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目次 第 1 章序章 1.1 研究の目的 背景 1 第 2 章社会保険制度 2.1 社会保険制度とは 社会保険制度の推移と構成 社会保障費用 ( 社会保障給付費 ) の推移 社会保障給付費と社会保障財源 4 第 3 章建設業における社会保険未加入問題 3.

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2014年度 修士論文

建設労働者の社会保険未加入問題についての研究

副題:『公共工事の担い手の中長期的な育成と確保』

A study on the uninsured problem related to construction workers in japan

A subtitle:Ensure the medium- to long-term development of public works

2015 年 2 月

主指導教員 草柳 俊二

副指導教員 永野 正展

副指導教員 五艘 隆志

高知工科大学大学院 工学研究科基盤工学専攻

修士課程 社会システムマネジメントコース

学籍番号 1175115 片岡 広志

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【 目 次 】

第1 章 序章 1.1 研究の目的・背景 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 第2 章 社会保険制度 2.1 社会保険制度とは ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 2.2 社会保険制度の推移と構成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3 2.2.1 社会保障費用(社会保障給付費)の推移 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3 2.2.2 社会保障給付費と社会保障財源 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 第3 章 建設業における社会保険未加入問題 3.1 社会保険加入状況調査結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 3.2 建設業における社会保険未加入問題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 3.3 なぜ未加入になるのか? ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7 3.4 公共工事設計労務費単価は労務費調査で決まる ・・・・・・・・・・・・・・・・・7 3.4.1 公共工事設計労務費単価の「加重デフレスパイラル」 ・・・・・・・・・・・・・7 3.4.2 公共事業労務費調査 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9 3.4.3 公共工事設計労務費単価 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9 3.5 建設労働者に関わる経費はいくら必要か ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9 第4 章 社会保険未加入対策(行政の対応) 4.1 建設産業戦略会議・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11 4.1.1 建設産業の再生と発展のための方策2011・・・・・・・・・・・・・・・・・11 4.2 中央建設業審議会・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17 4.2.1 社会保険未加入対策の具体化に関する検討会・・・・・・・・・・・・・・・・・17 4.2.2 中央建設業審議会・社会資本整備審議会産業分科会建設部会基本問題小委員会・・19 4.2.3 建設産業における社会保険加入の徹底について・・・・・・・・・・・・・・・・22 4.3 社団法人日本建設業連合会・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22 4.3.1 社会保険未加入対策への取り組み・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23 4.3.2 社会保険加入促進計画・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24 4.4 社会保険未加入対策推進協議会の設置・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26 4.4.1 社会保険未加入対策推進協議会・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26

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4.5 担い手 3 法の改正 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27 4.5.1 公共工事の品質確保の促進に関する法律の一部を改正する法律・・・・・・・・・27 4.5.2 入契法(公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律)の改正・・・・・28 4.5.3 建設業法の改正・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28 第5 章 建設技能労働者の雇用環境問題の考察 5.1 建設技能労働者の雇用環境問題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29 5.2 建設技能労働者の就労・給与支払い形態の現状・・・・・・・・・・・・・・・・・・29 5.3 すべての建設技能労働者は加入するか?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31 第6 章 新しい社会保険制度の提案 6.1 建設業退職金共済制度を参考・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・32 6.2 新しい社会保険制度の構築・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・33 6.2.1 就労履歴登録機構(就労管理システム)の活用・・・・・・・・・・・・・・・・33 6.2.2 建設業社会保険金共済機構(仮称)の創設・・・・・・・・・・・・・・・・・・36 第7 章 まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・39 謝 辞 -参考文献- ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40

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1 章 序章

1.1 研究の目的・背景

社会保険制度を所管しているのは厚生労働省である。日本の社会保険制度は、少子高齢化及び 15 年に及ぶデフレスパイラルが主な原因で破綻の危機とされている。社会保険の加入は、国民の 義務とされている。労働者の社会保険加入は製造業では約9 割、建設業では約 6 割が社会保険加 入の実態である。国土交通省・各建設業団体は建設業における社会保険の加入率約6 割の低さを 問題視してきた。若い世代を含め建設業に人材が集まらない要因としても考えている。公共工事 の担い手である建設技能労働者の中長期的な育成と確保も今後の課題である。 そんな観点から建設労働者の社会保険未加入問題を取り上げることにした。国土交通省は平成24 年2 月「社会保険加入促進計画」を策定し保険加入を促進するとともに、未加入対策を推進してい る。『なぜ社会保険に未加入になるのか?』建設労働者の社会保険未加入問題を通して、今後の建設 技能労働者の雇用環境問題の考察と新しい社会保険制度の提案を本研究のテーマとする。 1)建設技能労働者の雇用環境問題の考察 2)新しい社会保険制度の提案 出所:総務省「労働力調査」、厚生労働省「雇用保険事業年報」 「厚生年金保険業態別規模別適用状況調査」

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2 章 社会保険制度

2.1 社会保険制度とは

保険とは、病気・死亡・障害などの事故の可能性がある時、人々が保険料というものを払ってお くことで、もし事故が起きた時に、それに釣り合うレベルの給付を受けることができる制度のこと である。 社会保険は、全ての国民と定められている職業の人達の強制的な加入がルールとなっている。民 間保険は、入るか入らないかは自由であるが、社会保険は加入義務がある。日本の社会保険は、社 会保険未加入問題に関しては、医療保険、年金保険、雇用保険の3 つについて取り扱うこととする。 社会保険は、社会保険が適用される人によって、被用者保険とそれ以外の国民のための保険に分 けられる。被用者保険は会社員とその家族を対象とする社会保険であり、被用者保険の保険料は、 保険を受ける人、会社、国がそれぞれ分担して払う。 医療保険と年金保険については、1958 年の国民健康保険法、1959 年の国民年金法の2つを作っ たことで、1960 年の前半までに、国民皆保険と国民皆年金が出来るようになった。国民皆保険と は、国民全てが何かしらの医療保険制度に入って、病気やケガなどの場合に医療保険が受けられる こと。国民皆年金とは全ての国民が年金に加入することである。

医療保険

医療保険は保険を受ける人やその家族に病気やケガなどが起きた時に、医療サービスを受けられ る社会保険のこと。病気やけがで病院にかかった際に医療費がかかるリスクに対し、一定の自己負 担だけで治療を受けられるようにするものである。医療保険には、健康保険、国民健康保険、共済 組合などがある。 ・健康保険 :民間の会社員、労働者が対象の保険 ・国民健康保険:農業、自営業の人達が対象の保険 ・共済組合 :公務員が対象の保険

年金保険

年金保険は一定期間の間に掛け金を払って、老後、障害、死亡などになった時に、給付金が支払 われる社会保険のこと。年をとって仕事ができなくなり、収入がなくなるリスクに対し、一定の年 齢以上になったらそれまでの加入期間に応じて毎月年金(障害を負ったときや本人が亡くなった時 は障害年金や遺族年金)の給付を受けられるものである。年金保険には、厚生年金保険、国民年金、 共済年金などがある。 ・厚生年金保険:民間企業で雇われている人が対象の保険のこと ・国民年金 :自営業、第一次産業(農業、林業、水産業など)の人達が対象の保険のこと ・共済年金 :公務員が対象の保険のこと

