第44回 日本核医学会総会 219
《会長講演》
診断・治療連関における核医学の新しい展開
西 村 恒 彦
京都府立医科大学大学院医学研究科放射線診断治療学
「歌は世につれ,世は歌につれ…」 といわれる.医療においても 「診断は治療につれ,治療は 診断につれ」 である.私自身の卒業 (1972 年) から 30 年余り経った今,核医学は機能・代謝か ら分子画像診断法と変遷を遂げ,飛躍的に発展してきた.この間に関与したいくつかの思い出深 い仕事を本講演で取り上げるとともに,これらに基づき,明日の核医学のあり方を提言したい.
20 世紀後半は 「病因解明と治療法の進歩の時代」 であった.例えば,循環器疾患においても,
壊死・虚血に加え気絶心筋や冬眠心筋の概念が生理・生化学的手法を用いて解明され,これらに 基づき PCI, CABG や心移植などの新しい治療法が開発されてきた.この流れの中で,SPECT/
PET を用いた心筋虚血の検出,心筋 viability 評価は冠動脈造影と並んで虚血性心疾患の治療方 針の決定に必要不可欠なものになってきた.また,肥大型心筋症の中でタリウム欠損と心筋逸脱 酵素の上昇を認める拡張相肥大型心筋症の存在を明らかにし,本症が心移植の適応になることを 示した (阪大移植第 1 号).さらに,抗心筋ミオシン抗体を用いた心移植拒絶反応の画像診断法 を開発し,心筋生検に匹敵することを確立した.
脳神経領域においても,SPECT/PET は高次脳機能の解明や神経伝達機能の画像化など,従来 の CT/MR にない新しい診断情報を提供してきた.先天聾の患者に,PET による脳賦活試験を手 話をタスクとして行い,側頭葉領域が賦活化されること (手話は脳で聞いている) を明らかにし た.このことは,脳の可塑性を診断しえたことになり,手話は言語習得期までに始める方が,一 方,人工内耳のリハビリには手話を制限した方がよいことを示している.また,β-CIT による ドーパミン・トランスポータの画像化を用いて,パーキンソン病において症状発現より早期に神 経細胞の変性・脱落を検出できることを動物実験や臨床応用で示した.近い将来,細胞移植や神 経保護剤など新しい治療法の指標となると思われる.
21 世紀は 「予防医学の時代」 であり,他方では 「再生医療の時代」 である.FDG-PET による癌
検診と同様に虚血性心疾患においても冠動脈狭窄以前に出現する動脈硬化を FDG-PET や Annexin-V を用いて描出し,スタチンなどの抗脂血症剤の効果判定に用いることが期待される.
また,重症虚血性心疾患において幹細胞移植や HGF 投与による血管新生療法が注目されている.
今後,遺伝子治療の生着・効果判定の指標として遺伝子発現を利用した分子画像の開発が期待さ れる.
核医学診断法は,今後とも新しい治療法の開発とともに華麗に変身するとともに,むしろ分子 画像診断法として新しい治療法の適応や効果判定に不可欠なものになってくるのではなかろう か? 若き核医学会員の先生方には,核医学の素晴らしさを診療・研究の両面に渡り,引き出し ていただけることを熱望している.
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