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霞ヶ浦における貧酸素水塊の観測と解析 FIELD OBSERVATIONS AND ANALYSES OF OXYGEN-DEFICIENT WATER MASS IN LAKE KASUMIGAURA

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Academic year: 2022

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(1)水工学論文集,第54巻,2010年2月 水工学論文集,第54巻,2010年2月. 霞ヶ浦における貧酸素水塊の観測と解析 FIELD OBSERVATIONS AND ANALYSES OF OXYGEN-DEFICIENT WATER MASS IN LAKE KASUMIGAURA. 小松伸行1・石井裕一2・渡邊圭司3・本間隆満4・北澤大輔5 Nobuyuki KOMATSU, Yuichi ISHII, Keiji WATANABE, Takamitsu HOMMA and Daisuke KITAZAWA. 3非会員 5非会員. 1正会員. 茨城県農林水産部漁政課(〒310-8555 茨城県水戸市笠原町978-6). 2正会員. 博(工). (独)国立環境研究所 生物圏環境研究領域 生態遺伝研究室 (〒305-8506 茨城県つくば市小野川16-2). 博(農) 茨城県霞ケ浦環境科学センター 水環境研究室(〒300-0023 茨城県土浦市沖宿町1853) 4非会員 博(理) 茨城県霞ケ浦環境科学センター 水環境研究室(同上) 博(工). 東京大学 生産技術研究所 機械・生態系部門(〒153-8505 東京都目黒区駒場4-6-1). In this paper the process of dissolved oxygen (DO) consumption in Lake Kasumigaura was discussed on the basis of the field observational data, experimental data and numerical simulation results. Oxygen depression in the bottom layer of the lake was strongly related to the diurnal structure of thermal stratification. The DO consumption rate in overlying water estimated from the observational data was in the range of 2.0- 4.0 mg/l/day, and agreed well with the experimental data and results of the numerical simulation. These high values seemed to be related to the indicators of organic matter such as chemical oxygen demand (COD) and chlorophyll a concentration (Chl.a). Therefore, DO consumption in eutrophicated Lake Kasumigaura is mainly caused by a high consumption rate in the overlying water, whereas the contribution of the bottom sediment to DO consumption is relatively small. Key Words : dissolved oxygen, oxygen consumption rate, thermal stratification, numerical simulation. 初期条件として与えた水質モデルの報告6)があるものの, 複雑な貧酸素水塊の形成過程や時空間分布を十分に再現 できるモデルは未だ報告されていない。 霞ヶ浦は,工業用水,水道用水,農業用水の水源とし 閉鎖性水域の貧酸素化は,一般に,成層が鉛直方向の て利用されている.また,古くから水産業が盛んに営ま 移流・拡散を抑制し,成層下の水柱や底泥における酸素 れてきたほか,重要な観光資源にもなっており,地域の 消費が酸素供給を上回ることによって起きるとされてい 社会・経済にとって極めて重要な水域である. る.水深が極めて浅く,淡水湖沼である霞ヶ浦では,成 霞ヶ浦においては,水質汚濁が進行した1973年以降, 層は風や日射などの気象条件に影響され日単位で形成消 頻繁に底層水が貧酸素化し,漁業や養殖業に被害を与え 失する弱い日成層とされる7).このため,霞ヶ浦で貧酸 た1).また,様々な汚濁防止の取り組みにも関わらず湖 素水塊が形成されるためには,日成層が持続する物理条 内の水質が一向に改善されない要因のひとつとして,貧 件下で比較的短時間に底層水の貧酸素化が進行しなけれ 2) 酸素化に伴う底泥からの栄養塩回帰が指摘されている . ばならないと予想される.一方,酸素消費について,こ れまで底泥表面における有機物分解や還元物質の挙動が このため,霞ヶ浦における貧酸素水塊の形成要因を理解 重要な役割を果たすと考えられてきたが8)9),近年は潮汐 し,その動態予測を可能にすることが,湖内の生態系保 全や水質管理を行う上で不可欠な課題となっている. などにより巻き上げられた水柱のSSによる酸素消費を問 閉鎖性水域の貧酸素化に関する先行研究は極めて多く, 題視する報告もある10).霞ヶ浦でも貧酸素水塊の発生前 に藻類の増殖やCOD増加が認められたことから,湖底に 近年は実用的な数値モデルも多数報告され,施策評価や 堆積した枯死藻類の巻き上げが要因と考察されている1). 温暖化の影響評価などが試みられている3)4).しかし, 霞ヶ浦においては,回帰式による予測5)や貧酸素状態を しかし,潮汐流がほとんどない霞ヶ浦の場合,巻き上げ 1. はじめに. - 1399 -.