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雇用保険

雇用保険は、失業して収入がなくなるリスクに対し、生活を安定させて就職活動ができるよう、 一定期間、手当ての給付を受けられるものである。

2.2 社会保険保障費用の推移と構成

2.2.1 社会保障費用(社会保障給付費)の推移

社会保障費用とは社会保障に対して支出される費用をいうが、図-1 はその推移を表している。 日本の社会保険制度は88 年前の 1927 年(昭和 2 年)から発足した医療保険の他に、年金保険・福 祉保険その他がある。昭和45 年あたりから右肩上がりに上昇し、平成 24 年度では 115 兆円とな っている。この原因は、少子高齢化が原因と思われる。 年金・医療・福祉とも高齢者が増えると上昇するのは明らかである。増え続ける年金は、受給 年齢の引き上げや支払額の低減で対処しようとするが、少子高齢化には勝てない。このように、 このまま社会保障費用が上昇し続けることは、国家予算の負担を考えると何とかしなければなら ない問題であることは明白である。 図-1 社会保障費用(社会保障給付費)の推移

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2.2.2 社会保障給付費と社会保障財源

社会保障給付費は各種社会保障に対して支出される費用の総称である。日本の社会保障制度は基 本的には社会保険を中心として公的扶助,社会福祉,公衆衛生および医療がこれを補完する仕組み になっている。これら社会保障給付の形態は所得保障 (現金給付) と福祉サービス (現物給付) に 区分することができる。 社会保障財源は、2010 年度(平成 22 年度)の社会保障財源の総額は 112 兆 1,707 億円であり、 項目別割合をみると、社会保険料が51.6%、公費負担が 35.7%、他の収入が 12.7%となっている。 個人の負担として納付している被保険者拠出と事業主拠出を合わせたのが社会保険料である。 ILO 基準における社会保障財源と社会保障給付のイメージ図(2010 年度(平成 22 年度)) (出展:平成 22 年度社会保障費用統計 国立社会保障・人口問題研究所)

社会保障費用の財源【収入】

(2010 年度(平成 22 年度))

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3 章 建設業における社会保険未加入問題

3.1 社会保険加入状況調査結果

(国土交通省土地・建設産業局建設市場整備課 平成24 年 10 月調査) (国土交通省土地・建設産業局建設市場整備課 平成25 年 10 月調査)

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3.2 建設業における社会保険未加入問題

図-2 は社会保障給付費の概念図を表している。国家予算は国民の租税・公債金などからまかなわ れている。国家予算は社会保障費に約30%、その他に約 70%使われている。公共事業は国家予算の 約6%である。建設業における社会保険料にあたる法定福利費はこの中から捻出されている。 法定福利費の事業主負担額は、工事費の0.80%と試算されている。この工事費の 0.80%の事業主 負担額は元請業者を介して、一次業者、二次業者以降へと流れていき、各業者は各々納付している のである。 国土交通省土地・建設産業局建設市場整備課 平成 24 年 10 月調査の元請・下請次数別の労働者 単位での3 保険加入状況を見ると、元請業者で 79%、一次業者で 55%、二次業者以降で 46%とな っている。したがって、元請業者で21%、一次業者で 45%、二次業者以降で 54%の未加入となり、 結果、全体として40%が未加入(労働者数単位)となっている。 社会保障給付費の社会保障財源は、52%が徴収された社会保険料でまかなわれており、建設産業 の社会保険は 40%が未徴収となっている。工事費の 0.80%の事業主負担分が社会保険料として納 付されなければならないのに、40%がどこかに消えた状態となっているのである。同じく、被保険 者負担分(労働者負担分)も同じ状態であることが予想される。事業主負担と被保険者負担はほぼ 同額であるから、工事費の1.6%×40%=0.64%がどこかに消えたことになる。これが建設業におけ る社会保険未加入問題である。 図-2 社会保障給付費の概念図

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3.3 なぜ未加入になるのか?

建設産業は15 年にわたるデフレスパイラルをまともに受けた産業である。また、国民の公共工 事への反発もあり、建設業者は淘汰される動きもあった。そんな建設業者の経営環境の中、経営者 は生き残るために、あらゆる策略を講じてきた。自社の利益を確保するために、下請へのしわ寄せ を図り、建設労働者に正規社員を減らす代わりに臨時社員・一人親方を増やし、正規社員を月給制 から日給制に変更した。個人事業主や日雇いの建設労働者は、国民健康保険や国民年金の社会保険 に入れば良いのだが、目先の生活を優先するがあまり保険に入りたがらない傾向にあることも要因 である。

3.4 公共工事設計労務費単価は労務費調査で決まる

公共工事の積算においては、「公共工事設計労務単価」に基づいて労務費を決める。その単価は、 前年度の「公共事業労務費調査」に基づいて決められる。労務費調査は 10 月に行われるので、そ れ以降に労務費が高騰した場合には、予定価格がそれに追いつかず、予定価格が実態と合わないと いうことになる。近年の不調・不落もその要因であることから、国土交通省は、特例措置として、 平成25 年度の設計労務単価を見直すことにしている。

3.4.1 公共工事設計労務費単価の「加重デフレスパイラル」

グラフ1 は建設投資額(民間投資額+政府投資額)と公共工事設計労務単価(型枠工・鉄筋工・普 通作業員)の推移を示している。建設投資額の減少とほぼ同じ割合で公共工事設計労務単価が推移 しているのが分かる。平成24 年の公共工事設計労務単価は、平成 10 年から比べると 35%減少し ている。失われた15 年と言われるが、建設業技能労働者にとってはもっと深刻な 15 年であった。 平成25 年に、法定福利費事業主負担分相当額約 15%の加算、入札不調状況に応じた補正等が実 施され6~8%の改善が見られた。それでも、建設業男性生産労働者は全産業男性労働者に比べ 25% 低い水準となっている。全産業男性労働者の賃金は横ばいなのに、なぜ、建設業男性労働者の公共 工事設計労務単価は建設投資額の減少に左右されたのであろうか。 日本の公共工事では、発注者側が予め「予定価格」を算出しておくことが会計法で義務付けられ ている。設計労務単価は、予定価格の算出に用いられる。発注者は、歩掛(生産性データ)に基づ き工事費を構成する費用を積み上げ、予定価格を計算する。予定価格の内の直接工事費(工事目的 物の築造のために直接必要な費用)は設計図書に基づく工事数量に単価(工事単価)を掛け合わせ た金額の計で算出される。各直接工事単価は、材料費=必要材料数量×資材単価、労務費=歩掛×設 計労務単価、機械費=運転時間×機械損料(運転経費や償却費を含む)で算出されることになる。 このように、設計労務単価は発注者側の予定価格を構成する工事単価の算出に用いられるのである。 一方、受注者側の工事単価であるが、本来、市場単価を用いて算出されるべきものだが、実態は計

