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東 京 湾 多摩 川 河 口沖 に お け る底 泥 の巻 き上 げに 関 す る現 地 観測

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Academic year: 2022

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(1)海 岸 工 学 論 文 集,第55巻(2008) 土 木 学 会,516‑520. 東 京 湾 多摩 川 河 口沖 に お け る底 泥 の巻 き上 げに 関 す る現 地 観測 Field Observation. of Fine Sediment. Resuspension. Process. at Tama River Mouth. in Tokyo. Bay. 中 川 康 之1・ 有 路 隆 一2・ 松 坂 省 一3・ 諸 星 一 信4・ 八 木 宏5・ 灘 岡 和 夫6・ 田 中 晋7 Yasuyuki. NAKAGAWA,. Ryuich. Hiroshi A field trations,. observation,. out. during. September. of 2007.. rent-wave. bottom. pended. 1.. comprising. was carried. resuspension. sediment. YAGI, bottom. for 1-month. extreme. wave. The sediment shear. stress. transport. ARIJI, Kazuo. mounted at Tama. instruments River. conditions. resuspension. reached. Shoichi. mouth. associated was caused. 0.9 Pa. Based. at the site was. MATSUZAKA,. NADAOKA. towards. for near-bottom in Tokyo with. typhoon. primarily. or outer. analysis. して,多. は じ め に. that. Tokyo. and suspended. The measurements. by waves. MOROHOSHI,. TANAKA. currents. Bay.. on the SS-flux. the SW. Kazunobu. and Susumu. passed. over. have Kanto. at the monitoring during. sediment captured district. concensediment. in the early. site and combined. the recording. period,. cur-. the net sus-. Bay.. 摩 川 河 口沖 で の 底 面 付 近 を 中 心 とす る流 況 ・濁. 度 の約1ヶ 月 間 の連 続 観 測 を 行 っ た.特. に本 観 測 期 間 中. 河 口 内 湾 域 に お い て は,河 川 か らの 流 下 土 砂 な ど に よ. に は台 風 が 接 近 し,高 波 浪 に よ る底 泥 の 巻 き上 げ や 河 川. る堆 積 物 の 供 給 が あ る一 方 で,波 浪 や 潮 汐 な ど多 様 な外. 出 水 に よ る懸 濁 物 の湾 内 へ の 供 給 が生 じて お り,こ れ ら. 力 の影 響 に よ る底 質 の 再 移 動 が生 じて い る.内 湾 域 に お. の 海 底 付 近 で の輸 送 特 性 につ い て現 地 デ ー タ の解 析 を 通. い て水 深10m程 度 の比 較 的 浅 い 海 域 で の 底 質 移 動 を 対 象. じて 検 討 した.. と した現 地 観 測 と して,た (1994),中. 