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平成30年度東京女子医科大学医学部・基礎系教室研究発表会(2018年12月22日)

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学会・研究会抄録

平成 30 年度東京女子医科大学医学部・基礎系教室研究発表会

日 時:2018 年 12 月 22 日(土)9:30~12:30

場 所:東京女子医科大学弥生記念講堂地下 A 会議室 主 催:基礎医学系教授会

1.Cell Sorter MoFlo を用いた微量細胞画分の解析と分取 (薬理学)三島大志

2.海馬体と嗅内野を繋ぐ線維連絡の解析 (解剖学)本多祥子 3.各代謝疾患モデル(心血管・肝・腎)における EPA 投与の効果とそのメカニズム (病理学(実験病理学分野))廣瀬織江 4.大脳皮質一次体性感覚野における痛覚情報処理領域 (生理学(神経生理学分野))尾崎弘展 5.中間周波電磁界の発生源である IH クッキングヒーターの普及と出産アウトカムに関する生態学的研究 (衛生学公衆衛生学)佐藤康仁 6.法医学における変性試料の DNA 解析 (法医学)町田光世 7.母語獲得過程を考慮した教授法開発にむけて:WH 疑問文誤用例の通言語的比較研究 (英語)遠藤美香 8.シミュレーションおよび ICT を活用した臨床技能教育プログラムの取り組み (医学教育学)山内かづ代 1.Cell Sorter MoFlo を用いた微量細胞画分の解析と

分取 (薬理学) 三島大志   近年の技術革新により,複数のレーザーや検出器を搭 載したフローサイトメーターが開発され,これまでの形 態学から飛躍的に進展してきた.またフローサイトメー ターのデジタル化により,高感度かつ定性・定量的な測 定が迅速に行えるため,臨床や研究の現場と活用範囲は 広い.一方,測定には煩雑な操作ステップを経るため, 施設間の解析データのバラツキが示唆されている.その ためデータの取扱は十分な配慮が必要であり,再現性・ 信頼性の高いデータを得るためには,適切なコントロー ルや蛍光の漏れ込み補正(コンペンセーション)が必要 である.  当研究室では担がんモデルを用いた転移前微小環境の 形成に関する研究を行っている.本発表では,担がんマ ウスの肝臓と転移前肺との間の細胞輸送の動態解析を行 うために,KikGR マウスを用いた in vivo 細胞追跡シス テムの研究について報告する.KikGR は紫色光を照射す ると緑色から赤色に光変換する蛍光タンパク質である. 我々は,担がん KikGR マウスの肝臓に紫色光を照射する ことで細胞を標識し,72 時間後の肺を解析した.肝臓か ら肺に移動する微量細胞画分を分取した結果,その細胞 集団は抗転移能があり,転移性の腫瘍細胞を死滅させる ことができた.  これらの研究にはフローサイトメーターは必須だが, 試料中にごく僅かしか存在しない細胞集団の解析・分取 には困難が伴うため,注意すべきポイントを紹介する. 2.海馬体と嗅内野を繋ぐ線維連絡の解析 (解剖学) 本多祥子   海馬体と嗅内野はいずれも記憶形成回路の基本構成要 素をなす重要な脳領域である.近年これらの領域に空間 記憶や脳内ナビゲーションに関わる様々な位置情報細胞 の存在が知られ注目を集めているが,その間を繋ぐ詳細 な線維連絡については未解明な部分が多い.私共はこれ まで,主にラット海馬体―海馬周辺皮質領域間の線維連絡 を解剖学的な手法で解析してきた.その結果,海馬体へ の主要な情報入力源である嗅内野浅層には,嗅脳溝にほ ぼ平行な帯状ユニット構造が存在することを見出した. 即ち嗅内野浅層において海馬体 CA1 や海馬台の局所へ 投射する細胞群はほぼ同じ長軸と幅の帯状に配列し,ま た海馬体を巡った情報を再び嗅内野へ戻す経路の中継点 である前海馬台についても,局所からの投射終末が嗅内 野浅層で帯状に分布していた.この嗅内野へ投射する単 一前海馬台ニューロンの軸索分岐形態を調べたところ, 終末分岐が嗅内野浅層内で plexus を形成し,前述の帯と ほぼ同じ範囲に終末するものがあることが分かった.嗅 内野の帯状ユニット構造はウサギにも見られたことか ら,動物種を超えて保存された基盤的構造であると推測 東女医大誌 89(1): 27-29, 2019.2 ―27―