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8 画設計労務単価を元に積算されたものとなる。受注者が計画設計労務単価を用いる理由は、発注者 側の設定した「予定価格」が実施的な競争基盤となるからである。 また、受注者も、自身が見積した工事単価について、誤解しているケースがみられる。元請人と なった受注者は、「直接工事単価の金額で専門門工事業者はすべて施工できる」、或いは「条件が変 わっても、この工事単価でできる」などと考えているである。 建設投資額の減少に伴い、建設業者の生き残りを掛けた競争が始まっている。世の中の動きの中 で、淘汰されるのは仕方がないとの風潮もあり、競争のしわ寄せが専門工事業者の経営に大きく影 響を及ぼしているのが実態である。値下げ競争をしなければ工事が取れず、工事単価も見直され、 労務費も圧迫されるといった状況に陥っている。 元来、労務費には労務管理費が含まれていなければならないのだが、これが明白にされていない ため、労務費は労働者に支払われる賃金のみとなってしまう。その結果、労務管理費をこの労務費 の中から捻出しなければならなくなる。専門工事業者も生き残る為には、建設業技能労働者の賃金 を見直し、減少させなくてはならない。公共事業労務費調査では、減少された労務単価が調査結果 として取り上げられ、公共工事設計労務単価が決定するという「加重デフレスパイラル」に陥って いるのが実態といってよい。 建設業労働者の公共工事設計労務単価は建設投資額の増減に左右されることは明らかだが、建設 投資額の減少によって公共工事設計労務単価が35%までも下がった要因は、建設業の重層下請構造 とも深く関連していると考えられる。

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3.4.2 公共事業労務費調査

(1)調査目的 公共工事の発注に際し必要となる予定価格の決定にあたっては、「予算決算及び会計令」におい て、取引の実例価格、需給の状況等を考慮して適正に定めることとされている。これに基づき、農 林水産省及び国土交通省では、公共工事の予定価格の積算に必要な公共工事設計労務単価を決定す るため、所管する公共事業等に従事した建設労働者等に対する賃金の支払い実態を、昭和45年よ り毎年定期的に調査している。 (2)調査方法 ① 調査対象工事 農林水産省及び国土交通省所管の直轄・補助事業等のうち、1件当たり1,000万円以上の工 事を選定母集団として、無作為に抽出。未着工、完了等の無効となった工事を除く。 ② 調査の実施方法 調査対象者は、調査対象工事に従事する51職種の建設労働者等(各職種の定義・作業内容を「調 査対象職種の定義・作業内容」に示す)。労働基準法により使用者に調製・保存が義務付けられてい る賃金台帳から、請負業者(元請会社及び協力会社)が転記する等して調査票を作成。会場調査に おいて、調査票記載内容を照合・確認することにより、賃金の支払い実態を把握。

3.4.3 公共工事設計労務費単価

1 公共工事設計労務単価は、公共工事の工事費の積算に用いるためのものであり、下請契約等に おける労務単価や雇用契約における労働者への支払い賃金を拘束するものではない。 2 本単価は、所定労働時間内8時間当たりの単価である。 3 時間外、休日及び深夜の労働についての割増賃金、各職種の通常の作業条件または作業内容を 超えた労働に対する手当等は含まれていない。 4 本単価は労働者に支払われる賃金に係わるものであり、現場管理費(法定福利費の事業主負担 額、研修訓練等に要する費用等)及び一般管理費等の諸経費は含まれていない。(例えば、交通 誘導警備員の単価については、警備会社に必要な諸経費は含まれていない。) 5 法定福利費の事業主負担額、研修訓練等に要する費用等は、積算上、現場管理費等に含まれて いる。

3.5 建設労働者に関わる経費はいくら必要か

前項で述べた公共工事設計労務単価は、直接労働者に支払われる所定労働時間内8 時間当たりの 単価であり、「時間外、休日及び深夜の労働についての割増賃金、各職種の通常の作業条件または作 業内容を超えた労働に対する手当等は含まれていない。」とされている。法定福利費の事業主負担

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10 額、研修訓練等に要する費用等は、積算上、現場管理費等に含まれており、直接工事費に対する比 率で現場管理費に計上されている。では、どんな項目にいくら必要なのだろうか? 現場管理費の建設労働者に関わる経費として以下の項目が挙げられている。 (1) 労務管理費として,現場労働者に係る次の費用とする。 1) 募集及び解散に要する費用(赴任旅費及び解散手当を含む。) 2) 慰安,娯楽及び厚生に要する費用 3) 直接工事費及び共通仮設費に含まれない作業用具及び作業用被服の費用 4) 賃金以外の食事,通勤等に要する費用 5) 労災保険法等による給付以外に災害時には事業主が負担する費用 (2) 現場労働者の安全・衛生に要する費用及び研修訓練等に要する費用 (3) 現場従業員の諸手当(危険手当,通勤手当,火薬手当等)及び賞与 (4) 現場従業員に係る退職金及び退職給与引当金繰入額 (5) 法定福利費として,現場従業員及び現場労働者に係る次の費用とする。 1) 労災保険料 2) 雇用保険料 3) 健康保険料の法定の事業主負担額 表1に示すのは、建設業における一般的な会社の保険料率であるが、事業主負担だけで支払賃金 の約16%、労使合わせれば 30%の負担となる。これに他の福利厚生費用が加われば、少なくとも 支払賃金の50%近い経費が必要となる。

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4 章 社会保険未加入対策(行政の対応)

4.1 建設産業戦略会議

建設産業戦略会議とは、建設投資の減少による競争激化や、地域社会を支えてきた建設業者の疲 弊などにより建設産業が厳しい局面を迎えているなか、この再生に向けての方策を策定することを 目的として2010 年 12 月に設置された有識者会議である。2011 年 6 月に「建設産業の再生と発展 のための方策2011」をとりまとめたが、東日本大震災を経た現状を分析し、国土づくり・地域づく りの担い手として建設産業に期待される姿を改めて明らかにするとともに、震災を踏まえた形で優 先的に取り組むべき課題と、「方策2011」における具体的な対策を示し、「方策 2012」として 7 月 10 日に公表された。 具体的には、①適正な競争環境の整備、②総合的な担い手の確保・育成支援、③プロジェクトに 対応した円滑な契約のための支援、④海外展開支援策の強化、⑤時代のニーズに対応した施工技術 と品質確保、の5 つの対策を提言している。

4.1.1 建設産業の再生と発展のための方策2011

平成23 年 6 月 23 日

国土交通省建設産業戦略会議(抜粋)

~はじめに~

建設産業の使命は、国民生活や経済活動の基盤である住宅・社会資本の整備を通じ、我が国経済 社会の発展に貢献することにある。特に、地域においては、経済・雇用を支えるとともに災害対応 等において極めて重要な役割を果たしている。 しかしながら、建設投資の急激かつ大幅な減少等により、我が国の建設産業は過剰供給構造にあ り、競争の激化等によりかつてない厳しい状況に直面している。地域においては、地域社会を支え てきた建設企業が疲弊し、これまで担ってきた災害対応等の機能の維持が困難となり、災害対応空 白地帯が発生する等の問題が指摘されている。また、労働環境の悪化等により、若年者の入職が減 少し、建設生産を支える技能・技術の承継が困難となっている。 一方、成長市場として有望な海外市場等においても、受注や事業遂行が必ずしも円滑に行われて おらず、我が国建設企業の高い技術力を活かしきれていない。 さらに、建設市場については、現在も社会資本整備重点計画の見直しが行われているところであ るが、民間市場も含め、今後は、少子・高齢化や環境意識の高まり、PPP/PFI等による事業 の必要性、維持管理・リフォーム工事等の比重の増加など、様々な変化が指摘されている。 こうした状況を踏まえ、今後の建設産業の再生方策を策定することを目的として、平成22 年 12 月17 日国土交通大臣の指示を受けて第1回建設産業戦略会議が開催された。建設産業戦略会議に おいては、「建設産業政策2007」に掲げられた目標や政策の方向性は現在も変わらないとの認

