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スモン後遺症患者における心臓交感神経節後機能

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Academic year: 2021

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A. 研究目的

スモンは視神経、 脊髄、 末梢神経障害による視力障 害、 下肢優位の知覚・運動障害、 自律神経障害を呈す る、 キノホルムによる中毒性神経疾患である。 スモン では自律神経障害を反映した下肢冷感、 発汗異常など の後遺症に悩む症例も少なくない。

スモンの自律神経症状としては下肢の冷感が最も頻 度が高く、 失禁、 下痢、 便秘、 発汗障害、 発作性の高 血圧などが続くが、 立ちくらみの頻度は低いとされる

ことから1)、 下肢冷感や発汗に関わる皮膚交感神経機 能が障害されている患者が多いと考えられる。 実際に 我々は長期経過したスモン患者の半数において皮膚交 感神経機能により調節される手掌および足底の発汗反 応が消失していることを確認できた2)。 次に自律神経 障害の責任病巣を判定するために、 汗腺を支配する皮 膚交感神経節後線維機能を評価する目的で、 定量的軸 索反射性発汗試験 (quantitative sudomotor axon re- flex test; QSART) を ス モ ン 患 者 の 上 下 肢 で 実 施 し

― 163 ―

スモン後遺症患者における心臓交感神経節後機能

山中 義崇 (千葉大学医学研究院 神経内科学) 荒木 信之 (国立病院機構千葉東病院 神経内科) 桑原 聡 (千葉大学医学研究院 神経内科学)

研究要旨

[目的] スモンは視力障害、 下半身の知覚・運動障害を呈するキノホルムによる中毒性神経 疾患であり、 下肢の冷感、 発汗異常など種々の自律神経障害を伴う。 我々は過去の本報告会 において、 スモン患者の約半数に精神性発汗が障害される一方で、 定量的軸索反射性発汗試 験は発症時重症度の高かった例を除き保たれることを報告してきた。 これらの結果はスモン 後遺症患者における皮膚交感神経節後線維は基本的には障害されないことを示すと考えられ る。 今回我々は皮膚交感神経以外の自律神経節後障害の有無を調べることを目的として、

123I-MIBG 心筋シンチグラフィー (MIBG) を用いて心筋に分布する交感神経節後線維の機 能を評価したので報告する。

[方法] 対象はスモン患者 3 例。 症例 1 は 79 歳男性、 発症年齢 30 歳、 最重症時における重 症度 4、 現在の重症度 2。 症例 2 は 79 歳女性、 発症年齢 31 歳、 最重症時における重症度 3、

現在の重症度 2。 症例 3 は 65 歳女性、 発症年齢 18 歳、 最重症時における重症度 4、 現在の重 症度 3。 123I-MIBG を経静脈的に投与後、 15 分後(早期相)と 3 時間後(後期相)にそれぞれ胸 部の撮影を行った。 MIBG の指標として、 心臓の集積量を縦隔の集積量で除した値、 heart / mediastinum ratio (H/M 比:正常 2.2 以上) を用い、 早期相、 後期相でそれぞれ値を算出 した。

[結果] 症例 1 の H/M 比 (早期相/後期相) は 2.71/3.05、 症例 2 では 2.76/2.87、 症例 3 で は 3.24/3.25 であり、 全症例で正常であった。

[結論] 今回検査を実施したスモン後遺症患者では心臓交感神経節後線維機能に異常は認め なかった。 スモン後遺症患者における自律神経節後線維は基本的には保たれると思われる。

今後、 症例数を増やして更に検討をすすめる必要がある。

(2)

たところ、 上肢では 7 例中 6 例で、 下肢では 7 例中 5 例で反応が保たれていた。 QSART の発汗反応が消失 していた症例は発症時の重症度が高い症例であること から、 基本的には汗腺を支配する皮膚交感神経節後線 維は障害されないと考えられた3, 4)

次のステップとして、 他の交感神経節後線維機能に 対する影響を評価する必要がある。 123I-MIBG 心筋シ ンチグラフィー (MIBG) は心臓交感神経節後線維機 能を非侵襲的に評価できる。 最近では、 パーキンソン 病や Lewy 小体型認知症の評価にも汎用されている。

我 々 は 、 ス モ ン 患 者 に お け る MIBG を 施 行 す る こ と で、 心臓交感神経節後線維機能が障害されているか、

評価を行った。

B. 研究方法

対象はスモン後遺症患者 3 例とした。 背景を表 1に 示す。 スモンの重症度は厚労省の基準に従った (重症 度 1:極めて軽度、 軽度の知覚異常のみ、 2:軽度、

下肢の知覚障害が主体、 3:中等度、 起立・歩行障害 または中等度視力低下、 4:重度、 一人での起立・歩 行不能または高度視力低下、 5:極めて重度、 ほとん ど寝たきりないし失明)。

全 症 例 で MIBG 異 常 を き た し う る 糖 尿 病 や 心 不 全 な ど の 異 常 は 認 め な か っ た 。 さ ら に MIBG は パ ー キ ンソン病患者では低下することが知られていることか ら 、 今 回 の 検 討 症 例 で は unified Parkinson disease rating scale (UPDRS) part 3 の測定を行ったが、 表

に示すように、 3 症例とも明らかなパーキンソン運動 症状は認めなかった。

123I-MIBG を経静脈的に投与後、 15 分後 (早期相) と 3 時間後 (後期相) にそれぞれ胸部の撮影を行った。

MIBG の指標として、 心臓の集積量を縦隔の集積量で 除した値、 heart/mediastinum ratio (H/M 比:正常 2.2 以上) を用い、 早期相、 後期相でそれぞれ値を算 出した。

