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バイオマスエネルギー地域自立システムの       導入要件・技術指針

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バイオマスエネルギー地域自立システムの

導入要件・技術指針

平成 29 年 9 月

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はじめに

2011 年の東日本大震災を契機とした電力需給やエネルギー構成のあり方の見直し、2012 年の「再生可能エ ネルギーの固定価格買取制度(Feed-in Tariff : FIT)」の開始などを受けて、地域の特徴をふまえた再生可能 エネルギー活用への機運が高まっている。2014 年 4 月に閣議決定された「エネルギー基本計画」においても、 未利用木質バイオマスや下水汚泥、食品廃棄物、耕作放棄地で生育させる燃料作物などについて、再生可能 なエネルギーとして利用を進めていくことが明記され、バイオマスのエネルギー利用の一層の推進が期待さ れている。 バイオマスエネルギー事業については、FIT 制度開始以降、それまでのような廃棄物処理および利用を主 目的とした事業ではなく、売電収益を目的とした発電事業としての位置づけが強まり、バイオマスに関わり のなかった事業者の新規参入が活発化している。しかしながら、現状、国内においてバイオマスエネルギー 事業を支える基盤は脆弱であり、事業を将来にわたって長期的に継続するには相応の知恵と工夫を要する。 「事業を支える基盤が脆弱である」とは、「バイオマスの調達」、「エネルギー変換」、「エネルギー供給」 のいずれのプロセスにおいても、「インフラ、仕組み」、「技術」、「人材」、「情報」といった事業に不 可欠な要素が未成熟であるという意味である。 たとえば、大型火力発電事業は長年にわたる投資や競争を経て、燃料調達、電力利用、発電を支える社会 構造や技術、設備、人材などの安定した基盤が、産学官の絶え間ない努力によって整備されてきた。その結 果、今日我が国では全国津々浦々で安定的に電力を利用でき、世界的にも最も停電の少ない国となっている。 このように、長期間にわたりハードウェアおよびソフトウェアの両面の基盤が整えられた既存の電力事業 に比べ、バイオマスエネルギー事業は歴史が浅く、事業を行うための基盤整備は発展途上といえる。したが って、持続的な事業として成功させるには、バイオマスエネルギー利用をきっかけに地域との Win-Win の関 係を築くための知恵と工夫に加え、行政をはじめとする幅広い関係者との協力、ならびに継続的な努力を行 うための相応の「覚悟」が必要である。 本書は、これからバイオマスエネルギー事業に取り組もうとする方々を想定し、留意すべきポイントや工 夫、考え方をまとめたものである。個々の記載内容は、既存事例や事業関係者、有識者等への 100 件を超え るヒアリング調査、ならびにバイオマス事業に関連する昨今の公開資料から抽出したものとなっている。 本書が、バイオマスエネルギー事業を計画する際に参考にされ、事業成功の一助となることを期待する。

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目次

はじめに ... i 本書について... 1 概要 ... 2 1. 持続可能なバイオマスエネルギー事業を実現するには ... 2 2. 認識すべき事業構造と事業環境 ... 2 2.1. 既存エネルギー事業との競争環境 ... 2 2.2. 既存エネルギー事業とは異なる事業構造 ... 3 2.3. 既存エネルギー事業とは異なる脆弱な事業環境 ... 5 3. 事業目的の考え方 ... 8 3.1. 事業性を確保しつつ、地域と環境の側面もバランス良く考慮した目的を考える ... 8 3.2. 地域バイオマスの持続的利用を目指す ... 8 3.3. 事業性だけでなく環境や地域社会への効果も期待する事業構想とする ... 9 3.4. 持続的に地域社会で必要とされる事業を追求し続ける ... 10 4. 事業計画立案時の留意点 ... 12

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本書について

本書は、これからバイオマスを燃料として電力もしくは熱として供給するエネルギー事業に取り組もうと する方々を想定し、留意すべきポイントや工夫、考え方をまとめたものである。 下図に示すとおり、バイオマスエネルギー事業実現までのプロセスは、「事業構想」→「実現可能性調査」 →「事業計画」→(設備メーカーへの発注)→「設計」→「着工~運転」の 5 つのステップに分けることが できる。本書はこのうち、「構想(第Ⅰ章)」、「調査(第Ⅱ章)」、「計画(第Ⅲ章)」に焦点を当てて作 成している。設備発注前のこれら 3 つのステップでは、事業者が中心となって試行錯誤を繰り返し、事業の 土台と骨組みを構築する。これまで運転開始後に事業中止に至った事例のほとんどは、計画までの時点で起 こりうるリスクに対して十分な対策を用意できていなかった、もしくはリスクそのものを想定していなかっ たことに起因する。 本書では、こうした問題に対処するため、「構想」、「調査」、「計画」の各ステップでおさえるべきポ イントを、「バイオマス調達」、「エネルギー変換」、「エネルギーおよび副生物利用」、「システム」の 4 つの各プロセスにおいて、網羅的かつ簡潔に整理することを目指した。紙面の都合上、すべての項目におい て詳細な調査、分析手法について言及していないが、読者が調査、計画時に必要な手法を把握できるよう、 関連する既存のガイドラインや文献についても記載している。 各ステップにおいて、本書をもとに事業に対する考え方を深め、留意点を理解したうえで、事業関係者か らの助言や既存のガイドラインをもとに、具体的な調査や検討を進めることを推奨したい。 構想(Ⅰ章) 計画(Ⅲ章) 着工~運転 FIT関連 資金調達 法令関係 バイオマス調達 エネルギー変換 エネルギー利用 計画・契約 設計 導入意義の検討 系統連系事前照会 コスト・経済性・資金調達方法検討 事業計画策定 系統連系検討・申込 融資交渉 工事請負契約 工事分担金・電気供給契約 融資契約 調査(Ⅱ章) 事業化可能性調査 地域社会との調整 立地調査/法令調査 公害防止協定 ・ 各種個別法届出・許認可申請 等 土木建築設計 ・ 建築確認申請 ・ 設備認定申請 等 地域特性の整理 バイオマス原料調達検討 バイオマス原料調達関連協議・調整 詳細設計 ・ 設備等の各種設定 ・ 実施要領書作成 基本計画 ・ 事業規模 ・ 採用技術選定 等 試運転 性能確認試験 エネルギー変換技術検討 エネルギー利用方法検討 工事 原料調達可能性調査 導入予定技術に係る 情報収集 地域社会との調整 地元調整 発注