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12 識の下、建設産業団体からのヒアリングも含め、これまで 12 回にわたり検討を重ねてきた。検討 に当たっては、現在多くの関係者による対応が進行中の東日本大震災に伴う影響も勘案しつつ、建 設産業の置かれている状況をできる限り定量的に分析した上で、建設産業が直面する課題を整理す るとともに、関係者が取り組むべき具体的な対策について議論を深めてきた。そして今般、「建設産 業の再生と発展のための方策2011」として取りまとめ、提言を行うものである。

~第1章 現状分析と直面する課題~

Ⅰ.建設産業の現状に関する定量的分析 ~中略~ Ⅱ.建設産業が直面する課題 1.地域社会の維持 ~中略~ 2-1.技能労働者の雇用環境と社会保険等の加入状況 対策2-1、対策2-2、 対策4 (1)技能労働者の雇用環境の悪化 技能労働者は、工事現場における建設生産の担い手であり、要である。しかしながら、技能労働 者の過不足状況をみると、平成20年以降は過剰傾向にあるものの、高齢化が進む一方で若年労働 者が減少しており、将来的には技能労働者の不足が見込まれている。建設企業は、建設投資の減少 に伴い売上高が減少する中で、企業経営を成り立たせるため、技能労働者の非社員化・非常勤化、 日給月給制等への転換等を行うことで、労務費や外注費等の工事原価を縮減してきたと推察される。 その結果、労務費が変動費化し、賃金の低下等、技能労働者の雇用環境の悪化が進んだことが、若 年入職者の減少と就業者の高齢化の一因となっていると考えられる。 (2)社会保険等の加入状況と課題 建設産業においては、下請企業を中心に、慣習的に技能者を直用、準直用などと呼ぶ不明確な関 係で使用し、関係法令により義務付けられている社会保険・労働保険(以下「社会保険等」という。) のうち、特に年金、医療、雇用保険について、企業としての未加入、一部労働者の未加入など、法 定福利費を適正に負担しない保険未加入企業が存在している。 社会保険等の未加入は、技能労働者の処遇を低下させ、若年入職者減少の一因となっている。ま た、保険未加入企業の存在により、適正に法定福利費を負担し、人材育成を行っている企業ほどコ スト高となり、競争上不利になるという矛盾した状況が生じている。このため、保険未加入企業の 排除に向けた取組により、建設産業の持続的な発展に必要な人材の確保を図るとともに、企業間の 健全な競争環境を構築する必要がある。 2-2.重層下請構造 ~中略~ 3.技術者の育成と適正配置 ~中略~ 4.公共調達市場と受発注者関係 ~中略~ 5.海外建設市場への積極的進出 ~中略~ 6-1.過剰供給構造 ~中略~

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13 6-2.新たな事業分野への展開等 ~中略~ 7.東日本大震災 ~中略~

~第2章 実施すべき対策~

対策1 地域維持型の契約方式の導入 ~中略~ 対策2-1 保険未加入企業の排除 (1)関係者一体となった取組 保険未加入企業の排除に際しては、建設産業全体としての枠組みを整備し、行政、元請企業及び 下請企業が一体となって取り組んでいくことが必要である。 ① 行政における取組 行政においては、建設産業行政担当部局が、社会保険等担当部局における加入徹底の取組と連携 して、建設産業の健全な発展を促進する観点から指導監督していく枠組みが必要である。具体的に は、建設業許可更新時、経営事項審査時及び立入検査時における保険加入状況のチェックや指導監 督を行い、未加入企業をなくしていく取組を行うべきである。 ② 元請企業における取組 元請企業においては、下請企業を中心に保険未加入企業が存在している状況を改善していくため、 建設工事の施工及び労働者の使用に関する法令についての指導責任の一環として、下請企業の保険 加入を指導する枠組みが必要である。 具体的には、特定建設業者による下請指導責任及び下請指導内容を明示し、元請企業が、施工体 制台帳、作業員名簿等により、下請企業や建設現場の各労働者の保険加入状況をチェック・指導し、 保険未加入企業を排除していく取組を行うべきである。また、行政においては、これら元請企業に よる下請指導状況をチェックしていくことにより、実効性を確保していくべきである。 ③ 下請企業における取組 下請企業においては、現場就労者について、雇用関係にある社員と請負関係にある者の二者を明 確に区別した上で、雇用関係にある社員についての保険加入を徹底すべきである。また、請負関係 にある者については、再下請通知書を活用して保険加入状況をチェックすることにより、保険未加 入企業を排除していく取組を行うべきである。その際、労働者単位の加入状況のチェックを効率的 に行うため、建設産業団体において労働者の保険加入状況を把握するために、ITを活用してチェ ックする方策など、効率化のための方策を講ずるべきである。 (2)派生する課題への対応 保険未加入企業の排除方策の実施に伴い、法定福利費の事業主負担分の支払又は抑止のため、労 働者の賃金へのしわ寄せやいわゆる一人親方の増加が懸念されるところである。このため、法定福 利費については、発注者が負担する工事価格に含まれる経費であることを周知徹底するとともに、 個別の請負契約の当事者間において見積時から適正に考慮するよう徹底していくなど、下請企業ま

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14 で適正に流れていく方策を講じていく必要がある。また、建設業における請負及び雇用に関するル ールの徹底などの重層下請構造の是正方策を併せて実施していく必要がある。 (3)進め方 専門工事業の業態、職種によっては、保険加入の現況と目指すべき姿にギャップがあることから、 排除方策の全体像を示した上で、1年程度の周知・啓発期間を設け、行政、元請企業、下請企業が 一体となって、保険加入の促進に向けた機運を醸成する体制を整備する必要がある。周知・啓発期 間の終了後、速やかに大規模工事から行政によるチェックの徹底を進め、その範囲を順次拡大して いくことで、実施後5年を目途に、企業単位では加入義務のある許可業者について加入率100%、 労働者単位では製造業相当の加入状況を目指すべきである。 対策2-2 重層下請構造の是正と施工力のある企業の育成 (1)自主的な取組 下請契約は、個々の企業において、工事ごとにその済的合理性、必要性等を勘案してなされてい るものである。このため、行政による一律の次数制限という規制手法ではなく、契約当事者である 建設企業において、下請契約の必要性・適法性のチェック、施工力のある下請企業の選定、工事の 平準化等により、重層構造是正のための自主的な取組が積極的になされていくことが望ましい。 (2)請負及び雇用に関するルールの徹底等 一方、下請契約が原則自由であることは、市場参加者のルールの遵守を前提としており、建設業 における請負及び雇用に関するルールの徹底(技術者データベースや施工体制台帳等に基づく一括 下請負の確認強化及び主任技術者の配置徹底(対策3)、労働者性や請負・派遣の判断基準等の周知 徹底等)を通じ、請負及び雇用関係の適正化に取り組んでいくことが必要である。また、保険未加 入企業の排除方策を実施していくことは、雇用関係の明確化により、請負契約から雇用契約への移 行を促し、また、下請単価の適正化により、コスト削減のための外注を抑止することとなるため、 重層下請構造の是正にも一定の効果が見込まれるものである(対策2-1)。 (3)優れた技能者を有した企業の育成・評価 建設工事の施工に当たっては、基幹技能者に品質管理や工事の調整、安全管理等の役割が期待さ れている。また、国土交通省直轄事業においては、基幹技能者の配置について評価をする総合評価 方式を試行している。優れた技能者を有した企業を育成していくためには、現場をまとめ、効率的 に作業を進めるためのマネジメント能力に優れた基幹技能者について、目指すべき技能者像として 活用していくことが必要である。このほか、下請企業の技術力の適切な評価、下請企業の見積を踏 まえた入札方式の活用(対策4)等により、施工力のある企業の育成が図られるものと考えられる。 (4)公共事業労務費調査の人材確保・育成への活用 公共事業労務費調査について、建設産業を支える技能・技術の承継の確保を図るため、資格保有 者の賃金水準の把握及び参考公表、保険加入状況のチェックを行い、資格取得へのインセンティブ、