(2) の起こる風波や湖流が生じる気象条件11)では日成層が長 時間維持されない.このため富栄養化した霞ヶ浦では, 堆積せずに浮遊している藻類・CODにより湖水全体が高 い酸素消費ポテンシャルを持っている可能性がある. そこで本研究では,霞ヶ浦の貧酸素水塊予測モデル構 築を目的に,日成層と水柱・底泥における酸素消費に注 目し,現地観測と室内実験および数値解析を行った.. は多項目水質計(東亜DKK,WQC-24)を用い,15分間隔の 水温,DO濃度,pH等のデータを取得した.なお,多項 目水質計は週1回以上を目安に実験室に持ち帰り,隔膜 の交換および校正等のメンテナンスを行った.同様の方 法による連続観測は,2005年から2007年の夏季にも,北 浦を中心に複数地点で実施されている. なお,本研究ではDO濃度3.0mg/l以下を貧酸素とした.. (3) 室内実験 室内実験に用いた湖水および底泥のサンプルは,連続 観測地点である5地点において2008年6月~9月に適宜採 (1) 観測地点の概要 取した.水面下50cmと湖底上50cmからの湖水採水には 図-1に示す霞ヶ浦は,茨城県南部に位置し,西浦,北 バンドーン採水器を,底泥採取には重力式コアサンプ 浦,外浪逆浦,北利根川,常陸川および鰐川から構成さ ラーとアクリルカラム(φ70mm)を用いた. れる総面積219.9km2の湖沼である.常陸川と利根川との 曝気した湖水を300mlふらん瓶に分注して密栓し, 25℃・暗条件下で静かに撹拌しながら湖水の酸素消費速 合流点には洪水の逆流と塩水の遡上を防ぐことを目的に 度を測定した.ふらん瓶内のDO濃度の経時測定には非 常陸川水門が設置されている.このため,現在の霞ヶ浦 破壊型溶存酸素計(Presens,Fibox3-traceV3)を使用した.併 は淡水湖となっている.霞ヶ浦の大部分を占める西浦 せて,採集した湖水の水質分析を行った. (171.5km2)と北浦(36.2km2)の平均水深はそれぞれ3.4mと 底泥コアサンプルの一部は,底泥を攪乱しないよう, 4.5mであり,面積に対して水深が非常に浅い水域である. 曝気した蒸留水で直上水を置換し,25℃・暗条件下にお ける静置カラム内の酸素消費速度を測定した.カラム内 (2) 現地観測 のDO濃度の経時測定には湖水の実験と同様に非破壊型 観測地点の概要を図-1に示した.DO濃度・水温等の 溶存酸素計を用いた.また,底泥の表層0-2cmを切り取 湖内空間分布の観測を西浦40地点,北浦34地点の計74地 り,遠心分離により間隙水を分離した後,底泥の性状分 点で2007年6月から8月に5回,2008年6月から9月に6回実 析を行った.また,底泥1g又は3gを入れた300mlふらん 施した.観測には2隻の調査船を用いて午前中に全地点 瓶に曝気した蒸留水を満たして密栓し,スターラーで強 の観測を終了させた.DO濃度・水温の測定には溶存酸 制的に懸濁させた時の底泥酸素要求量(SOD)を測定した. 素計(飯島電子工業,ID-100)を用い,水面直下から湖底上 なお,底泥1gで24時間の酸素要求量をSOD1g,底泥3gで1 50cmまで50cm間隔で測定した. 時間の酸素要求量をSOD3gで表した. 西浦の3地点(N1~N3),北浦の2地点(K1~K2)の計5地 点では ,水面直下から湖底上50cmまで50cm間隔の水温 鉛直分布と,水面下50cmおよび湖底上50cmにおけるDO 3.結果と考察 濃度等の係留機器による連続観測を2008年6月~9月に実 施した.水温鉛直分布の測定には自記式水温計 (HOBO,WaterTempProV2)のサーミスタチェーンを用い, (1) 夏季の成層構造 図-2に2008年7月12日から9月2日の北浦K2(水深約 15分間隔の水温データを取得した.DO濃度等の測定に 6.5m)における水温変動を示した.観測開始から7月18日 までは安定な成層が形成され,最上層と最下層との間に N W E 最大約4℃の水温差が見られた.7月18日に一時的に成層. 2.方 法. S. L. ishiura. 1 (5.4m). 33. L.Kitaura. 1.0m 1.5m 2.0m 2.5m 3.0m 3.5m 4.0m 4.5m 5.0m 5.5m 6.0m. 32. K1 (6.4m). 2 (4.6m). K2 (6.5m). 3 (5.9m). Water temp. (℃). 31 30 29 28 27 26. 0. 5. 25. 10 km. 24 1 7/12. 481 7/17. 961 7/22. 1441 7/27. 1921 8/1. 2401 8/6. 2881 8/11. 3361 8/16. 3841 8/21. 4321 8/26. 4801 8/31. 図-2 K2における水温変動(2008年7月12日~9月2日). 図-1 観測地点. - 1400 -.