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2 2.1 既存エネルギー事業との競争環境

概要

1. 持続可能なバイオマスエネルギー事業を実現するには

木質系バイオマスは国内の森林に由来し、湿潤系バイオマスは畜産農業に由来する。 これらを燃料とするエネルギー事業を検討する場合、最大限の国内バイオマスの活用を目指すべきである。 その際、国内バイオマスは我々の日常生活や森林資源に由来する事業活動から発生するため、その事業は 持続的であるべきである。 しかしながら、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT 制度)の導入によって以前より事業成立が 容易になったため、安易な計画も存在する。不十分な検討により事業が成立困難になれば、地域社会への影 響は大きい。 したがって、事業者は、事業構造や事業環境を十分に検討および理解し、事業目的を明確にした上で、計 画を具体化しながら事業リスクを見極めて事業化判断をする必要がある。

2. 認識すべき事業構造と事業環境

エネルギー事業は社会基盤事業の一つであるため、基本的に事業者は安定供給の責任を負う。また、産業 や生活を支えるもののため、社会や産業構造に適した価格での供給が求められる。このように、エネルギー 供給事業は、一定の社会的責任を負う事業であることを事業者は認識すべきである。

2.1. 既存エネルギー事業との競争環境

本書で対象とする発電および熱供給事業の競争環境は図 概要 2-1 のとおりである。 図 概要 2-1 発電および熱供給事業の競争環境 石炭 原油 天然 ガス その他再エネ 大規模 火力発電 (自家発電含まず) 石油精製 灯油・LPG 熱(暖房等) 電力 自動車 自動車 電力 都市ガス ガソリン ・軽油 送電網 木質系バイオマス 中小規模火力発電 石油化学製品 ナフサ等 輸入 バイオマス 輸入 バイオマス発電の 競争環境 ボイラー 最終ユーザー 国産 湿潤系バイオマス メタン発酵・発電

バイオマス調達

エネルギー変換

エネルギー利用

ウラン (原子力発電)

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2.2 既存エネルギー事業とは異なる事業構造 3 電力については、燃料をバイオマスのみとする場合の規模が 1 基あたり数百 KW~数十 MW 規模であるの に対し、主な競合である石炭、天然ガス火力発電の規模は 1 基あたり数百~一千 MW 程度である。いずれの 電力も送電線を介して需要者で利用される時点では同じ電力であるが、バイオマスを含む FIT 発電対象電力 に対しては需要者が賦課金を支払うため、化石由来の電力より最終価格が高い。 熱については、原油や天然ガス由来の灯油・LPG 都市ガスが主な競合である。発電と異なり、現時点では 需要量に応じた経済的インセンティブの制度はないため、競合価格は原油等の市況である。 これらの競争環境を念頭におき、事業構造および事業環境の理解をする必要がある。

2.2. 既存エネルギー事業とは異なる事業構造

エネルギー事業は、基本的にスケールメリットを活用して成立する。すなわち、規模が大きいほど、単位 エネルギー量あたりの生産コストの低減が可能なため、大量で安価なエネルギーの供給が可能となる事業で ある。

2.2.1. 木質系バイオマス

(1) バイオマス発電事業は、競合に比べて事業規模が小さいため競争力が低い事業と認識すべきである 図 概要 2-2 に示すとおり、規模が大きくなるほど生産コストが低下する理由は、発電効率が高くなるた め発電量あたりの燃料費や設備の減価償却費等が低下するためである。 図 概要 2-2 木質バイオマス発電の規模別発電コスト試算例 このような事業構造に対し、主な競合である桁違いに大規模な石炭、天然ガス火力発電は、スケールメリ ットの効果が生じやすい上、燃料自身の熱量あたりの単価がバイオマスより安価であるため、圧倒的な価格 競争力を有している。図 概要 2-2 の 750MW の試算事例は石炭とバイオマスの混焼を想定したケースであ るが、混焼率は 1%であるため、石炭火力発電の発電コストとほぼ同様の約 13 円/kWh である。これに対し て、規模が小さくなると発電コストが上昇し、5,700kW では約 20 円/kWh をバイオマス調達費が占め、それ 木質専焼発電 石炭混焼発電 規模 2,000kW未満 2,000~5万kW 2.5~15万kW ~100万kW~ 発電効率 発電端 ~20% 20~35% 35~40% 40~42% 規模 各規模の 試算モデル 前提条件 1,500kW 発電効率 (発電端) 混焼率 (熱量%) 5,700kW 33,000kW 750,000kW 16% 23% 37% 42% 100% 100% 25% 1% 発電規模 0 10 20 30 40 50 1500kW 5700kW 33000kW 750000kW 小規模 中規模 中規模 大規模 バイオマス調達費 灰処理費 上水・下水費 メンテナンス費 人件費 一般管理費 減価償却費 (円/kWh-売電) 発電コ ス ト

