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幼児と妊娠中の母親および家族への性の健康クラスの影響

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Academic year: 2021

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原  著

幼児と妊娠中の母親および家族への性の健康クラスの影響

―クラスに参加した母親の気持ちと家族の反応の変化から―

Impacts of a sexuality education class on children, pregnant

mothers and their family: changes in mothers' feelings,

concerns and family response

片 岡 弥恵子(Yaeko KATAOKA)

*1

須 藤 宏 恵(Hiroe SUTOU)

*2

永 森 久美子(Kumiko NAGAMORI)

*1

堀 内 成 子(Shigeko HORIUCHI)

*1 抄  録 目 的  研究目的は,性の健康クラスに参加した母親のクラス前後の気持ちおよび行動について記述すること で,クラスに参加した母親と子どもおよび家族にどのような変化があったかを明らかにすることである。 対象と方法  研究デザインは,質的記述的研究であった。クラスに参加予定の母親10名を対象に,クラス前と終 了後の2回,半構成的インタビュー法によりデータを収集した。データからクラス前後の変化ととらえ られた部分を抽出し,コード化しカテゴリーに分類した。 結 果  母親の語りは,性教育の第一歩,新しい家族を迎えること,家族で迎える出産に分類された。性教育 の第一歩として,クラス前の母親は,子どもへの【性に関する正しい知識の伝授】を望んでいたが,性 について【どこまで話したらよいかという悩み】を持ち,【子どもに理解しやすい方法の探求】を試みて いた。クラス後には,【性について子どもに伝えていく自信】を高め,【子どもの理解への手ごたえ】を得 ていた。同時に,自分自身の受けた性教育について振り返り【母親自身が受けた性教育への疑問】を感 じていた。新しい家族を迎えることについては,クラス前【上の子どもへの対応の難しさ】を感じ【無理 のない弟妹の受入れ】を望んでいた母親は,クラス後に【赤ちゃん返りを受止める】,【子どもの成長の実 感】を得ていた。家族で迎える出産に関することでは,【家族で迎える出産への期待】から【子ども立会 い出産の準備】がクラスを受ける動機になっており,クラス後は【家族で共有知識を持つ心強さ】を持ち, クラスは【今回の出産に向き合う】契機になっていた。 結 論  上の子どもや家族で迎える出産に向けての母親の気持ちは,クラスの前後で肯定的に変化していたこ

日本助産学会誌 J. Jpn. Acad. Midwif., Vol. 22, No. 2, 158-169, 2008

*1聖路加看護大学看護実践開発研究センター兼任研究員(Research Center for Development of Nursing Practice, St. Luke s College of Nursing) *2かみや母と子のクリニック(Kamiya Mother and Child Clinic)

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Ⅰ.序   論

 社会および家庭環境の変化,性情報の氾濫やそれに 関連する犯罪の増加などの影響を受け,若者の性に 関する問題が深刻化している。文部科学省(1999)は, 小中高校の性教育の手引書を発刊し,男女共同参画基 本計画(2000)では,リプロダクティブヘルスを重視し, 学校および家庭・地域における適切な性教育の推進を 打ち出した。国際的には,2005年の世界性科学会議に て ミレニアムにおける性の健康 の主要目標の一つ として「セクシュアリティに関する包括的な情報や教 育の提供」が示された。しかし近年日本では,マスコ ミでの性教育に関する論争に端を発し行き過ぎた性教 育としてのバッシングが起こり,早期の性教育が及ぼ す子どもたちへの悪影響を危惧する声が高まっている。  これまでの性教育論争を踏まえ,性教育は知識のみ を切り取って教える方法ではなく,いのちの教育との 認識に基づいて,自分そして他者の性と生の尊重につ いて伝える重要な機会に位置づけている。助産師は, いのちの誕生の場に立会う者として,子どもたちに生 命の尊さを伝える貴重な職種である。特に,性教育の スタートと考えられる幼児期の子どもに対して,出産 を題材とした性教育(桑原&原,2004),性教育として の子ども立会い出産(河合ら,2003),幼稚園・保育園 に出向いての出前講座(関口,2008)など,様々な取り 組みが報告されている。  我々は,2004年から新しく兄姉になる幼児期の子ど もとその家族を対象とした性の健康クラス「赤ちゃん がやってくる」(以下,性の健康クラスと示す)を開催 している。クラスの主な目的は,妊娠および出産のプ ロセスをはじめ性に関する正しい知識を伝え, いの ちの誕生 の場面を通して,自分の性・生を大切にす とがわかった。これは,クラスの影響と推測することができる。対象者を増やし,家族への長期的な影 響を踏まえてクラスの効果を明らかにすることが今後の課題である。 キーワード:性教育,きょうだい,経産婦,情動,家族 Abstract Purpose

To describe feelings and behaviors of mothers before and after participating in sexuality education class in or-der to identify family's changes due to the classes.

Method

This was a qualitative descriptive study. Volunteer mothers attended one two-three hour class with the sibling(s), and occasionally other family members. Ten pregnant mothers participated in individual semi-structured interviews before beginning classes and one month after they ended. Recorded interviews were corded and catego-rized to identify changes in family.

Results

Mothers concerns were categorized into three themes: sexuality education as a first step, sibling preparation for the older child and family, and family-centered childbirth. Mothers had [hoped to provide scientific knowledge on sexuality for their child], however they [worried about what topic to discuss with their child] and [searched for the age-appropriate approach for teaching sexuality]. After the classes, they [felt confident to talk about sexuality with their child], and [could see evidence of the child's good understanding of the classes]. At the same time they looked back on the past and [criticized their own sexuality education in childhood]. During pregnancy and before the classes, mothers【felt difficulty in dealing with their older child]and [hoped the older child would accept the newborn smoothly]. After the classes they [felt reassured that regression by the older child was healthy]and [real-ized how the class helped their child to grow up]. Mothers [expected childbirth with family] and [wanted to prepare the child to join the childbirth]; these were motives to participate in the classes. After the classes mothers[felt confi-dent because of having same knowledge base]in the family. In addition, the classes [created the opportunity to face the coming childbirth].

Conclusion

The classes, one two-hour session, were effective in promoting positive changes for pregnant mothers with regard to their concerns for the older child and family centered childbirth. To confirm and clarify the effects of the classes we have to increase the number of participants and also assess long term effects.

