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わ表 1>2011( 平成 23) 年度訪問講義の向上 < 目標設定のヒントとなる盛りだくさんの講義や講座まず 生徒にどのようにして目標を持たせているか見てみよう 同校では 生徒の意識を喚起させるさまざまな仕掛けを用意している いずれも 知的好奇心を刺激し教養を深め 将来を思い描かせ さらには生徒自

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Co n t e n t s ◇学校事例 東京都立西高等学校 ………       宮城県仙台第三高等学校 …………

わが校の

取り組み・

私の工夫

25

−進学実績の向上−

 このシリーズでは、主に高等学校の取り組みや、個々 の先生方の実践事例を紹介する。今回のテーマは「進学 実績の向上」である。東京都立西高校では、生徒の知的 好奇心を刺激するさまざまな取り組みとともに「考えさ せる授業」で総合的な学力の向上をめざしている。宮城 県仙台第三高校では、教員間の情報の共有と教科指導力 の向上を図り、丁寧な指導で生徒の進路実現に向けて取 り組んでいる。以上の2校の取り組みを紹介する。 《 シ リ ー ズ 》

P38

P42

東京都立西高等学校

受験指導に偏重せず、大きな器を持った人間を育てる

自らの将来を選び取り目標を達成させる指導で

難関国公立大学への進学実績を向上

学校事例

 東京都杉並区の閑静な住宅街に位置する東京都立 西高等学校は、1937(昭和12)年に創立された府立第 十中学校を母体とする創立75年の伝統校であり、こ れまでに約27,000名の卒業生を輩出している。2001 年には東京都から進学指導重点校の指定を受けてい る進学校だ。同時に、盛んな部活動、生徒が企画運 営する行事、生物学・数学オリンピックへの参加など、 さまざまな場で生徒の個性を発揮できる自由闊達な雰 囲気がある。  受験指導に偏重せず、大きな器を持った人間に育 てることを指導の方針に据えながら、進学実績を向上 させている同校の取り組みを校長の宮本久也先生、 進路部主任で主幹教諭の櫛部義也先生(物理)に伺っ た。

 将来を考え、憧れの大学を見つける指導

 都立西高校の進路指導は、教育方針に挙げる「文武二 道を奨励し、豊かな人間性や協調性を涵養し、自主・自 律の態度を育成する」に集約される。「本校では、個々 の持っている人間の器を大きく育てることを教育方針に 据えています。生徒は学力を伸ばし、教養を身につけ、 部活動や行事へ積極的に参加し、さまざまな経験を通し て成長していく。 進路指導も本人が 選んだ第一志望の 大学に合格できる よう支援すること を 目 標 と し て お り、自分で考え、 悩み、多くの情報の中から進路を選択する力を養成する ことに注力しています。進学校ではありますが、大学受 験偏重の指導はしていません」(櫛部先生)  進路指導は、1 年生は「自己理解と職業研究」(自分 を知る)、2 年生は「大学研究と文理選択」(自分の将来 を考える)、3 年生は「実力養成と進路実現」(自分の進 路を考える)と順を追って考えを構築させる手掛かりを 提示し、生徒に「憧れの大学」という目標を持たせるこ とを重視している。目標が決まれば、生徒自身が目標に 向かって頑張る力を持っているからだ。  「広い視野を持ち自分の将来を選択する。それは志望 大学を考えるときも同じです。自分は何が好きなのか、 何をめざしたいのか、どんな職業で社会に貢献したいの か、描く自分の姿を実現するにはどの大学に進むべきな のか、さまざまな刺激を与えてとことん考えさせ、『憧 れの大学』を持つように進路指導を行います」(櫛部先生) 宮本久也校長 櫛部義也先生

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25回   進学実績の向上 <表1>2011(平成23)年度 訪問講義  