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4 2.2 既存エネルギー事業とは異なる事業構造 だけで石炭火力発電のコスト以上であるため、FIT 制度が終了する 20 年後には、バイオマス調達費の低減が 持続的な発電事業に必須であることが分かる。 図 概要 2-3 各種燃料の熱量あたり単価 (出所)各種統計情報をもとに作成 (2) 競争力向上を狙った熱利用の組み合わせ(コージェネレーション)は容易ではない 発電事業の場合、関連制度の変更がない限り、送電線につなぎさえすれば販売リスクは非常に低い。 一方、熱利用については販売先を事業者自身で確保する必要があるが、熱の長距離輸送は現実的ではない ため、熱需要者の隣接地で発電事業を開始するか、発電事業の隣接地で熱需要を生む新たな事業を開始する 必要がある。したがって、発電事業の事業性の低さを余剰熱の販売で向上させるのは、余程の好条件に恵ま れるか、発電事業者自身が恒常的かつ必要量に見合った熱需要を創出しない限りほぼ不可能である。 また、外部へ熱を販売する場合は、需要量は変化する上、単価の参考値となる原油等の市況は常に変動す るため、収入額を固定化するような契約上の工夫がないと事業性向上への寄与は少ないことを十分に認識す べきである。

2.2.2. 湿潤系バイオマス

(1) メタン発酵事業はエネルギー事業ではなく廃棄物処理事業と認識すべきである 図 概要 2-4 に示すとおり、メタン発酵事業の収入のうち最も大きいのはエネルギー販売費用ではなく廃 棄物処理収入である。FIT 制度により発電事業という側面が強化されたものの、事業の社会的役割としては 廃棄物処理の方が大きく、地域の生活や産業を持続的に支える重要な事業であるとの認識が非常に重要であ る。 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 各 種 燃料 の熱 量あ た り 単価 ( 円 /M J) 灯油 A重油(小型ローリー) 石炭(原料炭以外の瀝青炭) バイオマス(国産広葉樹チップ) バイオマス(国産針葉樹チップ) バイオマス(輸入針葉樹チップ) バイオマス(ペレット)

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2.3 既存エネルギー事業とは異なる脆弱な事業環境 5 図 概要 2-4 メタン発酵事業の収支試算例 (出所)各種統計情報をもとに作成 (2) 持続的に必要とされる廃棄物処理機能を担うため、時限的な FIT 制度に依存する計画にすべきではない メタン発酵事業の事業収支も事業規模に応じて変化する。木質系バイオマスの発電とは異なり、規模の拡 大に応じて、収入は概ね規模に比例して増加するが、支出は緩やかな増加しかしない。したがって、売電収 入を含めないで事業が成立する規模を見出すことが可能である。 廃棄物処理機能は地域にとって持続的に必要であるため、FIT 制度の有無に関わらず事業成立するように 計画することが重要である。

2.3. 既存エネルギー事業とは異なる脆弱な事業環境

2.3.1. 木質系バイオマス

(1) 安定的な国内バイオマスの供給を担う事業者は現在のところ不在 現在の事業環境下で、なるべく大規模で高い事業性を実現するなら、カナダ等の海外からのペレット輸入 が最も簡単な手法である。なぜなら、発電事業向けに質および量について安定的に国内バイオマスを供給で きる事業者はほとんどいないのに対し、カナダ等の海外のバイオマス供給事業者は、量および質を保証した 取引が可能なためである。 国内の森林の伐採は、多くの場合、森林組合が森林所有者から依頼されて森林経営計画を立案の上で伐採 を行う。したがって、一定量の伐採木を供給しようとすると、一定の森林面積を一括で計画立案する必要が ある。ただし、森林所有者は図 概要 2-5 に示すとおり、1ha 未満の所有者が増加し、一定の森林面積の一 括管理が困難になっている。更に、所有者不明の森林もあるため、所有者特定から取り組む必要もある。 -800 -600 -400 -200 0 200 400 600 20t/d 50t/d 100t/d 20t/d 50t/d 100t/d 堆肥化あり 堆肥化なし 年間経費(千円/年) 売電収入 廃棄物処理収入 発電機整備補修費 残渣処分費 光熱水費 人件費 メタン発酵施設整備補修費 堆肥化設備 発電機 メタン発酵施設(50%) 収支(食品残渣20千円/t) 収支(食品残渣15千円/t) 収支(食品残渣10千円/t)