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る気持ちを育むことである。(堀内ら,2005)。中村ら (2006)のクラス後のアンケート調査では,子どもの 否定的な反応は認められなかったが,子どもとその家 族に与えた実際的な影響について検討することができ なかった。  そこで,本研究の目的は,性の健康クラスに参加し た母親のクラス前後の気持ちおよび行動,家族の反応 について記述することで,母親と子どもおよび家族が, クラス前とクラス後1ヶ月でどのような変化があった かを明らかにし,クラスの影響を検討することである。 本研究の結果は,幼児と家族への性教育のあり方や経 産婦と上の子どもへの支援を考察するための基礎研究 になると考える。

Ⅱ.性の健康クラスのプログラム

 プログラムは,ヒックリング(1999)の「性の健康」 教育,鈴木(2004)や高梨(2005)の助産師が行う「い のちの教育」,Fortierら(1991)およびWilfordら(1986) のきょうだい準備クラスを基盤に作成された。ひとの 「生きる力」を認識することで子どもたちの自己肯定 感を育み,いのちを尊重する気持ちを養うこと(鈴木, 2008),性の健康に関する科学的な知識を得て自分の 安全を守るために自己決定できること(ヒックリング, 1999)を目指している。  プログラムの目標は以下の3点である。第1の目標 は,幼児期の子どもが,妊娠および出産,性に関する 科学的な正しい知識を習得し,出産の場面を通して親 および周囲の人からの愛情を実感することで,自分の 性・生を大切にする気持ちを育む。2点目は,子ども がこれから生まれてくる赤ちゃん(弟妹)の存在やそ の特性を理解し,兄姉の役割を持って家族全体で育て ていく準備ができる。3点目は,妊娠中の母親と家族 が,兄姉となる子どもの気持ちや行動を理解し,複数 の子どもの子育てに自信を持つことができる。これら 3点の目標を達成するためにプログラムを構成した(表 1参照)。プログラムの詳細については,堀内ら(2005) 中村ら(2006)にて報告されている。

Ⅲ.研 究 方 法

1.研究デザイン  本研究は,質的記述的研究であった。 2.研究方法 1)研究協力者  研究協力者は,第2子以降を妊娠中であり,クラス に参加予定である母親で,日本語での意思疎通,読み 書きが可能であることを条件とした。母親に研究協力 を依頼したのは,子どもや家族の変化を敏感に捉える 表1 クラスの概要 項    目 時間 内      容 子どもたちとの時間(10:30∼11:10) 担当者の紹介 20分 担当者の自己紹介と助産師の仕事について説明する。 生まれた時の話 子どもが生まれた時のお母さんの気持ちは、どのようなものだったかを伝える。 生まれてくる赤ちゃん:  赤ちゃんと自分の体の違い 子どもたちが交代で実物大の赤ちゃん人形(男の子・女の子)を抱く。①衣服を脱がせながら観察:自分の体と赤ちゃんの体の違いに気付かせる。 ②男の子と女の子の体の違い(性器)について説明する。 赤ちゃんが通ってくる穴(女の子)、赤ちゃんの元が作られる場所(女の子、男の子) 赤ちゃんが生まれるまでのプ ロセス 15分 ①妊娠の成り立ち(卵子と精子との受精)、出産について説明する。②塩粒、大豆、3ヶ月・5ヶ月・6ヶ月・8ヶ月の胎児モデルで、胎児の発育を説明する。 ③人形(妊婦と赤ちゃん)を用いての劇にて、出産の流れを伝える。 まとめ 5分 「誰もが大事にされて育つ・わたしも大事・あなたも大事」という内容を伝える。 親との時間(11:15∼12:00) ディスカッション 35分 ①助産師が以下の事項について説明する。  ・上の子どもとの関わり方  ・子ども立会い出産について  ・生まれてからの子どもの反応(主に、赤ちゃん返り) ②親からの質問に答える。 ③参考図書(特に絵本)リストを配布し、説明する。 VTR 10分 「みんな生きている」(NHK放映)

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ことができると考えたからである。研究の依頼は,ク ラス開催前に参加者リストから研究協力者の条件を満 たす者に,研究についての説明文書,研究参加の意思 表示の葉書を郵送した。葉書にて協力の意向が得られ た者に,電話にて連絡を行い,インタビューの日時を 決定した。 2)データ収集方法  データ収集は半構成的インタビューを2回行った。 第1回目のデータ収集は,クラス参加1から7日前に, 第2回目はクラス参加後1ヶ月までに行った。インタ ビューの内容は,クラスの内容に合わせて「妊娠・出 産・性の教育に対する考え方や日常の取り組み」,「妊 娠してからの上の子の様子やかかわり」,「上の子の 態度や言動」などについて,クラス前後の変化やその 時々の様子や気持ちを語ってもらった。データ収集は 2006年7月から2007年8月に,研究協力者の希望する 場所(研究協力者の自宅,ファミリーレストラン,大 学の会議室等)で行い,1回のインタビュー時間は45 分から90分であった。インタビューの内容は了承を 得て,ICレコーダに録音した。 3)データ分析方法  録音されたインタビュー内容を文章化し,逐語録を 作成した。本研究の目的は,母親と子どもおよび家族 がクラスの参加前後でどのような変化があったのかと いう現象を記述することである。そのため,体験に関 連している要因や独自性に注目し,文脈を重視しなが ら体験を記述する分析方法(萱間,2007)を参考にした。 まず,逐語録の中から母親から見た子供の言動,母親 の気持ちや行動について語っている部分を抽出し熟読 し全体の意味を把握した。それぞれのデータからクラ スの前後の変化ととらえられた部分を取り出し,コー ド化し類似性と異質性を比較しながらカテゴリー化し た。さらに,クラス参加前後に共通するテーマを導き だし,変化の内容を記述した。 4 )データ分析の信頼性と妥当性の確保  すべての共同研究者は,クラスの計画,実施に関わ り,内容および方法についてよく理解していた。収集 したデータは,データ収集,分析,考察の過程におい て,共同研究者間でのディスカッションを通して,研 究者が研究協力者に対して公正さを保ち,得られた情 報の妥当性を図った。 3.倫理的配慮  研究協力の依頼の際,研究への協力は自由意志であ ること,途中辞退の自由,プライバシーの保持,匿名 性の厳守,得られたデータの安全な処理,研究論文の 公開の可能性について,文書を用いて口頭で説明し, 文書にて同意を得た。なお,本研究は聖路加看護大学 倫理審査委員会において承認された研究計画書に基づ いて行った(承認番号06-079)。