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される.さらに普遍的な記憶回路の解明を目指して霊長 類マーモセットの解析を行ったところ,ラットとウサギ に共通する主要線維連絡の他,ラットに見られずウサギ で顕著に認められる線維連絡(CA1―前海馬台直接投射な ど)が確認された. 3.各代謝疾患モデル(心血管・肝・腎)における EPA 投与の効果とそのメカニズム (病理学(実験病理学分野)) 廣瀬織江・ 明石慶子・吉澤佐恵子・ 宇都健太・種田積子・小田秀明   近年,我が国では,糖尿病,動脈硬化,肥満等の生活 習慣病の増加が社会問題として注目されている.食生活 においては,動物性脂肪分や塩分・カロリーの過剰摂取 の他,魚等に含まれる ω3 系不飽和脂肪酸の摂取量の低 下がその要因と考えられている.ω3 系不飽和脂肪酸の一 つであるエイコサペンタエン酸(EPA)は,血小板凝集 抑制作用,血液中の脂質低下作用,動脈硬化性プラーク の抑制作用,抗酸化作用,抗炎症作用等の様々な作用が 知られている.しかし,その詳細なメカニズムに関して は不明な点も多い.今回我々は,生活習慣病に関連する いくつかの動物疾患モデルを作製し,EPA による疾患抑 制効果の検討を行った.  ワーファリン投与による動脈石灰化ラットモデルで は,EPA を投与することで,骨代謝マーカーの発現や MMP-9 を伴うマクロファージ浸潤を抑制し,動脈中膜石 灰化を抑制させた.  ストレプトゾトシン腹腔内投与で惹起された糖尿病尿 細管傷害マウスモデルでは,EPA を投与することで,酸 化ストレスやミトコンドリア型アポトーシスを減少さ せ,尿細管傷害やアルブミン尿を改善させた.  肝細胞癌(HCC)の誘発化学物質である Diethylnitro-samin 腹腔内投与により HCC を発症させた後に高脂肪 食を摂取させて肥満を引き起こした肥満関連肝細胞癌マ ウスモデルでは,EPA を与えることで,細胞増殖および STAT3 活性を阻害し,HCC のサイズの縮小を認めた.  EPA の潜在的効果を検証し,病態解明を行うことで, 今後の新たな治療戦略につながる可能性がある. 4. 大脳皮質一次体性感覚野における痛覚情報処理領域 (生理学(神経生理学分野)) 尾崎弘展・ 植田禎史・宮田麻理子   大脳皮質一次体性感覚野(S1)では触覚情報のみなら ず痛覚情報も処理されていると考えられているが,S1 内 で痛覚と触覚が分かれて処理されているのか,それとも 同一領域で処理されているのか明らかではない.  そこで我々は,げっ歯類マウスを用いて,痛覚情報が S1 内でどのように表現されているのかを調べた.まず, ヒゲ感覚神経の結紮により神経因性疼痛モデルを作成 し,S1 の活動領域を内因性シグナルイメージングにより 可視化した.