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論文審査の結果の要旨

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Academic year: 2021

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論文審査の結果の要旨

イソプレノイドは炭素数5のイソプレン骨格を有する有機化合物の総称であり、哺乳動物において はメバロン酸(MVA)経路により生合成される。イソプレノイドの一種であるゲラニルゲラノイン酸 (GGA)は、肝癌の二次発癌抑制効果を有する化合物で、ウコン等の植物にも含まれる天然化合物ジテ ルペノイドの1つである。一方、GGAは植物だけでなく、哺乳動物でもMVA経路由来で合成されること が先行研究結果から示唆されているが、それらの研究は無細胞実験系であり、実際に哺乳動物細胞 内でMVA経路を経てGGAが生合成されるかは明らかではなかった。本学位論文研究は、まず哺乳動物 組織のGGA濃度の分析および哺乳動物培養細胞株(HuH-7、HepG3)を用いたGGA生合成に関与する酵 素の同定を行い、さらに13C-メバロノラクトン(MVL)を用いたアイソトポマースペクトル分析(I SA)によりHuH-7におけるMVAからGGA生合成経路について解析を行っている。また、本研究では、G GAの肝癌抑制作用以外の生物活性として、哺乳動物(マウス)の生殖機能に対する効果について検討 を行っている。

1)幼若期のWistar系雄性ラットにおける主要12臓器および血清中のGGA含量をLC/MS/MS法により 分析した結果、特にMVA経路活性の高い肝臓に内因性のGGAが多く存在することを明らかにした。さ らに先行研究でGGAの合成に関与する酵素として示唆されていたモノアミンオキシダーゼB(MAOB)

の関与について、本研究では、MVA経路の阻害剤の作用やsiRNAを用いた遺伝子のノックダウン法、C RISPR-Cas9系を用いた遺伝子ノックアウト法、さらにMAOB遺伝子再導入法などの遺伝子改変・編集 技術を用いた手法により詳細に検討している。その結果、ヒト肝癌細胞においてMAOBがゲラニルゲ ラニオール(GGOH)からGGAの前駆体であるゲラニルゲラニアール(GGal)を合成する主要な生合成 酵素であることを明らかにしている。また、興味深いことにMAOBをノックアウトさせたHepG3細胞で は、細胞内GGAレベルが有意に低下しなかったことから、細胞内GGAレベルの恒常性を保つためにMA OB以外の代償的な酵素の存在も示唆されており、その同定は今後の検討課題であると考えている。

2) 13C-メバロノラクトン(MVL)を用いたISA分析によりHuH-7細胞においてMVA経路を介したGGA の生合成経路の解析を行った。プラバスタチン処理によりMVA合成を阻害したHuH-7細胞に外因性の

13C-MVLを添加すると13C標識されたGGAが検出され、さらにそのGGAはMVA経路下流のファルネシル二 リン酸(FPP)とゲラニルゲラニル二リン酸(GGPP)を経て生合成されることを明らかにした。

3)GGAの発癌作用以外の生物活性として、ラットの肝臓に次いでGGAレベルが高い生殖臓器に着目 し、マウスを用いて交配期間中のGGA摂取の有無による再生産指数(RI;離乳仔数を交配母親数で割っ たもの)への影響について検討した。その結果、GGA摂取群では非摂取群に比べRI値が有意に増加を 示した。本結果は、GGAが発癌抑制作用以外に生殖機能の活性化や授乳仔の発達促進効果などの生物 活性を有することを示唆している。

以上、本論文は、ヒトを含む哺乳動物生体内においてもGGAがメバロン酸経路を経て生合成され、

さらに肝MAOBがその生合成に関与する酵素である可能性を明らかにした。また、GGAは先行研究で検 討されてきた肝癌抑制作用だけでなく、哺乳動物の生殖機能維持・向上のような生物活性も有する イソプレノイドである可能性が強く示唆された。これらの結果とGGAが天然の食品中にも含まれるこ とも併せて考えると、本研究成果は、生化学・栄養学の学術分野におおいに寄与する業績であると 考えられる。以上より、本研究は博士の学位(栄養学)の授与に値するものと考える。

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