammatorycells,especiallyeosi-nophils(H&E,×100). ロ cellS acin点 鼻 薬 ア レル ギ ーが 原 因 と考 え られ る例9)や 陰 嚢 と 同 時 に 両 下 腿 に も硬 化 性 脂 肪 肉 芽 腫 が 発 症 した 例10)が 報 告 さ れ て い る こ と か ら,何 らか の ア レ ル ギ ー機 序 が 関与 して い る意 見 が有 力 で あ る.1994年 に 入 澤 らll)が,本 邦 で の 陰 嚢 内 硬 化 性 脂 肪 肉 芽 腫63症 例 を検 討 して い る.こ れ に漏 れ た症 例 お よび 以 降 の 症 例 は31例 あ り,調 べ 得 た か ぎ り 自験 例 は 本邦95例 目で あ る と思 わ れ る.自 験 例 を含 む硬 化 性 脂肪 肉 芽 腫95例 に つ い て検 討 した とこ ろ,年 齢 は27歳 か ら79歳(平 均 41.2歳)で あ った.20歳 代 が8例(8.4%),30歳 代 が 46例(48.4%),40歳 代 が24例(25.3%)と い わ ゆ る 性 活 動 期 に 多 い 主 訴 は ほ と ん ど無 痛 性 腫 瘤 で あ る が,有 痛 性 腫 瘤 も4例 報 告 が あ る.ま た,無 痛 性 腫 瘤 と同 時 に,軽 度 排 尿 困 難 を伴 った 例,勃 起 時 不 快 感 を 伴 った例 や 両側 鼠径 部痛 を伴 った 例 の 報 告 が あ る.罹 病 期 間 に つ い て は,64例 に 記 載 が あ る が う ち58例 (90.6%)が1カ 月 以 内 に 医 療 機 関 を受 診 して い る. 30年 以 上 前 か ら腫 瘤 を 自覚 して い た 報告 例2)も あ る. 職 業歴 は23例 に 記 載 が あ る が,陰 嚢 部 外 傷 の 機 会 の多Tablel. Summaryofreportedcasesofsclerosinglipogranulomaofthescrotum(f()rNo.1-63,rcferto I・isawaet・1.11)) No. 報告者 年齢 発生部位 好酸球増 多 治療法 文 献 報告年 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 Matsushimaetal. 鈴 木 ら 清 水 ら 眞 鍋 ら 眞 鍋 ら 浜 尾 ら 森 山 ら 野 垣 ら 松 岡 ら Takahashietal. Takahashieta豆. 清 水 ら 清 水 ら 辻 ら 辻 ら 辻 ら 安 達 ら 安 達 ら 安 達 ら 安 達 ら 柴 田 ら 関 ら 笠 原 ら Watanabectal. Watanabcctal. Watanabcetal. Watanabeetal. Watanabeetal. 松 井 ら 松 井 ら 松 井 ら 95自 験 例 54 28 51 65 30 55 47 37 32 37 39 39 42 34 39 35 41 29 37 51 56 45 27 29 36 40 29 39 32 36 75 右鼠径部 陰茎根部 左 陰嚢 内 陰茎根部 陰茎根部 陰茎根部 陰茎背側 一根部 陰茎根部 陰茎根 部∼陰嚢 陰茎根 部∼陰嚢 陰茎根 部∼陰嚢 陰茎根 部∼陰嚢 陰茎根 部∼陰嚢 陰茎根 部 陰茎根 部 陰茎根部∼陰嚢 陰茎根部 陰茎根部 陰茎根部 陰茎根部 右陰嚢内 左鼠径部 右陰嚢内 陰茎根部 陰茎根部 一陰嚢 陰茎根部 一陰嚢 陰茎根部 一陰嚢 陰茎根部 一陰嚢 陰茎根部 一陰嚢 陰茎根部 ∼陰嚢 左 陰嚢 内 不 明 不 明 (+) (+)15% (+) (一) (一) (一) 不 明 (+) 7% 5.5% (+)ll% 不 明 不 明 (一) (+)12% (一) (+)10% (一) (一) (十)11.3% (一) (一) (一) 不 明 (一) (+) (一) (一) (一) (一) (一) 42陰 茎 根 部 ∼陰 嚢(+)14% 高位精巣摘除術 腫瘤摘 出 腫瘤摘 出 腫瘤摘 出 消炎剤 部分切 除術 腫瘤摘 出 腫瘤摘 出 腫瘤摘 出 部分切 除 部分切 除 腫瘤摘 出 腫瘤摘 出 針生検+抗 生剤 針生検 針生検 腫瘤摘 出 腫瘤摘 出 腫瘤摘 出 腫瘤摘 出 高位 精巣摘 除術 