 目標設定のヒントとなる

 盛りだくさんの講義や講座

 まず、生徒にどのようにして目標を持たせているか見 てみよう。同校では、生徒の意識を喚起させるさまざま な仕掛けを用意している。いずれも、知的好奇心を刺激 し教養を深め、将来を思い描かせ、さらには生徒自身が 未来を選び取っていくヒントでいっぱいだ。そのいくつ かを紹介しよう。  保護者や卒業生にも公開する「訪問講義」(年4回実 施/全学年対象、表1)は卒業生を講演者に迎え、年4 回土曜日に実施している。3年間すべて参加すれば、全 12 分野を聴くことができる仕組みだ。  「土曜特別講座」(全学年対象、表2)は、授業の補習 や受験対策講座だけでなく、教養として知ってほしい テーマ、知的探究心を刺激するテーマが並ぶ。教員がや りたいテーマや時期を決めるため、「比較文明論」「仏像 鑑賞入門」など大学受験に限らない、学問探究分野の講 座を開催することも可能になる。  「パネルディスカッション」(3月実施/1年生対象、 表3)は、「現代社会が抱える問題点」「社会人としてど んな力が必要なのか」など生き方を考えさせる内容だ。  「講演者は、社長や教授などを経験した 60 代の卒業生 にお願いしており、毎回5~6名の方に来ていただきま す。社会を経験した方に、今の社会の問題点や社会の在 り方、社会で生き抜く上で必要な力など、社会全体を俯 瞰した話をしてもらっています」(宮本校長)  「進路ガイダンス」(6月、3月実施/2年生対象)は、 卒業生である現役大学3年生~大学院1年生を招き、12 の分野に分かれて実施している。話題は「大学受験をど う乗り切ったか」「使った参考書」のほか、「研究テーマ」 「大学の学び」などである。6月は志望が固まっていな い生徒もいるため、2分野に参加できるようにしている。 3月は、生徒の文理選択後のため、具体的な勉強法など 大学受験を中心としたガイダンスである。  さらに、キャリア教育の一環として、社会人に密着し て仕事を肌で感じ視野を広げてもらう「ジョブシャドウ イング」(全学年対象)を昨年から始めた。仕事をして いる社会人1人に生徒が1人ついて、仕事の様子を1日 見学する。もともと、職場体験は東京都教育委員会の取 り組みだったが、昨年度からはそれと併用して同校独自 の取り組みも進めている。今年度は夏休み5カ所、冬休 み 1 カ所、春休み5カ所で実施された。社会人の仕事を 見ることにより、視野や興味関心を広げて、人としての 器を大きくしているという効果を感じているそうだ。生 徒の間でも、毎回抽選になるほど好評だ。  加えて、民間企業の社会貢献事業の一環である「高校 生の海外派遣制度」に応募し、昨年度はインドネシア、 今年度は中国に、2週間程度、それぞれ 20 名ずつの生 徒を派遣した。同時にそれぞれの国からの生徒を受け入 れている。「国際交流について、生徒・保護者とも関心 が高く、我々も国際社会で活躍できる人材を育てたいと 思っています。キャリア教育と国際理解教育を今後も充 実させていきたいと考えています」(宮本校長)  なお、これらの行事は、卒業生、同窓会、PTAの協 力を得ている。ジョブシャドウイングは卒業生だけでな く、半分以上は保護者の協力を得ているし、留学生のホー ムステイ先も生徒の家である。質の高いこれらの行事を 実施できるのは、伝統校の強みといえる。 分野 講師/テーマ メディア 「環境と経済の文明史」慶應義塾大学経済学部教授 建築 近代建築研究所主宰 東京藝術大学講師 「住宅から都市・デザインの世界をめざせ」 宇宙 宇宙航空研究開発機構システムエンジニアリング室 「宇宙開発 一緒にやりませんか」 国際 「日本人と国際人」外務省大臣官房総務課首席事務官 <表2>2012(平成24)年度 土曜特別講座 教科 科目 講座名 国語 教養としての大学受験現代文 古典は基本よ、もう一度 漢文実力養成講座 世界史教養としての文化史 比較文明論 日本史 戦後史の理解を深める 論述問題から考える 2年次の復習 倫理 オペラと社会 仏像鑑賞入門 ギリシア神話を知っていますか 政経 世界と日本の今を読み解く 教科 科目 講座名 数学 大学入試問題の演習と解説 東大数学 2000 ~ 2012 物理 物理基礎講習 Investigation 物理 化学 化学基本 化学 review +α 化学 progress +α 生物 生物の進化 生命科学講座 生物の発展問題対策講座 英語 大学入試英語過去問演習 Shakespeare on Screen <表3>2011(平成23)年度 パネルディスカッション テーマ「好きこそ物の上手なれ」 パネリスト 元主婦の友社取締役 ギャラリー経営者(在スペイン) NTT ドコモ代表取締役副社長 日本スウェーデン総合研究所代表 シナリオライター コーディネーター 慶應義塾大学医学部講師