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6 2.3 既存エネルギー事業とは異なる脆弱な事業環境 図 概要 2-5 1990 年および 2010 年時点における国内の森林所有者 (出所)世界農林業センサスの累年統計をもとに一部推計 また、森林経営計画上での伐採計画を立案する際、本来は木の生育状況に応じて主伐か間伐かが選択され るべきだが、伐採木の販売単価が低下していることも影響し、補助金の多寡に応じて選択される場合もある。 このような流通構造であるため、量と質を安定的に供給する事業者が不在な地域が多い。森林から伐採、流 通・利用されるまでの主な流れは図 概要 2-6 のとおりであり、バイオマス供給者が需要量に応じて伐採量 を変動する構造にはなっていない。 図 概要 2-6 森林から伐採、流通・利用されるまでの主な流れ (2) 事業に影響が大きいバイオマスの水分率は、現在のところ供給者が管理する体制になっていない 従来、伐採木は木材市場に搬送され、競りによって購入者へ引き渡されてきた。現在も製材向け等には木 材市場を介して供給される。これらは建築資材として利用されるため体積基準に取引されてきた。 一方、発電等エネルギー利用時は発熱量が最も重要な仕様項目になるため、水分率管理が必須であるが、 従来の流通上で重要視されてこなかった点であるため、現在も伐採木供給者側は多くの場合管理していない。 したがって、エネルギー事業にとって影響が大きい水分率は、事業者自身が十分に管理し、取引条件を設定 する必要がある。 保有面積 1ha以上の 林家 6,191,324 45% 保有面積 1ha未満の 林家 560,797 4% 林家以外 (林業経営 体) 7,042,304 51% 保有面積 1ha以上の 林家 5,212,559 39% 保有面積 1ha未満の 林家 2,995,351 22% 林家以外 (林業経営 体) 5,177,452 39% 1990年時点 2010年時点 <推計> <推計> (出典)世界農林業センサスの累年統計を元に一部推計 私有林 約13.8 百万ha 私有林 約13.4 百万ha 所有者1 所有者2 所有者X 森林組合 (素材生産業者) 森林 経営 計画 委託 所有者?所有者の特定 ・・・ 施業地の集約 伐採 補助金が あるか 間伐 主伐 流通・利用 バイオマス 発電所 木材 市場 製材所 製材市場 流通業者 建築業者 施主 需 要 者 証 明 書 証 明 書

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2.3 既存エネルギー事業とは異なる脆弱な事業環境 7 (3) 従来同様の火力発電技術でも、バイオマス適用の経験知は十分ではない 現在、商業稼動中の国内の木質バイオマス発電での適用技術はいわゆる火力発電技術がほとんどである。 しかし、前述のとおり、古くから商業利用されてきた火力発電技術は数百~一千 MW の規模であるため、数 百~数十 MW が主な規模のバイオマス発電で適用される機器とは異なり、提供メーカーも異なる。 したがって、必ずしもメーカー側にバイオマス発電の経験知が十分蓄積しているわけではないため、設備 発注時にメーカーに任せ切りにすると、納入後に事業者自身が計画通りに設備運用できない懸念がある。発 注者側である事業者自身が発注する技術について十分勉強する必要がある。 (4) 海外での連続稼動実績があっても、バイオマスが異なるのであれば同様の性能を期待してはいけない 例えば、欧州で複数の連続稼動実績がある技術であっても国内に導入する場合は、実際に設備に供する予 定のバイオマスを利用した運転実験を十分に行って連続稼動の確認が重要である。 これは、バイオマスの組成や水分率に応じて燃焼特性が異なるため、たとえ同じ樹種であっても事業者自 身が利用予定の流通方法、管理手法等で実際に設備に供する予定のバイオマスを利用して事前テストや設計 をしないと、設備内で想定外の挙動を起こし、計画通りのエネルギー生産ができない可能性が高い。 特に、欧州等では燃料用に一定の品質が保証されたペレットが流通しているため、連続稼動実績は質が安 定したペレット利用を前提にしていることが考えられる。国内バイオマスは、欧州の木より水分率が高いス ギが多い上、水分率の管理がなされていないことが多いため、欧州と同様の設備稼働は期待できないことを 十分に認識する必要がある。

2.3.2. 湿潤系バイオマス

(1) 廃棄物処理事業のため、既存エネルギー事業のように燃料供給事業者が安定供給を保証してくれない 前述のとおり、湿潤系バイオマスは廃棄物であるため、燃料利用するには排出者から収集する必要がある。 通常のエネルギー事業であれば、燃料供給者から商業的に購入すれば、安定供給責任は燃料供給者側が負っ て、万一、安定供給が滞った場合には供給者側がペナルティーを支払う契約であることが多い。しかしなが ら、メタン発酵は廃棄物処理事業のため、事業者自身がバイオマス調達の責任を全面的に負い、誰もバイオ マス調達部分でリスク分担してくれない。 (2) 廃棄物処理事業のため、バイオマス性状は事業者自身による管理方法のノウハウ開発が必要である バイオマスの質についても、事業者自身による性状管理が必要である。廃棄物のため、個々の排出者のバ イオマス性状は異なる上、場合によっては同じ排出者であっても性状が変動する可能性が高い。 メタン発酵では、微生物が得意な成分と不得意な成分があるため、性状管理とそれに応じたメタン発酵設 備への投入管理が重要で、これらは事業者自身でノウハウを開発する必要がある。

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8 3.1 事業性を確保しつつ、地域と環境の側面もバランス良く考慮した目的を考える