高位 精巣摘 除術 高位 精巣摘 除術 腫瘤摘 出 腫瘤 摘出 6.3%腫 瘤 摘出 腫瘤 摘出 腫瘤 摘出 腫瘤摘出 腫瘤摘出 腫瘤摘出 針生検+抗 生剤 +消 炎剤 Uro131':75-77 日 泌 尿 会 誌80:621 日 泌 尿 会 誌811425 日 泌 尿 会 誌81:1425 日 泌 尿 会 誌811425 日 泌 尿 会 誌8111439 広 島 医 学43=865-866 日 大 医 誌50:83-86 西 日 泌 尿54・1227 UltrastructPathol16=641-649 UltrastructPathol16=641-649 日 泌 尿 会 誌84:2046 日 泌 尿 会 誌84=2046 西 日 泌 尿5511266-1268 西 日 泌 尿551266-1268 西 日 泌 尿55:1266-1268 西 日 泌 尿55:133-135 西 日 泌 尿55:133-135 西 日 泌 尿55:133-135 西 日 泌 尿55=133-135 臨i必47:874-876 泌 尿 器 外 科7・991-992 臨 泌48:152-154 PatholIntcrnational45=854-859 PatholInternational45;854-859 PatholInternationa145=854-859 PatholInternational45:854-859 PatholInternational45:854-859 島 根 医 誌24:145-150 鳥 根 医 誌24:145-150 島 根 医 誌24:145-150 1988 1989 1990 1990 1990 1990 1990 1991 1992 1992 1992 1993 1993 1993 1993 1993 1993 1993 1993 1993 1993 互994 1994 1995 1995 1995 1995 1995 1996 1996 1996 1998 (入 澤 ら11)の 報 告 に 追 加) か っ た厩 務 員 の 例12)を 除 き,多 岐 に わ た っ て お り, 本 疾患 と職 業 との 関連 は 明確 で な い. 血 液学 所 見 で は,記 載 の あ る69例 中26例(37.7%) に5.5-・36%の 末 梢 血 好 酸 球 増 多 を認 め て い る(Table D.こ れ らの症 例 の大 部 分 は,腫 瘤 摘 出 後 あ る い は腫 瘤 消 失 時 に ほ ぼ末 梢 血 好 酸 球 数 は正 常 化 して い る 。 炎 症 と関 連 したCRP陽 性 は7例,白 血 球 増 多 は8例 報 告 が あ る. 補 助 的 診 断 と して,超 音 波 検 査 が 施 行 さ れ境 界 明 瞭,内 部 エ コー の 均 一 な腫 瘤 が 描 出 さ れ た例9'13>や CTス キ ャ ンに て 陰 茎 根 部 周 囲 の不 規 則 な腫 瘤 が 描 出 され た例14)が 報 告 され て い る.し か し,MRI検 査 が 施 行 され た 報 告 は ない.本 症例 で は,陰 茎 根 部 に辺 縁 不 整 の腫 瘤 が 認 め られ た.腫 瘤 がTl強 調像 にて 軟 部 組 織 と等 信 号,T2強 調 像 に て高 信 号 を呈 した こ と, また ガ ド リニ ウ ム にて 強 く造 影 され,血 流 豊 富 な腫 瘤 で あ る こ とが 示 さ れ た こ とか ら,MRI画 像 上 炎 症 を 伴 っ た非 特 異 的 腫 瘤 と診 断 され た.MRI検 査 で得 ら れ た所 見 は,本 疾 患 が 病 理 学 的 に多核 巨細 胞 や 炎症 細 胞 浸 潤 を特 徴 とす る炎 症 性 肉芽 腫 で あ る こ と に合 致 し て い る と考 え られ た.今 後surfacecoilや 造 影 剤 な ど の 開発 あ る い は組 み合 わせ に よ り,MRI検 査 は 陰 嚢 内硬 化 性 脂 肪 肉芽 腫 の診 断 に さ らに有 用 と な る可 能 性 が あ る と思 わ れ た. 佐 藤 ら15)は,腫 瘤 の 触 診 に よ る形 状 別 に硬 化 性 脂 肪 肉 芽腫 を3型 に分 類 して い る.