第
1
部 :デザ インにおけ る創 造 性 をめぐっ てデ
ザ
イ ン に
お け る
創 造 性
研
究
の
流
れ と
現状
Situation
and Flow ofResearches
into
Design
CreatMty
野 口尚 孝
北陸 先端 科学 技 術 大 学 院 大 学
NOGUC 田 Hisataka
Japan Advanced lnstitute of Science and Technology
1
はじめ に 最初に、
なぜ1
い ま 」創 造 性 なの か、
い う 問い に つ い て はすで に巻頭 言におい て述べ たので、
こ こで はデ ザイ ンの創 造 性 をめぐる,社
会 的 な 状 況 とその 背 後に あ る大き な 問題につ い て触れ、
考察して み る こ と にする。
アメリ カ と中国が 世 界経 済の 中 心 的 な 存 在 と なっ た現 在、
もの づ くりは 世 界の 丁場と呼ば れるよ う に な一
) た 中 国 に 移一
〕 て 行 っ た、
,
Designed
USA assembledin
China
という文字を多くの製
品の中に見 いだすこ と が出 来る。
口本も も は や 口常 的 生活 用 晶 のほ と ん どを アジア 各国で生 産し、
それ を目本
企業
の製 品と し て輸
出 して い る のが現 状である。
日常的 に用いて いる生活用品の 多くは 中 国な ど でデ ザイン も 行わ れて い る と 考えられ る。
そし て 日本や欧 米 各 国の デザ イナー
は、
より 「ハイセン ス 」 で 高 品 質」 な製 品のデ ザイ ン を手 が けることが 多く なった といえ る。
欧 米や 口本の人々は 生 活 に 必 要 な 品々は中国などアジ ア 各 国 で作られ たロー
コ ストな製 品に よっ て賄い、
そ れに加 えて高価な耐 久 消費財
やエ ン タ テ イ ン メ ント情 報の消費
を行うことが 目常化して いるので あ る。
こ のよ う な 状 況で、
デザ イ ナー
の仕 事は商 品に付 加 価 値 を 与える こ と である、
と し ば しば 言 わ れるv しか し、
い ま、
何 千 人もの デ ザ イナー
達が、
商品 の付 加 価 値を高めるた め に 日夜 奮 励 努h
しな がら創造
性を 発揮 させ られ、
その結 果、
世 界中にデ ザイ ン 商 品が溢れ、
欧 米や 目本で は高 価な耐 久 消 費財やエ ン タテ イン メ ン ト情 報が生活の 中でi
三役 と な り、
消 費こそ が経 済を活 性化させ る源であると許わ れて い る。 一
方で は中 国を始め と す るア ジ ア各 国で は労 働 力の安さ に よ る商 品「tr
場で の優 位を背 景に、高度
な 経 済 成 長を遂 げ、
都 市部の 入々は こぞっ て欧米 型の 消 費生 活に移行しつ つあるよ うに見える。
欧 米 やL1
本の 生括 をモデル と し た消 費型 社会が グロー
バ ルな 規摸で拡 大し、
その結 果と し てCO
コを始め と す る 廃 棄 物 が 溢 れ、
資 源の枯 渇が深刻 に な り、
地 球 環 境 は 急 速に悪 化し、
人々 の精神性は荒 廃し続けるという 事態が生じて いる よ う に思わ れ る。
こ の
事
態に 対 し て 「生 産 者」 側 はエコ・
デ ザ イン 製品、
リ サ イク ル化、
省エ ネ な どで対 処 し よ う と し て い る が、
皮 肉な こ と に トー
タ ル な生 産 量 は ま す ま す増え 続 けてい る し、
世 界 市場で の競 争が ま す ま す 激化する中で、
企 業が 生 き 残 る た め に は商品の付 加 価 値をf
・1
と か 増 や し続け、
消 費を拡 大させ て いか な けれ ば 経 済 が 成り立た な い という大 き な ジレン マ に陥
っている。
こ うしたグロ
ー
バル な状 況の中
で、
単に 商 品の 「付 加 価 値」 を も た ら し消 費を拡 大 させ るための デザ イ ンの 創 造 性 を問 題に す るだけ で よ いの か、
本 当の 意 味でのデザ イン の創 造1
生 と は何なの か が、
い ま再 び 問わ れ て い る の である。
地 球 規 模で消 費が 煽 動さ れ、
