高等学校における環境教育の社会的基盤に関する研究 一環境系学科設置の意義と可能性をめぐって一
学 校 教 育 専 攻
疋rムー,
岩 水 学 校 改 善 コ ー ス 指導教官
尚 島 正
青
もとに本研究の課題を,①特定地域の環境に関 1 .研究の目的
「地域課題認識」について,②特定地域の をもたらしてい する
高等学校に「学びの空洞化」
「人材必要認識」について,③特 環境に関する
て行われる る要因は,本来「実際生活に即し J
定地域の環境に関する「人材育成要求J につい 高校生の生活実感や地域社会の現
べき教育が,
さらに,④大学の環境 て顕在化することとし,
実課題とはかけ離れたところでなされているこ
系学科における「人材育成方針J についても把 一方でいわゆる地球環境問
とにあると考えるO
握することとした。これらの研究課題に基づき,
題が深刻かっ緊急を要する課題でありながら,
静岡市の行政・事業・市民団体を調査対象とし 環境問題の解決を担う人材の育成が十分になさ
国公立大学の環境系学科を対象と た地域調査,
れていないことに問題を感じる。環境教育を高
した大学調査から得られたデータの分析・考察 校教育に本格的に導入していくこと, その具体
次のような知見が得られた。
を進めた結果,
案として環境系学科の設置の可能性を模索する の実現に資すると
「持続可能な社会j
ことは,
た教育の実現を期
「実際生活に即し」
同時に,
するものであるとの考えが,研究の発端である。
しかしながら,先行研究の検討を通じて,社 会の側に環境教育を支持する基盤がいまだ確立
︿地
域基
盤﹀
1 喜 下
(地与の課│求 地 域
く亙通量関する「人材育成要求」
くき言言及関する「人材必要認識J
く量空渉開する「地域課題認識」
地域社会の環境に関する様々 していないこと,
な課題が,教育要求として明確にされていない こと,卒業後に大学や社会と接続していく道筋 を,既存の環境系学科が持ち得ていないことな どが推測された。従って,本研究では高等学校 を
「社会的基盤」
における環境教育を支持する
【 研 究 の 枠 組 み 】
それにより環境系学科設置の意義と 顕在化し,
3.研究の結果と考察 可能性を明らかにすることを目的とした。
高等学校における環境教育への教育 第 1に,
2.研究の課題と方法
その裏付けとなる地域の環境に 要求は強いが,
高等学校の環境教育を支持する「社会的基盤」
大学側の人材 育成方針が十分でなく,環境教育を定着させ得
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関する課題認識や人材必要認識,
大学等 を含めた教育基盤から成るものと考え,右図を
高等学校を設置する地域基盤と,
とは,
る根拠に欠けることから,現時点では,高等学 校における環境教育を支持する社会的基盤はい まだ脆弱であるということが明らかになった。
具体的には,環境教育への教育要求は小中学校 を含めた学校教育全体に向けられたものである こと,地域の環境対策の主体である行政部局や 事業団体において,環境教育を推進する根拠と なる地域課題認識が全体的に低いこと,それに 伴って環境に関する人材必要認識も低いこと,
大学の環境系学科の人材育成方針においても,
高等学校に「基礎学力」の定着を求める傾向が 強いことが主な論拠である。その背景には,財 政難や手
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潤追求とのジレンマなどが伺えるが,より本質的には,人間の生産活動にすべての者 が関わっているという〈関わり合いの認識の欠 如〉が要因としてあると判断した。
第2に,高等学校における環境教育の意義は,
環 境 問 題 の 解 決 に 関 わ る 人 材 の 育 成 と い う よ り,現時点では環境に関する基礎基本,それに 伴う市民性や社会性を身につける段階であると の認識が明らかになった。また,静岡市におい ては,特に「廃棄物・ごみ処理JI水質汚濁」
問題への対応仁環境に関する「行政・経営面J
「環境教育J関連の人材を必要としており,具 体的な学習課題として組み込んでし1く意義も認 められた。これについては,高等学校における 環境教育の内容について,地域からは環境に関 する「基本的知識や規範意識」の修得を,大学 側からは「基本的知識や体験的学習」が,ほぼ 共 通
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て 求 め ら れ て い る こ と が 主 な 論 拠 で あ るO ただ,環境に関する課題や人材への対応が 求められる中で,大学側も環境関連の高度な専 門領域に苦慮、し,それが高等学校における環境 教 育 の あ り 方 を 規 定 し て い る こ と も ふ ま え る と,そこに人材育成を政策として位置づける視点,すなわち(環境政策の人材育成施策の不備) があるのは否めないと判断した。
第3に,高等学校における環境系学科の設置 については,大学接続の観点などから,現時点 では困難性を伴うものの,学科自体にはかなり の関心が示されており,設置の可能性が見いだ された。これについては,特に地域調査からは
「学科設置」や「高大連携」など,制度改変を 伴う環境教育の導入に対して潜在的な「教育要 求」が伺えたこと,同系列の大学の7割以上の 学科が,高校での設置に期待していることが主 な論拠であるO 反面,環境系学科からの受け入 れについては「基礎学力」重視の慎重な姿勢で あ る こ と 高 校 の 専 門 学 科 か ら の 大 学 進 学 」 についても支持が少なく,進路展望が見いだせ ない点も伺われた。そして,こうした大学側の 姿勢には,環境分野の専門性の高さを理由に普 通教科の「基礎学力」を求めるく系統主義教育 の呪縛〉というべきものが根深いこともまた,
問題性として残った。
総じて第4に,以上の知見の問題性に通底す るのは(環境問題の緊急性に対する認識の欠如〉
であり,狭隆な認識に基づく他者依存傾向であ る。「持続可能な社会JI循環型社会」をキーワ ードに環境問題に対処する必要性は声高に叫ば れながら,具体的な行動に結び、ついていない要 因はそこにあると考えられる。
4.実践上の課題
政策面では環境保全人材の育成事業を国家政 策として早急に立ち挙げる必要があること,教 育面では新しい社会状況に対応し,大学接続を 前提とした専門学科のあり方を模索すること,
環境教育の全体構想,すなわちコアカリキュラ ムを構築することが必要であり,高等学校にお ける環境系学科設置の意義もそこにある。
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