Ⅳ.結   果

 研究協力者の概要を表2に示した。10名の研究協力 者の年齢は,30代前半が8名,後半が2名であった。8 名が2人目を,2名が3人目を妊娠中であった。上の子 ども(クラスに参加した子ども)の年齢は,2歳から5 歳で,3歳が最も多く7名であった。上の子どもに妊娠 を告げた時期は,9名が妊娠初期であり,1名が妊娠中 期であった。クラスの参加者は,6組が母親および父 親と子どもであり,3組が母親と子どもであった。1組 は,母親と祖母,子どもの参加であった。アンケート に記載されたクラス参加のきっかけは,友人,助産師 からの紹介,ホームページ,病院に置いてあるパンフ レットと様々であった。  尚,結果の記述は,カテゴリーを【 】,サブカテ ゴリーを〔 〕で示した。「 」は,インタビューデー タを示しており,わかりにくい部分は( )に言葉を 補った。表3にカテゴリーとサブカテゴリーを示した。 1.性教育の第一歩  クラス前の母親の気持ちおよび行動は,【性に関す る正しい知識の伝授】【どこまで話したらよいかとい う悩み】【子どもに理解しやすい方法の探求】の3カテ ゴリーが,クラス後は【性について子どもに伝えてい く自信】【子どもの理解への手ごたえ】【母親自身が受 けた性教育への疑問】の3カテゴリーが抽出された。 1 )クラス前 (1)性に関する正しい知識の伝授  クラスの前の母親は,妊娠の成り立ち,出産のプロ セスについて,子どもたちにできるだけ正確な知識を 伝えたい,つまり【性に関する正しい知識の伝授】を 考えていた。出産を経験している母親たちであって も,妊娠や出産について「親の私たちでもわからない」 「私も実際よくわかっていない」と語っていた。そこで, クラスの中では〔専門家からの話が聞きたい〕という 希望を示していた。家庭での性教育を肯定しながらも, 専門家からの説明で子どもに【性に関する正しい知識 の伝授】を望んでいた。また,「自分も(クラスで)勉

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強して」と言う言葉で表されているように,母親自身 もクラスで〔子どもと一緒に勉強したい〕という希望 を表し,正しい知識を共有した上で,家庭での教育に つなげようとしていた。 「間違った知識で一人歩きしてっちゃうのは,段々私たちも 介入できなくなるし。親が話すことももちろん大事ですけ ど,やはり専門的な立場の方からの機会もちゃんと与えた 上で親が話すってのが,すごく理想だなと思って。」(Hさ ん) 「妊娠に関する本などを見せて,“お腹に赤ちゃんがいるん だよ”なんて説明したんですけどね。親の私たちでもわか らないのに子どもってどう伝えたらいいのか,なんとなく, …漠然とわからないところがあるので,痛いところは見な くてもいいけど,流れとして,こうなってということ(出 表2 研究協力者の概要 年 齢 上の子ども年齢と性別 第1子に妊娠を告げた時期 クラス参加の動機 参 加 者 A 30代前半 第1子:3歳男子 妊娠初期 ・妊娠や分娩の経過をどのように子どもに伝えたらよいの かを知りたい。 ・子ども立会い出産を検討したい。 ・上の子どもへの対応方法を知りたい。 母親・第1子 B 30代後半 第1子:3歳女子 妊娠初期 ・上の子どもとの関わり方について専門家からの話を聞きたい。 ・子ども立会い出産の準備のため。 母親・父親・第1子 C 30代前半 第1子:3歳女子 妊娠中期 ・上の子が赤ちゃんを心地よく受け入れられる環境を提供したい。 母親・父親・第1子 D 30代前半 第第2子:3歳男子1子:5歳男子 妊娠初期 ・病院でパンフレットを見た。上の子が妊娠や出産について知りたがっていたため,よい機会と思った。 母親・祖母・第1子第2子 E 30代前半 第1子:2歳男子 妊娠初期 ・助産師から紹介され,興味を持った。 母親・父親・第1子 F 30代後半 第第2子:1歳男子1子:5歳女子 妊娠初期 ・助産院のHPで知った。2人目の時も上の子が妊娠・出産,赤ちゃんのことに興味を持っていたので,よい機会にな ると思った。 母親・第1子 G 30代前半 第1子:3歳男子 妊娠中期 ・インターネットでマタニティセミナーを検索し,HPを見つけた。上の子とどのように関わればよいか不安があっ たため。 母親・父親・第1子 H 30代前半 第1子:2歳女子 妊娠初期 ・友人から紹介された。妊娠や出産について専門家からの話が聞きたい。 母親・父親・第1子 I 30代前半 第1子:3歳男子 妊娠初期 ・(新聞)記事をみた。上の子どもが,赤ちゃんはどのように生まれてくるのか想像できるようになってほしい。 ・子ども立会い出産の準備のため。 母親・第1子 J 30代前半 第1子:3歳女子 妊娠初期 ・HPを見た。下の子の受け入れをスムーズにしたい。 母親・父親・第1子 表3 クラス前後の母親の気持ちと行動 クラス前 クラス後 語られた内容 の分類 カテゴリー サブカテゴリー カテゴリー サブカテゴリー 性教育の第一 歩 性に関する正しい知 識の伝授 専門家からの話が聞きたい 性について子どもに 伝えていく自信 性を特別視しないことに納得 子どもと一緒に学びたい やってきたことを保証されることでの安心感 子どもに理解しやす い方法の探索 口での説明だけでは効果はない 子どもの理解への手 ごたえ 子どもが学ぶ姿を見ての喜び 楽しく学べる方法で伝えたい 子どもなりに理解していることを実感 どこまで話したらよ いかと言う悩み 子どもの質問に対する戸惑い 母親自身が受けた性 教育への疑問 年齢によってどの程度理解できるのか 新しい家族を 迎える準備 上の子への対応の難 しさ 赤ちゃん返りへの漠然とした不安赤ちゃん返りの対応への疑問 赤ちゃん返りを受止める 赤ちゃん返り対応への自信赤ちゃん返りの見通しがついた安堵感 無理のない弟妹の受 入れ 弟妹の受入れに対する心配 子どもの成長の実感 目に見える成長を感じる 上の子の複雑な思いへの理解 小さな変化を見守る 受入れを促すための母親なりの準備 家族で迎える 出産 家族で迎える出産へ の期待 家族で共有知識を持つ心強さ 子ども立会い出産の 準備 今回の出産に向き合う