その結果,ヒゲ感覚領域(バレル野)の活 動は低下する一方で隣接する dysgranular 領域が活性化 していた.また,カプサイシンをヒゲパッドに注入し, 神経活動マーカー(c-Fos)の発現が上昇した神経細胞の 分布を計測したところ,やはり dysgranular 領域で増加 しており,この領域が疼痛刺激に対して応答しているこ とが確認された.さらに,痛覚刺激に応答する細胞の分 布を電気生理学的に検証するため,熱刺激と触刺激を組 合せ,dysgranular 領域とバレル野から多チャンネル細 胞外電位記録を同時に行った.その結果,痛覚応答細胞 は dysgranular 領域に多く分布し,触覚応答細胞はバレ ル野に多く分布していた.  以上の結果から,S1 における痛覚情報処理は dys-granular 領域で行われていると考えられる. 5.中間周波電磁界の発生源である IH クッキングヒー ターの普及と出産アウトカムに関する生態学的研究 (衛生学公衆衛生学) 佐藤康仁・ 竹原祥子・小島原典子   〔緒言〕家庭における中間周波電磁界の発生源として, Induction Heating(IH)クッキングヒーターがある.本 研究は,IH クッキングヒーターの普及と出産アウトカム との間に関連があるかどうかを,都道府県レベルの生態 学的研究デザインによって明らかにする.〔対象と方法〕 IH クッキングヒーター普及率は,全国消費実態調査の結 果を用いた.出産アウトカムは,人口動態統計から自然 死産率,妊娠満 22 週以降の死産率,周産期死亡率,出生 時体重 2500 g 未満の割合を用いた.交絡因子には,女性 喫煙率および 35 歳以上の出産の割合を用いた.分析は, 重回帰モデルを用いて行った.〔結果〕2009 年と 2014 年 の横断データでは,IH クッキングヒーター普及率は,出 生時体重 2500 g 未満の割合との間に統計学的に有意な 負の関連が観察された(p=0.041,p=0.006).2009 年か ら 2014 年の変化量データでは,IH クッキングヒーター 普及率は,妊娠満 22 週以降の死産率との間に統計学的に 有意な正の関連が観察された(p=0.044).〔考察〕本研 究より,アウトカムに妊娠満 22 週以後の死産率を用いた モデルにおいて有意な正の関連が示された.しかしなが ら,この結果が直ちにリスクを示しているとは考えにく い.〔結論〕今後は他のデザインの疫学研究を実施するこ とで,本研究により観察された関連が真実であるのかを 検討する必要がある. 6.法医学における変性試料の DNA 解析 (法医学) 町田光世・木林和彦   法 医 学 に お け る 個 人 識 別 で は 主 に short tandem ―28―