川(2002)な. とえ ば 瀬 口 ら(1989),Sanford. どが あ り,い ず れ も風 波 に よ る底. 泥 の巻 き上 げ の重 要 性 を 指 摘 して い る.ま た,潮 汐 が 卓 越 す る海 域 で は潮 汐 流 の 影 響 に よ って も顕 著 な底 泥 の 移 動 が 生 じる場 合 もあ る(た. と え ば 中 川 ら,2002).こ. の. 2. 現 地 観 測 の 内 容 2007年8月24日 で の 約1ヶ. か ら9月19日(以. 下,西. 暦 年 は略 記)ま. 月 間 にわ た り,東 京 湾 北 西 部 の 多 摩 川 河 口 沖. の 水 深 約23m(D.L.基. 準)の. 地 点(図‑1)に. お い て,計. よ う な底 質 の 移 動 現 象 の う ち,特 に有 機 物 や 硫 化 物 の 含. 測 器 の 海 底 設 置 に よ る連 続 観 測 を 行 っ た.こ. 有 量 が 高 い シル ト ・粘 土(泥 分)の 巻 き上 げ は,貧 酸 素 水. は,海 底 近 傍 の流 況 と底 泥 の 巻 き上 げ等 に 伴 う濁 度 変 動. こで の 目 的. 塊 形 成 と の 関 わ り な ど,水 質 環 境 の変 動 に も密 接 に 関 係. の様 子 を把 握 す る こ とで あ り,図‑2に. して い る もの と考 え られ,水 質 変 化 の予 測 に際 して も考. 式 流 速 計 な らび に 光 学 式 濁 度 計 等 を,海 底 付 近 に集 中 的. 慮 す べ き極 め て 重 要 な プ ロセ スで あ る. 一方 ,本 研 究 が 対 象 と す る東 京 湾 多 摩 川 河 口域 で は,. に配 置 して 観 測 を 行 っ た.使 用 機 器 の 内容 と測 定 方 法 を 表‑1に. 示 す.流 速 測 定 に お い て は,超. 羽 田 空 港 の拡 張 工 事 が 進 み つ つ あ る.将 来 的 な海 域 環 境 の変 化 を 適 切 に 評 価 す る た め に は,対 象 海 域 の 環 境 変 動 特 性 を 十 分 に把 握 して お く必 要 が あ る.そ. こで 本 研 究 で. は,水 質 や 生 物 の生 息 環 境 の変 化 に も強 く影 響 を 与 え る 可 能 性 の あ る,当 該 海 域 で の底 泥 の 挙 動 の把 握 を 目的 と. 1正 会 員 2正 3国 4正 5正 6フ. 工修(独 法)港湾空港技術研究所海洋 ・水工部 主任研究官 会 員(独 法)港湾空港技術研究所海洋 ・水工部 沿岸環境研究領域沿岸土砂管理研究チーム 土交通省関東地方整備局鹿島港湾 ・空港 整備事務所 保全課 課長 会 員 博(工)(財)港 湾空間高度化環境研究セ ンター 研 究主幹 会 員 博(工)(独 法)水産総合研究セ ンター水産工学研究 所 水産土木工学部 水理研 究室長 ェ ロー 工博 東京工業大学大学 院情報理工学研究科情報 環境学専攻 教授. 7正 会 員. 日本 ミクニヤ(株)環 境 防災部. 課長. 図‑1. 現地 観 測実施 点. 示 す よ う に超 音 波. 音 波 式3次. 元流.

(2) 東京 湾多 摩川 河 口沖 にお け る底泥 の巻 き上 げ に関す る現 地観 測. 517. 本 観 測 期 間 中 の 特 筆 す べ き事 象 と して,9月6日 日未 明 にか け て,台. か ら7. 風9号 が 関 東 地 方 に接 近 し,東 京 湾. 内 で は高 波 浪 の 発 生 や,多 摩 川 を は じめ とす る主 要 河 川 か らの 出水 が 生 じた.図‑3は. 台 風 接 近 時 を 含 む9月5日 か. ら同12日 ま で の7日 間 に お け る,風 況 お よ び波 浪 な ど の 時 系 列 変 動 を 示 した もの で あ る.風 に つ い て は気 象 庁 ア メ ダ ス(羽 田)の. デ ー タを,波 浪 に つ い て は観 測 点 よ り. 約5km北 方 に位 置 す る東 京 灯 標(東. 京 都 港 湾 局)で. の波. 浪 観 測 デ ー タを そ れ ぞ れ 参 照 した.