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実施報告書

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Academic year: 2021

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公益財団法人大林財団

奨励研究助成実施報告書

助成実施年度 2018 年度(平成 30 年度) 研究課題(タイトル) 地震時による城郭石垣の動的挙動の解明及び対策工法の検証 研究者名※ 恒川 怜央 所属組織※ 金沢大学大学院 自然科学研究科 地震工学研究室 (株式会社オリエンタルコンサルタンツ) 研究種別 奨励研究 研究分野 その他 助成金額 68 万円 概要 過去に発生した大きな地震によって,多くの城郭石垣が被害・損壊 を受けていることが分かっている.この城郭石垣の修復・復旧の際, 崩壊前と同じように積み直したとしても,同じ大きさの地震が発生 した時に同様な被害を受けると考えられる. そのため,修復・復旧の際に被害を軽減出来るような対策工法の検 討を行う.過去の地震で崩壊に至った城郭石垣の中で,上載荷重の 無い城郭石垣を研究対象のモデルとして,寸法や周辺状況を参考に 模型を作成し,振動台実験を行う. 積石の水平変位計測には模型側面からビデオ撮影を行い,積石や裏 栗石の挙動を撮影し,累積水平変位を算出した.無対策の石垣と耐 震対策工法を適応した石垣の変位を比較することで,耐震対策工法 の性能を検討する. 発表論文等 ※研究者名、所属組織は申請当時の名称となります。 ( )は、報告書提出時所属先。

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2 1.研究の目的 2016 年熊本地震では、震度 7 という大地震が間をおいて活動する特異な地震発生現象により、 昭和 41 年から平成 27 年まで修復した熊本城石垣の 8 割以上が再崩壊した。この現象は過去に例 を見ないほどのものであり、城内では甚大な被害であった。すなわち熊本城内では、重要文化財 に指定されている 13 名所の櫓、門、建築物において深刻な被害が発生した。崩れた部分のみの 原形復旧、復元を行っただけでは、いつか発生するであろう地震によって再崩壊する可能性が高 い。それは、石垣の復旧は文化的遺産であるため原形復旧が重視されているためである。石垣は これまで試行錯誤に基づく知恵と経験によって構築された単純なものであるがゆえに、我々の科 学では解明しにくい部分も存在するため、崩壊メカニズムの調査、分析はあまり行われていない。 さらに、全国に存在している経年劣化した石垣の補修のための補強対策も確立されていない。 そこで本研究では、以下 2 点に注目した研究を行う。 ① 石垣模型の振動台実験及び実スケール石垣に対する崩壊挙動の解明 ② 模型実験の解析による補強工法の検証及び解析 本研究の成果は、石垣の美観を損なわずに耐震性を向上させる最適な補強工法を提案し、熊本 城の復元及び全国の劣化した城壁の補強対策指針としても社会に貢献することが出来ると考え る。 2.研究の経過 本研究で行った大まかな年間スケジュールを以下に示す.2019 年 4 月から研究を開始,①対象 石垣の選定及び予備実験,②実験による複数の対策工法の有用性の確認,③解析による実現象と の整合性の検証,④データ整理及びまとめ,⑤論文執筆及び投稿とした. ① 対象石垣の選定及び予備実験 ② 実験による複数の対策工法の有用性の確認 ③ 解析による実現象との整合性の検証 ④ データ整理及びまとめ ⑤ 論文執筆及び投稿 3.研究の成果

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3 本実験では,熊本地震で被害を受けた熊本城内石垣をモデルとし,既往研究を参考に模型を作 成する.城郭石垣の特徴の一つである反り勾配と同一とし,縮尺は振動台および土槽の寸法を考 慮し,実物の1/7.5 スケールのモデルとした.振動台を用いて模型実験を行う場合,すなわち模 型の挙動から実際の土構造物の振動性状や破壊性状を検討する場合,この間に成り立つ可能な相 似関係について考慮する必要がある.本研究ではおよそ1/7.5 スケールの模型を製作し,表 1 に 示す香川の相似則の考え方を参考に作成することとする. 城郭石垣は,主に積石,裏栗石,背面土,基礎地盤で構成されている.背面土は背面構造を支 持する土要素であるが,本研究では,破壊起因を裏栗石に着目するためと,振動台上の積載荷重 を軽減し,大きな加速度を模型に作用させるために背面土をクッション材(スポンジ)に置換した. また,石垣の積み方は主に乱積,布積の2 つに分類される.乱積は高さの不均一な石を積み上げ たもので,水平方向の並びは乱れる.一方,布積は高さのほぼ揃った石を積み上げ,水平方向に 列をなすように積んでいく方法である.熊本城内石垣は乱積で構成されているものが多いが,再 現するには不可能であると考え,本実験では布積とする. 表 1 香川の相似則 項目 重力場(模型/実物) 模型( ) 密度 1 1 長さ 1/7.5≒0.13 応力 1/7.5≒0.13 変位 1/20.5≒0.05 ひずみ 1/2.7≒0.37 振動数 4.5 加速度 1 1 図 1 城郭石垣模型の正面図 図 2 城郭石垣模型の側面図

