Japanese Society for the Science of Design
NII-Electronic Library Service Japanese Sooiety for the Soienoe of Design
21
世
紀 型
イ ン
ハ
ウ
ス
デ
ザ
イ
ン
部 門
の
新
し
い
役 割
New
Role
of In−
house Design Section in the 21st century川口 光 男 KAWAGUCHI Mitsuo
日 立 ホ
ー
ム & ライフ ソリュー
ション株 式 会 社 Hitachi Home &Life Solutions,
lnc.
は じ め に
イ ンハ ウスデザ イン の役 割は大ま か に言っ て
、
k
量 生 産・
大 量 消 費の マ ス プロ時代
(〜’
70
年
代 )に お ける、
色・
形・
仕上げな ど 商 品の外観 デザ イン (プ.
ロ ダク トデ ザイ ン ) か ら、
大 量 情 報・
選 択 消 費 の マー
ケ ティング 時 代 (〜’
90
年 代 〉にお ける 、 コ ン テ ン ツ、
画面、
Web
など情 報の可 視 化 デザイン (コ ミュ ニ ケー
ショ ンデザ イン)へ と、
その 役 割は拡 大 したと言 えるが、
企 業に お け る組 織 や デザ イナー
の位置付け は、
いず れの時 代も設 計 部 門や 事 業 戦 略 部門な どの下 請け的 存在であった と 言 わざるを 得 な いロ
その 主 な 理 由 は、
デザ インが好き嫌い で判 断さ れ る感 性型技術 で あ る た め、
企 業にお けるコア・
コ ン ピ タン スと 成 り得な かっ た か らである。
しか し、IT
やネッ トワー
クの 進 展 に伴うボー
ダレス時 代は メ ガ・
コ ン ペ テ ィショ ン の時 代で あり、
ま た、
お客 様 の モ ノに 対する価 値 観の多 様 化に対 応し、
価 格 や 機 能を 超 え て お 客 様の 心 を うつ 「経 験」 に価f
直を見 出 すとい う新しい経 済 価 値をベー
ス と し た経 験 価 値 社 会と も言わ れて い る。 こ のよ う な時 代に、
企業は世 界を相 手に生 き残り を か け、
区別 化 技 術 及 び 価 値創
造 型技 術であるデザインに着 目し、
イン ハ ウスデザ イン の人・
技 術・
組 織を 企業の 重要な経営資
源 と し て、
経 営の上流に位 置 付け る 傾 向 に あ る。
こ こ では そ の背 景と経 営資
源と し ての インハ ウスデ ザイ ンの 新しい役 割を 日 立製作 所の 事 例 を含めて述べ る。1 .
デザ イ ンの背景 (D
メガ・
コ ン ペ テ ィ シ ョ ン の 時 代 :世 界でNo
.
1かNo
.
2
しか 生 き残れ ない時 代であり、
○ ○ら しい と 言 わ れ る 独 自性の高い モ ノ づ く りが求め ら れ てい る。
(2
)ユ ビ キ タ スの時 代 ;いつ で も、
どこ で も、
誰とで もつ な が る とい うユ ビキ タス の 時 代は常 時 接 続の 時 代で あ り、
裏を 返 せば常時監視の時 代と 言 え、
その 心理的圧迫か らの 解 放やIT
化・
高機能 化に よ る機 能・
効 率 中 心 か ら 人 間 ら し さ や豊か さへ の回 帰、
つ ま り、 人 間 中心の モ ノ づ く り が求め られ てい る。
(
3
) 高 福 祉の時 代 :健 常 者 だけ で な く、
高 齢.
者 を は じ め、
障 害の あ る 方、
妊 娠中や怪 我をさ れ て い るな ど一
時 的な障 害を お持ちの方など、
一
人で も多 くの 人 に利 用可能なモ ノ づく りが求め ら れ て い る。
2 .デ
ザイ ン の捉え方 (1
) デザイ ンの特 性 デ ザイ ンの定 義 :企 業 活 動におけるあらゆる場 面 で、
あるべ き姿 「イ メー
ジ」を創造 し、
その 価 値 を分か りや す く形 象 化する ソフ ト ウエ ア であるu つ ま り、
デ ザ インは 企 業 経 営におい て、
あ ら ゆる事業 活 動に関 係す る技 術
=
経 営資源 で あ る。
技 術 特 性 :好き嫌いが基 本の 感 性型 アナロ グ技 術 であ り、
価 値を創 造し あ ら ゆ る 場 面 で 活 用 で き る水 平 展 開型
技
術で あ る。
デザ イ ナー
の 基本能 力 :感 性力 をベー
スと し、
独 創 力、
仮 説 構 築力、
可 視 化 能 力、
調 整 力の 五つ の 能 力 が 某 本 で あ る。
(2
)デザ イン の領域 広 義のデ ザイ ンへ (領 域の拡 大 ):従 来の領 域 は、
商品の事 業 化 プロセ スの中で、
設 計を中 心と した 前 後、
つ ま り商 品 企 画から量 産 立ち ヒげ (狭 義の デ ザイ ン)まで であっ たが、
商 品の 高 付 加 価 値 化 が 課 題で ある現 在では、
事 業 化プ.