C. 研究結果

MIBG の検査結果を図 1に示す。 症例 1 の H/M 比 は 2.71/3.05、 症例 2 では 2.76/2.87、 症例 3 では 3.24/

3.25 であり、 全症例で正常であった。

D. 考察

今 回 評 価 を 行 っ た ス モ ン 後 遺 症 患 者 の MIBG は 全 症例で正常に保たれていた。 このことから、 心臓交感 神経節後線維機能は保たれていると考えられる。

スモン後遺症患者における心循環系交感神経機能の 既報告では、 立ちくらみなどの心循環系交感神経障害 を示唆するような症状の頻度は高くなく、 Schellong 試験や心拍変動などの検査でも健常対照と有意差がな い1)。 また、 血中カテコラミン濃度はスモン後遺症患 者では高値を示す1, 5)こともあり、 基本的にスモン後遺 症患者における心循環系自律神経機能自体が障害され にくい可能性がある。

先にも述べたように、 我々はスモン患者における自 律神経障害の責任病巣を調査するべく、 これまでに皮 膚交感神経機能を評価してきた。 交感神経性発汗反応 は半数で低下するが2)、 交感神経性発汗反応は辺縁系 などの中枢神経、 交感神経脊髄下降路、 交感神経節前 線維、 交感神経節後線維のどの部分の障害でも低下し うる6)。 一方で、 節後神経機能を反映する QSART は

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図 1 MIBG 検査結果

∝଀䋱

症例 1

∝଀Ϯ

症例 2

∝଀ϯ

症例 3

表 1 スモン後遺症患者の背景

症例 1 症例 2 症例 3 年齢 (歳) 79 歳 79 歳 65 歳

男:女 男性 女性 女性

発症年齢 30 歳 31 歳 18 歳

羅病期間 50 年 49 年 48 年

発症時重症度 4 3 4

現在重症度 2 2 3

立ちくらみ なし なし あり

下肢冷感 あり あり なし

発汗障害自覚 あり あり なし

排尿障害 あり あり あり

排便障害 なし あり あり

UPDRS part 3 3 0 5

(3)

概ね保たれる傾向にあることから、 皮膚交感神経節後 線維は保たれると考えられため、 皮膚交感神経機能に おける自律神経責任病巣は中枢神経、 交感神経脊髄下 降路が考えられる。 下半身の無汗や冷感という分布を 考えると交感神経脊髄下降路の障害がより示唆される。

スモン患者における交感神経脊髄下行路に関する病理 学的検討の報告はないが、 交感神経の脊髄下行路は錐 体路に接して錐体路の腹側を下行するとされる7)。 ス モンにおいて錐体路は最も強く障害される部位のひと つであり8)、 錐体路に接して走行する発汗交感神経脊 髄下行路も障害される可能性がある。

今 回 検 討 し た 心 臓 交 感 神 経 に お け る 脊 髄 下 行 路 は Th4 レベルまでの分岐であり、 Th5 レベル以下には存 在しない。 臨床的に心循環系自律神経症状が少ないこ と、 下肢冷感、 尿失禁、 便秘といった下半身の症状の 頻度が高いことを鑑みると、 スモンにおける交感神経 脊 髄 下 行 路 障 害 は Th5 レ ベ ル 以 下 で 障 害 さ れ や す い 可能性が考えられる。

今 回 MIBG を 施 行 し た ス モ ン 患 者 は 3 例 と 少 数 で あるため、 今後はさらに症例数を増やして検討する予 定である。

E. 結論

スモン患者における心臓交感神経節後線維機能は保 たれている可能性がある。

G. 研究発表 1 . 論文発表

なし 2 . 学会発表

山中義崇, 朝比奈正人, 荒木信之, 桑原聡. ス モン後遺症患者における下肢発汗交感神経機能.

第 54 回日本リハビリテーション医学会学術集会.

岡山 2017/6/10

H. 知的財産権の出願・登録状況 なし

I. 文献

1 ) 松田正之, 宮城浩一, 柳沢信夫, et al. Subacute

myelo-optico-neuropathy (SMON) 患 者 に お け る 加齢と自律神経機能検査. 自律神経. 1993;30 (5):

488-492.

2 ) 朝比奈正人, 服部孝道. スモン後遺症患者におけ る皮膚交感神経機能. 自律神経. 2000;37 (6):654- 657.

3 ) 朝 比 奈 正 人 , 荒 木 信 之 , 山 中 義 崇 , Anupama Poudel, 劉韋氷, 桑原聡. スモン患者における発汗 節後交感神経機能. スモンに関する調査研究 平成 27 年 度 総 括 ・ 分 担 研 究 報 告 書 分 担 研 究 報 告 書 : 2015. 159-162.

4 ) 山中義崇, 荒木信之, 桑原聡. スモン患者におけ る下肢発汗節後交感神経機能 スモンに関する調査 研究 平成 28 年度総括・分担研究報告書分担研究 報告書:2017.

5 ) 小牟礼修, 久野貞子, 西谷裕. SMON における 心・血管系自律神経障害 特に立ちくらみとの関連 について. 自律神経. 1988;25 (1):55-60.

6 ) Asahina M, Poudel A, Hirano S. Sweating on the palm and sole: physiological and clinical relevance.

Clin Auton Res. 2015; 25 (3): 153-159.

7 ) 齋藤博. 頸髄・髄内病変例の温熱性発汗様式から 推定される視床下部脊髄路の頸髄内走行部位と体性 局在構造. 自律神経. 2009;46 (6):582-588.

8 ) Shiraki H. Neuropathological aspects of the etiopathogenesis of subacute myelo-optico- neuropathy (SMON). Vinken PJ, Bruyn DW, edi- tors. Amsterdam: North-Holland publishiong company; 1979. 141-198 p.

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参照

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