水 位 につ い て は観 測 図‑2. 計 測機器 の設 置概 要図. 点 に て超 音 波 式 の水 位 計 に よ り測 定 され た デ ー タを 示 し て い る.台 風 接 近 時 に は風 向 き を東 か ら南 に変 え つ つ, 平 均 風 速 の 最 大 は20m/sを 超 え て い る.こ れ に対 応 して,. 表‑1. 波 高 ・周 期 も増 大 し,有 義 波 高 が2.5m,同. 使 用 した主 な計 測機 器 と測定 内容. 周 期 が5sを 超. え る高 波 浪 が 発 生 して い る.. (a)Wind speed. (b)Wind direction. (c)Water depth. (d)H1/3. (e)T1/3. 速 計(ADV)に. よ り乱 れ を含 め た詳 細 な流 動 場 の測 定 を,. ま た 超 音 波 式 流 速 分 布 計(ADCP)に. よ り全 水 深 を対 象 と. した流 速 場 の測 定 を 行 っ た.光 学 式 濁 度 計 に よ る測 定 結. 図‑3. 2007年9月5日0:00〜9月12日0:00に. 果 は,観 測 地 点 で採 取 さ れ た底 泥 試 料 を用 い た 検 定 を通 じてSS濃 度(単. 位:mg/l)に. 換 算 した.た. 度 が 約1,000mg/1を 超 え る と,濁 向 が 見 られ た こ と か ら,こ. 度 計 出 力 が 飽 和 す る傾. こ で は 換 算 値 が1,000mg/1程 測点周. ア サ ンプ ル(長 さ30cm)を. 層. 一 方 ,定 点 観 測 点 に お い て 多 項 目水 質 計(ア レ ッ ク社 製AAQ1183)に 度(DO)お. と,水. て シ ル トお よ び粘 土 の 泥 分 が98%以 上 を 占 め,特. DOに. 流 動 泥(中. は含 水 比 が400%を. 川 ら,2007)の. 超 え る 流 動 性 の高 い. 状 態 と な って い た.. 3. 観 測 結 果 と 考 察 (1) 観 測 期 間 中 の 海 象 条 件 と水 質. に表 層. よ り測 定 した,水 温,塩. 分,溶. 存酸 素濃. よ びSS濃 度 の鉛 直 分 布 を 図‑4に そ れ ぞ れ 示 す.. 台 風 擾 乱 を 経 験 す る以 前 の9月4日 の 結 果(破 線)を み る. 切 り して 得 た試 料 の分 析 結 果 に よ る と,ほ ぼ 全 層 に お い. (泥 深0‑3cm)で. おける. 位 お よび波 浪. だ し,SS濃. 度 以 下 の結 果 に つ いて 示 す もの とす る.一 方,観 辺 の 底 質 条 件 に つ い て,コ. 風 況,水. 温 ・塩 分 に お い て 水 深7m付. 近 に躍 層 が 発 達 し,. お い て も水 深 方 向 に 大 き く減 少 し,水 深 約15m以. 深 で は3mg/1以 下 の 貧 酸 素 状 態 に あ る こ とが わ か る.SS 濃 度 につ い て は,水 深 約12m付 近 と底 層 付 近 に わ ず か な 濃 度 の 増 大 が み られ る.こ れ に 対 し,台 風 通 過 か ら約2日 後 の9月9日 に お け る各 項 目 の 測 定 結 果(実 線)を 比 較 して み る と,塩 分 で は河 川 出水 に伴 う表 層 付 近 で の 著 しい低.

(3) 518. 海. (a)Temperature. 岸. 工. 学. 論. 文. 集. 第55巻(2008). (a)Wave orbitalvelocity. (b)Salinity. (b) Curremt speedat 1.6mab. (c)DO. (c)Bottom shear stresses. (d) SSC. (d) Suspended Sediment Concentration. 図‑4. 水 質鉛 直分 布 の変化. 化 が み られ,水 温 お よ びDOに. つ い て は,い. ず れ も鉛 直. 方 向 に一 様 化 し混 合 して い る様 子 が わ か る.SS濃. 