地 球 環 境と 入間の実 存そのものが危 機に晒され つ つ あ る と きに、
相変わ らず付 加 価 値と消 費拡 大 し か考える こと がで き ない よ う で は、
デ ザイ ンの創 造 性は地に落ち た と しか言いようがない。いま
、
デザインの領 域で は、21
世 紀の 社 会を持 続 可能な 社 会と し て 再 生さ せ る た め の生 活 を 視 野にい れ な が ら、
従 来の 発想の 単な る 延長と は決 定 的に質 の ち が う創 造 性が も と め ら れ ているの で は ないだろ うか。
2
デ
ザ イ ン学に お け る創 造 性研究の位 置 づけで は創造 性の 問題は デザイン学 と い う領 域の 中で
、
どの よ う に位 置づ け られてき たのであろうか。
初期のデ ザイシ学の 研 究におい ては おそ ら く創造 性の問 題は かなり重 要な問 題と し て 取 り
L
げられて き たの では ない か と 思 わ れる。
手 元に 古い資 料がな い の で推 測である が、
特にデザイン教 育の 面で はつ ね に創 造 性の問題が 取 りL
げら れ、
教 育方 法や評 価 方 法 などの論 議が あっ た と考え ら れ る。
例 えば最 近テ ザ イン学 研 究 特 集 号 SPLCIAL [SSUEOF
.
ISSD Vul 12No.
320[)5 11一
まで長期に渡っ て続け られて き た高山の造 形 発 想 に 関する研 究
lll
な どにその形 跡が見られ る。
しか し、
デザイン学研 究が科 学 的 方法とい う側 面 を強調し始め、
研究の科 学的 客 観性を 前 提にし始 め た 頃 から,
創 造 性の 問 題は影を潜め た よう に思 わ れ るu 誤 解を招か ぬ よう言っ てお く が、
デ ザイン学 研 究 が 科学を 強調す ること は悪い ことでは ない し、1
学 1 を目指す以 ト当然の ことである。 し か し、
創 造 性の よ う な 人 間の 内面に お け る問題 を扱う領 域で、
表 面 的な意 味での 科 学 性 (例え ば実 験による検 証や計 量 性) の みが 異常に強調さ れ る場 合、
K,
Popper [2
〕 が 言 う、
科 学 的 方 法の 前 提である 「反証 可能性」 の 意 味が非 常に表 面的 な 意 味で し か理解され なくなり、
本 来の科 学が 日指すべ き 人間 自身を含めたすべ ての 対 象へ の深い理 解という視 点が見 失わ れ て し ま うの で は ないだろ うか.
人 文 科 学や社 会 科 学における研 究 方 法も そのよ う な問 題 を抱え てい る と考 えられるが、
デザイン学で は その 中 核に 人 間の 思考の 問 題を 置 か ざる を得ない、
そ の場 合、
デ ザ イン行 為 者の内面に お ける過 程 ( )−C
観 ) と そ れ が実 体と して現れ る対 象的 世 界 (客 観 ) を統 舎 的にとらえ、
ア プロー
チすること が で き る よ うな 広い視 野 と研 究方 法が 必要と な る。
さ ら に、
デ ザ イン学 が 他の領域と決定的に異 なる のは、
他の科 学 は 「すで に存 在す るもの」 を 理解 あ るいは認 識すること が 目的であるの に 対 し、
デ ザイ ン学は 1これ か ら 存 在させ るべ きもの 」 を対 象に し て いる こと で あ る。
そ し て、
実は こ の こ と がデザイ ン学に お け る創 造 性の 問 題 が重要 な意 味を持つ理 由 で あ る。
創 造 的思考と い う も の は、
未 だ 存 在しない も のを 生み出 す 思考で あ り、
いわ ば 「未 来の 先取り1
で あ る。
人 間 は 入類の 歴 史が始まっ て 以来、
新た な モ ノ (人工物) を考え作り出す と き、
つ ねにある意11未で 創 造 的思考とデザ イン行為 を 繰り返 し て き たとい え るe こ の長い歴 史を持つ、
普遍 的な意 味で のデ ザ イ冫行 為と創 造 性の 本質 を 理解し よ う とい う姿 勢こそがデ ザ でン学の 基 礎 を 築 くた めに不μ次 な 要 素では ない だろうか。
1 SPE 〔IAL [SSU
・
〔)ト.