ロセスの 入 りL1
(事 業 戦 略 )か ら出凵 (デ ビュー
戦 略) まで、
そ の役割と責任は拡 大 (広 義のデ ザ イン)し て い る。
ビジネス の デザ インへ (対 象の拡 大 ):ハー
ド中 心か ら、
画面、
〜恥b、
サー
ビス、
コ ン テ ン ツな ど ソ フ ト、
そして、
ビ ジ ネス その もの を対 象と し た デザ インへ とその 対 象は拡 大してい る。
ソリュー
ショ ン のデ ザ インへ (技術
の拡
大):基 盤 技 術と して の プロ ダク トデザインとコ ミュ ニ ケー
シ ョンデザ イン、
更に、
基盤 技 術を高 度 化す る新た な技 術とし て、
ユー
ザ ビリテ ィデザ イン、
イン タ ラ ク シ ョ ンデ ザ イン、
そ し てユ ニ バー
サ ル デザイン、
そ して、
これ ら を融 合し た総 合 力と しデ ザ イ ン 学 研 究 特 集 号 SPI
,
:CIAI.
ISSIJEOF,
ISSDVo]13 No.
120〔}S 4iJapanese Society for the Science of Design
NII-Electronic Library Service Japanese Sooiety for the Soienoe of Design
匚基盤技 術 :プロダ クトデ ザ イン /コ ミュ ニ ケ
ー
ショ ンデザイ ン] ユ ユ イφ
,
●
○
◎
○
丶
・
.
.
1
ザ ビ六
「 ン タ ラ ooO,
○
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リ サ ク テ ル シ イ デ ヨO
,
○
○
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,
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冒
デ ザ イ ンザ
イ ン≧
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・
●
09.
○
,
o
.
ン [高度化技 術] ての ソ リュー
ションデザインへ と技術 は 拡 大 し て い る。
(3
) デ ザイ ンの役 割 イ ンハ ウス デザ イン部 門は、
企 業の 社 会 的 役 割 (社 会 的 責 任=
CSR
)の一
端を担い、
人、
生活、
社 会、
そし て技 術 それぞれ を 最適に結 び 付 け、
真に豊か な 社 会の実 現に貢 献 するという ミッシ ョ ン を持つe 具体 的に は、
社 会をデザ イン し、
企 業をデザ イン し、
CS
をデ ザ インするということである。
社 会のデザイン : ユ ビキタス の時 代には使いやす いという視 点、
高 福 祉の時 代に は誰も が使えると いう視 点、
そ して経 験 価 値の時 代には 魅 力 という 視 点を持ち、
企 業の枠 を越えて、
社 会のニー
ズを デザインするという姿 勢が 重要で ある。
企業のデ
ザイン ;経 営 とい う視 点でブラ ン ド イ メー
ジの構 築、
事 業とい う視 点で技 術の事 業 化、
商 品とい う視 点で高 付加価 値 化が課せ られ、
全ての事 業
、
全ての プロセスに関 係し、
企 業 姿 勢をデ ザインする とい う姿 勢が 重要であ る。
CS
のデ ザイ ン ;何 を望ん でいる か という お 客様 視 点、
生 活にどの よ うに関 わっ てい く か とい う 生 活者 視 点、
どんな人 が使うのか とい うユー
ザー
視 点を持つ こと、
つ ま り、
人中心で全てを考え、
お 客 様に満 足 を提 供するという姿 勢 が 重 要である。
(4 )デ ザインの効 果デザインは お 客様に
一
番近い技術 で あ り、
デ ザイ ンの導 入 に よ り、
商品 価 値、
CS
、
ブラン ド価 値、
そ れぞれ を向上 させ、
企 業フ ァ ンと リピー
ター
の 創生 を 図 ること が可 能にな り、
結果的に企 業の売上げや 利 益に貢 献 すること ができる。
42 SPECIAL ISSUE OF JSSD Vel
.
13No.