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産のプロセス)が見えるといいかな。」(Cさん) 「このお腹の中に赤ちゃんだけが入っているわけではなくて, 実際は何かに包まれているわけですよね。そういうことも わからない。私も実際よくわかっていないので,うまく説 明できないんですよね。…(クラスで)自分もその説明を 聞いて自分も勉強して,それでそこから一緒に話ができれ ばいいかなと。」(Dさん) (2)どこまで話したらよいかという悩み  母親たちは,子どもに対し,妊娠や出産,性につ いて【どこまで話したらよいかという悩み】を持って いた。これまで子どもに妊娠や出産,性について全 く話したことがない母親は,「どうしたらいいのだろ う」「わからないです」というように率直に語っていた。 子どもから質問を受けたことがある母親は,「あいま いに流してしまっている」というように,これまで明 確な回答はしてきていないことを語り,〔子どもから の質問に対する戸惑い〕を感じていた。クラスに参加 した子どもたちの年齢は1歳から5歳と幅があったが, 母親たちは,〔年齢によってどの程度理解できるのか〕 についての疑問を持っていた。クラスに参加した母親 たちは,幼児期の子どもたちに性について教えるこ とに肯定的であり,【性に関する正しい知識の伝授】を 考えていた。しかし,【どこまで話したらよいかとい う悩み】があり,これがクラスを受ける強い動機にも なっていた。 「赤ちゃんはどこから生まれてくるの?と聞かれて迷ったん ですけど,赤ちゃんの出る出口があるんだよと言って。ど ういう答えがよかったんだろうと思っていました。…今で もどうしたらいいのだろうと思いますね。やはり年齢に応 じてどういう説明をしていくというのは悩むところですよ ね。まだ,小さい3歳なので,まだいいかという思う一方, 本当にいいのか悩むところです。」(Gさん) 「どの段階で,どういうふうに,そしてどこまで話したらい いのかってのが,わからないです。それはちょっとわから ないですね。話すことに抵抗があるわけではないですが。」 (Jさん) 「どこから,どういうふうに生まれてくるのかっていうのと, どうして赤ちゃんができるのかということ。たぶん,今は, お腹を切って生まれてくると思っているような気がするの ですが。そのへんが説明できない。どこまで,どういうふ うに言ったらいいのか。あいまいに流してしまっているの で。」(Dさん) (3)子どもに理解しやすい方法の探求  母親たちは妊娠や出産について教える時,子どもた ちにとって,わかりやすい方法は何だろうかと疑問を 持ち,【子どもに理解しやすい方法の探求】を考えてい た。幼児期の子どもには,〔口での説明だけでは効果 はない〕と感じており,ゲームや紙芝居といった子ど もたちの興味を引きつけるような方法,実際をイメー ジしやすい方法など〔楽しく学べる方法で伝えたい〕 と考えていた。妊娠・出産に関する本を見せて,自分 なりの方法での説明を試みるなど,小さな子どもにも わかりやすい方法を模索し,実際に試している母親も いた。 「赤ちゃんがこういうふうに出て来るんだよっていうのを, なにかもっとわかりやすい方法で(伝えたい)。…親から 口で聞いてもやっぱりわかりにくいから。…ゲームとか紙 芝居とか子どもが好きなもので教えてもらえた方が,より わかりやすく入りやすいかなと。」(Hさん) 「子ども用の説明っていうのはそんなにないと思うので,子 ども主体っていうのが一番重要ですよね。楽しくて,わか りやすい,あとはその,赤ちゃんが生まれた後のことをわ りと想像できるような。イメージができやすいような。」(D さん) 「とにかく赤ちゃんのことに関する絵本を借りて読んでいま すね。…私もよい機会だと思うので,こういう絵本読ん でも面白いかなと思って選んできて“どうする?読んでみ る?”って。」(Fさん) 2 )クラス後 (1)性について子どもに伝えていく自信  【性について子どもに伝えていく自信】は,母親自 身がクラスに参加したことで,子どもに対して,妊娠 や出産のプロセス,性について話したり,質問に答え たりすることに自信を持てるようになったことを示し ている。クラス前には,【どこまで話したらよいかと いう悩み】や【子どもにわかりやすい方法の探求】を表 していた母親たちは,クラスの中で助産師が子ども たちに教える場面を間近で見ることで,性についても 「片意地張らずに」「事実を淡々と」「普通に教えてあげ ればいい」ことがわかり,〔性を特別視しないことに納 得〕を得ていた。悩みや疑問を持ちながらも,これま で自分なりのやり方で話してきた母親は,クラスにお いて,性についてすべてを一度に話す必要はないこと や実際の性教育の場面を見ることで,「やっているこ とが間違ってなかった」と言うように〔やってきたこ とを保証されることでの安心感〕を示し,さらなる自 信につながっていた。また,クラス後に子どもから性 についての質問をされた時も「落ち着いて答えること