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4 写真 1 城郭石垣模型(正面) 写真 2 城郭石垣模型(側面) 本実験で用いる入力地震動は,一般的な議論をするために,1 軸 NS 方向正弦波地震動を作成 し入力する.内陸部の地震動を参考にして 2Hz15s,前後に 3s ずつのテーパーを施した正弦波地 震動を作成した.前述に示したように香川の相似則の考え方に基づき作成した.そのため相似則 に従い,入力される地震動のスケールを変更しなければならない. 表 1 によると,加速度の影響はないものとするが,振動数は 4.5 倍にしたものが適当である. よって,前述した作成した 2Hz15s の正弦波地震動を基準に,振動数を 4.5 倍(時間を 1/4.5)に した相似波を作成した.作成された正弦波は 9Hz3.5s で前後に 0.7s のテーパーが施された相似波 となる.相似波の例を図 3 に示す.加速度の増大による石垣の崩壊挙動を再現するために,正弦 波の目標最大加速度を 300~700gal まで 100gal ずつ上昇させ,計 5 波の地震動を入力する. 図 3 相似則を用いた正弦波(300gal)

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5 ・耐震対策工法の概要 石垣は,歴史的に価値がある構造物であり,保全するための耐震補強は不可欠である.なかで も城郭石垣は歴史的な文化遺産としての価値もあり,既存の姿を変えることなく耐震補強を行わ なければならない. 本研究では,積石と裏栗石の関係が石垣崩壊に大きく起因していることから,積石の形状及び 配置に着目し,景観を損なうことがない耐震補強法を提案する. 本研究では,ジオテキスタイル工法のような,景観に配慮できることを前提に,より簡単な施 工で効果が期待できる工法を模索した結果,積石の控長に着目した.胴長積石に置換することで, 積石間の接地面積の向上によりせん断抵抗力の向上効果や,胴長が長くなるため物理的に裏栗石 の沈下を妨げる効果が期待されると考えた. 胴長積石の置換による耐震性能の向上は,これら 2 つの観点(裏栗石の沈下抑制,積石の抵抗 力向上)から耐震性能の確保を図る対策法である.また,この対策法はジオテキスタイル工法と 同様に,積石表面に影響がなく歴史的な文化遺産にも適用できる価値の高いものと考えられる. 胴長積石に置換することで,積石間の接地面積の向上によりせん断抵抗力の向上効果や,胴長 が長くなるため物理的に裏栗石の沈下を妨げる効果が見込まれる.城郭石垣の変形メカニズムを 図 4 に示す.地震時の城郭石垣では,作用する加速度が小さい場合は積石の変位量は小さく,ま た背面の裏栗石及び地盤と一体となった連続体として挙動するため、積石は直線状に変形する 「転倒モード」になる.さらに,作用する加速度が大きくなると,徐々に積石と裏栗石は不連続 体としての挙動を示すようになり,両者の位相のズレから,積石が前面に変形したときに積石背 面と裏栗石間に隙間が生じる.この隙間を埋めるように裏栗石が移動し,裏栗石上面は沈下する が,この上面より落下してきた裏栗石の存在により,一旦前方へ移動した積石が背面側へ移動す る際に元の位置まで移動出来ないため,積石中央部が前面に押し出された「孕み出しモード」に 移行する現象が生じることが分かっている. 図 4 石垣の崩壊メカニズム