]SSDVol L⊇No32 〔ID5 デザイン学 研 究 特 集 号
3
創 造性研 究の流れ と現 状こ こで創 造 性研究の流れ を大雑把で は あ る が概 観 し て み よ う
。
こ こ で は、
ひ とま ず創造 性 般 につ い て の 話 と、
デ ザ イ ン に お け る創 造 性 (Design Creativity) と を区 別し て進め るこ とにす る。
創 造 性一
般 に 対 す る関心 や試みが最 初に活 性 化し たのは多 分Og.
born
[3
]やGordon
L4
」ら による実 務 的な意 味で の創 造 性 向上の試みが ア メ リ カ を 中 心 に 行わ れ始め た1960
年代の初めであろう。 ブレー
ン ス トー
ミ ン グ や シ ネクテ ィ ッ クスな ど が さ まざま な場 面で用い られ始め た。
これ ら は職 場に お ける生 産性 向上と い う具体 的な 目的が あっ て、
分か りゃす い ア ブロー
チ であっ た が、
ほ と んど手 法の提案
や試み で あっ た といえ る,
我 が 国 で は、
少 し 遅 れ て 発 想閙題 が取り上 げ られ る よ う に な り、
川喜圏のKJ
法 [5
]や中 山のNM
法 [6
]が 開 発 され た り、
市川亀久弥 氏の 等 価 変 換理論 [7:が提 唱さ れ たりするな ど、
ig70 年代に大 きな盛 りlt
がりが あっ た。
この時期に冂 本創造 学 会が創 設 さ れて い る。
こ の 時 期に よ う や く創 造 性の 問題は 理 論 研 究の 対 象になり始めたのである。
しか し
、
その後
1980
年代
に入り、
コ ン ピュー
タ科 学や 人 ⊥:知 能、
認 知科 学とい う 人間の思 考に関する 新 た な 視 点 と 研 究 方 法 が 活 性 化 さ れ て く るこ と に よ り、
創 造 性の問 題へ のアプロー
チ は大き く変
化し始 め、
コ ン ピュー
タ システ ム に どこま で創 造 的なこと が 酊能で あるの か、
ま た どこま で 人間の 発想を吏援 で き るの か とい う問 題へ の 関 心 が 高 まっ て き た。
こ の流 れ は1990
年代には、
発想 支 援 技 術ある い は ツー
一
ル とい う形で実 川 面に適 川さ れる研究 領 域 を 生み 出 し、一
つ の 盛り上 が りを 見 せ た。
我 が 国 で は 人r.
知 能 学 会 誌に発 想 支援シ ス テ ム特 集号 [8
]が 組 まれた り、
入 工 知 能学会 と 計 測 自動 制 御 学会 に よ る 発想 芝 援技 術シ ス テ ムの シ ンボジウムがfr1
∫度か開催L9
」さ れ、
海 外では60
年代 か らソ連でf
J:わ れて き た研 究を ア メ リカで 引き継いだ 大規 模発想支援
ツー
ル’
TRIZT 「10]が注 [ さ れた。
…
方で は、
人間の 創 造 的思 考に焦 点を当て た創造 的思考の メ カニ ズムへ の アプロー
チ が 進 み、Stcrnbcrg
[111、Cg.
ikszentmihaly
[12
]、
Bodcn [13
]、
などの心 理学 系の研 究 者による創 造 性 研 究が活 性 化し
、創
造性教育な どの分 野におい て これ らの研 究 が 注 日さ れ た。
ま た 認 知 科 学の領 域で は、
Finke,
Ward.