本 例 の よ う に陰 嚢 内 中央 よ り陰 茎根 部 を取 り囲 む よ うにT字 あ る い はY字 型 を呈 す る もの を1型,陰 茎根 部 の 中央 付 近 に腫 瘤 の 存 在 す る もの をII型,精 索 また は片側 陰嚢 内 に存 在 す る もの を 皿型 と して い る.詳 細 の 不 明 な3例 を除 く と,1型 が69例(75.0%),ll型 がll例(IL2%),皿 型 が12例(13.0%)と な り,陰 茎 根 部 を取 り囲 む よ う に存 在 す る1型 の 割 合 が 高 く,こ の 形状 が 本 疾 患 の 特 徴 の1つ と考 え られ る.坪 ら4)は,脂 肪 組 織 の 局 在 に
214 泌 尿 紀 要45巻3号1999年 Table2.Casesofrecurrentsclerosinglipogranulomaofthcscrotum 報告者 年齢 治療法 再発 までの期間 再発原因 再発後の経過 文 献 報 告年 坪 ら 寺 崎 ら 中 田 ら 在 原 ら 松 岡 ら 入 澤 ら 49 61 37 36 32 29 腫瘤摘 出 腫瘤摘出 腫瘤摘出 腫瘤摘出 腫瘤摘出 腫瘤摘出 20日 2週 9日 9日 不 明 3週 陰嚢冷竜 不明 不明 不明 不 明 不 明 冷 器 中 止3週 間 後,腫 瘤 消 失 1カ 月 消 炎剤 投 与,腫 瘤縮 小 1カ 月抗 生 剤 投 与,腫 瘤 残 存 消 炎剤 投 与,腫 瘤 縮 小 消 炎剤 投 与,腫 瘤 消 失 再 発 腫 瘤 摘 出 日 泌 尿 会 誌79=155-1591988 日 泌 尿 会 誌79117341g88 臨 泌421373-3751988 日 泌 尿 会 誌81二6581ggO 西 日泌 尿54:12271992 泌 尿 紀 要40=169-1731994 注 目 し,成 人 の 外 陰 部 皮 下脂 肪 組 織 は,縫 線 の下,両 側 総 鞘 膜 に 挟 ま れ た 位 置 で 陰 茎 根 部 まで 縦 走 して お り,こ れ に左 右 に存 在 す るextratunicarypatchoffat が 陰 茎根 部 で 合流 して 三角 形 を形 成 して い る と して い る.本 疾 患 の特 徴 的 なY字 型 は,こ の 該 当 部 の 皮 下脂 肪 の 分布 に ほ ぼ一 致 して い る と い う. 治 療 法 に つ い て み る と,腫 瘤 摘 出 術 が57例 (61.3%)と 最 も多 い が,近 年 開 放 あ る い は 針 生 検 を 施行 して確 定 診 断 を得 た後,消 炎剤 や抗 生 剤 を投 与 し て保 存 的 に治 療 す る例 が報 告 され て い る(Tablel). 自験 例 を含 め て,針 生 検 を施行 した4例 は いず れ も, 5週 間 一一2カ 月 で 腫瘤 消失 をみ て い る.腫 瘤 摘 出術 を 施 行 され た うち,6例 が 再 発 を きた して い る。 い ず れ も1カ 月 以 内 の再 発 で あ っ た(Table2).部 分 切 除 術 施 行 後,腫 瘤 は8例 が3週 間 ∼4カ 月 で 消 失,2例 が 縮 小 して い る.開 放 生 検 後 の経 過 は,15例 中13例 に1 週 間 一一6カ 月 で腫 瘤 の消 失 を認 め,残 り2例 は6カ 月 経 過 時点 で腫 瘤 の縮 小 は認 め る もの の 残 存 が あ る と報 告 され て い る. 本疾 患 の うちll型 あ るい は 皿型 は,精 索 腫瘍 や精 巣 腫 瘍 が否 定 で きな い場 合 が 多 く,腫 瘤 摘 出術 や 高位 精 巣 摘 除術 もや む を得 ない と考 え られ るが,1型 の よ う に特 徴 的 形 態 を呈 す る場 合,手 術 侵 襲 お よび腫 瘤 摘 出 とい う機 械 的 刺 激 に よ る再 発 の 点 か ら,生 検 に て確 定 診 断 の上,保 存 的 治 療 が 優 先 され るべ きで あ る と考 え られ る.し か し,抗 生剤 と消 炎剤 投 与 に て,腫 瘤 の増 大 を認 め た 例16)も 報 告 され て お り,数 カ 月 の保 存 的 治 療 にて 腫 瘤 消 失 を認 め な い場 合 は,腫 瘤 摘 出術 も考 慮 に入 れ る必 要 が あ る と思 わ れ た.