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6 そこで,パターン 1.2 では,石垣破壊のそもそもの原因となる,裏栗石の沈下を抑制すること を目的に,胴長積石を段違いに置換した.胴長積石の配置位置を図 5 に示す.この時,積石表面 に〇のマークを付けたものが胴長積石である.全体の積石に対する胴長積石の置換率は,パター ン 1 では約 21.4%,パターン 2 では約 28.6%である. 同時に,何も置換していない無対策な石垣を加振し,比較することで,胴長積石への置換効果 を検討した. パターン 1.2 では胴長積石を水平方向に段違いに配置した.本節では胴長積石を水平方向ではな く,崩壊が多いとされる石垣の中上部に胴長積石を斜め方向に交差するように配置した.また胴 長積石を縦方向に配置することで,裏栗石の沈下の抑制や水平変位の抑制が経験的に分かってい る.そのため,胴長積石を斜め方向と縦方向に配置したモデルを検討する.作成した対策モデル をパターン 3,4 とし,図 6 に示す.全体の積石に対する胴長積石の置換率は,パターン 3 では 約 27.6%,パターン 4 では約 30.6%である.パターン 3,4 は 2 つが対になっている工法であるた め,合わせて評価を行っていく. 図 5 胴長積石配置位置 図 6 パターン 3,4 の作成過程及び対策モデル図

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7 ・石垣模型の動的実験の結果及び考察 前述に示す手順に従い,先に示したパラメータで石垣模型を作成し,300~700gal までの 1 軸正 弦波地震動を加振した. 【無対策モデル】 無対策と対策を施した石垣を同時に加振し,対策効果を比較,検討した.本研究では,特に積石 や裏栗石の変位挙動に注目した実験データの分析を行っている.予備的な実験において,中央部 にレーザー変位計を設置し,側面における石垣表面部の変位量との差を検証する実験を行った. その結果,両者には強い相関がみられたため,本研究では模型中央部の変位量ではなく,側面の 変位量を計測した.無対策モデルの加振結果の様子を写真 3 に示す.またビデオ計測から測定し た積石の水平変位量を図 7 に示す.無対策の石垣模型は前述で記した通り,作用する加速度が小 さい時に変位量は小さく,作用する加速度が大きくなると,徐々に積石と裏栗石は不連続体とし ての挙動を示すようになり,積石中央部が前面に押し出され,孕み出す現象が生じた.今回の実 験では崩落には至ってないが,計測結果を見ると崩壊と見なせる.600gal の入力地震波の際に, 無対策の石垣は大きな被害を受ける可能性があると考えられる.計測した裏栗石の沈下量は 87.7mm であった.以降の実験結果はこの無対策モデルの実験結果と比較していくこととする. 写真 3 無対策モデル 側面図(700gal 加振後) 図 7 無対策モデル 水平変位量 【パターン 1】 パターン 1 の加振後の側面写真を写真 4 に示す.また水平変位量を図 8 に示す.パターン 1 で の裏栗石の沈下量は約 51.3mm であった.パターン 1 と無対策モデルの裏栗石の沈下量を比較す る.パターン 1 の積石配置することで無対策モデルの裏栗石の沈下量が約 42%抑制することが出 来た.石垣の中上部に胴長積石を段組みに配置することによって,最も沈下量の大きかった中上 部・石垣裏における裏栗石の沈下を抑制できた. パターン 1 の胴長積石を段違いに配置することで,パターン 1 の水平変位は無対策と比べ約 25% となっている.本実験での正弦波 600~700gal は実際に発生した地震の地震波と比べ,相当に大き なエネルギーを有する地震動である.600gal,700gal と入力加速度を増加するに伴い,石垣の「転 倒モード」が発生し始め,下段の積石を含めた全体の裏栗石の沈下が起こり,石垣の中央部にお いて孕み出す「孕み出しモード」となったと考えられる.

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8 【パターン 2】 次にパターン 2 の加振後の写真を写真 5 に示す.また水平変位量を図 9 に示す.パターン 2 での 裏栗石の沈下量は約 39.0mm である.パターン 2 と無対策モデルの裏栗石の沈下量を比較すると 約 56%抑制されていた.水平変位は無対策と比べ,約 33%になっている.胴長積石に置換した 7, 8,11,12 段目の積石は,沈下した裏栗石が下部に入り込むほど変位しなかったため,水平変位 量が小さかったと考えられる.しかし,標準積石である 9,10 段目の裏栗石部分に沈下した裏栗 石が集中したため,崩壊には至らなかったが積石の水平変位量が大きくなり,パターン 1 のそれ よりも大きくなったと考えられる. 写真 4 パターン 1 側面図(700gal 加振後) 図 8 パターン 1 水平変位量 写真 5 パターン 2 側面図(700gal 加振後) 図 9 パターン 2 水平変位量