Smlth
の研 究 〔14]に見られる ような 認知 実験に よ る創 造 的認知へ の アプロー
チ が新た な展 開を 見 せ た。
特 に Finkeらの研 究 は 視 覚 的 形 態に関わ る研究である た め デ ザ イン研 究 者に も 注 目 さ れ、
彼 らの 仮 説で あ るGcneplore
model は多くの論 文で引用さ れ、
論じられ て い る。
ま た 他方で は、
類推や比 喩 など、語 表現にお け る 推 論の形態と創造 性の 関 係が注目 を集め て い る。
こ の 言語 研究 か らの ア プロー
チ は例えばLakofT [15
] な ど の認 知意 味 論と も関 わ り合い を持ち な が ら、
あ る部分では記 号論か ら の知見 を取り 込 み な が ら進 展 してい る よ う に 思 わ れ る。
さ らに1990
年 代以降、
脳 科 学の急 速 な 進 展による知 見が空 間 知 覚や高
次推論
とい った デザ イン学の 基礎と 関 わ りの深い問題に少 しずつ で は あるが接 近しつ つ あ る よ う に思わ れ るL16
]。
し か しまだ創 造性の問題に対 し て脳科 学が何 ら かの 手が か り を与え てく れるまで には 時 間 が か か りそう で あ る。
これ らの 創造性研究は、
部 分 的にデザ イン行 為に 関 わっ て い る と は いえ、
デ ザ イン行 為その もの に お け る創造 性を対 象に して いる わ け で は ないtt そ こで次にデ ザイ ン創造 性に関す る研 究につい て 見る こと に す る。
デ ザ イン創造性に 関する 研究はデ ザイン (方法 )論、
設計 (方法)論とい う領 域での 研究と密 接に関わ り合っ ている。
1960
年代に始ま るデ ザ イン方法 論の 研 究 は、
イギ リス や ド イツ を中心に興隆し、
我が国の デザ イン学 研究に も流入し た。
Archcr [17]やJones
[18
]、
に よ るシス テマ テ でッ クな デ ザ イン の方 法は、
エ ンジ ニ ア リング・
デ ザ イン と工業
デ ザイン の 両者を含む 領 域での 設 計 理論と し て広く受 け 人れ られ た。 し か し、
多くのデザイン (設計 ) 方法 論は設 計の フ [コー
の一
.
般 化 や 設 計者へ のH
一
体 的手引 書とい う域を出ず、
デ ザ イ ン (設 計 ) 行 為やデザ イン (設計) 思考その もの につ い て は理 論 的な考察は ほ と ん ど行わ れ てい な かっ た といえ る.
こ の時 代に唯一
一
、Alexander
「19
] に よ る 設 計 に お け る 形態 合 成の理 論 は初めて設 計 行 為を数 学 的なモ デル で 説明 しよ うと する もの で あ り、
その後の 設 計 論 研 究 に 大 き な 影 響 をlj・
え た。
我が 国で は70
年 代 終 わ り か ら80
年 代 に か けて、
占川による 般 設 計 学 [2
庄 の研究が現れ、
設 計を公理論的な 立場か ら 集 合 論と位相によ り記 述 す る 試みが 行 わ れ た。 占川の一
般設計学は そ の抽 象 度の 高 さ か ら 多 くの 設 言1
.
やデザ インの領域 で基 礎 的な 理論と して受 け人 れ ら れ、
一
方でイン テ リジェ ン トCAD
[21 ]の 基礎理論とい う 形で実用面に結びつ い て行った。
しか し、
これ らの 設 計 (方法)論におい ては、
設 計 行為その もの を理 論 的に記 述する こと に 重点が置 か れており、
設 計 過 程に お け る 創 造 的 側 面 につ い て は 深 く 言及 さ れ て いな い。
例え ばArchcr
で は℃reative
Leap
’、
Joncs
で は’
Synthesis
「
あるいは古 川において は 「写像」 という言葉で表 現さ れ る部分が
創
造 的 側 面に深く関 係す る が、
設計 論に お い て こ こ は いわ ばb
[ackbox
の ま まであった。
デ ザイン に お ける創 造 的思考その もの を対 象と し た 研究は1980
年 代に建 築の 分野 でのLawson
[22
] の研究が も一
っ と も1ilい と考えられる。
Lawson
は5
段 階の創 造 的思考の モデル を提唱 して いる。1990
年代以降は、
建築やデザ インに お け る創造 的 思考を対 象と し た研 究が 盛 ん に行わ れ始め、
デ ザィ ナー
のデ ザイ ン過 程で描 か れ たアイデア スケッチや 回想 的 発話デー
タ を手が か り と し たボトム ア ッ プ的 研 究が 数.
多 く な さ れ て い る.