3. 事業目的の考え方

前述のとおり、バイオマスエネルギー事業は、FIT 制度が適用される期間は適切な規模で適切に設備導入 を行った上で、安定的なバイオマス調達を行って適切に運営すれば事業は成立する。 しかし、目下の事業環境で事業性のみを追及すると、輸入バイオマスのみを利用した発電事業のように、 地域資源の利用に結びつかない 20 年を経て、その後は経済的に成立しない事業になりうる。 そのため、FIT 制度を活用しつつも、より持続的なエネルギー事業とするための方策について整理する。

3.1. 事業性を確保しつつ、地域と環境の側面もバランス良く考慮した目的を考える

事業による効果は、「事業性」、「環境」、「社会」の 3 つの側面がある。事業成立のためには、少なく とも事業性が確保される必要がある。 前述のとおり、バイオマスは簡単に商業利用できる状態でないため、地域のバイオマス利用を前提とする なら、事業性だけでなく環境や地域社会にとっての効果も期待する構想とし、事業性以外の目的を事業に持 たせるべきである。

3.2. 地域バイオマスの持続的利用を目指す

湿潤系バイオマスは廃棄物であるため輸入という選択肢はほとんどないが、木質系バイオマスはチップや ペレットとしての輸入が可能であるため、できる限り輸入を抑制し、地域バイオマスの利用量拡大による地 域生産高向上を図るべきである。 一方、湿潤系バイオマスは地域の生活や産業に由来する廃棄物であるため、これらの廃棄物を適切に処理 しつつ、豊かな生活や産業に繋げる発想が重要である。特に、従来の国内の廃棄物政策は焼却ありきの考え 方であったが、徐々に循環型社会に向けた技術開発や体制整備が進められてきているため、地域の状況に応 じて最適な廃棄物処理方法を検討することが重要である。メタン発酵についても FIT 制度が導入を促進して いるが、時限的制度にのみ依存する廃棄物処理方法ではなく、地域で持続的に運営できる方法の選択が重要 である。 図 概要 3-1 バイオマスの発生からエネルギー利用の流れ 輸入 バイオマス 森林資源 木質エネルギー等 (チップ・ペレット等) 積極的なエネルギー生産・利用 木材の拡販 輸入木材 (製材所等)生産活動 酪農・畜産系 生ごみ (一般家庭・事業者) 廃棄物の効果的なエネルギー利用・処理 下水汚泥 農業/漁業 住民生活 食品残さ 生産活動 (食品工場) 製材端材等 家畜ふん尿 輸入品 建築廃材 住 宅 産業廃棄物 処理場 ごみ焼却場 産業廃棄物 処理場 酪農・畜産家 による処理 発電等 規模 湿 潤 系 バ イ オ マ ス 木 質 系 バ イ オ マ ス

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3.3 事業性だけでなく環境や地域社会への効果も期待する事業構想とする 9

3.3. 事業性だけでなく環境や地域社会への効果も期待する事業構想とする

3.3.1. 木質系バイオマス

バイオマスエネルギー事業について、事業性だけに注目するのではなく、地域にもたらす経済効果に注目 する場合、事業によって得られる効果は違うものになる。 前述のとおり、発電事業を考える場合には一定規模以上でなければ FIT 制度があっても発電事業は成立し ない。また、熱供給事業については原油市況に応じて、常時、相対的な価格競争力が変動するため、需要家 側の理解がなければ収入が安定せず事業として成立しない。事業化規模の目安を図 概要 3-2 に示す。 図 概要 3-2 エネルギー事業の事業化規模の目安(現在) 利用可能なバイオマス量に応じて、実現可能なエネルギー事業が異なるが、例えば 8 万トン/年の木質バイ オマスがあるからといって、必ずしもそれを上限とする規模の発電所を自ら地域内に建設する必要はない。 もし、発電事業による事業性だけでなく、地域バイオマスの価値最大化を事業目的とするのであれば、最 も近隣の FIT 制度が適用可能な石炭火力発電所への混焼用燃料供給に特化する手法も考えられる。この場合 は、発電所側の要望により品質管理されたペレットに加工する必要があり、取引価格の交渉が必要だが、少 なくとも地域内に 8 万トン/年相当の発電所を新たに設置するより、バイオマスの調達余力が高い、大規模発 電所向けにバイオマス供給することで、地域全体での費用対効果は高まる。 図 概要 3-3 地域で利用可能なバイオマス量に応じた発電事業への関わり方 熱 供 給 事 業 発 電 事 業 地域 熱供 給等 バイオマス発電 現在 2 6.5 11 事業規模(バイオマス利用量)の目安例 [万m3/年] ※ これらの数字は木質の水分率等により変動するため実際に利用する木質で精査が必要 エ ネ ル ギ ー 事 業 産業と連携した 熱供給 補助策なしでは 事業として成立 せず 事業成否は原油市況等に依存 [万トン/20年] ※具体的には地域別に精査が必要 必要な バイオマス 約50 (ペレットとして) 約70 約180 中規模 バイオマス 発電所 中規模 石炭混焼 発電所 国内 集積・供給 拠点事業 集積・供給 拠点事業 ペレット化 小規模 バイオマス 発電所 カナダ等 海外産 ペレット 集積・供給 拠点事業 約160 集積・供給 拠点事業 大規模 石炭混焼 発電所 事業額(百万円) 13,160 6,345 12,521 17,900 経済波及効果(百万円) 13,723 6,441 13,234 17,835 費用対効果 104.30% 101.50% 105.70% 99.60% 単体事業 ○ × (現在の素材生産 コストでは困難) ○ ○ 発電効率(%) 42 16 37 23 規格に準ずる バイオマス生産 発電事業者の十分なバイオマス取扱いノウハウが求められる当該地域内のみの流通を前提とする場合は、 技術的課題