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9 【パターン 3.4】 パターン 3,4 の 700gal 加振後の側面写真を写真 6 に示す.またパターン 3,4 の水平変位量を 図 10,図 11 に示す.パターン 3 での裏栗石の沈下量が約 25.8mm であり,無対策モデルと比較 すると,約 71%も抑制することができた.次にパターン 3 の水平変位は無対策と比べ,約 17%で あった.胴長積石を縦に配置した部分における孕み出しは見られなかった.しかし,上載荷重が 小さいと考えられる 13 段目の標準積石が孕み出す結果となった.これは入力加速度振幅が 700gal の大きな加速度では,上載荷重の小さい上段の積石が摩擦力の少なさにより飛び出し孕み出す可 能性を示しており,飛び出し落下する可能性も視野に入れる必要があることを示唆している. パターン 4 の裏栗石の沈下量は約 28.0mm であり,無対策モデルのそれに比べ約 68%を抑制す ることができた.パターン 4 の水平変位は無対策と比べ,約 20%になっている.パターン 3 と同 様に,上段 12 段目以上の標準積石の飛び出しや孕み出しが確認された.これもパターン 3 と同 様に上載荷重が小さいため,摩擦力少ない積石の影響が表れたものと考えられる.また胴長積石 の縦配置部分での孕み出しは僅少であった. パターン 3 とパターン 4 を合わせて評価すると水平変位は約 19%になり,裏栗石の沈下量は約 70%の抑制が確認できた.胴長積石に置換した部分における水平方向の孕み出しが抑制すること ができたものの,大きな加速度(600.700gal)では,積石全体が裏栗石によって押し出され,裏栗 石の沈下が表れたものと考えられる. 写真 6 パターン 3.4 側面図(700gal 加振後) 図 10 パターン 3 水平変位量 図 11 パターン 4 水平変位量

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10 ・動的解析 これまで石垣における研究には,池本らの剛体ばねモデルによる石垣の耐震安定性に関する研 究,岡松・新谷の旧江戸城石垣の崩壊および復旧に関する研究,森本らによる城郭石垣の隅角部 形状とその数値評価法の研究,田中・山田の石積み擁壁の安定性評価法の研究,田中らの石垣断 面の 3D-FEM による数値解析実験及び山中らの高松城天守台石垣の解体修理に関する研究などが 挙げられる.石積擁壁の地震時の挙動に対する数値解析が鋭意進められている.例えば,有限要 素法(Finite Element Method:FEM)が用いられることが多いが,石積擁壁に適用した場合,不連 続形の取り扱いに問題がある.そのため,個別要素法(Distinct Element Method:DEM),や SPH 粒子による力学モデル法(Smoothed Particle Hydrodynamics:SPH)の適用がある.このように, 土木工学においても斜面崩壊など,大変形を取り扱う必要のある解析に使用される事例が増えつ つある. また,岩盤の大変形,破壊現象を動的に数値解析する手法として,不連続変形法(Discontinuous Deformation Analysis:DDA,以下,DDA 法と称する)が提案され,広く用いられてきている.こ れまでに DDA 法を用いて石積擁壁の地震時挙動を解析した事例は多くはないが,間地石と栗石 の個々の挙動は剛体挙動となるため,不連続な岩石集合体として考慮可能であることから DDA 法の適用について検証が行われている. DDA 法を用いて石積擁壁の地震時挙動を解析したものとして,森川らは仙台城の石垣の修復に 際して石垣の安定性について,DDA 法を用いた静的解析を実施している.また,橋本らは石積擁 壁の耐震性の評価を検証するために,模型実験を対象として DDA 法による動的解析を実施し, 解析は実験と整合した結果が得られることを確認している.しかしながら,残留変位の大きさや 変形については,実験と解析に差異が見られている.既往の研究において,実際の石垣を対象に DDA 法を適用した挙動解析は行われていない.