度 に. つ い て は,表 層 近 傍 お よ び 海 底 付 近 で 濃 度 が 高 くな って お り,河 川 出 水 や 海 底 泥 の 巻 き上 げ な ど に よ り生 じた 浮 遊 懸 濁 物 が,外. 図‑5. 底 面近 傍 での作 用外 力 とSS濃 度 変動. 力 の 静 穏 化 に 伴 い 沈 降 して 海 底 付 近 の. SS濃 度 の 上 昇 に起 因 して い る もの と 思 わ れ る.一 方,. (a)Velocity. 表 層 付 近 で み られ る高 濃 度 水 塊 につ い て は河 川 起 源 懸 濁 物 の うち沈 降 速 度 の小 さ な 微 細 粒 子 が表 層 に と ど ま って い た も の と思 わ れ るが,浮. 遊 粒 子 の組 成 等 の 詳 細 に つ い. て は不 明 で あ る. (2) 底 面 へ の 作 用 外 力 と底 泥 の巻 き 上 げ 台 風 来 襲 時 の 底 泥 の巻 き上 げ状 況 を把 握 す る た め,波 浪 等 に よ る 底 面 へ の 作 用 外 力 と,底 面 付 近 で のSSの 変 動 に つ い て詳 細 な 検 討 を加 え た.ま ず,図‑3に. 示 した有. (b)Power spectra. 義 波 高,有 義 波 周 期 お よ び水 深 か ら,微 小 振 幅 波 理 論 に 基 づ き求 め た底 面 直 上 で の波 に よ る軌 道 流 速 振 幅 の時 系 列 変 化 を 図‑5(a)に 示 す.当 観 測 地 点 で は平 均 水 深 が 約 23mで あ り,通 常 の 風 波(周 期3〜4s)で. は 波 浪 の影 響 は. 海 底 に達 す る こ と は な い.し か し,台 風 接 近 時 の9月6日 か ら7日 にか け て は,前 述 の よ う に周 期5sを 超 え る高 波 浪 が発 生 して お り,そ の 影 響 に よ り海 底 直 上 で の 軌 道 流 速 振 幅 は最 大 で10cmを 超 え て い る.波 高 の 増 大 が 顕 著 で あ った9月7日 午 前3時 に お け る,底 面 上10cmを てADVに. 対象とし. よ り測定 され た流 速 波 形 と,そ れ に対 す るパ ワ ー. ス ペ ク トル の 計 算 結 果 を 図‑6に 示 す.波 浪 に よ る底 面 近. 図‑6. 底 面 上10cmに. お け る 流 速 波 形 と パ ワ ー ス ペ ク トル.

(4) 東京 湾多 摩川 河 口沖 にお け る底泥 の巻 き上 げに関す る現地 観 測. 519. 傍 で の 周 期 的 な流 速 変 動 の 様 子 が捉 え られ て お り,そ の 卓 越 周 波 数 は波 浪 観 測 の 結 果 と一 致 して,5〜6sに ク が 見 られ る.ま. ピー. た,周 期10sを 超 え る周 波 数 帯 に も2. 次 的 な ピ ー クが み られ,よ. り長 周 期 な 変 動 成 分 も実 際 に. は作 用 して い た こ と が 伺 え る.一 方,ADCPに. よ り測 定. さ れ た 最 下 層(底 面 上160cm)で の平 均 流 速 を み る と(図 ‑5(b)) ,波 の 軌 道 流 速 振 幅 が 最 大 と な る 時刻 よ り もや や 遅 れ て増 大 し,約 半 日遅 れ て 最 大(50cm/s以. 上)の 流 れ が. 生 じて い る. これ ら,波 お よ び流 れ に よ る底 面 せ ん 断 応 力 を 以 下 に よ り評 価 した.ま. ず,波 に よ る底 面 せ ん 断 応 力 を 次 式 に. よ り求 め た.. 図‑7. (1) こ こ に,ρ:海. 水 密 度,fw:波. に よ る抵 抗 係 数,お. よ. 底 面 せん断 応力 と底面 直上 のSS濃 度 との関係. 面 せ ん 断 応 力(τw)の 泥 の 巻 き上 げ(特. 方 が 卓 越 し て い る こ と か ら,底. に表 層 泥 の 初 動)は 波 浪 運 動 に伴 う底. 