例え ば、Candy
and Edmonds [23
」は競 技 用 自 転 1掴こ革 新 的 デ ザイン を も たらし たデザ イ ナー
の 思 考過 程につ いて、
残 さ れ たスケッチ やデザ イナー
の同想 的 発 話な ど を取 材し、
創 造 的アイ デア がどの よ う に して得 ら れ たのか を 分 析 してい る。
ま た、
Goldschmidt [24
]は建築 家の ア イデア スケッ チ に よ る 思考過程を分 析し、
ス ケッ チ がいわばデ ザイ ナー
の外 部 記憶の役 割を果た し てい る こ とを指 摘し た。
Suwa .
Purcell
,
Jcro
L25
]はデザイナ
ー
の アイ デアス ケ ッチ展 開の 過 程で、
デ ザ ィナー
がFv
; )描い たスケッチの 中に 「予期せ ぬ 発 見」 を す ること が多く、
そ れ ら が創造 的なア イデ ア に 結び つ くこ と をつ き と め た。
ま たNagai、
Noguchi [26
] はデザ イン思 考過 程を言葉か ら 形へ の 変 換 過 程 と しテ ザ イン学 研 究 特 集 号 SPECIAL ISSU ヒ 〔
.
}FJSSD Vel 12No.
32005・
}て と ら え
、
デ ザ イン思考過 程に お ける口標 表現の 卞 部 (デ ザイ ン対 象)と述 部 (デ ザイン対象
の状 態 や 機 能の 記述 )の 関 係の 変 化の過 程を観 察した。 その 結果、
述 部と 主部の 意 味 的 結 合が困 難で ある場 合の 方が新 規性の 高いアイデアが出や すい ことが 分 かった。
これ らの研 究 はデ ザイン行 為者の思 考 過 程を観 察 する ことによ り得られた知見か ら創造 的 な デ ザイ ン 思 考の メ カニ ズム を探ろ う と す る もので言わ ば ボ ト ム アップ的研 究である。 これ ら と は反 対に
、
一
般 設計 学に見られたよ うに、
抽 象度の高い論理 展 開でデ ザイ ン や 設 計 を 埋 解 しよ う とす る トップ ダウン的 研 究の 流 れ が あるc 例え ば、
森はデ ザ イン思考を推 論と い う視 点か ら と ら え、
デ ザ イン発想は仮説 設定 (Abduction
)であるとい う 占 川の考え方に添っ て、
そ れを逆 推 論と して とらえ る。
逆 推 論と は、
演 繹と帰 納に よっ て つ の解を 見い だ そ う と す る推 論を順 推 論と した 場 合、
デザ イン発想 は その 逆の 過 程を とるとい う こ と である。 つ ま り、
デ ザ イン解は一
つ で は なく、
そ れ が誤り であるn∫能 性を持っ てお り、
解が出さ れ て か ら初め て 「E
し い か ど うか 演 繹 的に検証できるよう になる、
とい う 形の 推 論で あ る、
ということ で あ る (本誌 掲 載 論文参照)。
また 田浦は設 計行 為を概 念 生成という観 点か ら と ら え、
その中で概 念 合成 (Synthcsis
)を行う過 程が創 造 的設 計の重要 な 過 程で あ る と 考 え る。
その 場 合、
概 念 合 成 を 行う設 計 空 間を 考 え ね ば ならないが、
そ の 設 計 空 間 が 原 理か ら来る場合を演 繹 推 論、
過 去か ら来る場 合 を帰 納 推 論.
