伊丹市立伊丹幼稚園ビオトープ池におけるシャジクモの生育について
佐藤佳子
伊丹幼稚園ビオトープサポーター、伊丹市昆虫館友の会
Emergence and growth of Chara braunii
(Charales: Characeae)
in biotope pond of Itami kindergarten
Yoshiko SATO
Biotope Supporters of Itami kindergarten, ITAKON friend Club
(2014 年 12 月 28 日受理) 1. はじめに 伊丹市立伊丹幼稚園の園庭に 2010 年 8 月に造ったビ オトープ池において、同年 10 月にシャジクモ(Chara braunii)の生育を確認し、その後も毎年確認している。 そこで、ビオトープ造成の経緯や施工手法、これまでの 確認状況をまとめた。 2. シャジクモの確認状況 2010 年 10 月に確認したシャジクモは、長さ約 10㎝ のものが数本で、その後も同程度の生育を確認した。ま た、2012 年 11 月 23 日にビオトープ池の水を抜き、底 土を入れ替える際にもシャジクモを 1 本確認し、底土を 入れ替えた後に池に戻した。 2013 年には、池の 2 か所において、株状になったシャ ジクモが生育していたが、池の清掃作業や子どもたちの 遊びの際に除去されてしまったようだ。 しかし 2014 年にも発生し、清掃作業や子どもの遊び で除去してしまわないように管理した結果、これまでで 最も多く、5 株以上のシャジクモが発生、生育した。 3. 伊丹幼稚園におけるビオトープの計画と施工 3. 1. 目的 近年、伊丹市内では住宅地が広がり、土の地面で緑が 集まる場所は、公園・学校・寺社・川原などと限られ、 身近に触れられる水辺も少なくなっている。 伊丹幼稚園の園庭には、並木や草地、花壇、畑などい ろいろな場所があり、そこに生きものが生息している。 この環境を活かしつつ、新たなビオトープをつくること により、さらに多様な生きものの生息が期待できる。 園児が日々の生活の中で、多様な生きものやその生息 環境を間近に見て、触れ合う体験ができる空間づくりを 目指す。これらの体験により、生きものや自然に対する 興味が芽生えると考える。 3. 2. ビオトープ池の概要 都市部のプールなどでは、トンボ類、マツモムシ、ア メンボなどが飛来することから、園庭のビオトープ池に もこれらの生きものの飛来が期待できる。 トンボ類の生息には水生植物を生育させる必要があ る。水深は最大 20cm 程度とし、水生植物のうち抽水植 問い合わせ先 〒 664-0015 伊丹市昆陽池 3-1 伊丹市昆虫館友の会事務局 Tel: 072-785-3582 3-1, Koyaike, Itami-city, Hyogo, 664-0015
物と浮葉植物は、ギンヤンマ類やイトトンボ類などの産 卵、羽化、休息場所として重要である。 また、水際の傾斜は、傾斜に変化をつけることにより 環境の多様化をはかる。 さらに、園庭の樹木や草地は、トンボ類の成虫が採餌・ 休息する場所として重要である。 3. 3. ビオトープ池の施工法 ①池の底に細かい砂礫質の土を 10cm の厚さに入れ、た たき固める。 ②砂礫質の土の上に、幼稚園の畑の土を 10cm ∼ 25cm の厚さで入れる。 ③植物を植えつける。 抽水植物(水底の土の中に根を張り、茎や葉を水面 より上に出す植物)では、イグサ、セリ、ミゾソバ、 ツユクサなどを植える。 浮葉植物(水底の土の中に根を張り、茎や葉枝を伸 ばして葉を水面に浮かべる植物)では、デンジソウ、 ヒシなどを植える。 これらの植物は、昭和 35 年の伊丹の航空写真でも 多くみられた田畑や池で自生していたと考えられる種 で、伊丹市内で生育しているものを移植する。なお、 デンジソウについては、保護されたものを移植する。 また、トンボ類などが飛来するためには、上空から 水面が確認できる必要があるため、水面の植物の密度 を 20 ∼ 50%になるようにする。 ④水を入れる。 詳細は、図 1 ビオトープ池の施工計画図を参照のこと。 3. 4. 植栽した植物の入手方法 ビオトープ池に植栽した植物と入手方法は表1の通り である。 表1 ビオトープ池に植栽した植物と入手方法 植物名 入手方法、採取場所ほか イグサ 伊丹市池尻の休耕田で採取 セリ 伊丹市池尻の休耕田で採取 伊丹市寺本のクワイ等を栽培している 田で採取 ミゾソバ 伊丹市池尻の休耕田で採取 ツユクサ 伊丹市寺本のクワイ等を栽培している 田で採取 デンジソウ 財団法人伊丹市公園緑化協会より提供 コオニビシ 財団法人伊丹市公園緑化協会より提供 伊丹市池尻の休耕田では、近接の田で作業中の人に計 画を説明し、了解を得て採取した。 伊丹市寺本のクワイ等を栽培している田では、当時の 園長の知人が所有する田であり、計画を説明し了解を得 て採取した。 また、池尻の休耕田と寺本の田は、採取時には共に水 が張られていなかった。植物は根を含む土ごと採取した。 4. 施工後
の様子
4. 1. 施工後1か月の様子(2010 年 9 月) 施工後 1 か月では、コオニビシ以外の植物が定着し、 デンジソウが水面の広い範囲に広がった(写真 1)。アオ ミドロやクワイ、ウキクサの生育が確認された。クワイ は伊丹市寺本の田から採取・移植する際に、根茎などが 混ざっていたものと考えられる。 シャジクモは、施工後 2 か月、2010 年 10 月に確認さ れた。 4. 2. 施工後 4 年 3 か月の様子(2014 年 11 月) 施工後 4 年が経過し、水深の浅い A 区域と水深の深い B 区域で植物の生育状況に違いが見られるようになった (写真 2)。A 区域でデンジソウ、ミゾソバ、セリ、キツ ネノボタン、クワイがよく生育している。アオミドロが よく発生し、水面を覆うほどになる。イグサもよく生育 し、毎年、株を抜いて管理している。また、イグサの根 元からセリ、ミゾソバ、デンジソウが生える。 シャジクモは深い B 区域で確認し、5 か所で株状に分 岐している(写真 3, 4)。こちらもアオミドロがよく発 生し、シャジクモに絡みついている。管理を行うなかで、 アオミドロを除去しようとした際に、一緒にシャジクモ が抜けてしまうことがあった。シャジクモは根が浅くと ても抜けやすい。他にイグサ、デンジソウが生育してい る。 尚、昆虫では、アメンボ、クロスジギンヤンマ、オオ シオカラトンボ、ウスバキトンボが飛来して池で生息し、 幼虫および成虫が確認された。 5. シャジクモがビオトープ池で生育している理由として 考えられること シャジクモ属は日本に 15 種ほど生育するために、兵 庫県立人と自然の博物館に写真を送り、同定をお願いし た。回答は次のとおりであった。 シャジクモ( Chara braunii )に間違いありま せん。N 35cm 200cm 250cm 330cm 40cm 図 1 ビオトープ池の施工計画図
写真 1 施工後 1 か月(2010 年 9 月 7 日)
写真 2 施工後 4 年 3 か月(2014 年 11 月 6 日)
図 2 伊丹市の耕地面積の変化 謝辞