面 付 近 で の振 動 流 の 作 用 に よ り生 じた もの と考 え られ る.. びub:底 面 で の 軌 道 流 速 振 幅 で あ る.抵 抗 係 数fwは,粗. 図‑7はSS濃. 度 長 さz0(こ こで は0.2mmと. 定 高 さ:底 面 上10cm)の. 仮 定)と. 軌 道 振 幅 と の比 で. あ る相 対 粗 度 長 さを 考 慮 して,0.0069〜0.1057の 化 さ せ た(Soulsby,1997).軌. 値 と 底 面 せ ん 断 応 力(τcw)と. 間 で変. の 関 係 を示 した もの で あ り,底 面 せ ん 断 応 力 が お お よ そ. 道 流 速 振 幅 は 上 述 した 有 義. 0.1Paを 超 え る と,底 泥 の 巻 き上 げ が 顕 著 と な る こ と が. 波 諸 元 に 対 して 求 め られ た 値 を こ こで は用 い た.一 方, 流 れ に よ る底 面 せ ん断 応 力 は,. こに,q:抵. わ か る. (3) 台 風 通 過 後 のSS濃 度 変 動 とSSフ ラ ック ス. (2) に よ り求 め た.こ. 度 の急 激 な 上 昇 が 生 じ る ま で のSS濃 度(測. 抗 係 数 お よ びU:平. 均流. 図‑5に よ る と,底 れ て,1/2水. 面 付 近 で のSS濃 度 の 増 大 に少 し遅. 深 層 で のSS濃 度 の上 昇 が み られ る.9月7日. 正 午 頃 に は,底. 面 上30cmと1/2水. 速 で あ り,こ こで用 い る流 速 の 測 定 高 さ(底 面 上160cm). 度 と な り,鉛. を 考 慮 して 抵 抗 係 数 は0.002と した(Dyer,1986).こ. て い た と考 え られ る.そ. れら. 深 層 で のSS濃 度 が 同 程. 直 方 向 に一 様 に 近 いSS濃 度 の分 布 に な っ の 後1/2水 深 層 で のSS濃 度 は減. の 算 定 結 果 を 図‑5(c)に 示 す.さ らに,同 図 に は 波 と流 れ. 少 す る も の の,底. の 相 互 作 用 を 考 慮 した 底 面 せ ん 断 応 力(Soulsby,1997)の. り,102mg/1の オ ー ダ ー の高 濃 度 な状 態 が 維 持 さ れ,底 面. 算 定 結 果 も示 して あ る.. 上10cmの. さ らに,こ れ らの作 用 外 力 下 に お け る底 泥 の巻 き上 げ に つ い て評 価 す る た め,図‑5(d)に たSS濃 度(底. 面 上10cmお. 底 面近傍 で測 定 され. よ び30cm)を. 水 深 の 約1/2に 相. 当 す る底 面 上12mで のSS濃 度 と共 に示 す.台. 風来襲以 前. は底 面 近 傍 よ り も底 面 上12mで のSS濃 度 の 方 が わ ず か に 高 い値 を示 して い る が,9月7日 て,底. の午 前0時 〜3時 頃 に か け. 面 上30cmで. は そ の 後 約1日 間 に わ た. 濁 度 計 に お い て は測 定 限 界 を超 え る状 態 が 続. い て い る.こ の期 間 に お い て は,流 れ に よ る 底 面 せ ん 断 応 力 が 支 配 的 とな り,そ れ に伴 う底 泥 の巻 き上 げ も生 じ て い た 一 方 で,河 川 出 水 に よ り供 給 さ れ た懸 濁 物 の底 層 付 近 へ の 沈 降 や,周 辺 海 域 か らの 移 流 の影 響 も受 けつ つ 高 濃 度 な状 態 が維 持 さ れて い た もの と考 え られ る. さ らに,そ. の 後 も底 面 付 近 のSS濃 度 は 台 風 以 前 の 濃. 層 で のSS濃 度 が 一 気 に 増 大 し103mg/1の オ ー ダ ー. 度 よ り も高 い状 態 が 維 持 さ れ て い る.こ の よ うな 台 風 後. に まで 達 し,底 泥 の巻 き上 げが 観 測 点 付 近 で 生 じて い た. のSS濃 度 が 高 い状 態 で 維 持 され て い た9月11日 に 測 定 さ. こ と を示 唆 す る結 果 と な って い る.