(3) が消滅した後は,成層が長期間維持されることが稀にな り,日成層又は7月27日や8月6日に始まる数日間の成層 が形成されるのみであった.これは,上層からの移流混 合や熱拡散により底層の水温が観測初期から少しずつ上 昇した結果,上層・底層の水温差が相対的に小さくなる ためと考えられる.8月15日以降,水温は低下傾向と なって鉛直方向にほぼ均一となり,8月17日からの数日 間や8月27日以降など晴天が続いた場合に再び1日~数日 の一時的な成層が形成された.このような,6~7月の受 熱期の比較的長期間の成層,8月頃の日成層化および9月 以降の放熱期に見られる一時的な成層形成は,水温が成 層要因である霞ヶ浦では例年見られる.時期により変化 する成層の持続時間は,霞ヶ浦の貧酸素化と密接に関係 すると考えられ,特に8月以降に貧酸素水塊が形成され るためには極めて大きな酸素消費速度が条件となる. (2) 貧酸素水塊の発生水域 湖底上50cmにおけるDO濃度分布の観測例を図-3に示 した.2007年8月17日には西浦ではN3を含む湖央部の広 い範囲,北浦ではK2を含む中・南部に貧酸素水塊が見 られた.一方,2008年9月2日には西浦では高浜入りと呼 ばれる北部水域に位置するN1周辺に,北浦ではK1のあ. る北部に貧酸素水塊が見られた.ここに示さない他の観 測日の結果も併せて見ると,底層のDO濃度低下が見ら れる場所は限られた水域ではなく,風による吹き寄せで は説明できないスケールの水平分布を持っている.この 結果から,霞ヶ浦の貧酸素水塊は,地域性のある特殊な 要因によって局所的に発生するものではなく,湖内のほ ぼ全域が同様に貧酸素水塊を形成する可能性を有してい ると考えられる. (3) 水温鉛直分布とDO濃度の変動 図-4に貧酸素水塊が形成された時の水温とDO濃度の 鉛直分布の例として,2008年9月2日における北浦K1を 含む横断面の観測結果を示した.なお,この5地点の観 測時刻は10時32分~11時12分であった.水温の鉛直分布 を見ると,水深1m付近と4~5m付近に2つの温度勾配が 認められ,3層構造が形成されていた.DO濃度の鉛直分 布は水温の鉛直分布に良く対応しており,水面で強い日 射を受けて水温が上昇している第1層では,藻類の光合 成によりDO濃度は過飽和となっていた.水深1m付近で は水温と同様にDO濃度も急激に低下し,それ以深の第2 層では水深とともに水温とDO濃度が徐々に低下した. さらに水深4~5m付近の2つ目の温度勾配でもDO濃度は. (mg /l) 15. 5. L. Kitaura. 5. 7. 5. 3 5. 3. 5. 5. 5. 5 10km. 0. 3. 5 5. 5. 3. 7 5. 5. 5 3. 5. 5. 5 3. 5. 3. 3 5 3 3. 10. L. Kitaura. 0. 7. 3. 0. L. Nishiura. 5. 5. 3. 5. 7. 3. 10. L. Nishiura 5. (mg /l) 15. 0. 17/Aug./2007. 5. 10km. 2/Sep./2008. 図-3 湖底上50cmのDO濃度の空間分布(左:2007年8月17日 右:2008年9月2日) (a). (b). DO (mg/l). DO (mg/l). DO (mg/l). DO (mg/l) 12. 18. 0. DO (mg/l) 6. 12. 10 5 3. 18. 8 1 2 1. 6. (mg l-1) 15. 6. 0. 0. 18. (e). 8 1 2 1. 12. 6. 6. 0. 0. (d). 8 1 2 1. 18. 6. 12. 0. 6. 8 1 2 1. 0. 6. 18. 0. 12. 8 1 2 1. 6. 6. 0. 0. (c). 0. 3. 1 Depth (m). 5 0. (a). 2. (e) (d):K1. (b). 3. (c). 4 5 6 25.5. Temp. DO 26.5. 27.5 28.5. 25.5. 26.5. 27.5 28.5 25.5. 26.5. 27.5 28.5 25.5. 26.5. 27.5 28.5. 25.5. 26.5. 27.5 28.5. .5 28 .5 27 5 6. 2 .5 25 .5 28 5 7. 2 .5 26 .5 25 .5 28 .5 27 5 6. 2 .5 25 5 8. 2 .5 27 .5 26 5 5. 2 .5 28 .5 27 .5 26 .5 25. Temp. (℃). Temp. (℃). Temp. (℃). Temp. (℃). Temp. (℃). 図-4 貧酸素水塊形成時における水温とDO濃度の鉛直分布(2008年9月2日). - 1401 -. 5.

