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― ― ― ― 生物学の哲学の〈これまで〉と〈これから〉:企画主旨

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Academic year: 2021

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科学基礎論学会60周年記念分野別ワークショップ

生物学の哲学の〈これまで〉と〈これから〉 :企画主旨

松本俊吉 東海大学

本ワークショップでは、わが国の生物学の哲学における〈これまで〉を振り返り、

〈これから〉を展望する。

生物学の哲学は様々な顔を持っている。まずそれは科学哲学の一分野であり、しか も比較的歴史の浅い分野である。そのことは、物理学の哲学などと比べても明らかで あろう。またそれは、プライス方程式による集団選択理論の定式化とか、遺伝的浮動 による中立的な DNA 塩基置換率といったきわめてテクニカルな話題を扱うことがあ ると同時に、他方できわめて伝統的な哲学(形而上学)の問題と不可分であることも ある。例えば「生物種とは何か」という種問題においては、種というカテゴリーの形 而上学的身分が不断に問い直され、更新される。

さらにそれは、その名前が示すとおり自己完結したディシプリンではありえない。

生物学(進化生物学、分子生物学、集団遺伝学、生態学、古生物学、生物体系学など の生命諸科学)だけでなく、方法論の上で数学、統計学、物理学、心理学、歴史学、

文献学などとも交流を持つ。提題者の一人(三中氏)が指摘するように、科学哲学

―ただしこの場合、生物学の哲学というよりはポパー哲学のことのようだが―の諸 概念が生物体系学の熾烈な論争を闘っていく上での有用な「武器」となったという例 もある。

しかしまた同時に、この分野は大いなる発展途上の段階にある。第一に、提題者の 一人(西脇氏)が指摘しているように、「生物学の哲学」と名乗りながらその内実はい ぜん「進化生物学の哲学」が主流である(ただし、この状況も近年では急速に変化し つつあり、発生学や分子遺伝学などをベースとした哲学的考察も着実に蓄積されつつ ある)。第二に、マクロ進化とミクロ進化との関係、選択進化と中立進化との関係とい った、これまで生物学の哲学が依拠してきた進化の総合説の理論的根幹に関わる部分 も、必ずしも盤石なものとは言えないかもしれない。第三に、―これは特にわが国 に固有に事情だが―この分野はわが国においてある程度認知されるようになってき たものの(しかしそれも比較的狭い範囲のサークルにおいてではある)、残念ながらい まだ国際的に発信できるレベルにまでは到達していない。欧米ではかなり活発化して きている哲学者と生命科学者との(国際)共同プロジェクト研究といったものは、ま だわが国ではほとんどみられない。エキサイティングな可能性に満ちた分野であるこ とは間違いないが、提題者の一人(中尾氏)が危惧するように、このままでは「緩や かな死」を迎えることになるかもしれない。わが国の生物学の哲学が「ガラケー」化 しないためにも、やはり「国際化」は必須の要件であろう。

以上のような問題意識を踏まえて、本ワークショップでは、西脇与作氏、三中信宏 氏、中尾央氏をお招きし、それぞれの観点から問題提起をしていただき、会場の方々 も交えて忌憚なく語っていただく予定である。

参照

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