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10 3.4 持続的に地域社会で必要とされる事業を追求し続ける ただし、FIT 制度は随時電力の買取価格が改定されるため、図 概要 3-3 の内容も改定状況に応じて変化 するため、適用時点での FIT 制度の内容に応じて検討しながら、目的に応じた事業を構想すべきである。

3.3.2. 湿潤系バイオマス

メタン発酵の場合は、対象とするバイオマスに応じて地域社会における意義が異なる。 事業化規模の目安は図 概要 3-4 に示すとおりである。 図 概要 3-4 エネルギー事業の事業化規模の目安(現在) 家畜ふん尿処理としてメタン発酵を考える場合、25 トン/日以上の規模で事業性が確保できうるが、地域社 会での経済効果に注目し、畜産農業を地域産業として発展させることを考える場合には、廃棄物処理を効率 的に地域で一括処理する手法が考えられる。 例えば、国内の畜産農業が盛んな町で、地域で家畜ふん尿を一括処理する設備を市町村が設置および運営 したところ、町内の飼育頭数が設備導入前後で 20%程度増加し、町全体の生産額が約 40 億円増加した事例が ある。これは、地域で設備を導入したことにより、各畜産事業者が本業に専念しやすくなり、地域として経 済効果が向上した結果である。

3.4. 持続的に地域社会で必要とされる事業を追求し続ける

このように、バイオマスエネルギー事業は事業単体での経済効果には限界があるため、FIT 制度がなくな れば事業成立は困難である。このため、事業者は制度だけに依存する事業にせず、自らのもつ優位性や事業 実施地域の特性を軸に事業を組み立てることが、持続的事業とする秘訣である。すなわち、事業者の元々の 生業(本業)で培ったノウハウや既存の設備、人材、資材をうまく活用することに加え、地域における林業 や畜産農業などの農林水産業の規模や特性、エネルギーおよび副生物利用先となる産業など、地域のリソー スを最大限に活かすことが重要である。地域社会にとっての効果に着目して構想を描くべきである。将来の 「目指す地域の姿」を関係者で共有し、それをもとに、事業の役割を見い出し、目指す地域の姿に必要な機 能として事業計画を立案する。 畜産農業 家庭系ごみ (主に生ごみ) 農業/漁業 家庭 食品残さ 生産活動 (食品工場) 家畜ふん尿 事業系ごみ (主に生ごみ) 小売店 (スーパー等) 下水処理場 下水汚泥 輸入資材 メタン発酵技術 導入規模の目安 25トン/日~  地域内循環 農業の場合 5トン/日~  処理事業の 場合 50トン/日~ ※ 紙や剪定枝等と の組み合わせに より変化 消化液の 圃場還元 消化液の 農地還元 消化液 電気 消化液 FIT制度活用 による売電 期待される効果  悪臭低減  飼料コスト低減 (消化液の圃場還元が 可能な場合)  それによる畜産 コストの低減  焼却→メタン発酵 の場合  補助燃料の削減  肥料成分の循環 利用(消化液の 農地散布が可能 な場合)  それによる農業 コストの低減 現在

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3.4 持続的に地域社会で必要とされる事業を追求し続ける 11

3.4.1. 木質系バイオマスの場合

バイオマスエネルギー事業は、地域の森林から含めて俯瞰すると図 概要 3-5 のとおり、右下の一部に 過ぎない。また、森林を伐採して木材として販売する林業は、伐採に至るまでに植林や育林等の 50 年間とい われる期間を要するが、この間は販売収入がないためこれらの施業は補助金で賄われ、一般的な事業とは言 いがたい。 しかしながら、持続的なエネルギー事業のためには、地域内で森林施業について今後も生産性の向上を目 指した継続的な努力が必要であると共に、地域全体で木材の最終価値を最大化するための工夫が必要である。 図 概要 3-5 木質系バイオマスの目指す地域の姿(例)