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 「進路ノート」で

 節目ごとに自分の生活や学習を振り返る

 これらの進路行事はもちろん受けっぱなしではない。 3 年間の進路指導の流れやこれからの 1 年間の行事を俯 瞰する手助けをするのが、4 月に各学年に配布される「進 路ノート」だ。ノートには、学年集会資料、年間行事表、 年間学習計画表や夏休み計画表、自分で解いた大学入試 センター試験(以下、センター試験)の点数記入欄、訪 問講義や進路講演会の内容を整理する欄が用意され、さ らに巻末には、該当学年で提出する書類(進路希望調査 書、個人面談表、選択科目履修調査票、証明書発行申請 書、受験結果報告書など)がミシン目をつけて綴じ込ん である。  「初めは生徒が考えをまとめる程度だった『進路ノー ト』に、進路部からのメッセージや学年集会資料、進路 情報などを年々追加し、教務部や担任、生徒が利用する 書類や計画表を一緒に綴じ込んで、数年前に現在の体裁 になりました。書類やプリントの紛失がなくなり、毎回 印刷して配布する教員の手間も省けます」と櫛部先生。 年度末には、当該ノートを使用した学年と次年度利用す る学年の教員の意見を聞き、改訂に向けて内容や必要書 類を精査する。受験カレンダーがあると便利、という声 を受けて次の 3 年生のノートに加えるなど対応は柔軟で、 毎年進化している。  進路ノートは生徒だけでなく、教員にもわかりやすく 工夫されている。進路ノートの項目や提出書類の右肩に は該当月が記載され、生徒だけでなく赴任したばかりの 教員も、どの時期に何が行われるかが一目でわかるよう に工夫されている。  「昨今人事異動が多くなり、進学校の進路指導に慣れ ていない教員、若手の教員が担任を持つことが増えてい ます。学校として生徒を預かっているので、教員の力量 による差は極力少なくする必要があります。すべての担 任が、どの時期に何をすればいいのか把握する必要があ るのです。3年間の進路指導の流れを理解したうえで、 タイミングよく生徒に火をつける存在になってほしいと 思います」(宮本校長)

 考えさせる授業で、総合的な学力の向上をめざす

 これらの取り組みとともに、同校が重視しているのが、 「授業で勝負」を合言葉にした、生徒と教員で創造する 質の高い授業である。授業や講習では、知識の注入では なく「考えさせる授業」を心がけている。  「物理の授業では、得られた答えや結果について、授 業中数回は『どうして』『何か違っていないか』などと 発問し、高校の範囲では学ばない、さらにその先にある 理論に触れるなど、問いかける授業、疑問を発しやすい 授業運営を心がけています」(櫛部先生)  宮本校長は年2回、すべての教員の授業を参観してい るが、6月には宮本校長が各教科1名の教員を指名して、 その教員の授業を他の教員にも見てもらい、見学後はレ ポートをまとめて研修会を開く。また、教科内で授業を 公開し、教材に関する情報交換をするテーマ型の授業研 究を行うなど、授業の質を高める機会を設けている。  「私が理系のせいか、国語科の授業が参考になります。 理系の問題文であっても出題者の意図を読み取るという 作業が必要になる。これは国語力です」と櫛部先生は、 国語の文章読解の教え方を参考に、昨年度、東京大学の 物理の過去問を使って、設問を読み解くためのヒントを 発見する演習を実施した。  「相手によって何がよい授業かは異なります。他校で経 験を積んだ教員でも、本校でそのやり方が通用するとは 限りません。教員も研鑽し、生徒の状況に合わせて授業 を臨機応変に組み立てる必要があるのです」(宮本校長)  また、学校全体の課題を検討する教科主任会議(参加 者:校長、5教科主任、進路主任、教務主任)を導入し、 組織力を強めて教育のセーフティーネットを構築する動 きも出ている。

 生徒に目標を突破させるための指導・支援も充実

 これらの取り組みだけでなく、生徒に自学自習の態度 を身につけさせ、目標としている大学に合格させる指導 もしている。ペースメーカーとしての役割を果たしてい るのが、学年集会である。学年集会では、家庭学習習慣 化の必要性や、部活動と両立させるコツ、特に時間の効 <進路ノート>