12005 デ ザ イ ン 学 研 究 特 集 号璽
フ ァ ンの創 生3 ,
デザイン の課 題 般 的に、
企 業にお けるデ ザイ ンの位 置 付 け は 徐々に高 まりつ つ あるとは言 え、
まだまだ低く、
デ ザイナー
の 処 遇に対する満 足 度も低い。 その理 由 と して、
デザイン技 術そのものが感 性をベー
スと し た ア ナロ グ技 術で あるた め、
比較 可 能なデザイナー
の 評価 基 準や資
格制
度が 存在せず、技
術 水 準が計り難 いとい うこと、
ま た、
そ れ 故 に、
企 業活 動に お け る 経 営や事 業へ の貢献度算定 が難し く、
他の研究 者や 技 術 者と 比較し てデ ザイ ナー
の 処遇 が低く な り が ち であ る とい うこ と が 上 げ ら れ る。
これ はインハ ウス デ ザイ ン部門 と し ての組織及び デザイ ナー
とい う職 能のプレゼ ンス の 問題であ る。
ま た、
デ ザ インとい う専 門 性 故、
デ ザイ ナー
の他部門 や社外へ の展 開が 難し く、
人材が滞 留し、
組織の高齢化 は 大 き な問題 となっ て い る。
以上 の よ う な 課 題 を解決 す る た め、
次の施 策が必 要と考え る、
(1
)上位 組 織へ の位 置 付 け トッ プに近い 1感 性 技 術である故、
好き嫌い の議 論を排 除し (合 議で な く)、
ス ピー
ディー
に トッ プディシジョンを仰 ぐこと がで きる。
独 自性が活か せ る :どこ か の部門の・
部で な く、
独 立 部 門と して、
予 算 を 持 ち、
組 織や人の評 価・
処 遇 が 独 自で提 案できる。 分か りや すい位 置 付け :誰に で も認 知さ れやす く 分か りやす い (組 織の 階 層が浅い )位 置 付 けで、
デザイ ンの組
織 ・
人 を顕在
化さ せ活 用を促 進さ せ る。
(2
) 特 異技 術の 構 築 特 異技 術を 明確 化 する :デ ザイ ン部門で し かで き ない技 術 (コ ア・
コ ンピ タン ス)を明 文 化し、
導 入 事 例を蓄積する。 ネッ トワー
ク を構 築する : コ ラボレー
シ ョ ン、
ア ラ イ アン ス等に よ り、
ネッ トワー
ク を構 築し、
技 術 補 完 と外 部 評価を実 施、
技 術の 向上 を 図 る。
総合
力を発揮
す る :デ
ザ インは総 合 力、
持て る技 N工 工一
Eleotronio LibraryJapanese Society for the Science of Design
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術を融 合し
、
常に総 合 力で課 題 解 決に あ た る。
(3
)人材 (財 )の確 保と育成 専 門 性の 高い 人 材 を 確 保 (育 成 ) す る :世 界で通 用 し、
個 人 名で通 用 する高い専門技 術を有する 人 材を確 保 (育 成〉する.
⇒ デザ イン フ ェ ロー
ビ ジ ネスセ ン スを 育 成する ;あ ら ゆ る機 会にデ ザ インを 活用し、
経営 と 事 業に貞 献 する ビ ジネス セン スを育成 す る
。
⇒ デ ザイ ンプロデュー
サー
企画・
提 案 能 力を育成 す る :新しい こ とにチ ャレンジ す る た め に
、
周囲を納 得さ せ る分か り やすい企画
・
提 案 能 力を育成 す る。
⇒ デ ザイ ンプラ ン ナー
(4
) 人 材の流 動 化 人材の 流 動 化は トッ プの 資 質に掛か っ て い る と 言っ て も過 言で は ない。
トッ プの主 な 役 割は外 交に よ る 人 的・
組織的 ネッ トワー
クづ く り であ り、
ネッ トワー
ク を 活 用 し て、
組織と しての ベン チマー
ク や ベ ス トプラ クテ で スを 行い、
組 織 力 を高め る と共に デ ザイナー
の他部門 や社 外へ の展 開 を促 進し、
人材 の流動 化 を 図 ることである。
他 部 門へ 展 開する :デザ イ ナー
の経 営 や 事 業の現 場にお け る 活 用、
ま た はデ ザイ ナー
の幅 広い知 見 の醸 成と して他 部 門へ 展 開 する。
社 外へ 展 開 する :学 位 取 得、
論 文 執 筆な ど学 会参 加、
社 外団体活動な ど を 通し て、
個人のプレゼ ン スを高め、
社 外へ 展 開 する。3
)1
メ:処 会 社を設立 する :自部 門で管 掌する会社を設 立、
人材だ けでな く組 織と して の流動 性も確 保す る。 4.