3.4.2. 湿潤系バイオマスの場合

湿潤系バイオマスの場合は、「目指す廃棄物処理の姿」や「目指す畜産農業の姿」などを描き、地域の生 活と産業を支える廃棄物処理事業としての計画を立案する。 図 概要 3-6 湿潤系バイオマスの目指す地域の姿(例) 森 林 管 理 各 種 事 業 育苗・再造林 各種育林 活動 (間伐以外) 間伐 林齢増加 による大径化 主伐 原 販 売 家具 製材 合板 製紙チップ エネルギー 所内 所外 地域内販売 (地域内産業との連携) 地域外販売 (主としてFIT発電) 管理上必要な 作業(事業化 困難) 林齢に応じ た間伐材の 価値変化 伐採の種類に 依存しない原木 利用の最適化 バイオマスエネルギー事業 バイオマス調達 エネルギー変換 エネルギー供給 地域資源の価値 を最大化するた めの流通 地域の森林=地域の資源 高 低 地域の資源を活用 する産業 目指す地域の姿 観光等 継続的な生産性の向上 新産業 隣地での新産業との連携 地域主力産業である 農畜産業の発展 地域連携による 社会コストの低減 畜産農業 家庭系ごみ (主に生ごみ) 農業/漁業 家庭 食品残さ 生産活動 (食品工場) 家畜ふん尿 事業系ごみ (主に生ごみ) 小売店 (スーパー等) 消化液の 農地還元 堆肥化施設 肥料化施設 飼料化施設 焼却施設 下水処理場 消化液  循環型社会の構築  最終処分場の延命化  焼却処理量の減少  焼却施設更新費削減  焼却に伴うCO2削減 最 終 処 分 場 脱水ケーキ (堆肥) 堆肥の 農地還元 目指す姿、 期待される効果 メ タ ン 発 酵 施 設 熱 電気

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12 3.4 持続的に地域社会で必要とされる事業を追求し続ける

4. 事業計画立案時の留意点

4.1.1. 多数の失敗事例の轍を踏まないために 4 つの要素で事業を検討

エネルギー事業の事業構造と事業環境を理解した上で、事業目的を明確にしたあとは、具体的な事業計画 の立案に入る。 エネルギー事業は、「バイオマス調達」、「エネルギー利用」、「エネルギー変換」と取り巻くステーク ホルダーを含む「システム」の 4 つの要素で事業リスクの分析を進め、対応策を一つずつ検討しながら事業 リスクの低減を進めることが重要である。 本書の第Ⅱ章の導入要件には、この 4 つの項目にしたがって、事業リスクと対応策のヒントをまとめてい るので、事業計画立案時の参考にされたい。 (1) 木質系バイオマスの場合 図 概要 4-1 調査段階での検討内容(木質系バイオマス) ボイラー/発電機 高品質・ 低品質の 原木 製材端材 プレーナー屑 バーク 運搬 間伐材・ エネルギー 専用材 森林資源 木材関連事業者 (製材所等) 集積場 チップ化・ペレット化 設備 病院、工場 等 農業施設 システム • 誰にどれだけ熱や電気を供給するか検討 • 必要とされる圧力や温度等の性状を把握 • 取引単位と取引価格を供給先と合意 • 燃焼灰の発生量と性状を踏まえ、処理/ 利用方法や処理/販売単価を検討 • 木材資源の調達先やエネルギーの供給先との位置関係を 踏まえて立地を検討 • 関連法規制を確認し、必要な許認可手続を把握 • 自己資金でどれだけ賄えるか、誰からどう資金調達するかを検討 • FITが終了する20年後も踏まえて事業期間を検討 • 設計・建設期間も踏まえ、調査開始から運転開始までの スケジュールを検討 • 事業環境の長期変動リスクを踏まえ事業性を評価 電力系統 • 誰からどれだけ木材資源を調達するかを検討 • 水分率や密度、発熱量等の品質を把握 • 燃料規格の活用を検討 • 取引単位と取引価格を調達先との間で合意 • 丸太/チップのどちらの状態で乾燥するか、貯蔵・乾燥場所をどうするかを検討 • 木材資源の輸送方法(丸太かチップかペレットか、どの車両を使うか)を検討 • 輸送効率を踏まえて燃料化方法を検討 • FIT制度を使う場合、木材資源の種類を仕分けして管理 • 木材資源の品質やエネルギー需要 に見合った設備規模と設備の種類を 検討 • トラブル時のバックアップ設備や対策 を検討 • 運転体制、メンテナンス体制を検討 供給 変換 調達 製紙工場 バイオマス発電事業者(FIT発電事業者は対象外) 石炭火力発電事業者(バイオマス混焼) :自家消費

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3.4 持続的に地域社会で必要とされる事業を追求し続ける 13 (2) 湿潤系バイオマスの場合 図 概要 4-2 調査段階での検討内容(湿潤系バイオマス) 事業者 自家消費・FIT発電 下水処理場 一般家庭・事業者 生ごみ 食品工場 食品残さ 下水 液肥/堆肥 消化液 焼却炉 排水処理装置 畜産農家 家畜ふん尿 農家・地域住民 温室ハウス・農地還元 自家消費・FIT発電 調達 エネルギー利用 副生物利用 • どの程度エネルギー利用可能か検討 • 誰にどれだけ熱/電気/ガスを供給 するか検討 • 需要先の圧力/温度等の性状を把握 • 取引単位と取引価格を供給先と合意 変換 • 原料に適した技術の検討 • トラブル時のバックアップ設備や対策を検討 • 運転体制、メンテナンス体制を検討 メタン発酵設備 • 誰からどれだけ廃棄物を調達するか を検討 • 水分率とガス発生量、不適物含有 量の検討 • 原料単価/処理手数料の検討 • 効率の良い輸送方法の検討 • 廃棄物処理/輸送に関する法規制 への対応 • 消化液をどのように処理/利用するか の検討 • 消化液がどの程度発生するか検討 • 消化液液肥需要量の検討 • 消化液中の肥料成分や有害物質含 有量の検討 • 消化液処理単価/販売価格の検討 • 廃棄物の調達先やエネルギーの供給先との位置関係を 踏まえて立地を検討 • 関連法規制を確認し、必要な許認可手続を把握 • 自己資金でどれだけ賄えるか、誰からどう資金調達するかを検討 • FITが終了する20年後も踏まえて事業期間を検討 • 設計・建設期間も踏まえ、調査開始から運転開始までの スケジュールを検討 • 事業環境の長期変動リスクを踏まえ事業性を評価 システム 前処理 残さ 河川放流