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15 キャリアパスの作成等による人材の確保・育成や、保険未加入企業の排除方策へ活用していくこと が求められる。また、公共事業労務費調査については、公共工事従事者の賃金支払実態をより的確 に把握するため、技能程度の把握、標本の確保等、引き続き、調査の適正化等に取り組むことが必 要である。 対策3 技術者データベースの整備と業種区分の点検 ~中略~ 対策4 入札契約制度改革の推進 健全な公共調達市場の整備を図るため、次の(1)~(6)の取組を行うことが必要である。ま た、適切な受発注者関係の構築等のため、(7)及び(8)の取組を行うことが必要である。 (1)ダンピング対策等の強化 建設業の健全な発展と公共工事の品質の確保を図るため、地方公共団体等における対策の更なる 徹底等によりダンピングの防止を図ることが必要である。これにより、適正価格での受注が進み、 結果として対策2に掲げた社会保険等への加入促進や、重層下請構造の改善といった効果も期待さ れる。 国においては、工事の品質確保の観点から、受注者として不可避な費用をもとに、落札率と工事 成績との関係も考慮して低入札価格調査基準価格を適切に設定してきたところであるが、地方公共 団体等において、具体的には、最低制限価格制度や低入札価格調査制度の導入、最低制限価格や低 入札価格調査基準価格の国並み水準への引上げ、低入札価格調査制度における数値的失格判断基準 の設定及び水準の引上げが必要である。 また、予定価格等の公表時期については、事前公表は取りやめるよう措置すべきである。予定価 格の設定に当たり、適正な積算の徹底に努めるとともに、発注者が積算した金額の一部を正当な理 由なく控除するいわゆる歩切りについては、公共工事の品質や工事の安全の確保に支障を来すとと もに、建設業の健全な発展を阻害するおそれがあることから、これが行われないよう措置すべきで ある。 (2)落札決定の効率化(段階選抜方式) 例えば、国土交通省直轄工事においては、近年、大規模工事を中心に競争参加者数の増加がみら れるところである。競争参加者が特に多く、公共調達に係る社会的コストが増大している工事、と りわけ総合評価を活用する工事においては、競争性を維持しながら契約の相手方をより合理的・効 率的に選定できるよう、広く競争参加者を募った上で、諸外国でも多くみられるように第一段階の 競争における評価点が上位の概ね5者程度に、最終的な落札者を決めるための入札書及び詳細な技 術提案等を求める競争方式の活用を推進することが必要である。 (3)地域企業の適切な活用 地域要件の設定をより的確かつ整合的に行っていくため、地域要件の設定を案件ごとに個別判断 している地方公共団体においては、地域要件の設定に関する運用方針を定めることが適当である。

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16 その他、入札契約において、災害発生時における対応等や、地元の建設企業や資機材会社を活用 する元請企業を評価する総合評価方式の活用を促進することが必要である。 (4)下請企業の技術力の適切な評価 専門工事の施工内容が特に重要な工事において、下請企業等の技術力を適切に評価するため、下 請企業等の技術提案を審査する総合評価方式(特定専門工事審査型総合評価方式)の活用を推進す ることが必要である。 (5)下請企業の見積を踏まえた入札方式の活用等 下請企業への適切な支払を担保することにより、下請工事の適正な施工を確保するため、まずは、 専門工事の施工内容が特に重要な工事等から、下請企業の見積を踏まえた入札方式等の試行を実施 し、その課題等を明らかにしていくべきである。 また、支払ボンドは、下請代金の保全により専門工事を担う下請企業が安心して質の高い工事を 行える環境を整えるとともに、重層下請構造の是正など元下間の構造改善等にも寄与し得るもので あり、試行導入に向けた取組を行うことが必要である。 (6)建設関連業における品質確保・納期の平準化 調査設計等業務の品質確保を図るとともに、技術力に優れた企業の持続的経営と技術の次世代へ の承継が可能となるよう、地方公共団体に対し、技術力の適正評価(総合評価落札方式の拡充、プ ロポーザル方式の拡充)、適正価格での受注(最低制限価格制度や低入札価格調査制度の導入、予定 価格の事後公表への移行)がなされるよう措置すべきである。加えて、納期の平準化が推進される よう取り組む必要がある。 対策5 海外展開支援策の強化 ~中略~ 対策6-1過剰供給構造の是正と不良不適格業者の排除 ~中略~ 対策6-2 新たな事業分野への展開等 ~中略~ 対策7 東日本大震災を受けた特別の対応 ~中略~ ~方策の実現に向けて~ 建設産業が魅力と活力を回復し、我が国経済社会の発展に貢献していくためには、建設企業、建 設産業団体、行政など建設産業に携わる関係者が一体となって、この方策の実現に取り組むことが 重要である。建設企業等においては、技術力、施工力、経営力を一層磨き、国民の期待に応えられ るよう努力することが望まれる。行政においては、その努力が報われるよう、様々な取組や支援を 行うことが必要である。 今後、7つの対策の実現に向けて、中央建設業審議会等における審議、入札契約適正化法に基づ く適正化指針の改正、建設業関係法令の改正、財政・金融上の支援措置等を通じて、実施可能な対 策から順次実施し、施策の具体化が図られることを期待する。

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建設産業戦略会議委員名簿

◎大森文彦(弁護士・東洋大学法学部教授) 小澤一雅(東京大学大学院工学系研究科教授) 蟹澤宏剛(芝浦工業大学工学部教授) 草柳俊二(高知工科大学大学院工学研究科教授) 髙木 敦 (モルガン・スタンレーMUFG証券(株)マネージングディレクター) 丹羽秀夫(公認会計士) 古阪秀三(京都大学大学院工学研究科准教授)

4.2 中央建設業審議会

中央建設審議会とは、建設業法に基づいて国交省に設置された諮問機関である。中央建設業審議 会は、建設工事の標準請負契約約款、入札の参加者の資格に関する基準並びに予定価格を構成する 材料費及び役務費以外の諸経費に関する基準を作成し、並びにその実施を勧告することができる。 20 人の委員は、学識者と建設業者、発注元である自治体や企業の代表者から大臣が任命した会であ る。

4.2.1 社会保険未加入対策の具体化に関する検討会

平成23 年 12 月 15 日

(社会保険未加入に対する取組の工程)