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ができた」と自信を語っている。 「(胎児の大きさの話を)具体的に大きさのことも含めてイ メージしやすいように話せるかなって思う。…方法として は,やっていることが間違ってなかったんだなと思って。 親が子どもに話をするときに,このくらいの話でいいんだ。 あまり片意地張らずに話せばいいんだなってわかりまし た。」(Aさん) 「(クラスは)思っていた以上によかったというか,もう ちょっと漫画ちっくなのかと思っていたんですよ。だけど, 事実を淡々というか,名詞を変えることなく,子どもっぽ く言うのではなくそのままだったので。こういうふうに言 うと子どもに伝わるんだなと思って。」(Cさん) 「私に“ちんちんがないの?”と聞かれて。…初めて聞かれ て,私としてもクラスに参加していたから "あっ,こんな ふうに聞かれるんだ "と心構えができていたので,なんか あせることなく "ああ,言ってくれたな "くらいに思えまし た。…(性について)質問があったときのも落ち着いて答 えればいいんだよ,みたいな言葉を伺えたからすごくそう だなと思えたし,目とか鼻とかと同じようにちんちんとい うところだけなんで恥ずかしがるのだろうと,そんな話を 聞き,なるほどと思いました。」(Eさん) 「赤ちゃんはどうやってうまれてくるの?というのを,ただ 子どもは興味あるだけだから普通に言ってあげればいい。 へたにごまかすと何度も聞いたり,へんな意味で理解し ちゃうからという話を聞きました。普通に教えてあげれば いいというのがわかり,それが役に立ちました。」(Gさん) (2)子どもの理解への手ごたえ  母親たちは,クラスの中での子どもたちの様子や家 へ帰った後の言動によって,小さいながらもクラスに 参加することで子どもたちが妊娠や出産に関して理 解していたことがわかり,【子どもの理解への手ごた え】を感じていた。クラスの中で,2,3歳の子どもが 「自分なりに一生懸命聞いている」「意欲的な」姿を見 て,〔子どもが学ぶ姿を見ての喜び〕を感じていた。ク ラス後では,お人形を産婦に見立てて出産ごっこをし たり,具体的な質問をしたり,クラスで見た胎児や胎 盤,臍帯を本の写真と結びつけたり,子どもなりに「す ごくわかるんだ」「覚えているんだ」と,〔子どもなりに 理解していることを実感〕していた。 「自分なりに一生懸命聞いていて,どこまで解釈しているの かというのはわからないけど,その状況がとってもうれし い。」 「2歳だからわからないと思っていたけど,結構,赤ちゃん に興味を持ったりして,子供向けに組まれたプログラムを それなりに全部参加しようとしていたから。思っていたよ り意欲的に子どもが興味を持ってくれたことがよかった。」 (Eさん) 「まだ2歳半なんですけども,本人がすごく刺激だったみた いで。…股から生まれてくるとか,どこから生まれてくる のかが改めてびっくりしたみたいです。小さいキューピー さんをお人形の股から“生まれそう”と。…“ハトちゃん(胎 児の呼び名),こうやって生まれてくるのかな”と,そう いう感じであの時学んだことを自分のおままごとでも実践 している感じで,やっぱり2歳半でもすごくわかるんだと 思いました。」(Hさん) 「人形をすっごい覚えているみたいで,胎盤のくっついたお 人形,あれを覚えているみたいで,妊娠の雑誌とかに書い てあるのを見ると“あの部分だったね”なんて言ったりし て。…胎児の写真が載っている本を読んでも,お人形さん と結びついて,“あっ,あの赤ちゃんだね”って言って。」(C さん) 「お腹の中にぬいぐるみを入れて紐みたいなものを用意して, “ここ臍の緒”と。赤ちゃんはお腹の中からではなくてお しりから生まれるということがわかってきた。…“○○さ ん(クラスの講師)ごっこしよう”と言って。電話すると来 るんですよ。“どうしましたか?”“お腹が痛いんです”と言 うと,“じゃあ,ふうふうして,はい,生まれました”と遊 びの中で。」(Jさん) (3)母親自身が受けた性教育への疑問  自分自身の受けた性教育について振り返る母親もみ られた。受けた性教育は「大事な部分は服で覆われて いた」「男女別で生理の授業を受けた」と語られ,「あ れってどうなのか」「ちょっと疑問を持っていて」とい うように【母親自身が受けた性教育への疑問】を感じ ていた。クラスの参加は子どもたちへの性教育の必要 性について考え直すきっかけとなっていた。 「私たちの世代だと自分の性器の役割を知ったのはもっと後 からなので,このくらいの年で自分の大切なところをちゃ んと説明しちゃうことはむしろ大事かもねと夫婦でも話し ていたので。…私自身が育ってきた中で受けた性教育に対 してちょっと疑問を持っていて。男女別で生理の授業を受 けたのはあれってどうなのかねって。」(Hさん) 「クラスで聞いたことは話せるかな,必要かなと思うんです。 自分自身が中学校かな,赤ちゃんが生まれてくる仕組みも わかっていなかったので,赤ちゃんが出てくるという大事 な部分は服で覆われてしまって,わからなかったんですよ ね。」(Dさん)