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14 3.4 持続的に地域社会で必要とされる事業を追求し続ける

4.1.2. 設備発注前には技術について事業者自身による十分な情報収集と検討が必要

前述のとおり、バイオマスエネルギー事業に適用する技術は、メーカー側にも十分な技術ノウハウの蓄積 がない場合もある。そのため、メーカーに任せ切りにするのではなく、事業者自身で技術的な判断もできる ように準備することが事業成功の秘訣である。 本書では、施設および設備の基本設計段階において、事業者とメーカーの間の技術的知識のギャップを狭 め、また事業内容や地域特性に応じて検討漏れを最小限に抑えることを目的に、各設備項目で留意すべきポ イントを網羅的かつ簡潔に整理した(図 概要 4-3 、図 概要 4-4 )。内容の詳細については、「第Ⅲ章 技術指針」で述べる。 ただし、本書には必要最低限の留意点のみ整理しているため、より一層の設備発注時の技術的リスク低減 のためには、技術的専門家への相談も必要に応じて検討されたい。 (1) 木質系バイオマスの場合 燃焼発電設備計画時に留意すべき項目を図 概要 4-3 に示す。 図 概要 4-3 計画段階での検討項目(木質系バイオマス) 復水器 排ガス処理設備 蒸気タービン発電設備 通風設備 ボイラー燃焼設備 受変電 選別設備 燃料製造設備 (チッパー) 燃料供給 搬送設備 燃料貯留設備 燃料投入設備 灰出し設備 排水 排ガス 電気 設備 空気 設計時の 留意事項 • 運転時間 h • 燃料消費量 t/日 • 水分率 w% • 低位発熱量 MJ/kg • 燃料投入サイズ mm • 燃焼室の容積 m3 • 最大蒸発量 t/h • 蒸気圧力 Mpa • 蒸気温度 ℃ • かさ密度 (投入前/破砕後)t/m3 • 搬送能力 t/h • 燃料投入サイズ mm • 処理能力 t/h • 篩目 mm • 水分率 w% • 燃料成分 w% • 低位発熱量 MJ/kg • 運転時間 h/日 • チップ製造能力 t/h • 処理能力 t/h • 寸法 mm • かさ密度 t/m3 • 蒸気消費量 t/h • 圧力 MPa • 蒸気温度 ℃ • タービン排気出口圧力 kPa • 蒸気タービン発電出力 MW 燃料貯留設備 • 最大貯留量 t 燃料投入設備 • 容量 m3 • 復水器蒸気圧 MPa • 復水器蒸気温度 ℃ • 冷却水温度 ℃ • 外気温度 ℃ • 相対湿度 % • 設備能力 m3N/h • 電動機容量 kW • 一次押込みファン能力・二次 空気ファン能力 m3/min • 誘引送風機能力 m3/min • 吐出圧力 kPa • 排気筒高さ m • 排気筒排ガス吐出速度 m3/s • 設備容量 m3 • 灰コンベヤ能力 t/h • 受水槽 m3 • 給水タンク m3 • 純水装置 m3 • ポンプ類 m3/min • 薬品タンク m3 • 冷却塔 ℃ • 排水処理能力 m3/h • 排水貯留槽容量 m3 • ポンプ能力 m3/min • ポンプ吐出圧力 MPa

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3.4 持続的に地域社会で必要とされる事業を追求し続ける 15 (2) 湿潤系バイオマスの場合 メタン発酵設備計画時に留意すべき項目を図 概要 4-4 に示す。 図 概要 4-4 計画段階での検討項目(湿潤系バイオマス) メタン発酵槽 受入 ・ 供給設備 前処理設備 貯留設備バイオガス ガス調整設備脱硫等バイオ バイオガス 変換設備 発酵残さ処理設備 脱臭設備 余剰ガス 燃焼設備 排水処理設備 液肥利用 排水 設計時の 留意事項 • 消化液の処理方法 • 処理量 t/日 • 消化液貯留設備の容量 m3/年 • 設備の種類 • 容量 m3 • 型式 • 発電出力 kW • 熱回収量 MJ • 搬入物の種類・性状 • トラックスケール t • 受入槽 m3 • 受入量 m3/日 • 機器の種類 • 前処理残さの処理方法 • 混合槽の容量 m3 • 前処理残さ量 t/日 • 希釈水量 m3 /日 • 発酵槽の型式 • 撹拌方式 • 発酵槽の容積 m3 • 槽内液温度 ℃ • 滞留時間 日 • ガスホルダーの容量 m3 • ガスホルダーの素材交換 用水設備 • 受水槽 m3 • 給水タンク m3 • ポンプ類 L/分 • 薬品タンク m3 • 冷却塔 ℃ • 燃焼装置 • 放流水質 • 放流量 m3 /h • 排水処理能力 m3 /h • 排水貯留槽 m3 • ポンプ能力 m3 /h • ポンプ吐出圧力 MPa

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