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小児の頻拍性不整脈に対するカテーテル焼灼術

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日本小児循環器学会雑誌 14巻4号 519〜521頁(1998年)

<Editorial Comment>

小児の頻拍性不整脈に対するカテーテル焼灼術

日本大学医学部小児科 住友 直方  頻拍性不整脈に対する不整脈の治療には,抗不整脈剤,手術療法,植え込み型抗頻拍ペースメーカー,植え 込み型除細動器,カテーテル焼灼術などがある.今までは抗不整脈剤による治療が最も行われてきたが,カテー テル焼灼術(カテーテルアブレーション)が注目されるようになってきた.しかし,まだ小児におけるカテー テル焼灼術の報告は多くない.

 カテーテル焼灼術の臨床例は,1982年Scheinman )が直流通電による完全房室ブロックの作成に成功したの に始まる.1985年Fisher2)等は冠静脈洞入口部からの直流電により後中隔副伝導路の離断に成功した.しかし,

この方法では冠静脈洞の穿孔により心タンポナーデを起こす危険性が高かった.また小児では直流通電焼灼術 後の症例に突然死が多いことが報告された.このように直流通電によるカテーテル焼灼術は,重篤な合併症が 多く,広く普及するには至らなかった.

 1985年Huang3)が高周波通電法を実験野に検討し,1987年にはJorrgrefe )等が高周波通電法を用いて,左側 副伝導路の焼灼に成功している.この後1991年からTackman5), Kuck等が多数のWPW症候群の治療を高周 波通電法を用いて行い,高い成功率を報告している.

 現在,WPW症候群以外に心室頻拍,房室結節性頻拍,心房頻拍,心房粗動,心房細動など種々の頻拍性不 整脈に対し,高周波カテーテル焼灼術が行なわれている.

 豊原等の報告でも小児に対し,WPW症候群,房室結節回帰性頻拍,心房粗動,心房頻拍,心房粗動,心室 頻拍に高周波カテーテル焼灼術を行っている.

 高周波カテーテル焼灼術の適応

 小児でカテーテル焼灼術を行う最も良い適応は,Fontan等の体静脈肺動脈短絡術後に伴う頻拍性不整脈で ある.これらの症例では,頻拍により左室拡張末期圧の上昇,左房圧の上昇をきたし,肺動脈還流が障害され るため致死的となりうる.また抗不整脈剤になる心機能抑制も血行動態の悪化を招く可能性があるため,

Fontan術後もしくは, Fontan術を予定している患者で,カテーテル治療可能な頻拍性不整脈を合併している 場合には,高周波カテーテル焼灼術が適応となる.また,Total Cavo Pulmonary Connectionの術後は,心 内のマッピングが困難になるため,術前に頻拍性不整脈を合併する場合にはできる限り治療しておく必要があ る.心房中隔欠損術後の心房頻拍,心房粗動,Fallot四徴術後の心室頻拍も抗不整脈剤治療に抵抗性の症例が 多く,適応となるであろう.これら先天性心疾患術前,術後の頻拍性不整脈は先天性心疾患の解剖,手術術式 を知り尽くした小児科医が行うのが最もよいであろう.

 しかし,小児で最も多い頻拍性不整脈は基礎心疾患のないWPW症候群である.①房室回帰性頻拍をおこす 症例,もしくは②心房細動などの心房性頻拍に伴い偽性心室頻拍をおこす症例で,かつ薬剤に抵抗性か副作用

のため服用できない症例,もしくは長期の薬剤投与が好ましくない症例に適応となる.幸い,小児期に偽性心 室頻拍となり突然死する症例は少ないが,小児期に長期間抗不整脈剤を服用する煩雑さ,また頻拍が起こるの ではないかという不安を抱えることによる精神的な負担は大きく,近年は高周波カテーテル焼灼術を希望する 患者も増加している.女性で将来妊娠する可能性がある場合,妊娠中に薬剤を服用させたくない.また妊娠中 に発作になる負担を軽減させる目的,飛行機のパイロット,プロドライバー,運動選手をめざしているものに も適応がある.

 また,特発性心室頻拍も,①症候性の持続性単型性心室頻拍で,薬剤に抵抗性,副作用のため服用できない.

もしくは長期の薬剤投与が好ましくない症例,②脚肢間回帰性心室頻拍,③植え込み型除細動器の作動回数が 多く,プログラム変更,薬剤によるコントロールがつかない症例に適応となる.特に左脚ブロック,下方軸の

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520−(28) 日小循誌 14(4),1998 右室流出路起源の心室頻拍,右脚ブロック左軸変位のベラバミル感受性の心室頻拍は,ペースマッピング,

Purkinje電位の検出などで頻拍起源の同定が可能であり,適応となる症例が多い.