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repeat(STR)解析が用いられている.環境への曝露な どで DNA が変性した場合に STR 解析は困難となること があるが,変性 DNA の解析に適した方法は確立してい ない.今回は,DNA 試料が変性した後においても解析 可能な SNPs の同定と変性試料の STR 解析に対する全ゲ ノム増幅の有効性について報告する.

 変性 DNA で解析可能な single nucleotide polymor-phisms(SNPs)を特定するため,amplified fragment length polymorphism(AFLP)法により SNPs 解析を 行った.次に,変性 DNA の STR 解析に対する全ゲノム 増幅法の有効性を検討するため,変性 DNA0.5 ng と 5 ng について全ゲノム増幅した後,STR 解析を行った.  AFLP 解析の結果,変性・未変性試料に共通に見られ るバンドから抽出した DNA の塩基配列中には SNPs17 個が存在した.そのうちマイナー対立遺伝子頻度 0.01 以 上の SNPs は rs144344421 であり,DNA が変性した場合 においても,個人識別に利用できる可能性があると考え られた.次に,全ゲノム増幅前後の STR 解析の結果で は,変性時間が長くなると,DNA5 ng を用いて全ゲノ ム増幅した時の STR 検出数が DNA0.5 ng を用いて全ゲ ノム増幅した時や全ゲノム増幅を行わない時の STR 検 出数よりも多い傾向がみられた.以上の結果から,変性 試料の DNA 解析では,(1)SNPs を用いる,(2)STR を用いる場合は,DNA5 ng で全ゲノム増幅を行うこと によって解析成功率の上昇につながると考えられた. 7.母語獲得過程を考慮した教授法開発にむけて: WH 疑問文誤用例の通言語的比較研究 (英語) 遠藤美香   生成文法理論の原理とパラメターのアプローチでは, 自然言語間での共通性をとらえた「原理」と,言語の多 様性をとらえた「パラメター」によって,「刺激の貧困」 の問題にもかかわらず言語獲得が可能であることに,説 明の枠組みを与えてきた.「母語として獲得される言語知 識(L1)と学習によって得られる言語知識(L2)の違い は何か?」という大きな問いにこたえるべく,その基礎 研究の手始めとして,本発表では,英語を母語として獲 得中の子どもの産出する WH 疑問文,および英語を目標 言語とする学習者の産出する WH 疑問文を分析対象と する.特に,目標言語からの逸脱形,誤用例を取り上げ 比較する.その際,英語学習者の母語に注目し,日本語 に加え,中国語・ドイツ語等,通言語的比較検討を行う.  母語獲得においては,その過程で目標言語から逸脱し た形式を生成する状態が生じたとしても,「否定証拠」と いった明示的な教示なしに,当該言語の最終状態に到達 できる.一方,言語学習では,目標言語からみて逸脱し た形式が産出される場合は,それを訂正するための教示 が可能である.その教示を行う際,学習者がより効率的 に訂正が行えるよう,どのような要因が誤用産出にかか わっているのかを母語獲得との比較において検証し,明 らかにしようとすることが,本研究のめざすところであ る.具体的には,パラメターの値設定に起因するものと, 英語特有の規則性に起因する産出例を分けて論じた. 8.シミュレーションおよび ICT を活用した臨床技能 教育プログラムの取り組み (1医学教育学,2整形外科,3化学) 山内かづ代1 萩原洋子2・岩倉菜穂子2 佐藤 梓3・久保沙織1・長田義憲2 岡崎 賢2・大久保由美子1   〔緒言〕超高齢社会を迎え,外来傷病分類別で筋骨格系 疾患は循環器系と並び第 2 位を占める.四肢脊柱の適切 な身体診察および臨床推論に基づく診断能力の高い医師 の育成が求められ,卒前卒後を通じ,診察技能教育は重 要な課題である.本研究の目的は,医学部整形外科臨床 実習における初診患者診察シミュレーション教育の介入 が,四肢脊柱の診察技能を向上させるか否かを検証する ことである.〔対象と方法〕対象は整形外科臨床実習を 行った医学部 5 年生のうち,外来診療に参加した 90 名で ある.方略 1)外来実習前日に症例を基盤とした学生同 士のアドリブロールプレイによる整形外科初診患者診察 シミュレーションを実施,指導医による個別フィード バックを行った.方略 2)整形外科外来において,学生 が初診患者の診察を実施,指導医が患者診察能力を簡易 版臨床能力評価法(mini-Clinical Evaluation Exercise: Mini-CEX)で評価し個別フィードバックを行った.評価 方法)方略2の前に方略1の初診シミュレーションを行っ た群を介入群(N=64),スケジュール等の理由で方略 1 を行わなかった群を非介入群(N=26)として Mini-CEX スコア(医療面接,身体診察,コミュニケーション,臨 床推論,プロフェッショナリズム,マネージメント,総 合臨床能力)を比較した.〔結果〕両群間に症例内容,難 易度および Mini-CEX の経験回数に差はなかった.Mini-CEX スコアのうち身体診察,臨床推論,総合臨床能力に おいて介入群が有意に高値を示した(p<0.05).〔考察〕 臨床実習の場で実践的なシミュレーションとフィード バックを組み合わせたプログラムを構築・実践したこと で四肢脊柱臨床技能を,超短期的,平均的には向上させ た.しかし獲得能力に個人のばらつきがあり,標準的に 臨床技能を獲得・定着できているとは言い難い.学修者 個人の認知負荷の不足が一因の可能性があり,今後獲得 能力の質評価,中長期的評価およびプログラムの質的改 善を要する.        ―29―

参照

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