(4) 急激に低下し,第3層は3.0mg/l以下の貧酸素状態となっ た.他の水域や観測日においても,湖底付近に貧酸素水 塊が観測される場合,同様の3層構造が認められること が多かった. 2008年8月7日~13日の連続観測結果を図-5に示したが, 時系列データで見ても水温鉛直分布とDO濃度の変動は 非常に良く対応している.いずれの地点も8月7日に形成 された成層が8月9日の午前中まで持続し,その間に底層 が貧酸素化した.8月9日に成層が解消された後,日成層 が形成されるようになると底層のDO濃度は午前中に低 下するが,午後には回復するため貧酸素には至らなかっ た.なお,N1,K1およびK2底層の水温とDO濃度に見ら れた8月8日午後の一時的な上昇と下降は吹き寄せによる 影響が考えられる. 藻類による酸素生産の行われない夜間のDO濃度の傾 き(図中点線の傾き)から「見かけ上の酸素消費速度」を 見積もると,いずれの地点もおよそ2~4mg/l/dの速さで DO濃度が低下した.この結果は,十分な酸素供給が起 こらない条件下では1~2日で容易に貧酸素化することを 示している.また,成層消失時だけでなく成層形成時の 上層と底層との間にも傾きに大きな差が見られないこと から,底泥の関与がなくても湖水中において大きな酸素 消費が行われている可能性が考えられる. これまでの現地観測結果と田中ら8)の研究成果から, 霞ヶ浦の貧酸素水塊形成について,以下のようなメカニ ズムが考察される.まず,湖面における蓄熱と風の影響 により午前中に形成された水温成層は,2層構造を維持. 8/8. 97. 8/9. 193. 8/10. 289. Temp. (℃). 8/11. 385. 1.0m 2.5m 4.0m 5.5m. 31. 8/12. 481. 1.5m 3.0m 4.5m 6.0m. 8/7. 8/8. 97. 8/9. 193. 8/10. 289. 32. 8/11. 385. 1.0m 2.5m 4.0m 5.5m. 31. 8/12. 481. 1.5m 3.0m 4.5m 6.0m. 8/7. 8/8. 97. 8/9. 193. 8/10. 289. 8/11. 385. 8/12. 8/8. 8/9. 8/10. 8/11. 8/13. 577. 8/12. 8/13. 0.5m 5.5m. 6 3 0. 8/7. 8/8. 8/9. 8/10. 8/11. N3. 18.1 24.7. 11.8 11.5. 38 43. 0.93 0.99. 0.09 0.10. K1. Upper Bottom. 18.5 20.5. 13.4 11.3. 63 50. 1.04 1.20. 0.18 0.20. K2. Upper Bottom. 18.9 26.5. 13.6 12.8. 46 57. 0.97 1.10. 0.16 0.19. 8/12. 8/13. 9 6 3 0. 8/7. 8/8. 8/9. 8/10. 8/11. 8/12. 8/13. 0.5m 6.0m. 12 9 6 3 0. 5 4. N1 Upper N1 Bottom. 3. N2 Upper N2 Bottom. 2. N3 Upper N3 Bottom. 1 0. 0.5m 6.0m. 15. 2.0m 3.5m 5.0m. 481. 8/7. 12. 29 1. 0.5m 3.5m. 15. 8/13. 8/13. 9. 8/13. 30. 28. 0. 577. 8/12. 3. 577. 29 1. 8/11. 12. 30. 