○概ねこの方向でよいと考えている。工期末での短期間での工事が多く、工期に間に合わせるた め、人をかき集めて行っている現状があり、全ての労働者の保険加入状況をチェックすることは難 しい。取り組みの中間年次で加入状況をチェックし、その結果を取組に活かしていくことが重要で ある。下請次数については、アンケートを行った結果、1次でも加入していない企業があったため、 まず1次から加入させていくことに重点を置きたいと考えている。 ○ゼネコンが下請指導を行うことは理解できるが、我々で確認して指導するだけではなく、建設 業許可の段階で、保険未加入企業には許可を与えられないといった姿勢を出してほしい。それを元 請で指導しろというのは問題あり。ゼネコンとしてもそういう方向でやりたいが、元請のところで 指導・通報というより、行政の強力な姿勢の下で進めていくようにしたい。最終的には未加入企業 と契約しないということをしないと意味がない。また、例えば、10年後には全てデータベース化 するといった目標を持ち、保険に加入しているかどうかがすぐ分かるようにしていくことが必要で はないか。そこに向けて段階的にやるということを出してほしい。 ○保険未加入だから施工に問題があるとは言えないのではないか。「保険未加入事業者とは契約し ない」、「未加入の作業員の現場入場を認めない」とする根拠がなくなる。現場で排除した場合、訴 えられたら裁判では法的根拠は何かということになる。

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18 ○契約書に法令遵守の事項があれば、それが言える。「建設産業の再生と発展のための方策201 1」において、不良不適格業者は保険未加入だとまとめている。業界としての取組も必要。それを 許すと真面目なところが潰れる。行政の応援と民間の自主的な取組を進めていくことが重要である。 ○ゼネコンからは、一人親方で労災に未加入の者を現場に入れてはならないと指導されている。 そのように、ゼネコンからの指導があれば加入する。 ○仕事をもらえなければ、一人親方に逃げていくことが考えられるので、そのようなことを前提 として対応しなければならない。 ○ゼネコンに重層下請次数は3次以内と言われれば、そうせざるを得ない。 ○イギリスは業界、アメリカは市場原理、韓国は法律で重層下請を禁止している。日本で新たに 法律を作るのは難しいので、ガイドラインより一歩踏み込んだものを考えてほしい。運動のルール、 旗印を考えることも必要。 ○建設業許可を取得しているような法人企業は、企業では加入しているところが多いが、労働者 が加入しているかどうかは分からない。一次下請でも国民年金・国民健康保険の加入としていると ころがあり、二次・三次下請となると保険には入れない状況。お金が下請に流れていくことが必要。

(具体的な取組方策に係る検討)

○法定福利費などの義務的経費は、競争に付する事項ではないとの解釈はできるのか。例えば労 災でも、元請一括の場合には労働比率を役所で発表している。例えばそれが労務費としてあるもの として、それに関連する法律上の義務である法定福利費の積上げで約30%になるが、それが競争 に付する事項であるかどうか。その辺の解釈の余地はないのか。 ○法定福利費の確保や区分、現場作業の負担の軽減からみると、共通のデータベースを構築しな いとなかなか進まない。こうしたテーマがもし進まなければ、一つの要素として浮上してくる。そ のとき、例えば29年度末までのタイムスケジュールを組んでいく中で、それがどのように盛り込 まれていくのかについて、ご検討いただきたい。 ○外出しは難しい。法的な話もあるだろうが、私たち現場に携わる者とすれば、やっぱり確認が できないというのが正直つらい。おそらく国が立入検査の際に出てくる話だろうが、私たちの頑張 りでパーセンテージ、加入状況は上がったが、でも実際に保険金額は上がっていないということが、 どこかで露呈したときの責務を今後負うのか。私たちが働いている職員まで、何かしら責務を負わ されるのかが、今後の課題として考えること。加入すべき人たちの処遇を底上げする制度のはずな ので、実態が乖離するような、パーセンテージだけが先走ることのないように、今後注意していき たい。 ○法定福利費だけでなくて人件費でも、元請から1次下請ぐらいまでは何とか契約の段階で分か るけど、それ以下の2~3次になると、余計不明になってくる。元請・下請ともに、そこを明示し ていくと、どこまでできるのか。元請としても出しにくい、イメージしにくい部分もあるのではな

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19 いか。数年前、労務費調査の適正な実施ということで、人件費がどのように流れているのかを元請・ 下請の何社かに実際に聞いて調べようとしたが、実態を教えてもらうことすらできなかった。 ○一番大きな問題は、本人にきちんと払われているのか、それをどうやって担保していくのかと いうこと。今の仕組みの中で、法定福利費がいわゆるコスト削減の一つの材料になっている。A社 がきちんと出してもB社で削ったら、皆が削らないとならないという状況だから、極端に言えば、 消費税みたいに外に出して、歴然と皆がきちんと払えて辿り着く仕組みに大きく変えていかないと、 今の仕組みの中でうまくやれよと言っても、運用上非常に難しいと感じる。確かに、消費税みたい に出すのが法制度上、難しい議論はあるだろうが、本当にそういう事まで考えてやっていかないと、 末端まで支払うことはできない。 ○まともな適正単価を頂ければ、我々はきちんと払う。どんどんダンピングして、全部下請にし わ寄せがいく。どんどん人が減っていく。200~300万だと飯が食えない。本来は、登録基幹 技能者の費用にしても法定福利費も、我々が払わなくてはいけない。払えるようにしてくれたら、 全部解決する。適正価格は分かっているので、ゼネコンが発注者からきちんとお金を取って、下請 に流すべき。我々としてはきちんと払いたい。 ○今回、どこまでこの委員会で報告を出していいのか非常に難しい。大きく法律を変えないとす ると、いくつかやり方があって、1つは労災の元請一括みたいなとこと労働者性の解釈で、今、一 人親方は特別加入となっているが、それは労働者だとの解釈をすれば、かなりの数が消費税的にカ バーできる。国交省の範囲でひとつ公的な形で、労働者の末端まで把握するときに、建退共を上手 く使えないか。労働者のIDを使って、法定福利費が払われたかどうかを、建退共と同時に確認す るとか、民間で進めている就労履歴管理制度を少し応援していただくとかできないか。この国は国 民IDがないので、労働者の動きを完全に正確に把握するのは、特に難しい。 ○この検討会として、まずは別枠の明示で、実際にお金をとおすとこまでは難しいとしても、業 界として見積額の何パーセントは割り引けない金額だということを明示できるような仕組みをつ くるということができれば、民間からもやり易いし、公共の書式上、それが明確に書けるようなこ とだけでもできると、最初の一歩としてはよい。いきなり取って給付するのは、難しい問題がある。 予決令でも、競争に付してよい事項かどうか。一応、積上げで労賃が出ているわけだから。まずは 内訳明示ということで、労賃と法定福利費だけでも解決できる方向性が見いだすことができればよ いのではないか。

4.2.2 中央建設業審議会・社会資本整備審議会産業分科会建設部会基本問題小委員会

平成24 年 1 月 27 日 建設産業が置かれている状況を踏まえ、今後の建設産業の再生を図るため、平成23年6月23 日、国土交通省建設産業戦略会議において、提言「建設産業の再生と発展のための方策2011」 (以下「方策2011」という。)がとりまとめられた。