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2.新しい家族を迎えること  新しい家族を迎えることに関しては,クラス前の母 親の気持ちおよび行動は,【上の子どもへの対応の難 しさ】【無理のない弟妹の受入れ】の2つのカテゴリー が,クラス後では【赤ちゃん返りを受止める】【子ども の成長の実感】の2カテゴリーが抽出された。 1)クラス前 (1)上の子どもへの対応の難しさ  母親たちは,クラス前に【上の子どもへの対応の難 しさ】を感じていた。上の子どもへの対応では,特に 赤ちゃん返りという現象を取り上げていた。友人等 から上の子どもの赤ちゃん返りについて聞いて,「ど のようになるのか」,「不安ですね」と率直に語り,〔赤 ちゃん返りへの漠然とした不安〕を表していた。さら に,「よい対応方法があるのか」といった〔赤ちゃん返 りの対応への疑問〕が語られていた。赤ちゃん返りの 対処やよい対応方法を知り,その不安を解消したいと の思いは,クラス参加の動機になっていた。 「(妊娠がわかってからの上の子は)やっぱり甘えっ子さ んにはなりましたよね。夜,自分の布団で寝ていたのが, “ギュッとしてねんねして”と言うようになったので。あ とは,やっぱり抱っこですね。ホントは歩けるのに,抱っ こしてほしいとか。ホントはやれることをやっぱりやって という感じで。…ちょっとどうなるのか,不安,正直それ はありますね。」(Hさん) 「今までは,あんまり赤ちゃん返りするってことがなかった んですけど,最近は“抱っこ”とか甘えたりするようになっ たので。実際に,下の子ができると,どういう感じになる んだろうかと思ったり。上の子に対しての対応の仕方など のお話が聞けたらうれしいなと思って。」(Aさん)  しかし3人目を妊娠中の母親2名は,赤ちゃん返り に関して「心配していない」と語った。一番上の子ど もとは,年齢が離れていること,そして2人目の子育 ての体験が不安を生じさせない要因となっていた。 (「赤ちゃん返りなどについて心配ないか」という質問に対 して)「3人目は,あんまり心配してないですね。2人目の 時はやっぱり心配しました。赤ちゃん返りになっちゃうか なとか,寂しい思いさせちゃうかなとか思っていたんです けど。赤ちゃん生まれても寝ている時間が最初は多いです から,そんなに気にしなくてもいいかなと。自分の体さえ 元に戻れば今までと多分同じようにみてあげられる。」(D さん) (2)無理のない弟妹の受入れ  母親たちには,上の子どもがこれから生まれてくる 弟妹をスムーズに受入れることができるのかという懸 念があった。弟妹の話になると「耳を塞ぐような感じ」 であったり,逆に「聞分けがよすぎる」といった子ど もの様子や赤ちゃん返りの現状から,〔弟妹の受入れ に対する心配〕をしていた。また,母親は「うれしい かもしれないがきっとショックだろう」のように〔上 の子どもの複雑な思いへの理解〕の気持ちも示してい た。母親たちは,上の子どもが【無理のない弟妹の受 入れ】ができることを願っており,クラスがその一助 となることを望んでいた。 「ジェラシーというか,今まで1人,子どもが1人だけの世界 から,もう1人赤ちゃんが誕生してっていうのに対する,こ の子がどういうふうに思うのかなっていうのがすごく不安 ですよね。何か反対に,あんまり聞分けがよすぎると,無 理しちゃっているのかなという気もしちゃうし。」(Hさん) 「上の子どもが心地よく(下の子を)受入れられる環境を私 は与えてあげたくて。やっぱり,デリケートな時期なんで すよね。なんとなく。…ちょっとずつ話はしているんです けど,耳を塞ぐような感じなんですよね。嫌だとかそんな んじゃないんですけど。…たぶん,生まれてから,私と 主人の間にいつもある両手がなくなるわけだから,絶対 ショックだと思うんですよね。うれしいとかもあるかもし れないけど,そこをどれだけ一緒に受入れるかというか。 そういうことを教えていきたいですよね。」(Cさん) 「上の子にとっても,次の子がスムーズに受入れられたらい いなっていうふうに思って申し込みました。…私も(子ど もの頃),お姉ちゃんだからとか,言われることが多かっ たので,子どもには感じさせたくないなというか,あまり プレッシャーを与えたくない。そこらへんで注意すべき点 とか言い方とか,何か勉強できたらなあ,と思います。」(J さん)  また,母親たちは上の子どもの【無理のない弟妹の 受入れ】を促すために,クラス前から子どもを気遣い, 家庭において様々な試みを行い,〔受入れを促すため の母親なりの準備〕を行っていた。「お手伝いに参加さ せることで準備をしておきたい」「今できる範囲のこ とをする」というように,各々の母親が自分のやり方 で,上の子どもたちに働きかけていた。 「助けてねっていうことは言っています。生まれたらお母さ ん助けてねって感じで,そしたら“じゃあ Sがおむつ替え てあげるね”とか,そんなことを言ってくれたりしている ので。なんとなく,気構えじゃないけれども仕事を与えて いるっていったら変ですけど。そういうふうに参加させる ことで準備をしておきたいっていうか。」(Jさん)

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「今できる範囲のことをするっていうか。例えば,健診は私 一人で行くこともできますけど,必ず子どもやうちの人も 皆でエコーを見て。じゃないと,大きくなっていく過程と かっていうのがわからないので。そういうので実感してい くことをしないと,私以外の人は,実感できるすべがない から。」(Eさん) 2)クラス後 (1)赤ちゃん返りを受止める  クラスの中で,弟妹を迎える上の子どもの心情,赤 ちゃん返りが起こる理由,赤ちゃん返りへの対応につ いて助産師から説明された。その説明においては一 貫して「赤ちゃん返りは悪いことではない」ことが強 調された。クラス前には【上の子どもへの対応の難し さ】を感じ,〔赤ちゃん返りへの漠然とした不安〕や〔赤 ちゃん返りの対応への疑問〕を表していた母親が,ク ラスの後には,【赤ちゃん返りを受止める】という気持 ちに変化していた。  【赤ちゃん返りを受止める】という気持ちには,〔赤 ちゃん返り対応への自信〕と〔赤ちゃん返りの見通し がついた安堵感〕が示されていた。赤ちゃん返りにつ いて,家族に何を言われても「私は気にしない」と語っ ているように,母親たちは,〔赤ちゃん返り対応への 自信〕を持つようになっていた。さらに,「どんどん赤 ちゃん返りしてちょうだい」と気持ちを表し,赤ちゃ ん返りも喜んで対応する気持ちをも表していた。また, クラスの中では,赤ちゃん返りはだれにでも起こる健 康的な反応であること,そして子どもの成長に伴い必 ずなくなることが説明された。「赤ちゃん返りは普通 のこと」「当たり前」とわかり,「楽になった」「安心し て」と言うように〔赤ちゃん返りの見通しがついた安 堵感〕を示す母親もいた。 「“おっぱいもお兄ちゃんにも飲ませていいよ”っていうこ とが,確か,クラスの中でもあったと思うので。結構周り の方が,パパとかおばあちゃんとか“もう,おかしいから 止めなさい”なんて言っていたんですけど。私は“いいよ。 いいよ。”なんていう感じで。」(Aさん) 「抱っこの回数とか,寝る前におっぱい触ったりとか,そう いうのもありますね。…どんどん抱っこしたいですし,し ちゃっています。その気持ちをそのまま受止めるというか。 出してくれる方が健康だと思うので。どんどん赤ちゃん返 りしてちょうだいみたいな感じで。」(Hさん) 「助産師さんの話はとても印象に残った。…なんか,助産師 さんの話を聞いて,安心して(2人の子育てに)臨めるかな と。私も私で2人を育てなくちゃいけないって,どこかで 多少なりともプレッシャーがあったから。あんまり考えな くてもいいのかな,なんて思って。どうにかなるだろうと いう感じ。」(Bさん) (2)子どもの成長の実感  母親たちは,クラスを通じ時間と共に,兄姉になっ ていく【子どもの成長を実感】していた。「前はそんな ことはなかった」と語り,子どもたちの様子が様々に 変化したことを語っている。「全然変わりました」と 言うように〔目に見える成長を感じる〕母親もあれば, 〔小さな変化を見守る〕場合もあった。 「小さい子に優しくするんですよ。一生懸命世話を焼いたり して。前はそんなこともなかったんですけど,なんか,小 さなお兄ちゃんぶって,他の妹に世話を焼いてみたりして。 …お世話もしてもらって,小さいお兄ちゃんに活躍しても らおうかなと思って。」(Aさん) 「子どもも全然変わりましたね。…“赤ちゃんがいるんだ”み たいなことを自分で言うようになってきて,ここ最近に なっては大変なことで,“オムツを替えるんだ”とか“抱っ こする”とか,もうなんかね,めまぐるしいですよ。…妊 娠に関する本とかも1人で読んだりとかして。前は全然見 ようともしなかったのに,それが,見るようになって」(C さん) 「実はそんなにがらっと変わったと思うことはないかな。お 腹を触りたがるってこともないしね。でも,その夜かな。 何か一つお話をすることに対して“赤ちゃんの話をして”っ て言われたな。」(Bさん) 3.家族で迎える出産  家族で迎える出産については,クラス前の母親の気 持ちおよび行動は,【家族で迎える出産への期待】【子 ども立会い出産の準備】の2つのカテゴリーが,クラ ス後は【家族で共有知識を持つ心強さ】【今回の出産に 向き合う】の2カテゴリーが抽出された。 1)クラス前 (1)家族で迎える出産への期待  母親たちは,「家族で赤ちゃんを迎えたい」「出産っ て女のひとだけのものじゃなく」という言葉で表され ているように,妊娠や出産を家族の出来事と捉え,【家 族で迎える出産への期待】の気持ちを持ち合わせてい た。その一貫としてクラスに家族で参加し,そこでの 学びや体験自体にも「(家族)みんなで共有したい」と いう思いを持っていた。 「私1人で産んで,ということにはしなくない。皆で迎え入 れてというふうにしたい。1人目のときは全然わからない