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25回   進学実績の向上 い。こうしたスタンスが、生徒が自分で考え決めていく ことに一役買っている。「人に頼らず自分でテーマや目標 を持って学習できる生徒を育てることが、ひいては骨太 の人間に育てることにつながっていきます」(宮本校長)  自分が決めた目標に向かって妥協せず邁進する生徒を 育てる進路指導があるからこそ、結果的には、高水準の 進学実績につながっていく。「その基本となるのが、家 庭学習です。塾や家庭教師に引っ張ってもらう学習では 自主自律とは言えません」と櫛部先生。  同校では、「小論文を添削してほしい」や「過去問を 解説してほしい」など、生徒からの要望で、放課後に講 座を開催することは珍しくないそうだが、そんな同校で も、近年、自学できる生徒が減ってきていると実感して いる。早い段階で家庭学習の重要性に気付かせ実践させ ることが、同校の目下の課題となっている。 ◇所在地:東京都杉並区宮前 4-21-32 ◇沿革:1937 年 府立第十中学校創立 1950 年 東京都立西高等学校に改名 2007 年 創立 70 周年式典挙行 ◇学級編成:[全日制]普通科 1 学年8クラス ◇生徒数:1,000 名(男子 528 名 女子 472 名)2013 年 3 月現在 ◇特色:「自主自律」「文武二道」のもと、ほとんどの生徒が4年制 の難関大学を志望する進学校。私服でのびのびとした自由な校風 のもと、「授業で勝負」を合言葉に、生徒と教員で質の高い授業 を創造している。関東大会や全国大会に出場するなど 40 以上の 部活動・同好会活動も盛んだ。 ◇卒業生の進路:2012年3月卒業生 342 名 ・進学先:4年制大学 178名   ・合格者の内訳(現役生、延数) : 国公立大学(大学校含)98名 私立大学 429名 東京都立西高等学校 率的な使い方や気持ちの切り替えの重要性をデータとと もに説明する。  適切な指導の際に重要なのが、客観的なデータである。 過去の生徒の 3 年間の校内実力テストの点数とその偏差 値、合格大学と進学した大学などから傾向を分析した冊 子を作成し、それを参考に指導をしている。  「例えば、目標の大学はあるものの学力が伸び悩んで いる生徒には、現役と1浪時の合格者・不合格者の分布 をまとめた冊子を用いて『現時点でこのくらいの成績で も、受験時点ではこのくらい伸びて十分に目標の大学に 合格できる』と数値を見せながら説明すると、生徒にも 気持ちの余裕が生まれるようで、その後学力が伸びて現 役で合格する生徒もいます。生徒を納得させるのに必要 なのは、『頑張れ』という声かけではなく、データに裏 付けされた励ましだと思います」と櫛部先生は説明する。  客観的な根拠の積み重ねがあるからこそ、説得力のあ る指導や共感の得られるアドバイスが可能になるのだ。  また、「夏期講習」(全学年対象、表4)も実施してい る。基礎的な内容から高度な演習まで、幅広くかつ多数 の講座が並んでいる。講座の内容は、「もう少し深くや りたい」「この単元は 2 日使えば完成できるので、夏期 講習でやっておこう」「今年の生徒はこの辺が弱い」など、 状況に応じて教員がテーマを決める。なお、例年、延べ 約 8,000 人の生徒が受講しているそうだ。  さらに、教務部では過去 10 カ年のセンター試験の問 題を準備し、生徒が持ち帰ることができるようにした。 問題を解いてマークシートに記入して提出すると、採点 し、自分の得点だけでなく、全国平均、校内平均も返却 する。データベースと関連させているため、生徒の学力 がどれくらいついているかの参考にもなるそうだ。  このほか、平日の放課後、卒業生に日替わりで常駐し てもらい、日常の学習方法や大学入試対策などの質問や 相談に乗ってもらう「チューター制度」も好評である。  これらの取り組みや指導により、国公立大学現役合格 者(防衛医科大学校含む)は 2010 年の 74 名→ 2012 年 98 名、旧帝国大学に東京工業大学と一橋大学を加えた 現役合格者は 25 名→ 41 名と増加している。