前述の振動実験の動的挙動の解析を行った. 不連続変形法(DDA :Discontinuous Deformation Analysis)は解析対象を要素ブロックの集合体として表し,ブロック内部の弾性変形とブロック間 の接触,衝突等の大変形を可能にした手法である.DDA は弾性体・非弾性体動的大変形解析を行 えることが特徴である.大小さまざまな石や裏栗石などで構成される石垣に適応できる.また, 完全な運動学的理論に基づく式の誘導とその数値処理,正しいエネルギー損失機構,ブロック間 の厳密な平衡条件の設定(力のつり合いとブロックの微小なくい込み量)などを行っている点があ る. モデルの作成にあたって,既往研究のモデルを基本にした.作成した解析モデルを図 12,図に 13 に示す.DDA は解析を行う際,地盤材料の粒形や形状に近いほうが実際の地盤の挙動を再現 できるものと考えられるが,要素数が増えるほど解析結果が不安定なり,又解析時間が膨大とな るということが分かっている.積石は実験のものに近い高さ方向が 56mm,奥行き方向が 100mm としてモデル化した.解析に使用した胴長積石は設計図より奥行き方向が 160mm のものを使用 した.裏栗石は石垣に接触する重要な要素のため,要素をできるだけ細かく設定した.試行錯誤 の結果,裏栗石の要素は 1 辺が 20mm を使用した.裏栗石の形は正方形とし,滑りを表現するた めに 45°回転させて配置した.また,解析に使用した物性値を表 2 に示す.

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11 図 12 解析モデル(パターン 1) 図 13 解析モデル(パターン 2) 表 2 解析モデルの物性値 積石 裏栗石 基盤 基礎地盤 粘着力(kN/m2) 0 0 49.8 10 内部摩擦角(deg) 40 40 40 20 単位体積重量(kN/m3) 23 20 24 18 ヤング率(kN/m2) 1.0×107 1.0×107 8.0×107 3.0×104 ポアソン比 0.25 0.25 0.25 0.45 DDA で解析を行う際のパラメータの中には,DDA 解析特有のパラメータとしてペナルティ係 数と粘性係数,時間刻みΔt がある.ペナルティ係数は,落石のような動的な運動が卓越するモ デルでは,数値を大きくするとブロック同士の反発力が大きくなり,過剰な跳躍運動になること があるため,基盤のヤング率と同様の値が推奨されると示されている.よって,本研究では,ペ ナルティ係数は砂地盤のヤング率と同様の値を設定する.一方,粘性係数については,落石解析 に DDA を適用し,斜面から落石が跳躍する際のエネルギーロスや飛翔中の空気抵抗を解析に組 み込むために,DDA に一律の粘性係数が導入されている.最後に時間刻みΔt であるが,時間刻 みが小さいと正確な解析が出来るが解析に要する時間がかかる.使用した解析の制御パラメータ を表 3 に示す.また,解析では振動実験で使用した正弦波を使用した.入力波形を図 14 に示す. 相似則を考慮した 9Hz,3.5 秒の正弦波を 200~700gal と順番に入力した.入力加速度間の間隔を 3 秒とし,合計 36 秒の加振時間とした. 表 3 解析制御パラメータ 解析制御パラメータ 値 時間ステップ 60000 ペナルティ係数(kN/mm2) 30000 時間刻み(s) 0.001 図 14 入力地震動(200~700gal)

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12 ・解析結果 最終加振後の水平変位量を変状図にしたものと実験との比較を図 15,16 に示す. 図 15,16 を見ると解析結果は実験結果に近しい結果が得られた.しかし,動的解析では背部に設置してい る裏栗石の挙動を正確に再現することが難しい(実験では玉砂利であるが,解析上では正方形で 表現しているため).そのため,解析上での裏栗石の寸法の縮小化から,裏栗石の沈下を表現す ることが課題に挙げられる. 図 15 解析と実験の比較図(パターン 1) 図 16 解析と実験の比較図(パターン 2) 4.今後の課題 (注)必要なページ数をご使用ください。 ・実験に関して 動的実験では今回行った対策工法のパターンの他にも,配置方法は多く考えられる.今回の胴 長積石の置換率よりも小さい置換率で,効果的な対策工法の検討及び実験を行う. 今回の対象石垣は文化遺産であるため,積石自体に対策を施すことが出来なかった.このほか にも裏栗石の沈下を抑制するジオテキスタイルを用いた対策工法が考えられる.本実験同様に, 相似則を用いた動的実験を行い,ジオテキスタイルの有用性の検証を行う. ・解析に関して 3.研究成果でも述べているが,実験と解析の整合性の検証を行った結果,近しい結果が得られ たが,裏栗石の挙動の再現まではいかず課題が挙げられた.裏栗石の寸法を小さくし,振動時の 沈下を表現することが出来る.また解析に使用した解析制御パラメータを調整し,より良い解析 結果を得る. 上記の解析結果を踏まえ,実スケールモデルでの地震時シミュレーション解析を行い,対策工 法の有用性を検証する.

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