28. 8/10. 15. 2.0m 3.5m 5.0m. 0.09 0.11. Upper Bottom. 08/9/2. 8/7. N2. 6. 8/13. 29 1. 8/9. 9. 577. 2.0m 3.5m 5.0m. 30. 32. Temp. (℃). 8/12. 481. 1.5m 3.0m 4.5m. 0.13 0.35. 1.00 1.09. 08/8/14. Temp. (℃). 31. 28. K2. 8/11. 385. 1.0m 2.5m 4.0m 5.5m. 1.16 1.50. 51 33. 8/7. 8/8. 8/9. 8/10. 8/11. 8/12. 図-5 水温鉛直分布とDO濃度の時系列変動(2008年8月7日~8月13日). - 1402 -. 8/13. 5 4. K1 Up p er. 3. K1 Bo ttom. 2. K2 Bo ttom. K2 Up p er. 1 0. 08/9/2. 8/10. 289. 51 35. 10.6 9.4. 08/8/14. 8/9. 193. 11.7 11.5. 19.9 29.6. 08/7/29. 8/8. 97. 21.7 37.8. 08/7/9. DO (mg/l) 8/7. 8/8. 12. DO (mg/l). 1. K1. 2.0m 3.5m. 29. 32. 8/7. 15. 30. 28. N3. 1.5m 3.0m. 0. 8/13. 577. TP (mg/l). 08/7/29. 1.0m 2.5m. 31. 8/12. 481. DO (mg/l). Temp. (℃). N2. 8/11. 385. TN (mg/l). 08/7/9. 8/10. 289. Chl.a (μg/l). Upper Bottom. 08/6/20. 8/9. 193. COD (mg/l). Upper Bottom. 08/6/7. 8/8. 97. 3. SS (mg/l) N1. 6. 08/6/20. 8/7. 9. 08/6/7. 1. 0.5m 5.0m. 12. DOconsumption rate (mg/l/d). 29. 32. 表-1 水質の分析結果. 15. 2.0m 3.5m 5.0m. 30. 28. (4) 酸素消費速度の室内実験 室内実験で得られた湖水の酸素消費速度と水質分析結 果を図-6と表-1に示した.西浦の酸素消費速度は上層で. DOconsumptionrate (mg/l/d). 31. 1.5m 3.0m 4.5m. DO (mg/l). 1.0m 2.5m 4.0m. DO (mg/l). N1. Temp. (℃). 32. したまま連行により躍層が降下し,やがて躍層が湖底に 達すれば成層は消失する.この1層→2層→1層の変化が1 日の周期で繰り返される場合,底層のDO濃度は2層構造 となる間に一時的に低下するものの成層消失とともに回 復するため貧酸素水塊は形成されない.しかし,上層・ 底層の水温差や水深に対し,午後からの風の影響や湖面 冷却が不十分な場合,躍層は湖底まで降下せずに水深4 ~5m付近に停滞したまま翌日となり,水深1m付近に新 たな躍層が形成されて3層構造となる.この時,第1層は 藻類の光合成により過飽和となるが,霞ヶ浦の透明度が 平均で50cm程度と低いため光量が不十分なことに加え, 湖水中の酸素消費速度が大きいことから,第2層のDO濃 度は低下する.第3層では上層からの酸素供給が無いま ま2日が経過しているため,貧酸素化している.図-4は このような3層の状況を捉えたものと思われる.その後, 水深1m付近の新たな躍層が低下して第1層と第2層が混 合することにより第2層までのDO濃度が回復し,さらに 第3層まで混合が及んだ場合には成層とともに貧酸素水 塊も消失するが,そこまで混合が及ばなければ2層→3層 →2層の変化が繰り返されることになり,隔離された最 下層が貧酸素水塊となり長期間持続する. 以上のように,霞ヶ浦の貧酸素水塊は,複雑な水温成 層の変動に大きな酸素消費速度が関与して形成される.. 図-6 湖水の酸素消費速度 (上:西浦 下:北浦).