未 来か ら来る場 合をアブダ ク ション と して と らえ ている (本 誌掲 載 論 文参照)。
これらボトム ア ップ的ア ブロー
チと トッ プ ダウン 的ア フロー
チ の 両 輪 が 相 まっ て進 む と き、
初めて、
デザ イン創 造性に関 する本 格 的理論研 究が 開始さ れ る もの と 考 え られ る。
例えば、
「1
ら描いたア ィデア ス ケ ッチ の中に、
新 た な 発 見 をす る、
とい うこ とがア ブ ダク ショ ンと ど う関 係するのか、
言 語か ら形へ 思考を転 換する局 面 で思考の 仕 方や 質 が どの よ うに変 化するの か、
自ら創
出 し たデ ザインを自ら評 価する際 どのよ う な基 準 が 適 用 されるのか、
創造 性の質に関
わるf
襾値
観と は何なのか、
個入の 内面で進む 思 考と、
外 的 要 因 (社会・
環境・
他者を含む)の 関わ り に お いて、
いわ ゆ る 主観 と客 観の 対 ・ltl
は どの よ う にア ウフ ヘー
ベ ン さ れ て行くの か、
創 造行為を表
現 お よびコ ミュ ニ ケー
シ ョン の視 点か ら見たときにどのよ うに して意 味 ノトII” 「客 蕗1日厂
’
1 コンピュー
タ 科 学 設 計・
デ ザ イン方 法 論 学 習 理 論 思考モデル研 究 デ ザイン創 造 性の研 究 創 造性 教 育 研 究1
心 理学的創 造 性 研 究 意味 論 値観・
美 意 識 の 問 題 表現 論 図1 主 観一
客 観 軸 と知 識 獲 得一
知 識創 造 軸による関 連分 野 の 配 置 6 SPF.
(叭L ISSUEOFJ ∬ 正〕Vol.
t2N〔,32〔1〔〕5 テ ザ イ ン学研 究特 集 号が生 成 さ れ
、
伝達されてゆ くのか、
等々 取り組ま れ るべ き 問 題 は 山の よ うに存在 する と い え る。
こ こ で
、
独 断や偏見 が あ るこ と は 承 知の上で、
試 み に著 者の主観 的 判 断でデ ザ イン創造性の 関連諸 領 域 を 知 識 獲 得、
知 識 創 造、
とい う軸と客 観 的、
主観 的 とい う軸で作ら れ る空 間に布 置してみた (図1
)。
今後の議 論のた た き台
に な れば 幸い である。
4 展望第
1
章で述べ た よ う に、
21
世紀の デザイ ン は、
お そ ら くこれ ま での延 長線k
にあっ てはダメ で あろう と思わ れ る。 これ ま で の 「デザ イ ナー
」 とい う 狭い 職 能の 概念 を 超 え て、
人 間生活全 体を 形成 する社 会 的な仕 事に関わっ てい るすべ ての 人々が あ る 意 味で デ ザインカ (普遍 的 な 意味での デザ イン能 力) を発 揮し、
付加価 値や 消 費や市 場の拡 大 とい う次元での 創 造 性で はな く地 球 規 模で人 間社 会 が 持 続な社会
を 可能にする モ ノ づくり につ い て考え ねばな ら な い と き が 来るだろ う。
普 遍的な意 味で のデ ザイ ン行 為は あ ら ゆ る職 業に内 包さ れ る要 素と し て存 在 するの で あっ て、
と うて いデザイナー
とい う職業
のみ が担い う る もの で は ない と もいえ る。 も ち ろ ん現 代 社 会の デ ザ イナー
はその 職 能に おい て な すべ きこ と が あ り、
この 時 代にお ける使 命が ある とい えるが、
それ は 人間
の持
つデ
ザイン能 力が 現代社会特有
の 日的
と様
態 に 特 化 さ れ職 業と し て現れ たも の で あると考えても よ い であろう。
しか し、
胃 頭に述べ た よう に、
いま や無 際 限 な 生産と消 費の拡 大に よ る 地球 環境 悪化や 資 源の枯 渇は無視
で き ない状 態であり、21
世紀にお い ては、
こ の状況 を克 服しなが ら モ ノ づ くりを続ける た めに.
あらゆる ジャ ンル での デ ザ イン能力 を 結集し て創造的思考を働か せな ければならな くなるで あろ う。
その よ うな 新 しい次 元で のデザイン創 造 力を発
揮
で きる よ う にする ための理 論 研 究 がい まこそ 必 要に なって きて いるの ではないだろ う か。
さ ら に、
デ ザ イン学の最 終 目標は、
埋論
の成果 が、
凵に見え る か た ち と なっ て実 現 し、
そ れに よっ てわ れ わ れの 生 活 の質が 高められる ことであ る。
その意 味 か ら は 「な る ほどこれ は創 造 的なデザ イン で ある一
と誰し も 認 めるよ う な結 果を 生 み 出 す ため の実 践 的な研 究も必 須である。
【参 考 文 献 】 1)高山 正喜久 :造形発 想の教 育 〔6) :日本 デ ザ イン学 会 第 48 回 研 究 発 表大 会 概要集 pp.
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