こ の よ うな 水 深20m. れ た 底 層 付 近 で の 浮 遊 懸 濁 物 の粒 度 分 布 と,台 風 来 襲 以. 前 後 の海 域 で の 波 浪 に よ る底 泥 の巻 き上 げ につ い て は,. 前 の 測 定 結 果 とを 比 較 して 示 した も の が図‑8で あ る.同. 他 の 内 湾 域 で も観 測 さ れ て は い る も の の,SS濃. 図 は底 面 上10cmを. 度上 昇. 対 象 として設置 された現地 式粒 度分. 量 は数10mg/1に と ど ま って お り(た とえ ば 白石 ら,2000),. 布 計(Sequoia社 製 ・LISST100X)に. 本 観 測 結 果 で は よ り高 濃度 な 状 況 に な った こ とが 特 徴 的. 台 風 来 襲 以 前 は,比 較 的 粒 径 の 大 き な懸 濁 物 が 主 で あ る. で あ る.こ. の に対 し,台 風 後 の高 濁 度 期 の懸 濁 物 に は100m以. の よ う な底 泥 の 巻 き上 げ を 起 因 と す るSS濃. よ る測 定 結 果 で あ る.. 下の. 度 の増 大 と,作 用 外 力 の 関 係 を み て み る と,底 面 せ ん 断. 微 小 粒 子 が 相 対 的 に 多 く含 ま れ て い る.粒 径 が10〜100. 応 力 の 増 大 に 応 じてSS濃 度 も上 昇 して い る.低. mmの. 濃度 の. 粒 子 の 沈 降 速 度 は,フ. ロ ッ ク形 成 の 影 響 な ど粒 子. 状 態 か ら急 激 な 上 昇 が み られ た9月7日 午 前2時 〜3時 の 時. 形 状 の 影 響 を 考 慮 した と して も〜10‑2cm/S(〜8.6m/day). 点 で は,水 平 流 速 は10cm/sよ り も小 さ く,波 浪 に よ る底. の オ ー ダ ー(Dyer,1986)と. 推 定 さ れ る.し. たが って,河.

(5) 520. 海. 岸. 工. 学. 論. 文. 集. 第55巻(2008). (a)at 12m above the bottom. (b) nearthe bottom 図‑8. 底面 直上水 中 の浮遊懸 濁 物 の粒径. 川 出 水 に よ り発 生 した懸 濁 物 が 数 日間 か けて 海 底 付 近 ま で 沈 降 し集 積 し た こ と が,高 濃 度 な状 態 が しば ら く続 い た こ と の要 因 の 一 つ と考 え られ る. 一方 ,当 観 測 点 で のSS濃 度 お よ び 流 速 デ ー タ を 用 い て,台. 風 来 襲 時 を 含 む 期 間 に お け るSSの 輸 送 特 性 に つ. い て 検 討 した.底 面 近 傍 お よ び 底 面 上12mで. のSSフ ラ ッ. クス を 算 定 し,輸 送 方 向毎 の フ ラ ック ス の 積 算 値 と 時 々 刻 々 に お け るSSフ ラ ック ス を ベ ク トル 表 示 して 図‑9に 示 す.な. お,SS測. 図‑9. 底 面 せん断応 力 と底面 直上 のSS濃 度 との関係. 定 に 際 して 濁 度 計 の 測 定 限 界 を 超 え. て い る場 合 に は デ ー タ を 除 外 して あ る.同 図 に よ る と, 底 面 上12mで. は,9月7日. 正 午 頃 を ピー ク に 比 較 的 短 時 間. 謝 辞:東. 京 灯 標 に お け る波 浪 デ ー タ は東 京 都 港 湾 局 よ り. の う ち にSS輸 送 が 生 じて い る の に 対 し,海 底 付 近 で は7. 提 供 頂 い た.な お,本 調 査 は 国 土 交 通 省 主 催 の 羽 田周 辺. 日午 前3時 頃 の 底 泥 の 巻 き上 げ に よ るSS濃 度 の 上 昇 に 始. 水 域 環 境 調 査 研 究 委 員 会(委. ま り,そ の後 も高 濃 度 な状 態 が継 続 した8日 の 午 前 中 ま. 