 自主自律のカギは、家庭学習にあり

 さまざまな体制を整えてはいるものの、何を利用する か選択するのは生徒自身であり、教員は参加を強制しな <表4>2012(平成24)年度 夏期講習(一部抜粋) 教科 講座名 教科 講座名 国語 古文実力養成講座 数学 微分法(数Ⅲ) 漢文実力養成講座 積分法(数Ⅲ) 古典文法(基礎) 数ⅡB 演習 現代文記述問題演習 整数 東大問題概要解説・演習 確率 京大問題概要解説・演習 ベクトル 一橋大問題概要解説・演習 数列 古文助動詞講座 関数盛り合わせ 古文入試問題演習 軌跡と領域 現代文入試問題を読む もう一度数学ⅡB 古文は基本よ もう一度  3年生特別講座 夏休み課題解説 もう一度2次関数 古典2 東大「数理工学見学会」 数学ⅡB・NG 解説

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90%以上が国公立大学を志望するようになり、大学入試 センター試験(以下、センター試験)の高い出願率(2011 年度 100%、2012 年度 98.7%)にもつながっているのだ。

 さまざまな進路行事や課外講習の実施

 施設の充実で生徒を支援

 同校ではこれまでも、全学年対象の夏期や冬期の課外 講習だけでなく、1 年生は 12 月、2年生は 10 月、3年 生は4月からスタートする平日課外講習も実施している。 また、課外講習だけでなく、進路講演会や大学院生によ る研究室紹介、社会人出前授業など、各種講演会を年に 複数回開催し、生徒の進路意識喚起にも積極的に取り組 んできた。模擬試験についても、分析して各教科のコメ ントとともに「進路情報」の形で結果を開示するなど、 データ活用にも積極的だ。  さらに 2009 年に完成した新校舎では、生徒の学習を バックアップできるような環境が整えられた。個別ブー スが 70 席並ぶ学習室に加え、図書室にも学習コーナー が設置された。職員室前の廊下は広く設計され、「学習

宮城県仙台第三高等学校

「情報の共有」と「教科指導力の向上」を推進し

丁寧な指導を心がけながら、進学実績向上を実現

学校事例

 仙台市宮城野区の高台にある宮城県仙台第三高等学 校は、1963 年に全日制普通科の男子校として開校し、 1968 年には県内で初めて理数科が設置された進学校 だ。制服の着用は自由だが、服装の自由を通して自主性・ 自律性を高めあうことを生徒には求めており、開校以 来の文武両道の精神を実践している。  同校ではここ数年、国公立大学の合格者数を順調に 伸ばしており、2012 年の国公立大学の合格者数は 218 人(対前年比 115%)、特に現役生の合格者数が 178 人 (対前年比 122%)と大きく増加した<図表1>。従来 からの指導の良い部分は継承しつつも、学校を取り巻 く環境の変化に対応して、よりきめ細かな指導に着手 している同校の取り組みを進路指導部長の佐藤彰彦先 生(英語)に伺った。

 これまでの指導を基盤としつつも

 学校を取り巻く環境の変化に対応

 仙台第三高校を取り巻く環境はここ数年で大きく変 わった。2009 年4月の新校舎完成と男女共学校への移 行、2010 年度には文部科学省より SSH(スーパーサイ エンスハイスクール)に指定され(5年間)、2012 年度 からはコア SSH の指定を受けた(3年間)。さらには、 2010 年度から高校入試が全県一区となったこともあっ て、入学してくる生徒の気質も変わってきた。  進学実績については、「国公立大学に現役で合格させ るために、生徒には3年生の最後まで5教科(6教科) 7科目に取り組ませ、模擬試験や 課外講習も、実施前には動機付け を行い、実施後もやりっ放しには せず丁寧に事後指導を行う、とい う本校が以前から継続してきた 指導が基盤になっています」と佐 藤先生は分析する。このように丁 寧な指導を行うことで、生徒の <図表1>国公立大学合格者数推移 佐藤彰彦先生 2008 2009 2010 2011 2012 国公立大学合格者 現役生合格者 170 188 224 190 218 130 139 162 146 178 250 225 200 175 150 125 100 75 (人) (年度)

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25回   進学実績の向上 指導コーナー」と名付けられた。イスとテーブル、ホワ イトボードがいくつも設置され、生徒が教員にさまざま な質問ができるようになっている<写真>。また、職員 室はガラス張りになっており、廊下の「学習指導コー ナー」からは、教員の在席状況が一目でわかるようになっ ている。こうした細かな配慮が教員と生徒の距離を縮め るのに役に立っている。