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から,私も主人と同じで生まれてくればそれでいいと思っ ていたというか。でも,ただ産めばいいというものではな いんじゃないかと思って。そういうことを学びたい。みん なで共有したいという感じかな。」(Cさん) 「家族で赤ちゃんが迎えたいという気持ちがまずありまして。 一緒にそういう弟妹が生まれてくるということを改めて一 緒に勉強したらいいかなという,いい機会だったので(ク ラスに)参加しました。」(Fさん) (2)子ども立会い出産の準備  【家族で迎える出産への期待】の気持ちから,子ど も立会い出産を希望している母親は,クラスを【子ど も立会いの準備】として位置づけていた。 「子どもも一緒に立会いができるといいなと思って。…子ど もだけ(生まれたすぐの下の子どもに)会わせないのはど うかなと思っていたので。時間が合えば,一緒に迎えられ たらと思っています。一緒にいた方が,家族の一員として 受入れやすいのかと思って」(Aさん) 「子どもも立会いができる病院を選んでいるので,どういう ふうに生まれてくるかとか。お腹の中でどう大きくなって いくんだよとか。そういうことまで知ってもらうとわかり やすいかなと。」(Iさん) 2)クラス後 (1)家族で共有知識を持つ心強さ  クラスを夫や家族と共に参加した母親は,クラス の後には【家族で共有知識を持つ心強さ】を感じてい た。クラスで得た知識や情報を基に,子どもへの性教 育について夫婦で話をしたり,子どもを含めた家族で 立会い出産を検討したりと家族での新たな関わりが示 されていた。母親の【家族で共有知識を持つ心強さ】が, これらの行動を可能にしていた。 「(夫は)ここに来てよかったねとすごく言っていました。 この講座を母親と子どもだけではなくて家族で受けること が大事だよねと言っていたので。パパさん同士だけのシェ アとかあるとおもしろいですね。…男の人って全然わから ないので,こんなにもいろんな本がでていることも知らな くて。こういう所で俄然一生懸命見ていた。…だから家族 で受ける講習は改めて大切だなと思いました。」(Hさん) 「出産のビデオを見て,ああいうのだったらいいよね。立会 いできたらいいね。と言う話をしました。結構穏やかな出 産だったんですよね。ああいうふうに,プラスに行けばい いねと話していました。」(Gさん) 「赤ちゃんが生まれているシーンをやってくださって。…赤 ちゃんが生まれる時に一緒にいたいと言ってくれて。“が んばれ,がんばれしてあげたい”と言ってくれたので。じゃ あ,私も子どもが立会いできる病院を探してみようかなと 思って。」(Aさん) (2)今回の出産に向き合う  上に子どもがいる母親たちは,初産の時と異なり, 出産準備クラスに参加するなど出産に向けての準備は 十分でなかった。クラスの中で出産のプロセスの人形 劇や家族出産を題材としたVTRを見ることで,「お産 モードになれた」「(出産を)思い出した」と語っている ように,クラスでの体験は,自分を含めた家族の出産 準備として【今回の出産に向き合う】機会となっていた。 「お産モードになれた。1人目と違ってお産について本を読 んだりとか何かを見たりとかじっくり考えたりとかは健診 の時くらいで。それ以外の時は本当に考えていないという か。この間母子手帳にやっと名前を書いた。なんか真っ白 だった。そのくらい考えていなかった。(クラスで)久しぶ りにお産についてこんな感じで生まれてこうだったな,と いうのを考えられてよかったです。」(Eさん) 「(クラスで見た VTRについて)客観的に見られる部分を改め て思い出すというか,そういう感動が味わえた。」(Fさん)

Ⅴ.考   察

 性の健康クラスに参加した母親の語りから,母親の 気持や行動,上の子どもや家族の様子は,クラスの前 後で大きく変化していたことがわかった。これは,ク ラスの影響と推測することができる。これまで幼児を 対象とした性教育の効果を検討した研究は少なく,本 研究にて,その具体的な変化について示したことは, 子どもへの性教育のあり方を検討する上で,重要な視 点を提供するだろう。考察では,幼児期の子どもへの 性教育,新しい家族を迎えること,家族参加の出産の 観点から子どもと家族に対するクラスの影響について 検討したい。 1.幼児期の子どもへの性教育  性の健康クラスにおける幼児への性教育という側面 では,クラス後1ヶ月間の子どもの言動から,ネガティ ブな影響は認められなかった。短期的ではあるが社会 の中で危惧されている性教育の悪影響は否定できるだ ろう。逆に,結果の中ではクラスのポジティブな影響 が多く認められた。クラス後に子どもたちが,遊びの 中で出産の場面を再現したり,クラスで見た胎児や胎 盤,臍帯を本の写真と結びつけたりする姿が語られて おり,クラスの内容を記憶していることがわかった。 論理的な思考の発達途上として,独立していたシェマ