(5) 態系結合数値モデルを用い,成層構造に依存する酸素拡 散速度や湖内での有機物分解に伴う酸素消費速度により, DO濃度の時空間分布の計算を行った.計算対象は,収 集したデータ量と計算領域や境界条件の設定の簡便性を 考慮して北浦とした. 流動場サブモデル12)の支配方程式は,ブジネスク近似 と静水圧近似を仮定した運動方程式,連続の式,水温の 移流・拡散方程式,状態方程式である.鉛直方向の渦動 粘性係数,渦動拡散係数の評価には成層化関数を用いた. 湖面における境界条件として,バルク法により推定され る運動量,熱フラックスを与えた.また,7河川からの 淡水流入と1河川からの湖水流出を考慮した. 低次生態系サブモデルは,動植物プランクトン,懸濁 態と溶存態の非生物有機物,無機態のリンと窒素,DO を状態変数とし,各状態変数間の炭素,リン,窒素,フ ラックスを求めた後,移流・拡散方程式によって各状態 変数で示される物質の湖内での輸送を解いた. 計算方法としては北浦を水平方向に500m,鉛直方向 に50cmの格子で分割し,支配方程式を有限差分法によ り解いた.計算期間はADCPによる夏季の北浦の流況観 測を実施した2006年3月1日~2007年2月28日とした13). 気象データには気象庁による水戸と館野の計測値,国土 交通省による釜谷沖の風データを用いた.また,河川流 入量としては年間14億m3と仮定し,各河川の流域面積と 降水量の季節変化に基づいて与え,水質データは鉾田川 のデータを参考にして与えた.. 0.96~2.91mg/l/d,底層で0.33~2.56mg/l/d,北浦の酸素消 費速度は上層で1.65~4.70mg/l/d,底層で0.89~2.59mg/l/d であり,底層よりも上層で大きい傾向があった.また, DO濃度の現地観測結果から見積もった「見かけ上の酸 素消費速度」と同程度の値が得られたことから,底泥の 関与が無い場合でも,湖水の酸素消費により貧酸素水塊 を形成することが可能であることが明らかとなった.湖 水の酸素消費速度と水質との関係を見ると上層で高い値 となるCODやChl.aと変動傾向が似ており,特にCODと の間に最も高い相関が認められた (r=0.66).SSは底層 で常に高い値を示したが,無機態の懸濁物が多いと考え られ,酸素消費速度との間に相関は認められなかった. このため,湖水の高い酸素消費速度は,巻き上がった懸 濁物の影響よりも,湖水中に浮遊しているCODや藻類な どの有機物による分解・呼吸の結果と考えられた. 底泥の酸素消費速度と性状分析結果を図-7と表-2に示 した.静置カラム内における底泥の酸素消費速度は, N3の平均値で0.46g/m2/dとやや低いが,他の4地点の平均 値は0.59~0.60g/m2/dであり,地点間の差はほとんど無 かった.また,湖底上1mまでが成層下と仮定してこれ らの値を換算すると0.3~0.8mg/l/dとなり,これだけでは 現地観測で得られた見かけ上の酸素消費速度2~4mg/l/d を説明できない値であった.今回の実験では有機物量や 強制的に底泥を巻き上げた時のSODなど底泥の性状には 地点間で差があるが,底泥の酸素消費速度との間に一定 の関係は認められなかった.波浪や水流の影響を受けな い静置培養実験では,底泥表面にある一部の物質しか酸 素消費に関与できず,現地の底泥の酸素消費速度を過小 評価している可能性が考えられる.今後,底泥の関与に ついて異なる手法でも検討しておく必要がある.. (2) 数値計算結果 2006年6月20日~9月30日のK1における水温の観測結 果と計算結果を図-8に示した.観測結果は上層が湖面下 50cm,底層が湖底上50cmの値であり,計算結果は上層 が湖面下25cm,底層が湖底上25cmの値を示している. 計算結果には解像度の問題から吹き寄せや静振によると 考えられる振動が見られない他,全体的に水温が高めと なっており,熱フラックスの流入量の推定精度や短波放 射の湖水中での減衰のモデル化などが原因として考えら れる.しかし,7月までの長期間の成層形成やその後の. 4.数値計算 (1) 数値計算の概要 ここでは,湖内の流動場と密度場を解く3次元流動場 サブモデルと低次生態系サブモデルからなる流動場-生 表-2 底泥(0~2cm)の性状分析結果. 14. 34 Observation. 32. Ignition loss. AVS. COD. SO D 1g. SO D 3g. (% ). (% ). (mg/g・dw ). (mg/g・dw ). (m g/g/d). (mg/g/h). N1. 