 心房粗動も近年リエントリー回路の同定が可能となり,カテーテル焼灼術で治療できる症例が増加してい る.しかし心房中隔欠損術後の心房粗動では,心房切開創周囲を興奮が施回するものもあり,治療に苦慮する 場合もある.

 心房頻拍も起源が明らかになれば治療可能である.特に近年多極の電極カテーテルが開発され,また記録装 置も32〜64チャンネルと多誘導を同時記録可能になり,以前より頻拍起源の同定が短時間で行われるように

なった.

 しかし,心房頻拍の多くは自動能充進によるものであり,電気生理学的検査の最中に頻拍が起こるか,もし くは誘発されなければ,カテーテル焼灼による治療は困難である.

 合併症

 いくらカテーテル焼灼術が可能で,成功率が上がったとはいえ,これに伴う合併症が0になった訳ではない.

従来の報告では心タンポナーデ,大動脈弁閉鎖不全,僧帽弁閉鎖不全,完全房室ブロック,肺梗塞,脳梗塞,

死亡等の重篤な合併症が報告されている.

 心タンポナーデ,大動脈弁閉鎖不全,僧帽弁閉鎖不全などは,カテーテル操作に基づくもので,これはカテー テル操作に習熟した医師が行えば,極力避けることができる.心タンポナーデを疑った場合には,即座に心エ コーで心嚢液の有無を確かめ,心嚢穿刺,心嚢ドレナージを行い,心嚢液が減少しなければ,緊急外科手術を 行う体制が必要である.

 血栓,塞栓の予防は術中のheparin投与でほとんど回避できる.術後aspyrin IOmg/kgの経口投与を行って いる施設もある.また,通電中のインピーダンス上昇に極力注意し,インピーダンス上昇を認めたらすぐに通 電を中止し,カテーテルをチェックすることが必要である.

 完全房室ブロックは,できる限り洞調律もしくは房室回帰性頻拍中に通電を行い,房室伝導の延長を認めた ら即座に通電を中止する必要がある.万が一完全房室ブロックになった場合には,一時ペーシングを行い,硫 酸アトロピン,イソプロテレノール等の投与で房室伝導の回復を待ち,房室伝導が回復せず,心室拍数が上昇

しなければ,ペースメーカー植え込みを考えることになる.

 これ以外に,小児であることから,成人と比較して種々の問題点が考えられる.

 現在6Fの焼灼用カテーテルがない.通常7Fのカテーテルで十分であるが,10歳以下で逆行性にカテーテル を進める場合にはなるべく5Fのカテーテルを用いるようにする.

 術時間,照射時間が長なり,放射線障害,発癌の危険性がある.できるだけ短時間に終了するよう努力する.

 1歳以下では半数以上に副伝導路の自然消失が認められるため,乳児期の副伝導路に対する焼灼はできる限

りさける.

 高周波の焼灼部位が将来不整脈の発生源となる可能性がある.適応を考え,なるべく年長になって行う.

 不成功に終わった場合も合併症を残さないで終了することに心がける.再度施行も可能である.

 小児に対するカテーテル焼灼術は今後の頻拍性不整脈に対する治療法を大きく変える治療法で,頻拍性不整 脈をもった小児に対する福音となることを願う.

      文  献

1)Scheinman MM, Morady F, Hess DS, Gonzalez R:Catheter induced ablation of the atrioventricular junction   to control refractory supraventricular arrhythmia. JAMA 1982;248:851−855

2)Fisher JD, Brodman R, Kim SG, Matos FJA Brodman LE, Wallerson D, Waspe LE:Attempted nonsurgical   electrical ablation of accessory pathways via the coronary sinus in the Wolff−Parkinson・White syndrome.

  JACC 4:685−694

3)Huang SK, Jordan N, Graham A, Bharati S, Lampe L, Odell R, Marcus FI:Closed chest catheter desiccation   of atrioventricular junction using radiofrequency energy−a mew method of catheter ablation(abstr). Circula−

  tion 1985;72 (supple 3)二389

4)Borggrefe M, Buddle T, Podezech A, Breithardt G:Application of transvenous high frequency alternation

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平成10年7月1日 521−(29)

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current ablation in humans・first clinical experience. PACE l987;10:649

Jackman WM, Wang X, Friday KJ, Roman CA, Moulton KP, Bechman KJ, McClelland JH, Twindale N,

Hazlitt A, Prior MI, Margolis PD, Calalne JD, Overholt ED, Lazzara R:Catheter ablation of accessory pathways(Wolff−Parkinson−White syndrome)by radiofrequency current. N Engl J Med 1991;324:1605−1611 Kuck KH, Schluter M, Geiger M, Siebels J, Duckeck W:Radiofrequency current catheter ablation of accessory atrioventricular pathways. Lancet 1991;337:1557−1561

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