 こまめな情報交換で3年生の進路指導を見直し

 教員が同じ方向性で生徒と向きあう

 こうした指導で進学実績を伸ばしていた同校だったが、 さらなる改善をめざして「情報の共有」と「教科指導力 の向上」の2点を重点課題に挙げ、4年前より新しい取 り組みに着手してきた。  まずは「情報の共有」の取り組みから見ていこう。こ れは「第3学年担任会」と「3学年担任引継会」と「3 学年進学検討会」から成る。3年生で行っている「第3 学年担任会」は、2週間に1度開かれる学年会だけでは 情報の共有が不十分と考えて取り入れた。定期的に開催 するために時間割に組み込み、毎週 1 回、学年主任、担 任、進路指導部の佐藤先生が膝を交え、生徒の動向や進 路行事について話し合い、情報を交換し共有する場とし た。例えば難関大学を志望する生徒の模擬試験の成績か ら、その生徒にどんな対応をするかを話し合ったり、翌 週の進路行事の狙いについて確認したりする。「進路指 導に関することが、年数を経るにつれ形骸化してしまう 危険性もあります。行事も模擬試験も、教員が常にその 意義を明確に認識して、生徒に伝えていかなければ意味 が薄れてしまいます。教員の意識を統一するためにも、 第3学年担任会には重要な意味があります」  4月早々に開催する、新旧3年生学年主任・担任の「3 学年担任引継会」は、旧3年生担任の反省点、成功事例 などの体験を、最新の情報とともに新3年生担任に引き 継いでいくのが目的だ。現役合格した生徒の日々の様子 や指導の失敗談など臨場感あふれるアドバイスが多く、 初めて3年生を担任する教員にも好評だ。  このほかにも、3年生の正副担任と進路指導部が行う 「3学年進学検討会」は、年4回の面談の前に開催され、 面談の方針についてじっくり話し合う。「進学検討会」 での綿密な情報交換が増えてからは、担任の発言は一個 人の意見ではなく、学校の総意であるという自信が持て るようになった。「今年度のセンター試験では思ったほ ど点数が取れない生徒が多かった(注)のですが、出願校 決定の面談は限られた時間のなかでスムーズに行うこと ができました。12 月の個人面談で綿密にシミュレーショ ンを行っていたため、生徒が納得できるレベルにまで信 頼関係が育っていたのだと思います。これも、学年団で 情報の共有化が図られてきたからだと思われます」

 入試問題の分析や他校の取り組みを参考にして

 教科指導力の向上をめざす

 重点課題としてもう一つの柱に掲げているのが、「教 科指導力の向上」である。その中でも力を入れているの が、大学入試問題の分析である。現在は、センター試験 と東北大学前期日程試験の問題を実際に教員が解き、問 題と解答例、分析を生徒に配布している。センター試験 の分析は2月の LHR で1、2年生に配布して傾向を解 説し、東北大学の入試分析結果<図表2>は職員室前に 設置して希望者が入手できるようにしている。同校では、 例年3年生1学期時点の東北大学志願者が 100 名を超え るため、教員が東北大学の入試問題に精通していること は必須の要件となっている。「センター試験や東北大学 の入試問題を本校の教員が知らない、解いていないでは 話になりません。半面、教員がきちんと理解していれば、 生徒は教員に聞こうとします。そうした体制を作ってお くことが、思った以上に信頼関係を作り出すのです」  なお、職員室前の「学習指導コーナー」に用意した東 北大学の入試分析資料はすぐになくなってしまうそうだ。  教員にとっても、入試問題を解くことは授業運営に重 要なヒントを提供してくれる。「本校の生徒は問題のど こを解けるかを想像しながら問題を解きます。この辺は <写真>職員室前の廊下にある学習指導コーナー

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引っかかるかな、この辺は弱そうだな、と考えながら解 くことで、授業の進め方が工夫できます。そんな観点が 普段の授業も生きてくるのです」  こうした地道な改善が徐々に成果に結びついている今 だからこそ、佐藤先生はどこかに落とし穴がないかを探 すよう心がけている。その一環として、県内の高校はも ちろんのこと、他県の高校の進路関係者とも連携し、情 報交換を行う会議を常設している。また、予備校が主催 する研究会や勉強会にも多くの教員に参加してもらって いる。