57.7. 72.3. 18.9. 0.30. 63.0. 4.8. 2.3. N2. 49.5. 60.7. 13.2. 0.12. 39.0. 5.0. 2.6. N3. 56.3. 72.7. 19.0. 0.35. 66.0. 5.5. 2.0. K1. 55.4. 75.1. 20.7. 0.56. 74.0. 6.2. 2.1. K2. 55.6. 75.7. 21.0. 0.58. 66.0. 4.2. 1.7. 12. 30. COD (mg/l). W ater content. (% ). Water Temp. (℃). P orosity. 28 26 24 Upper. 22. Bottom. 7/3. 7/16. 7/29. 8/11 Date. 8/24. 9/6. 9/19. K1. 9/3. average. 7/23 8/20. N3. 9/3. N2. average. Chrolophyll a (mg/l). Water Temp. (℃). no data. N1. 7/23 8/20. 0. 8/6 8/21 9/10 average. 0.2. 8/7 8/21 9/10 average. 0.4. K2. 図-7 静置カラム内における底泥の酸素消費速度. 4. cal(Upper). cal(Bottom). 2. obs(Upper). obs(Bottom). 5/1. 7/1. 8/31 Date. 10/31. 12/31. 3/2. 160. Calculation. 30. 8/6 8/21 9/10 average. DO consumption rate (g/m2/d). 0.6. 6. 3/1. 10/2. 34 32. 8. 0. 20 6/20. 0.8. 10. 28 26 24 Upper. 22 20 6/20. Bottom. 140. cal(Upperr). cal(Bottom). 120. obs(Upper). obs(Bottom). 100 80 60 40 20 0. 7/3. 7/16. 7/29. 8/11 Date. 8/24. 9/6. 9/19. 10/2. 3/1. 5/1. 7/1. 8/31 Date. 10/31. 12/31. 3/2. 図-8 K1における水温変動. 図-9 CODおよびChl.aの観測. (2006年6月20日~9月30日). 結果と計算結果の比較. - 1403 -.

(6) 10 観測結果. 8 6 4 2. Upper. Bottom 0 8/24 8/25 8/26 8/27 8/28 8/29 8/30 8/31 9/1 9/2 9/3 Date. Dissolved Oxygen (mg/l). Dissolved Oxygen (mg/l). 10. 計算結果. 8 6 4 2. Upper Bottom 0 8/24 8/25 8/26 8/27 8/28 8/29 8/30 8/31 9/1 9/2 9/3 Date. 図-10 DOの観測結果と観測結果の比較. 日成層化など,上・下層の水温差と成層の持続時間は良 く一致しており,密度場の再現性は十分と考えられた. 室内実験により湖水の酸素消費速度に関係すると推察 されたCODとChl.aの計算結果を図-9に示した.これら は,季節変動の再現性にはやや課題が残るものの,夏季 のオーダーは概ね一致しており,湖水中の酸素の生産・ 消費過程はある程度妥当な結果が得られると考えられた. 実際に計算で得られた湖水の酸素消費速度は,上層・底 層ともに1.5~2.0mg/l/dの範囲であり,室内実験結果と同 様の値であった. 本モデルによるDOの計算結果の一例として,2006年8 月24日~9月3日の日成層時について図-10に示した.計 算結果は全体的に観測結果よりも低かった.特に,底層 のDO減少の傾きは観測結果より大きい.計算で得られ た湖底の酸素消費速度は2.0~2.5g/m2/dと室内実験結果の 3~4倍の値であったが,本モデルでは湖底に沈降した有 機物が瞬時に完全に分解されて酸素が消費されると仮定 しているため,湖底の酸素消費速度が過大となっている と推察される.このため,実際の北浦底層の酸素消費に おける底泥の寄与はもっと小さいものと考えられる. 