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20 提言を受けて、平成23年8月29日に国土交通大臣より社会資本整備審議会会長に対し「経済 社会の大きな変化によりかつてない厳しい状況に直面している建設産業が、活力を回復し、国民経 済や地域社会に不可欠な役割を果たすとともに、持続的に発展していくための方策はいかにあるべ きか。」について諮問がなされたこと等を踏まえ、「方策2011」に示された課題と対策を中心に、 実務に精通した関係者を交えて更に掘り下げて議論を行うとともに、法令改正の在り方等について もより専門的かつ幅広く検討するため、平成23年9月30日に中央建設業審議会及び社会資本整 備審議会産業分科会建設部会の下に合同の基本問題小委員会(以下「小委員会」という)が設置さ れた。 小委員会においては、これまで計5回にわたり審議を行ってきたところであり、これまでの審議 結果を以下のとおりとりまとめる。 1.地域維持型契約方式の導入 ~中略~ 2.技術者データベースの整備 ~中略~ 3.業種区分の点検と見直し ~中略~ 4.社会保険未加入問題への対策 (1)審議の経緯 建設産業においては、下請企業を中心に、年金、医療、雇用保険について、法定福利費を適正に 負担しない企業(すなわち保険未加入企業)が存在し、技能労働者の処遇を低下させ、若年入職者 減少の一因となっているほか、関係法令を遵守して適正に法定福利費を負担する事業者ほど競争上 不利になるという矛盾した状況が生じている。 このため、技能労働者の雇用環境の改善や不良不適格業者の排除に向け、社会保険未加入問題へ の対策が求められており、行政・元請企業・下請企業が一体となって、具体的な実施内容、各主体 の役割等を検討し、取り組むことにより、建設産業の持続的な発展に必要な人材の確保を図るとと もに、事業者間の公平で健全な競争環境を構築する必要がある。 小委員会においては、社会保険への加入に関する現状と課題を踏まえ、保険未加入の要因を分析 し、必要となる具体的対策と今後の取組の進め方について審議を行った。 (2)社会保険未加入問題への対策の概要 これまで、建設産業行政においては、制度的に社会保険の加入状況を把握することとはされてお らず、保険未加入企業に対する加入指導もなされていない状況にある。このため、建設産業に必要 な人材を確保し、健全な発展を促進する観点から、建設業担当部局において、社会保険担当部局と の連携を図りつつ、建設業許可・更新時や立入検査等における確認・指導、経営事項審査の厳格化、 社会保険担当部局への通報等を行うことが必要である。 また、下請企業を中心に保険未加入企業が存在している状況を改善していくためには、元請企業 に、下請企業の保険加入を指導する役割を担うことが求められる。このため、元請企業においては、

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21 下請企業の保険加入状況について、再下請通知書、作業員名簿等を活用して確認し、指導を行うこ とが必要である。さらに、受注競争が激化する中で、利益確保の観点ら、法定福利費を、経営を圧 迫するものとして適正に負担しない事業者が存在しており、技能労働者においても、保険加入の義 務・メリットに対する不知や、保険加入よりも賃金の手取額を重視し、天引きを嫌う傾向があるこ とが保険未加入の一因となっている。このため、法定福利費については、発注者が負担する工事価 格に含まれる経費であることを周知徹底するとともに、個別の請負契約の当事者間において見積時 から適正に考慮するよう徹底するほか、ダンピング対策や重層下請構造の是正等の取組を実施し、 下請企業まで適正に流れていく方策を講ずる必要がある。また、多様な手段による周知・啓発によ り、保険加入に向けた機運を醸成していく必要がある。 (3)対策の進め方 上記の対策により、実施後5年を目途に、事業者単位では許可業者の加入率100%、労働者単 位では少なくとも製造業相当の加入状況を目指すべきである。このため、必要な制度改正及び周知・ 啓発を行い、総合的に取組を実施していくことが求められる。 行政においては、建設業許可・更新時にすべての申請事業者の保険加入状況を確認し、未加入事 業者に対する加入指導を行いつつ、立入検査では、重点的に取り組む対象を徐々に拡大しながら保 険加入の徹底を図ることが必要である。また、元請企業においては、保険未加入の下請企業とは契 約しないことや、保険未加入の技能労働者の現場入場を認めないことを将来的に見据えつつ、下請 企業の指導に取り組んでいくことが求められる。関係団体においては、保険加入状況の定期的な実 態把握、周知・啓発等の計画的な加入促進策を進めていくことが求められる。

中央建設業審議会・社会資本整備審議会産業分科会

建設部会基本問題小委員会委員

井出多加子 成蹊大学経済学部教授 伊藤孝社 団法人全国建設業協会副会長 遠藤和義 工学院大学工学部教授 ◎大森文彦 弁護士・東洋大学法学部教授 小澤一雅 東京大学大学院工学系研究科教授 蟹澤宏剛 芝浦工業大学工学部教授 才賀清二郎 社団法人建設産業専門団体連合会会長 高野伸栄 北海道大学大学院工学研究科准教授 竹島克朗 社団法人日本建設業連合会総合企画委員会政策部会部会長 谷澤淳一 三菱地所株式会社執行役員 ビルアセット開発部長 西倉鉄也 東京都建設局企画担当部長 古市良洋 全国建設労働組合総連合書記長

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4.2.3 建設産業における社会保険加入の徹底について(提言)

平成24 年 3 月 14 日 建設産業においては、下請企業を中心に、雇用、医療、年金保険について、法定福利費を適正に 負担しない企業(すなわち保険未加入企業)が存在し、技能労働者の医療、年金など、いざという ときの公的保障が確保されず、若年入職者減少の一因となっているほか、関係法令を遵守して適正 に法定福利費を負担する事業者ほど競争上不利になるという矛盾した状況が生じている。このため、 関係者を挙げて社会保険未加入問題への対策を進め、社会保険加入を徹底することにより、技能労 働者の雇用環境の改善や不良不適格業者の排除に取り組み、建設産業の持続的な発展に必要な人材 の確保を図るとともに、事業者間の公平で健全な競争環境を構築する必要がある。 当審議会では、平成23年9月に社会資本整備審議会産業分科会建設部会と合同の基本問題小委 員会を設置し、建設産業が活力を回復し、持続的に発展していくための審議を行い、平成24年1 月に中間とりまとめが行われたところである。 今後は、行政・発注者・元請企業・下請企業・建設労働者等の関係者が一体となって、社会保険 未加入は許さないとの固い決意をもって対策に取り組むことが不可欠である。このため、必要な推 進体制を速やかに構築し、それぞれの立場からの取組を着実に進めるべきである。 国土交通省をはじめとする建設業担当部局においては、社会保険担当部局との連携を図りつつ、 建設業許可・更新時や立入検査等における確認・指導、経営事項審査の厳格化、社会保険担当部局 への通報等の必要な措置を講じる必要がある。また、建設企業・団体においても、下請企業に対す る指導や重層下請構造の是正等の取組を講じる必要がある。 また、社会保険加入の前提となる法定福利費の原資を確保するため、専門工事業界を中心として 見積時の法定福利費の明示を進めるとともに、法定福利費は発注者が負担する工事価格に含まれる 経費であり、受注者が義務的に負担しなければならない経費であることを踏まえ、個別の請負契約 の当事者間において見積時から適正に確保するよう徹底し、発注者から下請企業まで適正に支払わ れるよう関係者がそれぞれの立場から取組を行うべきである。

4.3 社団法人日本建設業連合会

(社)日本建設業連合会とは、平成 23 年 4 月 1 日、建設業の発展に向けた活動をより強力に展開 するため、日本建設業団体連合会(旧日建連)、日本土木工業協会(土工協)、建築業協会(建築協) の3 団体が合併した会。 全国的に総合建設業を営む企業及びそれらを構成員とする建設業者団体が連合し、建設業に係る 諸制度をはじめ建設産業における内外にわたる基本的な諸問題の解決に取り組むとともに、建設業 に関する技術の進歩と経営の改善を推進することにより、わが国建設産業の健全な発展を図り、も って国民生活と産業活動の基盤の充実に寄与することを目的としている。