理 学 部 教 授)で. で 顕 著 なSS輸 送 が 生 じて い る こ とが わ か る.輸. 当委 員 会 に お け る委 員 諸 氏 との 議 論 に お い て,有 益 な助. 送 の方. 向 は いず れ も南 西 方 向 に 卓 越 して お り,東 京 湾 の湾 奥 か. 員 長:風. 呂田利夫東邦大学. の 活 動 の一 部 を と り ま と め た もの で あ る.. 言 等 を 頂 い た こ とを 付 記 し謝 意 を 表 す る.. ら湾 口 に 向 か って 懸 濁 物 の 輸 送 が生 じて い た こ と を意 味 す る.一 方,同. 図 の 表 示 期 間 に お け る最 後 部 の9月11日. は大 潮 期 に さ しか か り,潮 汐 流 の み に よ るSSの 輸 送 も わ ず か に み られ る も の の,台 風 擾 乱 時 の 影 響 と比 較 す る と極 め て小 さ く,今 回 の 気 象 擾 乱 に よ る底 泥 輸 送 へ の 影 響 が い か に 大 き な もの で あ っ た か が わ か る. 4. お. わ. 多 摩 川 河 口 沖 に お け る底 泥 の挙 動 の 把 握 を 目 的 と して, 月 間 の連 続 観. 測 を行 った.観 測 期 間 中 に は台 風 の接 近 に よ る東 京 湾 内 で の 高 波 浪 や,多 摩 川 を は じめ主 要 河 川 で の洪 水 が 発 生 し,底 泥 の 巻 き上 げ や 河 川 出 水 に よ る浮 遊 懸 濁 物 の 高 濃 度 化 が 観 測 さ れ た.海. 底 付 近 に お け るSS濃 度 の 上 昇 初. 期 に お い て は,流 れ よ り も波 の作 用 が 卓 越 して底 泥 の 巻 き上 げ が生 じて い た こ とが 確 認 さ れ た.波 浪 が 静 穏 化 し た後 も,海 底 付 近 で は 高 いSS濃 度 が 維 持 さ れ,SSフ. ラッ. ク ス解 析 の 結 果 に よ る と湾 奥 か ら湾 口 に 向 け て懸 濁 物 の 輸 送 が 顕 著 で あ っ た こ とが 示 さ れ た.. 考. 文. 献. 学 論文集, 第47巻, pp.1076‑1080. 瀬 口昌洋 ・渡辺 潔 ・加藤治(1989): 有 明海奥部浅海 域 における 底 層の流 れ と濁 りにつ いて, 海岸工学論 文集, 第36巻, pp. 819‑823.. り に. 底 面 付 近 を 中 心 とす る 流 況 ・濁 度 の約1ヶ. 参. 白石 修章 ・飯 島眞治 ・長野 国松 ・中辻啓二(2000): 関西国際 空 港 沖 にお ける潮 流 と波 に よる底泥 の巻 き上 げ現象, 海岸工. 中川 康之(2002): 東京 湾奥部で の底泥 の巻 き上 げ とその粒度分 布 特性 につ いて, 海岸工 学論文集, 第49巻, pp.1046‑1050. 中川康 之 ・有路隆一 ・松坂省一 ・諸星一信 ・八木宏 ・灘 岡和夫 ・ 古 殿太郎 ・大野幸正 ・島崎哲也(2007): 多摩川 河口沿岸域 にお ける底泥 の堆積分 布特性 の把握 に関す る現地調 査,海 岸 工学論文集, 第54巻, pp.1031‑1035. 中川康之 ・今林 章二 ・末 次広児(2002): 有 明海の底 泥輸送現 象 に関 す る現地 デ ータの解析, 海岸工 学論文集, 第49巻, pp.566‑570.. Dyer, K. R. (1986): Coastaland EstuarineSedimentDynamics,John Willy & Sons,342p. SanfordL.P. (1994): Wave-forcedresuspensionof upper Chesapeake Bay mud, Estuaries,Vol.17,No.1B,pp.148-165. Soulsby,R. L. (1997): Dynamicsof marine sands,ThomasTelford Publications,249 p..

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