現在,モデルの高解像度化のほか,河川流入出量,底 泥モデル,植物プランクトンの種組成等の検討を加え, 予測モデルの精度向上を図っている.数値計算による詳 細な解析は今後の課題としたい.. を抑制する目的で実施されるのであれば,湖水の酸素消 費速度も大きいため十分な改善が図られない可能性があ る.また,撹拌混合や酸素供給等の対策は,浅く広い水 域において貧酸素水塊の発生源が限定されないため効果 的な配置が難しい.霞ヶ浦では短期的・局所的な対策は ほとんど効果がなく,当面,長期的な富栄養化対策を実 施する以外に有効な対策はないと考えられる. 観測の実施にあたり,多大なるご協力を頂いた関係漁 業協同組合の皆さまに感謝の意を表す. 参考文献 1) 外岡健夫,浜田篤信:1988年に霞ヶ浦北浦で発生した酸素欠 乏について,茨城県内水面水産試験場研究報告,26, pp.48-59, 1990. 2) 湯沢美由紀,根岸正美,栗田初美,山本哲也:北浦における リン酸態リンの高濃度現象,茨城県公害技術センター研究報 告,11, pp.33-37, 2001. 3) Ichikawa, T., M. Aizaki, and M. Takeshita: Numerical study on amelioration of water quality in Lakes Shinji and Nakaumi: a coastal brackish lagoon system., Limnology, pp.281-294, 2007. 4) 北澤大輔,熊谷道夫:気候変動の琵琶湖物質循環への影響に 関する生態系シミュレーション,生産研究,60, pp46-50, 2008. 5) 熊丸敦郎,渡辺直樹,外岡健夫:最近,霞ヶ浦において発生 する酸素欠乏の予測について,茨城県内水面水産試験場研究 報告,33, pp60-67. 1997. 6) 中曽根英雄,蕪木元成,黒田久雄,加藤亮:霞ヶ浦における 貧酸素水塊分布に関する研究,農業土木学会論文集,239, pp9-17, 2005. 7) 田中昌宏,石川忠晴,小関昌信:浅い湖における日成層の混 合モデルの開発,土木学会論文集,No.423/Ⅱ-14, pp91100.1990.. 5.おわりに. 8) 遠藤徹,水田圭亮,重松孝昌:貧酸素化した港湾海域におけ. 本研究では,現地観測,室内実験および数値計算によ り,湖内の貧酸素化メカニズムについて検討を行った. (1) 霞ヶ浦の貧酸素水塊には,日単位で変化する湖内の 水温成層が密接に関与しており,最下層の湖水の隔離が 2日以上持続することで発生した.このため,貧酸素水 塊の予測モデルの精度向上には,気象条件により複雑に 変動する水温成層の正確な再現が最も重要である. (2)霞ヶ浦の貧酸素水塊は特定の水域に限定される現象で はなかった.酸素消費速度の比較の結果,いずれの地点 も浮遊する有機物により湖水の酸素消費速度が大きく, 成層の持続により速やかに貧酸素化する可能性がある. (3)霞ヶ浦では,水質や底質の地域差よりも,水深等の違 いによる水温成層の持続時間の違いが貧酸素水塊の空間 分布を支配していると考えられる. これらの結果を考慮すると,霞ヶ浦で貧酸素水塊の問 題に対策を講ずる場合,浚渫や覆砂等が底泥の酸素消費. る底質の酸素消費特性に関する研究,海岸工学論文集, vol.55, pp1066-1070, 2008. 9) 桑江朝比呂,中川康之,三好英一:海底境界面における酸素 消費速度-渦相関法による現地連続観測,海岸工学論文集, vol.55, pp1001-1005, 2008. 10)徳永貴久,松永信博,阿部淳,児玉真史,安田秀一:有明海 西部海域における高濁度層の観測と懸濁物質による酸素消費 の実験,土木学会論文集,No.782/Ⅱ-70, pp117-129.2005. 11)梅田信,長峯知徳,長広遥,石川忠晴,宇田高明:霞ヶ浦湖 心部における底泥の巻き上げ過程に関する研究,水工学論文 集,vol.45, pp1171-1048, 2001. 12)北澤大輔,小松伸行:北浦の成層構造の数値解析,生産研究, 60, pp51-54, 2008. 13)小松伸行,石井裕一,渡邊圭司,本間隆満,北澤大輔:非成. - 1404 -. 層期の霞ヶ浦(西浦・北浦)における吹送流の特性,水工学論 文集,vol.53, pp1291-1296, 2009. (2009.9.30受付).

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