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4.3.1 社会保険未加入対策への取り組み

(社)日本建設業連合会は、4 月 19 日(木)、社会保険に関する加入促進計画を策定した。 日建連では、平成21 年 4 月、近年の建設技能者の高齢化や新規入職者の減少、定着率の低下等 による熟年技能者の不足が近い将来、建設産業の根幹を揺るがすことになるという危機感から、以 下の6 項目からなる「建設技能労働者の人材確保・育成に関する提言」を行い、その推進に取り組 んでいる。 ・技能者の賃金水準の引き上げ ・建退共制度の加入促進 ・重層下請構造の是正(原則 3 次以内) ・建設技能者の育成支援 ・作業所の労働時間の短縮等の労働環境の改善 ・これら技能労働者の確保のための広報活動の強化 『国土交通省では、平成23 年 6 月に「建設産業の再生と発展のための方策 2011」を策定し、そ の中で社会保険等の未加入企業が多いことが技能労働者の処遇を低下させ、若手入職者減少の一因 となっており、適正に法定福利費を負担している企業ほどコスト高となり競争上不利になっている と指摘している。その上で、「建設業における社会保険未加入問題への対策」を策定し、その施策実 施後5 年を目途に、企業単位では加入義務のある許可業者の加入率 100%、労働者単位では製造業 相当の加入状況を目指すこととされた。社会保険等の加入促進は、日建連としても建設技能者の高 齢化、入職者の減少といった問題を解消していく上で、重要かつ避けて通れない課題と認識してお ります。しかしながら、この問題はこれまで手を付けられなかった難しく、建設業界にとって重い 問題であり、その実現には相当な困難を伴うため、行政、元請企業、下請企業等の関係者が一体と なって、それぞれの役割を果たすことが肝要である。こうした点を踏まえ、日建連では、建設産業 の再生・発展のため、元請企業としての責務を果たすべく、ここに「保険加入促進計画」を策定し て積極的に取り組んで参ります。』

4.3.2 社会保険加入促進計画

1.基本的な方針 社会保険等の加入促進の実効性を確保するためには、行政、元請企業、下請企業等が一体となっ て推進していくことが必要である。日建連は、元請企業としての責務を果たすべく、団体が取り組 むべき対策、正会員(以下「会員企業」という。)が自ら実施すべき対策を取り決め、その推進を図 っていく。一方、行政に対しても社会保険等の加入を建設業の許可・更新の要件とすることや、派 生する問題である重層下請構造の是正、法定福利費の計上、さらには低入札防止対策の強化への主 導的な取り組みを強く求めていく。

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24 社会保険等は、法令に基づき加入義務が課せられており、未加入企業、未加入者が利するような 環境にならないよう配慮すべきは当然である。従って、社会保険等の未加入対策の実施に当たって は、一定の時期、段階において、法令遵守の実効性の上がる措置の一斉適用が必要である。 また、技能労働者の処遇改善により人材確保を図るという本来の目的に照らし、前記措置の一斉 適用の時期に合わせ、社会保険等の費用が末端の作業員まで行き渡る仕組みの構築を検討していか なければならない。なお、今後、会員企業144社に対して、下請企業を含めた、社会保険等の加 入の実態調査を実施し、調査結果に基づき本計画の見直しを行うこととする。 2.取り組みの内容 (1)期間 国の計画と同様、平成24年度を初年度とする5年間の計画とする。 (2)団体が取り組むべき対策 ①「社会保険未加入対策推進協議会」への参画 ・建設業担当部局、社会保険担当部局、学識経験者、建設業団体等で構成する「社会保険未加入対 策推進協議会」に参画し、元請の立場から効果的な取り組みや周知啓発の方法、さらに実効性の 上がる対策について積極的に意見具申する。 ②会員企業への周知 ・保険未加入対策に関する会員企業への啓蒙を図るとともに、会員企業として取り組むべき対策の 周知徹底に努める。 ③専門工事業団体との連携 ・(社)建設産業専門団体連合会と連携し、専門工事業者の保険加入状況を把握するとともに、加入 促進を図るための施策を検討する。 ④就労履歴管理システムの構築等 ・就労者情報の集約管理による省力化、効率化を図るとともに、事業所での作業員の保険加入の信 憑性確認を行うため、就労履歴管理システム、又は保険加入チェックシステムの構築、あるいは 政府で導入が検討されている共通番号制度の活用について、国と一体となった検討体制に参画し て、実用化に向けた検討を進める。 ⑤法定福利費等の確保 ・国と一体となって見積・契約・支払における法定福利費の取扱いについて検討する。 ・民間発注者団体に対して、法定福利費の確保を働き掛ける。 ・会員企業に対して、下請契約の見積時から法定福利費を適正に確保するとともに、専門工事業団 体が作成する標準見積書の活用を周知方要請する。 ・法定福利費に併せて、建退共制度について、建退共本部の展開する加入促進活動への積極的な支 援を行う。

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25 ⑥適正工期の確保 ・適正な工期の設定は、労働環境の悪化を防ぎ、結果として安定的な雇用環境が確保されることに なる。この目標実現に向けてアンケート調査による現状の把握、国に対する4週8休の建設業法 令遵守ガイドラインへの明記の要請、パンフレット等による民間発注者への働き掛けを行う。 ⑦重層化の改善 ・「一人親方」「偽装請負」など職業安定法や労働者派遣法に基づく適法性を的確に判断できる教宣 資料を作成し、会員企業への周知徹底を図る。 ・下請契約時の関係法令の適法性のチェック徹底による下請企業の選定、さらには同主旨の下請企 業に対する指導を会員企業に要請する。 ⑧実効性のある低入札防止対策の徹底 ・国、地方自治体等の発注者に対して、実効性のある低入札防止対策の実施を求める。 (3)会員企業が自ら実施すべき対策 ①保険加入状況の確認及び指導 ・下請企業に対して、協力会社ならびに現場において社会保険等の加入の周知・啓発を図る。 ・下請企業との契約時における社会保険等の加入状況を確認するとともに、未加入企業に対して保 険加入を指導する。(2次下請以降は1次下請経由で指導) ・現場における新規入場者の社会保険等の加入状況を確認するとともに、未加入者の所属企業に対 して保険加入を指導する。(2次下請以降は1次下請経由で指導) ②法定福利費等の確保 ・発注者との見積交渉、入札、契約に当たり、発注者の理解を得ながら、適正な法定福利費の計上 に努める。 ・下請企業に対して、下請契約の見積時から法定福利費を適正に考慮するよう指導する。 ・法定福利費に併せて、建退共制度加入に必要な費用も同様の取扱いとなるよう取り組む。 ③重層化の改善 (上記(2)⑦の教宣資料の作成を受けて、以下の事項について取り組む) ・下請企業に対して、「一人親方」「偽装請負」など、職業安定法や労働者派遣法に基づく適法性の チェック、指導を行うとともに、適法な下請企業の選定、さらには同主旨の再下請企業への指導 を求める。 ④保険未加入企業及び未加入の作業員の排除 ・平成29年度以降(社会保険等の加入促進が一定程度進捗した段階)、保険未加入企業との契約 を禁止することや、未加入の作業員の現場からの排除に取り組む。

参照

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