 「授業でしかできないことをやろう」を合言葉に

 三高スタイルの開発にも着手

 さらに同校では 2010 年に、生徒の潜在能力を掘り起 し、問題解決力や応用力を身につけさせる授業方法の開 発をめざして、「授業づくり三高プロジェクト」をスター トさせた。同校の生徒に合った授業スタ イルを「三高スタイル」と名付け、実践 可能な授業法を開発するプロジェクトだ。 宮城教育大学と連携し、ワークショップ による研修や授業の評価法の開発、先進 的な取り組みを行っている小・中・高等 学校への視察を積極的に実施している。 「授業でしかできないことをやろう、と いう方向性を確認しました。従来の講義 形式だけでなく、グループ学習やペア学 習を取り入れようとする研究です。とは いえ、単語や文法をコツコツ積み上げる 学習も大切です。活発な授業は、基礎部 分がきちんとできていることが前提です から。宿題や補講の在り方を考えながら、 同時に『三高スタイル』と呼べる授業形 態を模索している最中です」  今後について佐藤先生は、新入生の初 期指導にも力を入れていきたいと考えて いる。「三高スタイル」を早い時期に伝 え徹底したい。初期指導がうまくいけば、 2~3年生になってからさらに成長が見 込まれると実感しているからだ。 宮城県仙台第三高等学校 ◇所在地:仙台市宮城野区鶴ヶ谷 1-19 ◇沿革:1963 年 開校 1968 年 理数科開設 2003 年 創立 40 周年記念式典挙行 2009 年 新校舎完成 男女共学開始 ◇学級編成:[全日制]普通科6クラス 理数科2クラス ◇生徒数:954 名(男子 660 名 女子 294 名)2013 年3月現在 ◇特色:校訓は『心身の健康』『真・善・美の追求』『愛と知の稔り』。 『TEAM 仙台三高』をキャッチフレーズに、一つのチームとして 互いに励ましあい頑張る集団を標榜する。部活動が盛んで、運動 部・文化部とも全国大会に送り出す実績を持つ。野球、ラグビー、 サッカー、ハンドボール各部はそれぞれ専用グランドを持つ環境。 19:00 完全下校の中で、生徒は学業とのバランスを取りながら 取り組んでいる。 ◇卒業生の進路:2012年3月卒業生 318名 ・進学先:4年制大学(大学校含)266名 専門各種学校7名   ・合格者数内訳(現役生、延べ数)国公立大学 178 名 私立大学 416 名 <図表2>東北大学入試問題分析(数学理系)  1~3までは方程式、ベクトル、確率の単体問題でした。このような単体問題は教科書 の章末Bレベル~チャートコンパス3・4レベルからの出題と考えて良いでしょう。確実 に解答できる力が求められます。逆にここで解けないと合格は難しいです。教科書に書い てある内容全てが「基礎」ですので、問題演習を通じて基礎力をつけて下さい。数Ⅲ、数 C分野は他分野との融合問題となります。数Ⅲ・Cの基礎を踏まえ、複合問題に数多く取 り組み、複合パターンまで押さえていくと合格できる力が付くことでしょう。 2013 年度 東北大学   前期日程(数学理系) 科目 数学ⅠⅡⅢ ABC 出題数 6 試験時間 150分 全体講評 ( 1~3 略) 4<難易度:中>   数学Ⅲの積分、極限の問題  (1)じゃまなもの(たとえばsinθ)をtと置くと簡単に積分できます。  (2)定積分と不等式の関係です。  (3)(2)を使うことは容易に想像できるでしょう。はさみうちですね。 5<難易度:中>   数学Cの行列の問題  (1)Aが回転を表すことに気づけば簡単。気づくというか、回転であったらうれしい なと考える。  (2)よくわからないので帰納法を使うしかないかなと思ってやってみたら解けました。 最後E= (E−A)(E+A)−1と変形すればよいことに気づけば簡単。  (3)(2)の式を使います。Aは  πの回転を表す行列です。これを繰り返していけば、      π×2、  π×3、・・・などと考えていくことにより、Anが8パターンしか ないことが分かります。 6<難易度:中>   数学Ⅲの積分の問題  (1)断面が二等辺三角形だけでなく、台形になることもあることに気づくかどうか。  (2)それに気づけば後は計算頑張ってもらいましょう。 合格への学習対策 4 3 4 3 4 3

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