日 立のデザ イ ン部 門の改 革 (1
) 改革の 骨 子 :研究開 発本 部か らデ ザイ ン 研 究所を 独立さ せ、
社長直属の事 業 グルー
プ 扱い と し、
デ ザイン本 部と改 称 する。
(
2
)改
革の目的
σ1デ ザイン の 経 営 資 源 化 :モ ノか らコ トへ と価 値が 求め られる時 代に、
価 値 創造 技 術で あるデザ イン を経 営 戦 略上の重要な柱の一
つ と位 置 付け、
日 立 グ ルー
プ共 有 財 産と して活 用す る。 デ ザイ ンの 事 業活用強化 :商 品の デ ザ イ ンだ け でな く、
技 術の事 業 化 (ア プ リ ケー
シ ョン提 案)、
新 事 業創 生 (ビ ジネス モデル提 案 )、
受 注 攴援 (プ レゼン テー
シ ョ ン)、
広 報・
宣 伝 (デ ビュー
戦 略)な ど
、
デ ザ イン の対 象拡 大の現 状 を踏ま え、
デ ザ イ ン を 「研 究」 (垂 直深 耕 型 ) から 「事 業」 (水・ド 展 開 型) へ と構造 転 換し更なる活 用を 図 る。
デザ イン の コー
ポ レー
ト活 用 強 化 :ブラ ン ドマ ネジメ ン ト、
コー
ボレー
ト プレゼ ン テー
シ ョンなど
、
ブラン ドイ メー
ジ を 構築し、
ブラン ド価 値向1
二を目指 すコー
ポ レー
トレベ ルの 活 動に おい て、
デザインを積 極 的に 活用す る。
(3
) 改 革の効 果 (進行 中) デザ イ ナー
マイン ドの 向上 :上位 組 織へ の位 置 付.
けに よ り
、デ
ザイン のプレ ゼン スは向ヒ、
ま た独立串業 体と して
、
デザイ ナー
の経営マ イン ド も向上
、
経営 や事 業に資す る インハ ウスデ ザイン部 門 と して経 営 陣の 評 価は高まっ て いる。
事 業貢献 範囲の 拡 大 1デ ザイ ンの プ レゼン ス向上に伴い
、
ブラン ド構 築、
事 業 戦 略、
商 品 計 画、
デ ビュー
戦略などデ ザイ ンの活 用分野 が拡 大、
更に デ ザイ ナー
を商品企画 や宣 伝な どの部門長と して 登 用する事 業 所が増えて いる。
経 営 貞献 活 動の拡 大 :ブラ ン ド戦 略、
コー
ポレー
トイベ ン トの 企画・
提 案、
社 外 発 信の ため の 幹 部メッセー
ジの シナ リオ 化と可 視 化 など、
コー
ポ レー
トレベ ル での活用が促 進し、
ブラ ン ドの価 値 向L
に貢 献している。 お わ り に インハ ウスデザ イン部 門につ い て い ろ い ろ述べ さ せ ていた だいた が、
経 営 資 源と して のデザイン の デザ イン学研究特集号 SPEC’
IALISSUEOFJSSI )VDLBNr ,.
12[)C冫S 4:S N工 工一
Eleotronio LibraryJapanese Society for the Science of Design
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活 用は い ろ ん な意 味で促 進 し て い る と言え る
。
ただ し、
デ ザイ ン は企 業に とっ て本質 価 値である に も関 わらず、
デザ イ ナー
自身がデザインを付 加 価 値と し て捉えて活 動して い る場 合が多い の ではないだろ う か。 今、
インハ ウスデザ イナー
に必 要なことは、
デザ イナー
自身 が 経 営 や 事 業に貢 献して い るとい う自信 と自負を持つ こと で あ り、
その為に は関 係す る 企業 の経 営状態や関わっ た事 業の進 捗を 理解す ること で あ る。
インハ ウスデザイン部門 に は外 部に 開 示 さ れ ない中
長期的
な経営
や事業
の方
針ま で も手に 入 るポ ジ ショ ンに在り、
そ れ をベー
スに短 期 的 な明 目、
明 後日の 業 務 を 行 え る とい う メ リッ トが あ る。
こ の メ リッ ト を 最 大 限に活 か し、
余 人 を持っ て替え難い部 門構 築を行うべ きである。 【参 考文 献 】 1)紺 野 登 創造経営の戦 略,
2004,
ち く ま新書 2) 小 高 尚 子 エ ク スペリエ ン ス・
デ ザ イ ン r電 通 報 』 第4285号 3>デザ イ ン 研 究 所25年 の あ ゆ み 1983 日 立 製 作 所デ ザイ ン 研 究 所4>Hitachi Design lndex 1998 日 立製 作 所デザイ ン研究所
44 SPECLXL ISSUE OF JSSD Vol