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The 39-th International Chemistry Olympiad – Preparatory problems

問題 5. ナノ粒子とナノ相

近年、ナノケミストリーは大きな反響を呼んでおり、ナノ物質を理解するための多くの 研究が行われている。ナノ物質の中でも単層カーボンナノチューブ(SWNT)はもっとも よく知られている例である。SWNT は一枚のグラファイトを巻いて縫い目のない円筒

(直径≈ 1.5 nm)の形にしたものと考えることができる。このような円筒状の炭素「分 子」は未来の分子エレクトロニクスデバイスの構成部品を提供することになるかもしれ ない。

ナノメートルオーダーのサイズを持つ物質の性質は、その大きさや形状に依存する。

結晶であれ液体であれ、小さな球状の粒子がもつ飽和蒸気圧は、同じ物質のバルク相

(大きな塊)がもつ飽和蒸気圧よりも大きい。平衡状態におけるモルギブス関数(G)を 比較すると、凝縮相(Gbulk

)と気相 (G

vap

)とでは等しくなる。式(1)によってバルク相の飽

和蒸気圧が決まる。

G

bulk

= G

vap

= G°

vap

+ RT ln p (1)

ここで

vapは、気圧

p 1 bar

のときの気相の標準モルギブスエネルギーである。

小さな球状試料の中に入っている物質は表面張力によって過剰な圧力を受けている。

ΔP

in

= 2σ / r

ここで

r

は球状試料の半径、

σ

は凝縮相と気相の境界における表面張力である。

内部圧力の増加によって、球状試料の内部にある物質のモルギブスエネルギーが変化す る。球状試料の中にある物質のモルギブスエネルギーG*sphはGbulkよりも大きい。球状 試料とバルク相のモルギブスエネルギーの差は、

Δ P V

in に等しい。

G*

sph

= G

bulk

+ ΔP

in

V = G

bulk

+ 2σV / r (2)

ここで

V

は液相あるいは固相のモル体積である。したがって式(1)から式(3)のようにな る。

G*

sph

= G

bulk

+ 2σV / r = G

vap

= G°

vap

+ RT ln p* (3)

ここで

p*は半径 r

の球状試料の持つ飽和蒸気圧である。

(2)

The 39-th International Chemistry Olympiad – Preparatory problems

1.

水の飽和蒸気圧は

298 Kにおいて 3.15⋅10

–2

barである。半径i) 1 μm及びii) 1 nmの水

の球状液滴がもつ飽和蒸気圧をそれぞれ計算せよ。ただし、水の液相と気相の境界にお ける表面張力は

0.072 J/m

2である。

もしも、ある物質の飽和蒸気圧がバルク相のもつ飽和蒸気圧と1%以内で一致したとき に、その物質はバルクの性質を持つとするならば、球状試料をバルク相と見なすことが できる最小の半径はいくらになるか?また、その液滴1個の中には何個の水分子が含ま れているであろうか?

2.

ほんの少しの水銀滴をSWNTの内部に入れて

400Kに保つ。SWNT内部での水銀の最

小蒸気圧を求めよ。バルク相の水銀の飽和蒸気圧は

1.38⋅10

–3

bar、水銀の密度ρ(Hg)は 13.5 g/cm

3である。また、400 Kにおける水銀の液相-気相界面の表面張力は

0.484 J/m

2 である。

3.

標準大気圧下におけるベンゼンの沸点

T

b

353.3 Kである。沸点付近におけるベンゼ

ンの飽和蒸気圧の温度依存性は以下の式のようになる。

ln ( ) H

vap

p T const

RT

= − Δ + (4)

ここでΔHvapはベンゼンの気化エンタルピーで

30720 J/molである。もしもベンゼンが半

50 nmの液滴から成るとすると、大気圧下で細かく分散したベンゼンの沸点を求めよ。

ベンゼンの表面張力は

0.021 J/m

2、密度は

0.814 g/cm

3である。

4.

一般的に、ある同一の物質

A

からなるバルク相とナノメーターサイズの物質とでは 性質が異なる。次の熱力学定数の中で、バルク相からナノメーターサイズの物質へ大き さが変化したときに減少するものはどれか。

1) 任意の溶媒中での物質 A

の溶解度

2) 大気圧下での沸点

3) 固相 A

の飽和蒸気圧

4) A

が反応物であるときの化学反応の平衡定数

5) A

が生成物であるときの化学反応の平衡定数

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