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が協応して知的行動があらわれるという幼児期の特 徴に位置づけられるが(浜田,1994),今後のさらに継 続的な性教育は,子どもたちの思考過程に貢献すると 予測される。また,クラスに参加した子どもは,母親 の妊娠・出産を間近で感じ取り,性に対する興味が高 まったと考えることができる。クラスは性教育の第一 歩としてよい機会であったと解釈できる。母親の中に も,子どもの理解を目の当たりにし,【子どもの理解 への手ごたえ】を実感するという肯定的な側面が確認 できた。  性の健康クラスの内容は,カナダの性教育者ヒッ クリング(1999)が就学前の子どもの性教育として必 要な事項を基盤に,「性器の名称」「精子と卵子が性交 により結びつくと赤ちゃんができること」「赤ちゃん は子宮の中で育つこと」「赤ちゃんは膣を通って生ま れてくること」の4点を含めている。これらの内容は, 文部科学省が掲げる目標(1999)と比べ,より実質的 かつ科学的であると言える。結果で示されたクラス前 の母親のニーズ【できるだけ正しい知識の伝授】とク ラスの内容は合致していたと考えられる。  さらにクラスは,幼児が理解できる内容を設定し, 子どもたちの興味をひく教材や集中できる工夫を施し ている(中村,2006)。【どこまで話したらよいかとい う悩み】を持っていたり,【子どもに理解しやすい方法 の探求】を目指していた母親は,クラスの中で助産師 が子どもたちに問いかけたり,説明したりする様子を 間近で見ることができた。クラス後に【性について子 どもに伝えていく自信】を得た母親は,この機会に引 き続き,親が子どもに話すことができるようになるだ ろう。幼児期の子どもへの性教育に関する親の意識に ついての調査では,「教え方・上手な伝え方がわから ない」ことが家庭における性教育の主たる障壁である と報告されている(岸,2003;浦川,2003)。親が実際 に子どもたちへの教育の場面を見ることは,これを解 決する有力な方法になることが期待できる。 2.新しい家族を迎える  家族での参加が多いこのクラスは,兄姉になる子ど もだけではなく,母親および父親を含め家族にとって, 新しい家族を迎える準備となったことがわかった。母 親は,【上の子どもへの対応の難しさ】を感じ,上の子 どもたちの【無理のない弟妹の受入れ】を期待しクラ スへの参加を決めていた。これまでの調査で,経産婦 の悩みは上の子どもに関することが最も多いことが報 告されている(南部,1994;都筑,2001)。クラスでは, 赤ちゃん返りは当たり前の反応であること,いつまで も続かないことが説明され,その対応法が紹介されて いる。その結果クラス後に母親は,【赤ちゃん返りを 受止める】気持ちに変化していた。妊娠中から赤ちゃ ん返りを表していた子どもに対し〔赤ちゃん返りの見 通しがついた安堵感〕を表したり,〔赤ちゃん返り対応 への自信〕つまり育児への自己効力感が高まったと解 釈できる。  さらに,母親の目を通して子どもたちの変化も読み 取ることができた。母親は,クラス後に【子どもの成 長の実感】を感じていた。小さな子どもに優しくする, 赤ちゃんのお世話をする,そして母親にいたわりの気 持ちを示すなど,クラス後には子どもたちが弟妹を大 切にし,兄姉になっていくという成長が実際に見られ ている。中村らのアンケート調査(2006)においても, 「お母さんのお腹に優しくなった」「手伝いをよくする ようになった」との回答が多かったことからもこのよ うな変化の実際が裏づけられる。兄姉準備クラスの効 果を検討したFortierら(1991)やJohnsen(1985)の結 果と同様に本研究でも,上の子どもが弟妹との生活に 適応しやすく,受入れが良くなる影響が認められたと 言うことができるだろう。 3.家族が参加する出産  家族参加の出産は,近年社会の中で少しずつ広がり を見せている。クラスは,土曜日の開催であること, 家族単位での参加を受付けているため,母親,子ど も,父親または祖母というように家族での参加が8割 を超える(中村ら,2006)。クラス前の母親は,クラス について【家族での共有の期待】を持っていた。そして, 家族で迎える出産を希望し【子ども立会い出産の準備】 としてクラスを位置づけていた。子どもが出産に立会 う際,妊娠中から準備があると肯定的な反応が期待で きるとの報告がある(Daniels, 1983; Parma, 1979)。ク ラスは,その役割を果たすことが期待できる。また, 家族での参加は,家庭での性教育にもよい影響がある ことが推測される。父親や祖母が一緒に参加すること で,家に帰ってから,子どもたちへの性教育を行って いく上で,家族が同じスタンスで取り組むことができ ると考えられる。クラス後において母親が【家族で共 有知識を持つ心強さ】を感じていたことからも裏づけ られるだろう。  また,このクラスが2回目以降の出産をする母親に

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とって,【今回の出産に向き合う】機会にもなっている ことがわかった。初産婦の場合は,様々な出産準備ク ラスを受ける機会があるが,経産婦へのクラスは数少 ない。母親も含めて家族が今回の出産へ向かう支援と してクラスの目標では想定していなかった影響が表れ ていたと言える。 4.研究の限界と今後の課題  本研究では,性の健康クラスに参加した10名の母 親からの得られた結果であり,一般化には限界がある。 また今後データ収集は,母親のみならず,子どもや父 親も視野に入れる必要があるだろう。さらに,上の子 どもの弟妹が生まれてからの反応,長期的に見た上で の性に関する認識について明らかにすることが今後の 課題である。  尚,本研究は,第17回日本性教育協会学術研究補 助金を受けて行った。 引用文献 男女共同参画基本計画http://www.gender.go.jp/ [2008.1.30]

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